特許第6302521号(P6302521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6302521推進管敷設装置及び推進管敷設方法、並びに既設下水管更新方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302521
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】推進管敷設装置及び推進管敷設方法、並びに既設下水管更新方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20180319BHJP
【FI】
   E21D9/06 311G
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-176388(P2016-176388)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2018-40205(P2018-40205A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】516214696
【氏名又は名称】青木 隆広
(73)【特許権者】
【識別番号】597141955
【氏名又は名称】木村 栄喜
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆広
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−22379(JP,A)
【文献】 特開2008−179996(JP,A)
【文献】 特開2013−23830(JP,A)
【文献】 特開2015−21358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
E21D 9/08
E03F 3/06
F16L 1/00
B02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されている既設下水管(10)を破砕するとともに前記既設下水管(10)の周辺地盤を掘削して推進管(15)を推進敷設する推進管敷設装置にあって、前記推進管(15)に先行して配され、前記既設下水管(10)の破砕と前記周辺地盤の掘削とを行う切削ヘッド部(30)と、前記切削ヘッド部(30)及び前記推進管(15)を後方から回転させながら推進する推進駆動装置(40)とを有し、前記切削ヘッド部(30)は、前記推進管(15)が接続される円筒部(31)と、前記円筒部(31)の先端に配される切削面盤部(32)とを備える推進管敷設装置において、
前記切削面盤部(32)は、回転中心部に配される管摺接部(33)と、前記管摺接部(33)の外側に配される正面カッター部(34)とを有し、
前記管摺接部(33)に、回転軸に平行な円柱状の管挿通孔(39)が設けられ、
前記切削ヘッド部(30)は、前記既設下水管(10)内の所定位置に保持固定される案内管(18)を前記管挿通孔(39)内に挿通させた状態にて前記推進駆動装置(40)で推進されることにより、前記案内管(18)に前記管摺接部(33)を摺接させながら前記案内管(18)に沿って前進可能に形成されてなる、
ことを特徴とする推進管敷設装置。
【請求項2】
前記正面カッター部(34)は、前記切削面盤部(32)の外周縁に沿って円環状に配される外周カッター部(35)と、前記管摺接部(33)と前記外周カッター部(35)の間に前記切削面盤部(32)の径方向に沿って配される複数の線状カッター部(36)とを有し、
前記切削面盤部(32)は、前記管摺接部(33)と前記外周カッター部(35)との間に配されるとともに前記線状カッター部(36)により区画される複数の扇状開口部(38)を有してなる、
請求項1記載の推進管敷設装置。
【請求項3】
前記切削ヘッド部(30)は、前記円筒部(31)の外周面に配される周面カッター部を有してなる請求項1又は2記載の推進管敷設装置。
【請求項4】
地表面に掘設された発進立坑(1)と到達立坑(2)の間にて、地中に埋設されている既設下水管(10)を破砕するとともに前記既設下水管(10)の周辺地盤を掘削して推進管(15)を推進敷設する推進管敷設方法であって、
前記発進立坑(1)内で前記発進立坑(1)の上流側又は下流側に配される第1下水管(11)の端部に第1止水部材(13)を取り付けて前記第1止水部材(13)で止水するとともに、前記到達立坑(2)内で前記到達立坑(2)の下流側又は上流側に配される第2下水管(12)の端部に第2止水部材(14)を取り付けて前記第2止水部材(14)で止水すること、
前記発進立坑(1)内に、切削面盤部(32)を備えた切削ヘッド部(30)と、前記切削ヘッド部(30)及び推進管(15)を後方から回転させながら推進する推進駆動装置(40)とを有し、前記切削面盤部(32)は、回転中心部に配されるとともに回転軸に平行な円柱状の管挿通孔(39)が設けられる管摺接部(33)と、前記管摺接部(33)の外側に配される正面カッター部(34)とを有する推進管敷設装置の前記推進駆動装置(40)を搬入すること、
前記既設下水管(10)内に仮排水管(18)を挿入するとともに、前記仮排水管(18)の前記発進立坑(1)側の端部と前記到達立坑(2)側の端部とを支持して前記仮排水管(18)を前記既設下水管(10)内で所定の位置に直線状に保持すること、
前記仮排水管(18)を前記切削ヘッド部(30)の前記管挿通孔(39)に挿通して前記切削ヘッド部(30)を前記推進駆動装置(40)に設置すること、
前記仮排水管(18)を、前記第1下水管(11)と前記第2下水管(12)とに接続し、前記既設下水管(10)の上流側から流れてくる排水を、前記既設下水管(10)内の前記仮排水管(18)を介して前記既設下水管(10)の下流側に送ること、及び、
前記推進管敷設装置の前記推進駆動装置(40)により前記切削ヘッド部(30)を回転させながら前記切削ヘッド部(30)の前記管摺接部(33)を前記仮排水管(18)に摺接させて前記切削ヘッド部(30)を前記仮排水管(18)に沿って前進させることにより、前記切削ヘッド部(30)により前記既設下水管(10)の破砕と前記既設下水管(10)の周辺地盤の掘削とを行うとともに前記推進管(15)を推進して敷設すること、
を含んでなることを特徴とする推進管敷設方法。
【請求項5】
前記推進管(15)を推進して敷設する工程にて、新たな前記推進管(15)を前記推進管敷設装置に据え付けるときに、前記仮排水管(18)と第1下水管(11)とを一時的に切り離し、前記仮排水管(18)を前記推進管(15)内に挿通させることを含んでなる請求項4記載の推進管敷設方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載の推進管敷設方法により、前記発進立坑(1)から前記到達立坑(2)までの区間に前記推進管(15)を敷設した後、前記推進管(15)内に保持されている前記仮排水管(18)を、前記第1下水管(11)及び前記第2下水管(12)から切り離して回収すること、
前記推進管(15)をさや管(15)として用い、前記さや管(15)内に本管(16)を挿入して敷設することにより、前記既設下水管(10)を前記本管(16)に更新すること、及び、
前記本管(16)を前記第1下水管(11)と前記第2下水管(12)とに接続すること、
を含んでなることを特徴とする既設下水管更新方法。
【請求項7】
前記本管(16)を前記第1下水管(11)及び前記第2下水管(12)に接続後、前記さや管(15)と前記本管(16)との間の空間部に中込材(52)を充填することを含んでなる請求項6記載の既設下水管更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されている既設下水管を破砕するとともに既設下水管の周辺地盤を掘削して推進管を推進敷設する推進管敷設装置及び推進管敷設方法と、その推進管敷設方法により敷設した推進管をさや管として、そのさや管内に本管を挿入して敷設することにより、既設下水管を本管に更新する既設下水管更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されている下水管(既設下水管)は、経年劣化や老朽化が進むことによってひび割れや破損などが生じるため、耐用年数を越えるものは新たな管体(新設管)に取り替えられて更新される。また、震災復旧などのために、破損した既設下水管を新たな管体に更新することが必要な場合もある。
【0003】
既設下水管を更新する方法として、既設管の埋設区間を地表から開削せずに、既設管を破砕しながら新設管を推進して敷設する推進工法が採用されることがある。この推進工法を利用することにより、例えば発進立坑と到達立坑との間に埋設されている既設下水管を、推進管(更新管と呼ばれることもある)に更新することが可能である。
【0004】
このような推進工法に関して、例えば特開2013−23830号公報(特許文献1)や特開2015−21358号公報(特許文献2)には、計画線に従ってガイド管を設置し、そのガイド管でカッターヘッド(切削ヘッド部)及び先導管を案内することにより、推進管(更新管)を真っ直ぐに推進敷設する方法が記載されている。
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載されている方法では、先ず、発進立坑から到達立坑まで埋設されている既設下水管内にガイド管を挿入し、そのガイド管の発進立坑側の端部と到達立坑側の端部とを、当該ガイド管が計画線上に沿うように支持する。続いて、既設下水管とガイド管との空間部(アニュラー空間)に、発泡モルタル等の充填材を注入して充填する。それによって、ガイド管が発進立坑から到達立坑までの区間で計画線と一致する位置で固定される。
【0006】
次に、推進駆動装置を発進立坑内に搬入して所定の位置に設置し、その推進駆動装置にカッターヘッドが取り付けられた先導管を据え付ける。更に、カッターヘッドの回転中心部にガイド管の後端部を連結する。これにより、推進駆動装置の準備が整えられ、掘削推進工程が開始される。
【0007】
掘削推進工程では、推進駆動装置によって先導管及びカッターヘッドを前方へ推進しながら、先導体のカッターヘッドを回転させることにより、既設下水管を破砕するとともに土砂を掘削する。このとき、カッターヘッドは、計画線上に固定されたガイド管に連結されているため、ガイド管の延びる方向に推進するように拘束される。従って、カッターヘッド及び先導管を計画線に沿ってまっすぐに推進することができる。
【0008】
またこの掘削推進工程では、カッターヘッド及び先導管を前方へ所定の長さで推進した後、その推進を一旦停止するとともにカッターヘッドの回転を停止し、先導管の後端部に更新管を接続する。そして、更新管の接続後、カッターヘッドを再び回転させながら推進させ、既設下水管の破砕と土砂の掘削とを進める。更に、到達立坑内には、カッターヘッド及び先導管の推進距離に応じてガイド管が突き出てくる。このため、ガイド管が到達立坑内に所定の長さで突き出てきたら、カッターヘッド及び先導管の推進とカッターヘッドの回転とを停止し、突き出したガイド管を取り外す作業が行われる。
【0009】
以降、更新管の継ぎ足しとガイド管の取り外しを繰り返しながら、破砕及び掘削を進めることにより、発進立坑から到達立坑まで埋設されていた既設下水管を、計画線に沿って推進敷設された更新管に更新することができる。
【0010】
なお特許文献1では、計画線上に固定されるガイド管内にスクリューが挿入されており、そのスクリューによって、破砕された既設下水管の破砕物や掘削土砂を到達立坑に随時搬送し、更にそれらの破砕物や掘削土砂を到達立坑内から地上に排出するようにしている。一方、特許文献2では、カッターヘッドに連結されるスクリューを先導管及び更新管内に配設し、破砕物や掘削土砂をスクリューによって発進立坑側に搬送するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2013−23830号公報
【特許文献2】特開2015−21358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1及び特許文献2のような推進工法を利用して、既設下水管を切削ヘッド部(カッターヘッド)で破砕しつつ、その切削ヘッド部に推進管を後続させて敷設する場合、切削ヘッド部による掘削推進工程を開始するにあたり、既設下水管の更新区間よりも上流側の下水管と下流側の下水管とを、地上から発進立坑及び到達立坑に垂れ下げられた1本の迂回ホースに接続し、工事期間中は、更新区間の上流側から流れてくる排水を、ポンプなどを用いて迂回ホースを介して地表に迂回させて下流側の下水管に送る必要があった。このため、掘削推進工程の開始前には排水を地表に迂回させるためのバイパス工事が必要となり、工事費用の増大や工事期間の延長に繋がっていた。
【0013】
また、特許文献1や特許文献2の方法では、掘削推進工程を行う前に既設下水管内にガイド管を挿入して計画線と一致する位置で充填材により固定し、その後、固定したガイド管に切削ヘッド部(カッターヘッド)を固定することにより、ガイド管で切削ヘッド部及び先導管の推進を案内している。それにより、上述したように切削ヘッド部を計画線に沿ってまっすぐに推進できるため、推進管を計画線に沿ってまっすぐに安定して推進し敷設することが可能となる。
【0014】
しかし、特許文献1や特許文献2では、切削ヘッド部を推進するほどガイド管が到達立坑内に飛び出すため、掘削推進工程中に、切削ヘッド部の推進と回転とを何度も停止して、到達立坑内に飛び出したガイド管を取り外す作業を行わなければならない。その結果、掘削推進工程の遅れを更に生じさせることがあるため、切削ヘッド部による掘削推進工程では、推進管を計画線に沿ってまっすぐに敷設するだけでなく、作業をより効率的に行うことが求められていた。
【0015】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、排水を地表に迂回させるためのバイパス工事を不要にすることによりコストの削減や工事期間の短縮を図ることが可能で、且つ、推進管を計画線に沿って安定して且つ効率的に敷設することが可能な推進管敷設装置及び推進管敷設方法を提供すること、更に、その推進管敷設方法で敷設した推進管を利用して新たな管体を敷設することによって既設下水管を更新する更新方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明により提供される推進管敷設装置は、地中に埋設されている既設下水管を破砕するとともに前記既設下水管の周辺地盤を掘削して推進管を推進敷設する推進管敷設装置にあって、前記推進管に先行して配され、前記既設下水管の破砕と前記周辺地盤の掘削とを行う切削ヘッド部と、前記切削ヘッド部及び前記推進管を後方から回転させながら推進する推進駆動装置とを有し、前記切削ヘッド部は、前記推進管が接続される円筒部と、前記円筒部の先端に配される切削面盤部とを備える推進管敷設装置において、前記切削面盤部は、回転中心部に配される管摺接部と、前記管摺接部の外側に配される正面カッター部とを有し、前記管摺接部に、回転軸に平行な円柱状の管挿通孔が設けられ、前記切削ヘッド部は、前記既設下水管内の所定位置に保持固定される案内管を前記管挿通孔内に挿通させた状態にて前記推進駆動装置で推進されることにより、前記案内管に前記管摺接部を摺接させながら前記案内管に沿って前進可能に形成されてなることを最も主要な特徴とするものである。
【0017】
このような本発明の推進管敷設装置において、前記正面カッター部は、前記切削面盤部の外周縁に沿って円環状に配される外周カッター部と、前記管摺接部と前記外周カッター部の間に前記切削面盤部の径方向に沿って配される複数の線状カッター部とを有し、前記切削面盤部は、前記管摺接部と前記外周カッター部との間に配されるとともに前記線状カッター部により区画される複数の扇状開口部を有することが好ましい。
また、前記切削ヘッド部は、前記円筒部の外周面に配される周面カッター部を有することが好ましい。
【0018】
次に、本発明により提供される推進管敷設方法は、地表面に掘設された発進立坑と到達立坑の間にて、地中に埋設されている既設下水管を破砕するとともに前記既設下水管の周辺地盤を掘削して推進管を推進敷設する推進管敷設方法であって、前記発進立坑内で前記発進立坑の上流側又は下流側に配される第1下水管の端部に第1止水部材を取り付けて前記第1止水部材で止水するとともに、前記到達立坑内で前記到達立坑の下流側又は上流側に配される第2下水管の端部に第2止水部材を取り付けて前記第2止水部材で止水すること、前記発進立坑内に、切削面盤部を備えた切削ヘッド部と、前記切削ヘッド部及び推進管を後方から回転させながら推進する推進駆動装置とを有し、前記切削面盤部は、回転中心部に配されるとともに回転軸に平行な円柱状の管挿通孔が設けられる管摺接部と、前記管摺接部の外側に配される正面カッター部とを有する推進管敷設装置の前記推進駆動装置を搬入すること、前記既設下水管内に仮排水管を挿入するとともに、前記仮排水管の前記発進立坑側の端部と前記到達立坑側の端部とを支持して前記仮排水管を前記既設下水管内で所定の位置に直線状に保持すること、前記仮排水管を前記切削ヘッド部の前記管挿通孔に挿通して前記切削ヘッド部を前記推進駆動装置に設置すること、前記仮排水管を、前記第1下水管と前記第2下水管とに接続し、前記既設下水管の上流側から流れてくる排水を、前記既設下水管内の前記仮排水管を介して前記既設下水管の下流側に送ること、及び、前記推進管敷設装置の前記推進駆動装置により前記切削ヘッド部を回転させながら前記切削ヘッド部の前記管摺接部を前記仮排水管に摺接させて前記切削ヘッド部を前記仮排水管に沿って前進させることにより、前記切削ヘッド部により前記既設下水管の破砕と前記既設下水管の周辺地盤の掘削とを行うとともに前記推進管を推進して敷設することを含んでなることを最も主要な特徴とするものである。
【0019】
このような本発明の推進管敷設方法は、前記推進管を推進して敷設する工程にて、新たな前記推進管を前記推進管敷設装置に据え付けるときに、前記仮排水管と第1下水管とを一時的に切り離し、前記仮排水管を前記推進管内に挿通させることを含むことが好ましい。
【0020】
次に、本発明により提供される既設下水管更新方法は、上述した本発明の推進管敷設方法により、前記発進立坑から前記到達立坑までの区間に前記推進管を敷設した後、前記推進管内に保持されている前記仮排水管を、前記第1下水管及び前記第2下水管から切り離して回収すること、前記推進管をさや管として用い、前記さや管内に本管を挿入して敷設することにより、前記既設下水管を前記本管に更新すること、及び、前記本管を前記第1下水管と前記第2下水管とに接続することを含んでなることを最も主要な特徴とするものである。
このような本発明の既設下水管更新方法は、前記本管を前記第1下水管及び前記第2下水管に接続後、前記さや管と前記本管との間の空間部に中込材を充填することを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る推進管敷設装置は、推進管に先行して配される切削ヘッド部と、切削ヘッド部及び推進管を後方から回転させながら推進する推進駆動装置とを有する。また、切削ヘッド部は、推進管が接続される円筒部と、円筒部の先端に配される切削面盤部とを備える。また、切削ヘッド部の切削面盤部は、回転中心部に配される管摺接部(管摺接案内部)と、管摺接部の外側に配される正面カッター部とを有しており、管摺接部には、回転軸に平行な円柱状の管挿通孔(管リード孔)が設けられている。
【0022】
このように形成される本発明の切削ヘッド部は、既設下水管内の所定位置に保持固定される案内管を管挿通孔内に挿通させた状態において、推進駆動装置により回転されるとともに推進されることによって、切削ヘッド部の管摺接部を案内管に摺接させながら案内管に沿ってまっすぐに前進することが可能であるため、推進管を計画線に沿って安定して敷設することができる。なお、本発明において、切削ヘッド部の管摺接部が案内管に摺接するとは、管摺接部の内周面全体が案内管の外周面に接しながら切削ヘッド部が前進する場合だけでなく、管摺接部の内周面の一部のみが案内管の外周面に接しながら切削ヘッド部が前進する場合も含む。
【0023】
また、本発明の切削ヘッド部は、管挿通孔が形成された管摺接部を有するため、案内管を既設下水管内の所定の位置に固定した状態のままで、切削ヘッド部による破砕及び掘削と推進管の推進とを行うことができる。このため、破砕及び掘削を進めても、例えば前述した特許文献1及び特許文献2のように到達立坑内に案内管が飛び出すことがないため、案内管を取り外すために作業を停止させる必要がなく、破砕及び掘削の作業を効率的に行うことができる。
【0024】
更に、本発明の切削ヘッド部の管挿通孔内に挿通させる案内管として仮排水管を用いる場合、その案内管となる仮排水管を、既設下水管の更新区間よりも上流側の下水管と下流側の下水管とに接続することにより、地表を迂回する迂回ホースを利用しなくても、上流側から流れてくる排水を、案内管(仮排水管)を介して下流側の下水管に送ることが可能となる。従って、従来のように掘削推進工程の開始前に排水を地表に迂回させるためのバイパス工事を行う必要がなくなるため、工事費用の削減や工事期間の短縮を図ることが可能となる。
【0025】
このような本発明の推進管敷設装置において、切削ヘッド部の正面カッター部は、切削面盤部の外周縁に沿って円環状に配される外周カッター部と、回転中心部に配される管摺接部と外周カッター部の間に切削面盤部の径方向に沿って配される複数の線状カッター部とを有する。また、この切削面盤部は、管摺接部と外周カッター部との間に配されるとともに線状カッター部により区画される複数の扇状開口部を有する。
【0026】
このように切削ヘッド部が形成されることにより、当該切削ヘッド部で既設下水管の破砕とその周辺地盤の掘削とを円滑に行うことができるとともに、既設下水管の破砕物や掘削土を、切削面盤部の扇状開口部から円筒部内に取り込んで安定して排出することができる。
【0027】
また本発明の推進管敷設装置における切削ヘッド部は、円筒部の外周面に配される周面カッター部を有する。これにより、切削ヘッド部の外周面でも地盤を掘削できるため、掘削を効率的に行うことができるとともに、推進駆動装置で推進管を推進するときに地盤との間で生じる摩擦抵抗を低減できる。
【0028】
本発明の推進管敷設方法では、先ず、発進立坑内で発進立坑の上流側(又は下流側)に配される第1下水管の端部に第1止水部材を取り付けるとともに、到達立坑内で到達立坑の下流側(又は上流側)に配される第2下水管の端部に第2止水部材を取り付ける。更に、第1止水部材及び第2止水部材を閉じることにより、第1下水管を第1止水部材で止水するとともに、第2下水管を第2止水部材で止水する。これにより、更新対象区間の既設下水管に下水が流れ込ませないとともに発進立坑及び到達立坑内に下水が漏れ出さないようにする。次に(又は上記作業と並行して)、発進立坑内に、上述したような本発明の推進管敷設装置の推進駆動装置を搬入して設置する。
【0029】
また、更新対象区間の上流側と下流側とを止水した後、その区間の既設下水管内に仮排水管を挿入し、更に、その挿入した仮排水管の発進立坑側の端部と前記到達立坑側の端部とを支持して、当該仮排水管を既設下水管内で、破砕・掘削を行う計画線に対応した所定の位置に直線状に保持する。
【0030】
続いて、所定の位置に保持されている仮排水管を推進管敷設装置における切削ヘッド部の管挿通孔に挿通するとともに、その切削ヘッド部を推進駆動装置に設置する。更に、その仮排水管の両端部を、第1下水管と第2下水管とに第1止水部材及び第2止水部材を介してそれぞれ接続する。これにより、従来のように地表を迂回する迂回ホースを利用しなくても、更新対象区間の上流側から流れてくる排水を、既設下水管内に保持した仮排水管を介して、更新対象区間の下流側に安定して送ることができる。
【0031】
なお本発明では、仮排水管を切削ヘッド部の管挿通孔に挿通する前に、仮排水管の両端部を第1下水管と第2下水管とに接続しても良い。すなわち、既設下水管内の所定の位置に保持された仮排水管の両端部を、第1下水管と第2下水管とに第1止水部材及び第2止水部材を介してそれぞれ接続して排水の流れを先ず確保し、それとともに、発進立坑内において推進管敷設装置の切削ヘッド部の設置準備を進め、その後、既に接続されている仮排水管と第1下水管とを一時的に切り離してから、その切り離した仮排水管を切削ヘッド部の管挿通孔に挿通するとともに切削ヘッド部を推進駆動装置に設置することも可能である。このとき、仮排水管は、上述した所定の位置に保持される。そして、切削ヘッド部の設置後、仮排水管と第1下水管とを再び接続して、排水の流れを再び確保する。
【0032】
その後、推進管敷設装置の推進駆動装置により、切削ヘッド部を回転させながら、同切削ヘッド部の管摺接部を、計画線に対応して保持されている仮排水管(案内管)に摺接させて切削ヘッド部を仮排水管に沿って前進させる。これにより、切削ヘッド部で、仮排水管を破砕することなく、既設下水管を破砕するとともに既設下水管の周辺地盤を掘削し、更に、切削ヘッド部の破砕及び掘削により形成される円筒状の空間部に、推進管を切削ヘッド部に続いて推進させて敷設することができる。
【0033】
このような本発明の推進管敷設方法によれば、既設下水管内の所定位置に保持固定される仮排水管を切削ヘッド部の案内管として用いることができるため、推進駆動装置により切削ヘッド部を回転させながら推進することにより、切削ヘッド部が管摺接部を仮排水管(案内管)に摺接させながら仮排水管に沿ってまっすぐに前進できるため、切削ヘッド部に続く推進管を計画線に沿って安定して敷設できる。
【0034】
また、切削ヘッド部による破砕及び掘削を行いながら推進管を推進し敷設する際に、切削ヘッド部による破砕及び掘削を進めても、前述した特許文献1及び特許文献2のように到達立坑内に案内管(仮排水管)が飛び出すことがないため、案内管(仮排水管)を取り外すために作業を停止させる必要がなく、破砕及び掘削の作業を効率的に行うことができる。
【0035】
更に、切削ヘッド部による破砕及び掘削の作業中は、仮排水管が既設下水管の更新区間よりも上流側の下水管と下流側の下水管とに接続されているため、地表を迂回する迂回ホースを利用しなくても、上流側から流れてくる排水を、仮排水管を介して下流側の下水管に円滑に送ることができる。従って、従来のように掘削推進工程の開始前に排水を地表に迂回させるためのバイパス工事を行う必要がなくなるため、工事費用の削減や工事期間の短縮を図ることが可能となる。
【0036】
このような本発明の推進管敷設方法では、推進管を推進して敷設する工程において、新たな推進管を推進駆動装置に据え付けるときに、発進立坑内で仮排水管と第1下水管とを一時的に切り離して、仮排水管を新たな推進管内に挿通させ、その後、仮排水管と第1下水管とを再び接続する。
【0037】
これにより、切削ヘッド部の後方に複数の推進管を順番に安定して連結できる。また、推進管の据え付け時に、第1止水部材又は第2止水部材で排水の止水を行って仮排水管と第1下水管とを一時的に切り離すことにより排水の流れが止められるものの、推進管を推進駆動装置に据え付けた後に再び仮排水管と第1下水管とを接続することにより、短時間のうちに仮排水管による排水の流れを回復し、排水を上流側から下流側に安定して送ることができる。
【0038】
次に、本発明により提供される既設下水管更新方法では、上述した本発明の推進管敷設方法により発進立坑から到達立坑までの区間に推進管を敷設した後、推進管内に保持されている仮排水管を、第1下水管及び第2下水管から切り離して回収する。続いて、敷設した推進管をさや管として用い、そのさや管内に本管を芯管として挿入して敷設する。更にその後、さや管内に挿入した本管を第1下水管と第2下水管とに接続する。これにより、本管を更新区間内に新たな下水管として安定して敷設できるため、古い既設下水管を、新たな本管に円滑に更新することができる。
【0039】
またこの場合、本管を第1下水管と記第2下水管とに接続した後に、さや管と本管との間の空間部に中込材を充填する。これによって、さや管に対する本管の位置を固定し、本管の位置がずれることを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】実施形態で用いる装置及び設備を模式的に示す模式図である。
図2】推進管敷設装置の切削ヘッド部を模式的に示す斜視図である。
図3】推進駆動装置を模式的に示す側面図である。
図4】既設下水管の更新を行う際の工程を示すフロー図である。
図5】推進駆動装置の搬入及び第1止水部材及び第2止水部材の取付工程について模式的に説明する模式図である。
図6】既設下水管内に仮排水管(案内管)を挿入する工程について模式的に説明する模式図である。
図7】仮排水管を第1下水管及び第2下水管に第1止水部材及び第2止水部材を介して接続する工程について模式的に説明する模式図である。
図8】破砕掘削推進工程について模式的に説明する模式図である。
図9】切削ヘッド部と仮排水管を撤去する工程について模式的に説明する模式図である。
図10】破砕物及び掘削土の清掃工程について模式的に説明する模式図である。
図11】本管挿入工程について模式的に説明する模式図である。
図12】本管を第1下水管及び第2下水管に接続するとともに中込材を本管と推進管の間に充填する工程について模式的に説明する模式図である。
図13】本管を示す縦断面図である。
図14】推進管、本管、及びスペーサバンドを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
例えば以下の実施形態では、推進管として鋼製の管体を用い、本管として、硬質の塩化ビニル製の管体を用いる場合について説明するが、本発明において推進管や本管の材質は特に限定されるものではない。
【0042】
既設下水管10の更新工事を行う場合、始めに、更新工事を行う区間(更新区間)を挟むようにして、図5等に示すような発進立坑1と到達立坑2とを地表から掘削する。なお、既に掘削されている立坑がある場合には、その立坑を発進立坑1や到達立坑2として利用することが可能である。また本実施形態では、既設下水管10の更新区間に対し、到達立坑2側が上流側となり、発進立坑1側が下流側となる場合について説明するが、本発明は、上流側と下流側が本実施形態と反対となる場合にも同様に適用することが可能である。
【0043】
発進立坑1と到達立坑2の掘削作業では、発進立坑1内と到達立坑2内に表れる既設下水管10の一部を破壊して除去する。この場合、発進立坑1内及び到達立坑2内で既設下水管10を破壊する前に、発進立坑1の下流側に配される第1下水管11の端部に第1止水部材13を取り付けて、第1止水部材13で第1下水管11を一時的に止水する。それとともに、到達立坑2の上流側に配される第2下水管12の端部に第2止水部材14を取り付けて、第2止水部材14で第2下水管12を一時的に止水する。
【0044】
この場合、発進立坑1側に配される第1止水部材13は、第1下水管11の端部に設置される止水パッカー13aと、止水パッカー13aから延出する延出ホース部13bと、延出ホース部13bの先端部に配され、後述する連結ホース17bを接続するストップバルブ部13cとを有する。
【0045】
また、到達立坑2側に配される第2止水部材14も、第1止水部材13と同様に、止水パッカー14a、延出ホース部14b、及びストップバルブ部14cを有する。このような第1止水部材13及び第2止水部材14を設置することにより、更新対象区間の既設下水管10に下水(排水)が流れ込むことを防ぐとともに、発進立坑1及び到達立坑2内に下水が漏れ出すことや第1下水管11及び第2下水管12に異物が入り込むことを防止する。
【0046】
既設下水管10の更新工事を行うにあたって、発進立坑1や到達立坑2の周辺に種々の設備が設置される。例えば図1に示したように、発進立坑1内への装置等の搬入の際に用いられるクレーン付きトラック21や、掘削等により排出される土砂等を運搬するダンプトラック22などが準備される。また、油圧を発生させて推進駆動装置40に供給する油圧ユニット23、推進駆動装置40に電力を供給する発電機24、及び、破砕物などの排出を行うために水槽25から送水ホース26を介して切削ヘッド部30に水を供給する送水ポンプ27などが発進立坑1の周辺に設置される。
【0047】
また本実施形態では、上述した設備の他に、切削ヘッド部30による破砕及び掘削を行う際に周辺地盤に滑材を供給する滑材プラント(図示は省略)や、例えば図12に示したようにモルタル52などの充填材(中込材)を混合するミキサー28及び混合した充填材の注入を行うグラウトポンプ29などが発進立坑1の周辺に設置される。更に、本実施形態の発進立坑1内には、切削ヘッド部30から水で流されて排出される破砕物や掘削土を一時的に貯留する図示しない釜場などが設置される。
【0048】
本実施形態において、破砕掘削推進工程に用いる推進管敷設装置は、破砕及び掘削を行う切削ヘッド部30と、その切削ヘッド部30及び推進管15を後方から推進する推進駆動装置40とを備える。
本実施形態の切削ヘッド部30は、図2に示すように、後端部に推進管15が接続される円筒部31と、円筒部31の先端(前端)に配される切削面盤部32とを有する。また、円筒部31内には、切削ヘッド部30内に排出用の水を案内するために、送水ポンプ27の送水ホース26を取り付け可能な図示しないホース取付部が設けられている。
【0049】
切削ヘッド部30の切削面盤部32は、回転中心部に配される管摺接部33と、管摺接部33の外側に配される正面カッター部34とを有する。またこの場合、正面カッター部34は、既設下水管10の破砕と地盤の掘削を行う手段として、切削面盤部32の外周縁に沿って円環状に配される外周カッター部35と、回転中心部の管摺接部33と外周カッター部35の間に切削面盤部32の径方向に沿って配される複数の線状カッター部36とを有する。また、この切削面盤部32には、管摺接部33と外周カッター部35との間に、線状カッター部36により区画される複数の扇状開口部38が設けられている。
【0050】
切削面盤部32の管摺接部33は、切削ヘッド部30を正面から見たときにドーナツ状を呈するような回転軸に平行な円筒状の形態を有しており、この管摺接部33の内側には、円柱状の管挿通孔39が回転軸に沿って形成されている。この場合、切削ヘッド部30を正面から見たときの管挿通孔39の直径(すなわち、管摺接部33の内径)は、管挿通孔39に後述する仮排水管18(案内管)を管摺接部33に接するように挿通可能で、且つ、仮排水管18を挿通させた状態で切削ヘッド部30を回転させたときに切削ヘッド部30ががたつかないようにするために、その仮排水管18の外径と略同じ大きさに設定される。なお本発明では、管挿通孔39に仮排水管18を挿通させたときに、少し隙間(遊び)が形成されるように、管挿通孔39の直径を仮排水管18の外径よりも少し大きく設定することも可能である。
【0051】
また本実施形態の場合、管摺接部33の環状の先端面(前端面)は平坦面に形成されているが、本発明では、管摺接部33の環状先端面に硬質の切削ビットを固定する又は埋め込むことや、複数の切削チップを溶融して固着すること等により、管摺接部33の先端部に、破砕や掘削が可能なカッター部を設けても良い。
【0052】
切削面盤部32の外周カッター部35は、切削面盤部32の外周縁部にリング状に配されている。また、本実施形態の外周カッター部35は、複数の切削チップを溶融して固着すること、又は硬質の切削ビットを固定する若しくは埋め込むことにより形成されている。この外周カッター部35は、切削面盤部32の外周縁部に、切削面盤部32の周方向に沿って間欠的に設けられている。なお本発明において、外周カッター部35は、切削面盤部32の周方向に沿って連続的に設けられていても良い。
【0053】
切削面盤部32の線状カッター部36は、管摺接部33と外周カッター部35の間に、切削面盤部32の径方向に沿って直線状に連続的に配されている。この線状カッター部36は、外周カッター部35と同様に、複数の切削チップを溶融して固着すること、又は硬質の切削ビットを固定する若しくは埋め込むことにより形成されている。隣接する線状カッター部36間には、扇状開口部38が、切削ヘッド部30を正面から見たときに扇状の形状を呈するように設けられており、切削面盤部32を前方から後方に貫通して形成されている。
【0054】
上述のような外周カッター部35と複数の線状カッター部36とを有する正面カッター部34は、切削ヘッド部30が前進しながら、正面視で時計方向又は反時計方向に回転することにより、当該正面カッター部34が接触する既設下水管10を容易に破砕できるとともに、その既設下水管10の周辺の地盤を安定して掘削することができる。なお本発明において、切削ヘッド部30に設けられる正面カッター部34の形態は特に限定されるものではなく、任意に変更することができる。
【0055】
また本実施形態の切削ヘッド部30には、上述の正面カッター部34の他に、地盤の掘削を行う手段として外周屈曲カッター部37が設けられている。この外周屈曲カッター部37は、切削面盤部32の外周縁部に配される第1カッター部と、円筒部31の外周側面に第1カッター部と直交して配される第2カッター部(周面カッター部)とを有しており、切削面盤部32の外周縁部から円筒部31の外周側面にかけて屈曲状に連続して設けられている。
【0056】
この外周屈曲カッター部37は、複数の切削チップを溶融して固着すること、又は硬質の切削ビットを固定する若しくは埋め込むことにより形成されている。このような外周屈曲カッター部37も、切削ヘッド部30が前進しながら回転することにより、当該外周屈曲カッター部37が接触する地盤を掘削することができる。
【0057】
上述のような切削ヘッド部30に対して推進力を与える推進駆動装置40は、発進立坑1内に設置され、切削ヘッド部30や推進管15を支持しながら切削ヘッド部30及び推進管15を後方から押圧することによって、切削ヘッド部30及び推進管15をその軸方向に沿って推進する装置であり、従来から一般的に用いられる推進駆動装置と同様の構造を有する。
【0058】
簡単に説明すると、本実施形態の推進駆動装置40は、図3に示したように、発進立坑1の底面に固定されるスライドベース41と、スライドベース41上に前後方向にスライド可能に配されるとともに切削ヘッド部30や推進管15を支持する装置本体42と、装置本体42を進退可能で切削ヘッド部30及び推進管15の推進力を与える油圧シリンダー43と、切削ヘッド部30及び推進管15の回転力を与える油圧モーター44とを有する。
【0059】
また、この推進駆動装置40には、各種操作を行うために操作レバー45や図示しない操作スイッチなどが設けられている。装置本体42は、図示しない軸受によって回転可能に支持される回転部42aを有しており、この回転部42aには、油圧モーター44の回転が伝達される。油圧シリンダー43と油圧モーター44とには、地表に設置した油圧ユニット23の油圧が供給される。
【0060】
次に、上述した切削ヘッド部30及び推進駆動装置40を備える推進管敷設装置を用いて、発進立坑1と到達立坑2との間に埋設されている既設下水管10を破砕するとともに鋼製の推進管15を順番に推進敷設し、その後、推進管15内に新たな本管16を挿入して固定することによって、既設下水管10を本管16に更新する方法について、図面を参照しながら説明する。ここで、図4は、既設下水管10の更新工事における工程フロー図である。
【0061】
本実施形態において既設下水管10の更新工事を行う場合、先ず、止水部材の取付工程として、上述したように、発進立坑1内において、更新区間の下流側に配される第1下水管11に第1止水部材13を取り付けて、その第1止水部材13によって止水するとともに、到達立坑2内において、更新区間の上流側に配される第2下水管12に第2止水部材14を取り付けて、その第2止水部材14によって止水する。
【0062】
なお本実施形態では、第1止水部材13及び第2止水部材14で止水した後、第1止水部材13と更新区間の既設下水管10の一端部とを仮連結管17aで接続するとともに、第2止水部材14と同既設下水管10の他端部とを仮連結管17aで接続することにより、排水の流通を一時的に回復し、更新区間の上流側となる第2下水管12に下水が溜まり過ぎることを防いでいる。
【0063】
仮連結管17aを介して更新区間の既設下水管10と第1下水管11及び第2下水管12とを接続した後、図5に示すように、発進立坑1内に、クレーン等を用いて、推進管敷設装置の推進駆動装置40を搬入し、所定の位置に設置して固定する工程(推進駆動装置の搬入・設置工程)を行う。
【0064】
続いて、図6に示すように、発進立坑1及び到達立坑2内で第1止水部材13及び第2止水部材14の各ストップバルブ部13c,14cを閉じるとともに仮連結管を取り外し、その後、仮排水管18を発進立坑1から更新区間の既設下水管10内に挿入して第1下水管11及び第2下水管12に接続する仮排水管の挿入・接続工程を行う。
【0065】
この工程では、先ず、所定の長さを有する複数の仮排水管18を順番に発進立坑1内に搬入し、先行する仮排水管18の後端部に、後続の仮排水管18の前端部を連結しながら、仮排水管18を既設下水管10内に直線的に順番に挿入する。
【0066】
この場合、仮排水管18としては、既設下水管10の内径(口径)の25%以上75%以下の外径を有する鉄鋼製の管体を用いることが好ましい。仮排水管18が鉄鋼により形成されていることにより、複数の仮排水管18を溶接によって容易に連結できるとともに、後述する破砕掘削推進工程において、推進管敷設装置の切削ヘッド部30を安定して案内することができる。
【0067】
仮排水管18の外径を既設下水管10の内径の25%以上にすることにより、後述する破砕掘削推進工程において、当該既設下水管10の破砕に好適な大きさを有する切削ヘッド部30を適切に案内でき、高い推進精度を安定し確保することができる。また、仮排水管18の外径を既設下水管10の内径の75%以下にすることにより、既設下水管10が更新区間の途中で部分的に湾曲又は屈曲していても、当該既設下水管10内に仮排水管18を直線的に挿入し易くすることができる。
【0068】
仮排水管18を更新区間の既設下水管10の全体に亘って挿入した後、図7に示したように、挿入した仮排水管18が、破砕・掘削作業を行う予定の計画線に対応する位置に保持されるように、仮排水管18の発進立坑1側の端部と到達立坑2側の端部とを所定の位置で支持する。この場合、仮排水管18の発進立坑1側の端部は、発進立坑1内に設置した推進駆動装置40の上で支持され、仮排水管18の到達立坑2側の端部は、到達立坑2側の坑口において図示しない支持部材によって支持される。
【0069】
それとともに、仮排水管18の発進立坑1側の端部と第1下水管11の第1止水部材13とを連結ホース17bを介して連結することにより、仮排水管18と第1下水管11とを接続する。それとともに、仮排水管18の到達立坑2側の端部と第2下水管12の第2止水部材14とを連結ホース17bを介して連結することにより、仮排水管18と第2下水管12とを接続する。
【0070】
そして、第1止水部材13及び第2止水部材14の各ストップバルブ部13c,14cを開くことにより、下水の流通を回復させる。このとき、到達立坑2内の連結ホース17bや発進立坑1内の連結ホース17bに、例えば図示しないポンプを取り付けて稼働させることにより、下水を第2下水管12から第1下水管11に向けて、仮排水管18と連結ホース17bとを介して円滑に流すことができる。
【0071】
次に、推進管敷設装置の切削ヘッド部30を発進立坑1内に搬入して推進駆動装置40の所定の位置に設置するとともに、鉄鋼製の推進管15を発進立坑1内に搬入して推進駆動装置40に据え付ける工程(切削ヘッド部の設置及び推進管の据付工程)を行う。
【0072】
この工程では、第2止水部材14を閉じるとともに第1止水部材13を閉じた後、仮排水管18と第1下水管11とを一時的に切り離し、更に、仮排水管18を切削ヘッド部30の管挿通孔39に挿通させた状態で切削ヘッド部30を推進駆動装置40に設置する。それとともに、仮排水管18を推進管15内に挿通させた状態で推進管15を推進駆動装置40に取り付ける。
【0073】
更にこのとき、切削ヘッド部30の円筒部31の後端部に推進管15の前端部を接続する。また、送水ホース26を、推進管15を介して切削ヘッド部30の円筒部31の内部に取り付けることにより、送水ポンプ27によって切削ヘッド部30内に水を供給できるようにする。
【0074】
推進駆動装置40に切削ヘッド部30及び推進管15を取り付けた後、仮排水管18と第1下水管11とを再び接続して第2止水部材14と第1止水部材13を開く。これにより、排水を再び第2下水管12から、下流側の第1下水管11に流すことができる。なお、本発明において、推進駆動装置40を設置する工程及び切削ヘッド部30と推進管15を推進駆動装置40に取り付ける工程と、仮排水管18を既設下水管10内に挿入して接続する工程とを行う順番は特に限定されるものではなく、順番を任意に変更して作業を行っても良い。
【0075】
仮排水管18による排水の流通を確保した状態で、次に破砕掘削推進工程を行う。この破砕掘削推進工程では、推進駆動装置40を稼働させて、推進駆動装置40に取り付けた切削ヘッド部30と推進管15とを切削面盤部32の円周方向に回転させるとともに、切削ヘッド部30の管摺接部33を、案内管となる仮排水管18に摺接させながら切削ヘッド部30を仮排水管18に沿って所定の速度で前進させる。
【0076】
これにより、図8に示すように、仮排水管18を破砕することなく、切削ヘッド部30に設けた正面カッター部34と外周屈曲カッター部37とによって既設下水管10を破砕するとともに、既設下水管10の周辺の地盤を掘削することができる。このとき、切削ヘッド部30を回転させることにより、円形の切羽面(掘削面)の全体で破砕及び掘削を行うことができる。更に、切削ヘッド部30の外周屈曲カッター部37により、切削ヘッド部30の外周側面でも掘削を行うことができるため、推進駆動装置40で推進管15を推進するときに地盤との間で生じる摩擦抵抗を低減できる。
【0077】
また図示は省略するものの、上述のように切削ヘッド部30による破砕及び掘削を行いながら、地表に設置した送水ポンプ27から送水ホース26を介して切削ヘッド部30内に水を供給する。これにより、切削ヘッド部30により破砕された既設下水管10の破砕物と掘削された掘削土は、切削ヘッド部30に設けた扇状開口部38から円筒部31内に取り込まれ、更に、送水ポンプ27から切削ヘッド部30内に供給される水によって、発進立坑1に向けて流され、発進立坑1に設置した図示しない釜場に排出される。更に釜場に排出された破砕物や掘削土は、釜場内で分別され、その後、地表に搬出されてそれぞれ適切に処理される。
【0078】
推進駆動装置40によって切削ヘッド部30及び推進管15を所定の距離で推進させた後、推進駆動装置40を一旦停止させ、次の推進管15を推進駆動装置40に据え付ける工程(推進管の据付工程)を行う。この据付工程では、第2止水部材14を閉じるとともに第1止水部材13を閉じ、更に仮排水管18と第1下水管11とを一時的に切り離した後に、新たな推進管15内に仮排水管18を挿通させた状態で当該推進管15を推進駆動装置40に取り付ける。
【0079】
また、新たな推進管15を推進駆動装置40に取り付ける際には、新たな推進管15の前端部を、先行する推進管15の後端部に接続する。更に、新たな推進管15を推進駆動装置40に据え付けた後、仮排水管18と第1下水管11とを再び接続するとともに第2止水部材14と第1止水部材13とを開くことにより、排水の流通を回復させる。
【0080】
その後、推進駆動装置40を再び稼働させて、切削ヘッド部30及び推進管15を回転させながら前進させることにより、切削ヘッド部30による破砕及び掘削を進めながら、推進管15を地中に埋設するように推進することができる。以降、推進管15の据付工程と、切削ヘッド部30の回転及び前進による破砕及び掘削工程とを、切削ヘッド部30及び推進管15が到達立坑2に到達するまで交互に繰り返して行う。これにより、更新区間の既設下水管10が全て破砕されて除去されるとともに、連結された複数の推進管15を、発進立坑1から到達立坑2までの更新区間の全体に亘って埋設することができる(図9を参照)。
【0081】
特に本実施形態では、計画線に対応する位置に保持される仮排水管18内に排水を流しながら、その仮排水管18に沿って切削ヘッド部30を前進させて破砕及び掘削を行うことができる。このため、切削ヘッド部30に続く推進管15を計画線に沿って高精度に推進させて、連結された複数の推進管15を所定の向きや所定の勾配で直線的にまっすぐに安定して地中に敷設することができる。また、破砕掘削推進工程中は、下水を従来のように地表に迂回させる必要もなくなる。
【0082】
また本実施形態では、上述のように切削ヘッド部30による破砕及び掘削と、推進管15の埋設とを進める際に、滑材の注入作業が繰り返して行われる。滑材の注入作業は、推進管15に穿設した図示しない注入孔に、滑材注入ホースを接続し、推進管15の周辺地盤に対して注入孔から滑材を注入することにより行われる。この滑材の注入作業を行うことにより、推進管15の外周面とその周辺地盤との間の摩擦抵抗を更に低減して、推進管15をより効率的に推進することができる。また、推進管15の外周面を周辺地盤によって傷付き難くすることができるとともに、推進管15の周辺地盤の緩みを防止することもできる。
【0083】
切削ヘッド部30及び推進管15が到達立坑2に到達して推進駆動装置40を停止させた後、第1止水部材13及び第2止水部材14を閉じて排水の流通を止め、更に、連結ホース17bを取り外して仮排水管18と第1下水管11及び第2下水管12とを切り離す。更に、到達立坑2内で切削ヘッド部30を仮排水管18から取り外して、その切削ヘッド部30を、図9に示すように到達立坑2からクレーン等で持ち上げて回収し、撤去する工程(切削ヘッド部の撤去工程)を行う。
【0084】
更に、切削ヘッド部30の撤去工程を行うとともに、推進管15内に残っている仮排水管18を発進立坑1側から引き出して、その仮排水管18を切断しながらクレーン等で持ち上げて回収して撤去する工程(仮排水管の撤去工程)を行う。更にまた、切削ヘッド部30に水を送るために用いた送水ホース26や、滑材を供給するために用いた滑材注入ホースなども、発進立坑1側から回収して撤去する。
【0085】
切削ヘッド部30や仮排水管18などを撤去した後、切削ヘッド部30に供給した水によっては排出できずに、敷設した推進管15内に残存している破砕物や掘削土を取り除くための推進管内清掃工程を行う。この推進管内清掃工程では、図10に示すように、到達立坑2側から排土機(スクレーバー)51を導入して、その排土機51を発進立坑1に向けて移動させる。これによって、推進管15内に残存する破砕物や掘削土をきれいに除去して排出することができる。その後、発進立坑1に到達した排土機51を回収するとともに、破砕物や掘削土を分別して適切に処理する。また同時に、発進立坑1内に設置されている推進駆動装置40をクレーン等で持ち上げて撤去する。
【0086】
推進駆動装置40を撤去して推進管15の敷設状態等を確認した後、その敷設した推進管15を、本管16に対するさや管として用いて、さや管15内に複数の本管16を挿入して敷設する作業に移行する。
【0087】
本実施形態において、本管16には、推進管(さや管)15よりも口径が小さく、図13に示すような形状を備える硬質の塩化ビニル管が採用される。この本管16は、一定の内径を有する本管本体部16aと、内径を長手方向に沿って漸増させる拡幅部16bと、拡幅部16bから延出し、本管本体部16aの外径と同じ大きさの内径を有する接続部16cとを有する。この本管16の接続部16cに、後続する本管16の本管本体部16aを挿入することにより、複数の本管16を連続して繋ぎ合わせることができる。
【0088】
このような本管16を推進管(さや管)15に挿入する前に、本管16の本管本体部16aに、本管16を推進管15内の所定の位置で保持することを可能にする鋼製のスペーサバンド(支持固定バンド)19を取り付ける工程(スペーサバンドの取付工程)を行う。
【0089】
このスペーサバンド19は、図14に示すように、本管16の外周面に接触して本管16を保持する円環状の帯板部19aと、帯板部19aの切れ目部から外側に舌片状に延設される一対の取付片部19bと、一対の取付片部19bを締め付ける締め付けボルト19cと、帯板部19aから径方向に沿うように外側に向けて延設され、さや管の内周面に接触する4本の脚部19dとを有する。
【0090】
このような形態を有する複数のスペーサバンド19を、直線的に繋ぎ合わされる本管16の外周面に、本管16の長手方向に所定間隔(例えば2m間隔)で取り付ける。このとき、各スペーサバンド19の脚部19dの長さを、当該スペーサバンド19の設置個所に応じて加工調整することにより、直線的に繋げられる複数の本管16を、さや管15に対して所定の勾配で支持して敷設することができる。
【0091】
1つ又は複数のスペーサバンド19を本管16の本管本体部16aに取り付けた後に、そのスペーサバンド19が取り付けられた本管16を、図11に示すように、発進立坑1内に搬入し、推進管(さや管)15の発進立坑1側の端部から挿入する本管挿入・接続工程を行う。この工程では、スペーサバンド19が取り付けられた本管16を1本ずつ推進管15内に挿入しながら、複数の本管16を順番に接続していくことにより、本管16を発進立坑11から到達立坑2まで連通するように敷設することができる。
【0092】
なお本実施形態において、切削ヘッド部の撤去工程(図9を参照)で第1止水部材13及び第2止水部材14を閉じて排水の流通を止めてから、本管の挿入・接続工程が終了するまでの間に長い作業時間(作業日数)を要するときは、所定の時間毎に(例えば各作業日の作業終了時に)、工事作業を一時的に停止して、推進管(さや管)15内に図示しない仮連結ホース(又は仮連結管)を一時的に挿通させるとともに、その仮連結ホースを第1下水管11と第2下水管12とに連結することが可能である。
【0093】
このように仮連結ホースを介して第1下水管11と第2下水管12とを接続することにより、排水の流通を確保して第2下水管12から第1下水管11に下水を円滑に流すことができるため、長い作業時間の間に、更新区間の上流側となる第2下水管12に下水が溜まり過ぎることを防止できる。
【0094】
なお、排水を所定時間で流した後に工事作業を再び開始するとき(例えば次の作業日の作業開始時)には、第1止水部材13及び第2止水部材14を閉じて排水の流通を止めるとともに、推進管15内に挿通させた仮連結ホース(又は仮連結管)を引き出して回収する。
【0095】
そして、本管16を推進管15内に挿入して発進立坑1から到達立坑2までの更新区間の全体に敷設した後、図12に示すように、本管16の発進立坑1側の端部と第1下水管11の第1止水部材13とを、連結管17cを介して連結することにより本管16と第1下水管11とを接続する。それとともに、本管16の到達立坑2側の端部と第2下水管12の第2止水部材14とを連結管17cを介して連結することにより本管16と第2下水管12とを接続する。その後、第1止水部材13及び第2止水部材14の各ストップバルブ部13c,14cを開くことにより、第2下水管12から第1下水管11までの下水の流通を回復させる。
【0096】
なお本発明において、本管16と第1止水部材13及び第2止水部材14との間を連結する連結管17cの太さは特に限定されない。またこの場合、第1止水部材13及び第2止水部材14を、第1下水管11及び第2下水管12からそれぞれ取り外して、連結管17cを第1下水管11及び第2下水管12に直接接続することや、本管16を長く延ばして当該本管16を第1下水管11及び第2下水管12に接続することも可能である。
【0097】
上述のようにして本管16と第1下水管11及び第2下水管12とを、連結管17cを介して接続した後、本管16と推進管15との間に形成され、長手方向に沿ってドーナツ状の断面形状で延びる空間部に、中込材としてモルタル52を充填する中込材の充填工程を行う。
【0098】
この中込材の充填工程では、発進立坑1側の管路端部に図示しない第1閉塞部材を取り付けて閉塞するとともに、到達立坑2側の管路端部にも図示しない第2閉塞部材を取り付けることにより閉塞する。また、図示しない第1閉塞部材と第2閉塞部材とには、空気を抜くためのエアー抜き管が取り付ける。更に、第1閉塞部材にはモルタル52の注入口が設けられ、地上に設置されるグラウトポンプ29の注入ホース29aが接続される。
【0099】
第1閉塞部材及び第2閉塞部材を取り付けた後、地上に設置したミキサー28でセメントなどの原料と水とを混合して練り上げることによりモルタル52を作製し、その作製したモルタル52をグラウトポンプ29で圧送することにより、注入ホース29aから本管16と推進管15との間の空間部にモルタル52を中込材として注入して充填する。なお本発明において、中込材はモルタル52に限定されず、その他の材料を用いることが可能である。また、モルタル52の注入条件などは適宜設定される。
【0100】
このように本管16と推進管15との間の空間部にモルタル52を充填することにより、図12に示したように、推進管15内に所定の勾配で支持されている本管16を固定し、それによって、本管16の傾斜勾配を安定して維持することができる。また、推進管15が補強されるため、推進管15が周辺地盤から応力を受けて折れ曲がることを防止できる。
【0101】
中込材(モルタル52)の充填終了後、設置した機材等を搬出するとともに清掃を行うことにより、本管16の敷設工程が終了する。上述のようにして推進管15内に本管16を挿入して敷設することにより、本管16の敷設作業を容易に且つ安定して行うことができるとともに、本管16を、所定の方向に所定の勾配で安定して敷設することができる。
【0102】
以上のような工程を図4に示したフローに従って行うことにより、地中に埋設されていた既設下水管10を新しい本管16に円滑に取り替えて更新することができる。特に本実施形態では、破砕掘削推進工程の前に、既設下水管10内に仮排水管18を挿通させて、同仮排水管18を更新区間の上流側となる第2下水管12と、その下流側となる第1下水管11とに接続している。
【0103】
これによって、従来のように下水を地表に迂回させて流さなくても、破砕掘削推進工程期間中における排水の流通を安定して確保することができる。従って、従来のように破砕掘削推進工程前に排水を地表に迂回させるためのバイパス工事を行う必要がなくなるため、工事費用の削減や工事期間の短縮を図ることが可能となる。
【0104】
更に本実施形態では、破砕掘削推進工程において、上述したように回転する切削ヘッド部30の管摺接部33を、計画線に沿って保持された仮排水管(案内管)18に摺接させて、切削ヘッド部30を仮排水管18に沿ってまっすぐに前進させることができる。このため、推進管15を計画線に沿って高精度に且つ効率的に推進させて、推進管15の敷設を安定して行うことができる。またそれによって、その後、敷設した推進管15内に、本管16を所定の方向に所定の勾配で安定して敷設することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 発進立坑
2 到達立坑
10 既設下水管
11 第1下水管
12 第2下水管
13 第1止水部材
13a 止水パッカー
13b 延出ホース部
13c ストップバルブ部
14 第2止水部材
14a 止水パッカー
14b 延出ホース部
14c ストップバルブ部
15 推進管(さや管)
16 本管
16a 本管本体部
16b 拡幅部
16c 接続部
17a 仮連結管
17b 連結ホース
17c 連結管
18 仮排水管(案内管)
19 スペーサバンド(支持固定バンド)
19a 帯板部
19b 取付片部
19c 締め付けボルト
19d 脚部
21 クレーン付きトラック
22 ダンプトラック
23 油圧ユニット
24 発電機
25 水槽
26 送水ホース
27 送水ポンプ
28 ミキサー
29 グラウトポンプ
29a 注入ホース
30 切削ヘッド部
31 円筒部
32 切削面盤部
33 管摺接部
34 正面カッター部
35 外周カッター部
36 線状カッター部
37 外周屈曲カッター部
38 扇状開口部
39 管挿通孔
40 推進駆動装置
41 スライドベース
42 装置本体
42a 回転部
43 油圧シリンダー
44 油圧モーター
45 操作レバー
51 排土機(スクレーバー)
52 モルタル
図1
図2
図3
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図5
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図10
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