【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1に係る発電システムの概観の一部を表す概略図である。
図2は、本発明の実施例1に係る発電システムの概略構成を表す概略図である。
図3は、溶解モジュールの概略構成を表す概略図である。
【0023】
図1に示すように、発電システム1は、蒸気タービン建屋2と熱交換器4と海水循環装置6と溶解装置20と散気装置22とを備える。後述するが、発電システム1は、
図1に示す各部に加え、
図2に示す各種機器を備えている。発電システム1は、蒸気タービン建屋2内に熱交換器4が配置されている。熱交換器4には、海との間で海水を循環させる海水循環装置6が接続されている。
【0024】
海水循環装置6は、取水管13とポンプ14と放水管17とを有する。取水管13は、海と熱交換器4とを接続する配管である。取水管13は、取水路8に囲まれた海の中に一方の端部が配置され、他方の端部が熱交換器4に接続されている。ポンプ14は、取水管13に取り付けられており、取水路8の海水を取水管13に吸い上げ、取水管13内に取水路8から熱交換器4に海水を送液する。放水管17は、海と熱交換器4とを接続する配管である。放水管17は、一方の端部が熱交換器4に接続され、他方の端部が海の中に配置されている。溶解装置20は、取水管13を流れる海水に二酸化炭素を溶解させる。散気装置22は、放水管17に設けられ、放水管17を流れる海水から二酸化炭素を放出させる。溶解装置20と散気装置22との詳細な構成については後述する。
【0025】
発電システム1は、プランクトン幼生を含む海水を、ポンプ14によって取水管13に取水する。発電システム1は、溶解装置20により取水管13を流れる海水に二酸化炭素(CO
2)を溶解させ、取水管13を流れる海水のpHを6以下、好ましくは5以上6以下にする。発電システム1は、二酸化炭素を溶解させた海水を熱交換器4に供給し、熱交換器4を通過した海水を放水管17から排出する。また、発電システム1は、放水管17の出口付近において散気装置22によって空気脱気して海水中に注入されたCO
2を除去し、正常海水程度のpHに戻した海水を放水管17から海へ排出する。
【0026】
次に、
図2を用いて、発電システム1の溶解装置20と散気装置22についてより詳細に説明する。まず、発電システム1は、上記の構成に加え、発電ユニット30と煙道38と排ガス処理装置40と煙突42とを備える。
【0027】
発電ユニット30は、燃料を燃焼させて発生させた熱を電力に変換することで、発電を行う機構であり、ボイラ32と蒸気タービン34と熱媒循環ライン36とを有する。ボイラ32は、燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成させる。ここで、燃料としては、例えば、天然ガス(LNG)、石油、石炭、バイオマス、アルコール等の各種燃料を用いることができる。固形燃料は、粉砕して粉体としてボイラ32内に供給することが好ましい。ボイラ32は、内部に熱媒循環ライン36が挿入されており、燃焼ガスで熱媒循環ライン36を流れる熱媒を加熱し、蒸気にする。ボイラ32で生成された燃焼ガスは、熱媒循環ライン36と熱交換した後、排ガスとして煙道38に排出される。蒸気タービン34は、熱媒循環ライン36を流れる蒸気が供給され、供給された蒸気により回転する。蒸気タービン34は、発電機と接続されている。発電機は、蒸気タービン34の回転により発電機が回転され発電する。
【0028】
熱媒循環ライン36は、熱媒を循環させる配管であり、ボイラ32、蒸気タービン34、熱交換器4に接続している。熱媒循環ライン36は、ボイラ32、蒸気タービン34、熱交換器4の順で熱媒が流れ、さらに熱交換器4を通過した熱媒をボイラ32に供給させることで、循環させる。熱媒循環ライン36を流れる熱媒は、ボイラ32で加熱され、蒸気となった後、蒸気タービン34に供給され蒸気タービン34を回転させる。蒸気タービン34を通過した熱媒は、熱交換器4で海水との間で熱交換を行い冷却され、液体となる。つまり熱交換器4は復水器となる。熱交換器4で液体となった熱媒は、再びボイラ32に供給される。
【0029】
煙道38は、一方の端部がボイラ32と接続され、他方の端部が煙突42と接続され、ボイラ32から排出された排ガスを煙突42から排出する。排ガス処理装置40は、煙道38に設けられている。排ガス処理装置40は、煙道38を流れる排ガスに含まれる有害物質、例えば、窒素酸化物、硫黄酸化物、PM(Particulate Matter)等を低減または除去する。排ガス処理装置40は、処理対象の有害物質毎に別々の装置としてもよいし、複数の有害物質を処理できる1つの装置としてもよい。
【0030】
溶解装置20は、排ガスに含まれる二酸化炭素を海水に溶解させる装置である。溶解装置20は、溶解モジュール50と、供給管52と、排出管54と、第1pH(水素イオン濃度)計56と、第2pH計58と、第1流量調整弁60と、第2流量調整弁62と、流量計66、67と、制御部70と、を有する。
【0031】
溶解モジュール50は、煙道38の排ガス処理装置40と煙突42との間に配置されている。溶解モジュール50は、
図3に示すように、吸収塔90と噴霧部92とを有する。吸収塔90は、煙道38と繋がっており、さらに排出管54とも繋がっている。吸収塔90は、鉛直方向に伸びた形状である。吸収塔90は、鉛直下側の面、つまり底面の近傍に排ガスの流れ方向上流側の煙道38が接続されている。また、吸収塔90は、鉛直上側の面、つまり頂面に排ガスの流れ方向下流側の煙道38が接続されている。これにより、吸収塔90に供給される排ガスは、底面近傍から流入し、頂面から排出される。つまり、排ガスは、吸収塔90の鉛直方向下側から上側に流れる。また、吸収塔90は、底面に排出管54が接続されている。噴霧部92は、吸収塔90の鉛直方向上側の端部近傍に挿入され、供給管52と接続されている。噴霧部92は、海水を細かい液滴、例えば微粒化して噴霧するヘッドが少なくとも1つ配置されている。ヘッドは、例えば海水が噴射される孔が複数形成されている。溶解モジュール50の動作については、後述する。
【0032】
供給管52は、一方の端部が取水管13のポンプ14よりも下流側に接続され、他方の端部が溶解モジュール50に接続されている。供給管52は、取水管13を流れている海水の一部が流入し、流入した海水を溶解モジュール50に供給する。排出管54は、一方の端部が溶解モジュール50に接続され、他方の端部が取水管13の供給管52との接続位置よりも海水の流れ方向下流側となる位置に接続されている。排出管54は、溶解モジュール50を通過した海水を取水管13に排出する。本実施例の溶解モジュール50は、供給管52が、吸収塔90の排ガスの流れ方向上流側の部分に接続し、排出管54は、吸収塔90の排ガスの流れ方向下流側の部分に接続している。
【0033】
第1pH(水素イオン濃度)計56は、排出管54に配置されており、溶解モジュール50を通過した海水のpH値を測定する。第2pH計58は、取水管13に配置されており、取水管13を流れる海水のpH値、具体的には、排出管54が接続されている位置よりも下流側を流れる海水のpH値を測定する。つまり、第2pH計58は、取水管13を流れる海水に排出管54を流れる海水が合流した後の海水のpH値を測定する。第1流量調整弁60は、取水管13、具体的には取水管13の供給管52との接続部と、排出管54との接続部と、の間の部分に配置されており、取水管13を流れる海水の流量を調整する。第2流量調整弁62は、排出管54に配置されており、排出管54を流れる海水の流量を調整する。流量計66は、取水管13、具体的には取水管13の供給管52との接続部よりの上流側に配置されており、取水管13を流れる海水の流量を計測する。流量計67は、煙道38、具体的には、排ガス処理装置40と溶解モジュール50との間を流れる排ガスの流量を計測する。第1pH(水素イオン濃度)計56と、第2pH計58と、流量計66、67とは、計測した結果を制御部70に送る。制御部70は、第1pH計56、第2pH計58及び流量計66、67の計測結果に基づいて、第1流量調整弁60及び第2流量調整弁62の開度及び開閉を調整し、溶解モジュール50に供給する海水の流量を調整する。
【0034】
溶解装置20は、取水管13から供給管52に流入した海水が溶解モジュール50に供給される。供給管52から溶解モジュール50に供給された海水は、噴霧部92から吸収塔90内に噴霧される。また、溶解装置20は、煙道38を通過する排ガスが吸収塔90の中を鉛直方向下側から鉛直方向上側の流れで通過する。溶解装置20は、排ガスが吸収塔90を通過する際に、吸収塔90内に噴霧された海水の液滴と接触し、排ガスに含まれる二酸化炭素の一部が海水側に溶解する。吸収塔90に噴霧された液体は、排ガスと接しつつ、落下し、鉛直方向下側の底面に到着する。吸収塔90の底面に到着した海水は、排ガス中の二酸化炭素が溶解した状態となる。吸収塔90の底面に到着した海水は、排出管54から排出される。このように、溶解装置20は、溶解モジュール50を通過して二酸化炭素が溶解された海水を、排出管54に排出し、排出管54から取水管13に排出する。溶解装置20は、以上のようにして吸収塔90に海水を噴霧し、海水の液滴と排ガスとを接触させることで、排ガス中の二酸化炭素を海水に溶解させ、海水のpH値を低くする。
【0035】
また、溶解装置20は、第1pH計56、第2pH計58及び流量計66、67の計測結果に基づいて、制御部70により第1流量調整弁60及び第2流量調整弁62の開度及び開閉を調整し、溶解モジュール50に供給する海水の流量を調整することで、海水に溶解させる二酸化炭素の量を調整する。具体的には、溶解装置20は、溶解装置20を通過した海水、つまり、排出管54との接続部よりも下流側の取水管13を流れる海水のpH値を6以下、具体的にはpH値を5以上6以下になるように海水の流量を調整する。溶解装置20は、取水管13を流れる海水のうち一部の海水に対して二酸化炭素を溶解させ、その海水を取水管13を流れる海水に合流させて、目的のpH値にするため、溶解モジュール50から排出される海水のpH値及び排出管54を流れる海水のpH値は、目的のpH値よりも低い値となる。
【0036】
散気装置22は、放水管17の出口近傍に配置されており、放水管17を流れる海水に空気を吹き込むことで、海水に溶解した二酸化炭素を大気に放出させ、海水のpH値を高くする。散気装置22は、ブロワ80と、流量調整弁81と、散気部82と、pH計83と、調節器84と、を有する。
【0037】
ブロワ80は、空気を送る送風機であり、配管で散気部82と接続している。ブロワ80は、散気部82に空気を送る。流量調整弁81は、ブロワ80と散気部82の間の配管に配置されており、ブロワ80から散気部82に送られる空気の流量を調整する。散気部82は、放水管17の内部に配置されており、放水管17の内部に空気を放出する孔が形成されている。散気部82は、流量調整弁81を通過した空気を孔から放水管17に放出することで、空気を微細気泡にして放水管17の海水に吹き込む。pH計83は、放水管17を流れる海水のpH値、具体的には、散気部82が配置されている位置よりも上流側を流れる海水のpH値を測定する。調節器84は、pH計83の計測結果に基づいて、流量調整弁81の開度を調整し、散気部82から海水に吹き込む空気の量を調整する。
【0038】
散気装置22は、以上のような構成であり、pH計83によって熱交換器4を出て放水管17を流れる海水のpH値を検出し、結果に基づいて調節器84により流量調整弁81の開度の調整、または開閉の切り替えを行い、散気部82から海水に吹き込む空気の量を調整する。散気装置22は、海水のpH値が放流規制範囲(例えばpH値が5.8以上8.6以下)外にあるときは、pH計83の信号が入力される調節器84から信号を送り、流量調整弁81を開けてブロワ80から散気部82に空気を送り、散気部82から放水管17内の海水へ空気を放出する。散気装置22は、空気を微細気泡の状態で海水へ放出することで、海水中に溶解している二酸化炭素ガスを大気中に放散させる。これにより、散気装置22は、放水管17を流れる海水のpH値を高め、放流される海水のpH値が放流規制値の範囲(pH値が5.8以上8.6以下)になるように調整する。
【0039】
発電システム1は、溶解装置20によって、取水管13に取水された海水中に二酸化炭素を注入して、例えばpH値を6以下とすることによって、熱交換器4と海水循環装置6内にpH値の低下した海水を流すことができる。これにより、発電システム1は、海水が流れる経路内に、殻をもつ付着生物等の海洋生物が付着し生長することを抑制することができる。また、発電システム1は、二酸化炭素を溶解させて管路内を流れる海水を適正なpH値の範囲にしているため、殻を有する海生物がこれらの管や熱交換器4に付着し殻を生成することを確実に防止することができると共に、有用なプランクトンなどを無差別に殺傷することを抑制できる。これにより、発電システム1は、海洋生物の付着を抑制しつつ、海に与える影響を少なくすることができる。また、二酸化炭素が多い海水を放出することで、海水中のプランクトンを増加させ、魚等がより生息しやすい環境とすることも可能となる。更に、100%の二酸化炭素が充填されたボンベガスを用意する必要が無いので、ランニングコストも低減することができる。
【0040】
発電システム1は、発電ユニット30のボイラ32から発生する排ガスに含まれる二酸化炭素を海水に溶解させることで、発電システム1で発生する燃焼排ガス中の二酸化炭素を有効に活用することができる。これにより、発電システム1で生じる大気汚染を少なくすることができる。また、発電システム1は、塩素系の殺菌剤を用いる場合に比べ、機器や配管の腐食の発生を抑制でき、海に排出する際の処理も簡単になる。
【0041】
溶解装置20は、噴霧部92で吸収塔90内に海水を噴霧することで、海水と排ガスとを接触させ、海水に二酸化炭素を溶解させている。ここで、溶解装置20は、噴霧部92で海水を細かい液滴に分散させることで、海水と排ガスが接触することで、排ガスに生じる圧力損失を少なくすることができる。また、溶解装置20は、噴霧部92で海水を細かい液滴に分散させることで、海水の表面積を増大させ、二酸化炭素の溶解速度を増加させることができる。このように、溶解装置20は、噴霧部92で吸収塔90内に海水を噴霧することで、大気圧雰囲気で流れている排ガスから海水へ二酸化炭素を移動させることができる。これにより、排ガスや二酸化炭素を送るブロワ等の機構を用いなくても、ボイラ32から排出される際の流れの力で海水に二酸化炭素を溶解させることができる。これにより、装置構成を簡単にすることができ、装置コストも低減することができる。
【0042】
また、溶解装置20は、海水を海水循環装置6のポンプ14の力を利用して流すことができる。これにより、海水を流すための駆動力も新たに追加する必要がないため、装置構成を簡単にすることができ、装置コストも低減することができる。
【0043】
また、溶解装置20は、供給管52と排出管54により、取水管13のバイパスとなる流路を設け、取水管13を流れる海水の一部が溶解モジュール50に供給されるようにすることで、配管系統が大きくなることを抑制することができる。また、必要な流量の海水を溶解モジュール50に供給できるため、溶解モジュール50に大きな負荷がかかることを抑制することができる。また、溶解モジュール50の大型化を抑制することができる。
【0044】
また、溶解装置20は、煙道38に溶解モジュール50を設けることで、排出される全ての排ガスが吸収塔90を通過するようにでき、二酸化炭素を溶解させやすくすることができる。また、排ガスを流す配管を新たに増設することなく、溶解装置20を設置でき、装置構成を簡単にすることができる。
【0045】
また、溶解装置20は、第1流量調整弁60と第2流量調整弁62を設け、計測結果に基づいて制御部70により、溶解モジュール50に供給する海水の流量を調整することで、海水のpH値をより好適な範囲に調整することができる。また、排ガスの流量や、海水の流量に合わせて調整することも可能となる。なお、本実施例では、第1流量調整弁60と第2流量調整弁62とを設けたがいずれか一方の流量調整弁のみでも、同様に流量を調整することができる。
【0046】
また、発電システム1は、溶解装置20に供給する排ガスを、排ガス処理装置40を通過した排ガスとすることで、吸収塔90の通過時に不純物、例えば有害物質が海水に溶解することを抑制することができる。これにより、発電システム1が海に悪影響を与えることを抑制することができる。
【0047】
また、発電システム1は、散気装置22により、放流前の海水に空気を吹き込んで海水中に溶解している二酸化炭素ガスを大気中に放散させてpH値を高めることができる。これにより、発電システム1は、海に放流される海水のpH値を放流規制値の範囲内になるようにフィードバック制御を行うことができ、海水を適切な状態にして放流を行うことができる。
【0048】
また、本実施例の溶解装置20は、噴霧部92によって、海水を鉛直方向下側に向けて噴霧したが、鉛直方向上側に噴霧してもよい。溶解装置20は、海水を鉛直方向上側に噴霧することで、吸収塔90内で浮遊している時間をより長くすることができ、より多くの二酸化炭素を溶解させることができる。また、噴霧部92は、本実施形態のように海水を噴霧するヘッドを水平方向に複数配置することが好ましい。これにより、海水を吸収塔90内の全域に噴霧することができ、より多くの二酸化炭素を溶解させることができる。また、噴霧部92は、海水を噴霧するヘッドを鉛直方向に複数配置することも好ましい。これにより、海水を吸収塔90内の全域に噴霧することができ、より多くの二酸化炭素を溶解させることができる。なお、本実施形態は、吸収塔90を鉛直方向に伸びた形状としたが、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。また、吸収塔90は、排出管54に向かって海水が流れるように底面が傾斜し、排出管54との接続部が鉛直方向の最も下側となる形状とすることが好ましい。また、吸収塔90と煙道38とが接続する位置は本実施例に限定されないが、本実施例のように、鉛直方向下側から上側に排ガスを流すことで、海水の液滴の吸収塔90内での浮遊時間を長くすることができ、より多くの二酸化炭素を溶解させることができる。
【0049】
本実施形態の溶解装置20は、効率よく二酸化炭素を海水に溶解できるため、煙道の大気圧雰囲気の領域を流れる排ガスの全量が流れる吸収塔90に海水循環装置6を流れる海水を噴霧し、吸収塔90内に噴霧した海水に排ガス中の二酸化炭素を溶解させたが、これに限定されない。溶解装置20は、吸収塔90に煙道の大気圧雰囲気の領域を流れる少なくとも一部の排ガスを流し、噴霧部により海水循環装置6を流れる海水の少なくとも一部が噴霧すればよい。
【実施例2】
【0050】
図4は、本発明の実施例2に係る発電システムの概略構成を表す概略図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
実施例2の発電システム101は、煙道38が、溶解モジュール50を通過しない主管138と、溶解モジュール50を通過する分岐管139と、を有する。煙道38は、主管138に対して、分岐管139がバイパスしている。分岐管139には、溶解モジュール50が配置されている。分岐管139に流入した排ガスは、溶解モジュール50を通過した後、主管138を流れる排ガスと合流し、煙突42から外部に排出される。
【0052】
溶解装置120は、排ガスの流量を調整する流量調整弁192、194を有する。流量調整弁192は、主管138に配置されており、主管138を流れる排ガスの流量を調整する。流量調整弁194は、分岐管139に配置されており、分岐管139を流れる排ガスの流量を調整する。
【0053】
発電システム101は、排ガスの一部を溶解モジュール50に供給し、排ガス中の二酸化炭素を海水に溶解させる。発電システム101は、本実施例のように、排ガスの一部のみを溶解装置120の溶解モジュール50に供給してもよい。発電システム101は、流量調整弁192、194を設け、開度や開閉を調整することで、溶解モジュール50に供給する排ガスの流量を調整することができる。また、本実施例では、流量調整弁192、194を設けたがいずれか一方の流量調整弁のみでも、同様に排ガスの流量を調整することができる。
【0054】
本実施例の発電システム1、101は、燃料をボイラで燃焼させ、生成された燃焼ガスと熱交換して加熱された熱媒で蒸気タービン34を回転させて発電を行ったが、発電ユニットはこれに限定されない。発電ユニットは、燃料をガスタービンの燃焼器で燃焼させてもよい。また、発電ユニットは、ガスタービンと蒸気タービン、ガスタービンと燃料電池、または、ガスタービンと蒸気タービンと燃料電池等、発電する設備を複数組み合わせたコンバインドサイクルとしてもよい。また、発電システム1、101は、散気装置22を設けたが、散気装置22を設けなくてもよい。
【0055】
次に、発電システムの海水循環装置6で循環する海水量と、煙道38を流れる排ガスと、溶解モジュール50を通過させる海水量及び煙道ガス量と、の関係の一例を説明する。
【0056】
燃料としては、Cが79.6%、Hが1.5%、Oが1.3%、Sが0.4%、Nが0.4%、灰分が13.3%、水分が3.5%、理論空気量が7.5m
3N/kg、理論燃料ガス量が7.6m
3N/kg、CO
2最大値が20.2%、高位の発熱量が28970kJ/kg、低位の発熱量が28510kJ/kgの無煙炭(石炭)を用いた場合と、高位の発熱量が891000kJ/mol、低位の発熱量が800900kJ/mol、高位の発熱量が55560kJ/kg、低位の発熱量が50030kJ/kg、高位の発熱量が39730kJ/m
3N、低位の発熱量が35840kJ/m
3Nのメタンを主成分とするLNGを用いた場合について、説明する。
【0057】
発電システム1の燃料を燃焼させた場合のエネルギーバランスを、復水器損失(熱交換器の損失、冷却損失)が46%、発電機出力が40%、排ガスが14%とした。貝類の付着防止の海水のpH値を6とし、対応する海水中の二酸化炭素(CO
2)濃度を50mg/L(=50g/t)とする。次に、海水の比熱は、1kcal/(kg℃)=4.19kJ/(kg℃)とする。また、熱交換器4の海水の入口と出口の温度差を5℃とする。
【0058】
発電システム1の出力を出力100万kWとすると、エネルギーは、
860kJ/kWh×100万kW=8.6×10
11J/h=860GJとなる。
【0059】
次に、冷却に必要な海水量を計算する。上述したエネルギーバランスより、発電機出力:熱交換器の損失=40%:46%=860GJ/h:復水器損失熱量となる。したがって、復水器熱量は、860GJ/h×(46%/40%)=989GJ/hとなる。989GJを熱交換する海水流量は、比熱、入口と出口の温度差を考慮すると、989[GJ/h]/4.19[kJ/(kg℃)]/5[℃]/1000[kg/t]=47000[t/h]となる。つまり、出力が100万kWの発電システムに必要な海水流量は47000t/hとなる。
【0060】
次に、二酸化炭素の発生量を計算する。上述したエネルギーバランスより、発電機出力:燃料=40%:100%=860GJ/h:燃料熱量となる。したがって、燃料熱量は、860GJ/h×100%/40%=2150GJ/hとなる。ここで、燃料が石炭の場合、石炭の低位発熱量は28510kJ/kgとなるので、燃料の使用量は、2150[GJ/h]/28510[kJ/kg]/1000[kg/t]=75[t/h]となる。ここで、C+O
2→CO
2となるので、分子量を加味すると、C12に対し、44の二酸化炭素(CO
2)が生成される。ここで、本例の石炭の炭素含有率は、79.6%であるので、CO
2の発生量は、75t/h×0.796×(44/12)=220t/hとなる。ここで、空気を酸素20%、窒素80%として、完全燃焼したとすると、窒素がCO
2の4倍になるのでCO
2濃度は20%となる。
【0061】
これに対して、燃料がLNGの場合、LNGの低位発熱量は47520kJ/kgとなるので、燃料の使用量は、2150[GJ/h]/47520[kJ/kg]/1000[kg/t]=45[t/h]となる。ここで、CH
4+2O
2→CO
2+2H
2Oとなるので、分子量を加味すると、16のCH
4に対し、44の二酸化炭素(CO
2)が生成される。CO
2の発生量は、45t/h×(44/16)=124t/hとなる。ここで、空気を酸素20%、窒素80%として、完全燃焼したとすると、窒素がCO
2の4倍になり、水蒸気がCO
2の2倍なるのでCO
2濃度は14%となる。
【0062】
次に、流量バランスについて計算する。上述したように、海水に溶解させる二酸化炭素濃度は、pH値が6相当の50g/tなので、海水流量を乗ずると海水に溶解させるCO
2の量(溶解CO
2量)が計算できる。具体的には、石炭の場合、2.4t/hとなり、LNGの場合1.3t/hとなる。
【0063】
ここで、溶解モジュール50は、排ガス中CO
2濃度とほぼ飽和になるまでCO
2を溶解できる。ここで、中空糸膜は、CO
2を気泡を発生させずに海水に溶解させることができるため、CO
2が100%の場合とみなすことができる。飽和溶解したCO
2濃度は1.49g/L(1490g/t)である。溶解モジュール50の出口でのCO
2濃度(溶解設備出口CO
2濃度)は、1490g/tに排ガス中CO
2濃度を乗ずると計算できる。したがって、石炭の場合、298g/tとなり、LNGの場合209g/tとなる。
【0064】
以上より、取水管を流れる海水に所定の濃度のCO
2を溶解させるために必要な溶解モジュールへの海水の供給流量(溶解設備海水流量)は、石炭の場合、0.00789t/hとなり、LNGの場合0.01127t/hとなる。
【0065】
次に、ガス蒸気タービンと蒸気タービンとの複合ユニットを発電ユニット30とした場合について検討する。つまり、発電システム1をガス蒸気タービン複合発電所とした場合について検討する。本例では、ガス蒸気タービン複合発電所の燃料を燃焼させた場合のエネルギーバランスを、復水器損失(熱交換器の損失、冷却損失)が31%、発電機出力が49%、排ガスが18%とした。なお、本例は、LNGを燃料とした場合について検討した。
【0066】
ガス蒸気タービン複合発電所の冷却に必要な海水量を計算する。上述したエネルギーバランスより、発電機出力:熱交換器の損失=31%:39%=860GJ/h:復水器損失熱量となる。したがって、復水器熱量は、860GJ/h×(41%/49%)=544GJ/hとなる。544GJを熱交換する海水流量は、比熱、入口と出口の温度差を考慮すると、544[GJ/h]/4.19[kJ/(kg℃)]/5[℃]/1000[kg/t]=26000[t/h]となる。つまり、出力が100万kWの発電システムに必要な海水流量は26000t/hとなる。また、二酸化炭素発生量は、120[t/h]×49[%]/40[%]=98[t/h]となる。
【0067】
以上より、取水管を流れる海水に所定の濃度のCO
2を溶解させるために必要な溶解モジュールへの海水の供給流量(溶解設備海水流量)は、0.0623t/hとなる。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すように、本実施例の発電システムは、いずれの発電方式の場合も、取水管を流れる海水のうち一部を溶解モジュール50に供給することで、海水に必要な量の二酸化炭素を溶解できることがわかる。