特許第6302213号(P6302213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6302213二輪車で事故結果緩和をする方法、調整装置または制御装置、緊急事態システム、二輪車、およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302213
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】二輪車で事故結果緩和をする方法、調整装置または制御装置、緊急事態システム、二輪車、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B62J 27/00 20060101AFI20180319BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20180319BHJP
   B62L 3/00 20060101ALI20180319BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20180319BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20180319BHJP
   B60W 10/188 20120101ALI20180319BHJP
【FI】
   B62J27/00 B
   B62J99/00 K
   B62J99/00 J
   B62L3/00 Z
   B60T7/12 B
   B60W10/06
   B60W10/188
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-230527(P2013-230527)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2014-94745(P2014-94745A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】10 2012 220 355.9
(32)【優先日】2012年11月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ヴァーグナー
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−538169(JP,A)
【文献】 特開平2−31988(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0035630(US,A1)
【文献】 特表2007−531654(JP,A)
【文献】 特開2010−12903(JP,A)
【文献】 特開2008−310766(JP,A)
【文献】 特開2001−315614(JP,A)
【文献】 特開2010−278943(JP,A)
【文献】 特開平11−129961(JP,A)
【文献】 特開2010−55261(JP,A)
【文献】 特開2011−99383(JP,A)
【文献】 特開昭64−28086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 27/00
B60T 7/12
B60W 10/06 − 10/188
B62J 99/00
B62L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車で事故結果緩和をする方法において、
信号発生器(2)と信号受信器(3)の間の距離またはこれから導き出された量が限界値を超過している場合に、二輪車(1)の集成装置への自動式の走行力学的な介入が行われ、
前記信号発生器(2)及び前記信号受信器(3)のうちの一方は運転者(5)により携行されるかその身体に当てて携行され、他方は二輪車(1)に組み込まれており、
前記自動式の走行力学的な介入は、二輪車(1)のセンサで検出されたデータから不安定な走行状況が生じていると推定され得る場合であって、且つ、前記距離または前記量が前記限界値を超過している場合に行われ
方法。
【請求項2】
前記自動式の走行力学的な介入において、車両ブレーキへの自動的な介入が行われ、二輪車(1)が制動される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両ブレーキへの自動的な介入は二輪車(1)のアンチロックブレーキシステム(ABS)を通じて行われる
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記自動式の走行力学的な介入において、駆動エンジンへの自動的な介入が行われ、エンジン出力が引き下げられる
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記信号発生器(2)は電磁信号を生成し、これが前記信号受信器(3)によって記録される
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記信号発生器(2)は磁場を生成し、これが磁気センサとして製作された前記信号受信器(3)によって記録される
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記自動式の走行力学的な介入は、少なくとも2つの前記信号発生器(2)と前記信号受信器(3)の間の距離がそれぞれ限界値を超過しているときに限り行われる
ことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の方法を実施するための調節装置または制御装置。
【請求項9】
求項に記載の調節装置または制御装置を備えた二輪車のための緊急事態システム。
【請求項10】
請求項に記載の緊急事態システムを有している二輪車。
【請求項11】
求項10に記載の二輪車と、前記信号発生器(2)を有している衣料品(4)、シューズ(6)、またはオートバイヘルメット(7)と、が組み合わされたシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車で事故結果緩和をする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、事故が起こった場合に自動的に緊急呼出が発信される、事故を起こしたオートバイ運転者のための緊急事態システムが記載されている。この緊急事態システムはオートバイにコンビネーションユニットを含んでおり、このコンビネーションユニットは、オートバイ運転者防護服に組み込まれた送信器の信号を受信して、送信器がコンビネーションユニットから離れていった場合に緊急呼出を送信することができる。追加の条件として、オートバイが最低速度で動いていなくてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ実用新案出願公開第20316019U1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、二輪車における事故の結果を緩和することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は本発明によると、請求項1の構成要件によって解決される。従属請求項は、好都合な発展例を記載している。
【0006】
本発明による方法は、オートバイでの運転者の位置が許容されない仕方で変化した場合に、オートバイへの走行力学的な介入を自動的に行うことを可能にする緊急事態システムを搭載した二輪車ないしオートバイを対象とするものである。それにより、事故結果が運転者にとっても第三者にとっても緩和されることを確保することができる。
【0007】
オートバイのための緊急事態システムは信号発生器と信号受信器とを含んでおり、信号発生器は、通常、運転者によって携行されるか、ないしはオートバイ運転者防護服、シューズ、オートバイヘルメットなどに組み込まれる、オートバイとは関わりのない独立したモジュールを形成する。さらに緊急事態システムは、通常オートバイに組み込まれ、オートバイの調節装置ないし制御装置と通信する信号受信器を含んでいる。調節装置ないし制御装置は、緊急事態システムの構成要素であってよく、またはこれとは関わりなく製作されていてもよいが、それは、信号受信器の信号が調節装置ないし制御装置で評価され、ないしは、すでに評価された信号が調節装置ないし制御装置で処理されることが確保されている限りにおいてである。後者の場合、緊急事態システムは、オートバイで携行される通常の調節装置ないし制御装置と通信する、独立した調節装置ないし制御装置を有している。
【0008】
運転者または同乗者とオートバイとの間の距離が、ないしはこの距離から導き出される量が、許容される値範囲から外れた場合には、走行力学的な介入が自動的に行われ、このような介入を通じて特に二輪車速度が低減される。運転者または同乗者とオートバイとの間の許容されないほど広い距離は、特に転倒をしたときに、運転者ないし同乗者がオートバイシートから投げ出されたときに生じる。介入の種類に応じて、介入が行われる二輪車の集成装置は、車両ブレーキまたは駆動エンジンである。車両ブレーキへの介入では車両ブレーキが自動的に作動して、二輪車が制動される。二輪車がアンチロックブレーキシステムABSを装備しているときには、アンチロックブレーキシステムを通じて自動的なブレーキ介入を行うことができる。駆動エンジンへの介入では、エンジン出力が自動的に低減され、ないしはゼロまで引き下げられる。これら両方の方策は、車両速度の低減を引き起こす。これらの方策は単独で実施することができ、それによって車両が制動されるか、もしくはエンジン出力が低減されるかのいずれかとなり、または、これらを組み合わせて実行することができる。
【0009】
緊急事態システムの信号受信器は二輪車に組み込まれており、それに対して信号発生器は、運転者によって携行することができる、ないしは運転者の衣料品、シューズ、ヘルメットなどに組み込まれる、独立したモジュールとして製作されているのが好ましい。しかしながら、信号発生器が二輪車に組み込まれており、信号受信器が、運転者によって携行されるか、または衣料品、シューズ、ヘルメット等に組み込まれる、独立したモジュールとして製作されている実施形態も原則として可能である。ただしこの場合、信号受信器は受信した信号を、ないしは受信した信号をベースとして改変された信号を、緊急事態システムの構成要素である二輪車の評価ユニットへ送り返さなくてはならない。
【0010】
信号発生器および信号受信器のさまざまな種類の実施形態が、原則として考慮の対象となる。たとえば送信器として製作された信号発生器では、信号受信器で受信される電磁信号を生成することができ、信号発生器と信号受信器の間の距離を信号強度から推定することができる。受信される信号が許容される限界値よりも弱くなると、このことは、信号発生器と信号受信器の間の距離が、割り当てられた限界値を超過したことを意味している。この場合、二輪車の集成装置への走行力学的な介入が自動的に実行される。
【0011】
別の実施態様では、信号発生器は、磁気センサとして製作された信号受信器によって記録される磁場を生成する磁石を含んでいる。磁場の変化、特に磁場の減衰を記録することができ、それに基づいて、信号発生器と信号受信器の間の距離を推定することができる。
【0012】
別個に製作されたモジュールとして構成され、信号発生器と信号受信器の間の距離を推定することを可能にする、あらゆる種類の信号発生器および信号受信器が、原則として考慮の対象となる。
【0013】
信号発生器と信号受信器の間の距離だけを基にして、オートバイに対する運転者または同乗者の許容されない適正でない位置が推定されるのが好ましい。あるいはその追加または代替として、距離と相関関係にある量または距離から導き出される量を考慮して、割り当てられた限界値を上回っているか、ないしは下回っているかをチェックして、許容されない運転者位置を判定することも可能である。たとえば信号発生器と信号受信器の間の相対速度を、オートバイの上における運転者位置が正しいか否かの判断のために援用することができる。ここで、運転者または同乗者の許容されない位置ないし正しくない位置とは、事故状況を推定することができる程度まで、運転者ないし同乗者がオートバイシートから離れていることを意味している。
【0014】
信号ユニットは、すなわち信号発生器または信号受信器のいずれかは、オートバイ衣料品のさまざまな位置にあってよく、たとえば衣料品の足領域や腕領域にあってよい。
【0015】
別の好都合な実施形態では、信号受信器により記録される信号をそれぞれ生起する複数の信号発生器が設けられている。このようにして、いっそう高い程度の確実性で事故状況を推定することができる。たとえば衣料品に複数の信号発生器が組み込まれ、たとえば足領域と腕領域にそれぞれ1つの信号発生器が組み込まれ、このことは、信号受信器に対する異なる距離に基づいて、運転者ないし同乗者の位置変化をいっそう正確な仕方で推定できるようにするという可能性を開く。
【0016】
さらに別の好ましい実施形態では、事故結果緩和をする方法は、センサで検出されるその他のデータから、二輪車における不安定な走行状況を推定することができるケースについてのみ実施される。このとき特に、オートバイに存在している追加のセンサ装置のデータ、たとえばアンチロックブレーキシステムABSのセンサ装置のデータを評価することができ、それにより、検出された前後方向および/または横方向の力学的な、ないしは垂直方向の力学的なセンサデータから、走行状況の妥当性検査を行うことができる。たとえば前後方向および横方向の加速度センサを用いて、およびヨーレートセンサを用いて、安定した走行状況を不安定な走行状況から十分な精度で区別することができる。これらの情報は、自動式の走行力学的な介入を実行するための前提条件として、本発明による方法において考慮に入れることができる。
【0017】
その他の利点や好都合な実施形態は、その他の請求項、図面の説明、および図面から明らかとなる。図面は次のものを示している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】運転者とオートバイであり、オートバイは事故結果緩和のための緊急事態システムを装備している。
図2】事故結果緩和をする方法を実施するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すオートバイないし二輪車1は、それ自体公知の仕方で駆動エンジンを有しており、ならびに、アンチロックブレーキシステムABSを備えるブレーキシステムを有している。さらにオートバイ1は調節装置ないし制御装置を備えており、これを通じてオートバイのさまざまな集成装置の機能が調整され、特に駆動エンジンや車両ブレーキないしアンチロックブレーキシステムなどの機能が調整される。これに加えてオートバイ1は、事故結果緩和に貢献する緊急事態システムを搭載している。緊急事態システムは、運転者5の防護服4に組み込まれた信号発生器2と、オートバイ1に組み込まれ、オートバイの調節装置ないし制御装置と通信する信号受信器3とを含んでいる。信号発生器2と信号受信器3を通じて、オートバイ1の上の運転者5の位置を監視することができる。
【0020】
特に、たとえばオートバイ1からの運転者5の転倒のような、オートバイ1の上での運転者5の許容されない位置変化を検知することが可能である。そのために、信号発生器2と信号受信器3の間の相対位置が緊急事態システムを通じて継続的にチェックされ、割り当てられた限界値を超過していないかどうか照会される。このとき信号発生器2が信号を発信し、これが信号受信器3で受信されて、緊急事態システムの構成要素である調節装置ないし制御装置で評価されるか、または、オートバイ側の調節装置ないし制御装置で評価される。信号発生器では、たとえば電磁信号または磁場が生成され、この信号が信号受信器で記録される。磁場の場合、信号受信器はたとえばホールセンサのような磁気センサを有している。
【0021】
信号発生器2は運転者5の防護服4に組み込まれているのが好ましく、このときたとえば足領域や腕領域など、防護服のさまざまな位置での信号発生器2の配置が考慮の対象となる。さらに、運転者のシューズ6やオートバイヘルメット7に信号発生器を装備することも可能である。たとえば防護服のポケットの中で運転者により携行される、独立したモジュールとしての信号発生器も考慮の対象となる。
【0022】
さらに、信号発生器が1つしかない実施形態が可能なだけでなく、複数の信号発生器を備える実施形態も可能である。複数の信号発生器が緊急事態システムに属している場合、信号受信器との距離について、各々の信号発生器に独自の限界値が割り当てられる。それぞれの限界値を上回ると、緊急事態であることを推定することができる。このとき、複数の信号発生器の信号を組み合わせ、ないしは、定義された規則に従って評価することが可能であり、これはたとえば、緊急事態を推定することができるためには、複数の信号発生器がそれぞれ割り当てられた限界値を超過しなければならないように行われる。
【0023】
さらに、事故状況の妥当性検査をするために、アンチロックブレーキシステムの構成要素である、オートバイ独自のセンサ装置のデータを追加的に考慮することができる。このときアンチロックブレーキシステムのセンサで検出されたデータから、たとえば加速度情報および/またはヨーレート情報から、安定ないし不安定な走行状況が推定される。不安定な走行状況が生じており、それに加えて緊急事態システムの信号発生器と信号受信器の間の距離が割り当てられた限界値を超過しているときにのみ、オートバイの走行力学への自動的な介入が行われる。
【0024】
自動的に実行されるべき走行力学的な介入としては、二輪車を制動するための車両ブレーキへの介入だけでなく、エンジン出力を低減するための駆動エンジンへの自動的な介入も考慮の対象となる。これらの方策を別々に、または組み合わせて実施することができる。
【0025】
図2のフローチャートは、オートバイで事故結果緩和を実行するための個々の方法ステップを含む方法手順を示している。第1の方法ステップ10では、まず信号発生器を通じて信号が発信され、この信号がオートバイの信号受信器によって記録される。次の方法ステップ11では、信号発生器と信号受信器の間の距離を表す信号が、割り当てられた限界値を超過しているかどうかチェックされる。それが該当しないとき、ノーの分岐(「N」)に従って再び第1の方法ステップ10に戻り、周期的な間隔であらためて信号が生成される。方法ステップ11での照会で、信号発生器と信号受信器の間の距離が、割り当てられた限界値を超過していることが判明すると、イエスの分岐(「Y」)に従って次の方法ステップ12へと進む。
【0026】
方法ステップ12では、オートバイが不安定な走行状況にあるかどうかが追加的に照会される。この目的のために、センサ装置のデータ、たとえばアンチロックブレーキシステムのセンサ装置のデータを援用することができる。たとえば、1つまたは複数の加速度値が、前後方向または横方向またはヨーレートに関して、許容される値範囲の外にあるかどうかがチェックされる。それが該当していなければ、ノーの分岐に従って再び第1の方法ステップ10に戻り、本方法が最初から実施される。それに対して不安定な走行状況が生じているときは、イエスの分岐に従って次の方法ステップ13へ進み、事故結果を緩和するために、ここで走行力学的な介入が行われる。走行力学的な介入は、特に、アンチロックブレーキシステムを通じて実行されるブレーキ介入である。このとき車両は自動的に制動される。その追加または代替として、エンジンマネジメントへの介入を通じて駆動エンジンの駆動出力を引き下げることができる。
【0027】
方法全体が、周期的な間隔をおいて実施される。
【符号の説明】
【0028】
1 二輪車
2 信号発生器
3 信号受信器
4 衣料品
5 運転者
6 シューズ
7 オートバイヘルメット
図1
図2