(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両側部にそれぞれバスバーを備え、これらバスバーの間にデフォッガを有しており、第3熱線は該両側部のバスバーが設置される領域内に存在する請求項1〜4のいずれかに記載のデフォッガ付きガラス。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔デフォッガ付きガラス〕
本発明のデフォッガ付きガラスは、その表面にデフォッガを備え、該デフォッガが、線幅W
1(mm)である第1熱線、線幅がW
2(mm)である第2熱線、及び該第1熱線と該第2熱線とが接続された線幅W
3(mm)である第3熱線を備えており、各線の線幅W
1、W
2、及びW
3が下記の式を満足することを特徴とするものである。
W
3=α×(W
1+W
2) (式中、αは1<α<4である。)
【0013】
本発明のデフォッガ付きガラスを、
図1及び2を用いて説明する。
図1は、本発明のデフォッガ付きガラスの好ましい一態様を示す正面図であり、該デフォッガ付きガラスを被設置対象物に設置した場合の模式図である。また、
図2には、
図1に示されるデフォッガ付きガラスの一態様における、第1熱線、第2熱線、及び第3熱線が形成するパターン部分の拡大図が示されている。
図2に示されるパターン部分は、第1熱線及び第2熱線が第3熱線に接続される態様を有しており、該第3熱線は第1熱線及び第2熱線よりも線幅が太くなっている。第3熱線には、第1熱線及び第2熱線が一本ずつ接続されてもよいし、
図2に示されるように複数の第1熱線及び第2熱線が接続されていてもよい。また、枝分かれの起点までを第3熱線としてもよいし(
図2中の4(4C2)と示される第3熱線)、第1熱線及び第2熱線を櫛状にぶらさげるような第3熱線としてもよい(
図2中の4(4C1)と示される第3熱線)。
【0014】
本発明において、第1熱線の線幅をW
1(mm)とし、第2熱線の線幅をW
2(mm)とし、第3熱線の線幅をW
3(mm)とすると、W
1、W
2及びW
3は、下記の式を満足する必要がある。
W
3=α×(W
1+W
2)
式中、αは1<α<4である。αが1以下であると、第3熱線における局部的な異常な発熱を生じてしまい、アンテナに対するデフォッガの熱線による熱の影響が大きくなり、アンテナの感度が低下してしまう。一方、αが3以上であると、第3熱線の線幅が太くなりすぎてしまい、想定する発熱分布との差が大きくなってしまい、かつ見栄えが悪くなる。このような観点から、αは、1<α<3が好ましく、1<α<2.5がより好ましく、1.5<α<2.5がさらに好ましい。
また、熱線の線幅W
1が細くなるほど、例えば0.5mm以下となると、熱線の断面が
図5の細線部に示されるように、太線部よりも略M字ではなく、矩形状に近い形状になる傾向にあり、また自重により広がりにくいために厚さが高くなる傾向にある。そのため、熱線は細くなる場合には、αはより大きく選定することが好ましく、具体的には、2<α<4が好ましく、2.5<α<4であることがより好ましい。
【0015】
上記の式から分かるように、W
3はW
1及びW
2よりも大きい、すなわち、第3熱線の線幅は第1熱線及び第2熱線よりも太くなるので、以後、本明細書において第1熱線及び第2熱線を細線部、第3熱線を太線部と称することがある。
【0016】
W
1及びW
2は、0.1〜1.2mmであることが好ましく、0.1〜0.5mmであることがより好ましく、さらに好ましくは0.2mm以上0.5mm未満、特に好ましくは0.2〜0.4mmである。W
1及びW
2が上記範囲内であると、第1熱線及び第2熱線を容易に形成することができ、また、第3熱線の線幅を細くすることができるので見栄えをよくすることができる。W
1及びW
2は同じであっても異なっていてもよい。
【0017】
W
3は、上記の式により決定されるが、具体的な数値の範囲としては、0.5mm以上であることが好ましく、0.5〜5mmがより好ましく、0.5〜1.8mmがさらに好ましく、0.7〜1.2mmが特に好ましい。第3熱線が複数存在するときは、W
3は同じでも異なっていてもよい。W
3が上記範囲内であると、第1熱線及び第2熱線の線幅との関係から、想定する発熱分布との差が小さくなり、局所的に異常な発熱が抑えられ、かつ見栄えがよくなる。
【0018】
第1熱線及び第2熱線の厚さは、8〜20μmであることが好ましく、より好ましくは8〜15μmであり、同じでも異なっていてもよい。また、第3熱線の厚さは、5〜10μmであることが好ましく、より好ましくは7〜10μmであり、第3熱線が複数存在するときは、その厚さは同じでも異なっていてもよい。これらの熱線の厚さを上記の範囲内とすることで、想定する発熱分布との差が小さく、局所的に異常な発熱が抑えられるからである。
また、同様の観点から、第3熱線の厚さは、第1熱線及び第2熱線よりも薄いことが好ましい。ここで、熱線の厚さは、
図5に示されるように、熱線の断面が通常略M字を呈しているため、接触式表面粗さ計で熱線の断面を計測した該略M字の最も厚くなる部分を熱線の厚さとする。なお、第3熱線の厚さは、線幅の細い熱線よりも線幅が太い熱線の方が、熱線を形成するペーストがその自重により幅方向に広がりやすいため、第1熱線及び第2熱線の厚さよりも薄くなる傾向にある。
【0019】
本発明のデフォッガ付きガラスを車両用として用いる場合、テレビ用アンテナや、AM/FMアンテナなどのアンテナは、
図1に示されるように、側部に近い箇所に通常設けられ、限られた面積のガラス板上に、これらのアンテナとデフォッガとを設ける必要がある。そのため、アンテナとデフォッガとの間の距離は近くなるので、アンテナはデフォッガの発熱による熱の影響を受けやすくなる。一方、デフォッガは、通常ガラス板の中央部(
図1に示される領域X)の曇を先に除去し、その後に側部(
図1に示される領域Y)に向けて曇を除去するように設計される。よって、発熱量が低減される第3熱線は、
図1に示されるように、アンテナに近接するガラス板の側部(領域Y)に配置することが好ましい。アンテナへの熱の影響を低減でき、またガラス板の中央部(領域X)の熱線の方が発熱するので、ガラス板の中央部(領域X)の曇を先に除去し、その後に側部(領域Y)に向けて曇を除去することができるからである。
【0020】
また、ガラス板の中央部(領域X)の曇を先に除去し、その後に側部(領域Y)に向けて曇を除去するために、
図1に示されるガラス板の中央部(領域X)における第1熱線及び第2熱線の線幅は、ガラス板の側部(領域Y)における線幅よりも細いことが好ましい。このような線幅とすることで、ガラス板の中央部(領域X)の熱線の方の発熱量を、ガラス板の側部(領域Y)よりも大きくすることができるからである。ここで、ガラス板の中央部(領域X)は、ガラス板の大きさにもよるが、好ましくはガラス板の中心線から左右に200mm長さ(中心線を中心に挟んで400mm長さ)程度の領域である。
【0021】
第3熱線の線抵抗は、0.07〜3.2Ω/dmであることが好ましい。ここで、dmは10cmであることを示す。線抵抗が0.07Ω/dm以上であると、十分にデフォッガの性能が得られる発熱が期待でき、一方、3.2Ω/dm以下であると局部的に異常な発熱が抑えられ、ガラス板の中央の曇を先に除去し、その後に側部に向けて曇を除去するように設計しやすくなる。
【0022】
第3熱線の単位面積当たりの発熱量は、180〜800W/m
2であることが好ましい。180W/m
2以上であれば、側部の他の熱線と比べてデフォッガの性能が低下することがなく、800W/m
2以下であれば、局所的に異常な発熱を抑えることができる。このような観点から、第3熱線の単位面積当たりの発熱量は、250〜600W/m
2であることがより好ましく、さらに300〜400W/m
2であることが好ましい。ガラス板の中央の熱線の方が発熱するので、通常ガラス板の中央の曇を先に除去し、その後に側部に向けて曇を除去することもできる。
また、第1熱線及び第2熱線の単位面積当たりの発熱量は、局部的に異常な発熱を抑える観点から、上記の第3熱線の単位面積当たりの発熱量の範囲内であることが好ましい。
【0023】
図2に示される第1熱線及び第2熱線が第3熱線に接続される熱線パターンは、ガラス板上に少なくとも一箇所あればよく、アンテナを設ける領域を広げる観点から、複数個所あることが好ましい。ガラス板上に設ける熱線パターンは、
図1に示されるように、通常該ガラス板の中心線を軸に左右対称に設計されるため、左側部に一箇所あれば、右側部にも一箇所あるので、ガラス板全体としては二箇所存在することになる。
図2に示されるように、片方の側部(領域Y)に二箇所の第1熱線及び第2熱線が第3熱線に接続される熱線パターンを有していてもよいし、また三本以上の第3熱線が存在していてもよい。
【0024】
本発明のデフォッガ付きガラスは、
図1に示されるように、その両側部にそれぞれバスバーを備えており、該バスバーの間にデフォッガが設けられており、また、第3熱線は、バスバーが設置される領域内に存在していることが好ましい。第3熱線がバスバーの設置される領域内にも存在することで、アンテナに対する熱線による熱の影響を低減することができ、また通常ガラス板の中央の曇を先に除去し、その後に側部に向けて曇を除去することもできる。また、同様の観点から、第3熱線は、セラミックカラー部分から好ましくは40mm、より好ましくは30mmより内側の範囲にも設けられる。ここで、セラミックカラーは、ガラス板の周縁部上に黒色顔料成分を含有する溶融性ガラスフリットにより形成される領域であり、意匠性を向上させるために設けられ、黒セラとも称されるものである。
また、バスバーが設置される領域内にある第3熱線は、該バスバーの上に設けられていてもよいし、ガラス板とバスバーとの間に設けられていてもよい。
【0025】
本発明のデフォッガ付きガラスは、
図1に示されるように、該デフォッガを形成する熱線のパターンが、ガラスを被設置物に設置した際の該ガラスの上中央部が上方に凸型に盛り上がり、両側が下方に後退した凸型パターンを呈していることが好ましい。熱線パターンがこのような凸型パターンを有すると、熱線の両側が下方に後退するので、アンテナと熱線との間に非発熱領域が確保されるので、アンテナに対する熱線による熱の影響を低減することができ、またアンテナを設ける領域を広げることもできる。ここで、ガラスの被設置物としては、該ガラスにテレビ用アンテナなどのアンテナを設けて用いるようなもの、例えば車両などが好ましく挙げられる。
【0026】
第1熱線及び第2熱線を設ける際の、隣り合う第1熱線同士、第2熱線同士、あるいは第1熱線と第2熱線との間の間隔(線間ピッチ)は、
図1に示されるガラス板の中央部(領域X)においては、熱線を設けるガラス板の大きさにもよるが、好ましくは10〜40mm、より好ましくは20〜40mmである。第1熱線及び第2熱線の線間ピッチが上記範囲内であると、想定する発熱分布との差が小さくなり、局所的に異常な発熱が抑えられ、アンテナに対する熱線による熱の影響を低減することができ、また熱線パターンの配置も容易となる。
【0027】
また、
図2に示されるように、片方の側に複数本の第3熱線が存在する場合、隣接する第3熱線の間隔(線間ピッチ)は、熱線を設けるガラス板の大きさにもよるが、好ましくは10〜40mm、より好ましくは20〜40mmである。想定する発熱分布との差が小さくなり、局所的に異常な発熱が抑えられ、アンテナに対する熱線による熱の影響を低減することができ、熱線パターンの配置も容易だからである。また、第3熱線の間隔(線間ピッチ)を第1熱線及び第2熱線の線間ピッチ(H
1)よりも広くする設計を行うことは、第3熱線間にアンテナ線を設けるといったことも可能であり、設計の自由度の点から有利である。
【0028】
アンテナを設ける領域を広げるためには、熱線パターンを凸型パターンを有するパターンとし、第3熱線同士の間隔(線間ピッチ:H
2(mm))は、第1熱線及び第2熱線の第3熱線に接続される前のガラス板の側部(領域Y)における間隔(線間ピッチ:H
1(mm))より狭くすることが好ましい。一方、第3熱線同士の間隔(線間ピッチ)を狭くすると、第3熱線の発熱量が増加して局所的に異常な発熱を生じてしまうため、第3熱線の線幅を広くする必要が生じる。このような観点から、W
1、W
2、W
3、H
1、及びH
2は、以下の式(2)を満足することが好ましい。
W
3=β×(W
1+W
2)×(H
1/H
2) 式(2)
式(2)中、βは好ましくは0.7<β<3.5であり、より好ましくは1<β<3であり、さらに好ましくは1<β<2である。βが上記の範囲内であると、想定する発熱分布との差が小さくなり、局所的に異常な発熱が抑えられ、アンテナに対する熱線による熱の影響を低減することができる。特に、デフォッガの熱線の発熱量がガラス板全面にわたって均等とし、ガラス板の全面に対して効率よく曇り防止を図りたい場合には、W
1、W
2、W
3、H
1、及びH
2が上記の式(2)の条件を満足するようにすることが有効である。
また、熱線の線幅W
1が細くなるほど、例えば0.5mm以下となると、熱線の断面が
図5の細線部に示されるように、太線部よりも略M字ではなく、矩形状に近い形状になる傾向にあり、また自重により広がりにくいために厚さが高くなる傾向にある。そのため、熱線は細くなる場合には、βはより大きく選定することが好ましく、具体的には、1<β<3.5が好ましく、2<β<3.5であることがより好ましい。
【0029】
本発明のデフォッガ付きガラスを車両用として用いる場合、車両用のデフォッガの熱線の発熱量は大きいため、局所的に異常な発熱が生じると、ガラス板に割れが生じるといった重大な問題が起こりかねない。そのため、実製品のデフォッガにおける発熱量は、デフォッガの熱線の設計時に想定する発熱分布に近い発熱を示すことが強く望まれる。本発明で規定する、第1熱線、第2熱線、及び第3熱線の線幅の関係を満足するようにデフォッガのパターンを設計すれば、第1熱線及び第2熱線が合流する前後での抵抗値は同じ程度、すなわち発熱量は同じ程度となるので、局所的に異常な発生を生じることがない。よって、本発明のデフォッガ付きガラスは、その効果をいかす観点からも、車両用窓ガラスとして好適に用いられる。
【0030】
そして、上記のような構成を有する、本発明のデフォッガ付きガラスは、デフォッガを構成する第1熱線、第2熱線、及び第3熱線のいずれもがデフォッガの優れた効果を発揮し、かつアンテナに対する熱の影響を低減しうる温度、好ましくは70℃以下となるため、アンテナに対するデフォッガの熱線による熱の影響を低減でき、安全上の観点から優位なものである。
また、本発明のデフォッガ付きガラスは、第1熱線及び第2熱線(細線部)と第3熱線(太線部)との温度差が小さくなる、好ましくは15℃以下となるため、想定する発熱分布との差が小さく、局部的に異常な発熱が抑えられたものとなる。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
[評価方法]
【0032】
実施例1
車両のリアガラスに、
図3に示されるような、その両側にバスバー5を有し、そのバスバー5の間に熱線4からなるデフォッガ3、デフォッガ3の上にはテレビ用アンテナ7などのアンテナ類を形成した。
デフォッガ3の中心部分は縦方向に16本の熱線を有しており、
図4に示されるように、上から1本目及び2本目の熱線は各々第1熱線#1(線幅W
1:0.3mm)、第2熱線#1(線幅W
2:0.3mm)であり、上から3本目及び4本目の熱線は各々第1熱線#2(線幅W
1:0.3mm)、第2熱線#2(線幅W
2:0.3mm)であり、上から5本目及び6本目の熱線は各々第1熱線#3(線幅W
1:0.3mm)、第2熱線#3(線幅W
2:0.3mm)である。第1熱線#1及び第2熱戦#1は第3熱線#1(線幅W
3:1.0mm)に接続し、該第3熱線#1はバスバー5に接続され、第1熱線#2及び第2熱戦#2は第3熱線#2(線幅W
3:1.0mm)に接続し、該第3熱線#2はバスバー5に接続され、第1熱線#3及び第2熱線#3は第3熱線#3(線幅W
3:1.0mm)に接続し、該第3熱線#3はバスバー5に接続されている。
第1熱線と第2熱線との間隔、及び第3熱線同士の間隔(線間ピッチ)は30mmである。
また、
図3に示される熱線のパターンは、ガラス板の上中央部が上方に凸型に盛り上がり、両側が下方に後退した凸型パターンを有することで、ガラス板の上方部と両側部に非発熱領域が確保でき、アンテナに対する熱線の影響を低減できるので、アンテナの十分な形成可能領域が確保されている。
【0033】
熱線は、
図3に示されるような熱線パターンを形成したスクリーンを作製し、該スクリーンを用いて銀ペーストでスクリーン印刷した後、炉で加熱し、焼成してから、風冷強化加工を行って形成した。ここで、線幅はルーペを用いて計測した。第1熱線、第2熱線、及び第3熱線の断面を、接触式表面粗さ計を用いて測定した結果を、
図5に示す。第1熱線及び第2熱線(
図5中「細線部」)、及び第3熱線(
図5中「太線部」)の断面は中央が凹んだ略M字を呈しており、第1熱線及び第2熱線の厚さは12μmであり、第3熱線の厚さは9μmであった。また、線幅が太いものはよりM字に近く、太線の細いものは、その上辺に凹みがありM字を呈するものの、矩形状に近い形状であることが分かる。
【0034】
図3において、上から1本目〜6本目までの第1熱線及び第2熱線の第3熱線への接続前の領域を「接続前領域(領域B)」、7本目〜16本目は第3熱線への接続がない領域を「接続無関係領域(領域A)」と称し、第1熱線及び第2熱線が接続した直後の第3熱線の領域を「接続直後領域(領域C)」と称した際の、各領域における発熱量は、いずれも300W/m
2であった。ここで、発熱量は、得られたデフォッガ付きガラスについて、バスバー間に12Vの電圧を印加して通電した際の発熱量である。
【0035】
実施例2〜9
実施例1において、接続無関係領域(領域A)、接続前領域(領域B,第1熱線及び第2熱線により構成される領域)、及び接続直後領域(領域C,第3熱線により構成される領域)における線幅及び線間ピッチを第1表に示されるものとした以外は、実施例1と同様にしてデフォッガ付きガラスを作製し、発熱量を測定した。各領域における発熱量を第1表に示す。
【0036】
比較例1
実施例1において、第3熱線#1及び#2の線幅W
3を0.55mmとした以外は、実施例1と同様にしてデフォッガ付きガラスを作製した。得られたデフォッガ付きガラスについて、第3熱線#1及び#2(領域C)における発熱量は900W/m
2となり、局部的な異常発熱が確認された。
【0037】
【表1】
【0038】
本発明のデフォッガ付きガラスは、想定する発熱分布との差が小さく、局所的に異常な発熱が抑えられ、アンテナに対するデフォッガの熱線による熱の影響を低減し、かつ見栄えのよいことが確認された。本発明においては、W
1(mm)、W
2(mm)、及び線幅W
3(mm)が所定の関係を満足していれば、局所的な異常な発熱の低減と見栄えとの関係から、様々な熱線パターンを決定することができる。また、実施例2〜4及び6のように、領域Aの線幅を領域Bの線幅よりも細くすることにより、ガラス板の中央部の熱線の方が発熱するので、ガラス板の中央部の曇を先に除去し、その後に側部に向けて曇を除去することができる。
【0039】
実施例1と実施例8との対比から、例えば領域Cにおける第3熱線の線間ピッチを狭くすることにより、領域Cにおいて局所的に異常な発熱を抑えつつ他所よりも発熱量を大きくすることができる。また、実施例8と実施例9との対比から、領域Cにおける第3熱線の線幅を広くすることにより、領域A〜Cの発熱量を等しく大きくすることができ、結果として実施例1の領域A〜Cの発熱量を均一に大きくすることも可能である。このように、本発明によれば、第1熱線、第2熱線、及び第3熱線の線幅、さらには線間ピッチなどを、本発明で規定する所定の範囲内とすることで、局所的に異常な発熱を抑えながら、所望の領域における発熱量を調節することが可能である。
なお、各実施例における、各領域に存在する複数の熱線についての線幅(W
1、W
2及びW
3)、及び線間ピッチ(H
1、及びH
2)は全て同一の値を採用しているが、同一でなくても、これらの値が本発明の規定する範囲内であれば、本発明の効果は得られる。
【0040】
実施例10
車両のリアガラスに、
図3に示されるような、その両側にバスバー5を有し、そのバスバー5の間に熱線4からなるデフォッガ3、デフォッガ3の上にはテレビ用アンテナ7などのアンテナ類を形成した。また、実施例10においては、実施例1〜9で採用される
図4のパターンを、
図6に示されるパターンにかえる、すなわち
図4の第1熱線#3、第2熱線#3、及び第3熱線#3を設けず、かつ第1熱線#1及び#2、第2熱線#1及び#2、ならびに第3熱線#1及び#2の形状を
図6に示される形状にかえた。
デフォッガ3の中心部分は縦方向に16本の熱線を有しており、
図6に示されるように、上から1本目及び2本目の熱線は各々第1熱線#1(線幅W
1:1.0mm)、第2熱線#1(線幅W
2:1.0mm)であり、上から3本目及び4本目の熱線は各々第1熱線#2(線幅W
1:1.0mm)、第2熱線#2(線幅W
2:1.0mm)である。第1熱線#1及び第2熱戦#1は第3熱線#1(線幅W
3:2.2mm)に接続し、該第3熱線#1はバスバー5に接続され、第1熱線#2及び第2熱戦#2は第3熱線#2(線幅W
3:2.2mm)に接続し、該第3熱線#2はバスバー5に接続されている。
第1熱線と第2熱線との間隔(線間ピッチ)は10mmであり、第3熱線同士の間隔(線間ピッチ)は20mmであり、第3熱線の長さは100mmである。
また、
図3に示される熱線のパターンは、ガラス板の上中央部が上方に凸型に盛り上がり、両側が下方に後退した凸型パターンを有することで、ガラス板の上方部と両側部に非発熱領域が確保でき、アンテナに対する熱線の影響を低減できるので、アンテナの十分な形成可能領域が確保されている。
【0041】
第1熱線、第2熱線、及び第3熱線を上記のような構成とした以外は、実施例1と同様にしてデフォッガ付きガラスを作製し、発熱量を測定した。各領域における発熱量を第2表に示す。
【0042】
実施例11
実施例10と同様にして、実施例1〜9で採用される
図4のパターンを
図7で示されるパターンにかえる、すなわち
図4の第1熱線#3、第2熱線#3、及び第3熱線#3を設けず、かつ第1熱線#1及び#2、第2熱線#1及び#2、ならびに第3熱線#1及び#2の形状を
図7に示される形状にかえた。
デフォッガ3の中心部分は縦方向に16本の熱線を有しており、
図7に示されるように、上から1本目及び2本目の熱線は各々第1熱線#1(線幅W
1:1.0mm)、第2熱線#1(線幅W
2:1.0mm)であり、上から3本目及び4本目の熱線は各々第1熱線#2(線幅W
1:1.0mm)、第2熱線#2(線幅W
2:1.0mm)である。第1熱線#1及び第2熱戦#1は第3熱線#1(線幅W
3:4.4mm)に接続し、該第3熱線#1はバスバー5に接続され、第1熱線#2及び第2熱戦#2は第3熱線#2(線幅W
3:4.4mm)に接続し、該第3熱線#2はバスバー5に接続されている。
第1熱線と第2熱線との間隔(線間ピッチ,H
1)は10mmであり、第3熱線同士の間隔(線間ピッチ,H
2)は20mmであり、第3熱線の長さは100mmである。
また、
図3に示される熱線のパターンは、ガラス板の上中央部が上方に凸型に盛り上がり、両側が下方に後退した凸型パターンを有することで、ガラス板の上方部と両側部に非発熱領域が確保でき、アンテナに対する熱線の影響を低減できるので、アンテナの十分な形成可能領域が確保されている。
【0043】
第1熱線、第2熱線、及び第3熱線を上記のような構成とした以外は、実施例1と同様にしてデフォッガ付きガラスを作製し、発熱量を測定した。各領域における発熱量を第2表に示す。
【0044】
実施例12
実施例10において、領域Aにおける線幅、線幅W
1、線幅W
2、及び線幅W
3を第2表に示されるものとした以外は、実施例10と同様にしてデフォッガ付きガラスを作製し、発熱量を測定した。各領域における発熱量を第2表に示す。
【0045】
実施例13
実施例11において、領域Aにおける線幅、線幅W
1、線幅W
2、及び線幅W
3を第2表に示されるものとした以外は、実施例11と同様にしてデフォッガ付きガラスを作製し、発熱量を測定した。各領域における発熱量を第2表に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
実施例1〜9とは異なるパターンを有する実施例10〜13によっても、本発明のデフォッガ付きガラスは、想定する発熱分布との差が小さく、局所的に異常な発熱が抑えられ、アンテナに対するデフォッガの熱線による熱の影響を低減し、かつ見栄えのよいことが確認された。また、W
1(mm)、W
2(mm)、及び線幅W
3(mm)が所定の関係を満足していれば、局所的な異常な発熱の低減と見栄えとの関係から、様々な熱線パターンを決定することができることも確認された。
【0048】
実施例10と11とは、線間ピッチをかえたものであるが、この場合、局所的な異常な発熱を低減させるためには、第3領域の線幅の影響を考慮することが肝要である。すなわち、局所的な異常な発熱を低減させるためには、第3領域の線幅と第1領域及び第2領域の線幅(W
1及びW
2)ならびに線間ピッチとの関係も重要であり、上記の式(1)の関係はもちろんのこと、さらには式(2)に規定される、線幅(W
1及びW
2)と線間ピッチの比(H
1/H
2)との関係をも同時に考慮することが好ましいことが分かる。
【0049】
実施例12及び13は、各々実施例10及び11において、領域A及びBにおける線幅(W
1及びW
2)を1.0mmから0.3mmと細くした場合である。これらの例より、領域A及びBにおける線幅(W
1及びW
2)をより細くする、例えば0.5mm以下とするような場合には、局所的な異常な発熱を低減させる観点から、式(1)におけるαを2<α<4と、より大きめのαを選択することが好ましいことが分かる。
【0050】
また、各領域における発熱量を同じ程度とするために、実施例12及び13における第1熱線及び第2熱線の厚さは12μmとし、実施例10及び11における第1熱線及び第2熱線の厚さは9μmとし、実施例12及び13よりも薄くしている。そのため、これらの実施例の間では、第1熱線及び第2熱線の断面形状において、
図5に示されるような違いが生じている。第1熱線及び第2熱線の線幅を細くすると、熱線の断面形状の違いによる影響が大きくなりやすい傾向にあるため、このような観点からも、式(1)におけるαをより大きめとすることが好ましいことが分かる。