【実施例】
【0015】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0016】
自動印字システム及びインクジェットプリンタ:
図1は、カートリッジ式インクジェット記録装置を含む自動印字システムの一例の概略を示す図である。図示の自動印字システム1は、実施例のインクジェット記録装置2、ワーク検出センサ4、搬送速度センサ6及びディスプレイ装置8などで構成されている。
【0017】
インクジェット記録装置2は一般的に「インクジェットプリンタ」と呼ばれていることから、このインクジェットプリンタという用語を使って説明すると、このインクジェットプリンタ2はインクを連続的に噴射するコンティニュアス方式のプリンタである。実施例のインクジェットプリンタ2は、ワーク搬送ライン10に設置されてワーク搬送ライン10を流れるワークWに文字や図形を印字するのに用いられる。印字対象物であるワークWは、例えば電子部品、プラスチック袋などである。ワーク検出センサ4は、ワークWの有無を検出して印字を開始するトリガを出力し、このトリガ信号を受けてワークWに対する印字が開始される。
【0018】
インクジェットプリンタ2は、ワーク搬送ライン10の近傍に設置されるプリンタ本体200と、ワーク搬送ライン10に設置されるヘッド300とを有し、プリンタ本体200とヘッド300とは可撓性ホース12によって連結されている。プリンタ本体200とヘッド300とは、これらの間で速乾性のインク液が循環され、そして、ヘッド300は、次々と搬送されてくるワークWに対してドット印字を実行する。
図1の矢印はワークWの搬送方向を示す。
【0019】
回路構成(図2):
図2は、カートリッジ式インクジェットプリンタ2での液流れの回路図である。
図2を参照して、その概要を説明すると、プリンタ本体200はメインタンク202及びコンディショニングタンク204を有し、このメインタンク202及びコンディショニングタンク204に充満した気体は排気管206を介して大気中に排出される。
【0020】
メインタンク202内のインク液はインク循環管208によって循環される。このインク循環管208には、インク液の流れ方向に順に、メイン経路切替弁210、循環ポンプ212などが介装され、循環ポンプ212によってメインタンク202内のインク液がインク循環管208を通じて循環される。図中、Fはフィルタである。また、V1、V3〜V6などはダイアフラム式の電磁弁を示す。
【0021】
また、インク循環管208には、このインク循環管208を流れるインク液の一部を取り込んで、そのインク液の粘度を検出するための粘度計214が介装されている。この粘度計214で検出されるインク液の粘度によってメインタンク202内のインク液の濃度が監視される。
【0022】
メインタンク202へのインク液の補充はインクカートリッジ400によって行われる。インクカートリッジ400はインク補給管220を介して上記メイン経路切替弁210に接続され、このメイン経路切替弁210を制御することにより、インクカートリッジ400のインクがメインタンク202に供給される。
【0023】
メインタンク202への溶剤の補充は溶剤カートリッジ500によって行われる。溶剤カートリッジ500には、インク液の粘度を一定に保持するための溶剤である例えばメチルエチルケトン(MEK)が収容されている。
【0024】
プリンタ本体200は、溶剤カートリッジ500の近傍に光学式空検知機構700を有する。この光学式空検知機構700は後に詳しく説明する。図示の例では、溶剤カートリッジ500は、光学式空検知機構700及び「溶剤流通管」である溶剤補給管222を介して上記メイン経路切替弁210に接続されている。そして、このメイン経路切替弁210を制御することにより、溶剤カートリッジ500の溶剤がメインタンク202に供給され、この溶剤によってメインタンク202内のインクの濃度調整が行われる。すなわち、メインタンク202内のインクを、インク循環管208を通じて循環させながら粘度計214によってインクの濃度を検出し、この検出した濃度に対応した量の溶剤を溶剤カートリッジ500からメインタンク202に供給することにより、メインタンク202内のインクの濃度調整が行われる。
【0025】
メインタンク202はインク供給管230を通じてヘッド300に接続されている。インク供給管230にはインクポンプ232が介装され、このインクポンプ232によってメインタンク202のインクがヘッド300に供給される。
【0026】
ヘッド300は、周知のように、キャノン(加圧器)、ピエゾ素子、ノズル、帯電電極、偏向電極などの機構部品302を備え、この機構部品302によって帯電イオン粒の着弾位置が偏向されることによりワークWに対する印字が行われる。
【0027】
インク供給管230には、インクポンプ232の下流側に、インクの流れ方向に順に、減圧弁234、圧力計236が介装され、圧力計236で検出される圧力に応じてインクポンプ232の吐出圧が調整される。
【0028】
ヘッド300は、インク粒を受け入れるためのガター304を有している。ガター304はインク回収管240を通じてメインタンク202に接続され、このインク回収管240にはガターポンプ242が介装されている。ガター304で受け止められたインクはガターポンプ242によってプリンタ本体200に回収される。
【0029】
溶剤カートリッジ500は、図示の例では、上述した光学式空検知機構700及び「溶剤流通管」であるヘッド洗浄管250を通じてヘッド300に接続され、このヘッド洗浄管250には洗浄ポンプ252が介装されている。変形例として、洗浄ポンプ252の下流側に、上記光学式空検知機構700を配置してもよい。
【0030】
インクジェットプリンタ2の立ち上げ時や立ち下げ時には溶剤カートリッジ500からヘッド300に溶剤が供給され、この溶剤によってノズル、帯電電極、偏向電極などのヘッド300内の各部が洗浄される。洗浄に用いられた溶剤はガター304で受け止められ、インク回収管240を介してプリンタ本体200に回収される。
【0031】
ガター304で受け止められたインク又は溶剤は、インク回収管240に介装された第2の経路切替弁260によってメインタンク202又はコンディショニングタンク204に回収される。コンディショニングタンク204には回収した溶剤が蓄えられ、このコンディショニングタンク204の溶剤は、溶剤カートリッジ500内の溶剤よりも優先してメインタンク202に供給され、インクの濃度調整に使用される。
【0032】
プリンタ本体200とヘッド300との間のインク液の循環、メインタンク202に対する溶媒の補充つまりメインタンク202内のインク液の粘度の調整、メインタンク202内のインク液の循環、ヘッド300の構成、プリンタ本体200の回路の詳細に関して特許文献1(特開2007−190724号公報)に詳しく説明されていることから、この特許文献1の記載を本明細書に援用することにより、これ以上の詳しい説明は省略する。
【0033】
インクカートリッジ400、溶剤カートリッジ500のボトル(図3):
図3は、インクカートリッジ400、溶剤カートリッジ500の容器部分を構成するボトル800を示す。ボトル800は合成樹脂で作られた成型品である。ボトル800は、有底のボトル本体802と、このボトル本体802の一端面の中心部分から軸線方向に突出する突出部804とを有している。ボトル800の説明において、図示のように突出部804を上にしてボトル800を立てた状態で説明する。勿論、ボトル800は、たとえば
図6の状態のように上下反転させて、突出部804を下にした状態でプリンタ本体200に装着される。
【0034】
ボトル本体802は、4つの側面802aと、底面(作図上の理由で図に現れていない)と、頂面802cとを有し、この頂面802cの中央部分に突出部804が位置決めされている。そして、ボトル本体802は、隣接する各側面802a、802aとの間を面取りした形状の4つの側部コーナ部分802dを有している。また、上述したボトル底面と、各側面802aの下端及び側部コーナ部分802dの下端とは底部傾斜面802eで連結されている。同様に、頂面802cと、各側面802aの上端及び側部コーナ部分802dの上端とは上部傾斜面802fで連結されている。
【0035】
ボトル800は、その内容物である液体(インク又は溶剤)を吸い出すと、これに対応してボトル800が潰れて容積が小さくなる。ボトル800の頂面802cの中央部分及び突出部804が、変形に対して抵抗力を有するリジッド部分806を構成し、上記頂面802cの中央部分を除くボトル本体802が、内容物である液体が減少するのに対応して変形して容積が小さくなる減容化部分808を構成している。
【0036】
実施例では、側面802aと側部コーナ部分802dとが薄肉であるのに対して、上部傾斜面802f、底部傾斜面802e、底面802bが相対的に肉厚である。後述するように、ボトル800をブロー成形で作ると、ボトル800の口部812の中央を通る軸線から離れるに従って肉厚が薄くなるため、軸線から最も離れた側部コーナ部分802dは薄肉になる。この肉厚を調整することにより、ボトル本体802はその高さ方向の寸法の変化が殆ど無く、幅方向の寸法が小さくなることで減容化するように設計されている。すなわち、上部傾斜面802f、底部傾斜面802eの部分の肉厚を調整することで、ボトル本体802が規定された態様で幅方向に小さくなるように設計されている。勿論、ボトル本体802の減容化部分808をアルミニウムパウチ又は薄肉の可撓性樹脂材料で作り、この減容化部分808を比較的硬質の例えば合成樹脂成型品からなる外皮で覆うようにしてもよい。
【0037】
ボトル本体802の頂面802cの中央部分から軸線方向に突出する突出部804は、ボトル頂面802cから僅かに上方に延びた後に拡径した比較的大径の首部810と、この首部810の上端から上方に延びる比較的小径の口部812とで構成されている。ボトル800に内容物を充填した後に口部812にゴム栓(
図4に示す参照符号814)を挿入することでボトル800が封止される。
【0038】
リザーバ600(図4、図5):
プリンタ本体200は、インクカートリッジ400、溶剤カートリッジ500を脱着可能に受け入れるためのリザーバ600を備えている。リザーバ600は、ボトル800の口部812を密に受け入れる凹所610を有し、この凹所610の底の中央に中空針612が起立している(
図4)。この凹所610にボトル口部812が密に嵌入することにより、ボトル800はリザーバ600の凹所610によって保持された状態になる。中空針612は、ボトル口部812を密止するゴム栓814を貫通して、その先端部分がボトル800の内部に露出する。中空針612は、
図5から分かるように、その先端部に開口612aを有し、この開口612aを通じてボトル800の中の液体が吸い出される。
【0039】
光学式空検知機構700(図6〜図12):
まず、インクカートリッジ400が空になったことを検知する方法について、簡単に説明する。例えば、インクが流れる経路に電極を設け、インクの導電性を利用する方法がある(方法1)。具体的には、インク供給経路に一又は複数個の電極を設けたとき、導電性インクの有無によって、電極から得られる信号が変化する。この信号変化に基づいて、インク流路にインクが存在する/存在しないを検知する。ポンプを所定時間駆動してもインク流路にインクが存在しない場合、インクカートリッジ400が空になったと判断することができる。他にも例えば、メインタンクに液面レベル計を設ける方法がある(方法2)。具体的には、インク供給ポンプを所定時間駆動しても、その液面レベル計によりメインタンク内のインク増量が検知されないとき(タイムアウトしたとき)、インクカートリッジ400が空になったと判断することができる。このように、インクカートリッジ400の空検知については、幾つか方法が挙げられる。
【0040】
しかしながら、溶剤カートリッジ500が空になったことを検知することは、インクカートリッジ400の場合と比べて容易ではない。例えば、上述した方法1は使用できない。溶剤は、インクと異なる導電性を有しない場合がほとんどだからである。また、上述した方法2も使用できない。溶剤カートリッジ500から吸い出される溶剤は、メインタンク202以外に、コンディショニングタンク204に供給(貯留)される場合もあり、ポンプを駆動したからといって必ずしもメインタンク内の溶剤が増えるわけではないからである。
【0041】
なお、他にも例えば、単位時間あたりに溶剤カートリッジ500から吸い出される溶剤量が既知の場合において、ポンプ駆動時間を測定することにより、溶剤使用量をある程度推定することは可能である(溶剤使用量=単位時間あたりの吸出量×ポンプ駆動時間)。しかし、この方法は、溶剤カートリッジ500内の凡その残量を知るためには好ましいが、溶剤カートリッジ500が空になったか否かをより的確に把握することは困難である。
【0042】
そこで、本実施形態に係るインクジェットプリンタ2では、光学式空検知機構700を搭載するようにしている。これにより、溶剤カートリッジ500が空になったことをより的確に検知することができる。以下、図面を用いて詳述する。
【0043】
図6〜
図12は光学式空検知機構700を説明するための図である。
図6は光学式空検知機構700の配置位置を説明するための図である。
図6を参照して、溶剤カートリッジ500の中の溶剤Sは、
図2を参照して前述したように循環ポンプ212又は洗浄ポンプ252によって吸い出される。この溶剤カートリッジ500は密封状態が維持されていることから、循環ポンプ212又は洗浄ポンプ252の吸い出しに伴って溶剤カートリッジ500のボトル800は潰れて、その容積が小さくなる(減容化)。溶剤カートリッジ500は、これを製造する過程で、溶剤Sを充填したボトル800をゴム栓814(
図4)で密封した後で所定量のガス、典型的には空気Arがボトル800の中に存在するように、ボトル800の中に充填する溶剤Sの量が規定される。光学式空検知機構700は、光学式空検知ユニット702と、好ましくは電磁開閉弁704とを含む。
【0044】
図7は光学式検知ユニット702の斜視図である。光学式検知ユニット702はユニット本体710とホルダ712とで構成されている。
図8は、光学式検知ユニット702からホルダ712を取り外した状態つまりユニット本体710の斜視図である。
図9は、
図7のX9―X9線に沿って断面した図である。
【0045】
図8を参照して、ユニット本体710は、プリンタ本体200の内部配管の一部を構成する光透過管720と、投光器722と、受光器724とで構成されている。光透過管720は透明管、典型的にはガラス管、フッ素樹脂(PFA)管で構成される。投光器722、受光器724は光透過管720に臨んで配置されている(
図9)。この光透過管720に臨む投光器722、受光器724は、その投光部及び受光部が光ファイバを主体に構成されており、この光ファイバの基端に投光器本体、受光器本体が接続される。この種の投受光器は従来から既知であるので、その詳しい説明は省略する。
【0046】
図10、
図11は光透過管720を透過する光を使って溶剤カートリッジ500が空になったことを検知する本発明の原理を説明するための図である。つまり透過方式の検知である。
【0047】
図10、
図11の(A)は、光透過管720にエアが入ったときの光の屈折を示し、(B)は、光透過管720が溶剤Sで満たされたときの光の屈折を示す。
図12は反射型投受光器を採用したときの本発明の原理を説明するための図である。
図12の(A)は、光透過管720にエアが入ったときの光の屈折を示し、(B)は、光透過管720が溶剤Sで満たされたときの光の屈折を示す。
【0048】
光透過管720の材料としてガラスを採用したときには、ガラスの屈折率は1.45である。光透過管720の材料としてフッ素樹脂(PFA)を採用したときには、PFAの屈折率は1.35である。
【0049】
溶剤カートリッジ500には、一般的にメチルエチルケトン(MEK)やエタノールが用いられる。MEKの屈折率は1.38であり、エタノールの屈折率は1.35である。これに対して空気の屈折率は1.0003であり、この値は、MEKやエタノールの上述した屈折率とは大きく異なる。
【0050】
溶剤と空気の屈折率の違いを利用したのが本発明の一つの特徴である。
図10に図示の例では、光透過管720がガス(典型的には空気)で満たされたときに、光透過管720の軸線に対して傾斜した姿勢で配置した投光器722からの光を受光器724が受け入れるように、投光器722及び受光器724の傾斜角度及び相対的な配置が規定されている(
図10(A))。したがって、光透過管720に溶剤Sが存在しているときには、その屈折率の違いによって、投光器722からの光を受光器724で受け止めることはできない(
図10(B))。
【0051】
前述したように、溶剤カートリッジ500には、その内部に所定量の空気が封入してある。このことは、溶剤カートリッジ500が潰れて減容化するボトル800で構成されていることに関連している。ボトル800が減容化しないボトルつまり形態を維持した状態で溶剤を取り出す形式のボトルの場合には、溶剤を取り出す際に空気をボトル内に入れることから、予めボトル内に所定量のエアを封入する必要はない。
【0052】
溶剤カートリッジ500のボトル800の残量が少なくなるとボトル800は潰れて減容化する。ボトル800の残量がゼロになると、ボトル800の中の空気(エア)が光透過管720に入り込む。光透過管720の中に空気が入り込むと、投光器722からの投光が徐々に受光器724で受け止められるようになる。どの程度の光を受光器724が受け取ったときに受光器724の出力を反転させるかは受光器724のしきい値を調整すればよい。これにより、溶剤カートリッジ500が空になったことを直接的に検知することができる。
【0053】
なお、
図10には、投光器722と受光器724とが光透過管720の周方向に離間して配置した例が開示されているが、投光器722と受光器724とを光透過管720の軸線方向に離間して配置してもよいのは勿論である。
【0054】
図10に図示の例では、光透過管720を縦置きに配置してもよいし、横置きに配置してもよい。また、光透過管720の断面形状は任意であり、断面円形でもよいし、矩形でもよいし、楕円や扁平な断面形状であってもよい。変形例として、光透過管720が溶剤で満たされたときに投光器722からの光を受光器724が受け入れるように、光透過管720の軸線に対する投光器722及び受光器724の傾斜角度及び相対的な配置を規定してもよい。
【0055】
図11の例は非透明の有色の溶剤に好適に適用可能である。この
図11の例は、光透過管720の中にガス(典型的には空気)が存在するときと有色の溶剤が存在するときとで、光透過管720を横断して通過する光の減衰度合いの違いを利用している。これが本発明の他の一つの特徴である。
【0056】
図11を参照して、詳しく説明すると、投光器722と受光器724は、光透過管720を挟んで互いに対面して配置されると共に、投光器722及び受光器724の光軸が光透過管720の軸線に対して直交するように位置決めされている。
図11の(A)は、光透過管720の中に空気が存在するときを示す。この
図11(A)の状態では、投光器722から出射した光は光透過管720を横断して受光器724によって受け止められる。
【0057】
図11の(B)は、光透過管720の中に有色の溶剤が存在するときを示す。この
図11(B)の状態では、投光器722から出射した光は光透過管720の中に存在する有色の溶剤によって減衰され、受光器724によって受け止められる光の量は、ゼロ又は
図11の(A)のときに比べて相対的に小さくなる。どの程度の光を受光器724が受け取ったときに受光器724の出力を反転させるかは受光器724のしきい値を調整すればよい。これにより、溶剤カートリッジ500が空になったことを直接的に検知することができる。
【0058】
図12は、光透過管720で反射する光を使って溶剤カートリッジ500が空になったことを検知する本発明の他の原理を説明するための図である。つまり反射方式の検知である。この検知方法は、光透過管720の材料の屈折率と溶剤の屈折率が近似している場合に効果的である。
図12の(A)は光透過管720の中に空気が存在するときを示す。
図12の(B)は光透過管720の中に溶剤が存在するときを示す。
【0059】
図12に図示の例では、光透過管720がエアで満たされたときに、投光器722から出射された光が、光透過管720と、その中の空気との境界面で反射された光を、受光器724が受け入れるように、投光器722及び受光器724の傾斜角度及び相対的な配置が規定されている(
図12(A))。したがって、光透過管720に溶剤Sが存在しているときには、光透過管720と、その中の溶剤Sとの境界面での反射が少なくなるため投光器722からの光を受光器724で受け止めることはできない(
図12(B))。
【0060】
投光器722と受光器724の配置に関する変形例として、光透過管720が溶剤Sで満たされたときに、投光器722から出射された光が受光器724で受け入れられるように、投光器722及び受光器724の傾斜角度及び相対的な配置を規定してもよい。
【0061】
なお、本実施形態では、
図8に示す光透過管720は、溶剤補給管222やヘッド洗浄管250など溶剤が流れる溶剤流通管よりも径が大きい管となっている。これにより、溶剤が光透過管720の内部で溜まりやすくなり、光学式空検知ユニット702による空検知の精度を高めることができる。但し、本発明はこれに限られず、光透過管720として、溶剤流通管と同径の管を用いてもよいことは勿論である。なお、「溶剤流通管」は、リザーバ600に接続され、リザーバ600に取り付けられた溶剤カートリッジ500の溶剤が流れるものであり、溶剤補給管222やヘッド洗浄管250を含む概念である。ヘッド洗浄管250を流れる溶剤は、機構部品302から吐出され、ガター304で回収され、インク回収管240を流れて、メインタンク202又はコンディショニングタンク204に供給される。
【0062】
また、本実施形態では、光透過管720を溶剤流通管と別部材にし、投光器722、受光器724及び光透過管720を、光学式空検知ユニット702としてユニット化しているので、投光器722や受光器724に不具合があった場合、光学式空検知ユニット702だけを容易に交換することができるので、メンテナンス性がよい。但し、本発明はこれに限られず、光透過管720と溶剤流通管とが同一部材からなっていてもよいことは言うまでもない。
【0063】
溶剤カートリッジ500の空検知(図13〜図16):
光学式空検知機構700によって溶剤カートリッジ500が空になったことを検知する具体的な制御例を説明する。
図13は、インクジェットプリンタ2の制御に関連したブロック図である。インクジェットプリンタ2に含まれる各種の電磁弁、ポンプ、バルブ(
図2)は信号処理部900によって制御される。信号処理部900は、既知のように、CPUやMPUなどのプロセッサと、RAM、ROMなどのメモリなどで構成されている。上記の光学式空検知機構700の信号は信号処理部900に入力される。信号処理部900には、ディスプレイ装置8や後に説明するカートリッジの交換を促す報知部902が電気的に接続されている。
【0064】
溶剤カートリッジ500の溶剤が空になったか否かの空検知処理の手順の一例を
図14〜
図16のフローチャートに基づいて説明する。
図14はメインフローであり、
図15、
図16はサブフローである。
図14〜
図16の処理は上記信号処理部900によって行われる。
【0065】
図14のメインフローは、溶剤カートリッジ500からメインタンク202に溶剤を供給して、メインタンク202のインク液の粘度調整を行うときに実行される。溶剤カートリッジ500を使用したメインタンク202の粘度調整を行う信号が生成されると(S1)、プリンタ本体200内に溶剤カートリッジ500の負圧よりも大きな負圧を発生させるための動作が開始される(負圧発生動作:S2)。
【0066】
負圧発生動作処理(図15):
図15のステップS201において、プリンタ本体200の各種のバルブが制御されて、溶剤カートリッジ500から溶剤をメインタンク202(
図2)に取り込むための経路が作られる。そして、電磁開閉弁704(
図6)を閉じる(S202)。循環ポンプ212(
図2)の動作によって、電磁開閉弁704から循環ポンプ212に至る経路の負圧が溶剤カートリッジ500内の負圧よりも大きくなるのに十分な時間、電磁開閉弁704は閉じ状態が継続される。
【0067】
溶剤タンク500の空検知処理:
図14に戻って、ステップS3で電磁開閉弁704(
図6)が開弁される。この電磁開閉弁704の開放によって溶剤カートリッジ500の溶剤の吸い込みが開始される。この電磁開閉弁704の開弁状態は、メインタンク202(
図2)のインク液の粘度が目標粘度から乖離しているその度合いに応じた時間、継続される。そして、このメインタンク202内のインク液の粘度調整が完了すると電磁開閉弁704が閉弁される(S4)。
【0068】
次のステップS5において、光学式空検知機構700によって溶剤カートリッジ500の空状態が検知されたか否かを判断する。具体的には受光器724からの信号に基づいてステップS5の判断が行われる。受光器724からの「受光信号」は、受光量を示すアナログ信号であってもよいし、アナログ信号に所定の処理(ノイズ除去等)を施した信号であってもよいし、デジタル化した信号であってもよい。ステップS5において、NOつまり溶剤カートリッジ500に残量が存在すると判別されたときには、ステップS6に進んで空検知処理を終える。
【0069】
前記ステップS5においてYESつまり溶剤カートリッジ500の残量がゼロと判別されたときには、次の念のための確認処理(空検知リトライ処理)が実行される(S7)。
【0070】
空検知リトライ処理(図16):
この空検知リトライ処理は、先ず、負圧発生動作を実行する(S701)。すなわち、電磁開閉弁704(
図6)が短時間、開弁される(S702)。この電磁開閉弁704の開弁時間は、溶剤カートリッジ500の溶剤を光学式空検知ユニット702(光透過管720)まで引き込むのに足りる時間である。そして、この所定時間が経過したら電磁開閉弁704を閉じる(S703)。そして次のステップS704に進んで、光学式空検知機構700によって溶剤カートリッジ500の空状態が検知されたか否かを判断し、NOつまり溶剤カートリッジ500に残量が存在すると判別されたときには、ステップS705に進んで、溶剤カートリッジ500は空ではない、つまり溶剤の残量があると判定して、後に説明するステップS8(
図14)に進む。
【0071】
前記ステップS704においてYESつまり溶剤カートリッジ500の残量がゼロと判別されたときには、次のステップS706で空検知回数をインクリメントした後にステップS707で、この空検知回数が規定回数に達したか否かを判別する。上記の空検知の回数が規定の回数に達したらステップS708に進んで、溶剤カートリッジ500は空であると判定して、後に説明するステップS8(
図14)に進む。
【0072】
図14に戻って、上記の空検知リトライ処理が完了したら次のステップS8に進んで空判定の有無が判別され、YESであれば、ステップS9で溶剤カートリッジ500の残量がゼロつまりカートリッジ500には溶剤が残存していないと判定して、これに対応した処理が実行される。空判定に伴う処理を例示すれば、ディスプレイ装置8においてカートリッジの交換を促す警告を発したり、溶剤カートリッジ500が記録媒体を備えている場合には、この記録媒体に残量ゼロを書き込む等を挙げることができる。
【0073】
上記ステップS8においてNO、つまり溶剤カートリッジ500には溶剤が残っているとの判定であれば、ステップS10に進んで、プリンタ本体200の通常の動作に移行する。