(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)樹脂製の基材層、(b)ゴム弾性樹脂を含む弾性層、及び(c)ウレタンゴム及び疎水性フィラーを含み、且つ水接触角が90°以上である表面層をこの順に積層させてなり、
前記疎水性フィラーが、フッ素樹脂フィラー、シリコーン樹脂フィラー、及び表面が疎水化処理されたシリカよりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記フッ素樹脂フィラーが、ポリテトラフルオロエチレン及び/又はテトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体であり、且つ、
前記ウレタンゴム100重量部当たり、前記フッ素樹脂フィラーの含有量が40〜100重量部、前記シリコーン樹脂フィラーの含有量が40〜150重量部、前記疎水化処理されたシリカの含有量が60〜180重量部であることを特徴とする、画像形成装置用の中間転写ベルト。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の中間転写ベルトは、(a)樹脂製の基材層、(b)ゴム弾性樹脂を含む弾性層、及び(c)ウレタンゴム及び疎水性フィラーを含み、且つ水接触角が90°以上である表面層をこの順に積層させてなることを特徴とする、画像形成装置用の中間転写ベルトである。以下、本発明の中間転写ベルトについて詳述する。
【0015】
1.中間転写ベルトの層構成及び各層の組成
(a)基材層
本発明の中間転写ベルトにおいて基材層は、駆動時にかかる応力によるベルトの変形を回避するため、引張、圧縮等の外力に対する耐久性に優れた樹脂で形成される。
【0016】
基材層を形成する樹脂としては、画像形成装置用の中間転写ベルトの基材層に求められる物性を充足し得る樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの樹脂の中でも、好ましくはポリイミドが挙げられる。
【0017】
基材層の形成に使用されるポリイミドは、通常、モノマー成分としてテトラカルボン酸二無水物とジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。
【0018】
前記テトラカルボン酸二無水物の種類については、特に制限されないが、例えば、ピロメリット酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、2,3,5,6−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、アゾベンゼン−3,3',4,4'−テトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の酸二無水物が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
前記ジアミンの種類については、特に制限されないが、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4'−ジアミノビフェニル、ベンジジン、3,3'−ジメチルベンジジン、3,3'−ジメトキシベンジジン、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノアゾベンゼン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、β,β−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等が挙げられる。これらのジアミンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
前記ジイソシアネートとしては、前記したジアミン成分におけるアミノ基がイソシアネート基に置換した化合物等が挙げられる。
【0021】
また、基材層の形成に使用されるポリアミドイミドは、トリメリット酸とジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。この場合、ジアミン又はジイソシアネートは、前記のポリイミドの原料と同じものを用いることができる。また、縮重合の際に用いられる溶媒としては、ポリイミドの場合と同様のものを挙げることができる。
【0022】
また、基材層は、中間転写ベルトに適した導電性を備えるために、導電剤が含まれていることが好ましい。導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト等の導電性炭素系物質;アルミニウム、銅合金等の金属又は合金;酸化錫、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等が挙げられる。これらの導電剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせ使用してもよい。これらの導電剤の中でも、好ましくは導電性炭素系物質、更に好ましくはカーボンブラックが挙げられる。
【0023】
基材層における導電剤の含有割合については、特に制限されないが、例えば5〜30重量%が挙げられる。
【0024】
基材層の厚さは、駆動時に転写ベルトにかかる応力や外力に対する耐久性を考慮して適宜設定され得るが、例えば30〜120μm、好ましくは50〜100μmが挙げられる。
【0025】
基材層は、樹脂、溶媒、及び必要に応じて添加される添加剤を含む基材層形成用組成物を用いて所望のベルト状に成型することによって形成することができる。
【0026】
例えば、ポリイミドを含む基材層を形成する場合であれば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、溶媒中で反応させて、一旦ポリアミック酸溶液とし、更に、必要に応じて添加される添加剤をポリアミック酸溶液中に分散させた基材層形成用組成物を使用することが好ましい。
【0027】
前記ポリアミック酸溶液において使用される溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の非プロトン系有機極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの溶媒の中でも、好ましくはNMPが挙げられる。
【0028】
前記基材層形成用組成物における固形分濃度については、特に制限されないが、例えば10〜40重量%が挙げられる。ここで、固形分濃度とは、基材層を形成する成分の総量の濃度であり、基材層形成用組成物において基材層の形成時に揮発して除去される成分以外の濃度を示す。
【0029】
前記基材層形成用組成物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂、溶媒、及び必要に応じて添加される添加剤(導電剤等)等の材料を配合した後ボールミル等を用いて混合する方法が挙げられる。
【0030】
(b)弾性層
本発明の中間転写ベルトにおける弾性層は、主に、紙等の記録媒体に対する追従性の向上の目的で設けられる。ここで、「ゴム弾性」とは、ゴム状態の高分子物質に観測される大きな弾性変形挙動を指す。
【0031】
ゴム弾性樹脂としては、前述のゴム弾性をもつ樹脂であれば特に限定されないが、具体的には、ウレタンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)等が挙げられる。これらのゴム弾性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせ使用してもよい。これらのゴム弾性樹脂の中でも、弾性層と表面層の密着性と凹凸追従性をより一層向上させるという観点から、好ましくはウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、更に好ましくはウレタンゴムが挙げられる。
【0032】
弾性層の形成に使用されるウレタンゴムは、ポリオールとジイソシアネートの重付加反応により得ることができる。原料であるポリオールとジイソシアネートの混合比は、ポリオールの活性水素1当量に対しジイソシアネートのNCO基が1〜1.2当量程度となるように混合すればよい。また、ポリオールとジイソシアネートの重合を進めたプレポリマーを用いることもでき、この場合、更に硬化剤としてジイソシアネート又はポリオールをプレポリマーに添加してもよい。また、ポットライフを長くするためジイソシアネートプレポリマーのNCO末端をブロック剤でブロックしたものを用いてもよい。
【0033】
前記ウレタンゴムの構造については、特に制限されないが、例えば、主鎖がエステル結合のポリエステル系ウレタンゴム(AU)、主鎖がエーテル結合のポリエーテル系ウレタンゴム(EU)等が挙げられる。ウレタンゴムとして、より具体的には、大日本インキ(株)製のウレハイパーRUP1627(ポリウレタンエラストマー)等が挙げられる。
【0034】
また、弾性層の形成に使用されるシリコーンゴムとしては、例えば、付加型液状シリコーンゴム等が挙げられ、具体的には、KE−106、KE1300(いずれも信越化学(株)製)等が挙げられる。
【0035】
弾性層の形成に使用されるフッ素ゴムとしては、例えば、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレン系(FEPM)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系(FFKM)等が挙げられる。フッ素ゴムとして、より具体的には、フッ素ゴムコート材GLS−213F、GLS−223F(ダイキン工業(株)製)、フッ素ゴムコート材FFX−401161(太平化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0036】
弾性層の形成に使用されるブチルゴムとしては、例えば、イソブチレン−イソプレン共重合体が挙げられる。
【0037】
弾性層の形成に使用されるアクリルゴムは、アクリル酸エステルの重合、又はそれを主体とする共重合により得ることのできるゴム状弾性体である。
【0038】
弾性層には、必要に応じて、前記(a)基材層において例示される導電剤や、リチウムイオン塩、イミダゾリウム(イオン液体として添加)、4級アンモニウム塩等のイオン導電剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0039】
弾性層における導電剤の添加量は、中間転写ベルトとして調製された場合に表面抵抗率が1×10
10〜1×10
13となるように調整することが好ましい。ゴム弾性樹脂としてウレタンゴムを使用する場合には、ウレタンゴムがイオン電導性を有することから導電剤を添加する必要はないが、例えば、フッ素ゴムを使用する場合には単体では抵抗が高いため導電剤を添加して表面抵抗率を前記範囲となるように調整することが望ましい。このとき添加される導電剤の量は、例えばイオン導電剤を使用する場合にはゴム弾性樹脂の重量に対して0.1〜3重量%が挙げられ、導電性炭素物質を使用する場合にはゴム弾性樹脂の重量に対して5〜40重量%が挙げられる。
【0040】
弾性層の厚みは、感光体と中間転写ベルトとの接触圧を低く保つことができ、ライン中抜けや色ずれ等の転写不良を防止可能な厚みとなるように適宜設定され得るが、通常200〜400μm、好ましくは200〜350μm、更に好ましくは200〜300μmが挙げられる。
【0041】
弾性層のタイプA硬度(JIS K6253)については、特に制限されないが、例えば、80°以下、好ましくは20〜80°、更に好ましくは20〜70°が挙げられる。ここで、タイプA硬度とはゴムの柔らかさを示す値である。タイプA硬度が80°以下であれば十分な凹凸追従性を確保でき、1次転写時にトナーが濃く乗っているところに応力が集中することによる中抜け現象を抑制することができる。また、タイプA硬度が30°以上であれば、柔らか過ぎてベルト駆動時に発生する応力が表面層に集中するのを抑制して、十分な耐久性を備えさせることが可能になる。
【0042】
弾性層は、ゴム弾性樹脂又はその原料(プレポリマー、モノマー、硬化剤等)を溶媒に溶解させて、必要に応じて添加される添加剤を配合した弾性層形成用組成物を用いて形成される。
【0043】
ゴム弾性樹脂又はその原料を溶媒に溶解させて液状とする場合、使用される溶媒としては、特に限定されず、公知の溶媒から適宜選択され得るが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組合せ使用してもよい。これらの溶媒の中でも、好ましくは、トルエン、キシレン、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルが挙げられる。
【0044】
前記弾性層形成用組成物中の固形分濃度は、製造方法によって適宜設定することができるが、例えば、50〜90重量%が挙げられる。ここで、固形分濃度とは、弾性層を形成する成分の総量の濃度であり、弾性層形成用組成物において弾性層の形成時に揮発して除去される成分以外の濃度を示す。
【0045】
前記弾性層形成用組成物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、材料配合後ボールミル等を用いて混合する方法が挙げられる。
【0046】
(c)表面層
本発明の中間転写ベルトにおける表面層は、直接トナーを乗せ、トナーを記録媒体へ転写、離型するための層である。本発明において表面層は、ウレタンゴム及び疎水性フィラーを含み、且つ水接触角が90°以上に設定される。このような特性の組成及び特定の物性値を示す表面層を形成することによって、弾性層との密着性を向上させつつ、優れた凹凸追従性を備えさせることが可能になる。
【0047】
ウレタンゴムは、弾性層との密着性を向上させつつ、表面層に柔軟性を付与して優れた凹凸追従性を備えさせるために使用される。表面層の形成に使用されるウレタンゴムの種類等については、弾性層の形成に使用される樹脂として例示したウレタンゴムと同様である。
【0048】
表面層におけるウレタンゴムの含有割合は、水接触角が所定範囲を充足できることを限度として特に制限されないが、例えば35〜83重量%、好ましくは35〜65重量%、より好ましくは35〜50重量%、更に好ましくは40〜50重量%が挙げられる。
【0049】
疎水性フィラーは、表面層の水接触角を90°以上に調整し、トナーの離型性を良好にして優れた凹凸追従性を備えさせるために使用される。表面層の形成に使用される疎水性フィラーの種類については、前記水接触角を充足させ得る疎水性を示すことを限度として特に制限されず、例えば、疎水性を示す素材自体からなるフィラーであっても、また親水性を示す素材の表面が疎水化処理されているフィラーであってもよい。
【0050】
疎水性を示す素材自体からなるフィラーとしては、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリビニリデンフロライド(PVdF)等のフッ素樹脂フィラー;シリコーン樹脂フィラー等の無機フィラー等が挙げられる。
【0051】
また、親水性を示す素材の表面が疎水化処理されているフィラーとしては、具体的には、シリカ、タルク等の親水性無機フィラーの表面が疎水化処理されているものが挙げられる。親水性を示す素材表面の疎水化処理は公知の方法に従って行うことができる。具体的には、親水性を示す素材(親水性フィラー)の親水基(水酸基、カルボキシル基、アミド基等)に、疎水性カップリング剤、疎水性ポリマー等を結合させることにより、疎水化処理を行うことができる。疎水化処理に使用される疎水性カップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等の疎水性シランカップリング剤等が挙げられる。
【0052】
これらの疎水性フィラーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの疎水性フィラーの中でも、好ましくはPTFE、PFA、シリコーン樹脂、疎水化処理されたシリカが挙げられる。
【0053】
また、疎水性フィラーの平均粒子径については、特に制限されないが、例えば0.1〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.0μm、更に好ましくは0.1〜0.7μmが挙げられる。なお、本明細書において、疎水性フィラーの平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定されるメジアン径(d50:累積が50%時の粒子径の値)である。
【0054】
表面層における疎水性フィラーの含有割合については、使用する疎水性フィラーの疎水性の強さに応じて、水接触角が所定範囲を充足できるように適宜設定すればよい。疎水性が高い疎水性フィラーを使用する場合、含有割合が少なく設定しても水接触角を所定範囲に充足させることができ、疎水性が低い疎水性フィラーを使用する場合、含有割合を多く設定することにより水接触角を所定範囲に充足させることができる。このように、表面層における疎水性フィラーの含有割合については、使用する疎水性フィラーの種類によって異なり、一律に規定することはできないが、例えば、ウレタンゴム100重量部当たり、疎水性フィラーが20〜180部が挙げられる。より具体的には、疎水性フィラーとして、ビニルトリメトキシシランにより疎水化処理したシリカを使用する場合であれば、ウレタンゴム100重量部当たり、疎水性フィラーが好ましくは60〜180重量部、更に好ましくは100〜150重量部;疎水性フィラーとして、ビニルトリエトキシシランにより疎水化処理したシリカを使用する場合であれば、ウレタンゴム100重量部当たり、疎水性フィラーが好ましくは20〜180重量部、更に好ましくは20〜150重量部;疎水性フィラーとして、フッ素樹脂フィラーを使用する場合であれば、ウレタンゴム100重量部当たり、疎水性フィラーが好ましくは40〜100重量部、更に好ましくは80〜100重量部;疎水性フィラーとして、シリーコン樹脂粒子を使用する場合であれば、ウレタンゴム100重量部当たり、疎水性フィラーが好ましくは40〜150重量部、更に好ましくは60〜120重量部が挙げられる。
【0055】
本発明において、疎水性フィラーの含有割合を調整することにより表面層の水接触角を90°以上に設定する。このような水接触角を満たすことによって、優れた凹凸追従性を備えることが可能になる。より一層優れた凹凸追従性を備えさせるという観点から、表面層の水接触角として、好ましくは90〜140°、更に好ましくは100〜140°が挙げられる。
【0056】
表面層の厚みについては、特に制限されないが、通常2〜6μm、好ましくは2〜5μm、更に好ましくは2〜4μmが挙げられる。
【0057】
表面層は、前記ウレタンゴム又はその原料(プレポリマー、モノマー、硬化剤等)を溶媒中で液状にしたウレタンゴム溶液に疎水性フィラーを分散させた表面層形成用組成物によって形成される。
【0058】
表面層形成用組成物に使用される溶媒の種類は、前記弾性層形成用組成物の調製に使用される溶媒と同様である。
【0059】
また、表面層形成用組成物中の固形分濃度は、製造方法によって適宜設定することができるが、例えば、5〜30重量%が挙げられる。ここで、固形分濃度とは、表面層を形成する成分の総量の濃度であり、表面層形成用組成物において表面層の形成時に揮発して除去される成分以外の濃度を示す。
【0060】
前記表面層形成用組成物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、材料配合後ボールミル等を用いて混合する方法が挙げられる。
【0061】
他の層
本発明の中間転写ベルトは、基材層、弾性層、及び表面層以外に、本発明の効果を損なわないことを限度として、他の層が設けられていてもよい。例えば、基材層と弾性層の間に、これらの密着性を向上させるために接着性樹脂を含むプライマー層を必要に応じて有していてもよい。
【0062】
2.中間転写ベルトの形状
本発明の中間転写ベルトは、継目のない(シームレス)形状であることが望ましい。また、本発明の中間転写ベルトの総厚みは、通常300〜550μm、好ましくは300〜450μmが挙げられる。
【0063】
3.中間転写ベルトの適用対象
本発明の中間転写ベルトが適用される画像形成装置の種類については、特に制限されず、例えば、複写機、プリンター、ファクシミリ等が挙げられる。
【0064】
4.中間転写ベルトの製造方法
本発明の中間転写ベルトの製造方法については、前記基材層、弾性層、及び表面層が順に積層された中間転写ベルトが得られる限り特に制限されないが、例えば、下記工程を含む方法が挙げられる。
(1)基材層形成用組成物を遠心成型してベルト状の基材層を形成する工程、
(2)前記(1)で形成されたベルト状の基材層の表面に弾性層形成用組成物を塗布して弾性層を形成する工程、
(3)前記(2)で形成された弾性層の表面に、表面層形成用組成物を塗布して表面層を形成する工程。
【0065】
以下、各工程について説明する。本発明の中間転写ベルトの製造方法において使用する原料やその含有量等は、前述の通りである。
【0066】
工程(1)(ベルト状の基材層の形成)
工程(1)では、基材層形成用組成物を遠心成型してベルト状の基材層を形成する。遠心成型は、円筒状金型等を用いて行うことができる。基材層形成用組成物の使用量は、得られる基材層の厚みが前述する範囲となるように調整すればよい。
【0067】
遠心成型によってシームレスのベルト状に樹脂を成型する方法については公知であり、本工程(1)は公知の遠心成型の方法に従って実施できる。以下に、ポリイミドによってベルト状に成型された基材層を形成する場合を例に挙げて、本工程(1)について説明する。
【0068】
基材層の遠心成型は、基材層形成用組成物を投入した円筒状金型を回転させながら加熱することにより行うことができる。加熱は、回転ドラム(円筒状金型)の内面を徐々に昇温し100〜190℃程度、好ましくは110〜130℃程度に到達せしめる(第1加熱段階)。昇温速度は、例えば、1〜2℃/分程度であればよい。前記の温度で20分〜2時間維持し、およそ半分以上の溶剤を揮発させて自己支持性のある管状ベルトを成形する。また、第1加熱段階における回転ドラムの回転速度は重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度であることが好ましい。一般に、重力加速度(g)は9.8(m/s
2)である。
【0069】
遠心加速度(G)は下記式(I)から導かれる。
G(m/s
2)=r・ω
2=r・(2・π・n)
2 (I)
ここで、rは円筒金型の半径(m)、ωは角速度(rad/s)、nは1秒間での回転数を示す。前記式(I)より、円筒状金型の回転条件を適宜設定することができる。
【0070】
次に、第2段階加熱として、280〜400℃程度、好ましくは300〜380℃程度で処理してイミド化を完結させる。この場合も、第1段階加熱温度から一挙にこの温度に到達するのではなく、徐々に昇温して、その温度に達するようにすることが望ましい。なお、第2段階加熱は、管状ベルトを回転ドラムの内面に付着したまま行ってもよく、また第1加熱段階終了後に、回転ドラムから管状ベルトを剥離し、取り出して別途イミド化のための加熱手段に供して、280〜400℃になるように加熱してもよい。このイミド化の所用時間は、通常20分〜3時間時間程度が挙げられる。
【0071】
工程(2)(弾性層の形成)
前記工程(1)で形成されたベルト状の基材層の表面に弾性層形成用組成物を塗布して弾性層を形成する。
【0072】
ベルト状の基材層の表面に弾性層形成用組成物を塗布する方法としては、特に制限されないが、例えば、リップコート法、フローコート法、ロールコート法、グラビアロール法、マイヤバー法等の塗布方法が挙げられる。弾性層形成用組成物の塗布量は、得られる弾性層の厚みが前述する範囲となるように調整すればよい。
【0073】
ベルト状の基材層の表面に弾性層形成用組成物を塗布した後に、100〜160℃程度、20〜60分程度、好ましくは20〜40分程度の条件で加熱処理に供することにより、溶媒が揮発され、基材層上に弾性層が製膜される。また、弾性層形成用組成物にゴム弾性樹脂の原料(プレポリマー、モノマー、硬化剤等)が含まれている場合には、前記加熱処理によって、これらが架橋又は硬化することによりゴム弾性樹脂が形成され、基材層上に弾性層が製膜される。
【0074】
工程(3)(表面層の形成)
前記工程(2)で形成された弾性層の表面に、表面層形成用組成物を塗布して表面層を形成する。
【0075】
弾性層の表面に表面層形成用組成物を塗布する方法としては、特に制限されず、前記工程(2)と同等の塗布方法で行えばよい。表面層形成用組成物の塗布量は、得られる表面層の厚みが前述する範囲となるように調整すればよい。
【0076】
弾性層の表面に表面層形成用組成物を塗布した後に、100〜140℃程度、20〜40分程度、好ましくは20〜30分程度の条件で加熱処理に供することにより、溶媒が揮発され、弾性層上に表面層が製膜される。また、表面層形成用組成物にウレタンゴムの原料(プレポリマー、モノマー、硬化剤等)が含まれている場合には、前記加熱処理によって、これらが架橋又は硬化することによりウレタンゴムが形成され、弾性層上に表面層が製膜される。
【0077】
斯して、基材層、弾性層、及び表面層が順に積層されたシームレスの本発明の中間転写ベルトが製造される。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す疎水性フィラーの平均粒子径は、日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000IIを用いてレーザー回折・散乱法により測定されたメジアン径である。
【0079】
(1)中間転写ベルトの製造
実施例1
以下の手順で、基材層、弾性層、及び表面層を形成し、シームレスの中間転写ベルトを製造した。
【0080】
(基材層形成)
窒素流通下、N−メチル−2−ピロリドン488gに、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)47.6gを加え、50℃に保温、撹拌して完全に溶解させた。この溶液に、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)70gを除々に添加し、ポリアミック酸溶液605.6gを得た。このポリアミック酸溶液の数平均分子量は19,000、粘度は43ポイズ、固形分濃度は18.1重量%であった。
【0081】
次に、このポリアミック酸溶液450gに、酸性カーボンブラック(pH3.0)21gとN−メチル−2−ピロリドン80gを加えて、ボールミルにてカーボンブラック(CB)の均一分散を行って、基材層形成用組成物を得た。基材層形成用組成物中の固形分濃度は18.5重量%、該固形分中のカーボンブラック濃度は20.4重量%であった。次いで、基材層形成用組成物273gを回転ドラム内に注入し、次の条件で製膜した。
【0082】
回転ドラム:内径301.5mm、幅540mmの内面鏡面仕上げの金属ドラムが2本の回転ローラー上を載置し、該ローラーの回転とともに回転する状態に配置した。
【0083】
加熱温度:該ドラムの外側面に遠赤外線ヒータを配置し、該ドラムの内面温度が120℃に制御されるようにした。
【0084】
まず、回転ドラムを回転した状態で273gの基材層形成用組成物をドラム内面に均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は1℃/分で120℃まで昇温して、その温度で60分間その回転を維持しつつ加熱した。
【0085】
回転、加熱が終了した後、冷却せずそのまま回転ドラムを離脱して熱風滞留式オーブン中に静置してイミド化のための加熱を開始した。この加熱も徐々に昇温しつつ320℃に達した。そして、この温度で30分間加熱した後常温に冷却して、該ドラム内面に形成された基材層を剥離し取り出した。得られたベルト状の基材層の厚さ79.5μm、外周長944.2mm、表面抵抗率1×10
11〜4×10
11Ω/□、体積抵抗率1×10
9〜3×10
9Ω・cmであった。
【0086】
(弾性層の積層)
キシレン44gに真比重1.1g/cm
3のブロック型ウレタン用プレポリマー(ウレハイパーRUP1627、DIC(株)製)165.7gを溶解させた。この溶液に脂肪族ジアミン系の硬化剤CLH-5を14.23g(DIC(株)製)添加し撹拌を行い、弾性層形成用組成物を得た。
【0087】
このようにして得られた溶液状の弾性層形成用組成物のうち固形分濃度は80.4重量%であった。この弾性層形成用組成物を、上記で得られたベルト状の基材層上に、リップコートにより塗布して、140℃で20分加熱処理することにより、ベルト状の基材層上に弾性層を形成した。形成した弾性層の厚さは250μmであった。
【0088】
(表面層の積層)
シリカ粉末は、その用途に応じてシランカップリング剤やポリマーなど表面改質処理剤により表面改質され、その粉末表面の水酸基を化学的に変換することによって多機能な特性を付与することが知られている。例えば、粉末表面の水酸基によって通常は親水性を示すシリカ粉末を適当なカップリング剤やポリマーを用いて疎水性に変換することが行われている。本件ではシリカ粉末はアドマテックス社製のSO-C1(平均粒子径0.25μm)を用いた。カップリング剤は信越シリコーン社製のビニルトリメトキシシラン(KBM-1003)を用いた。シリカ粉末をインテグラルブレンド法によりカップリング処理をし、疎水性シリカを得た。カップリング剤の添加量はシリカ重量に対して1%添加を行った。このカップリング剤で得られた疎水性シリカを疎水性シリカ1とした。
【0089】
ウレタンバインダー溶液(TP854-9、ヘンケルジャパン株式会社製)30g(固形分7.5重量%、溶媒DMF)に対し、上記で得られた疎水性シリカ1を1.35g添加(ウレタンバインダー溶液の固形分量100重量部に対して、疎水性シリカ1を60重量部)、更にDMF溶媒を27.65g添加し、表面層形成用組成物を得た。
【0090】
このようにして得られた溶液状の表面層形成用組成物の内、固形分濃度は6.1重量%であった。この表面層形成用組成物を、上記で得られたベルト状の弾性層上にディップコートにより塗布して、140℃で20分加熱処理することにより、上記で得られたベルト状の弾性層上に表面層を形成した。形成した表面層の厚さは3μmであった。
【0091】
実施例2
表面層形成用組成物において、ウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5重量%)100重量部当たり疎水性シリカ1を100重量部に変更したこと以外は、実施例1と同条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0092】
実施例3
表面層形成用組成物において、ウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5重量%)100重量部当たり疎水性シリカ1を150重量部に変更したこと以外は、実施例1と同条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0093】
実施例4
カップリング剤を信越シリコーン社製のビニルトリエトキシシラン(KBE-1003)を用いた以外は上記疎水性シリカ1と同条件で疎水性シリカを作製した。得られた疎水性シリカを疎水性シリカ2とした。
【0094】
表面層形成用組成物において、疎水性フィラーとして疎水性シリカ2を使用し、且つウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5重量%)100重量部当たりシリカを20重量部に変更したこと以外は、実施例1と同条件で中間転写ベルトを製造した。
【0095】
実施例5
表面層形成用組成物において、ウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5重量%)100重量部当たり疎水性シリカ2を60重量部に変更したこと以外は、実施例4と同条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0096】
実施例6
表面層形成用組成物において、ウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5重量%)100重量部当たり疎水性シリカ2を120重量部に変更したこと以外は、実施例4と同条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0097】
実施例7
表面層形成用組成物において、ウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5重量%)100重量部当たり疎水性シリカ2を150重量部に変更したこと以外は、実施例4と同条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0098】
実施例8
表面層形成用組成物において、疎水性シリカ1の代わりにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(平均粒子径0.75μm)を使用し、且つウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5重量%)100重量部当たりPTFEを40重量部に変更したこと以外は、実施例1と同条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0099】
実施例9
表面層形成用組成物において、ウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5重量%)100重量部当たりPTFEを80重量部に変更したこと以外は、実施例8と同条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0100】
実施例10
表面層形成用組成物において、ウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5%)100重量部当たりPTFEを100重量部に変更したこと以外は、実施例8と同条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0101】
実施例11
表面層形成用組成物において、疎水性シリカ1の代わりにテトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)(平均粒子径0.2μm)を使用し、且つウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5重量%)100重量部当たりPFAを100重量部に変更したこと以外は、実施例1と同条件で、中間転写ベルトを製造した。PFAは三井デュポンフロロケミカル株式会社製のMPE-018を用いた。
【0102】
実施例12
表面層形成用組成物において、疎水性シリカ1の代わりにシリコーン粒子(平均粒子径0.7μm)を使用し、且つウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5重量%)100重量部当たりシリコーン粒子を100重量部に変更したこと以外は、実施例1と同条件で、中間転写ベルトを製造した。シリコーン粒子は株式会社タナック製のXC99-A8808を用いた。
【0103】
比較例1
表面層形成用組成物において、シリカを配合しなかったこと以外は、実施例1と同条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0104】
比較例2
表面層形成用組成物において、ウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5重量%)100重量部当たり疎水性シリカ1を20重量部に変更したこと以外は、実施例1と同条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0105】
比較例3
表面層形成用組成物において、ウレタンバインダー溶液の固形分量(7.5重量%)100重量部当たり疎水性シリカ1を10重量部に変更したこと以外は、実施例4と同条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0106】
比較例4
ビニリデンフロライド(VDF)(カイナー#301F、アルケマ製)100gを、N,N−ジメチルホルムアミドに固形分6.1重量%となるように溶解させ表面層形成用組成物として用いた以外は実施例1と同じ条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0107】
比較例5
ビニリデンフロライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるVDF−HFP共重合樹脂(カイナー#2801アルケマ製:HFP11モル%)100gを、N,N−ジメチルホルムアミドに固形分6.1重量%となるように溶解させ表面層形成用組成物として用いた以外は実施例1と同じ条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0108】
比較例6
主材固形分濃度20重量%のフッ素ゴム(四フッ化エチレン-プロピレンゴム(FEPM))材料(FFX−80414P、太平化成工業(株)製)20gに対し、酢酸アミル45.6gを加えることで固形分濃度6.1重量%の溶液を作製し、この原料を実施例1と同じ条件で製膜することにより表面層を形成した。それ以外は実施例1と同じ条件で、中間転写ベルトを製造した。
【0109】
(2)中間転写ベルトの性能評価
以下に示す方法で、表面層の水接触角、弾性層と表面層の密着性、及び二次転写性について評価した。
【0110】
[表面層の水接触角]
各中間転写ベルトの表面層の水接触角について、(KRUSS製DSA20)により測定した。
測定の際、純水の滴下量は1.0μLとした。
【0111】
[弾性層と表面層の密着性]
各中間転写ベルトについて、クロスカット試験により弾性層と表面層との密着性を判定した。試験面に対しカッターガイドを用いて弾性層まで達する11本の切り傷をつけ、ガイドを90°回転させ、上記切り傷と垂直になるように更に11本の切り傷をつけることにより100個の碁盤目を作った。切り傷の間隔は1mmとした。碁盤目部分にセロテープを圧着させテープの端を45°の角度で引き剥がし、碁盤目の状態とセロテープを圧着させる前の状態とを比較して、下記判定基準に従って、弾性層と表面層の密着性を評価した。
【0112】
<弾性層と表面層の密着性の判定基準>
◎:どの格子の目にも剥がれがない。
○:格子における表面層の剥がれ箇所が10か所未満
△:格子における表面層の剥がれ箇所が10か所以上30か所未満
×:格子における表面層の剥がれ箇所が30か所以上50か所未満
××:格子における表面層の剥がれ箇所が50か所以上
【0113】
[二次転写性]
各中間転写ベルトの二次転写性を評価するために、普通紙及びエンボス加工紙(富士ゼロックスオフィスサプライ社製の「レザック66」、表面凹凸差80μm、151g/m
2)を用いて以下の試験を行った。各中間転写ベルトに対して、C(シアン)色のベタ画像を印刷し、印刷前後の転写ベルト上のトナー重量を測定した。次いで、下記式から二次転写効率を求め、下記判定基準に従って二次転写性を評価した。
【0114】
【数1】
<二次転写性の判定基準>
◎:二次転写効率99%以上
○:二次転写効率95%以上99%未満
△:二次転写効率90%以上95%未満
×:二次転写効率90%未満
【0115】
得られた結果を表1に示す。この結果から、表面層がウレタンゴムと疎水性フィラーを含み、水接触角が90°以上である場合には、弾性層と表面層の密着性が良好であり、しかもエンボス紙に対する二次転写性も良好で、優れた凹凸追従性を備えていた(実施例1〜11)。なお、ウレタンゴム100重量部に対して疎水性フィラーを150重量部含む場合(実施例3及び7)には、表面層において疎水性フィラーの凝集が僅かに認められたが、ウレタンゴム100重量部に対して疎水性フィラーを120重量部以下含む場合(実施例1、2、4〜6、及び8〜11)では、表面層において疎水性フィラーの凝集は認められず、外観性状も良好であった。
【0116】
一方、表面層がウレタンゴムを含み疎水性フィラーを含まない場合(比較例1)では、弾性層と表面層の密着性が良好であったものの、二次転写性が悪い結果となった。また、表面層がウレタンゴムと疎水性フィラーを含んでいても、水接触角が90°未満の場合(比較例2及び3)では、弾性層と表面層の密着性と、普通紙に対する二次転写性が良好であったものの、エンボス紙に対する二次転写性が悪く、凹凸追従性が不十分であった。更に、表面層を硬質PVDF又は軟質PVDFによって形成した場合(比較例4及び5)では、普通紙に対する二次転写性が良好であったものの、弾性層と表面層の密着性が不十分であることに加え、エンボス紙に対する二次転写性も悪く、凹凸追従性が不十分であった。また、表面層をフッ素ゴムによって形成した場合(比較例6)では、普通紙に対する二次転写性が良好であったものの、弾性層と表面層の密着性が不十分であった。
【0117】
【表1】