【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0007】
手段1.設備本体(ユニット本体31)を架台(架台32)に載せてなる建物設備(バスユニット30)を、建物の躯体ユニット(建物ユニット10)に搭載する建物設備の搭載方法であって、
前記建物設備を前記架台の下に敷材(敷材70)を介在させた状態で台車(バスユニット用台車60)に載せる第1工程と、
前記建物設備を前記台車に載せた状態で前記躯体ユニットと並ぶ位置へ案内する第2工程と、
前記台車を前記並ぶ位置に配した状態にて前記建物設備を所定の方向に移動させることにより、当該建物設備を前記台車から前記躯体ユニットへ前記敷材ごと受け渡す第3工程と
を有していることを特徴とする建物設備の搭載方法。
【0008】
手段1によれば、台車から躯体ユニットへの建物設備の受け渡しが敷材を介在させた状態で行われる。これにより、建物設備が台車や躯体ユニットと擦れたり衝突したりすることを抑制し、建物設備を好適に保護することができる。
【0009】
架台の形状は、建物設備の仕様や強度担保等の理由から様々になり得る。仮に、架台を台車等に直接載せる構成とした場合には、架台の形状が複雑になることが建物設備の移動を妨げるような引っ掛かりが生じる要因になる。このような事情に鑑みて作業性等に配慮した場合には、上記架台の形状に対する制約が強くなり、上述した架台本来の機能を担保する上での妨げになると想定される。この点、建物設備の搭載時に敷材を介在させる構成とすれば、敷材によって架台の形状に係る制約(架台に係る作業性への配慮)を抑えることができる。故に、架台本来の機能を担保しつつ、躯体ユニットへの搭載作業の円滑化に寄与できる。
【0010】
手段2.前記躯体ユニットの下部には、当該躯体ユニットの床大梁に囲まれて下開口部(開口17)が形成されており、
前記第3工程では、前記受け渡し後に、前記躯体ユニットの下開口部を通じて前記敷材を回収することを特徴とする手段1に記載の建物設備の搭載方法。
【0011】
作業性向上のための部材(敷材)については、建物設備の搭載後は不要となる。故に、建物の完成時等に敷材が躯体ユニットや建物設備に残ったままとなることは好ましくない。本手段によれば、建物設備の搭載後は敷材が回収されるため、このような不都合の発生を好適に回避できる。回収した敷材については工程内で再利用できるため、敷材の保有数が嵩むことを好適に抑制できる。
【0012】
また、躯体ユニットの下開口部を通じて敷材を回収することにより、受け渡し済みの建物設備によって当該敷材の回収が妨げられることを抑制できる。
【0013】
手段3.前記架台にはその下方に延びる複数の脚部(ボルト脚42)が設けられており、
前記躯体ユニットには前記脚部が載せられる受け部(受け金具15)が設けられており、
前記第3工程は、
前記躯体ユニット内に位置し、前記躯体ユニットの下開口部を通じて昇降可能なリフト装置(リフト装置90)へ前記建物設備を前記敷材ごと移動させる移動工程と、
前記リフト装置を降下させることにより、前記脚部を前記受け部に載せる工程と
を有しており、
前記リフト装置の降下に伴い前記脚部が前記受け部に載ることにより、前記架台及び前記リフト装置によって前記敷材が挟まれた状態が解除されることを特徴とする手段2に記載の建物設備の搭載方法。
【0014】
手段3によれば、リフト装置に建物設備を載せた状態で降下させると、架台に設けられた脚部が受け部に載り、建物設備の荷重(重量負荷)が受け部によって支えられた状態となる。それまで敷材を介して支えられていた建物設備の荷重が脚部→受け部に移り、敷材がフリーとなることにより、敷材の回収(取り外し)が容易になる。これにより、手段2に示した効果を好適に発揮させることができる。
【0015】
手段4.前記敷材は、前記架台に対して非固定となっており、
前記第3工程にて前記脚部が前記受け部によって支持された後に前記リフト装置を更に降下させることにより、当該リフト装置に支持されている前記敷材が当該リフト装置に追従した降下に伴い前記架台から離脱することを特徴とする手段3に記載の建物設備の搭載方法。
【0016】
手段4によれば、建物設備を設置した後に、すなわち脚部が受け部に載った後に、敷材が載っているリフト装置を更に降下させることにより当該リフト装置に追従して敷材が架台から離脱する。これにより、架台からの敷材の取り外しが完了するため、手段2等に示した敷材の回収に係る作業効率を好適に向上できる。
【0017】
リフト装置の降下機能を利用して敷材の取り外しを行うことにより、敷材の取外装置等を別途必要とすることもなく、搭載工程の簡素化及び作業の単純化に貢献できる。
【0018】
なお、「前記躯体ユニットは搬送手段によって支持されており、前記リフト装置を下限位置に降下させることにより、前記敷材を前記躯体ユニットの下方へ移動させる工程と、前記敷材を前記搬送手段から受け取る受取工程とを有している」構成とすれば、敷材の取り外し行う際に躯体ユニットの下方に潜り込む必要がなくなり作業の効率化を促進できる。
【0019】
手段5.前記台車には、前記架台の下に前記敷材を介在させた状態で前記建物設備をスライド移動可能に支持する台車用支持機構(ローラユニット61)が設けられており、
前記第3工程においては、前記敷材に前記建物設備を載せた状態で、前記台車用支持機構において前記敷材と当接している回転部材(ローラ62)が回転することにより、当該建物設備を前記所定の方向へスライド移動させることを特徴とする手段1乃至手段4のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法。
【0020】
手段5によれば、建物設備の受け渡しに係る作業負荷を好適に軽減できる。建物設備の移動に要する力を抑えることにより、急に大きな力が加わることを回避して敷材と架台との位置ずれの発生を抑制できる。
【0021】
なお、「敷材と架台との間に生じる摩擦抵抗よりも、敷材と台車用支持機構との間に生じる抵抗が小さくなる」構成とすることにより、上記位置ずれ抑制効果を一層好適に発揮させることができる。
【0022】
因みに、「前記交差する方向での前記架台と前記敷材との相対変位を規制する構成」とすることにより、建物設備の支持バランスの向上が実現される。
【0023】
手段6.前記台車用支持機構は、前記所定の方向と交差する方向に並設された第1ローラ群(固定ローラユニット61aのローラ62a群)と第2ローラ群(可変式ローラユニット61bのローラ62b群)とを有してなり、
前記第1ローラ群及び前記第2ローラ群の何れかは前記交差する方向にて位置が変更可能な可変式ローラ群となっており、
前記第1工程は、前記架台における前記敷材の配設箇所に応じて前記可変式ローラ群の位置を調整する工程を有していることを特徴とする手段5に記載の建物設備の搭載方法。
【0024】
上述の如く架台は、設備本体の大きさ等の仕様に応じてその形状が様々となるため敷材の配設箇所についてもこの影響を受けやすい。更には躯体ユニットへ投入する向きによっても敷材の配設箇所が異なる可能性がある。そこで、本手段に示すようにローラ群を複数並設し、一方のローラ群を位置変更が可能な可変式ローラ群とすることにより、台車の適用範囲を好適に拡張でき、多様なタイプ(例えばサイズ)の設備本体に対応することが可能となる。
【0025】
なお、可変式ローラよりも固定式ローラの方が耐久力や強度の確保が容易である。また、建物設備の重心位置については必ずしも中央に位置するとは限らない。そこで、敢えて一方のローラ群を固定式とする場合には、第1工程にて建物設備の重心が偏っている側に固定式のローラが位置するようにして建物設備を台車に載せるとよい。
【0026】
因みに、「可変式ローラ群」については「前記交差する方向の幅寸法(長さ寸法)が、同方向における固定式のローラ群の幅寸法(長さ寸法)よりも大きくする」ことが好ましい。この構成によれば、位置調整にゆとりが生じ、作業効率の向上に貢献できる。
【0027】
手段7.前記架台には複数の脚部(ボルト脚42)が設けられ、それら脚部は前記架台において前記敷材に載置される被載置部よりも下方に突き出ており、
前記躯体ユニットには前記脚部が載せられる受け部(受け金具15)が設けられており、
前記第3工程は、
前記建物設備を前記躯体ユニット内に位置するリフト装置(リフト装置90)へ前記敷材ごと移動させる移動工程と、
前記リフト装置を降下させることにより、前記脚部を前記受け部に載せる工程と
を有しており、
前記躯体ユニットには、前記建物設備の投入方向にて前記リフト装置よりも手前側となる部分に床板(床板20)が組み付けられており、
前記床板の上面に、前記敷材を支持する床用支持機構を配置する工程を有し、
前記移動工程は、前記台車から前記リフト装置に前記建物設備を受け渡す過程にて、前記建物設備を前記敷材を介在させた状態で前記台車から前記床用支持機構を経て前記リフト装置に移動させるようになっており、
前記床用支持機構及び前記敷材を介在させることにより、前記移動工程においては、前記脚部を前記床板の上方であって当該床板から離れた位置を通過させることを特徴とする手段1乃至手段6のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法。
【0028】
手段7によれば、床板を付けた状態で建物設備をその奥に搭載できるため、建物設備の搭載順序や搭載方向に係る制約を軽減できる。また、床板の上方を脚部が通過するものの、両者の干渉を抑制して床板を保護できる。故に、脚部との干渉回避を目的として床板の配置/形状等に制約が生じることを回避できる。
【0029】
手段8.前記架台において前記建物設備の投入方向における前端部及び後端部の各々に前記脚部が位置し、前記前端部と前記後端部との間に前記敷材が収まっており、
前記第3工程よりも前に、前記架台において前記敷材よりも前記躯体ユニットへの投入方向における後側となる部分に前記脚部よりも下方に突出するようにして架台用ローラ(補助ローラ75)を取り付ける工程を有し、
前記建物設備が前記床板に移った状態では、前記架台用ローラは前記所定の方向と交差する方向にて前記床用支持機構とずれた位置に前記架台用ローラの通過領域が設けられていることを特徴とする手段7に記載の建物設備の搭載方法。
【0030】
手段8によれば、建物設備は、台車→床板→リフト装置へ受け渡されることとなる。建物設備が床板からリフト装置に移動した直後は、建物設備の重さによってリフト装置が僅かに沈み込む可能性があり、このような事象が発生した場合には既に敷材が床用支持機構から離れていることで建物設備と床板との距離が縮まることとなる。ここで、本手段に示すように、架台の前後の端部に脚部が配置されており、敷材が両端部間に収まっている場合には、上記沈み込みによって脚部が床板の上面に当る可能性がある。これは床板が傷付く要因になるため好ましくない。
【0031】
ここで、本手段に示すように敷材よりも後側に脚部より下方に突出するようにして架台用ローラを取り付けておくことにより、上記事象が発生した場合には、架台用ローラが床板の上面に載ることにより、上記脚部が当たることを抑制できる。特に、受け渡しの効率化等に鑑みて、リフト装置が床板よりも低位となるように設定している場合には、建物設備の荷重が一気にリフト装置側へ移ることにより、上記不都合が発生しやすくなる。このような構成であっても、本手段に示す技術的思想を適用すれば、作業効率の向上を実現しつつ、それに起因した上記不都合の発生を好適に抑制できる。
【0032】
なお、例えば、脚部に架台用ローラを取り付けたり、後端部よりも更に後側にローラを取り付けたりすれば、架台用ローラによるサポートが可能な状況下にて脚部が床板の上面と対峙する位置から離れることとなり、脚部と床板との干渉を一層好適に抑制できる。
【0033】
手段9.前記設備本体は、浴槽(浴槽38)及び浴室床部(床パネル35)を有するバスユニット(ユニット本体31)であり、
前記躯体ユニットの下部に形成された開口部を通じて、給排水手段の接続が可能となっていることを手段1乃至手段8のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法。
【0034】
手段9に示すバスユニットのように床部が一体化された建物設備については、躯体ユニットではなく建物設備が床を構成することとなる。バスユニットには給排水手段を接続する必要があるが、開口部の存在によって当該給排水手段の接続が容易となる。このような構成について上記各手段に示した搭載方法を適用することにより、搭載効率の向上が期待できる。
【0035】
手段10.前記躯体ユニットを組み立てる第1組み立て工程と、
前記建物設備を組み立てる第2組み立て工程と、
前記搭載方法によって前記躯体ユニットに前記建物設備を搭載する工程と
を有することを特徴とする手段1乃至手段9のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法を利用した建物の製造方法。
【0036】
手段10によれば、建物設備の搭載効率を向上することにより、ひいては建物の製造効率の向上に貢献できる。