(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302204
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】サドル分水栓
(51)【国際特許分類】
F16L 41/02 20060101AFI20180319BHJP
E03B 7/07 20060101ALI20180319BHJP
F16L 41/06 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
F16L41/02
E03B7/07 A
F16L41/06
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-209187(P2013-209187)
(22)【出願日】2013年10月4日
(65)【公開番号】特開2015-72060(P2015-72060A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151025
【氏名又は名称】株式会社タブチ
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】石川 和夫
(72)【発明者】
【氏名】寺田 孝
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−184797(JP,A)
【文献】
実開昭59−132986(JP,U)
【文献】
特開平10−038172(JP,A)
【文献】
実開昭49−090929(JP,U)
【文献】
特開2010−210084(JP,A)
【文献】
特開2013−185642(JP,A)
【文献】
実開昭60−129563(JP,U)
【文献】
実開昭62−004685(JP,U)
【文献】
実開昭52−170721(JP,U)
【文献】
特開2004−347089(JP,A)
【文献】
特開2012−137147(JP,A)
【文献】
実公昭59−042539(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/00 − 41/18
F16L 27/08
E03B 7/00
E03B 7/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サドルと、このサドルに立設した分水栓本体とを備え、
前記分水栓本体は、
内部に雌ネジが形成され上下が開口する筒壁の中途に、水平方向の通孔を形成すると共に、該通孔の上下それぞれにシール部材が装着され、下部を前記サドルに垂直に固定する円筒状の胴部と、
該胴部の前記上下のシール部材の装着位置に回動可能に外嵌する環状部を有すると共に、該環状部から側方に突設する枝管部を有した分岐継手と、
前記胴部に外嵌した前記環状部の上縁に位置して前記胴部に装着され、前記分岐継手が前記胴部から抜け出すのを防止するリング部材と、
前記雌ネジと螺合し、前記胴部の上部開口を介する治具の回転操作により、当該胴部の下部開口を閉塞する位置から前記通孔を通過して前記上部開口側までを昇降する栓体とからなり、
前記分岐継手の環状部は、前記胴部の前記筒壁の外径よりも大径の内径を有する膨腹部を有し、該膨腹部と前記胴部間の空間を介して前記通孔と前記枝管部の内孔を連通し、
前記サドルは配水管に融着する樹脂からなり、このサドルに対して金属製の胴部の下部をインサート成形して前記胴部と前記サドルとが回転不能に一体化されていることを特徴とするサドル分水栓。
【請求項2】
サドルと、このサドルに立設した分水栓本体とを備え、
前記分水栓本体は、
内部に雌ネジが形成され上下が開口する筒壁の中途に、水平方向の通孔を形成すると共に、該通孔の上下それぞれにシール部材が装着され、下部を前記サドルに垂直に固定する円筒状の胴部と、
該胴部の前記上下のシール部材の装着位置に回動可能に外嵌する環状部を有すると共に、該環状部から側方に突設する枝管部を有した分岐継手と、
前記胴部に外嵌した前記環状部の上縁に位置して前記胴部に装着され、前記分岐継手が前記胴部から抜け出すのを防止するリング部材と、
前記雌ネジと螺合し、前記胴部の上部開口を介する治具の回転操作により、当該胴部の下部開口を閉塞する位置から前記通孔を通過して前記上部開口側までを昇降する栓体とからなり、
前記分岐継手の環状部は、前記胴部の前記筒壁の外径よりも大径の内径を有する膨腹部を有し、該膨腹部と前記胴部間の空間を介して前記通孔と前記枝管部の内孔を連通し、
前記サドルは配水管に融着する樹脂からなり、このサドルに対して金属製のブッシュをインサート成形すると共に、このブッシュに胴部の下部を固定して前記胴部と前記サドルとが回転不能に一体化されていることを特徴とするサドル分水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サドルに立設した分水栓本体を地震等による地盤反力から保護するために、分水栓本体の分岐継手を回転自在に構成した耐震型のサドル分水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サドル分水栓はサドルに分水栓本体を立設したものであり、分水栓本体はサドルに垂直に固定される胴部の中途側方から分岐継手が水平に突出するが、分岐継手が胴部と一体となっている場合、地震が発生するとその地盤反力によって分岐継手に無理な力が加わり故障や漏水が生ずることがある。そこで、分水栓本体をサドルに対して回転可能に取り付けた耐震型サドル分水栓が開発された(特許文献1)。しかし、これは分水栓本体の胴部をサドルに対して回転可能に設けた構造であるため、配水管に分水口を穿設する際、単に胴部に穿孔器具を取り付けただけでは胴部が共回りしてしまい、この共回りを防止する専用器具を用いなければ穿孔作業を行うことができなかった。
【0003】
これに対処するために、本願の出願人は特許文献2の耐震型サドル分水栓を開示した。即ち、この耐震型サドル分水栓では、分水栓本体はボール弁を収容する弁箱(胴部)と分岐管を接続する分岐部(分岐継手)とを備え、前記弁箱はサドルに固定される内筒部と、その上部に形成されたキャップ螺合部とからなり、前記分岐部は前記内筒部に回動可能に外嵌される外筒部と、これに接続される継手部とからなり、前記キャップ螺合部には穿孔器具を取り付け可能とした。
【0004】
特許文献2のサドル分水栓によれば、地震の地盤反力が発生したときは分岐部が回動してこれを吸収し、各部の損傷や漏水を防止することができる。また、穿孔器具を取り付ける弁箱はサドルに固定されているため、穿孔時に弁箱(分水栓)が共回りすることがなく、汎用的な穿孔器具が使用可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−205678号公報
【特許文献2】特開2001−304479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2のサドル分水栓は、ボール弁の弁箱回りに分岐部を回動可能に設けるに当たり、弁箱にはボール弁の弁棒の回動を許容する窓が設けられている。また、その反対側にも窓を設け、この窓から水を側方に分水するようにしている。このように、特許文献2のサドル分水栓は、弁箱の筒壁に上記二つの窓を形成するもので、その周方向の大きさによって分岐部の回動角度が決まる。このため、分岐部を例えば150度の範囲で回動させるとすれば、窓の周方向の形成角度も150度にしなければならないが、そうすると筒壁のほとんどが窓で開口することになり、弁箱の強度が著しく低下する。
【0007】
なお、特許文献2のサドル分水栓は、栓体としてボール弁を採用しており、配水管の穿孔時には、ボール弁を所定方向に回動して、内部に形成した通水路を上下垂直に開通し、この通水路内を通ってホルソを下降させることによって穿孔作業を行う。その後、この状態のままホルソを上昇させてホルソを撤去するのであるが、このとき配水管に穿孔した分水口とボール弁の通水路は連通しているため、ホルソの撤去と同時に噴水の如く水が噴出する。したがって、作業員は、ホルソの位置を把握しながら、適当なタイミングでボール弁を閉弁操作することで漏水を軽減していた。このようにサドル分水栓の栓体としてボール弁を使用すると、ホルソの昇降に合わせてボール弁を操作しなければならない手間があった。
【0008】
また、特許文献2のサドル分水栓では、分水量はボール弁の内部通水路の口径に依存し、分水量を大きくしようすれば、通水路の大径化のためにボール弁の外形も大きくする必要があり、これを内蔵する弁箱も当然大きくなる結果、サドル分水栓全体が大型化するという課題があった。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、サドルに立設する胴部の強度を低下させることなく、十分な分水量を確保することができるサドル分水栓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために本発明では、サドルと、このサドルに立設した分水栓本体とを備え、前記分水栓本体は、筒壁の中途に、水平方向の通孔を形成すると共に、該通孔の上下それぞれにOリングが装着され、下部を前記サドルに垂直に固定する円筒状の胴部と、該胴部の前記上下のOリングの装着位置に回動可能に外嵌する環状部を有すると共に、前記通孔と連通して前記環状部から側方に突出する枝管部を有した分岐継手と、前記胴部に外嵌した前記環状部の上縁に位置して前記胴部に装着され、前記分岐継手が前記胴部から抜け出すのを防止するリング部材とから構成する。そして、前記分岐継手の環状部は、前記枝管部を突設する部分の全周が前記胴部の前記筒壁の内径よりも大径の内径を有する膨腹部によって構成し、該膨腹部と前記胴部間の空間を介して前記通孔と前記枝管部を連通するという手段を用いた。
【0011】
上記手段では、分水栓本体の分岐継手が胴部を軸として正逆に360度回動自在である。このため、分岐継手に地盤反力等の外力が作用しても回動によってこれを吸収する。また、分岐継手の環状部には胴部よりも大径の膨腹部を設け、膨腹部と胴部間の全周に空間をとっているため、分岐継手がどの位置にあっても前記空間と連通し、安定した水量で分水することができる。
【0012】
なお、穿孔時には、胴部の内部にホルソを挿入し、これを上下に昇降することで配水管に分水口を穿設することができる。また、栓体についても、胴部の内部を昇降して当該胴部の上下開口を閉塞する部材を設けることが好ましい。特に、該栓体の下面に穿孔刃を設け、該栓体を前記胴部の上部に装着する治具によって昇降するように構成することで、下降動作によって配水管を穿孔し、その後、栓体を上昇させた上位置では胴部の上部開口を閉塞し、分岐継手への通水を行う。再度、栓体を下降させて胴部の下部開口を閉塞すれば、配水管から分水栓本体への通水が止まり、止水栓として機能させることが可能となる。
【0013】
このように、穿孔刃を有する栓体は、ホルソと止水栓を兼備するため、配水管の穿孔後も胴部に残置しておくことができるが、配水管の穿孔後、栓体を穿孔刃を有しない別の栓体に付け替えることが好ましい。穿孔刃付きの栓体を本発明に係る他のサドル分水栓のホルソとして再利用できるからである。
【0014】
本発明のサドル分水栓は、樹脂製のサドルを配水管に加熱により融着する融着式
として、樹脂製のサドルに対して金属製の胴部の下部をインサート成形するか、サドルに対して金属製のブッシュをインサート成形しておき、このブッシュに胴部の下部を固定する
ことで、前記胴部と前記サドルとが回転不能に一体化されていることが好ましい。特に、インサートブッシュ形の場合、胴部を付け替えることで分水量の変更を容易に行うことができる。
そして、何れの場合も、分水栓本体(胴部)とサドルの一体的強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サドルに立設する胴部に対して回動可能に水密に外嵌する分岐継手の環状部に、前記胴部よりも大径の膨腹部を設け、該膨腹部と胴部間の環状空間を水の流路としたので、胴部の通孔は分岐継手の回動範囲に依存することなく形成することができるうえ、分岐継手がどの位置に回動しても前記環状空間によって水の流量を安定させることができた。また、分水栓本体とサドルの一体的強度を高めることができ、より確実に地盤反力による故障や機能不良を防止することができる。さらに、配水管の穿孔時に、胴部に上下に昇降するホルソを内蔵し、これを胴部の上部に装着する治具によって昇降させるようにすれば、当該昇降時の応力は栓体と胴部が接する面で吸収され、サドルや分岐継手に無理な力が全く作用せず、常に正しい設置姿勢を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るサドル分水栓を組み立てた状態の断面図
【
図4】
図3の状態から分岐継手を90度回転させた状態の端面図
【
図7】本発明の第二実施形態に係るサドル分水栓の断面図
【
図8】本発明の第三実施形態に係るサドル分水栓の断面図
【
図9】同、穿孔作業と栓体の付け替え作業を示した工程図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1は本発明の第一実施形態に係るサドル分水栓の組図であって、融着式サドル分水栓を例示したものである。図中、1は樹脂製のサドル、2は円筒状の胴部、3は栓体、4は胴部2から側方に水平に突出する分岐継手であり、胴部2と栓体3と分岐継手4とで分水栓本体を構成し、これをサドル1に立設している。
【0018】
このサドル分水栓の詳細を
図2の分解図にしたがって説明すると、樹脂製のサドル1には予め金属製のブッシュ5がインサート成形されており、このブッシュ5に金属製の胴部2の下部を接着剤を塗布して螺合する。胴部2には予め栓体3を収容しておき、その下部に着座部材6を装着したうえでブッシュ5に固定する。
【0019】
栓体3は、胴部2の内周に形成した雌ねじ2aに螺合する雄ねじ部3aを基部として、その上面に後述する治具を取り付ける六角孔3bを形成すると共に、下面には配水管を穿孔する下向きの穿孔刃3cを設けてなる。
【0020】
分岐継手4は、枝管部4aの端部に胴部2に回動自在に外嵌する環状部4bを設けてなる。これに対して、胴部2の分岐継手4を装着する部分には、その筒壁に枝管部4aと連通する通孔2bを左右貫通して設けている。枝管部4aの内孔と通孔2bの径は一致している。この分岐継手4は、胴部2に装着後、環状部4bの上方において胴部2に装着される抜け止めリング7によって抜け止めされる。抜け止めリング7は胴部2に螺合するねじ式を例示しているが、分岐継手4を抜け止めするものであれば、胴部2と凹凸係合するクリップ式であってもよい。
【0021】
このような順で各部材を組み立てた後、最後に胴部2の上部にキャップ8を取り付けることにより、
図1の組図に示した構成となる。なお、9はOリング、10はリング状のパッキンである。Oリング9はU字パッキンでもよく、胴部2に装着可能なシール部材を広く含む。
【0022】
ここで分岐継手4の環状部4bは、胴部2にOリング9によって水密に回動可能に外嵌する上下の支持筒部4c・4dと、これら上下の支持筒部4c・4dの間にあって、胴部2への外嵌時に通孔2bを包囲する膨腹部4eとを上下一体に構成し、この膨腹部4eに枝管部4aをさらに一体的に突設している。膨腹部4eは、
図3に示すように、その内径が胴部2の通孔2bを形成した筒壁の外径よりも大きい。したがって、分岐継手4の装着時、膨腹部4eと胴部2間には全周にわたって環状の空間Sが形成され、この空間Sを水の流路とする。つまり、配水管から胴部2の内部(周壁に雌ねじ2aを形成した上下の貫通孔)を通って通孔2bから流れ出す水は、空間Sを通って枝管部4aへと流れる。
【0023】
このような構成によれば、胴部2には栓体用に雌ねじ2aが設けられており、その分、通水に必要な内部の有効径が若干小さくなるものの、空間Sによって十分な通水路が確保されるうえ、ボール弁を採用するよりも胴部の通水孔を大きく確保することができる。
【0024】
また、空間Sは常に胴部2の通孔2bと連通するため、
図4に示すように、分岐継手4が
図3の状態から90度回転し、胴部2の通孔2bと枝管部4aの向きが不一致となった場合でも、通孔2bは空間Sを介して枝管部4aと連通する。これは、枝管部4aがどの位置に回転した場合も同じことであり、空間Sによって常に通孔2bと枝管部4aは連通し、しかも、水量の変化は皆無に等しい。
【0025】
図5は、サドル1を配水管Pに融着した後、治具11を用いて穿孔作業の要領を示したものである。治具11は、下端が栓体3の六角孔3bに嵌合する栓棒11aをハンドル11bで回転させる構造であり、これを用いる場合、胴部2の上部に装着したキャップ8を、栓棒11aが挿通するガイドキャップ11cに付け替えて穿孔作業を行う。即ち、治具11の栓棒11aは、ガイドキャップ11cと六角孔3bの2点支持によって、配水管Pに対して垂直を保つ。この状態でハンドル11bを一方向に回すことで、栓体3が胴部2の内部をねじの作用によって下降していき、栓体3の雄ねじ部3aの下面周囲が着座部材6に着座(下側のパッキン10に圧接)したとき、その穿孔刃3cによって配水管Pに対する分水口の穿設が完了する。このとき、治具11の栓棒11aは当該サドル分水栓と機械的な結合関係にないため、穿孔時の応力は栓体3と胴部2のねじ結合部分で吸収することができる。
【0026】
そして、分水口の穿設後、ハンドル11bを逆方向に回せば、栓体3が上昇する。栓体3は、雄ねじ部3aの上面周囲が胴部2の上側のパッキン10に圧接するまで上昇し、配水管Pの分岐口と分岐継手4とが胴部2の通孔2bを介して連通し、一連の作業が終了する。なお、当該作業後、治具11をガイドキャップ11cとともに撤去し、
図6に示したように、胴部2にキャップ8を付け直して、配水分岐の状態とする。この付け直しの際、栓体3は上述のように胴部2の上側パッキン10と圧接して、胴部2の上側開口は閉塞されているため、漏水は一切ない。
【0027】
図6の配水分岐の状態で、地震等により分水栓本体に地盤反力が作用したとしても、これに追従して分岐継手4が回動して当該反力を吸収することができる。
【0028】
また、
図6の状態で使用中、このサドル分水栓を止水する必要が生じたときは、治具11を用いて栓体3を
図5の状態まで下降させることで、栓体3により胴部2の下側開口が閉塞され、サドル分水栓を止水することができる。即ち、穿孔刃3cを有する栓体3を、配水管Pの穿孔後も胴部2に残置しておくことで、止水栓として機能させることができる。
【0029】
なお、上記第一実施形態では、樹脂製サドル1に予め金属製ブッシュ5をインサート成形しておき、このブッシュ5に胴部2を螺合及び接着により固定するようにした。このように構成する利点は、同じブッシュ5に対して内径が異なる胴部2を適用できることにある。即ち、インサートブッシュ5を有するサドル1を共通部材として、これに口径(内径)が異なる数種の分水栓本体を固定することで、分水量の変更に融通性を持たせることができる。
【0030】
これに対して、本発明の第二実施形態としては、
図7に示したように、胴部2の下部2cをブッシュ5と同じ外形に成形しておき、当該下部2cをサドル1にインサート成形することも可能である。これによれば、ブッシュ5を省略できるため、部品点数が少なくなり、組み立ても容易になる。その他は第一実施形態と同じ構成であるが、栓体3及び着座部材6は胴部2のインサート成形後、サドル1の裏側から胴部2の下側開口に装着することになる。
【0031】
ところで、上記二つの実施形態では、栓体3を胴部2の下側開口から収容し、その後、この下側開口に着座部材6を装着するようにしている。一方、胴部2の上側開口は内向きにフランジが一体成形され、該フランジの下面にパッキン10を装着している。このため、栓体3は胴部2の上側開口から取り出すことができず、配水管Pの穿孔後も胴部2に残置して止水栓として使用することは上述の通りである。しかし、穿孔刃3cそのものは一度しか使用していないため、再利用することが経済的にも有意である。
【0032】
そこで、
図8に示した第三実施形態では、胴部12の上下構造を上記二つの実施形態とは逆の構造とし、当初は、この胴部12の上側開口から穿孔刃3c付きの栓体3を収容し、配水管Pの穿孔後、穿孔刃3c付きの栓体3を、穿孔刃3cを有しない別の栓体13に付け替えられるようにした。即ち、この第三実施形態では、胴部12の下側開口に内向きのフランジを形成し、その上面にパッキン10を装着する一方、胴部12の上側開口は栓体3および別の栓体13を出し入れ可能としておき、当該上側開口をパッキン10付きのキャップ8で閉塞するようにした。
【0033】
この第三実施形態において、穿孔刃3cの栓体13による穿孔作業から、別の栓体13の付け替えまでの手順は、
図9に示したように、
図5で説明した治具11のほか、スライド式の止水栓14を用いる。まず、スライド式止水栓14を胴部12に連結し、この止水栓14の上部にガイドキャップ11cと共に治具11を装着しておき、スライド式止水栓14を開栓の状態で栓棒11aを回転して穿孔刃3c付き栓体3を下降させ、配水管Pを穿孔する(
図9(a))。次に、栓棒11aを逆に回転して栓体3を上昇させ、撤去すると共に、スライド式止水栓14を閉栓する(
図9(b))。そして、栓棒11aに別の栓体13を付け替える(
図9(c))。その後、スライド式止水栓14を開栓して、別の栓体13を下降して胴部12に収容し、スライド式止水栓14を治具11とともに撤去した後、キャップ8を装着することによって、
図8の状態とすることができる。
【0034】
この第三実施形態では、穿孔刃3c付きの栓体13を再利用するため、栓体のコストを抑えることができる。また、付け替えた別の栓体13により、
図8のサドル分水栓を止水できることは、上記二つの実施形態と同じである。ただし、栓体を付け替えるかどうかは任意であり、穿孔刃3c付きの栓体13をそのまま継続使用する場合は、上記二つの実施形態と同様の利点を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 サドル
2 胴部
3 栓体
4 分岐継手
4a 枝管部
4b 環状部
4e 膨腹部
5 ブッシュ
6 着座部材
7 抜け止めリング
8 キャップ
9 Oリング
10 パッキン
11 治具