特許第6302371号(P6302371)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302371
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】低粘度潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 105/04 20060101AFI20180319BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20180319BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20180319BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20180319BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20180319BHJP
【FI】
   C10M105/04
   C10N20:00 Z
   C10N20:02
   C10N30:02
   C10N40:25
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-142105(P2014-142105)
(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-21129(P2015-21129A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2017年6月2日
(31)【優先権主張番号】61/847,692
(32)【優先日】2013年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517436615
【氏名又は名称】シェルルブリカンツジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク・クリフト・サウスビー
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−538217(JP,A)
【文献】 特表2012−530830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油ブレンドおよび1種以上の添加剤を含む、エンジンのクランクケースに使用される潤滑組成物であって、当該基油ブレンドがフィッシャー・トロプシュ誘導基油を含み、当該基油ブレンドが、100℃で2.6から2.9cStの間の動粘度を有する第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を4から8重量%の間および100℃で3.5から4.5cStの間の動粘度を有する第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を92から96重量%の間で含有し、得られた当該基油ブレンドが15重量%未満のNoack揮発度(ASTM D5800)を有する、ただし第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油の流動点および第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油の流動点はいずれも−30℃から−45℃の間である、潤滑剤組成物
【請求項2】
基油ブレンドおよび1種以上の添加剤を含む、エンジンのクランクケースに使用される潤滑組成物であって、当該基油ブレンドがフィッシャー・トロプシュ誘導基油を含み、当該基油ブレンドが、100℃で2.6から2.9cStの間の動粘度を有する第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を0.5から4重量%の間および100℃で3.5から4.5cStの間の動粘度を有する第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を96から99.5重量%の間で含有し、得られた当該基油ブレンドが15重量%未満のNoack揮発度(ASTM D5800)を有する、ただし第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油の流動点および第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油の流動点はいずれも−30℃から−45℃の間である、潤滑剤組成物
【請求項3】
請求項1または2に記載の潤滑組成物であって、第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油が、100℃で3.7から4の間の動粘度を有する、潤滑組成物。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載の潤滑組成物であって、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、粘度調整剤、洗浄剤、分散剤および消泡剤からなる群から選択される添加剤の1種以上を含む潤滑剤用添加剤パッケージをさらに含み、−35℃での低温クランキング粘度が2500cP以下である潤滑組成物。
【請求項5】
エンジンを潤滑させる方法であって、請求項1からのいずれかに記載の潤滑組成物をエンジンに供給するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑組成物に関し、詳細には、グループIIIの基油に比べて低粘度を有するクランクケース潤滑組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油には、より滑らかな機能を促進させ、可動部品同士の金属間接触での摩耗を低減させ、熱を除去するために、内燃機関、ギアボックスおよびその他の機械式デバイスで用途がある。内燃機関で使用される潤滑油(エンジンオイル)は特に、内燃機関の高性能、高出力および厳しい動作条件下で、高レベルの性能を示さなければならない。潤滑油に必要な燃料効率性能は、近年上昇し続けており、その結果、様々な高粘度指数の基油または摩擦調整剤が利用されている。耐摩耗剤、過塩基化洗浄剤、無灰分散剤、粘度調整剤および酸化防止剤などの様々な添加剤を、従来のエンジンオイルに添加して、そのような性能要件を満たすことができる。
【0003】
多くの適用例において、潤滑剤組成物は、広範な剪断および/または温度にわたって所望の粘度特性を得るために、ポリマー系粘度調整剤添加剤の存在を必要とする。これらの添加剤は、通常は室温で高粘度の液体または固体である。均質な分布を実現できるようにするために、固形分の取扱いを回避し、潤滑剤組成物中に添加される添加剤の量を管理し、したがって一貫した品質を確実にできるようにするために、これらの添加剤は、通常は添加剤濃縮物として添加される。
【0004】
フィッシャー・トロプシュ誘導基油(以後、ガスツーリキッドまたは「GTL」基油)は、エンジンオイル、トランスミッション液および工業用潤滑剤などの潤滑組成物での用途が益々見出されている。これらの組成物は、改善された酸化特性、改善されたエンジン清浄性、改善された摩耗保護、改善された排気および改善された後処理デバイス適合性を含めた、伝統的な鉱質基油に勝る様々な性能の利益を享受する。
【0005】
鉱質基油は、典型的には潤滑組成物の調製に使用されてきた。しかし、SAE 0W−Xなど、SAE J300仕様(2013年4月改訂)のシンナーグレードに一致した鉱質基油を用いてエンジンオイル(乗用車のモーターオイルおよび大型車両用ディーゼルエンジンオイルを含む。)を配合することには問題がある。さらに、鉱質ベースエンジンオイルは、比較的薄いエンジンオイルで使用された場合、不十分な燃料経済性、不十分な摩耗性能および低いNoack揮発度の1つ以上に悩まされる可能性がある。
【0006】
潤滑性能をさらに改善する要求が高まるにつれ、改善された性質を実証する、より低い粘度の潤滑組成物を開発することが求められている。
【発明の概要】
【0007】
(発明の要旨)
上記またはその他の目的の1つ以上は、(a)GTL3基油および(b)GTL4基油を含んだ基油のブレンドを含む潤滑油組成物によって得ることができる。ある種の実施形態では、基油のブレンドは、GTL3基油を最大約12重量%含むことができる。代わりに、基油のブレンドは、GTL3基油を1から12重量%の間で含むことができる。その他の実施形態では、基油のブレンドは、GTL4基油を少なくとも88重量%含むことができる。その他の実施形態では、基油のブレンドは、GTL4基油を88から99重量%の間で含むことができる。
【0008】
(発明の詳細な説明)
ある種の実施形態では、目的の1つ以上は、フィッシャー・トロプシュ誘導基油を有する潤滑組成物を用いて達成することができ、第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油は100℃で2.5から3.0cStの間の動粘度および30重量%よりも高いNoack揮発度を有し、第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油は、100℃で3.7から4.3cStの間の動粘度および15重量%未満のNoack揮発度を有する。
【0009】
ある種の実施形態では、上記またはその他の目的の1つ以上は、基油のブレンドを含む潤滑組成物によって得ることができ、このブレンドは:100℃で2.5から3.5cStの間の動粘度を有する第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を最大約12重量%、および100℃で3.5から4.5cStの間の動粘度を有する第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を少なくとも88重量%含み、この潤滑組成物は15重量%未満のNOACK揮発度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の目的の1つ以上は、フィッシャー・トロプシュ誘導基油のブレンドを含む潤滑組成物によって達成することができる。より詳細には、フィッシャー・トロプシュ誘導基油のブレンドは、GTL3基油およびGTL4基油を含む。GTL3およびGTL4基油を組み合わせることによって、高燃料効率エンジンで使用される低粘度潤滑組成物が提供されることが、意外にも見出された。ある種の実施形態では、潤滑組成物は、揮発性を目的に添加され得るGTL8基油を含むことができる。
【0011】
「フィッシャー・トロプシュ誘導」という用語は、フィッシャー・トロプシュ法の合成生成物であるまたはこの合成生成物から誘導された、基油を指す。フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、GTL(ガスツーリキッド)基油と呼んでもよい。本発明の潤滑組成物中の基油として都合良く使用することのできるフィッシャー・トロプシュ誘導基油は、例えば、EP0776959;EP0668342;WO1997/21788;WO2000/15736;WO2000/14188;WO2000/14187;WO2000/14183;WO2000/14179;WO2000/08115;WO1999/41332;EP1029029;WO2001/18156;およびWO2001/57166に開示されたものである。
【0012】
本発明の潤滑油組成物に使用される適切な基油は、グループI−IIIの鉱質基油(好ましくは、グループIII)、グループIVポリ−αオレフィン(PAO)およびこれらの混合物を含む。
【0013】
本明細書で使用される、上記またはその他の目的の1つ以上で言及された本発明における「グループI」、「グループII」、「グループIII」および「グループIV」基油は、米国石油協会(API)の分類I、II、IIIおよびIVの定義に準拠した潤滑油基油を含む潤滑油組成物によって得ることができる(これらのAPI分類は、API Publication 1509、第15版、補遺E、2002年4月に定義されている。)。フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、当技術分野で公知である。
【0014】
本発明の配合物中に含めることができる合成油は、オレフィンオリゴマー(ポリαオレフィン基油;PAOを含む。)、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール(PAG)、アルキルナフタレンおよび脱蝋させた蝋状イソメレートなどの炭化水素油を含むことができる。Shell Groupから「Shell XHVI」(商標)という名称で販売されている合成炭化水素基油を本発明で都合良く使用してもよい。
【0015】
フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、非常に良好なコールドフロー特性、高酸化安定度および高粘度指数を示す、高パラフィン系APIグループIII基油(API Base Oil Interchangeability Guidelines)である。
【0016】
本発明で使用される基油は、本明細書で指定されたフィッシャー・トロプシュ誘導基油に加え、1種以上の鉱油および/または1種以上の合成油の混合物を都合良く含み得る。本明細書で使用される「基油」という用語は、本発明の少なくとも1種のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を含めた複数の基油を含む混合物を指してもよい。鉱油は、流動石油および溶媒処理されたまたは酸処理された鉱質潤滑油であってパラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン/ナフテン型のものを含むことができ、これらはさらに水素化仕上げ法および/または脱蝋によって精製されてもよい。
【0017】
フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、非常に良好なコールドフロー特性、高酸化安定度および高粘度指数を示す、高パラフィン系APIグループIII基油(API Base Oil Interchangeability Guidelinesにより定義される。)である。しかし高パラフィン含量により、基油の溶解作用は一般に低く、その他の潤滑剤成分および添加剤に対してしばしば不相溶性をもたらす。
【0018】
フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、当技術分野で公知である。本発明の文脈において、「フィッシャー・トロプシュ誘導」という用語は、材料が、フィッシャー・トロプシュ縮合法の合成生成物であり、またはこの合成生成物から誘導されることを意味する。「非フィッシャー・トロプシュ誘導」という用語は、相応に解釈することができる。したがってフィッシャー・トロプシュ誘導基油は、そのかなりの部分が、添加された水素を除いてフィッシャー・トロプシュ縮合法から直接または間接的に誘導される炭化水素流になる。フィッシャー・トロプシュ誘導基油はGTL(ガスツーリキッド)基油と呼んでもよく、Shell XHVIという商標で販売されている基油を含む。フィッシャー・トロプシュ誘導基油およびその調製に関するその他の情報については、その教示が特定の参照により本明細書に組み込まれるWO 2009/074572を参照されたい。
【0019】
典型的には、フィッシャー・トロプシュ誘導基油の芳香族含量(一般に、ASTM 4629により決定される。)は1重量%未満になり、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満になる。基油は、典型的には、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%の全パラフィン含量を有する。さらにフィッシャー・トロプシュ誘導基油は、典型的には、98重量%超、好ましくは99重量%超、より好ましくは99.5重量%超の飽和物含量(IP−368、ASTM D2007、ASTM D7419、または類似の結果をもたらすことになる任意のその他のクロマトグラフ法によって測定される。)を有する。フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、0.5重量%の最大n−パラフィン含量を有することができる。フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、最大約20重量%、あるいは0.1から20重量%の間、あるいは0.5から10重量%の間、あるいは5から15重量%の間、あるいは5から10重量%の間のナフテン系化合物の含量を有することができる。
【0020】
典型的には、フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、100℃で、2から8mm/秒(cSt)、好ましくは2.5超、より好ましくは3.0mm/秒超の動粘度(ASTM D7042により測定される。)を有する。好ましくはフィッシャー・トロプシュ誘導基油は、100℃で、5.0mm/秒未満、好ましくは4.5mm/秒未満、より好ましくは4.2mm/秒未満の動粘度を有する。ある種の実施形態では、フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、100℃で、2.5から5mm/秒(cSt)の間、あるいは3から4.5mm/秒(cSt)の間、あるいは4.0から4.2mm/秒(cSt)の間の動粘度を有する。
【0021】
さらにフィッシャー・トロプシュ誘導基油は、典型的には、10から100mm/秒(cSt)、あるいは15から50mm/秒(cSt)の、40℃での動粘度(ASTM D7042により測定される。)を有する。
【0022】
またフィッシャー・トロプシュ誘導基油は、好ましくは、−30℃未満、より好ましくは−40℃未満、最も好ましくは−45℃未満の流動点(ASTM D5950により測定される。)も有する。ある種の実施形態では、流動点が−30℃から−40℃の間、あるいは−40℃から−45℃の間である。
【0023】
フィッシャー・トロプシュ誘導基油の引火点(ASTM D92により測定される。)は、120℃よりも高く、好ましくは130℃よりも高く、より好ましくは140℃よりもさらに高い。あるいは引火点は、120℃から130℃の間とすることができ、あるいは130℃から140℃の間とすることができる。
【0024】
フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、好ましくは、100から200の範囲の粘度指数(ASTM D2270により測定される。)を有する。好ましくは、フィッシャー・トロプシュ誘導基油は、少なくとも125、好ましくは少なくとも130の粘度指数を有する。また、粘度指数は180未満であることが好ましく、150未満であることが好ましい。ある種の実施形態では、粘度指数が125から180の間、あるいは130から150の間である。
【0025】
フィッシャー・トロプシュ誘導基油が2種以上のフィッシャー・トロプシュ誘導基油のブレンドを含有する場合、上記の値は、2種以上のフィッシャー・トロプシュ誘導基油のブレンドに当てはまる。
【0026】
本明細書で使用されるGTL3基油は、100℃で、約2から4cStの間、あるいは2.2から3.2cStの間、あるいは2.6から2.9cStの間の動粘度と、少なくとも約98.5重量%の飽和物含量と、約0.7重量%以下の芳香族含量と、約42重量%のNoack揮発度とを有するフィッシャー・トロプシュ誘導基油を指す。
【0027】
本明細書で使用されるGTL4基油は、100℃で、約3.5から5cStの間、あるいは4から4.2cStの間の動粘度と、少なくとも約99重量%の飽和物含量と、約0.7重量%以下の飽和物含量と、約13.5重量%のNoack揮発度とを有するフィッシャー・トロプシュ誘導基油を指す。
【0028】
フィッシャー・トロプシュ誘導基油に加え、添加剤濃縮物は、米国石油協会(API)の定義に従うグループI−V基油を含んだ鉱物誘導基油およびいわゆる合成基油(PAOなど)など、1種以上の非フィッシャー・トロプシュ誘導基油を含んでいてもよい。これらのAPIカテゴリーは、API Publication 1509、第15版、補遺E、2009年7月で定義される。
【0029】
ある種の実施形態では、本発明の潤滑剤組成物は、2種のフィッシャー・トロプシュ誘導基油のブレンドを含み、このブレンドは:100℃で2.5から3.5cStの間の動粘度を有する第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油と、100℃で3.5から4.5cStの間の動粘度を有する第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油とを含む。ある種の実施形態では、2種のフィッシャー・トロプシュ誘導基油のブレンドは、第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を最大12重量%、および第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を少なくとも88重量%含むことになり、あるいは第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を0.5から3重量%の間、および第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を97から99.5重量%の間含むことになり、あるいは第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を3から6重量%の間、および第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を94から97重量%の間含むことになり、あるいは第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を6から9重量%の間、および第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を91から94重量%の間含むことになり、あるいは第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を9から12重量%の間、および第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を88から91重量%の間含むことになる。ある種の実施形態では、2種のフィッシャー・トロプシュ誘導基油のブレンドは、第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を1から12重量%の間、および第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を88から99重量%の間含むことになり、あるいは、第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を0.5から4重量%の間、および第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を96から99.5重量%の間含むことになり、あるいは、第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を4から8重量%の間、および第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を92から96重量%の間含むことになり、あるいは、第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を8から12重量%の間、および第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を88から92重量%の間含むことになる。
【0030】
得られる潤滑剤組成物は、15重量%未満、あるいは14重量%未満、あるいは13重量%未満、あるいは12重量%未満のNOACK揮発度(ASTM D−5800により試験をする。)を有することになる。
【0031】
得られる潤滑剤組成物は、100℃で、3から10cStの間、あるいは3から5cStの間、あるいは4から6cStの間、あるいは5から8cStの間、あるいは6から9cStの間の動粘度(ASTM D445により試験をする。)を有することになる。あるその他の実施形態では、100℃での動粘度が8cStを超えず、あるいは5cStを超えない。
【0032】
得られる潤滑剤組成物は、−30℃で、900cPから6600cPの間、あるいは900cPから3000cPの間、あるいは900cPから2000cPの間の低温クランキング粘度(ASTM D593により試験をする。)を有することになる。ある種の実施形態では、−30℃での低温クランキング粘度は6600cP未満になり、あるいは2000cP未満になり、あるいは1400cP未満になり、あるいは1200cP未満になる。ある種の実施形態では、−30℃での低温クランキング粘度が2000cP以下であり、あるいは1500cP以下である。
【0033】
得られる潤滑剤組成物は、−35℃で、約1400cPから6200cPの間、あるいは1400cPから2500cPの間、あるいは1500cPから2000cPの間の低温クランキング粘度(ASTM D593により試験をする。)を有することになる。ある種の実施形態では、−35℃での低温クランキング粘度が2500cP以下になり、あるいは2000cP以下になる。ある種の実施形態では、−35℃での低温クランキング粘度が6200cP未満になり、あるいは2500cP未満になり、あるいは2000cP未満になる。
【0034】
得られる潤滑剤組成物は、150℃で、1.4から3.0cPの間、あるいは1.7から2.2cPの間、あるいは1.7から1.9cPの間の高温高剪断(HTHS)粘度を有することになる。ある種の実施形態では、150℃でのHTHS粘度が2.2cP以下であり、あるいは1.9cP以下である。
【0035】
典型的には、本発明により使用される基油(または基油のブレンド)は、100℃で2.5から8cStの間、あるいは約3から5cStの間の動粘度{ASTM D445による。}を有する。本発明の好ましい実施形態によれば、基油は、100℃で3.5から4.5cStの間の動粘度{ASTM D445による。}を有する。基油が2種以上の基油のブレンドを含有する場合、ブレンドは、100℃で3.5から4.5cStの間の動粘度を有することが好ましい。
【0036】
好ましくは、本発明による潤滑剤組成物の−35℃での粘度(ASTM D5293による。)は、6200cP未満(1cPは1mPasに等しい。)であり、好ましくは5500cPよりも少なく、より好ましくは5000cP未満であり、さらにより好ましくは4500cP未満であり、またはある種の実施形態では、4000cP未満または3500cP未満である。典型的には、−35℃での粘度は2000cPよりも大きい。ある種の実施形態では、粘度は約2000から4000cPの間であり、あるいは約4000から6000cPの間であり、あるいは約5000から6200cPの間である。
【0037】
好ましくは、本発明による組成物の高温高剪断粘度(「HTHS」;ASTM D4683による。)は2.6cP未満であり、好ましくは2.0cP未満であり、より好ましくは1.9cP未満である。典型的には、HTHSは1.5cPよりも大きい。ある種の実施形態では、HTHSは1.5から2.6cPの間であり、あるいは約1.5から2cPの間であり、あるいは約1.5から1.9cPの間である。
【0038】
本発明による潤滑剤組成物は、15重量%未満のNoack揮発度(ASTM D5800による。)を有する。典型的には、潤滑剤組成物のNoack揮発度(ASTM D5800による。)は、1から15重量%の間であり、あるいは10から14重量%の間であり、あるいは11から13.5重量%の間である。ある種の実施形態では、Noack揮発度は14.6重量%未満であり、あるいは14重量%未満であり、あるいは13.5重量%未満であり、あるいは13重量%未満である。ある種の実施形態では、潤滑剤組成物のNoack揮発度は、12.5重量%未満であり、あるいは12重量%未満であり、あるいは11.5重量%未満であり、あるいは11重量%未満であり、あるいは10重量%未満である。
【0039】
本発明による潤滑組成物は、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、分散剤、洗浄剤、過塩基化洗浄剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、金属不動態化剤、腐食防止剤、解乳化剤、消泡剤、封止適合剤、および添加剤希釈基油など、1種以上の添加剤をさらに含むことができる。当業者は上記およびその他の添加剤に馴染みがあるので、これらについては本明細書でさらに詳細には論じない。そのような添加剤の特定の例は、例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、第14巻、477−526頁に記載されている。都合良く使用することができる酸化防止剤は、フェニル−ナフチルアミン(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な「IRGANOX L−O6」など)およびジフェニルアミン(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な「IRGANOX L−57」など)であって例えばWO 2007/045629およびEP 1058720に開示されているもの、フェノール系酸化防止剤などを含む。WO 2007/045629およびEP 1058720の教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
添加することができる耐摩耗添加剤は、ジアルキル−、ジアリール−、および/またはアルキルアリール−ジチオリン酸亜鉛から選択されたジチオリン酸亜鉛化合物などの亜鉛含有化合物、モリブデン含有化合物、ホウ素含有化合物と、置換および非置換チオリン酸およびそれらの塩などの無灰耐摩耗添加剤を含む。モリブデン含有化合物の例は、モリブデンジチオカルバメート、三核モリブデン化合物(WO 1998/26030に記載されている。)、硫化モリブデン、およびジチオリン酸モリブデンを含むことができる。使用することができるホウ素含有化合物は、ホウ酸エステル、ホウ酸化脂肪アミン、ホウ酸化エポキシド、アルカリ金属(または混合アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属)ボレート、およびホウ酸化過塩基化金属塩を含む。使用される分散剤は、好ましくは無灰分散剤である。適切な無灰分散剤は、ポリブチレンスクシンイミドポリアミン、およびMannich塩基型分散剤を含むことができる。
【0041】
本発明の潤滑組成物中に使用することができる粘度指数向上剤の例は、スチレン−ブタジエン星形コポリマー、スチレン−イソプレン星形コポリマー、およびポリメタクリレートコポリマー、およびエチレン−プロピレンコポリマー(オレフィンコポリマーとしても公知である。)であって結晶質および非結晶質タイプのものを含む。分散剤−粘度指数向上剤も、本発明の潤滑組成物に使用することができる。好ましくは本発明による組成物は、組成物の全重量に対して粘度指数向上剤濃縮物(即ち、VI向上剤に「キャリアオイル」または「希釈剤」を加えたもの。)を1.0重量%未満含み、好ましくは0.5重量%未満含む。最も好ましくは、組成物は、粘度指数向上剤濃縮物を含まない。
【0042】
ある種の実施形態では、本発明による組成物は、流動点降下剤を少なくとも0.1重量%含む。例えばアルキル化ナフタレンおよびフェノール系ポリマー、ポリメタクリレート、およびマレエート/フマレートコポリマーエステルを、流動点降下剤として使用することができる。好ましくは、0.3重量%以下の流動点降下剤が使用される。ある種の実施形態では、アルケニルコハク酸またはそのエステル部分などの化合物、ベンゾトリアゾールをベースにした化合物、およびチオジアゾールをベースにした化合物を、本発明の潤滑組成物中で腐食防止剤として使用することができる。
【0043】
ポリシロキサン、ジメチルポリシクロヘキサン、およびポリアクリレートなどの化合物を、消泡剤として本発明の潤滑組成物中に使用することができる。
【0044】
ある種の実施形態では、Infineum Additives(Abingdon、英国)から「Infineum 351」という商標で市販されている従来のポリメタクリレート流動点降下剤などの、流動点降下剤を添加することができる。
【0045】
シールフィックスまたは封止適合剤として本発明の潤滑組成物中で使用することができる化合物は、例えば市販の芳香族エステルを含む。本発明の潤滑組成物は、1種以上の添加剤と(1種以上の)基油とを混ぜることによって調製することができる。
【0046】
一般に、本発明の組成物中に存在する添加剤は、潤滑組成物の全重量に対して0.01から35.0重量%の範囲の量で存在し、好ましくは0.05から25.0重量%の範囲の量で、より好ましくは1.0から20.0重量%の範囲の量で存在する。好ましくは組成物は、耐摩耗添加剤、金属洗浄剤、無灰分散剤、および酸化防止剤を含む添加剤パッケージを少なくとも9.0重量%、好ましくは少なくとも10.0重量%、より好ましくは少なくとも11.0重量%含有する。あるいは本発明の組成物は、添加剤を10から35重量%の間、あるいは10から25重量%の間、あるいは10から20重量%の間で含む。ある種の実施形態では、本発明による潤滑組成物は、いわゆる「低SAPS」(SAPS=硫酸灰分、リン、および硫黄)、「中SAPS」、または「レギュラーSAPS」配合物であってもよい。
【0047】
一実施形態では、本発明の潤滑剤組成物は基油ブレンドを含み、この基油ブレンドは、100℃で2.5から3.5cStの間の動粘度を有する第1のフィッシャー・トロプシュ誘導基油および100℃で3.5から4.5cStの間の動粘度を有する第2のフィッシャー・トロプシュ誘導基油を含み、この基油ブレンドは、15重量%よりも低いNoack揮発度を有する。場合によって、本発明による潤滑剤組成物は、添加剤パッケージを含むことができる。場合による添加剤パッケージは、酸化防止剤、亜鉛をベースにした耐摩耗添加剤、無灰分散剤、過塩基化洗浄剤混合物、および消泡剤などの添加剤の組合せを含むことができる。
【実施例】
【0048】
3種の基油の性質を、表1に提示する。
【0049】
基油1は、100℃で約4.3cStの動粘度(ASTM D445)を有する、市販のグループIII鉱質系基油である。基油1は、例えばSK Energy(Ulsan、韓国)からYubase 4という商標で市販されている。
【0050】
基油2は、100℃で約3.89cStの動粘度(ASTM D445)を有する、フィッシャー・トロプシュ誘導基油であった。基油2は、例えばその教示が参照により本明細書に組み込まれるWO2002/070631に記載される方法によって、都合良く製造することができる。
【0051】
基油3は、100℃で約2.70cStの動粘度(ASTM D445)を有する、フィッシャー・トロプシュ誘導基油である。基油3は、例えばその教示が参照により本明細書に組み込まれるWO2002/070631に記載される方法によって、都合良く製造することができる。
【0052】
【表1】
【0053】
表2は、基油および添加剤パッケージを含んだいくつかの組成物に関する性質を提示する。表に示されるように、GTL4は、鉱質系Yubase 4に比べて改善された粘度および揮発度を示す。
【0054】
【表2】
【0055】
本明細書で使用される「含む(include)」および「含む(comprise)」という単語とそれらの変形例は、同義に使用されてもよい。
【0056】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明示しない限り、複数形を含む。場合による、または場合によっては、引き続き記述される事象または状況が生じても生じなくてもよいことを意味する。この記述は、事象または状況が生じる場合、およびそれが生じない場合を含む。
【0057】
範囲は、本明細書では、ほぼ1つの特定値から、および/またはその他の特定の値までと説明することができる。そのような範囲を表す場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、および/またはその他の特定の値までであって、前記範囲内の全ての組合せも共に含まれることが理解される。
【0058】
本出願の全体を通して、特許または文献を参照する場合、これら参考文献の全体の開示は、これら参考文献が本明細書でなされる主張と矛盾する場合を除き、本発明が関係する分野の現況技術をより完全に記述するために参照により本出願に組み込まれるものとする。
【0059】
本発明について詳細に記述してきたが、本発明の原理および範囲から逸脱することなく、本明細書に様々な変更、置換、および代替を行うことができることを理解すべきである。したがって本発明の範囲は、下記の特許請求の範囲およびそれらの適切な法的均等物によって決定されるべきである。