特許第6302401号(P6302401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302401
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】インクジェットヘッドおよびプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20180319BHJP
   B41J 2/155 20060101ALI20180319BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   B41J2/14 501
   B41J2/155
   B41J2/14 303
   B41J2/14 607
   B41J2/01 305
   B41J2/01 401
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-246075(P2014-246075)
(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公開番号】特開2016-107477(P2016-107477A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伊左雄
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−254413(JP,A)
【文献】 特開2009−006700(JP,A)
【文献】 特開2009−196122(JP,A)
【文献】 特開2002−154199(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0009565(US,A1)
【文献】 特開2002−187341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
この基板にノズル配列方向にピッチを隔てて平行な複数の隔壁を前記ノズル配列方向と交差する方向に複数配列して持つ圧電体と、
この圧電体の外側に前記基板上に設けられた枠体と、
この枠体および前記複数の隔壁によって複数列形成される圧力室の列毎に前記ノズル配列方向で半ピッチずつずらして形成され、それぞれ前記圧力室毎に前記ピッチと同じピッチで前記交差する方向に形成された複数の吐出口を有するノズルプレートと、を備えたインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記圧電体は、
前記ノズルプレートの裏面と、前記複数の隔壁のうちの前記ノズル配列方向で隣接する前記隔壁の対と、これらの隔壁間の溝底と、これらの隔壁の隔壁面及び溝底に設けられた導電膜とを備える請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
それぞれ主走査方向にピッチを隔てて平行な複数の隔壁を前記主走査方向と交差する副走査方向に複数配列して持つ圧電体、基板上の枠体および前記圧電体によって複数列形成される圧力室の列毎に前記主走査方向で半ピッチずつずらして形成され、それぞれ前記圧力室毎に前記ピッチと同じピッチで前記副走査方向に形成された複数の吐出口を有するノズルプレートを有するインクジェットヘッドと、
記録媒体を相対的に前記インクジェットヘッドへ搬送する搬送ローラと、
この搬送ローラを駆動制御するコントローラと、を備えたプリンタ。
【請求項4】
前記コントローラは、前記搬送ローラによる前記副走査方向の前記記録媒体の紙送りピッチに前記副走査方向の前記吐出口の穴開き個数を乗じた値を前記主走査方向の印字ピッチとする請求項3記載のプリンタ。
【請求項5】
前記コントローラは、前記搬送ローラによる前記副走査方向の前記記録媒体の紙送りピッチと前記主走査方向の印字ピッチとが同じである場合、同じピクセルについて前記圧電体の各圧力室を前記副走査方向の前記吐出口の穴開き個数と等しい回数、吐出駆動する請求項3又は請求項4記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一実施形態はインクジェットヘッドおよびプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは圧力室でインクを加圧し吐出口から液滴を噴射する。関連技術に係るプリンタは、ノズル径を大きくさせる方法により大きな液滴量のインクを吐出させる。あるいは関連技術に係るプリンタは一つのアクチュエータに複数のノズルを形成させる。複数のノズルを形成させる方法として圧力発生室毎に複数のノズル開口群を設けたノズルプレートを有する液体噴射ヘッドが知られている(例えば特許文献1参照)。この液体噴射ヘッドは少ない液体量で噴射対象物上の領域を画素で埋めるための複数のノズル開口を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−233879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインクジェットヘッドの吐出口の配列では、濃度印刷と印刷速度を両立することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するため、一実施形態によれば、基板と、この基板にノズル配列方向にピッチを隔てて平行な複数の隔壁を前記ノズル配列方向と交差する方向に複数配列して持つ圧電体と、この圧電体の外側に前記基板上に設けられた枠体と、この枠体および前記複数の隔壁によって複数列形成される圧力室の列毎に前記ノズル配列方向で半ピッチずつずらして形成され、それぞれ前記圧力室毎に前記ピッチと同じピッチで前記交差する方向に形成された複数の吐出口を有するノズルプレートと、を備えたインクジェットヘッドが提供される。
【0006】
また、別の一実施形態によれば、それぞれ主走査方向にピッチを隔てて平行な複数の隔壁を前記主走査方向と交差する副走査方向に複数配列して持つ圧電体、前記基板上の枠体および前記圧電体によって複数列形成される圧力室の列毎に前記主走査方向で半ピッチずつずらして形成され、それぞれ前記圧力室毎に前記ピッチと同じピッチで前記副走査方向に形成された複数の吐出口を有するノズルプレートを有するインクジェットヘッドと、記録媒体を相対的に前記インクジェットヘッドへ搬送する搬送ローラと、この搬送ローラを駆動制御するコントローラと、を備えたプリンタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図である。
図2】(a)は一実施形態に係るインクジェットヘッドに用いられるヘッド本体の平面図である。(b)はそのヘッド本体の縦断面図である。
図3】一実施形態に係るインクジェットヘッドに用いられるヘッド本体の別の縦断面図である。
図4】一実施形態に係るインクジェットヘッドのノズルプレートの平面図である。
図5】一実施形態に係るプリンタの構成図である。
図6】(a)は一実施形態に係るインクジェットヘッドによる液滴着弾後の記録媒体面を示す図である。(b)は関連技術に係るインクジェットヘッドによる液滴着弾後の記録媒体面を示す図である。
図7】一実施形態の変形例に係るインクジェットヘッドのノズルプレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態に係るインクジェットヘッドおよびプリンタについて、図1乃至図7を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0009】
(一実施形態)
図1は本実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図である。インクジェットヘッド10は、ノズル配列方向に配列された複数の吐出口11の列を4列形成したヘッド本体12と、ヘッド本体12にインクを供給/排出するマニフォールド13と、ヘッド本体12のヘッド面の向きを固定するための基準プレート(データムプレート)14と、ヒートシンク15、16とを備えている。ノズル配列方向とはヘッド本体12の同図左右の長尺方向を指す。
【0010】
図2(a)は本実施形態に係るインクジェットヘッドのヘッド本体12の平面図であり、例えば600本のアクチュエータ18のうちの数本が示されている。図2(b)は図2(a)のAA´に沿う縦断面図である。図3図2(a)のBB´に沿う縦断面図であり、天地が図1の例とは反対にして示す。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。
【0011】
本実施形態に係るインクジェットヘッドは、基板35と、この基板35にノズル配列方向にノズルピッチP(ピッチ)を隔てて平行な複数の隔壁17をノズル配列方向と直交する印字送り方向に複数配列して持つアクチュエータ18の列(圧電体)と、これらのアクチュエータ18の列の外側にこの基板35上に設けられた枠体19とを備えている。このインクジェットヘッドは、この枠体19およびアクチュエータ18の列によって2列形成される圧力室20の列毎にノズル配列方向で半ピッチずつずらして形成され、それぞれ圧力室20毎にノズルピッチPと同じピッチで印字送り方向に形成された複数の吐出口11を有するノズルプレート21とを備えている。半ピッチとはノズルピッチPの1/2を指す。
【0012】
基板35は絶縁性の基板面を有するベースプレートであり、例えばアルミナ(Al)が用いられる。2つの圧電部材22がこの基板35上に平行に位置する。図3のように各圧電部材22には複数の隔壁17及び溝が交互に複数形成されている。一つの圧電部材22は2枚の圧電板23、24が厚さ方向で張り合わせられている。圧電板23、24の分極方向は互いに逆である。圧電板23、24には圧電定数が高いPZT(lead zirconate titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)が用いられる。
【0013】
アクチュエータ18は圧電アクチュエータである。アクチュエータ18は、ノズルプレート21の裏面と、一対の対向する隔壁17の対と、隔壁17間の溝底と、これらの隔壁17の隔壁面及び溝底に設けられた導電膜25とを備える。アクチュエータ18毎に導電膜25が設けられる。各導電膜25は基板35から、ヒートシンク15、16(図1)上の4つのドライバIC32の何れかに電気的に接続される(図1では2つのドライバIC32が示されている)。
【0014】
また、図2の枠体19は2つの圧電部材22をその内側に設ける。枠体19の外側にはマスクプレート34(図1)が装着されてもよい。ノズルプレート21はこのプレート下方より枠体19によって支持される。
【0015】
図4は本実施形態に係るインクジェットヘッドのノズルプレート21の平面図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。アクチュエータ18毎に2つの吐出口11が設けられる。吐出口11の配置はヘッド副走査方向に沿う。副走査方向の吐出口11の間隔は主走査方向のドットピッチPと同じである。ヘッド副走査方向とは紙の縦送り方向又は印字送り方向を指す。第1の吐出口列の2つの隣接する吐出口11間のピッチと、第2の吐出口列の2つの隣接する吐出口11間のピッチとが互いに半ピッチずれている。第1の吐出口列とは上下4列の吐出口11の列のうちの上側2列である。下側2列が第2の吐出口列である。
【0016】
また、図2の枠体19の内側面、基板35の主面及びノズルプレート21の裏面によってインクの共通液室26、27、28が形成される。共通液室26、27、28と各圧力室20との間でインクが流れる。共通液室27はインク供給用に複数の貫通穴29に連通する。共通液室26はインク排出用の複数の貫通穴30に連通する。共通液室28はインク排出用の複数の貫通穴31に連通する。各貫通穴29、各貫通穴30、各貫通穴31はマニフォールド13(図1)に連通する。
【0017】
図1のマニフォールド13はその内部にインク供給路と2系統のインク排出路とを有する。インク供給路はプリンタ50(図5)のインク供給管に連通する、各インク排出路はそれぞれプリンタ50側のインク排出管に連通する。各ドライバIC32はケーブル33を介してプリンタ50との間で信号を授受する。全てのアクチュエータ18は個別に制御可能である。
【0018】
図5は本実施形態に係るプリンタの構成図である。プリンタ50はインクジェットヘッド10を用いてインクを吐出させるカラーインクジェットプリンタである。プリンタ50は、コントローラ40、カセット52、トレイ53、搬送ローラ(搬送ローラ対)55、61、搬送部56を備えている。搬送ローラ55、61は搬送部56の一部である。
【0019】
コントローラ40は紙送り制御を行う。コントローラ40は各ドライバIC32との間で制御信号を授受する。カセット52は筐体51下部に設けられ用紙M(記録媒体)をその中にセットされる。トレイ53は筐体51上部に設けられる。ドラム54は用紙Mをドラム外周面上に保持して回る。
【0020】
搬送ローラ55は用紙Mを相対的にインクジェットヘッド58C、58M、58Y、58Bへ搬送する。搬送ローラ55はカセット52から用紙Mをピックアップし、インクジェットヘッド58C、58M、58Y、58Bの回転移動方向に搬送する。搬送ローラ55の周速度は副走査方向の用紙Mの紙送り速度が例えば150dpiになるように制御される。コントローラ40が搬送部56を駆動制御する。
【0021】
プリンタ50は、ドラム54の外周面に沿って時計回り方向で上流側から下流側に向かって順番に、保持機構57、画像形成部58、除電剥離部59、クリーナ60を備える。
【0022】
保持機構57は用紙Mをドラム54の外周面上に吸着させる。画像形成部58は用紙Mに画像を形成する。除電剥離部59は用紙Mを除電する。クリーナ60はドラム54を清掃する。
【0023】
画像形成部58が、シアン用のインクジェットヘッド58C、マゼンダ用のインクジェットヘッド58M、イエロー用のインクジェットヘッド58Y、及びブラック用のインクジェットヘッド58Bを有する。インクジェットヘッド58C、58M、58Y及び58Bはそれぞれインクジェットヘッド10の構成と同様である。
【0024】
コントローラ40は搬送ローラ55による副走査方向の用紙Mの紙送り速度150dpiに副走査方向の吐出口の穴開き個数2を乗じた値を主走査方向の印字密度としている。印字密度とは、プリンタ50が印字できる細かさであり、1インチ(又は1mm)当たりのドット数で表される値である。つまりコントローラ40は副走査方向の紙送り速度150dpiを主走査方向の印字密度300dpiの1/2に設定している。インクジェットヘッド58M、58Y及び58Bの構成もインクジェットヘッド58Cの例と同じである。
【0025】
次に上述の構成を有するプリンタ50の動作を説明する。
【0026】
ユーザインターフェース41へのユーザ操作を契機としてコントローラ40が印刷ジョブを生成する。コントローラ40は印刷されるべきデータを生成する。
【0027】
インクジェットヘッド58Cは、一つの吐出口11について電圧駆動信号を印加する。圧電板23、24が変形し、変形が元通りになる。隔壁17の湾曲変形によって圧力室20の容積が拡張する。又は容積は縮小する。インクの液圧の加圧によってインクジェットヘッド58Cは用紙Mへ液滴を噴射する。
【0028】
図6(a)はインクジェットヘッド58Cによる液滴着弾後の用紙Mの紙面を示す図である。同図、横及び縦(紙送り方向)の各方向は、主走査方向、副走査方向である。例えばインクジェットヘッド58Cによる主走査方向の印字密度は300dpiである。搬送部56による副走査方向の印字密度は150dpiである。縦横各方向に同じ値を持つドットピッチPは84.5μmである。一つの丸形は着弾した液滴を表す。静止したインクジェットヘッド58Cは、液滴をこのインクジェットヘッド58Cに対して相対移動する用紙Mに噴射する。インクジェットヘッド58Cに対する用紙Mの副走査方向への移動により、画像データが印刷される。インクジェットヘッド58M、58Y及び58Bの動作もインクジェットヘッド58Cの例と同じである。
【0029】
図6(b)は関連技術に係るインクジェットヘッドによる液滴着弾後の用紙Mの紙面を示す図である。一つのアクチュエータについて1つの吐出口を持つノズルプレートによる例である。図6(a)の紙送り速度と同じ紙送り速度による着弾結果例が示されている。関連技術によるインクジェットヘッドによる主走査方向の印字密度は300dpiである。プリンタ搬送機構による副走査方向の印字密度は150dpiである。関連技術に係る何れか単色のインクジェットヘッドでは、図6(b)のように主走査方向のドットラインが紙送り方向で一列おきに着弾する。ドットラインが存在しない部分が生じる。関連技術では印字密度よりも低い印字密度しか得られない。
【0030】
プリンタ50による印字密度は、図6(a)のように、ドットラインが紙送り方向で全てのライン上に着弾する。1ノズルである場合、ヘッド副走査方向の画素を埋めることができない。一方、プリンタ50によれば、全てのドットラインの画素を埋めることができる。
【0031】
(変形例)
図7は変形例に係るインクジェットヘッドのノズルプレートの平面図である。既述の符号や記号は上述したそれらと同じ要素を表す。
【0032】
上記実施形態ではアクチュエータ18毎に2個の吐出口11が設けられていた。実施の形態に係るインクジェットヘッドおよびプリンタはノズルプレート42を用いてもよい。ノズルプレート42はアクチュエータ18毎に3個の吐出口11を有する。
【0033】
コントローラ40は搬送部56による副走査方向の用紙Mの紙送り速度100dpiを主走査方向の印字密度300dpiの1/3に設定する。プリンタは図6(a)の例と同様に動作する。
【0034】
上記実施形態及びその変形例では、インクジェットヘッド10をプリンタ50の筐体51に静止したものであったが、インクジェットヘッド10をプリンタ筐体に対して主走査方向に移動させてもよい。
【0035】
以上を総括すると、プリンタ50はインクジェットヘッド58C、58M、58Y及び58B(以下、インクジェットヘッド58C等と言うことがある)のそれぞれの横ピッチと同じピッチでノズルを縦に配列する。もしくはプリンタ50は印刷時の解像度に応じ、走査ピッチと同じピッチでノズルを配列する。プリンタ50に要求される印字速度に応じて、インクジェットヘッド58C等のノズル数は増加されてもよい。
【0036】
アクチュエータ18毎に印字送り方向で2個のノズル(吐出口11)が形成される。図5ではヘッド1列としての印字密度が150dpiのとき、インクジェットヘッド58C等としての印字密度は2列分の300dpiである。インクジェットヘッド58C等としてのノズル間距離は約84.5μmである。印字方向側のノズル間隔も同様に84.5μmで配置される。紙送り、もしくはヘッド副走査方向の印字ピッチを150dpiとしても、画素を埋めることができる。
【0037】
上記実施形態では図6(a)のように印字ピッチ(印字密度)が150dpiであったが、プリンタ50は印字ピッチを300dpiとしてもよい。印字ピッチを300dpiとした場合、インクジェットヘッド58C等は同じピクセルについて2回液滴を吐出させる。高濃度な発色が可能になる。つまり搬送ローラ55による副走査方向の用紙Mの紙送り速度300dpiと主走査方向の印字密度300dpiとが同じである場合、コントローラ40は、同じピクセルについてアクチュエータ列毎に各アクチュエータ18を2回、吐出駆動する。2回とは副走査方向の吐出口11の穴開き個数と等しい。
【0038】
更に印字ピッチを300dpiよりも大きくする高速化を求められる場合、本実施形態に係るプリンタは、同じピッチでノズル数が多いノズルプレートを用いてもよい。上記実施形態では、コントローラ40は要求値として印字密度300dpiを確保するために、紙送り速度150dpiを印字密度300dpiの1/2、あるいは紙送り速度300dpiを印字密度300dpiの等倍、あるいは紙送り速度300dpiを印字密度300dpiの1/3にそれぞれ設定しているが、コントローラ40は印字密度を300dpiよりも大きくして高速にプリンタ50を動作させてもよい。例えば印字密度400dpiを確保するため、コントローラ40が搬送ローラ55による副走査方向の用紙Mの紙送り速度と主走査方向の印字密度とを400dpiで共に同じにする場合、同じピクセルについて各アクチュエータ18を副走査方向の吐出口11の穴開き個数と等しい回数、吐出駆動するように制御する。印字密度600、1200dpiのいずれかの場合も、印字密度400dpiの例と同じである。
【0039】
本実施形態に係るプリンタは濃度印刷及び高速印刷の両立を実現することができる。一般に紙送り速度あるいはヘッド送り速度が同じである条件下で、プリンタがより高い濃度の印刷を実現するためには、大きい液滴量のインクを吐出させることが必要である。プリンタにはノズル径を大きくさせる方法や、あるいは一つのアクチュエータ当たりの吐出口の開口数を増やすこと、吐出回数を増やすこと等が求められる。
【0040】
しかし、関連技術に係るプリンタはドット密度を稼ぐことはできても、印字を高速化することができない。ノズル径を大きくすることだけでは印刷品質に影響するからである。関連技術では紙送り速度あるいはヘッド送り速度を上げることができない。関連技術に係るプリンタは、紙送り速度あるいはヘッド送り速度を上げた場合、ドットラインを全てカバリングすることができない。印刷品質が劣化する。関連技術では、濃度印刷と印刷速度(高濃度印刷と高速印刷)とを両立することができない。
【0041】
本実施形態に係るインクジェットヘッドおよびプリンタによれば、インクジェットヘッド10がアクチュエータ18毎に2個の吐出口11を縦横同じノズルピッチPで配列する。プリンタ50側で紙送り速度を上げたとしても、紙送り速度に応じて画素を埋めることができる。
【0042】
また、本実施形態に係るプリンタが、ヘッド本体12を主走査方向に移動させてもよい。本実施形態に係るプリンタは、ヘッド送り速度が上げられたとしても、ヘッド送り速度に応じて画素を埋めることができる。本実施形態に係るインクジェットヘッドおよびプリンタによれば、濃度印刷と印刷速度(高濃度印刷と高速印刷)とを両立することができる。
【0043】
機能性インクの使用によって画像形成以外の他の各種印刷分野に本実施形態に係るインクジェットヘッドおよびプリンタを適用できる。高濃度印刷や高速印刷の要求が高いセラミック向け印刷に特に有効である。
【0044】
吐出口11の配列は2列(図4)や3列(図7)に限定されるものではなく、1列あるいは4列以上であっても良い。種々変更可能であり、これらの変更をして実施したに過ぎない実施品に対して実施形態に係るインクジェットヘッドおよびプリンタの優位性は何ら損なわれるものではない。
【0045】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
10、58C、58M、58Y、58K…インクジェットヘッド、16…ヒートシンク、17…隔壁、18…アクチュエータ、19…枠体、20…圧力室、21、42…ノズルプレート、22…圧電部材(圧電体)、25…導電膜、35…基板、40…コントローラ、50…プリンタ、55…搬送ローラ、56…搬送部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7