特許第6302246号(P6302246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6302246多孔質原料をソフト糖衣した良好な食感のソフト糖衣食品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302246
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】多孔質原料をソフト糖衣した良好な食感のソフト糖衣食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20180319BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   A23G3/34 109
   A23G3/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-272690(P2013-272690)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-126702(P2015-126702A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000223090
【氏名又は名称】三菱商事フードテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(74)【代理人】
【識別番号】100141575
【弁理士】
【氏名又は名称】慶田 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】森川 瑤子
(72)【発明者】
【氏名】里見 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】小関 宏明
(72)【発明者】
【氏名】河口 祐理
【審査官】 松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−127785(JP,A)
【文献】 特開2012−217362(JP,A)
【文献】 特開2014−039506(JP,A)
【文献】 特開2014−083012(JP,A)
【文献】 特開2014−200233(JP,A)
【文献】 特開2000−166477(JP,A)
【文献】 特開2007−222157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00〜17/00
A23G 1/00〜 9/30
A23L 7/117〜7/25;9/00〜9/20
A23L 19/00〜19/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質原料を、糖質と常温でペースト状または固体状の可塑性のある油脂とを含む糖衣液の液掛けと、平均粒径が10〜80μmの微粉末と平均粒径が100〜300μmの粗粉末との粉掛けとによるソフト糖衣層で被覆する、ソフト糖衣食品。
【請求項2】
前記糖衣液に含まれる油脂と糖質が、固形比で1:3〜3:1であることを特徴とする、請求項1に記載のソフト糖衣食品。
【請求項3】
前記多孔質原料が、押出パフまたはフライドスナックであることを特徴とする、請求項1または2に記載のソフト糖衣食品。
【請求項4】
多孔質原料に、糖質と常温でペースト状または固体状の可塑性のある油脂とを含む糖衣液を液掛する液掛工程に次いで、平均粒径が100〜300μmの粗粉末と平均粒径が10〜80μmの微粉末のいずれか又は両方を掛け、付着させ、乾燥して固着させる粉掛け工程とを、交互に1回以上くりかえし、1回目の前記粉掛け工程では少なくとも前記粗粉末を掛け、2回目以降の前記粉掛け工程では前記微粉末のみを掛けることを特徴とする、ソフト糖衣食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質原料をソフト糖衣することで得られる食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖衣食品は一般に、センターとしてチユーインガムやキャンディの表面に、ハード糖衣やソフト糖衣を施した食品であり、糖衣層とセンターのテクスチャーの変化を楽しめるものである。
【0003】
ここで、ソフト糖衣とは、結晶性をもたない糖質の液(シロップ)を使用し、センターにシロップを噴霧する液掛け工程の後、糖質の粉末を散布する粉掛け工程を有し、これらの工程を糖衣パンの中で1回〜複数回行なうことで形成された糖衣層で、糖衣層は、液掛けのシロップが糊の役目を果たし、粉掛けした粉末同士が固着・積層されている状態になっている。
【0004】
一般にセンターとして用いるグミキャンディやソフトキャンディ、ハードキャンディ、チューイングガムといった食品は、表面に凹凸が少なく、また、食品自体の吸湿が少ないため、糖衣パンの中で回転しながら、掛けられたシロップがセンター表面に広がり、その上に粉掛け工程で散布された粉末が均一に積み重なって糖衣層が形成されていくため、平滑で均一な糖衣が施される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対し、センターとして、多孔質な食品を用いると、食品表面の凹凸や吸湿性の高さにより、液掛けされたシロップが均一に行き渡らず、粉掛け工程の粉末も偏在して積層され、結果的に平滑で均一な糖衣層が形成されないという問題があった。
【0006】
また、多孔質な食品を用いると、シロップに含まれる水分が当該原料に染み込んでしまい、回転するパンの中で当該原料が潰れて変形を起こしたり、サクサクとした食感を起こすための多孔質構造が壊れ、好ましくない食感に変化してしまったりする問題もあった。
【0007】
過去に開示されている糖衣の方法では、主にハード糖衣の方法で、糖衣層の下に被覆層などを設け糖衣液が染み込むことを防止するものや、水分の高いセンターからの糖衣層への水分移行を防ぐために、油脂層や糖衣層など異なる配合の層を何層にも重ねながら糖衣する方法(特許文献1〜3)が開示されているが、これらの糖衣では液掛けする液を何種類も調整しなくてはいけないという不具合があった。また、シリアルなどの多孔質で不定形食品の表面に局所的にコーティングするために加圧過熱したシロップを用いる方法(特許文献4)が開示されているが、糖衣液の加圧過熱処理や、糖衣パンを高温で保つなど通常の糖衣食品の製法とは異なる特殊な条件が必要とされていたし、いずれの方法でも、何層にも糖衣層を重ねなくてはいけないなど、煩雑なものであった。
【0008】
さらに、特開平11−127785号公報(特許文献5)では、粗粒の粉末状糖アルコールを用いたソフト掛け法を提案している。しかしながら、当該方法では、製造工程におけるロス率が高くなるという不都合があった。また当該方法では、本発明の対象である多孔質原料、その中でも特にパフやスナックのように軽くて表面積の大きい原料の場合は、糖衣パンへの付着、原料同士の付着のため、作業性が悪く、クランチ性は著しく劣るものであった。
【0009】
即ち、従来の方法では得られる糖衣食品の品質の問題や、製造工程の煩雑さについての問題、さらには製造工程におけるロス率や作業性の問題から、多孔質原料にパリパリとした食感を有する平滑で均一な糖衣層を施した食品を簡便に得ることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、これらの問題を改善するために、鋭意検討した結果、糖衣層を形成する液掛けのためのシロップに油脂を含有させ、さらに、粒径の小さい結晶と大きい結晶を粉がけ時に併用して、ソフト糖衣を行うことで、これらの問題を解決した良好な食感のソフト糖衣食品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、第一に、多孔質原料を、糖質と油脂とを含む糖衣液の液掛けと、微粉末と粗粉末との粉掛けとによるソフト糖衣層で被覆する、良好な食感のソフト糖衣食品である。
第二に、前記糖衣液に含まれる油脂と糖質が、固形比で1:3〜3:1であることを特徴とする、上記第一に記載のソフト糖衣食品である。
第三に、前記多孔質原料が、押出パフまたはフライドスナックであることを特徴とする、上記第一または第二に記載のソフト糖衣食品である。
第四に、多孔質原料に、糖質と油脂とを含む糖衣液を液掛する液掛工程に次いで、粗粉末と微粉末を併用して掛け、付着させ、乾燥して固着させる粉掛け工程とを、交互に1回以上くりかえす、ソフト糖衣食品の製造方法である。
【0012】
本発明における多孔質原料である糖衣食品のセンターは、多孔質な表面を有する食品であり、その形状は、球形や柱形、コーン形でも良いし、それらが曲がったり組み合わさったりしたような不定形でも良い。具体的には、穀粉又は澱粉質生地を押出成型したパフや、油ちょうしたフライドスナック、焼成チップスやシリアル、焼菓子製品、低密度のビスケットさらには凍結乾燥させた果実や野菜などの食品が好適に例示される。特に好ましいセンターは押出パフまたはフライドスナックである。
【0013】
本発明における糖衣食品の良好な食感とは、多孔質原料の表面が均一にムラなく糖衣され、食した際に糖衣層のパリパリとしたクランチ性を有し、かつ、センターとした多孔質原料のサクサクとした食感が維持されている状態であることを意味する。
【0014】
また、本発明における糖質とは、砂糖やぶどう糖、麦芽糖、トレハロース、イソマルツロースなどの糖類、およびソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、還元イソマルツロース、還元澱粉糖化物などの糖アルコール類のいずれでも良い。なお、糖質は、溶液状にして、糖衣の液掛け工程で用いるシロップにも使用できるし、粉掛け工程で用いられる粉末にも使用でき、これらの糖質は同じであっても、異なるものの組み合わせであってもよいが、粉掛け工程で用いる糖質は、糖アルコールであると安定性の面から好ましく、マルチトールであると、程よい甘さで味質が良好であることから特に好ましい。
【0015】
また、本発明における油脂は、食品に対して用いることができるものであれば特に限定されないが、例えば、コーン油、パーム油、菜種油、カカオ脂、アマニ油、大豆油、綿実油、落花生油、ヒマワリ油などの植物油脂類や、牛脂、豚脂、羊脂、山羊脂、馬脂、乳脂などの動物油脂類、およびこれらの食用油脂を水素添加して得られるものなどを挙げることができ、乳化剤などの添加物を含むものであってもよい。本発明に係る良好な食感を有する糖衣層を得るには、常温でペースト状または固体状の可塑性のある油脂であると、糖衣層としてのべたつきが少なく、パリパリとした食感を得ることが出来るので好ましい。また、糖質と混合した際に、より均一に混合できる点で、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングのような油脂が特に好適である。
【0016】
油脂を、糖衣層を形成するための液掛けのシロップに含有させる際には、室温でホモジナイザーなどを使用して行なってもいいし、加熱して混合攪拌しても良い。
【0017】
シロップに油脂を含有させると、センターとした多孔質原料へ油脂がしみこみ、シロップが含有する水分と競合し、水分しみこみによる多孔質原料の形状のつぶれや食感の変化を抑え、また、液掛け液全体の水分が相対的に減少することから、粉掛け工程で粉末を掛けた後、粉末が固着するまでの乾燥時間においても、従来の方法よりも早く乾燥し、液掛け工程・粉掛け工程の繰返し時間を短縮することが出来る。
【0018】
なお、油脂および糖質の量は、糖衣液に含まれる油脂量と、糖質の固体量の重量部比で1:3〜3:1であることが好ましい。油脂の量がこの比率より小さいと、糖衣液に含まれる水分がセンターとする多孔質原料へしみこみやすくなり、多孔質原料の変形や食感変化を起こし、この比率より多いと、糖衣層が上手く形成されない。さらには、よりパリパリとした良好な食感を出すには、糖衣液に含まれる油脂量と、糖質の固体量の重量部比で1:2〜2:1であることがより好ましい。
【0019】
次に、本発明において多孔質原料にソフト糖衣層を施す際に、最も問題となるのが、センターとなる多孔質原料の形状である。従来のソフト糖衣法では、粉がけ工程に用いる粉末は微粉末を用いるが、多孔質原料をセンターとすると、表面の凹凸の凸部分(形状が不定形であれば形状としての凸部分も含む)、つまり孔以外の部分に粉末が多く付着し、孔部分を覆うように付着されず、表面全体に均一に粉末が付着しないため、糖衣層にムラが出来やすくなる。
【0020】
そこで本発明では、液掛けの液に油脂を混合することによって、多孔質原料表面の全体に液が付着するようになり、そうすることによって、粉掛けの粉が全体に付着しやすくなっている。
【0021】
さらに、粉掛け工程で用いる糖質の粉末を、粗粉末と微粉末とを併用して用いれば、孔の部分を大きい粒子でふさぐことができ、表面に凹凸のある多孔質原料をセンターにした際も平滑な糖衣層となることを見出した。ここで粗粉末と微粉末の併用は、糖衣の全工程を通して、微粉末と粗粉末を使用すればよく、1度の粉掛けで微粉末と粗粉末を混合しなければいけない、ということではない。
【0022】
それぞれの粒子の大きさやその併用割合は、センターとする多孔質原料の表面凹凸の程度にもよるが、本発明においては、粗粉末とは平均粒径が100μm以上である粉末であり、微粉末とは平均粒径が80μm以下である粉末である。その中でも、粗粉末の平均粒径が100〜300μm、微粉末の平均粒径が10〜80μmである粉末を併用して用いることが好適であり、さらに好適には、粗粉末の平均粒径が140〜220μm、微粉末の平均粒径が20〜50μmである粉末を併用して用いると良い。なお、粉掛け工程の最初に粗粉末を掛けると多孔質原料の孔の部分を効率的に大きい粒子でふさぐことができ、好ましい。また、平均粒径の測定は正確に測定するために、レーザー回折式の粒度分布計で溶媒中に分散させながら測定する。

【0023】
なお、本発明では、粗粉末と微粉末の併用時の粗粉末の量は、粉掛けの粉全体の10重量%以上で効果的に多孔質原料の孔の部分をふさぐことができることから好ましい。ただし、本発明では、粗粉末のほうが微粉末よりも多くなると、食した際に口中でざらつきが多くなり食感を害するので、粉掛けの粉全体中の粗粉末の量は、50重量%以下とするのが好適である。
【0024】
本発明により得られるソフト糖衣食品は、液掛けによって掛けられたシロップの上に、粉掛けにより積層された粉末で糖衣層が形成される。したがって、所望の厚さの糖衣層になるまで、液掛け工程と粉掛け工程を繰り返し行い、任意に糖衣層の厚みを調整できる。さらには、得られたソフト糖衣食品の表面処理として艶出し操作を初めとする2次加工を任意に行うことも可能である。また、本発明の効果を阻害しない程度に、液掛けのシロップに糖類のシロップおよび油脂以外の香料や矯味剤、色素などを添加してもよい。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明により得られたソフト糖衣食品は、不定形な形状であっても表面に均一にムラなくソフト糖衣が施されており、パリパリとした糖衣層とサクサクとした多孔質原料の食感を併せ持つ、良好な食感を有することから、糖衣層とセンターの多孔質原料の食感の違いを楽しめる上に、製造上も通常の糖衣と同じ様に操作しつつ、短時間で糖衣食品を得ることが出来るという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、実施例に基づいて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の例に制限されるものではない。
【0027】
本実施例及び比較例において、液掛けするシロップに油脂を混合する際にはホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を、糖衣層の作成には小型糖衣機(菊水製作所製、16DS型)を、糖衣工程後の乾燥には棚段式乾燥機(高杉製作所社製、A−3型強制循環式乾燥器)をそれぞれ使用した。また、粉末の平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布計(日機装株式会社製、マイクロトラックMT3000)を用いて溶媒中で分散させた状態で測定を行なった。
【実施例1】
【0028】
センターとなる多孔質原料として、市販のキャラメルコーン(東ハト社製)を使用した。液掛けするシロップとして、還元澱粉糖化物(三菱商事フードテック社製、PO−30、固形量70%)と加熱溶解したファットスプレッド(株式会社明治製、明治コーンソフト、油脂量64%)を、それぞれの重量で1:1の比率で用意し、ホモミキサーによって油脂が分散するように混合し液掛け液とした。還元澱粉糖化物のシロップとファットスプレッドの糖質固体量と油脂量の重量部比は、52:48となった。また、粉掛け用の粉末として平均粒径が703μmのキシリトール粗粉末と、平均粒径が60μmのキシリトール微粉末を用意した。
【0029】
小型糖衣機に多孔質原料を入れ、まず液掛け用の油脂を混合したシロップをスプレー状に噴霧し、その直後にキシリトール粗粉末を散布し、その後さらにキシリトール微粉末を散布した。粉末散布の際は、用意した粉末を一度に散布するのではなく、数回に分けて行ない、粉掛けの後には送風して粉末が固着するように乾燥させて行なうソフト糖衣層製造の常法で行なった。次に、再度液掛けを行い、続けてキシリトール微粉末を散布し、その後、ソフト糖衣層が乾燥するまで送風乾燥を行ない、糖衣工程を終了した。糖衣工程は短時間で終了し、簡便であった。その後、棚段式乾燥機へ移動してさらに40℃で乾燥を行った。ロス率は17.4%で常法のソフト糖衣・ハード糖衣と比較してロス率が低く良好であり、平滑な糖衣を施されたソフト糖衣食品を得ることができた。なお、粗粉末は粉掛けの粉全体の20%であった。
【実施例2】
【0030】
センターとなる多孔質原料として、市販のキャラメルコーン(東ハト社製)を使用した。液掛けするシロップとして、還元澱粉糖化物(PO−30)と加熱溶解したファットスプレッド(明治コーンソフト)を、それぞれの重量で1:1の比率で用意し、ホモミキサーによって油脂が分散するように混合し液掛け液とした。還元澱粉糖化物のシロップとファットスプレッドの糖質固体量と油脂量の重量部比は、52:48となった。また、粉掛け用の粉末としてグラニュー糖MGF(新東日本製糖社製)を粉砕して平均粒径を189.9μmとした粗粉末と、平均粒径が37.0μmの粉糖(株式会社徳倉商会社製)を微粉末として用意した。
【0031】
糖衣操作の方法は、粉末を粉砕したグラニュー糖および粉糖に変更した以外は実施例1と同様とし、小型糖衣機に多孔質原料を入れ、液掛け用の油脂を混合したシロップの噴霧および粉末散布を2回繰り返し行なって糖衣工程を終了した。糖衣工程は短時間で終了し、簡便であった。その他の方法は実施例1と同様であったが、ロス率は13.4%で常法のソフト糖衣・ハード糖衣と比較してロス率が低く良好であり、得られた糖衣食品は平滑な糖衣を施されていた。なお、粉砕したグラニュー糖(粗粉末)は、粉掛けの粉全体の28%であった。
【実施例3】
【0032】
センターとなる多孔質原料として、市販のキャラメルコーン(東ハト社製)を使用した。液掛けするシロップとして、ソルビトールシロップ(三菱商事フードテック社製、ソルビットD70、固形量70%)と加熱溶解したファットスプレッド(明治コーンソフト)を、それぞれの重量で1:1の比率で用意し、ホモミキサーによって油脂が分散するように混合し液掛け液とした。ソルビトールシロップとファットスプレッドの糖質固体量と油脂量の重量部比は、52:48となった。さらに、粉掛け用の粉末として平均粒径が157μmのマルチトール粗粉末(三菱商事フードテック社製、レシス)と、平均粒径が21.3μmのマルチトール微粉末(三菱商事フードテック社製、レシス微粉)を用意した。以降もマルチトール微粉末とマルチトール粗粉末を使用する場合は同様である。
【0033】
糖衣操作の方法は、粉末を粉砕したマルチトール粗粉末およびマルチトール微粉末に変更した以外は実施例1と同様とし、小型糖衣機に多孔質原料を入れ、液掛け用の油脂を混合したシロップの噴霧および粉末散布を2回繰り返し行なって糖衣工程を終了した。糖衣工程は短時間で終了し、簡便であった。その他の方法は実施例1と同様であったが、ロス率は4.3%であり、非常に良好であった。さらに、得られた糖衣食品は平滑な糖衣を施されていた。なお、粗粉末は粉掛けの粉全体の26%であった。
【実施例4】
【0034】
センターとなる多孔質原料として、コーン粉を用い、エクストルーダーを用いて直接膨化するダイレクトパフ製法によって得られた押出パフを使用した。液掛けするシロップとして、分岐糖を含む還元澱粉糖化物(三菱商事フードテック社製、還元澱粉糖化物PO−300、固形量70%)と加熱溶解したファットスプレッド(セブンイレブン社製、かろやかソフト、油脂量65%)を、それぞれの重量で1:1の比率で用意し、ホモミキサーによって油脂が分散するように混合し液掛け液とした。分岐糖を含む還元澱粉糖化物のシロップとファットスプレッドの糖質固体量と油脂量の重量部比は、52:48となった。また、色味付けのため、パプリカ色素とクチナシ色素(いずれもヤエガキ醗酵技研株式会社製)を液掛け液の重量100重量部に対し、0.3重量部、添加した。また、粉掛け用の粉末として実施例3と同様のマルチトール粗粉末と、マルチトール微粉末を用意し、風味付けのためにマルチトール微粉末にクエン酸(丸善薬品産株式会社)を混合した。クエン酸の重量は、マルチトール粉末の総重量と比較して、クエン酸:マルチトール粉末=3:97となるように配合した。
【0035】
糖衣操作の方法は、マルチトール微粉末を、クエン酸を混合したマルチトール微粉末に変更した以外は実施例3と同様とし、小型糖衣機に多孔質原料を入れ、液掛け用の油脂を混合したシロップの噴霧および粉末散布を2回繰り返し行なって糖衣工程を終了した。糖衣工程は短時間で終了し、簡便であった。その他の方法は実施例1と同様であったが、ロス率は9.8%であり、良好であった。さらに、得られた糖衣食品は平滑な糖衣を施されていた。なお、粗粉末は粉掛けの粉全体の37%であった。
【実施例5】
【0036】
センターとなる多孔質原料として、コーン粉を用い、エクストルーダーを用いて直接膨化するダイレクトパフ製法によって得られた押出パフを使用した。液掛けするシロップとして、還元澱粉糖化物(PO−30)と加熱溶解したファットスプレッド(かろやかソフト)を、それぞれの重量で1:1の比率で用意し、ホモミキサーによって油脂が分散するように混合し液掛け液とした。還元澱粉糖化物のシロップとファットスプレッドの糖質固体量と油脂量の重量部比は、52:48となった。また、風味付けのためレモンフレーバー(稲畑香料株式会社製、レモンオイルFTB−8811)を液掛け液の重量100重量部に対し、1重量部、添加した。粉掛け用の粉末として実施例3と同様のマルチトール粗粉末と、マルチトール微粉末を用意し、風味付けのためにマルチトール微粉末にクエン酸、ビタミンB2(三菱化学フーズ社製、リボフラビンF)、風味改良剤(三菱商事フードテック社製、MS−P1)をマルチトール微粉末に混合した。添加した量は、それぞれ、マルチトール粉末の総量と比較して、クエン酸:ビタミンB2:風味改良剤:マルチトール粉末総量=3:0.03:1:95.97となるように配合した。
【0037】
糖衣操作の方法は、マルチトール微粉末を、クエン酸や風味剤を混合したマルチトール微粉末に変更した以外は実施例3と同様とし、小型糖衣機に多孔質原料を入れ、液掛け用の油脂を混合したシロップの噴霧および粉末散布を2回繰り返し行なって糖衣工程を終了した。糖衣工程は短時間で終了し、簡便であった。ロス率は4.3%であり、非常に良好であった。その他の方法は実施例1と同様であり、平滑な糖衣を施されたソフト糖衣食品を得た。なお、粗粉末は粉掛けの粉全体の39%であった。
【実施例6】
【0038】
センターとなる多孔質原料として、市販のキャラメルコーン(東ハト社製)を使用した。液掛けするシロップとして、還元澱粉糖化物(三菱商事フードテック社製、還元澱粉糖化物PO−20、固形量70%)と加熱溶解したファットスプレッド(明治コーンソフト)を、それぞれの重量で1:1の比率で用意し、ホモミキサーによって油脂が分散するように混合し液掛け液とした。還元澱粉糖化物のシロップとファットスプレッドの糖質固体量と油脂量の重量部比は、52:48となった。また、粉掛け用の粉末として実施例3と同様のマルチトール粗粉末と、マルチトール微粉末を用意した。
【0039】
糖衣操作の方法は実施例3と同様とし、小型糖衣機に多孔質原料を入れ、液掛け用の油脂を混合したシロップの噴霧および粉末散布を2回繰り返し行なって糖衣工程を終了した。糖衣工程は短時間で終了し、簡便であった。ロス率は8.8%であり、良好であった。その他の方法は実施例1と同様であり、わずかにムラはあるが平滑な糖衣を施されたソフト糖衣食品を得た。なお、粗粉末は粉掛けの粉全体の28%であった。
【実施例7】
【0040】
センターとなる多孔質原料として、市販のキャラメルコーン(東ハト社製)を使用した。液掛けするシロップとして、還元澱粉糖化物(PO−30)と加熱溶解したファットスプレッド(明治コーンソフト)を、それぞれの重量で3:7の比率で用意し、ホモミキサーによって油脂が分散するように混合し液掛け液とした。還元澱粉糖化物のシロップとファットスプレッドの糖質固体量と油脂量の重量部比は、32:68となった。また、粉掛け用の粉末として実施例3と同様のマルチトール粗粉末と、マルチトール微粉末を用意した。
【0041】
糖衣操作の方法は実施例3と同様とし、小型糖衣機に多孔質原料を入れ、液掛け用の油脂を混合したシロップの噴霧および粉末散布を2回繰り返し行なって糖衣工程を終了した。糖衣工程は短時間で終了し、簡便であった。ロス率は7.8%であり、良好であった。その他の方法は実施例1と同様であり、糖の固形分が油脂の量より少ない場合でも、平滑な糖衣を施されたソフト糖衣食品が得られた。なお、粗粉末は粉掛けの粉全体の30%であった。
【実施例8】
【0042】
センターとなる多孔質原料として、市販のキャラメルコーン(東ハト社製)を使用した。液掛けするシロップとして、還元澱粉糖化物(PO−30)と加熱溶解したファットスプレッド(明治コーンソフト)を、それぞれの重量で7:3の比率で用意し、ホモミキサーによって油脂が分散するように混合し液掛け液とした。還元澱粉糖化物のシロップとファットスプレッドの糖質固体量と油脂量の重量部比は、72:28となった。また、粉掛け用の粉末として実施例3と同様のマルチトール粗粉末と、マルチトール微粉末を用意した。
【0043】
糖衣操作の方法は実施例3と同様とし、小型糖衣機に多孔質原料を入れ、液掛け用の油脂を混合したシロップの噴霧および粉末散布を2回繰り返し行なって糖衣工程を終了した。糖衣工程は短時間で終了し、簡便であった。その他の方法は実施例1と同様であったが、糖が多いことでベタつきやすくなり、ロス率は17.6%と悪化したものの常法のソフト糖衣・ハード糖衣と比較してロス率が低く良好であり、平滑な糖衣を施されたソフト糖衣食品が得られた。なお、粗粉末は粉掛けの粉全体の27%であった。
【実施例9】
【0044】
センターとなる多孔質原料として、市販のキャラメルコーン(東ハト社製)を使用した。液掛けするシロップとして、還元澱粉糖化物(PO−30)と加熱溶解したショートニング(雪印メグミルク社販売マリンフーズ社製、ショートニング、油脂量100%)を、それぞれの重量で1:1の比率で用意し、ホモミキサーによって油脂が分散するように混合し液掛け液とした。還元澱粉糖化物のシロップとショートニングの糖質固体量と油脂量の重量部比は、41:59となった。また、粉掛け用の粉末として実施例3と同様のマルチトール粗粉末と、マルチトール微粉末を用意した。
【0045】
糖衣操作の方法は実施例3と同様とし、小型糖衣機に多孔質原料を入れ、液掛け用の油脂を混合したシロップの噴霧および粉末散布を2回繰り返し行なって糖衣工程を終了した。糖衣工程は短時間で終了し、簡便であった。ロス率は5.8%であり、良好であった。その他の方法は実施例1と同様であり、わずかにムラはあるが油脂の種類を変えても平滑な糖衣を施されたソフト糖衣食品が得られた。なお、粗粉末は粉掛けの粉全体の28%であった。
【0046】
[比較例1]
センターとなる多孔質原料として、市販のキャラメルコーン(東ハト社製)を使用した。液掛けするシロップとして、還元澱粉糖化物(PO−30)を用意し液掛け液とした。液掛け液に油脂は含まず、粉掛け用の粉末として平均粒径が21.3μmのマルチトール微粉末のみを用意して、一般的なソフト糖衣と同様、糖のシロップと微粉末のみで糖衣食品の製造を試みた。
【0047】
糖衣操作の方法は実施例1と同様とし、小型糖衣機に多孔質原料を入れ、液掛け用のシロップの噴霧および粉末散布を2回繰り返し行なって糖衣工程を終了した。その他の方法は実施例1と同様であるが、得られたソフト糖衣食品はスナックおよび粉掛けした微粉末のほとんどが糖衣パンに付着してしまい、ロス率は算定しなかったが見た目には比較例2より劣るため、明らかに悪く、また、スナックをパンから剥がすときに糖衣層が剥がれるため、平滑性に劣り、クランチ性の評価のできないものであった。
【0048】
[比較例2]
センターとなる多孔質原料として、市販のキャラメルコーン(東ハト社製)を使用した。液掛けするシロップとして、還元澱粉糖化物(PO−30)を用意し液掛け液とした。液掛け液に油脂は含まなかった。また、粉掛け用の粉末として実施例3と同様のマルチトール粗粉末と、マルチトール微粉末を用意した。
【0049】
糖衣操作の方法は実施例3と同様とし、小型糖衣機に多孔質原料を入れ、液掛け用のシロップの噴霧および粉末散布を2回繰り返し行なって糖衣工程を終了した。その他の方法は実施例1と同様であったが、ロス率は21.9%と悪く、油脂が含まれてないため粉掛けの粉末を粗粉末と微粉末の併用にしても、得られたソフト糖衣食品は平滑性に劣る表面であり、スナックが糖衣パンに付着してしまい、剥がすときに糖衣層が剥がれ、クランチ性の評価のできないものであった。なお、粗粉末は粉掛けの粉全体の37%であった。
【0050】
上記実施例および比較例で得られたサンプルを、以下の項目で評価した。評価項目のまとめは表1に表した。
【0051】
[ロス性]
ロス性については、以下の式から、ロス率を算出し、ロス率が10%未満の場合を「〇」、ロス率が10〜20%未満の場合を「△」、ロス率が20%以上の場合を「×」とした。結果を表1に示す。
【0052】
(式) ロス率(%)=[(糖衣掛けした量−原料に掛かった量)/糖衣掛けした量]×100
【0053】
ここで、糖衣掛けした量とは、糖衣に用いたシロップと油脂の総重量及び粉掛けの粉末の総重量の和であり、原料に掛かった量とは、糖衣パンに入れた糖衣前の多孔質原料の重量を、糖衣後回収した糖衣食品の重量から引いた差である。
【0054】
ロス率の値が大きいほど、糖衣のために入れたシロップや粉末が糖衣パンの内側へ付着してしまうなどして、多孔質原料へ糖衣として施されなかったことを示し、糖/糖アルコールや油脂の無駄が大きく、さらに、糖衣パンの洗浄なども要して作業効率も悪化し、そもそも工業的には不適である。
【0055】
[作業性]
作業性については、実施例及び比較例に係るサンプルを製造するにあたり作業した者が、製造時のソフト糖衣食品や糖衣機の様子を観察することにより、評価を行なった。評価は、ソフト糖衣を施したサンプル同士が付着してしまったり、糖衣機の内側にサンプルが付着してしまったりしない場合を「○」、わずかに付着が起こった場合を「△」、付着が頻繁に見られるような場合を「×」とした。結果を表1に示す。
【0056】
作業性が悪い場合は、得られたソフト糖衣食品同士が付着しており製品率が低下したり、糖衣機の内側に付着してしまい取り出すのに非効率であったり、糖衣層がはがれてしまったりするため、糖衣食品としての糖衣層の評価より評価項目としての重要度は高い。
【0057】
[平滑性]
平滑性については、訓練されたパネリストが実施例及び比較例に係るソフト糖衣食品の表面の凹凸を目視で評価することにより行った。評価は、平滑な被覆が出来た場合を「〇」、表面の糖衣層の被覆にわずかなムラがある場合を「△」、表面の糖衣層の被覆にかなりのムラがある場合を「×」と表した。結果を表1に示す。
【0058】
[クランチ性]
クランチ性については、訓練されたパネリストが実施例及び比較例に係るソフト糖衣食品を実際に食し、パリパリとした糖衣の食感を有するかどうかを評価することにより行った。評価は、パリパリとした糖衣の食感を強く感じることが出来た場合を「〇」、パリパリとした糖衣の食感を感じることが出来た場合を「△」、パリパリとした糖衣の食感をあまり感じることができなかった場合を「×」と表した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
以上のことから、多孔質原料に対し、糖衣層を形成する液掛けのためのシロップに油脂を含有させ、ソフト糖衣を行うこと、さらには、粒径の大きい結晶を粉がけ時に併用することで、良好な食感を有する糖衣食品を簡便に得られることが分かる。また、すべての実施例において、センターとした多孔質原料のサクサクとした食感は維持されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2000−166477号公報
【特許文献2】特開2011−010552号公報
【特許文献3】特開2006−204185号公報
【特許文献4】特表平10−502242号公報
【特許文献5】特開平11−127785号公報