特許第6302368号(P6302368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302368
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】静翼及び静翼ユニット、蒸気タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20180319BHJP
   F01D 9/04 20060101ALI20180319BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20180319BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   F01D9/02 104
   F01D9/02 103
   F01D9/04
   F01D25/00 X
   F02C7/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-133259(P2014-133259)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-11625(P2016-11625A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】丸山 隆
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−094402(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0250058(US,A1)
【文献】 特開2010−180827(JP,A)
【文献】 特開2010−144656(JP,A)
【文献】 独国特許発明第00443574(DE,C1)
【文献】 特開2012−241607(JP,A)
【文献】 特開平11−022410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/00−04
F01D 25/00
F02C 7/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静翼本体と、
前記静翼本体の端部が貫通して固定される支持部材と、
を有し、
前記支持部材は、前記静翼本体の端部の周囲に配置される複数の分割体から構成され、
前記複数の分割体同士の間に溶接部が設けられると共に、
前記静翼本体の端部と前記分割体との間に開先溶接部が設けられ、
前記複数の分割体は、前記静翼本体の背側に配置される第1分割体と、前記静翼本体の腹側に配置される第2分割体と、前記静翼本体の後縁部側に配置される第3分割体とを有する
ことを特徴とする静翼。
【請求項2】
前記複数の分割体は、前記静翼本体との連結部に開先部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の静翼。
【請求項3】
前記複数の分割体は、前記開先部とは反対側の面に、隣接する前記支持部材との連結部が設けられることを特徴とする請求項2に記載の静翼。
【請求項4】
前記第3分割体は、2個の連結部からなるV字形状部が設けられ、前記2個の連結部の交差部に非開先溶接部が設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の静翼。
【請求項5】
前記静翼本体の端部が前記支持部材より突出して配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の静翼。
【請求項6】
前記静翼本体は、長手方向に貫通する中空部が設けられ、前記支持部材を貫通した端部に前記中空部に連通するドレン通路が設けられることを特徴とする請求項5に記載の静翼。
【請求項7】
前記支持部材同士が連結されることで、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の静翼がリング形状に組付けられて構成される、
ことを特徴とする静翼ユニット。
【請求項8】
ケーシングと、
前記ケーシング内に回転自在に支持されたロータと、
動翼の基端部が前記ロータに支持されて前記ロータの周方向に所定間隔で複数配置される複数段の動翼ユニットと、
静翼の基端部と先端部が前記ケーシングに支持されて前記ロータの周方向に所定間隔で複数配置される複数段の静翼動翼ユニットと、
を有し、
前記複数段の静翼ユニットのうちの最終段の静翼ユニットとして請求項7に記載の静翼ユニットが適用される、
ことを特徴とする蒸気タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械などに適用される静翼、外輪と内輪が周方向に所定間隔で配置される複数の静翼により連結される静翼ユニット、複数の静翼と複数の動翼を有して蒸気を用いてロータを駆動回転する蒸気タービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な蒸気タービンは、ケーシングに回転軸であるロータが回転自在に支持され、このロータの外周部に動翼が設けられる一方、ケーシングに静翼が設けられ、蒸気通路に静翼と動翼の段が複数配設されて構成されている。従って、蒸気が蒸気通路を流れると、この蒸気が静翼により整流され、動翼を介してロータを駆動回転することができる。
【0003】
このような蒸気タービンにて、一般的に、静翼は、基端部にシュラウドが固定され、先端部に分割環が固定され、この一体となった静翼とシュラウドと分割環がリング状に組付けられて静翼ユニットが構成されている。そして、静翼は、基端部がシュラウドに当接した状態で隅肉溶接により固定され、先端部が分割環に当接した状態で隅肉溶接により固定されている。ところが、静翼とシュラウド、静翼と分割環を隅肉溶接により固定すると、この隅肉溶接部が蒸気通路側に位置することとなり、蒸気流れを妨げてしまうおそれがある。
【0004】
そこで、静翼の基端部をシュラウドに貫通すると共に、静翼の先端部を分割環に貫通し、各貫通部を開先溶接により固定することが提案されている。なお、静翼の各端部をシュラウドや分割環に貫通して溶接により固定するものとしては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。また、静翼の各端部をシュラウドや分割環に対して開先溶接により固定するものとしては、例えば、下記特許文献2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−184311号公報
【特許文献2】実開平05−017101号公報
【特許文献3】特開2008−032001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、静翼の端部をシュラウドや分割環に貫通し、この貫通部を開先溶接により固定する場合、シュラウドや分割環に静翼の端部が貫通する貫通孔を形成する必要がある。ところが、静翼は、外面が湾曲形状をなすと共に周方向に捩じられた3次元形状をなしていることから、シュラウドや分割環に形成する貫通孔は、静翼の端部の大きさよりも大きなものとなってしまう。すると、静翼における端部の外面とシュラウドや分割環における貫通孔の内面との間に大きな隙間が生じ、開先溶接が困難となってしまう。なお、プラットフォームを2分割することは、特許文献3に記載されているが、静翼と分割のプラットフォームが一体構造をなすものであり、隣接するプラットフォームと係合する構成であり、この隣接するプラットフォーム同士を溶接するものではない。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、通路側への突出部を抑制して性能の向上を図ると共に組付を容易として作業性の向上を図る静翼、静翼ユニット、蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の静翼は、静翼本体と、前記静翼本体の端部が貫通して固定される支持部材と、を有し、前記支持部材は、前記静翼本体の端部の周囲に配置される複数の分割体から構成され、前記複数の分割体同士の間に溶接部が設けられると共に、前記静翼本体の端部と前記分割体との間に開先溶接部が設けられる、ことを特徴とするものである。
【0009】
従って、静翼は、静翼本体の端部の周囲に複数の分割体が配置され、複数の分割体同士が溶接部により連結されると共に、静翼本体の端部と各分割体が開先溶接により連結されて構成されている。支持部材を複数の分割体から構成することで、静翼本体が湾曲形状をなすと共に周方向に捩じられた3次元形状であっても、静翼本体の端部と各分割体を隙間なく適正に連結することができる。そして、開先溶接を実施可能であることから、通路側への溶接部の突出を抑制して蒸気流れを妨げることがない。その結果、通路側への突出部を抑制して性能の向上を図ることができると共に、組付を容易として作業性の向上を図ることができる。
【0010】
本発明の静翼では、前記複数の分割体は、前記静翼本体との連結部に開先部が設けられることを特徴としている。
【0011】
従って、静翼本体の外面形状に応じて各分割体における静翼本体との連結部に最適形状の開先部を設けることができ、静翼本体と分割体を適正に開先溶接することができる。
【0012】
本発明の静翼では、前記複数の分割体は、前記開先部とは反対側の面に、隣接する前記支持部材との連結部が設けられることを特徴としている。
【0013】
従って、静翼本体の端部と各分割体が開先溶接により連結されて構成された静翼は、開先部の反対側に設けられた連結部により隣接する支持部材、つまり、静翼と連結することができ、各静翼(各支持部材)同士を高精度に連結することができる。
【0014】
本発明の静翼では、前記複数の分割体は、前記静翼本体の背側に配置される第1分割体と、前記静翼本体の腹側に配置される第2分割体と、前記静翼本体の後縁部側に配置される第3分割体とを有することを特徴としている。
【0015】
従って、静翼本体の背側に配置される第1分割体と、静翼本体の腹側に配置される第2分割体と、静翼本体の後縁部側に配置される第3分割体とにより分割体を構成することで、組付性を向上することができる。
【0016】
本発明の静翼では、前記第3分割体は、2個の連結部からなるV字形状部が設けられ、前記2個の連結部の交差部に非開先溶接部が設けられることを特徴としている。
【0017】
従って、静翼の端部と第3分割体におけるV字形状部の交差部とは、開先溶接しないことから、静翼本体の端部における後縁部の溶接熱により形状変形を抑制することができる。
【0018】
本発明の静翼では、前記静翼本体の端部が前記支持部材より突出して配置されることを特徴としている。
【0019】
従って、静翼本体を製造するとき、高精度の長さ設定を不要として、製造コストを低減することができる。
【0020】
本発明の静翼では、前記静翼本体は、長手方向に貫通する中空部が設けられ、前記支持部材を貫通した端部に前記中空部に連通するドレン通路が設けられることを特徴としている。
【0021】
従って、静翼本体の中空部に対応してドレン通路が連通して設けられることで、静翼本体の中空部で発生したドレン水をドレン通路から容易に排出することができる。
【0022】
また、本発明の静翼ユニットは、前記支持部材同士が連結されることで、前記静翼がリング形状に組付けられて構成される、ことを特徴とするものである。
【0023】
従って、静翼は、静翼本体の端部の周囲に複数の分割体が配置され、複数の分割体同士が溶接部により連結されると共に、静翼本体の端部と各分割体が開先溶接により連結されて構成されている。支持部材を複数の分割体から構成することで、静翼が湾曲形状をなすと共に周方向に捩じられた3次元形状であっても、静翼本体の端部と各分割体を隙間なく適正に連結することができる。そして、開先溶接を実施可能であることから、通路側への溶接部の突出を抑制して蒸気流れを妨げることがない。また、複数の静翼をリング形状に組付けることで、容易に静翼ユニットを構成することができる。その結果、通路側への突出部を抑制して性能の向上を図ることができると共に、組付を容易として作業性の向上を図ることができる。
【0024】
また、本発明の蒸気タービンは、ケーシングと、前記ケーシング内に回転自在に支持されたロータと、動翼の基端部が前記ロータに支持されて前記ロータの周方向に所定間隔で複数配置される複数段の動翼ユニットと、静翼の基端部と先端部が前記ケーシングに支持されて前記ロータの周方向に所定間隔で複数配置される複数段の静翼動翼ユニットと、を有し、前記複数段の静翼ユニットのうちの最終段の静翼ユニットとして前記静翼ユニットが適用される、ことを特徴とするものである。
【0025】
従って、通路側への突出部を抑制して性能の向上を図ることができると共に、組付を容易として作業性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の静翼、静翼ユニット、蒸気タービンによれば、静翼本体とその端部が貫通して固定される支持部材から静翼を構成し、支持部材を複数の分割体から構成し、複数の分割体同士の間に溶接部を設けると共に、静翼本体の端部と分割体との間に開先溶接部を設けるので、通路側への突出部を抑制して性能の向上を図ることができると共に、組付を容易として作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本実施形態の蒸気タービンにおける静翼ユニットを表す概略図である。
図2図2は、静翼の分解状態を表す概略図である。
図3図3は、静翼の組立状態を表す概略図である。
図4図4は、静翼と分割環との連結部を表す断面図である。
図5図5は、本実施形態の蒸気タービンを表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る静翼、静翼ユニット、蒸気タービンの好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0029】
図5は、本実施形態の蒸気タービンを表す概略構成図である。
【0030】
蒸気タービンにおいて、図5に示すように、ケーシング11は、中空形状をなし、ロータ12が複数の軸受13により回転自在に支持されている。このロータ12は、ケーシング11の内部にて、外周部に軸方向に所定間隔で動翼ユニット14が複数設けられている。この動翼ユニット14は、ロータ12の外周部に軸方向に所定間隔で設けられた複数のディスク15と、各ディスク15の外周部に周方向に沿って固定される複数の動翼16により構成されている。
【0031】
また、ケーシング11は、内部にて、ロータ12の軸方向に所定間隔で静翼ユニット17が複数設けられている。この静翼ユニット17は、ロータ12の外周部に軸方向に所定間隔で配置される複数の外輪18及び内輪19と、各外輪18と各内輪19とを連結するように周方向に沿って固定される複数の静翼20により構成されている。このように、動翼ユニット14と静翼ユニット17は、ロータ12における軸方向に交互に配置されている。
【0032】
また、ケーシング11は、この複数の動翼ユニット14と複数の静翼ユニット17が配設される通路に蒸気通路21が形成されている。そして、ケーシング11は、蒸気通路21に連通する蒸気供給口22と蒸気排出口23が設けられている。
【0033】
従って、蒸気が蒸気供給口22から蒸気通路21に供給されると、この蒸気は、複数の動翼ユニット14及び静翼ユニット17を通過することで、各動翼ユニット14を介してロータ12を駆動回転することができる。このロータ12は、図示しない発電機が連結されており、発電機を駆動して発電することができる。
【0034】
本実施形態にて、図1に示すように、静翼20は、静翼本体31と、この静翼本体31の先端部が貫通して固定される分割環(支持部材)32と、静翼本体31の基端部が貫通して固定されるシュラウド(支持部材)33を有している。そして、複数の分割環32がリング状に連結されることで外輪18が構成され、複数のシュラウド33がリング状に連結されることで内輪19が構成されることから、静翼ユニット17は、静翼20がリング形状に組付けられて構成される。
【0035】
そして、分割環32とシュラウド33は、複数の分割体から構成され、複数の分割体同士がレーザ溶接により連結されると共に、静翼本体31の端部と各分割体とが開先溶接により連結される。
【0036】
即ち、図2に示すように、静翼本体31の先端部と分割環32との連結構造において、静翼本体31は、板金プレス加工により形成された背側プレート41と腹側プレート42とが溶接より連結されている。背側プレート41と腹側プレート42は、各前縁部が溶接により連結されて前縁溶接部43が設けられ、各後縁部が溶接により連結されて後縁溶接部44が設けられることで、静翼本体31が翼形状をなして構成されている。ここで、静翼本体31は板金による製造の他に、例えば、鋳造や削り出しにより製造されてもよい。
【0037】
分割環32は、静翼本体31における背側プレート41側に配置される第1分割体51と、静翼本体31における腹側プレート42側に配置される第2分割体52と、静翼本体31の後縁部31a側に配置される第3分割体53とを有している。第1分割体51は、背側プレート41における前縁部側に沿って凹状に湾曲して第1連結部51aが形成されると共に、この第1連結部51aの厚さ方向に対して斜めに形成される第1開先部51bが形成されている。第2分割体52は、腹側プレート42における前縁部側に沿って凸状に湾曲して第2連結部52aが形成されると共に、この第2連結部52aの厚さ方向に対して斜めに形成される第2開先部52bが形成されている。第3分割体53は、背側プレート41及び腹側プレート42における後縁部31a側に沿って2個の第3連結部53a,53bからなるV字形状部54が設けられると共に、この第3連結部53a,53bの厚さ方向に対して斜めに形成される第3開先部53c,53dが形成されている。なお、第3連結部53a,53bは、第3開先部53c,53dが途中まで形成され、後縁部41aに対応したV字形状部54の交差部54aには開先部が形成されていない。
【0038】
第1分割体51と第2分割体52は、対向する位置に連結面55a,56aが形成され、第1分割体51と第3分割体53は、対向する位置に連結面55b,57aが形成され、第2分割体52と第3分割体53は、対向する位置に連結面56b,57bが形成されている。また、第1分割体51は、第1開先部51bとは反対側に隣接する分割環32との連結面55c,55dが形成されている。第2分割体52は、第2開先部52bとは反対側に隣接する分割環32との連結面56cが形成され、連結面56b,56cが直線状に設けられている。第3分割体53は、第3開先部53c,53d側に隣接する分割環32との連結面57cが形成されると共に、第3開先部53c,53dとは反対側に隣接する分割環32との連結面57d,57eが形成されている。なお、第3分割体53は、連結面57a,57cが直線状に設けられている。
【0039】
そして、静翼20は、図3及び図4に示すように、静翼本体31の端部の周囲に各分割体51,52,53が配置され、複数の分割体51,52,53同士がレーザ溶接により連結されると共に、静翼本体31の端部と各分割体51,52,53とが開先溶接により連結される。即ち、静翼20は、静翼本体31の端部の外周面に各分割体51,52,53の連結部51a,52a,53a,53bが密着する。また、第1分割体51と第2分割体52は、連結面55a,56aにより密着し、第1分割体51と第3分割体53は、連結面55b,57aにより密着し、第2分割体52と第3分割体53は、連結面56b,57bにより密着する。
【0040】
この状態で、第1分割体51と第2分割体52は、連結面55a,56aがレーザ溶接(レーザ溶接部61)により連結され、第1分割体51と第3分割体53は、連結面55b,57aがレーザ溶接(レーザ溶接部62)により連結され、第2分割体52と第3分割体53は、連結面56b,57bがレーザ溶接(レーザ溶接部63)により連結される。また、静翼本体31の外周面と第1分割体51の第1開先部51bが開先溶接(開先溶接部71)により連結される。静翼本体31の外周面と第2分割体52の第2開先部52bが開先溶接(開先溶接部72)により連結される。静翼本体31の外周面と第3分割体53の第3開先部53c,53dが開先溶接(開先溶接部73,74)により連結される。このとき、静翼本体31の後縁部31aと第3分割体53の交差部54aは、開先溶接されることはなく、非開先溶接部75が設けられる。
【0041】
各分割体51,52,53が連結される分割環32は、複数リング状に連結されて外輪18が構成される。即ち、第1分割体51は、一方側に隣接する分割環32の第2分割体52と連結面55c,56cが密着して溶接により連結されると共に、第3分割体53と連結面55c,57eが密着して溶接により連結される。第2分割体52は、他方側に隣接する分割環32の第1分割体51と連結面55c,56cが密着して溶接により連結される。第3分割体53は、一方側に隣接する分割環32の第3分割体53と連結面57c,57dが密着して溶接により連結され、他方側に隣接する分割環32の第3分割体53と連結面57c,57dが密着して溶接により連結されると共に、第1分割体51と連結面55d,57eが密着して溶接により連結される。
【0042】
ここで、静翼本体31と各分割体51,52,53を連結する各種の溶接は、蒸気通路21(図1参照)側から実施される。
【0043】
また、静翼20は、図1に示すように、静翼本体31の端部が分割環32(外輪18)を貫通し、所定長さだけ突出してこの分割環32に固定される。分割環32は、両側のフランジ部32aを介して蓋プレート81が複数のボルト82により固定された箱型形状をなし、静翼本体31の端部が蓋プレート81に当接している。この蓋プレート81は、ドレン通路83が設けられている。そして、静翼本体31は、長手方向に貫通する中空部45が設けられ、この中空部45は、蓋プレート81に形成された貫通孔81aを介してドレン通路83に連通している。
【0044】
なお、ここでは、静翼20にて、静翼本体31の先端部と分割環32との連結構造について説明したが、静翼本体31の基端部とシュラウド33との連結構造についてもほぼ同様の構成となっている。
【0045】
このように本実施形態の静翼にあっては、静翼本体31の端部が分割環32(シュラウド33)に貫通して固定されて構成される静翼20であって、分割環32は、静翼本体31の端部の周囲に配置される複数の分割体51,52,53から構成され、複数の分割体51,52,53同士の間にレーザ溶接部61,62,63が設けられると共に、静翼本体31の端部と分割体51,52,53との間に開先溶接部71,72,73,74が設けられている。
【0046】
従って、分割環32を複数の分割体51,52,53から構成することで、静翼本体31が湾曲形状をなすと共に周方向に捩じられた3次元形状であっても、静翼本体31の端部と各分割体51,52,53を隙間なく適正に密着させることができ、静翼本体31の端部と各分割体51,52,53を高精度に連結することができる。そして、静翼本体31の端部と各分割体51,52,53とが適正に密着することから、両者間で開先溶接を実施することができ、蒸気通路21側への開先溶接部71,72,73,74の突出を抑制することができ、蒸気通路21を流れる蒸気流れを妨げることがない。その結果、蒸気通路21側への開先溶接部71,72,73,74の突出量を抑制して静翼20の性能を向上することができると共に、静翼20の組付を容易として作業性を向上することができる。
【0047】
本実施形態の静翼では、複数の分割体51,52,53における静翼本体31との連結部51a,52a,53a,53bに開先部51b,52b,53c,53dを設けている。従って、静翼本体31の外面形状に応じて各分割体51,52,53における静翼本体31との連結部51a,52a,53a,53bに最適形状の開先部51b,52b,53c,53dを設けることができ、静翼本体31と分割体51,52,53を高精度に開先溶接することができる。
【0048】
本実施形態の静翼では、複数の分割体51,52,53における開先部51b,52b,53c,53dとは反対側に、隣接する分割環32との連結面55b,55c,56c,57c,57d,57eを設けている。従って、静翼本体31の端部に各分割体51,52,53が開先溶接により連結されて構成された静翼20は、連結面55b,55c,56c,57c,57d,57eを介して隣接する静翼20の分割環32と連結されることとなり、各静翼20(各分割環32)同士を高精度に連結することができる。
【0049】
本実施形態の静翼では、複数の分割体として、静翼本体31の背側に配置される第1分割体51と、静翼本体31の腹側に配置される第2分割体52と、静翼本体31の後縁部31a側に配置される第3分割体53とを設けている。従って、3次元形状をなす静翼本体31の端部に対して3個の分割体51,52,53を適正に密着させて連結することができ、組付性を向上することができる。
【0050】
本実施形態の静翼では、第3分割体53に2個の連結部53a,53bからなるV字形状部54を設け、2個の連結部53a,53bの交差部54aに非開先溶接部75を設けている。従って、静翼本体31の端部と第3分割体53におけるV字形状部54の交差部54aとは、開先溶接しないことから、静翼本体31の端部における後縁部31aの溶接熱により形状変形(溶融)を抑制することができる。
【0051】
本実施形態の静翼では、静翼本体31の端部を分割環32(シュラウド33)より突出して配置している。従って、静翼本体31の端部の長さ方向における所定の位置に各分割体51,52,53を固定すればよく、静翼本体31の端部の位置を位置決めする必要がない。静翼本体31は、板金プレス加工により形成された背側プレート41と腹側プレート42とを溶接より連結して製造しているが、このとき、各プレート41,42の長さを高精度に製造する必要はなく、製造コストを低減することができる。
【0052】
本実施形態の静翼では、静翼本体31に長手方向に貫通する中空部45を設け、分割環32を貫通した端部に中空部45に連通するドレン通路83を設けている。従って、静翼本体31の中空部45に対応してドレン通路83が連通して設けられることで、静翼本体31の中空部45で発生したドレン水をドレン通路83から容易に外部に排出することができる。
【0053】
また、本実施形態の静翼ユニットにあっては、複数の分割環32をリング状に連結して外輪18とすると共に、複数のシュラウド33をリング状に連結して内輪19とし、静翼20をリング形状として構成し、分割環32(シュラウド33)を複数の分割体51,52,53により構成している。従って、静翼本体31の端部と各分割体51,52,53を隙間なく適正に密着させることができ、静翼本体31の端部と各分割体51,52,53を高精度に連結することができる。そして、静翼本体31の端部と各分割体51,52,53とを開先溶接により連結することができ、蒸気通路21側への開先溶接部71,72,73,74の突出を抑制することができ、蒸気通路21を流れる蒸気流れを妨げることがない。その結果、蒸気通路21側への開先溶接部71,72,73,74の突出量を抑制して静翼20の性能を向上することができると共に、静翼20の組付を容易として作業性を向上することができる。
【0054】
また、本実施形態の蒸気タービンにあっては、ケーシング11と、ケーシング11内に回転自在に支持されたロータ12と、動翼16の基端部がロータ12に支持されてロータ12の周方向に所定間隔で複数配置される複数段の動翼ユニット14と、静翼20の基端部と先端部がケーシング11に支持されてロータ12の周方向に所定間隔で複数配置される複数段の静翼ユニット17とを設け、複数段の静翼ユニット17のうちの最終段の静翼ユニット17として上述した静翼ユニットを適用している。
【0055】
従って、蒸気通路21側への開先溶接部71,72,73,74の突出量を抑制して静翼20の性能を向上することができると共に、静翼20の組付を容易として作業性を向上することができる。
【0056】
なお、上述した実施形態にて、分割環32(シュラウド33)を静翼本体31における背側プレート41側に配置される第1分割体51と、静翼本体31における腹側プレート42側に配置される第2分割体52と、静翼本体31の後縁部31a側に配置される第3分割体53とから構成したが、この構成に限定されるものではない。即ち、分割体の分割位置は、実施形態に限定されずにどの位置で分割してもよい。また、分割体の分割数は、実施形態(3個)に限定されずに2個または4個以上としてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、静翼本体31の端部を分割環32(シュラウド33)から突出して連結したが、この構成に限定されるものではない。例えば、静翼本体31の端部を分割環32(シュラウド33)の内面と同じ位置に連結してもよい。即ち、静翼本体31の端部を分割環32(シュラウド33)から突出させなくてもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、本発明の静翼及び静翼ユニットを蒸気タービンの最終段の静翼及び静翼ユニットに適用したが、その他の静翼及び静翼ユニットに適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
11 ケーシング
12 ロータ
13 軸受
14 動翼ユニット
15 ディスク
16 動翼
17 静翼ユニット
18 外輪
19 内輪
20 静翼
21 蒸気通路
31 静翼本体
31a 後縁部
32 分割環(支持部材)
33 シュラウド(支持部材)
41 背側プレート
42 腹側プレート
51 第1分割体
51a 第1連結部
51b 第1開先部
52 第2分割体
52a 第2連結部
52b 第2開先部
53 第3分割体
53a,53b 第3連結部
53c,53d 第3開先部
54 V字形状部
54a 交差部
55a,55b,55c,55d,56a,56b,56c,57a,57b,57c,57d,57e 連結面(連結部)
61,62,63 レーザ溶接部
71,72,73,74 開先溶接部
75 非開先溶接部
83 ドレン通路
図1
図2
図3
図4
図5