特許第6302252号(P6302252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302252
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】建物設備の搭載方法及び建物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20180319BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   E04G21/14
   E04B1/348 H
   E04B1/348 X
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-2716(P2014-2716)
(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公開番号】特開2015-132058(P2015-132058A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓太
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−303672(JP,A)
【文献】 実開昭56−155642(JP,U)
【文献】 特開2008−214927(JP,A)
【文献】 特開2010−121318(JP,A)
【文献】 特開平06−220922(JP,A)
【文献】 特開2001−288909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/14−21/22
E04B1/348
E04H1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備本体を架台に載せてなる建物設備を、建物の躯体ユニットに搭載する建物設備の搭載方法であって、
前記建物設備を前記架台の下に敷材を介在させた状態で台車に載せる第1工程と、
前記建物設備を前記台車に載せた状態で前記躯体ユニットと並ぶ位置へ案内する第2工程と、
前記台車を前記並ぶ位置に配した状態にて前記建物設備を所定の方向に移動させることにより、当該建物設備を前記台車から前記躯体ユニットへ前記敷材ごと受け渡す第3工程と
を有し、
前記躯体ユニットの下部には、当該躯体ユニットの床大梁に囲まれて下開口部が形成されており、
前記第3工程では、前記受け渡し後に、前記躯体ユニットの下開口部を通じて前記敷材を回収することを特徴とする建物設備の搭載方法。
【請求項2】
前記架台にはその下方に延びる複数の脚部が設けられており、
前記躯体ユニットには前記脚部が載せられる受け部が設けられており、
前記第3工程は、
前記躯体ユニット内に位置し、前記躯体ユニットの下開口部を通じて昇降可能なリフト装置へ前記建物設備を前記敷材ごと移動させる移動工程と、
前記リフト装置を降下させることにより、前記脚部を前記受け部に載せる工程と
を有しており、
前記リフト装置の降下に伴い前記脚部が前記受け部に載ることにより、前記架台及び前記リフト装置によって前記敷材が挟まれた状態が解除されることを特徴とする請求項に記載の建物設備の搭載方法。
【請求項3】
前記敷材は、前記架台に対して非固定となっており、
前記第3工程にて前記脚部が前記受け部によって支持された後に前記リフト装置を更に降下させることにより、当該リフト装置に支持されている前記敷材が当該リフト装置に追従した降下に伴い前記架台から離脱することを特徴とする請求項に記載の建物設備の搭載方法。
【請求項4】
前記台車には、前記架台の下に前記敷材を介在させた状態で前記建物設備をスライド移動可能に支持する台車用支持機構が設けられており、
前記第3工程においては、前記敷材に前記建物設備を載せた状態で、前記台車用支持機構において前記敷材と当接している回転部材が回転することにより、当該建物設備を前記所定の方向へスライド移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法。
【請求項5】
前記台車用支持機構は、前記所定の方向と交差する方向に並設された第1ローラ群と第2ローラ群とを有してなり、
前記第1ローラ群及び前記第2ローラ群の何れかは前記交差する方向にて位置が変更可能な可変式ローラ群となっており、
前記第1工程は、前記架台における前記敷材の配設箇所に応じて前記可変式ローラ群の位置を調整する工程を有していることを特徴とする請求項に記載の建物設備の搭載方法。
【請求項6】
前記架台には複数の脚部が設けられ、それら脚部は前記架台において前記敷材に載置される被載置部よりも下方に突き出ており、
前記躯体ユニットには前記脚部が載せられる受け部が設けられており、
前記第3工程は、
前記建物設備を前記躯体ユニット内に位置するリフト装置へ前記敷材ごと移動させる移動工程と、
前記リフト装置を降下させることにより、前記脚部を前記受け部に載せる工程と
を有しており、
前記躯体ユニットには、前記建物設備の投入方向にて前記リフト装置よりも手前側となる部分に床板が組み付けられており、
前記床板の上面に、前記敷材を支持する床用支持機構を配置する工程を有し、
前記移動工程は、前記台車から前記リフト装置に前記建物設備を受け渡す過程にて、前記建物設備を前記敷材を介在させた状態で前記台車から前記床用支持機構を経て前記リフト装置に移動させるようになっており、
前記床用支持機構及び前記敷材を介在させることにより、前記移動工程においては、前記脚部を前記床板の上方であって当該床板から離れた位置を通過させることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法。
【請求項7】
前記架台において前記建物設備の投入方向における前端部及び後端部の各々に前記脚部が位置し、前記前端部と前記後端部との間に前記敷材が収まっており、
前記第3工程よりも前に、前記架台において前記敷材よりも前記躯体ユニットへの投入方向における後側となる部分に前記脚部よりも下方に突出するようにして架台用ローラを取り付ける工程を有し、
前記建物設備が前記床板に移った状態では、前記架台用ローラは前記所定の方向と交差する方向にて前記床用支持機構とずれた位置に前記架台用ローラの通過領域が設けられていることを特徴とする請求項に記載の建物設備の搭載方法。
【請求項8】
前記設備本体は、浴槽及び浴室床部を有するバスユニットであり、
前記躯体ユニットの下部に形成された開口部を通じて、給排水手段の接続が可能となっていることを請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法。
【請求項9】
前記躯体ユニットを組み立てる第1組み立て工程と、
前記建物設備を組み立てる第2組み立て工程と、
前記搭載方法によって前記躯体ユニットに前記建物設備を搭載する工程と
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法を利用した建物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物設備の搭載方法及び建物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物においては、工場で組み立てられたバスユニット等の建物設備を、アセンブリ化した状態にて建物の躯体ユニットに搭載する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。このように、建物設備をアセンブリ化した状態で躯体ユニットに搭載し、建物設備を躯体ユニットに搭載したまま同躯体ユニットを施工現場へ輸送することにより、施工現場での作業の効率化、品質管理の容易化、建物の製造効率の向上等の各種効果が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3244550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
但し、上述したように建物設備をアセンブリ化した状態で躯体ユニットに設置する場合には、その設置の際の重量負荷が嵩む。また、サイズが大きくなることにより、躯体ユニットを構成する梁や柱等の存在による投入経路に係る制約が強くなる。これは、例えば作業負荷の増大等を招来し、搭載効率の向上の妨げとなる。つまり、アセンブリ化した建物設備を躯体ユニットに搭載するという技術は、上述した各種効果を享受できる反面、作業がやりづらくなったり、作業負荷が増大したりする要因となり得る。以上の理由から、それら各種効果を享受しつつ、それに起因した不都合の発生を抑える上では、アセンブリ化した建物設備を躯体ユニットへ搭載する搭載方法に未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記例示した事情等に鑑みてなされたものであり、躯体ユニットへの建物設備の搭載を好適に行うことができる建物設備の搭載方法及び製造効率を好適に向上することができる建物の製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0007】
手段1.設備本体(ユニット本体31)を架台(架台32)に載せてなる建物設備(バスユニット30)を、建物の躯体ユニット(建物ユニット10)に搭載する建物設備の搭載方法であって、
前記建物設備を前記架台の下に敷材(敷材70)を介在させた状態で台車(バスユニット用台車60)に載せる第1工程と、
前記建物設備を前記台車に載せた状態で前記躯体ユニットと並ぶ位置へ案内する第2工程と、
前記台車を前記並ぶ位置に配した状態にて前記建物設備を所定の方向に移動させることにより、当該建物設備を前記台車から前記躯体ユニットへ前記敷材ごと受け渡す第3工程と
を有していることを特徴とする建物設備の搭載方法。
【0008】
手段1によれば、台車から躯体ユニットへの建物設備の受け渡しが敷材を介在させた状態で行われる。これにより、建物設備が台車や躯体ユニットと擦れたり衝突したりすることを抑制し、建物設備を好適に保護することができる。
【0009】
架台の形状は、建物設備の仕様や強度担保等の理由から様々になり得る。仮に、架台を台車等に直接載せる構成とした場合には、架台の形状が複雑になることが建物設備の移動を妨げるような引っ掛かりが生じる要因になる。このような事情に鑑みて作業性等に配慮した場合には、上記架台の形状に対する制約が強くなり、上述した架台本来の機能を担保する上での妨げになると想定される。この点、建物設備の搭載時に敷材を介在させる構成とすれば、敷材によって架台の形状に係る制約(架台に係る作業性への配慮)を抑えることができる。故に、架台本来の機能を担保しつつ、躯体ユニットへの搭載作業の円滑化に寄与できる。
【0010】
手段2.前記躯体ユニットの下部には、当該躯体ユニットの床大梁に囲まれて下開口部(開口17)が形成されており、
前記第3工程では、前記受け渡し後に、前記躯体ユニットの下開口部を通じて前記敷材を回収することを特徴とする手段1に記載の建物設備の搭載方法。
【0011】
作業性向上のための部材(敷材)については、建物設備の搭載後は不要となる。故に、建物の完成時等に敷材が躯体ユニットや建物設備に残ったままとなることは好ましくない。本手段によれば、建物設備の搭載後は敷材が回収されるため、このような不都合の発生を好適に回避できる。回収した敷材については工程内で再利用できるため、敷材の保有数が嵩むことを好適に抑制できる。
【0012】
また、躯体ユニットの下開口部を通じて敷材を回収することにより、受け渡し済みの建物設備によって当該敷材の回収が妨げられることを抑制できる。
【0013】
手段3.前記架台にはその下方に延びる複数の脚部(ボルト脚42)が設けられており、
前記躯体ユニットには前記脚部が載せられる受け部(受け金具15)が設けられており、
前記第3工程は、
前記躯体ユニット内に位置し、前記躯体ユニットの下開口部を通じて昇降可能なリフト装置(リフト装置90)へ前記建物設備を前記敷材ごと移動させる移動工程と、
前記リフト装置を降下させることにより、前記脚部を前記受け部に載せる工程と
を有しており、
前記リフト装置の降下に伴い前記脚部が前記受け部に載ることにより、前記架台及び前記リフト装置によって前記敷材が挟まれた状態が解除されることを特徴とする手段2に記載の建物設備の搭載方法。
【0014】
手段3によれば、リフト装置に建物設備を載せた状態で降下させると、架台に設けられた脚部が受け部に載り、建物設備の荷重(重量負荷)が受け部によって支えられた状態となる。それまで敷材を介して支えられていた建物設備の荷重が脚部→受け部に移り、敷材がフリーとなることにより、敷材の回収(取り外し)が容易になる。これにより、手段2に示した効果を好適に発揮させることができる。
【0015】
手段4.前記敷材は、前記架台に対して非固定となっており、
前記第3工程にて前記脚部が前記受け部によって支持された後に前記リフト装置を更に降下させることにより、当該リフト装置に支持されている前記敷材が当該リフト装置に追従した降下に伴い前記架台から離脱することを特徴とする手段3に記載の建物設備の搭載方法。
【0016】
手段4によれば、建物設備を設置した後に、すなわち脚部が受け部に載った後に、敷材が載っているリフト装置を更に降下させることにより当該リフト装置に追従して敷材が架台から離脱する。これにより、架台からの敷材の取り外しが完了するため、手段2等に示した敷材の回収に係る作業効率を好適に向上できる。
【0017】
リフト装置の降下機能を利用して敷材の取り外しを行うことにより、敷材の取外装置等を別途必要とすることもなく、搭載工程の簡素化及び作業の単純化に貢献できる。
【0018】
なお、「前記躯体ユニットは搬送手段によって支持されており、前記リフト装置を下限位置に降下させることにより、前記敷材を前記躯体ユニットの下方へ移動させる工程と、前記敷材を前記搬送手段から受け取る受取工程とを有している」構成とすれば、敷材の取り外し行う際に躯体ユニットの下方に潜り込む必要がなくなり作業の効率化を促進できる。
【0019】
手段5.前記台車には、前記架台の下に前記敷材を介在させた状態で前記建物設備をスライド移動可能に支持する台車用支持機構(ローラユニット61)が設けられており、
前記第3工程においては、前記敷材に前記建物設備を載せた状態で、前記台車用支持機構において前記敷材と当接している回転部材(ローラ62)が回転することにより、当該建物設備を前記所定の方向へスライド移動させることを特徴とする手段1乃至手段4のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法。
【0020】
手段5によれば、建物設備の受け渡しに係る作業負荷を好適に軽減できる。建物設備の移動に要する力を抑えることにより、急に大きな力が加わることを回避して敷材と架台との位置ずれの発生を抑制できる。
【0021】
なお、「敷材と架台との間に生じる摩擦抵抗よりも、敷材と台車用支持機構との間に生じる抵抗が小さくなる」構成とすることにより、上記位置ずれ抑制効果を一層好適に発揮させることができる。
【0022】
因みに、「前記交差する方向での前記架台と前記敷材との相対変位を規制する構成」とすることにより、建物設備の支持バランスの向上が実現される。
【0023】
手段6.前記台車用支持機構は、前記所定の方向と交差する方向に並設された第1ローラ群(固定ローラユニット61aのローラ62a群)と第2ローラ群(可変式ローラユニット61bのローラ62b群)とを有してなり、
前記第1ローラ群及び前記第2ローラ群の何れかは前記交差する方向にて位置が変更可能な可変式ローラ群となっており、
前記第1工程は、前記架台における前記敷材の配設箇所に応じて前記可変式ローラ群の位置を調整する工程を有していることを特徴とする手段5に記載の建物設備の搭載方法。
【0024】
上述の如く架台は、設備本体の大きさ等の仕様に応じてその形状が様々となるため敷材の配設箇所についてもこの影響を受けやすい。更には躯体ユニットへ投入する向きによっても敷材の配設箇所が異なる可能性がある。そこで、本手段に示すようにローラ群を複数並設し、一方のローラ群を位置変更が可能な可変式ローラ群とすることにより、台車の適用範囲を好適に拡張でき、多様なタイプ(例えばサイズ)の設備本体に対応することが可能となる。
【0025】
なお、可変式ローラよりも固定式ローラの方が耐久力や強度の確保が容易である。また、建物設備の重心位置については必ずしも中央に位置するとは限らない。そこで、敢えて一方のローラ群を固定式とする場合には、第1工程にて建物設備の重心が偏っている側に固定式のローラが位置するようにして建物設備を台車に載せるとよい。
【0026】
因みに、「可変式ローラ群」については「前記交差する方向の幅寸法(長さ寸法)が、同方向における固定式のローラ群の幅寸法(長さ寸法)よりも大きくする」ことが好ましい。この構成によれば、位置調整にゆとりが生じ、作業効率の向上に貢献できる。
【0027】
手段7.前記架台には複数の脚部(ボルト脚42)が設けられ、それら脚部は前記架台において前記敷材に載置される被載置部よりも下方に突き出ており、
前記躯体ユニットには前記脚部が載せられる受け部(受け金具15)が設けられており、
前記第3工程は、
前記建物設備を前記躯体ユニット内に位置するリフト装置(リフト装置90)へ前記敷材ごと移動させる移動工程と、
前記リフト装置を降下させることにより、前記脚部を前記受け部に載せる工程と
を有しており、
前記躯体ユニットには、前記建物設備の投入方向にて前記リフト装置よりも手前側となる部分に床板(床板20)が組み付けられており、
前記床板の上面に、前記敷材を支持する床用支持機構を配置する工程を有し、
前記移動工程は、前記台車から前記リフト装置に前記建物設備を受け渡す過程にて、前記建物設備を前記敷材を介在させた状態で前記台車から前記床用支持機構を経て前記リフト装置に移動させるようになっており、
前記床用支持機構及び前記敷材を介在させることにより、前記移動工程においては、前記脚部を前記床板の上方であって当該床板から離れた位置を通過させることを特徴とする手段1乃至手段6のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法。
【0028】
手段7によれば、床板を付けた状態で建物設備をその奥に搭載できるため、建物設備の搭載順序や搭載方向に係る制約を軽減できる。また、床板の上方を脚部が通過するものの、両者の干渉を抑制して床板を保護できる。故に、脚部との干渉回避を目的として床板の配置/形状等に制約が生じることを回避できる。
【0029】
手段8.前記架台において前記建物設備の投入方向における前端部及び後端部の各々に前記脚部が位置し、前記前端部と前記後端部との間に前記敷材が収まっており、
前記第3工程よりも前に、前記架台において前記敷材よりも前記躯体ユニットへの投入方向における後側となる部分に前記脚部よりも下方に突出するようにして架台用ローラ(補助ローラ75)を取り付ける工程を有し、
前記建物設備が前記床板に移った状態では、前記架台用ローラは前記所定の方向と交差する方向にて前記床用支持機構とずれた位置に前記架台用ローラの通過領域が設けられていることを特徴とする手段7に記載の建物設備の搭載方法。
【0030】
手段8によれば、建物設備は、台車→床板→リフト装置へ受け渡されることとなる。建物設備が床板からリフト装置に移動した直後は、建物設備の重さによってリフト装置が僅かに沈み込む可能性があり、このような事象が発生した場合には既に敷材が床用支持機構から離れていることで建物設備と床板との距離が縮まることとなる。ここで、本手段に示すように、架台の前後の端部に脚部が配置されており、敷材が両端部間に収まっている場合には、上記沈み込みによって脚部が床板の上面に当る可能性がある。これは床板が傷付く要因になるため好ましくない。
【0031】
ここで、本手段に示すように敷材よりも後側に脚部より下方に突出するようにして架台用ローラを取り付けておくことにより、上記事象が発生した場合には、架台用ローラが床板の上面に載ることにより、上記脚部が当たることを抑制できる。特に、受け渡しの効率化等に鑑みて、リフト装置が床板よりも低位となるように設定している場合には、建物設備の荷重が一気にリフト装置側へ移ることにより、上記不都合が発生しやすくなる。このような構成であっても、本手段に示す技術的思想を適用すれば、作業効率の向上を実現しつつ、それに起因した上記不都合の発生を好適に抑制できる。
【0032】
なお、例えば、脚部に架台用ローラを取り付けたり、後端部よりも更に後側にローラを取り付けたりすれば、架台用ローラによるサポートが可能な状況下にて脚部が床板の上面と対峙する位置から離れることとなり、脚部と床板との干渉を一層好適に抑制できる。
【0033】
手段9.前記設備本体は、浴槽(浴槽38)及び浴室床部(床パネル35)を有するバスユニット(ユニット本体31)であり、
前記躯体ユニットの下部に形成された開口部を通じて、給排水手段の接続が可能となっていることを手段1乃至手段8のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法。
【0034】
手段9に示すバスユニットのように床部が一体化された建物設備については、躯体ユニットではなく建物設備が床を構成することとなる。バスユニットには給排水手段を接続する必要があるが、開口部の存在によって当該給排水手段の接続が容易となる。このような構成について上記各手段に示した搭載方法を適用することにより、搭載効率の向上が期待できる。
【0035】
手段10.前記躯体ユニットを組み立てる第1組み立て工程と、
前記建物設備を組み立てる第2組み立て工程と、
前記搭載方法によって前記躯体ユニットに前記建物設備を搭載する工程と
を有することを特徴とする手段1乃至手段9のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法を利用した建物の製造方法。
【0036】
手段10によれば、建物設備の搭載効率を向上することにより、ひいては建物の製造効率の向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】一実施の形態における建物ユニットの床構造部分の構成を示す平面図。
図2】(a)建物ユニットにバスユニットが搭載された状態を示す概略図、(b)設置構造を示す図2(a)の部分拡大図。
図3】建物ユニットの床構造部分、架台、ユニット本体の分解斜視図。
図4】バスユニットの搭載の流れを示す概略図。
図5】敷材の配置を示す概略図。
図6】バスユニット用の台車を示す概略図。
図7】バスユニットの投入方向と敷材及びボルト脚との関係を示す概略図。
図8】バスユニットの投入方向と敷材及びボルト脚との関係を示す概略図。
図9】バスユニットの設置の様子を示す概略図。
図10】補助ローラの取付態様を示す概略図。
図11】補助ローラによる床板の保護の様子を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、複数の建物ユニットを組み合わせて構築されるユニット式建物においていずれかの建物ユニットにバスユニットを搭載する搭載方法について具体化されている。建物ユニット及びユニット式建物の構成は周知であるため、図示による説明は割愛するが、簡単に説明をしておく。建物ユニットは、四隅の柱と、それら各柱の上端部を連結する天井大梁と、各柱の下端部を連結する床大梁とを有し、全体として直方体状に形成されている。この建物ユニットはユニット製造工場で製作された後、トラック等の搬送手段によって建物施工現場へ搬送される。そして、建物施工現場においては建物ユニットがクレーン等の据え付け手段を用いて据え付けられ、隣接する建物ユニットの柱同士が連結部材(ドッキングプレート等)により連結されることで建物本体が構築されるようになっている。
【0039】
以下、図1図3を参照して建物ユニット10とバスユニット30との関係について説明し、その後、バスユニット30の搭載方法について説明する。図1はバスユニット30が搭載される建物ユニット10(浴室用の建物ユニット)の床構造部分の構成を示す平面図、図2(a)は建物ユニット10にバスユニット30が搭載された状態を示す概略図、図2(b)は設置構造を示す図2(a)の部分拡大図、図3は建物ユニット10の床構造部分及びバスユニット30の分解斜視図である。
【0040】
図1に示すように、建物ユニット10の床構造部においては、当該建物ユニット10の四隅となる位置に配置された四角筒状の角形鋼である柱11に対して互いに直交する2方向に床大梁12が連結されている。床大梁12は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして、すなわち溝部がユニット内側に向くように配設されている。
【0041】
建物ユニット10(床構造部)には、バスユニット30が組み入れられる浴室スペースS1と、それに隣接して設けられる脱衣所スペースS2と、浴室スペースS1及び脱衣所スペースS2からなるサニタリスペースに対して横並びとなるように設けられた居室スペースS3とが設けられている。居室スペースS3に相当する部位には、各床大梁12のうち長辺側となる一対の床大梁12の間に架け渡した状態で複数の床小梁13が設けられている。なお、必ずしも1の建物ユニットにてサニタリスペース及び居室スペースS3を確保する必要はなく、居室スペースS3に相当するスペースを他の建物ユニットに移設してもよい。
【0042】
浴室スペースS1及び脱衣所スペースS2に相当する部位は、短辺側の床大梁12bと床小梁13との間に架け渡した状態で設けられた受け小梁14aによって区分けされている。脱衣所スペースS2に相当する部位には、床大梁12aと受け小梁14aとの間に架け渡した状態で複数の受け小梁14bが設けられている。これら受け小梁14b等によって脱衣所スペースS2用の床板20が支持されている。
【0043】
浴室スペースS1では、長辺側の床大梁12aと受け小梁14aとが互いに対向しており、これら床大梁12aと受け小梁14aとによって挟まれた部分は小梁の非配置領域(下開口17)となっている。この下開口17を通じて給水用配管や排水用配管がバスユニット30に接続されている。
【0044】
床大梁12a及び受け小梁14には、バスユニット30用の受け金具15が取り付けられており、図2(a)に示すようにそれら受け金具15によってバスユニット30が支持されている。なお、詳細については詳述するが、バスユニット30の投入の向きによっては受け金具15の配設対象に相当する構成が小梁13及び大梁12bとなる場合もある。
【0045】
バスユニット30は、浴室空間SBを区画形成する床パネル35,壁パネル36,天井パネル37及び浴室空間SBに配置された浴槽38を有してなるユニット本体31と、バスユニット30の下部構造体としての架台32とを備えている。図2(b)に示すように、架台32は、洗い場を形成する床パネル35や浴槽38(ユニット本体31)を支持するフレーム41と、フレーム41から下方に延びる脚部としての複数のボルト脚42を有している。これらボルト脚42が各受け金具15に載ることで、建物ユニット10に対してバスユニット30が据え付けられている。つまり、バスユニット30は、一対の床梁(床大梁12a及び受け小梁14a)に架け渡されるようにして設置されている(図1の2点鎖線参照)。
【0046】
ボルト脚42には、建物ユニット10の床構造部に対してバスユニット30を所定高さに保持する高さ保持機能と、バスユニット30の高さのレベル調整(水平調整)を行うためのレベル調整機能(長さ調整機能)とが付与されている。バスユニット30が搭載された状態で、レンチ等の工具を用いてボルト脚42を回転させることにより、当該レベル調整が行われる。
【0047】
図3に示すように、架台32のフレーム41は、複数のフレーム部材41、詳しくは大梁12aと同じ方向に延びる複数の横フレーム部材41a及び大梁12bと同じ方向に延びる複数の縦フレーム部材41bが互いに直交する向きに連結されてなる。フレーム41には、上段部45及び下段部46が形成されており、上段部45は浴室内において洗い場側となる部位に相当し、下段部46は浴槽側となる部位に相当する。上記ボルト脚42については、上段部45及び下段部46における縦フレーム部材41bの両端部に各々取り付けられている。
【0048】
次に、図4の概略図を参照して、工場のアセンブリ工程にて行われる建物ユニット10へのバスユニット30の搭載作業(搭載工程)の流れについて説明する。
【0049】
組立工程にてユニット化されたバスユニット30を建物ユニット10へ搭載する場合には、先ず図4(a)に示すようにバスユニット用台車60にバスユニット30を載せる。その後、図4(a)→図4(b)に示すように同じく建物ユニット用台車50に載せられた建物ユニット10へ隣接する位置(投入待機位置、建物ユニット10の正面開口18と対峙する位置)へ、バスユニット用台車60を移動させる。そして、両台車50,60を横並びとなるように配置した状態にてバスユニット用台車60から建物ユニット10へのバスユニット30の受け渡し(投入)を行う。受け渡し時には、例えば両台車50,60を連結した状態とすることにより、台車50,60間の距離が広がって受け渡し作業がやりづらくなることを抑制できる。
【0050】
バスユニット用台車60における台車本体の上面60aにはローラユニット61が取り付けられている。ローラユニット61は、投入方向に並設された複数のローラ62と、それらローラ62を投入方向に対して交差(詳しくは直交)する方向に回動中心軸線が向くようにして保持するホルダ63と、ホルダ63が搭載されるベース64とを有してなり、ベース64が台車本体に固定されることで台車本体と一体化されている。バスユニット30が投入方向に押された場合には、それに伴ってローラ76が回転することによりバスユニット30の移動を妨げる抵抗が軽減されることとなる。
【0051】
既に説明したように、架台32のフレーム41は複数のフレーム部材41a,41bを縦横に連結してなるため、下面が凹凸状をなしている。仮に、これらの凹凸がローラ62間に嵌ったりローラ62に引っ掛かったりすると、バスユニット30の円滑な受け渡しの妨げになる。この点、本実施の形態においては、バスユニット30を載せる場合に、架台32の下に敷材70を介在させることにより、上記不都合の発生を抑制している。ここで、図5の概略図を参照して敷材70について説明する。
【0052】
敷材70は、投入方向と同じ方向に延びており、その全長がフレーム41の縦幅(縦フレーム部材41bの長さ寸法)よりも僅かに短く設定されている。これにより、敷材70を上述の如く介在させる際に、同敷材70の架台32(フレーム41)からのはみ出しを回避可能となっている。敷材70は上記投入方向と交差する方向に複数並べて設けられている。詳しくは、上段部45及び下段部46に各々配置されている。このように、複数の敷材70を併用することにより、支持バランスの低下を抑えつつ、敷材70の大型化を抑制している。
【0053】
上段部45に対応した位置に配設される敷材70Aは、投入方向と直交する断面が溝状をなしており、その開放部分が上方を向くように配置されている。この開放部分に縦フレーム部材41bに沿って設けられた脚部が嵌っている。敷材70Aが介在した状態では、脚部が敷材70Aに嵌ることにより、投入方向と交差する方向での架台32と敷材70Aとの相対位置のずれが回避される。
【0054】
下段部46に対応した位置に配設される敷材70Bは、投入方向に延びる長板部と、当該長板部の上面に固定された溝状の係合部とを有している。係合部は上方に開放されており、横フレーム部材41aと係合する。これにより、投入方向での架台32と敷材70Aとの相対位置のずれが回避される。言い換えれば、投入方向と交差する方向、すなわちフレーム部材41aが延びている方向での相対変位は許容されている。これは、敷材70Bの脱落を回避しつつ、上記ローラユニット61との位置関係を調整可能とするための工夫である。
【0055】
本実施の形態におけるバスユニット用台車60のローラユニット61については、サイズや形状等の異なる各種架台を載せることができるように工夫が施されている。具体的には、図6の概略図に示すように、ローラユニット61は位置固定式の固定ローラユニット61aと位置可変式の可変ローラユニット61bとで構成されている。これら固定ローラユニット61a及び可変ローラユニット61bは、投入方向と交差する方向に並べて設けられており、可変ローラユニット61bの位置(ローラユニット61a,61bの並設方向における位置)を調整することにより、両ローラユニット61a,61b間の距離(支持スパン)を変更することができる。
【0056】
バスユニット30を台車60に載せる場合には、バスユニット30(架台32)の仕様や向きに応じて上述した敷材70の位置が変化するが、これに応じて可変ローラユニット61bの位置調整を行うことにより複数種のバスユニットについて同じ台車を使用することが可能となる。
【0057】
上記並設方向における可変ローラユニット61bの幅は、固定ローラユニット61aの幅よりも大きくなっている。これにより、支持バランスの細かな調整が可能となっている。特に、上述した敷材70A,70Bを使用する場合には、敷材70Aが固定ローラユニット61aに載り、敷材70Bが可変ローラユニット61bに載るように介在させる。敷材70Aについては上記交差する方向での相対変位が規制されるため、幅が相対的に狭く設定された固定ローラユニット61aからの脱落が好適に抑制される。一方、敷材70Bについてはフレーム部材41aの長手方向での位置調整が許容されることで利便性の向上が図られているが、その反面脱落の可能性も高くなる。この点、幅が相対的に広く設定された可変ローラユニット61bに載せることにより、そのような不都合の発生を好適に抑制できる。
【0058】
ここで、図7及び図8の概略図を参照して、バスユニット30の投入方向と投入時の向きとの関係について補足説明する。バスユニット30をどの向きで建物ユニット10に搭載するかは建物の仕様等に応じて変わる。つまり、例えば図7に示すように架台32の短手方向と投入方向とが一致する場合(浴槽と洗い場とが投入方向と交差する方向に並ぶ場合)と、図8に示すように架台32の長手方向と投入方向とが一致する場合(浴槽と洗い場とが投入方向に並ぶ場合)とが存在する。後者の場合には、上述した敷材70Aを2つ用いることにより、敷材70のバリエーションが無駄に多くなることを回避している。このように敷材70Aを流用する場合であっても、そもそも敷材70Aの長さはフレーム41の短手方向における幅よりも短く設定されているため、同敷材70Aが架台32からはみ出すことを回避できる。
【0059】
図8に示す向きで投入する場合には、敷材70Aの溝に横フレーム部材41a及び上記脚部が嵌るように同敷材70Aを配設する。これにより、2つの敷材70Aの間隔L2は、図4図5に示した敷材70A,70Bの間隔L2よりも短くなる。このような場合には、図6に示したように可変ローラユニット61bの位置を調整することで、同じ台車60を使用することができる。
【0060】
再び、図3を参照して、バスユニット30の受け渡しについて説明する。バスユニット30を建物ユニット10に受け渡す場合には、バスユニット30が既に配置済みの床板20の上方を通過する。そこで、バスユニット30の受け渡しを行う前に、床板20の上面に床用ローラユニット85を設置する。床用ローラユニット85は、上記投入方向に並設された複数のローラ86を有してなる。これらローラ86によって規定されるバスユニット30の受け面X2の高さ位置は、上記ローラユニット61のローラ62によって規定される受け面X1の高さ位置と同じレベル又は当該受け面X1よりも僅かに低く設定する。これにより、バスユニット30を水平移動させることで台車60から床板20へのバスユニット30の受け渡しを円滑に行うことが可能となる(図3(b)参照)。
【0061】
台車60には、建物ユニット10の下開口17に連通する開口51が形成されており、この開口を通じてリフト装置90のテーブル91が昇降可能となるようにして当該リフト装置90を予め用意しておく。リフト装置90は、テーブル91を支持する複数の支持アームを有し、各支持アームをリンク機構により伸縮させることによりテーブル91の高さ位置を調整することが可能となっている。
【0062】
テーブル91の上面には、リフト用ローラユニット95が取り付けられている。リフト用ローラユニット95についても、投入方向に並設された複数のローラ96を有してなる。バスユニット30を搭載する際には、これらローラ96によって規定されるバスユニット30の受け面X3の高さ位置を、上記受け面X2の高さ位置よりも低くなるように高さ調整を済ませおく。
【0063】
図3(b)→図3(c)に示すように、バスユニット30を上記投入方向へスライド移動させると、バスユニット30は自重によって床板20からリフト装置90へのバスユニット30を円滑に受け渡されることとなる。なお、上述した受け面X2,X3の高さ位置の差を設定することにより、一旦リフト装置90へ到達したバスユニット30の逆戻りが回避される。図3(c)に示すように、バスユニット30をリフト装置90へ移した後は、リフト装置90を駆動させてテーブル91を降下させることにより、バスユニット30が建物ユニット10に設置され、搭載作業が完了することとなる。
【0064】
ここで、図9の概略図を参照してテーブル91の降下によるバスユニット30の設置の流れについて補足説明する。図9(a)→図9(b)に示すように、テーブル91を降下させると、テーブル91に追従してバスユニット30も降下する。図9(b)に示すように、架台32のボルト脚42が建物ユニット10の受け金具15に載ると、バスユニット30の荷重がリフト装置90から受け金具15(建物ユニット10)に移る。
【0065】
本実施の形態に示す敷材70については架台32(バスユニット30)に固定されているわけではない。このため、その後もテーブル91の降下を継続することで、図9(b)→図9(c)に示すようにテーブル91の降下に追従して同敷材70が架台32から離間する。敷材70は、上記下開口17及び開口51を通過可能な大きさであるため、テーブル91を所定位置まで降下させることにより、それら開口17,51を通じて台車60の本体部分よりも下方(詳しくは車輪によって形成された台車本体と地面との間の空間)へ移る。その後、当該空間を通じて敷材70をリフト装置90から回収する(図4(d)参照)。これにより、敷材70の回収の円滑化に貢献できる。
【0066】
但し、図7に示した向きでバスユニット30を搭載する場合には、以下の点に留意する必要がある。この向きでバスユニット30を搭載しようした場合には、必然的にボルト脚42の位置が投入方向において敷材70よりも手前側に位置することとなる。バスユニット30を床板20からリフト装置90へ移す場合には、敷材70が床用ローラユニット85から離間することにより、バスユニット30の荷重がリフト装置90へ移る。本実施の形態に示すボルト脚42は架台32において敷材70に載置される被載置部分よりも下方に突き出ている。このため、仮にバスユニット30の重さでリフト装置90が沈んだ場合には、バスユニット30の降下に伴ってボルト脚42が床板20の上面20aに当る可能性が生じる。これは、床板20を傷つけたり変形させたりする要因になるため好ましくない。
【0067】
例えば、敷材70をボルト脚42よりも投入方向手前側に延出するようにして配置することで、そのような不都合の発生を回避することが可能ではあるが、これでは敷材70が建物ユニット10の受け小梁14aに干渉する。このため、リフト装置90及びバスユニット30に挟まれている敷材70を上述した方法により回収することが困難になる。一方、架台32のボルト脚42の位置を敷材70よりも投入方向における奥側にずらすことで、上記不都合の発生を回避することも可能ではあるが、これでは、2つの向きで架台32を共通化することができなくなる。
【0068】
本実施の形態では、敷材70の無理な配置の回避及び架台32の共通化を実現しつつ、上記不都合の発生を回避する工夫がなされていることを特徴の1つとしている。具体的には、上記不都合の発生し得る向き(図7参照)でバスユニット30を搭載する場合には、バスユニット30を建物ユニット10に受け渡す前に、架台32にボルト脚42の干渉を回避する回避手段としての補助ローラ75を取り付ける工程が設けられている。以下、図10を参照して補助ローラ75について説明する。
【0069】
補助ローラ75は、ボルト脚42の奥側及び手前側に位置する2つのローラ76と、それらローラ76を回動可能に保持するホルダ77とを有してなる。ホルダ77が横フレーム部材41aに対して投入方向と交差する方向から組みつけられることでフレーム41に着脱可能な状態で一体化されている。ローラ76の一部がボルト脚42の下端部よりも下方に位置するようにしており、ボルト脚42はホルダ77に形成された凹部内に収容されている。なお、ボルト脚42及び補助ローラ75は投入方向と交差する方向において、敷材70とずらして配置されており、バスユニット30を搭載時に各ローラユニット61,85,95と干渉することが回避されている(通過経路が確保されている)。
【0070】
補助ローラ75(ローラ76)は、バスユニット30が台車60に載っている状態、すなわち架台32とローラユニット61との間に敷材70が介在している状態では、台車本体の上面60aとの間に隙間が生じるように構成されている。また、バスユニット30が床板20に載っている状態、すなわち架台32と床用ローラユニット85との間に敷材70が介在している状態では、床板20の上面20aとの間に隙間が生じるように構成されている。
【0071】
ここで、図11の概略図を参照してボルト脚42の干渉回避の様子について説明する。図11(a)に示すように、バスユニット30が床板20からリフト装置90へ移る際に、敷材70が床板20のローラユニット85とリフト装置90のローラユニット95との跨った状態となると、床板20側の受け面X2よりもリフト装置90側の受け面X3の方が低位となっていることにより、バスユニット30が投入方向奥側へ傾いて、当該バスユニット30の荷重がリフト装置90へ移ることとなる。
【0072】
敷材70が床板ローラユニット85から離れると、それまで床板20側で受けていた荷重についてリフト装置90に移る。リフト装置90がバスユニット30の荷重によって僅かに沈むと、図11(b)に示すように、補助ローラ75が床板20の上面20aに載る。この関係は、バスユニット30がリフト装置90の降下待機位置に到達する前まで、詳しくはボルト脚42が床板20の上面20aと対峙する位置から離れるまで維持される。そして、図11(c)に示すように、ボルト脚42が床板20の上面20aと対峙する位置から離れてバスユニット30が降下待機位置に到達するのに合わせて、補助ローラ75が床板20から離脱する。その後、架台32から補助ローラ75を取り外すことで、バスユニット30の降下準備が完了する。以降の搭載の流れについては、上述したものと同様であるため説明を援用する。
【0073】
以上の各手順を経てバスユニット30の搭載が完了した後は、建物ユニット10を台車50に載せたまま施工現場への搬送工程へ移す。搬送工程へ移された建物ユニット10をクレーン等によってトラック等の搬送手段の荷台へ移し、工場から施工現場へ輸送する。施工現場では、建物ユニット10を所定の位置に配置した後、建物ユニット10の下開口17を通じてバスユニット30への給水管や配水管等の接続を行う。
【0074】
以上、詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0075】
バスユニット用台車60から建物ユニット10へのバスユニット30の受け渡しが敷材70を介在させた状態で行われる。これにより、バスユニット30が台車60や建物ユニット10と擦れたり衝突したりすることを抑制し、バスユニット30を好適に保護することができる。
【0076】
架台32の形状は、バスユニット30の仕様や強度担保等の理由から様々になり得る。仮に、架台32をバスユニット用台車60等に直接載せる構成とした場合には、架台32の形状が複雑になることがバスユニット30の移動を妨げるような引っ掛かりの要因になる。このような事情に鑑みて作業性等に配慮した場合には、架台32の形状に対する制約が強くなり、上述した架台32本来の機能を担保する上での妨げになると想定される。この点、バスユニット30の搭載時に敷材70を介在させる構成とすれば、敷材70によって架台32の形状に係る制約(架台32に係る作業性への配慮)を抑えることができる。故に、架台32本来の機能を担保しつつ、建物ユニット10への搭載作業の円滑化に寄与できる。
【0077】
作業性向上のための部材(敷材70)については、バスユニット30の搭載後は不要となる。故に、建物の完成時等に敷材70が建物ユニット10やバスユニット30に残ったままとなることは好ましくない。この点、本実施の形態によれば、バスユニット30の搭載後は敷材70が回収されるため、このような不都合の発生を好適に回避できる。回収した敷材70については工程内で再利用できるため、敷材70の保有数が無駄に嵩むことを抑制できる。なお、建物ユニット10の下開口17を通じて敷材70を回収することにより、受け渡し済みのバスユニット30によって当該敷材70の回収が妨げられることを抑制できる。
【0078】
リフト装置90にバスユニット30を載せた状態で降下させると、架台32に設けられたボルト脚42が受け金具15に載り、バスユニット30の荷重(重量負荷)が受け金具15によって支えられた状態となる。それまで敷材70を介して支えられていたバスユニット30の荷重がボルト脚42→受け金具15に移り、敷材70がフリーとなることにより、敷材70の回収(取り外し)が容易になる。
【0079】
敷材70は、架台32に対して非固定となっている。このため、バスユニット30を設置した後に、すなわちボルト脚42が受け金具15に載った後に、敷材70が載っているリフト装置90を更に降下させることにより当該リフト装置90に追従して敷材70が架台32から離脱する。これにより、架台32からの敷材70の取り外しが完了するため、上記回収に係る作業効率を好適に向上できる。また、リフト装置90の降下機能を利用して敷材70の取り外しを行うことにより、敷材70の取外装置等を別途必要とすることもなく、搭載工程の簡素化及び作業の単純化に貢献できる。なお、リフト装置90を所定位置に降下させることにより、敷材70が建物ユニット10の下方へ移動するため、敷材70の取り外し行う際に建物ユニット10の下方に潜り込む必要がなくなり作業の効率化を促進できる。
【0080】
バスユニット用台車60には、架台32の下に敷材70を介在させた状態でバスユニット30をスライド移動可能に支持するローラユニット61が設けられている。これにより、バスユニット30の受け渡しに係る作業負荷を好適に軽減できる。バスユニット30の移動に要する力を抑えることにより、急に大きな力が加わることを回避して敷材70と架台32との位置ずれの発生を抑制できる。
【0081】
架台32は、ユニット本体31の大きさ等の仕様に応じてその形状が様々となるため敷材70の配設箇所についてもこの影響を受けやすい。更には建物ユニット10へ投入する向きによっても敷材70の配設箇所が異なる可能性がある。そこで、本実施の形態に示したように可変ローラユニット61bを採用すれば、バスユニット用台車60の適用範囲を好適に拡張でき、多様なタイプ(例えばサイズ)のユニット本体31(架台32)に対応することが可能となる。
【0082】
なお、可変ローラユニット61bよりも固定ローラユニット61aの方が耐久力や強度の確保が容易である。また、バスユニット30の重心位置については必ずしも中央に位置するとは限らない。そこで、一方のローラ群を固定式とする場合には、バスユニット30の重心が偏っている側に固定ローラユニット61aが位置するようにしてバスユニット30を台車60に載せるとよい。
【0083】
本実施の形態に示すバスユニット30の搭載方法によれば、床板20を取り付けた状態でバスユニット30をその奥に搭載できるため、バスユニット30の搭載順序や搭載方向に係る制約を軽減できる。また、床板20の上方をボルト脚42が通過するものの、両者の干渉を抑制して床板20を保護できる。故に、ボルト脚42との干渉回避を目的として床板20の配置/形状等に制約が生じることを回避できる。
【0084】
バスユニット30のように床部が一体化された設備については、建物ユニット10ではなくバスユニット30が床の一部を構成することとなる。バスユニット30には給排水管等を接続する必要があるが、建物ユニット10の下開口17の存在によって給排水管等の接続が容易となる。このような構成について上記搭載方法を適用することにより、搭載効率の向上が期待できる。また、バスユニット30の搭載効率を向上することにより、ひいては建物の製造効率の向上に貢献できる。
【0085】
なお、上述した実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。因みに、以下の別形態の構成を、上記実施の形態における構成に対して、個別に適用してもよく、相互に組み合わせて適用してもよい。
【0086】
(1)上記実施の形態では、「躯体ユニット」としての建物ユニット10に床板20を設置した後、この床板20の上方を通過するようにして「建物設備」としてのバスユニット30をリフト装置90に受け渡したが、バスユニット30の搭載後に床板20を設置することも可能である。
【0087】
なお、上記実施の形態では、床板20及びリフト装置90を利用したバスユニット30の搭載方法について説明したがバスユニット30の搭載については床板20及びリフト装置90が必須となるものではない。例えば上記実施の形態に例示したバスユニット30よりも大型のバスブロックを搭載する場合(床板20(脱衣所スペースS2)が省略されている場合)には、バスユニット用台車60からリフト装置90へバスユニット30を直接受け渡してもよい。また、所定位置にバスユニット30が設置されるのであればリフト装置90を省略することも可能である。
【0088】
(2)上記実施の形態では、バスユニット30の手前側に配置された床板20によって脱衣所の床が構成されている場合について例示したが、床板20によって居室や廊下の床が構成されていてもよい。
【0089】
(3)上記実施の形態では、敷材70を架台32に固定しない構成としたが、敷材70を架台32に対して着脱可能に固定する構成としてもよい。この場合、バスユニット30を設置した後に、建物ユニット10の下開口17を通じて敷材70を取り外すとよい。
【0090】
(4)上記実施の形態では、リフト装置90(リフト用ローラユニット95)の受け面X3を床板20(床用ローラユニット85)の受け面X2よりも低く設定したが、両受け面X2,X3の高さ位置を揃えてもよい。但し、床板20がバスユニット30の荷重によって撓む可能性があり、仮にこのような事象が発生した場合には、受け面X2が受け面X3よりも低くなり得る。これは、バスユニット30のリフト装置90への移動を妨げる要因になる。故に、望ましくは上記実施の形態に示したように受け面X3を受け面X2よりも低位となるようにして待機させておくとよい。
【0091】
(5)上記実施の形態では、架台32の横幅及び縦幅のうち短い方に合わせて敷材70の長さを設定して、投入の向き(図7及び図8参照)に関係なく架台32からの敷材70のはみ出しを回避しつつ敷材70の共通化を図ったが、これに限定されるものではない。各投入の向きに応じて個別の敷材を設定してもよい。
【0092】
また、敷材についの具体的な形状及び個数については任意である。上記実施の形態では2つの敷材70を併用したが、これら敷材70を連結して1の敷材を形成することも可能である。この場合、例えば敷材が矩形や井の字型の枠状をなす構成としてもよい。
【0093】
(6)上記実施の形態では、図5に示したように投入方向にて「脚部」としてのボルト脚42よりも奥側に敷材70が位置している場合(投入パターンの場合)に、架台32に補助ローラ75を装着したが、これに限定されるものではない。投入の向きとは無関係に、すなわちボルト脚42及び敷材70の位置とは無関係に、補助ローラ75を装着してもよい。
【0094】
なお、補助ローラ75については、床用ローラユニット85によってバスユニット30が支持された状態では、床板20の上面20aとの接触が回避されるように上下位置を規定したが、床用ローラユニット85による支持機能が担保されるのであれば、当該補助ローラ75(ローラ76)が上面20a上を転がる構成とすることも可能である。
【0095】
因みに、補助ローラ75の装着位置については任意であるが、ボルト脚42と床板20との干渉を回避する上では、投入方向にてボルト脚42よりも手前側となる位置又は横並びとなる位置とすることが好ましい。
【0096】
(7)上記実施の形態では、建物ユニット10を「搬送手段」としての建物ユニット用台車50に載せた状態で当該建物ユニット10にバスユニット30を搭載する構成としたが、建物ユニット10をコンベア等の搬送ラインに載せた状態で当該建物ユニット10にバスユニット30を搭載する構成とすることも可能である。
【0097】
(8)上記実施の形態では、「台車」としての建物ユニット用台車50に「支持機構」としてのローラユニット61を配設したが、スライド移動時の抵抗を軽減させることができるのでればあれば足りる。例えば、筒状のローラ62に代えて球状の転がり部材を配設してもよい。
【0098】
(9)「支持機構」としてのローラユニット61を固定ローラユニット61a及び可変ローラユニット61bにより構成し、可変ローラユニット61bの位置を変更することで、両ローラユニット61a,61b間の距離を敷材70の配置に合わせて(すなわちバスブロックの向きやサイズ等に合わせて)調整したが、このような調整が可能であれば足り、固定ローラユニット61aを可変式として2つの可変ローラユニット61bを併用することも可能である。
【0099】
(10)上記実施の形態では、工場内のアセンブリ工程にて建物ユニット10へのバスユニット30の搭載を行う場合について上記搭載方法を適用したが、例えば施工現場に建物ユニット10にバスユニット30を搭載する場合に同搭載方法を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0100】
10…躯体ユニットとしての建物ユニット、11…柱、12…床大梁、15…受け部としての受け金具、17…下開口部としての下開口、18…正面開口、20…床板、30…建物設備としてのバスユニット、31…設備本体としてのユニット本体、32…架台、35…浴室床部としての床パネル、38…浴槽、41…フレーム、42…脚部としてのボルト脚、50…建物ユニット用台車、60…台車としてのバスユニット用台車、61…支持機構としてのローラユニット、61a…固定ローラユニット、61b…可動ローラユニット、70…敷材、75…補助ローラ、85…床用ローラユニット、90…リフト装置、91…テーブル、95…リフト用ローラユニット、S1…浴室スペース、S2…脱衣所スペース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11