特許第6302556号(P6302556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302556
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】粒子捕捉装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20180319BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   G01N1/02 A
   G01N1/22 E
   G01N1/22 T
【請求項の数】19
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-533304(P2016-533304)
(86)(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公表番号】特表2016-527522(P2016-527522A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】US2014046508
(87)【国際公開番号】WO2015020758
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年5月30日
(31)【優先権主張番号】13/961,469
(32)【優先日】2013年8月7日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500415254
【氏名又は名称】エアロダイン・リサーチ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン,ジョン,ティー
(72)【発明者】
【氏名】ウォースノップ,ダグラス,アール
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2011/114587(JP,A1)
【文献】 特開昭63−252244(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0255375(US,A1)
【文献】 特表平05−501078(JP,A)
【文献】 特表平10−504746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/02 − 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器においてミクロンサイズ及び/又はサブミクロンサイズの粒子を捕捉するための粒子捕捉装置であって、
開口部を通してミクロン粒子及び/又はサブミクロン粒子を含む集束粒子ビームが前記粒子捕捉装置に入る前記開口部と、
前記開口部に結合された収集エンクロージャであって、前記収集エンクロージャの中に前記集束粒子ビームが受領され、前記収集エンクロージャは、1以上の実質的に平滑な内部表面を有し、前記粒子が気化され、又は後の気化に備えて静止するまで、前記粒子は、前記1以上の実質的に平滑な内部表面に対して複数回にわたって衝突し、前記1以上の実質的に平滑な内部表面は、粒子の最初の衝突を受けるために前記集束粒子ビームの最初の軌道上に配置された第1の実質的に平滑な内部表面を含み、前記第1の実質的に平滑な内部表面は、前記最初の軌道に対して角度を成す向きに配置され、前記角度は、前記最初の衝突によって、前記粒子の運動量は減少されるが、前記粒子の前進速度ベクトル成分の方向は保存されることをもたらすのに十分である、収集エンクロージャと、
前記収集エンクロージャを加熱、及び/又は冷却するように構成された温度制御素子と
を含む、粒子捕捉装置。
【請求項2】
前記開口部の境界間の面積によって、入口面積が規定され、前記粒子が衝突する前記1以上の実質的に平滑な内部表面の表面積によって、内部衝突面積が規定され、前記入口面積に対する前記内部衝突面積の比が、20:1よりも大きい、請求項1に記載の粒子捕捉装置。
【請求項3】
前記粒子捕捉装置は、粒子捕捉気化器として動作し、
前記温度制御素子は、動作中に前記収集エンクロージャを連続的に加熱するように構成され、
前記粒子が気化されるまで、前記粒子は、複数回にわたって衝突する、請求項1に記載の粒子捕捉装置。
【請求項4】
前記粒子捕捉装置は、粒子捕捉収集器として動作し、
前記温度制御素子は、制御された加熱周期で前記収集エンクロージャを加熱するように構成され、
前記粒子が静止するまで、前記粒子は、複数回にわたって衝突する、請求項1に記載の粒子捕捉装置。
【請求項5】
前記開口部は、入口及び出口開口部の両方であり、同じ開口部を通して、前記集束粒子ビームが前記収集エンクロージャに入り、かつ、気化された粒子が前記収集エンクロージャから出るように構成される、請求項1に記載の粒子捕捉装置。
【請求項6】
前記1以上の実質的に平滑な内部表面は、複数回の衝突を促す幾何学的構成を成して配置された複数の実質的に平滑な内部表面である、請求項1に記載の粒子捕捉装置。
【請求項7】
前記幾何学的構成は、前記複数の実質的に平滑な内部表面上の全ての点に対して、粒子を実質的に均等に分配する、請求項に記載の粒子捕捉装置。
【請求項8】
前記角度は、前記最初の軌道に対して鋭角であり、前記鋭角は、30度未満である、請求項1に記載の粒子捕捉装置。
【請求項9】
前記幾何学的構成は、
前記最初の軌道に対して第1の鋭角を成す向きに配置された前記第1の実質的に平滑な内部表面と、
前記第1の実質的に平滑な内部表面に対して第2の鋭角を成す向きに配置された第2の実質的に平滑な内部表面と、
前記第2の実質的に平滑な表面に対して第3の鋭角を成す向きに配置された第3の実質的に平滑な内部表面と
を含む、請求項に記載の粒子捕捉装置。
【請求項10】
前記第1及び第2の鋭角は、16度であり、前記第3の鋭角は14度である、請求項に記載の粒子捕捉装置。
【請求項11】
前記収集エンクロージャは、1以上の粗面をさらに有する、請求項1に記載の粒子捕捉装置。
【請求項12】
前記粗面は、ワイヤー・エンタングルメント、細孔、又はグリッドのうちの1以上を含む、請求項11に記載の粒子捕捉装置。
【請求項13】
機器においてミクロンサイズ及び/又はサブミクロンサイズの粒子を捕捉するための粒子捕捉装置であって、
開口部を通してミクロン粒子及び/又はサブミクロン粒子を含む集束粒子ビームが前記粒子捕捉装置に入る前記開口部と、
前記開口部に結合された収集エンクロージャであって、前記収集エンクロージャの中に前記集束粒子ビームが受領され、前記収集エンクロージャは、前記粒子が気化され、又は後の気化に備えて静止するまで、前記粒子を複数回にわたって衝突させる幾何学的構成を成して配置された複数の実質的に平滑な内部表面を有し、前記幾何学的構成は、粒子の最初の衝突を受けるために前記集束粒子ビームの最初の軌道上に配置された第1の実質的に平滑な内部表面を含み、前記第1の実質的に平滑な内部表面は、前記最初の軌道に対して第1の鋭角を成す向きに配置され、前記第1の鋭角は、30度未満である、収集エンクロージャと、
前記収集エンクロージャを加熱、及び/又は冷却するように構成された温度制御素子と
を含む、粒子捕捉装置。
【請求項14】
前記粒子捕捉装置は、粒子捕捉気化器として動作し、前記温度制御素子は、動作中に前記収集エンクロージャを連続的に加熱するように構成される、請求項13に記載の粒子捕捉装置。
【請求項15】
前記粒子捕捉装置は、粒子捕捉気化器として動作し、前記温度制御素子は、制御された加熱周期で前記収集エンクロージャを加熱するように構成される、請求項13に記載の粒子捕捉装置。
【請求項16】
前記開口部は、入口及び出口開口部の両方であり、同じ開口部を通して、前記集束粒子ビームが前記収集エンクロージャに入り、かつ、気化された粒子が前記収集エンクロージャから出るように構成される、請求項13に記載の粒子捕捉装置。
【請求項17】
前記幾何学的構成は、
前記第1の実質的に平滑な内部表面に対して第2の鋭角を成す向きに配置された第2の実質的に平滑な内部表面と、
前記第2の実質的に平滑な表面に対して第3の鋭角を成す向きに配置された第3の実質的に平滑な内部表面と
をさらに含む、請求項14に記載の粒子捕捉装置。
【請求項18】
機器においてミクロンサイズ及び/又はサブミクロンサイズの粒子を捕捉するための方法であって、
開口部を通してミクロン粒子及び/又はサブミクロン粒子を含む集束粒子ビームを粒子捕捉装置の収集エンクロージャに入れ、
前記粒子を前記収集エンクロージャの実質的に平滑な内部表面に対して複数回にわたって衝突させ、粒子の最初の衝突が、前記収集エンクロージャの第1の実質的に平滑な内部表面に対するものであり、前記最初の衝突によって、前記粒子の運動量は減少されるが、前記粒子の前進速度ベクトル成分の方向は保存され、
前記収集エンクロージャを加熱し、前記粒子を気化させること
を含む方法。
【請求項19】
前記集束粒子ビームが前記収集エンクロージャに入ったときと同じ開口部を通して、気化された粒子を前記収集エンクロージャから除去すること
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府の実施権
本発明は、エネルギー省により授与された契約第DE−SC0001673号に基づく政府支援のもとでなされた。米国政府は、本発明における特定の権利を有している。
【0002】
技術分野
本開示は、概して、エアロゾル分析器及び他の粒子測定機器に関し、より具体的には、エアロゾル分析器及び他の粒子測定機器において使用可能な粒子捕捉装置に関する。
【背景技術】
【0003】
背景情報
内燃機関、石化燃料発電所、塗装/除去設備、ガス放電ボイラーの運転、及び他の人為的原因及び生物起源の原因から発生する大気中の微細なエアロゾルは、気候や人の健康に重大な影響を及ぼすことが知られている。こうしたエアロゾルは、様々なサイズ分布、及び化学組成を有するミクロンサイズ、及びサブミクロンサイズの粒子からなる。こうした粒子は、日光を散乱又は吸収することにより気候に直接的に影響を及ぼすことがあり、また、雲で覆われた範囲を変化させることにより気候に間接的に影響を及ぼすことがある。さらに、こうした粒子は、ぜんそく、肺がん、心血管疾患、呼吸器疾患、及び他の健康状態のような健康問題の一因となることがある。気候や人の健康に及ぼす影響を考えると、ミクロンサイズ、及びサブミクロンサイズの粒子からなる大気中の微細なエアロゾルは、広範な研究及びモニタリングの対象である。
【0004】
大気中の微細なエアロゾルの粒子サイズ分布、及び化学組成を判定するために、様々な異なるタイプのエアロゾル分析器、及び他の粒子測定機器が開発されている。あるタイプの機器では、集束粒子ビームが生成され、略平坦な収集面に差し向けられる。粒子が収集面に衝突すると、その一部は保持される。保持された粒子は気化され、その結果得られた気体状粒子は検出器に与えられ、結果が生成される。そのような機器によれば、貴重な情報が得られる場合があるが、一般的設計は、種々の欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的設計の一つの欠点は、粒子収集効率が低いことである。収集面に衝突する粒子のうちの相当な割合は、気化され、分析されるのではなく、単にバウンドし(すなわち、衝突し、跳ね返り)、失われる。粒子収集効率が低いことにより、機器の全体的処理能力は、制限される場合がある。粒子収集効率を高めるために種々の試みが行われているが、そうした試みは、結果を混合した。
【0006】
一部の試みは、粒子のバウンドを低減するために、粒子の性質を変化させることに重点を置いている。粒子が収集面に衝突する前に、粒子に変更を加える。試みによっては、グリースを塗布したプレート衝突部材を使用する等、衝突面に変更を加えることに重点を置くものもある。ただし、粒子のバウンドは、複雑な現象である。サイズ、化学組成、相(例えば、液体又は固体)、衝突速度等を含む広く様々な要因により、影響を受ける。そのような複雑性に鑑みれば、粒子や衝突面の性質に変更を加えて粒子のバウンドを低減することは、非常に難しい。
【0007】
試みによっては、低い粒子収集効率を補うために、補正を適用することに重点を置くものもある。粒子のバウンドによって発生する質量のロス、又は濃度のロスを補うために、経験的に決定された補正要素を結果に適用する場合がある。ただし、適切な補正要素を決定することは、非常に難しい場合がある。また、補正要素は、低い粒子収集効率の根本的問題を、単に隠すだけで、解決しない。
【0008】
したがって、とりわけ、エアロゾル分析器及び他の粒子測定機器において粒子収集効率を向上させるために使用可能な改良技術が、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
例示的実施形態において、エアロゾル分析器及び他の粒子測定機器における粒子収集効率は、粒子が収集される(例えば、気化され、又は静止する)まで複数回の衝突を使用して粒子の運動量を減少させる粒子捕捉装置によって、向上される。粒子収集装置は開口部を有し、開口部を通して、集束粒子ビームは粒子収集装置に入る。収集エンクロージャは、開口部に結合されるとともに、1以上の内部表面を有し、当該1以上の内部表面に対して、集束粒子ビームの粒子は衝突する。エンクロージャ内で粒子が複数回にわたって衝突することを促すために、内部表面に1以上の特徴が使用され、それによって粒子は、開口部を通して漏出するのではなく、気化され、又は静止する。
【0010】
複数回の衝突を促すために、開口部の入口面積に対する収集エンクロージャの内部衝突面積の比は、最大化される場合がある。内部衝突面積は、収集エンクロージャの内部表面の表面積によって規定される。入口面積は、開口部の境界によって規定される。比は、1:1よりも大きくなければならず、好ましくは20:1よりも大きくなければならない。一実施形態において、比は、約37:1である。収集エンクロージャの内部表面に特殊な幾何学的構成を使用することによって、比は、最大化される場合がある。また、収集エンクロージャの内部表面の表面性質を変化させることによって、比は、最大化される場合がある。さらに、2つのアプローチの組み合わせが使用される場合もある。
【0011】
種々の追加的特徴及び代替が実施される場合があることを、理解すべきである。この概要は、単に読者に対する簡単な紹介を目的とするものであり、本明細書において言及される種々の例が、本発明の全態様をカバーすることを明示若しくは暗示するものでもなければ、言及される種々の例が本発明の必要な態様、すなわち必須の態様であることを明示若しくは暗示するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
下記の説明では、例示的実施形態に関する添付の図面が参照される。
図1】例示的粒子捕捉装置を実施することが可能な例示的エアロゾル分析器を示す概略図である。
図2】幾何学的構成を使用して複数回の衝突を促す例示的粒子捕捉装置を示す斜視図である。
図3図2の例示的粒子捕捉装置を示す第1の断面図である。
図4図3において主軸J−Jに沿って切断して見たときの、図2及び図3の例示的粒子捕捉装置の第2の断面図である。
図5図4における領域Kの詳細を示す、図2図4の例示的粒子捕捉装置を示す拡大断面図である。
図6図2図5の例示的粒子捕捉装置における例示的な単一粒子軌道を示すレイトレーシングモデルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例示的実施形態の詳細な説明
図1を参照すると、例示的エアロゾル分析器100は、3つの主部、すなわち、エアロゾル・サンプリング室110、粒子分粒室120、及び粒子成分検出室130を含む場合がある。エアロゾル・サンプリング室110は、ミクロン粒子及び/又はサブミクロン粒子を含む粒子含有気体(例えば、大気)を引き込み、集束粒子ビーム115を生成する。一実施形態において、エアロゾル・サンプリング室110は、真空装置の吸引を受けた状態にある一連のオリフィスレンズを含む。オリフィスレンズは、粒子を集束させ、超音速の気体膨脹及び粒子加速を制御し、集束粒子ビーム115を形成する働きをする。集束粒子ビーム115は、粒子分粒室120に渡される。粒子分粒室120において、粒子は、真空中への膨張によって生じる、粒子のサイズ依存速度プロファイルにしたがって分離される。一構成において、粒子分粒室120は、粒子に電荷を付与する粒子変化部(図示せず)と、電界によって粒子を偏向させる偏向部(図示せず)とを含む場合がある。偏向の大きさは、粒子サイズ(サイズ依存速度、サイズ依存電荷、及び印加電圧)に関連する。狭い範囲内のサイズの粒子は、軸外スリットを通過させられ、粒子分粒室を出て、粒子成分検出室130へと渡される。別の構成として、粒子分粒室120は、集束粒子ビーム115を交互に遮断または通過させ、一連のビームパルスを生成するビーム・チョッパー(図示せず)を含む場合がある。速度が粒子サイズに反比例する場合、粒子は、速度分散を受ける。したがって、各ビームパルスが進行する際に、ビームパルスは、進行方向に拡散し、小さい粒子ほど、大きい粒子よりも先に到着することになる。これによって、並べ替えられたサイズの粒子が、粒子成分検出室130へと輸送される。
【0014】
粒子検出室130は、粒子捕捉装置140及び検出器150を含む。集束粒子ビームは、開口部160を通して粒子捕捉装置140に入る。その後、集束粒子ビーム115は、開口部160に結合された収集エンクロージャ170の中に受領される。実施形態によっては、粒子捕捉装置140の温度変化素子180は、収集エンクロージャ170を加熱、及び/又は冷却するように構成される場合がある。温度変化素子180は、抵抗性加熱素子、熱電冷却素子(例えば、ペルチェ・クーラー)、閉ループ循環系を通して熱い液体または冷たい液体を循環させる加熱システムまたは冷却システム、COレーザーのような発光加熱源、あるいは、エンクロージャ170の温度を変化させる機能を備えた他のタイプの素子を含む場合がある。
【0015】
粒子が(例えば、温度変化素子180からの熱によって)気化され、又は(例えば、制御された加熱周期でのレーザー気化に備えて)静止するまで、粒子は実質的に、粒子捕捉装置140の収集エンクロージャ170の中に保持される。一般に、粒子捕捉装置140は、実施形態によって、粒子捕捉気化器として動作する場合もあれば、粒子捕捉収集器として動作する場合もある。粒子捕捉装置140が粒子捕捉気化器として動作する一実施形態において、温度変化素子180は、収集エンクロージャ170を連続的に加熱し、収集された粒子を実質的に即座に(すなわち、できるだけ早く)気化させる場合がある。粒子捕捉装置140が粒子捕捉収集器として動作する一実施形態において、温度変化素子180は、制御された加熱周期を実施する場合があり、加熱の周期は、相対的冷却の周期を間に挟んで分散される場合がある。入ってきた粒子はまず、冷たい収集エンクロージャ170に遭遇するため、収集された粒子は、直ぐには気化されない。収集された粒子は、後に加熱を受け、気化される場合がある。粒子の揮発性を調べ、粒子成分に関する詳しい情報を得ることを可能にするために、加熱周期は正確に制御される場合がある。
【0016】
気化された粒子190は、検出器150に渡される。検出器150は、質量分析器であってもよい。一実施形態において、気化された粒子は、集束粒子ビームが当初入ってきたときと同じ開口部160を通して、検出器に渡される。すなわち、気化された粒子190は、粒子が集束粒子ビーム115として入ってきたときと同じ軸に沿って、粒子捕捉装置140を出る。開口部160は、検出器150の検出領域内に配置されている。検出器150が質量分析器を含む一実施形態では、開口部は、質量分析器のイオン形成室内に配置される場合がある。
【0017】
上で述べたように、従来の収集面は、低い粒子収集効率による影響を受けていた。相当な割合の粒子は、単に収集面でバウンドして失われ、したがって、バウンドした粒子が、気化されたり、後の気化に備えて収集されたりすることはない。粒子のバウンドを抑止する試みの代わりに、粒子捕捉装置140は、粒子がバウンドすることを想定して、粒子が収集される(すなわち、気化され、または静止する)まで、複数回の衝突を使用して粒子の運動量を減少させる。粒子捕捉装置140の収集エンクロージャ170は1以上の内部表面を有し、当該1以上の内部表面に対して、粒子は、複数回にわたって衝突する。内部衝突面積は、内部表面の表面積によって規定される。入口面積は、粒子捕捉装置140の開口部160の境界によって規定される。粒子が失われるのではなく、収集されることを可能にするために、入口面積に対する内部衝突面積の比(本明細書では、「捕捉効率」と呼ばれる)は、実用上の制約のもとで最大化される場合がある。捕捉効率は、1:1よりも大きくなければならず、好ましくは、20:1よりも大きくなければならない。一実施形態において、捕捉効率は、約37:1である。
【0018】
入口面積を低減することによって、捕捉効率は、いくらか向上される場合がある。開口部160の最小サイズは、集束粒子ビームの全体幅の入力が可能となる集束粒子ビームの幅によって定義される場合がある。内部衝突面積を最大化することによって、捕捉効率は、さらに大幅に向上される場合がある。収集エンクロージャ170の内部表面の幾何学的構成によって、及び/又は、収集エンクロージャ170の内部表面の表面性質によって、内部衝突面積は、最大化される場合がある。鏡面反射が優位である場合、幾何学的構成が使用される場合がある。実質的に平滑な内部表面を備えることにより、鏡面反射によって、粒子を比較的予測可能な態様でバウンドさせることができる。内部表面の幾何学的構成によって鏡面反射を増加させることができ、それによって、粒子が気化され、又は静止するまで、粒子を内部表面に繰り返し衝突させるようにすることができる。
【0019】
図2図5を参照すると、複数回の衝突を促す幾何学的構成の一例が示されている。この例では、粒子捕捉装置140は、略円筒形の構成を有し、主軸J−Jを中心として概ね対称になっている。粒子捕捉装置140の正面部210は、開口部160、及び収集エンクロージャ170を含む。正面部210は、一片の固体材料から構成される場合があり、例えば、モリブデンまたはタングステンのような耐火性材料から構成される場合がある。粒子捕捉装置140のヒーター本体部220は、温度変化素子として機能し、この場合、ワイヤ240に電流を印加すると、抵抗加熱が行われる。ヒーター本体部220もまた、例えば、モリブデンまたはタングステンのような一片の固体材料から構成される場合がある。粒子捕捉装置140の熱支持部230は、ヒーター本体部220に接続され、ワイヤ240の一部を取り囲む薄肉チューブである。連続的または周期的な加熱を行うことにより、粒子捕捉装置140は、上で述べたように、粒子捕捉気化器として、または粒子捕捉収集器として機能する場合がある。ヒーター本体部220の内部に、又は、ヒーター本体部220の正面に設けられた埋め込み熱電対(図示せず)によって、温度測定が可能となる。
【0020】
集束粒子ビームは、開口部160に入り、収集エンクロージャ170の中に受領される場合がある。図3図5に示したような収集エンクロージャ170は、複数の実質的に平滑な内部表面250、260、270を有し、それらの内部表面に、集束粒子ビームの粒子は衝突し、その一部はバウンドする(例えば、跳ね返る)。場合によっては、内部表面250、260、270は、複数回の衝突を促すとともに、粒子が気化され、又は静止する前に粒子が開口部160を通して漏出してしまう可能性を最小化するように構成される。この幾何学的構成は、光を全ての角度にわたって分配する光学の分野における積分球に類似した態様で、粒子を内部表面250、260、270上の全ての点に実質的に均等に分配する働きをする場合がある。
【0021】
図示した例では、第1の内部表面250は、粒子の最初の衝突を受ける位置に配置される。第1の内部表面250は、粒子捕捉装置140の主軸J−Jに対して鋭角(惹いては、集束粒子ビームの軌道に対して鋭角)を成す向きに配置され、(分光反射を想定した場合)、最初の衝突によって、粒子の運動量は減少されるが、粒子の前進速度ベクトル成分の方向は保存されるように構成される。すなわち、この向きは、(分光反射を想定した場合)、粒子を開口部160に向けてバウンドさせるのではなく、粒子を収集エンクロージャ170の中へ向けてさらにバウンドさせる。好ましくは、主軸J−J(及び、粒子ビーム軌道)と第1の内部表面250との間の角度は、30度未満である。角度を浅くするほど、効率は高くなるが、粒子捕捉装置140は大きくなる場合がある。一実施形態において、主軸J−J(及び、粒子ビーム軌道)と第1の表面250との間の角度は、16度である。第1の表面250は、実質的に円錐形である場合があり、その頂点角度は16度である場合がある。
【0022】
第2の内部表面260は、第1の内部表面250に対して鋭角を成す向きに配置され、(分光反射を想定した場合)、次の衝突を受けるように構成される。この向きも同様に、(分光反射を想定した場合)、粒子を開口部160に向けてバウンドさせるのではなく、粒子を収集エンクロージャ170の中へ向けてさらにバウンドさせる。一実施形態において、第2の内部表面260は、主軸J−Jに対して平行であり、第2の内部表面260と第1の内部表面250との間の角度が、同じく16度になるように構成される。第2の内部表面260は、実質的に円筒形である場合がある。
【0023】
粒子は、第1の内部表面250と第2の内部表面260との間で繰り返しバウンドし、最終的に、第3の内部表面270に衝突する場合がある。第3の内部表面270は、第2の内部表面260に対して鋭角を成す向きに配置され、開口部160へ向かう方向に移動している粒子を保持するように構成される。一実施形態において、第2の内部表面260と第3の内部表面270との間の角度は、14度である。第3の内部表面270は、円錐台(円錐切頭体)のような持続可能な形に形成される場合があり、その頂点に開口部160を有する場合がある。
【0024】
分光反射は理想的な例であると理解すべきであり、たとえ実質的に平滑な表面を使用した場合であっても、粒子は、その跳ね返り方に幾らかのばらつきを示す。例示した粒子捕捉装置140の例示した幾何学的構成によれば、このばらつきにもかかわらず、漏出する粒子の数が最小化される場合がある。図6に示した単一粒子軌道610のレイトレーシングモデル600を参照すると、粒子は、収集エンクロージャ170に入った後、複数回の衝突を受け、最終的に、気化され、又は静止する可能性が高いことが見てとれる。
【0025】
上で述べたように、特殊な幾何学的構成の代わりに、または、特殊な幾何学的構成に加えて、収集エンクロージャ170の1以上の内部表面の表面性質を使用して、複数回の衝突を促してもよい。1以上の内部表面に表面粗さを付与した場合、衝突した粒子は、より不規則な反射を受ける場合があり、拡散反射(乱反射)が優勢になる場合がある。表面粗さの付与は、ワイヤー・エンタングルメント(例えば、「鳥の巣」ワイヤー)を付加すること、多孔質材料(多孔質材料は、例えば、種々の孔及び割目をもたらす)から表面を構成すること、ナノ・テクノロジー・プロセス若しくはエッチング・プロセスにより生成されたマイクロスケール若しくはナノスケールのグリッドを付与すること、又は、表面粗さを増加させる何らかの他の手段により行われる場合がある。それらによって得られる表面粗さ、及び拡散反射を、特殊な幾何学的構成とともに使用することで、粒子収集効率を向上させることができる場合がある。ただし、拡散反射は、粒子収集効率を制限する場合もあり、場合によっては、望ましくないことも分かっている。
【0026】
上記の説明は、本開示の種々の例示的実施形態を説明しているが、開示の意図した思想及び範囲から外れることなく、多数の修正、及び/又は追加がなされる場合もあることは明らかである。
【0027】
例えば、上では、粒子装置140が、大気中の微細なエアロゾルを測定するように設計された例示的エアロゾル分析器100において使用される場合があることを説明したが、装置140は、大気以外ソースから得られた粒子を測定する他の粒子測定機器を含む様々な他のタイプの機器においても、使用される場合があるものと理解すべきである。そのような粒子測定機器は、例えば粒子サイズの関数として結果を生成する機能のような、例示したエアロゾル分析器100の機能の一部を欠いている場合があり、また、例示したエアロゾル分析器100の機能を超えて付加的機能を有している場合がある。
【0028】
さらに、モリブデン及びタングステンのような特定の材料、及び、円筒、円錐、及び円錐台のような特定の形状について上で説明したが、粒子捕捉装置140、及び具体的に収集エンクロージャ170は、様々な異なる材料から構成される場合があり、本明細書において説明された目的に適する様々な異なる形状を成すように形成される場合があるものと、理解すべきである。一般に、上記の説明は、単に例として解釈されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6