特許第6302362号(P6302362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302362
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】フレキソ印刷用インキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/104 20140101AFI20180319BHJP
【FI】
   C09D11/104
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-122843(P2014-122843)
(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公開番号】特開2016-3253(P2016-3253A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】栄田 朗宏
(72)【発明者】
【氏名】相馬 央登
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−013657(JP,A)
【文献】 特開2008−013658(JP,A)
【文献】 特開2013−221042(JP,A)
【文献】 特開2003−306622(JP,A)
【文献】 特開平07−207208(JP,A)
【文献】 特開2000−219833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/104
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂粒子を含有するフレキソ印刷用インキであって、
ポリエステル系樹脂粒子中のポリエステルが、カルボン酸成分とアルコール成分との重縮合反応物であり、カルボン酸成分が、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸無水物及びそれらの炭素数1以上3以下のアルキルエステルから選ばれる1種以上であり、アルコール成分が、ジオール、及び3価以上の多価アルコールから選ばれる1種以上であり、
ポリエステル系樹脂粒子の体積中位粒径が10nm以上500nm以下であり、
インキ中のポリエステル系樹脂粒子の含有量が2質量%以上50質量%以下であり、
インキ中の水の含有量が50質量%以上である、
フレキソ印刷用インキ。
【請求項2】
インキの25℃における粘度が50mPa・s以上300mPa・s以下である、請求項1に記載のフレキソ印刷用インキ。
【請求項3】
カルボン酸成分が、フマル酸、セバシン酸、ドデセニルコハク酸、イソフタル酸、並びにそれらの酸無水物及びそれらの炭素数1以上3以下のアルキルエステルから選ばれる1種以上であり、アルコール成分が1,2−プロパンジオール、1,10−ドデカンジオール、水素添加ビスフェノールA、及びビスフェノールAの炭素数2又は3のアルキレンオキサイド(平均付加モル数1以上16以下)付加物から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のフレキソ印刷用インキ。
【請求項4】
ポリエステル系樹脂粒子中のポリエステルの酸価が10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のフレキソ印刷用インキ。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のフレキソ印刷用インキをアニロックスロールを介して印刷版上に供給し印刷するフレキソ印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷用インキ、及びフレキソ印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
包装容器の分野では、段ボールやフィルムに印刷を行う手法としてフレキソ印刷やグラビア印刷が用いられてきたが、近年では水性インキを用いるフレキソ印刷の安全性への信頼から、フレキソ印刷の需要が高まっている。
フレキソ印刷は、凸版印刷の一種であり、主にゴム版を印刷版(凸版)として用い、当該刷版にインキを供給する部分にアニロックスロールと呼ばれる細かいメッシュの彫刻ロールを使用する。アニロックスロールは、チャンバ型ドクタからインキを受け取って、刷版上にインキ付けを行う役割を担っており、アニロックスロールを介することでインキを刷版に均一に転移できる利点がある。
フレキソ印刷で使用する水性インキは、環境面及び安全面から欧米を中心に需要が高まっているが、印刷後の画像の耐水性や光沢が溶剤系のインキより劣る点に課題を有しており、フレキソ印刷への需要の高まりとともに、これらの課題に対する改良が要望されている。
【0003】
このような課題に対し、特許文献1には、カルボキシ基を含有する水性樹脂として、(メタ)アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂又はポリウレタン系樹脂のいずれかをバインダーとし、モノ及び/又はポリカルボジイミド化合物を配合してなるラミネート用水性印刷インキ組成物が、優れたボイル、レトルト加工耐性を有する水性印刷インキ組成物であることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、顔料、バインダー樹脂、及び溶媒を主たる成分とするフレキソ凸版用印刷インキ組成物において、前記バインダー樹脂として、(1)グリコール及びグリコール誘導体から選択される少なくとも1種の有機化合物とを分散媒として、ビニルモノマーを乳化重合させて得られる共重合体樹脂エマルジョン、及び(2)ロジン変性マレイン酸樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、スチレン−アクリル−マレイン酸系樹脂から選択される少なくとも1種の塩基性化合物の存在下で、溶媒中に溶解可能な共重合体樹脂を含有するフレキソ凸版用印刷インキ組成物が、流動性、粘度安定性、隠ぺい力に優れ、鮮やかな色彩と高い光沢を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−287229号公報
【特許文献2】特開2000−234074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献の方法を用いても、前記課題に対する効果は不十分であり、さらに印刷後の画像の耐水性、光沢性、及び表面平滑性に優れるフレキソ印刷用インキが求められている。
また、精細な印刷画像への要求から刷版の線数が増加しているため、アニロックス線数についても微細化が要求されている。一方で、細かいアニロックス目の部分的な目詰まりが生じやすいという課題がある。目詰まりが発生すると、画質の悪化、画像濃度の低下の原因となる。アニロックスロールの目内でインキがいったん乾燥してしまう(目詰まり)と、洗浄でこれを除去することは容易ではなく、そのため、アニロックスロールの洗浄は精細に行われる必要があり、専用の設備を要するため、目詰まりの発生は生産性に影響する課題である。
本発明は、アニロックスロール目詰まりの発生を抑制し、印刷後の画像の耐水性、光沢性、及び表面平滑性に優れるフレキソ印刷用インキ、及びフレキソ印刷方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、水性インキで、前記の課題を解決するためには、アニロックスロール中での乾燥によるインキの固化を防ぎ、且つインキを記録媒体表面に印刷した後に、インキ中の成分が安定な保護膜を形成することが重要であると考えて検討を行った。その結果、特定の粒径のポリエステル系樹脂粒子を特定量含有させることで、アニロックスロール目詰まりの発生を抑制し、印刷後の画像の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させることができることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]ポリエステル系樹脂粒子を含有するフレキソ印刷用インキであって、ポリエステル系樹脂粒子の体積中位粒径が10nm以上500nm以下であり、インキ中のポリエステル系樹脂粒子の含有量が2質量%以上50質量%以下である、フレキソ印刷用インキ。
[2]前記[1]に記載のインキをアニロックスロールを介して印刷版上に供給し印刷するフレキソ印刷方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アニロックスロール目詰まりの発生を抑制し、印刷後の画像の耐水性、光沢性、及び表面平滑性に優れるフレキソ印刷用インキ、及びフレキソ印刷方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]第1の実施形態(フレキソ印刷用インキ)
本発明のフレキソ印刷用インキは、ポリエステル系樹脂粒子を含有するフレキソ印刷用インキであって、ポリエステル系樹脂粒子の体積中位粒径が10nm以上500nm以下であり、インキ中のポリエステル系樹脂粒子の含有量が2質量%以上50質量%以下であることを特徴とする。
なお、本明細書において、「フレキソ印刷用インキ」を単に「インキ」ということがあり、ポリエステル系樹脂粒子を単に「樹脂粒子」ということがある。
【0010】
本発明のフレキソ印刷用インキは、アニロックスロール目詰まりの発生を抑制し、印刷後の画像の耐水性、光沢性、及び表面平滑性が向上するという効果を有する。そのメカニズムは明らかではないが、以下のように考えられる。
本発明のフレキソ印刷用インキは特定の体積中位粒径範囲のポリエステル系樹脂粒子を特定量用いることで、このポリエステル系樹脂粒子が分子中のエステル基等の極性基の存在により水と適度に親和性を持つため、ポリエステル系樹脂粒子がアニロックスロール上で水を保持しやすくなり、インキの乾燥を抑制し、また、樹脂を樹脂粒子として配合するため樹脂の配合による過度の粘度上昇が避けられるため、インキの粘度特性を適切に保ったまま、アニロックスロールの目詰まりを防止できる。
そして、水により表面が適度に可塑化されたポリエステル系樹脂粒子が、印字後に平滑性の高い膜を形成するため、耐水性、光沢性、及び表面平滑性が向上するものと考えられる。
以下、本発明に用いられる各成分、各工程について説明する。
【0011】
[ポリエステル系樹脂粒子]
本発明におけるポリエステル系樹脂粒子は、ポリエステルを含有するが、ポリエステルの他に、他の樹脂成分を含有してもよく、また、着色剤等の他の成分を含んでいてもよい。
ポリエステル系樹脂粒子を構成する樹脂中のポリエステルの含有量は、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
【0012】
ポリエステル系樹脂粒子を構成する樹脂中のポリエステルは、結晶性ポリエステル、非晶質ポリエステルのいずれも使用することができ、両者を混合して用いることもできるが、本発明においては、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、非晶質ポリエステルを含有することが好ましい。
ここで、ポリエステルの結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最大ピーク温度との比、すなわち(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される結晶性指数によって表される。結晶性ポリエステルは、結晶性指数が0.6以上1.4以下のものであり、非晶質ポリエステルは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂である。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜決定することができる。なお、吸熱の最大ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を指す。吸熱の最大ピーク温度は、軟化点との差が20℃以内であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超える場合はガラス転移に起因するピークとする。
非晶質ポリエステルは、この結晶性指数が、水性媒体中での樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、0.6未満又は1.4を超え4以下であることが好ましく、より好ましくは0.6未満又は1.5以上4以下、更に好ましくは0.6未満又は1.5以上3以下、更に好ましくは0.6未満又は1.5以上2以下である。
【0013】
ポリエステルは、水性媒体中での樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、分子鎖末端に酸基を有することが好ましい。酸基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸基等が挙げられる。これらの中でも、水性媒体中での樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、カルボキシ基がより好ましい。
【0014】
ポリエステルの原料モノマーは、特に限定されず、任意のアルコール成分と、任意の上記酸基を有する有機酸成分、好ましくはカルボン酸成分とが用いられる。
カルボン酸成分としては、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸無水物及びそれらの炭素数1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられ、中でもジカルボン酸を含むことが好ましく、ジカルボン酸がより好ましい。
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が好ましく、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、イソフタル酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられる。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等が挙げられる。これらの中でも、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、フマル酸、セバシン酸、及びドデセニルコハク酸が好ましい。
脂環式ジカルボン酸の具体例としては、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。 3価以上の多価カルボン酸の具体例としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0015】
カルボン酸成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
アルコール成分としては、ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられ、ジオールが好ましい。
ジオールとしては、主鎖炭素数2以上12以下の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、及び脂環式ジオールが挙げられる。
主鎖炭素数2以上12以下の脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
芳香族ジオールの具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAの炭素数2又は3のアルキレンオキサイド(平均付加モル数1以上16以下)付加物等が挙げられる。このビスフェノールAの炭素数2又は3のアルキレンオキサイド(平均付加モル数1以上16以下)付加物としては、ポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
脂環式ジオールの具体例としては、シクロヘキサンジオール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
アルコール成分としては、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、1,2−プロパンジオール、1、10−ドデカンジオール、水素添加ビスフェノールA、及びポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAの炭素数2又は3のアルキレンオキサイド(平均付加モル数1以上16以下)付加物が好ましい。
アルコール成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリエステル中のアルコール成分のOH基に対するカルボン酸成分のCOOH基の当量比(COOH基/OH基)は、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点、及び水性媒体中での樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下、更に好ましくは1.05以下である。
【0017】
ポリエステルのガラス転移温度は、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性を向上させる観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは25℃以上であり、また、光沢性を向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。ガラス転移温度は、非晶質樹脂に特有の物性である。
【0018】
ポリエステルが結晶性ポリエステルである場合、ポリエステルの融点は、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上であり、また、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、より更に好ましくは75℃以下である。
【0019】
ポリエステルの軟化点は、同様の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、また、好ましくは165℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下である。
なお、ポリエステルを2種以上混合して使用する場合は、そのガラス転移温度、融点及び軟化点は、各々2種以上のポリエステルの混合物として、実施例記載の方法によって得られた値である。
ポリエステルの酸価は、水性媒体中での樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点、均一な粒径の樹脂粒子を得る観点から、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは15mgKOH/g以上、更に好ましくは20mgKOH/g以上であり、また、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは25mgKOH/g以下、更に好ましくは23mgKOH/g以下である。ポリエステルの酸価が上記の範囲にあることで、ポリエステルが水と適度に親和性を持つことができ、樹脂粒子分散液を調製する際に、水中で分散安定性が向上するので、粒径が小さく、粒径分布の狭い樹脂粒子を得ることができる。また、インキ中においては、アニロックス上で樹脂粒子表面に水を適度に保持するため、インキの乾燥を遅くすることができ、インキのアニロックスロールでの目詰まりを抑制することができる。
酸価はアルコールとカルボン酸の仕込み比率、重縮合反応の温度、時間を調節することにより所望のものを得ることができる。
ポリエステルは、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
ポリエステルは、カルボン酸成分とアルコール成分とを、重縮合反応させることによって製造することができる。例えば、前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒及び重合禁止剤を用いて、120℃以上250℃以下の温度で重縮合することにより製造することができる。
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫等の錫化合物やチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等のエステル化触媒を使用することができる。
エステル化触媒の使用量に制限はないが、カルボン酸成分とアルコール成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下である。
また、必要に応じて重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤としては、tert−ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、カルボン酸成分とアルコール成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、また、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0021】
なお、本発明において、ポリエステルには、酸基を有するものであれば未変性のポリエステルのみならず、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルも含まれる。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルや、ポリエステルユニットを含む2種以上の樹脂ユニットを有する複合樹脂が挙げられる。
【0022】
ポリエステル系樹脂粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエステル以外の樹脂、例えば、スチレン−アクリル共重合体、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の樹脂を含有してもよい。
また、ポリエステル系樹脂粒子には、本発明の効果を損なわない範囲で、着色剤を含有させてもよい。さらに必要に応じて、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤等の添加剤等を任意成分として含有させてもよい。
【0023】
[ポリエステル系樹脂粒子の製造]
ポリエステル系樹脂粒子は、ポリエステルを含有する樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)と、必要に応じて界面活性剤、着色剤等の前記の任意成分と、を水性媒体中に分散させ、ポリエステル系樹脂粒子の分散液として得る方法によって製造することが好ましい。
【0024】
水性媒体としては水を主成分とするものが好ましく、ポリエステル系樹脂粒子分散液の分散安定性を向上させる観点及び環境負荷低減の観点から、水性媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは実質的に100質量%、より更に好ましくは100質量%である。水としては、脱イオン水又は蒸留水が好ましく用いられる。
水以外の成分としては、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が用いられる。
【0025】
ポリエステル系樹脂粒子の分散液を得る方法としては、樹脂等を水性媒体に添加し、分散機を用いて分散する方法(1a)、樹脂等に水性媒体を徐々に添加して乳化する転相乳化法(1b)等が挙げられ、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、転相乳化法(1b)が好ましい。以下、転相乳化法について述べる。
【0026】
<転相乳化法>
転相乳化法としては、樹脂、及び着色剤等の前記の任意成分を有機溶媒に添加し、樹脂を溶解させて得られた溶液に、水性媒体を添加して転相乳化する方法(以下、単に「方法(1b1)」ともいう)、並びに、樹脂、及び着色剤等の前記の任意成分を添加し、樹脂を溶融して混合して得られた樹脂混合物に、水性媒体を添加して転相乳化する方法(以下、単に「方法(1b2)」ともいう)が挙げられる。
上記転相乳化法で用いられる水性媒体は、上記ポリエステル系樹脂粒子の分散液の水性媒体と同様のものが好ましく用いられる。
【0027】
〔方法(1b1)〕
方法(1b1)は、まず、樹脂、及び着色剤等の前記の任意成分を有機溶媒に添加し、樹脂を溶解させ、次いで、得られた溶液に水性媒体を添加して転相乳化する方法である。
【0028】
有機溶媒としては、樹脂を溶解し水性媒体への転相を容易にする観点から、溶解性パラメータ(SP値:POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION 1989 by John Wiley & Sons,Inc)で表したとき、好ましくは15.0MPa1/2以上、より好ましくは16.0MPa1/2以上、更に好ましくは17.0MPa1/2以上であり、また、好ましくは26.0MPa1/2以下、より好ましくは24.0MPa1/2以下、更に好ましくは22.0MPa1/2以下である。
【0029】
かかる有機溶媒としては以下のものが挙げられる。なお、次の有機溶媒の化合物名のあとのカッコ内はSP値であり、単位はMPa1/2である。すなわち、具体例としては、エタノール(26.0)、イソプロパノール(23.5)、及びイソブタノール(21.5)等のアルコール系溶媒;アセトン(20.3)、メチルエチルケトン(19.0)、メチルイソブチルケトン(17.2)、及びジエチルケトン(18.0)等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル(16.5)、テトラヒドロフラン(18.6)、及びジオキサン(20.5)等のエーテル系溶媒;酢酸エチル(18.6)、酢酸イソプロピル(17.4)等の酢酸エステル系溶媒が挙げられる。これらの中では、水性媒体添加後の混合液からの除去が容易である観点から、好ましくはケトン系溶媒及び酢酸エステル系溶媒から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはメチルエチルケトン、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルから選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはメチルエチルケトンである。
【0030】
ポリエステル系樹脂粒子中の樹脂に対する有機溶媒の質量比(有機溶媒/樹脂)は、樹脂を溶解し水性媒体への転相を容易にする観点、樹脂粒子の分散安定性を向上させ小粒径の樹脂粒子を得る観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上であり、また、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.5以下である。
方法(1b1)では、中和剤を溶液に添加することが好ましい。中和剤としては、塩基性物質が挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリブチルアミン等の含窒素塩性物質が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは水酸化ナトリウム又はアンモニアである。
上記中和剤による樹脂の中和度(モル%)は、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、また、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
なお、樹脂の中和度(モル%)は、下記式によって求めることができる。
中和度={[中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量]/〔[樹脂の酸価(mgKOH/g)×樹脂の質量(g)]/(56×1000)〕}×100
【0031】
水性媒体の添加量は、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、また、好ましくは900質量部以下、より好ましくは500質量部以下、更に好ましくは300質量部以下である。
また、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、前記有機溶媒に対する水性媒体の質量比(水性媒体/有機溶媒)が40/60以上90/10以下になるように前記水性媒体を添加することが好ましい。当該観点から、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは60/40以上であり、また、より好ましくは85/15以下、更に好ましくは80/20以下である。
【0032】
水性媒体を添加する際の温度は、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは25℃以上であり、また、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
水性媒体の添加速度は、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、転相が終了するまでは、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部/分以上、より好ましくは0.5質量部/分以上、更に好ましくは1質量部/分以上、より更に好ましくは3質量部/分以上であり、また、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは20質量部/分以下、より更に好ましくは15質量部/分以下である。転相後の水性媒体の添加速度には制限はない。
【0033】
転相乳化の後に、必要に応じて、転相乳化で得られた分散体から有機溶媒を除去する工程を有していてもよい。
有機溶媒の除去方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができるが、水と溶解しているため蒸留するのが好ましい。また、有機溶媒は、完全に除去されず水系分散体中に残留していてもよい。この場合、有機溶媒の残存量は、水系分散体中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは実質的に0%である。
【0034】
蒸留によって有機溶媒の除去を行う場合、撹拌を行いながら、使用する有機溶媒の沸点以上の温度に昇温して留去するのが好ましい。また、樹脂粒子の分散安定性を維持する観点から、減圧下で、その圧力における使用する有機溶媒の沸点以上の温度に昇温して留去するのがより好ましい。なお、減圧した後昇温しても、昇温した後減圧してもよい。樹脂粒子の分散安定性を維持する観点から、温度及び圧力を一定にして留去するのが好ましい。
【0035】
得られるポリエステル系樹脂粒子の水系分散体の固形分濃度は、インキの生産性を向上させる観点、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
なお、固形分は樹脂、必要に応じて添加されうる界面活性剤、着色剤等の前記の任意成分等の不揮発性成分の総量である。
【0036】
水系分散体中のポリエステル系樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、10nm以上であり、好ましくは20nm以上、より好ましくは25nm以上、更に好ましくは30nm以上であり、また、500nm以下であり、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下である。ここで、体積中位粒径とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径であり、実施例に記載の方法で求められる。
【0037】
[フレキソ印刷用インキ]
本発明のフレキソ印刷用インキは、前述のポリエステル系樹脂粒子を含有する。
【0038】
本発明のフレキソ印刷用インキに含まれるポリエステル系樹脂粒子の含有量は、インキの粘度を適正に保つ観点、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、インキ中、2質量%以上であり、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは12質量%以上であり、また、50質量%以下であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下であり、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点からは、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。
【0039】
本発明のフレキソ印刷用インキに含まれる水の含有量は、インキの粘度を適正に保つ観点、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、インキ中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
【0040】
また、本発明のフレキソ印刷用インキを有色インキとして使用する場合には、着色剤を含有することが好ましい。
【0041】
<着色剤>
本発明において着色剤とは、顔料又は染料をいう。また、着色剤は、界面活性剤や分散用ポリマーを用いてインキ中で安定な微粒子にしてもよい。本発明に用いる着色剤としては、特に制限はなく、顔料、疎水性染料、水溶性染料(酸性染料、反応染料、直接染料等)等を用いることができるが、インキの分散安定性、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、顔料及び疎水性染料が好ましく、顔料を用いることがより好ましい。
【0042】
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、特に黒色インキにおいては、カーボンブラックが好ましい。
有機顔料の具体例としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられ、フタロシアニン顔料が好ましく、銅フタロシアニンがより好ましい。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
【0043】
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
【0044】
本発明においては、自己分散型顔料を用いることもできる。自己分散型顔料とは、親水性官能基(カルボキシ基やスルホン酸基等のアニオン性親水基、又は第4級アンモニウム基等のカチオン性親水基)の1種以上を直接又は他の原子団を介して顔料の表面に結合することで、界面活性剤や樹脂を用いることなく水系媒体に分散可能である無機顔料や有機顔料を意味する。ここで、他の原子団としては、炭素数1以上12以下のアルカンジイル基、フェニレン基又はナフチレン基等が挙げられる。
上記の顔料は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
【0045】
疎水性染料とは、100gの水中(20℃)、溶解度が、好ましくは6質量%未満の染料のことをいう。疎水性染料としては、油溶性染料、分散染料等が挙げられ、これらの中では油溶性染料が好ましい。
油溶性染料としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック、C.I.ソルベント・イエロー、C.I.ソルベント・レッド、C.I.ソルベント・バイオレット、C.I.ソルベント・ブルー、C.I.ソルベント・グリーン、及びC.I.ソルベント・オレンジからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられ、オリエント化学株式会社、BASF社等から市販されている。
上記の着色剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
着色剤は、インキに使用する場合には、界面活性剤、ポリマーを用いて、インキ中で安定な微粒子にしてもよい。用いられるポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられる。
【0046】
着色剤を含有する場合の含有量は、インキの分散安定性、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、インキ中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
着色剤を含有する場合のポリエステル系樹脂粒子に対する着色剤の質量比〔着色剤/ポリエステル系樹脂粒子〕は、インキの分散安定性、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、インキ中、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは30/70以上、より更に好ましくは40/60以上であり、また、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下、より更に好ましくは50/50以下である。
【0047】
<フレキソ印刷用インキの任意成分>
本発明のインキは、有機溶媒、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を添加することができる。
有機溶媒としては、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、アセチレングリコール等の多価アルコール、2−ピロリドン等のピロリドンが好ましく、これらを2つ以上併用することがより好ましい。
本発明において、有機溶媒の含有量は、インキの分散安定性を向上させる観点から、インキ中で、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0048】
界面活性剤としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のグリコールエーテルが好ましい。
本発明において、界面活性剤の含有量は、インキの分散安定性を向上させる観点から、インキ中で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0049】
本発明のフレキソ印刷用インキの25℃における粘度は、インキの分散安定性を向上させる観点、アニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する観点、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは70mPa・s以上、更に好ましくは80mPa・s以上であり、また、好ましくは300mPa・s以下、より好ましくは200mPa・s以下、更に好ましくは150mPa・s以下、より更に好ましくは120mPa・s以下である。25℃における粘度は、JIS Z 8803:2011の単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド形回転粘度計)による粘度測定方法に準拠して測定することができ、より具体的には実施例に記載の方法で求められる。
また、本発明のフレキソ印刷用インキのザーンカップ法による25℃における粘度は、同様の観点から、ザーンカップNo.4において、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上であり、また、好ましくは25秒以下、より好ましくは20秒以下である。ザーンカップ法による粘度は実施例に記載の方法で求められる。
【0050】
[フレキソ印刷用インキの製造]
本発明のフレキソ印刷用インキは、次の工程(1)及び(2)を経ることにより、好適に製造することができる。
工程(1):ポリエステルを含有する樹脂を水性媒体中に分散させ、ポリエステル系樹脂粒子の分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたポリエステル系樹脂粒子の分散液と、着色剤及び前述の任意成分の少なくとも1種とを混合し、フレキソ印刷用インキを得る工程
【0051】
〔工程(1)〕
工程(1)は、前述したとおりである。
【0052】
〔工程(2)〕
工程(2)では、工程(1)で得られたポリエステル系樹脂粒子の分散液と、着色剤及び前述した任意成分の少なくとも1種とを混合する。次に、工程(2)の好適例を説明する。
先ず、ポリエステル系樹脂粒子の分散液と、着色剤、及び任意成分である有機溶媒の少なくとも1種とを混合し、必要に応じて撹拌して、前駆体分散液を得る。
次いで、この前駆体分散液を、脱イオン水、任意成分である界面活性剤及びその他の任意成分と混合し、その後、必要に応じてフィルター等で濾過することにより、フレキソ印刷用インキを好適に得ることができる。
混合には、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)等の高圧ホモジナイザー、ペイントコンディショナー、ビーズミル等のメディア式分散機等を用いることができる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
【0053】
[2]第2の実施形態(フレキソ印刷方法)
本発明のフレキソ印刷方法は、体積中位粒径が10nm以上500nm以下のポリエステル系樹脂粒子を2質量%以上50質量%以下含有するフレキソ印刷用インキを、アニロックスロールを介して印刷版上に供給し印刷するフレキソ印刷方法である。
フレキソ印刷方法自体は公知である。例えば、隔壁及び隔壁で囲まれた開口部を多数有するアニロックスロールの表面にインキを塗布し、アニロックスロールの表面にドクタを押し付けて、アニロックスロールの隔壁天面に存在するインクを掻き落とし、開口部である凹部にインクを充填する。続いて、アニロックスロールにフレキソ版を押し付けて、アニロックスロールの凹部に存在するインクを印刷版の凸部(パターン部)に転移させ、次に版を基材に接触させて版のパターン部に存在するインクを基材に転移させて、所望の印刷物を得ることができる。
なお、フレキソ印刷用インキの詳細は、前述したとおりであるため、省略する。
本発明のフレキソ印刷方法においては、アニロックスロールを用いるため、本発明のフレキソ印刷用インキのアニロックスロールの目詰まりの発生を抑制する効果を発揮させることができる。
また、本発明では、水により表面が適度に可塑化されたポリエステル系樹脂粒子が、印字後に平滑性の高い膜を形成するため、印字物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を発揮させることができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例等により、本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例等においては、各物性は次の方法により測定した。
【0055】
[ポリエステルの酸価]
JIS K0070に従って測定した。但し、測定溶媒をアセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))とした。
【0056】
[ポリエステルの軟化点、結晶性指数、吸熱の最大ピーク温度、融点及びガラス転移温度]
(1)軟化点
フローテスター「CFT−500D」(島津製作所社製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0057】
(2)吸熱の最大ピーク温度、融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計「Q−20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピーク温度を吸熱の最大ピーク温度とした。結晶性ポリエステルの時には該ピーク温度を融点とした。また、非晶質ポリエステルの場合に吸熱ピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の高温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0058】
(3)結晶性指数
前記ポリエステルの軟化点と吸熱の最大ピーク温度の比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))を算出して、結晶性指数とした。
【0059】
[ポリエステル系樹脂粒子の体積中位粒径(D50)]
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA−920」(堀場製作所社製)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)を測定した。
【0060】
[ポリエステル系樹脂粒子分散液、フレキソ印刷用インキの固形分濃度]
赤外線水分計「FD−230」(ケツト科学研究所社製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)にて、水分(質量%)を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−水分(質量%)
【0061】
[フレキソ印刷用インキの粘度]
(1)ザーンカップ法
「ザーンカップNo.4」(メイセイ社製、オリフィス径4mm、容量約43mL)カップを25℃のインキの中に沈め、柄を素早く引き上げて、カップ底部がインキから離れる瞬間にストップウォッチを始動し、カップのオリフィスからインキが流れ落ちて、インキの流れがカップ底部のオリフィスから途切れると同時にストップウォッチを停止した。この流出秒数を読み取り粘度(ザーンカップNo.4)とした。
(2)単一円筒形回転粘度計法
単一円筒形回転粘度計「TVB−10M」(東機産業社製)を用いて、測定試料20mLを測定温度25℃下、L/AdpのNo.9のローターを用い、測定開始1分後の値を粘度とした。尚、回転数条件は、粘度が50mPa・s以上100mPa・s未満の場合は回転数を6rpm、100mPa・s以上200mPa・s以下の場合は3rpmで測定を行った。それ以外の粘度範囲になる場合でも、測定粘度に合わせた回転数を選択し測定した。
【0062】
[フレキソ印刷用インキの評価]
段ボールへの印刷は、フレキソフォルダーグルアーα(新幸機械製作所社製)を用いてKライナー(王子製紙社製、210g/m2、100cm×150cm)に印刷した。アニロックスロールの線数は460線のラウンドパターン(スクリーン角度30°)を使用した。
PETフィルムへの印刷は、フレキシプルーフ100UV(RK Print Coat Instruments社製)を用いて、50μmのPETフィルム(東洋紡社製、E5200、両面コロナ処理)に印刷した。アニロックスロールの線数は460線のハニカムパターン(スクリーン角度60°)を使用した。
【0063】
(1)印刷物の耐水性
段ボール上に印字率100%で印刷された20cm×20cmの印刷サンプルを40℃の真空乾燥機中で12時間乾燥させたのち質量を測定し、水20gを含ませた脱脂綿を印刷サンプル上にのせ、1時間放置した。次に、脱脂綿を荷重50gで10回往復させた。その後、表面の水分をキムワイプ(日本製紙クレシア社製、商品名)でふき取り、再度40℃の真空乾燥機中に12時間放置したのち質量を測定して、試験前の質量との差分(g)を算出した。差分の値が小さいほど耐水性に優れる。
【0064】
(2)印刷物の光沢性
段ボール上に印字率100%で印刷された5cm×5cmの印刷サンプルを、ハンディ光沢計「グロスチェッカIG−330」(堀場製作所社製)を用い、角度60°の条件で測定を行った。段ボールに印刷した印字面と、印字がされていない面のそれぞれについて測定して差分を算出し光沢性の指標とした。値が大きいほど光沢性に優れる。
【0065】
(3)アニロックスロール目詰まり
Kライナーに対して印字率20%で200枚印刷したのち、印刷機を停止し、アニロックスロールをルーペで観察し、200個のアニロックス目のうち目詰まりが発生した目の数を目視でカウントして評価した。値が小さいほど目詰まりが抑制されている。
【0066】
(4)印刷物の表面摩擦係数
PETフィルム上に印字率100%で印刷された印刷サンプルを、全自動摩擦摩耗解析装置「DF PM−SS型」(協和界面化学社製)を用いて測定した。接触子としては装置に付随する標準3mmステンレス球を用いた。値が小さいほど印刷物表面の平滑性に優れる。
【0067】
製造例1
(ポリエステルAの製造)
窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、1,2−プロパンジオール1436g、イソフタル酸1494g、ドデセニルコハク酸無水物1447g、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)25gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、180℃に昇温した後、210℃まで10℃/hrで昇温し、210℃で7時間反応を行った。その後、フマル酸418g、tert−ブチルカテコール0.5gを加え、210℃で5時間反応させた後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて軟化点が98℃に達するまで反応させ、ポリエステルAを得た。ポリエステルAの物性を表1に示す。
【0068】
製造例2
(ポリエステルBの製造)
窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、1,2−プロパンジオール1436g、イソフタル酸2390g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)25gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、180℃に昇温した後、210℃まで10℃/hrで昇温し、その後210℃で7時間反応を行った。その後、フマル酸428g、tert−ブチルカテコール0.5gを加え、210℃で5時間反応させた後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて軟化点が103℃に達するまで反応させ、ポリエステルBを得た。ポリエステルBの物性を表1に示す。
【0069】
製造例3
(ポリエステルCの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3500g、フマル酸1160g、tert−ブチルカテコール1g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)25gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、180℃に昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温し、210℃で2時間反応を行った。その後、8.3kPaにて軟化点が100℃に達するまで反応させ、ポリエステルCを得た。ポリエステルCの物性を表1に示す。
【0070】
製造例4
(ポリエステルDの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,10ドデカンジオール2262g、フマル酸452g、セバシン酸1891g、tert−ブチルカテコール0.5g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)25gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、140℃に昇温した後、200℃まで5時間かけて昇温し、200℃で2時間反応を行った。その後、8.3kPaにて軟化点が75℃に達するまで反応させ、ポリエステルDを得た。ポリエステルDの物性を表1に示す。
【0071】
製造例5
(ポリエステルEの製造)
窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、1,2−プロパンジオール1277g、イソフタル酸930g、ドデセニルコハク酸無水物1930g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)25gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、180℃に昇温した後、210℃まで10℃/hrで昇温し、210℃で7時間反応を行った。その後、フマル酸371g、tert−ブチルカテコール0.5gを加え、210℃で5時間反応させた後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて軟化点が85℃に達するまで反応させ、ポリエステルEを得た。ポリエステルEの物性を表1に示す。
【0072】
製造例6
(ポリエステルFの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコの内部を窒素置換し、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水添ビスフェノールA)3120g、イソフタル酸1511g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)25gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、180℃に昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温し、210℃で2時間反応を行った。その後、8.3kPaにて軟化点が135℃に達するまで反応させ、ポリエステルFを得た。ポリエステルFの物性を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
製造例7
(ポリエステル系樹脂粒子分散液Em−1の製造)
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、ポリエステルA 200g、メチルエチルケトン200gを入れ、30℃にて溶解させた。得られた溶液の温度を30℃に保持しつつ、5質量%水酸化ナトリウム水溶液をポリエステルの酸価に対して中和度80モル%になるように添加して、30分撹拌した。次いで、撹拌下で脱イオン水550gを60分かけて添加し、転相乳化した。60℃に昇温し、減圧下でメチルエチルケトン及び水の一部を留去したのち室温(25℃)まで冷却し、150メッシュ(目開き:105μm)の金網で濾過して、ポリエステル系樹脂粒子分散液Em−1を得た。得られたポリエステル系樹脂粒子分散液Em−1の固形分濃度は35質量%、分散液中のポリエステル系樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は32nmであった。結果を表2に示す。
【0075】
製造例8〜17
(ポリエステル系樹脂粒子分散液Em−2〜11の製造)
ポリエステルの種類及び各成分の使用量を表2に示すように変更した以外は、製造例7と同様にして、ポリエステル系樹脂粒子分散液Em−2〜11を得た。物性を表2に示す。なお、固形分濃度は、メチルエチルケトン及び水の留去量を適宜変化させることで調整した。結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例1(インキ1の製造)
ポリエステル系樹脂粒子分散液Em−1を30.48g、銅フタロシアニン顔料「ECB−301」(大日精化工業社製)9.14g、有機溶媒「サーフィノール465」(エアープロダクツジャパン社製、有効成分:アセチレン系ジアルコールのポリエーテル化物)0.38gを100mLのポリ瓶に入れ、ペイントコンディショナー「1410−OH」(レッドデビル社製)にて、60Hzで30分間混合し、顔料分散体1を作成した。次工程で使用する量に応じて、同じ操作を2回行った。
顔料分散体1 52.5g、エチレングリコール(和光純薬工業社製)2.0g、界面活性剤「レオレート212」(エレメンティス社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)0.50g、及び脱イオン水45.0gを200mLのポリ瓶に入れ、ペイントコンディショナー「1410−OH」(レッドデビル社製)にて、60Hzで10分間混合し、インキ1を得た。結果を表3及び4に示す。
【0078】
実施例2、3、比較例1(インキ2,3,12の製造)
実施例1と同様にして顔料分散体1を作成した。
次いで、ポリ瓶に入れる顔料分散体1の量及び脱イオン水の量を変えることにより、表3に示すインキ組成としたこと以外は実施例1と同様にして、インキ2,3,12を得た。得られたインキの評価結果を表4に示す。
実施例4〜10、比較例2(インキ4〜10,13の製造)
ポリエステル系樹脂分散液Em−1に代えて表3に示すポリエステル系樹脂分散液Em−2〜9を用いたこと以外は実施例1と同様にして、インキ4〜10,13を得た。得られたインキの評価結果を表4に示す。
比較例3(インキ14の製造)
実施例1において、ポリエステル系樹脂分散液Em−1に代えて表3に示すスチレン−アクリル樹脂分散液AE373Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして、インキ14を得た。得られたインキの評価結果を表4に示す。
【0079】
実施例11、比較例5(インキ11、16の製造)
表3に示す各成分を200mLのポリ瓶に入れ、ペイントコンディショナー「1410−OH」(レッドデビル社製)にて、60Hzで10分間混合し、インキ11、16を得た。得られたインキの評価結果を表4に示す。
【0080】
比較例4(インキ15の製造)
実施例1において、ポリエステル系樹脂分散液Em−1に代えて表3に示す水溶性ポリエステルAQ55Sの35質量%分散液へ変更した以外は実施例1と同様にして、インキ15を得た。得られたインキの評価結果を表4に示す。
【0081】
比較例6(インキ17の製造)
実施例1において、ポリエステル系樹脂粒子分散液Em−1を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、顔料分散液を作成した。
次いで、表3に示すインキ組成となるように、得られた顔料分散体及び各種成分をポリ瓶に配合したこと以外は実施例1と同様にして、インキ17を得た。得られたインキの評価結果を表4に示す。
【0082】
比較例7(インキ18の製造)
ポリエステル系樹脂粒子分散液Em−11を35.55g、銅フタロシアニン顔料「ECB−301」(大日精化工業社製)4.27g、有機溶媒「サーフィノール465」(エアープロダクツジャパン社製、有効成分:アセチレン系ジアルコールのポリエーテル化物)0.18gを100mLのポリ瓶に入れ、ペイントコンディショナー「1410−OH」(レッドデビル社製)にて、60Hzで30分間混合し、顔料分散体18を作成した。次工程で使用する量に応じて、同じ操作を2回行った。
顔料分散体18 97.5g、エチレングリコール(和光純薬工業社製)2.0g、及び界面活性剤「レオレート212」(エレメンティス社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)0.50gを200mLのポリ瓶に入れ、ペイントコンディショナー「1410−OH」(レッドデビル社製)にて、60Hzで10分間混合し、インキ18を得たが、粘度が高く、印刷を行うことができなかった。結果を表3及び4に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
表4の結果から、実施例のフレキソ印刷用インキは、比較例のインキに比べて、アニロックスロール目詰まりの発生を抑制し、印刷後の画像の耐水性、光沢性、及び表面平滑性に優れることがわかる。