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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302561
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】珠玉宝石鑑定方法及び機器
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20180319BHJP
   G01N 21/87 20060101ALN20180319BHJP
【FI】
   G01N21/65
   !G01N21/87
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-542925(P2016-542925)
(86)(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公表番号】特表2017-502296(P2017-502296A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】CN2014094982
(87)【国際公開番号】WO2015096780
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年7月29日
(31)【優先権主張番号】201310741368.9
(32)【優先日】2013年12月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503414751
【氏名又は名称】同方威視技術股▲分▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】502192546
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】趙 自然
(72)【発明者】
【氏名】張 麗
(72)【発明者】
【氏名】耿 瑩瑩
(72)【発明者】
【氏名】王 紅球
(72)【発明者】
【氏名】易 裕民
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−043472(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0292376(US,A1)
【文献】 実開昭52−166583(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0125998(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0271750(US,A1)
【文献】 特表2010−527017(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0297254(US,A1)
【文献】 特開平01−161123(JP,A)
【文献】 特表平10−501333(JP,A)
【文献】 特開2008−129017(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0064259(US,A1)
【文献】 特表2013−522648(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0104061(US,A1)
【文献】 特開2008−268059(JP,A)
【文献】 米国特許第06583879(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)被検品をステージの載置表面上の光出射孔の箇所に配置し、載置表面の下方に位置する光学プローブを利用し、励起光を前記光出射孔を介して前記被検品に出射し、かつ被検品からのラマン光を収集するステップと、
(b)収集した被検品のラマン光に基づいて被検品のラマンスペクトル曲線を取得するステップと、
(c)このラマンスペクトル曲線を珠玉宝石の標準ラマンスペクトログラムライブラリーと比較することで被検品を鑑定するステップと、
(d)別の被検品をステージの載置表面上の別の光出射孔の箇所に配置し、ステージを光学プローブに対して水平方向に移動させることで、前記光学プローブが、励起光を載置表面上の前記別の光出射孔を介して前記別の被検品に出射し、かつ前記別の被検品からのラマン光を収集するステップと、
(e)収集した前記別の被検品のラマン光に基づいて前記別の被検品のラマンスペクトル曲線を取得するステップと、
(f)前記別の被検品のラマンスペクトル曲線を珠玉宝石の標準ラマンスペクトログラムライブラリーと比較することで前記別の被検品を鑑定するステップと、
を含む、珠玉宝石鑑定方法。
【請求項2】
上記ステップ(a)の前に、
(o)既知成分の珠玉宝石試料のラマンスペクトル及び/又は模倣品のラマンスペクトルを測定することで、標準ラマンスペクトルを取得して標準ラマンスペクトログラムライブラリーを作成するステップ、
を更に含む、請求項1に記載の珠玉宝石鑑定方法。
【請求項3】
前記ステップ(c)は、
(c1)前記ラマンスペクトル曲線と標準ラマンスペクトログラムライブラリーにおける標準ラマンスペクトル曲線との類似度を算出するステップ、
を含む、請求項1又は2に記載の珠玉宝石鑑定方法。
【請求項4】
前記類似度は、以下のように定義され、
【数1】
ただし、A(x)は被検品のラマンスペクトル曲線関数であり、B(x)は標準ラマンスペクトル曲線関数である、
請求項に記載の珠玉宝石鑑定方法。
【請求項5】
前記類似度は、以下のように定義され、
【数2】
ただし、A(x)は被検品のラマンスペクトル曲線関数であり、B(x)は標準ラマンスペクトル曲線関数であり、A, A, …, A及びB, B, …, BはそれぞれA(x)及びB(x)のn個のサンプリング点である、
請求項に記載の珠玉宝石鑑定方法。
【請求項6】
前記類似度は、以下のように定義され、
【数3】
ただし、A(x)は被検品のラマンスペクトル曲線関数であり、B(x)は標準ラマンスペクトル曲線関数であり、A, A, …, A及びB, B, …, BはそれぞれA(x)及びB(x)のn個のサンプリング点である、
請求項に記載の珠玉宝石鑑定方法。
【請求項7】
前記ステップ(c)は、ステップ(c1)の前に、
(c01)前記ラマンスペクトル曲線から1つ以上の特徴的なピークを捜索するステップと、
(c02)見つけ出された特徴的なピークのピーク位置及びピーク幅を算出し、かつ前記ピーク位置及びピーク幅を標準ラマンスペクトル曲線における特徴的なピークのピーク位置及びピーク幅と比較することで、ステップ(c1)で算出する必要のある標準ラマンスペクトル曲線を予め選択するステップと、
を更に含む、請求項に記載の珠玉宝石鑑定方法。
【請求項8】
ステージと、光学プローブと、データ処理装置とを含む珠玉宝石鑑定機器において、
前記ステージは、被検品を載置する載置表面を有し、前記載置表面には1つ以上の光出射孔が設けられ、前記光出射孔は1つ以上の測定位置に対応し、
前記光学プローブは、前記載置表面の下方に位置するものであり、励起光を前記載置表面の下方から前記光出射孔のうちの1つを介してその対応する測定位置に出射し、かつ該測定位置から、被検品からのラマン光を収集し、
前記データ処理装置は、光学プローブが収集したラマン光に基づいてラマンスペクトル曲線を生成し、このラマンスペクトル曲線を珠玉宝石の標準ラマンスペクトログラムライブラリーと比較することで被検品を鑑定し、
前記載置表面は、第1の測定位置に対応する第1の光出射孔と、第2の測定位置に対応する第2の光出射孔とを有し、前記ステージは、光学プローブに対して水平方向に移動することで、前記光学プローブが対応する測定位置を、第1の測定位置と第2の測定位置との間で切り替える、
珠玉宝石鑑定機器。
【請求項9】
防護板と、防護板を載置するスライドレールとをさらに含み、
前記防護板は、前記載置表面の上方に位置するとともに、前記スライドレールに沿って縦方向に摺動することができる、
請求項に記載の珠玉宝石鑑定機器。
【請求項10】
前記光出射孔の直径は、拡大縮小可能である、
請求項に記載の珠玉宝石鑑定機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2013年12月27日に出願された、出願番号が201310741368.9である中国特許出願に基づき優先権を主張し、その全ての内容をここに援用する。
【0002】
本発明は珠玉宝石検出の技術分野に関し、特にラマンスペクトル技術を用いて珠玉宝石を鑑定する方法及び機器に関する。
【背景技術】
【0003】
物質・文化生活レベルの向上につれて、珠玉宝石に対するニーズが日増しに増えていることは、珠玉宝石市場の繁栄発展を促進している。しかしながら、珠玉宝石市場が拡大しているうち、さまざまな人工宝石は市場の正常的な発展を妨害し、偽物を本物といって売ったり、不良品を良品といって売ったりする現象が次々と現れて尽きない。珠玉宝石の鑑定はますます重要になっている。伝統的な珠玉宝石の鑑定方法は、ルーペで観察すること、硬度を測定すること、屈折率を測定すること、及び顕微鏡で観察することなどを含む。これらの方法はパラメータが単一であり、精確度が低く、物質に対して特定的な識別を行うことができないとともに、これらの技術は、鑑定者の知識や経験に大きく依存する。新規の珠玉宝石鑑定方法は、熱反応、化学反応、モースハードネスの確認、熱伝導性の確認、赤外線・紫外線・可視光・X線回折分析などを含む。これらの方法は、被検品に破壊性を有し、珠玉宝石を傷つけずに検出するには不適であるか、器械が貴重であり、可動性が悪く、メンテナンスが細かく複雑であり、さらに操作が複雑であり、マイクロゾーン分析には不適であるなどの欠点を有する。したがって、操作が簡単であり、結果が正確である機器及び方法が珠玉宝石鑑定に求められている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ラマンスペクトル測定を用いて、迅速に、効率的で正確に被検品の真偽を鑑定することができる珠玉宝石鑑定方法及び機器を提供することを目的とする。
【0005】
上記発明目的を実現するために、本発明の技術案は以下の形態によって実現される。
【0006】
本発明の第1の案は、
(a)被検品をステージの載置表面上の光出射孔の箇所に配置し、載置表面の下方に位置する光学プローブを利用し、励起光を前記光出射孔を介して前記被検品に出射し、かつ被検品からのラマン光を収集するステップと、
(b)収集した被検品のラマン光に基づいて被検品のラマンスペクトル曲線を取得するステップと、
(c)このラマンスペクトル曲線を珠玉宝石の標準ラマンスペクトログラムライブラリーと比較することで被検品を鑑定するステップと、
を含む、珠玉宝石鑑定方法を提供する。
【0007】
さらに、前記珠玉宝石鑑定方法は上記ステップ(a)の前に、
(o)既知成分の珠玉宝石試料のラマンスペクトル及び/又は模倣品のラマンスペクトルを測定することで、標準ラマンスペクトルを取得して標準ラマンスペクトログラムライブラリーを作成するステップ、
を更に含んでもよい。
【0008】
また、前記珠玉宝石鑑定方法は、
(d)別の被検品をステージの載置表面上の別の光出射孔の箇所に配置し、ステージを光学プローブに対して水平方向に移動させることで、前記光学プローブが、励起光を載置表面上の前記別の光出射孔を介して前記別の被検品に出射し、かつ前記別の被検品からのラマン光を収集するステップと、
(e)収集した前記別の被検品のラマン光に基づいて前記別の被検品のラマンスペクトル曲線を取得するステップと、
(f)前記別の被検品のラマンスペクトル曲線を珠玉宝石の標準ラマンスペクトログラムライブラリーと比較することで前記別の被検品を鑑定するステップと、
を更に含んでもよい。
【0009】
さらに、前記ステップ(c)は、
(c1)前記ラマンスペクトル曲線と標準ラマンスペクトログラムライブラリーにおける標準ラマンスペクトル曲線との類似度を算出するステップ、
を更に含んでもよい。
【0010】
具体的には、前記類似度を以下のように定義することができる。
【数1】
ただし、A(x)は被検品のラマンスペクトル曲線関数であり、B(x)は標準ラマンスペクトル曲線関数である。
【0011】
具体的には、前記類似度を以下のように定義することができる。
【数2】
ただし、A(x)は被検品のラマンスペクトル曲線関数であり、B(x)は標準ラマンスペクトル曲線関数であり、A, A, …, A及びB, B, …, BはそれぞれA(x)及びB(x)のn個のサンプリング点である。
【0012】
具体的には、前記類似度を以下のように定義することができる。
【数3】
ただし、A(x)は被検品のラマンスペクトル曲線関数であり、B(x)は標準ラマンスペクトル曲線関数であり、A, A, …, A及びB, B, …, BはそれぞれA(x)及びB(x)のn個のサンプリング点である。
【0013】
具体的には、前記ステップ(c)はステップ(c1)の前に、
(c01)前記ラマンスペクトル曲線から1つ以上の特徴的なピークを捜索するステップと、
(c02)見つけ出された特徴的なピークのピーク位置及びピーク幅を算出し、かつ前記ピーク位置及びピーク幅を標準ラマンスペクトル曲線における特徴的なピークのピーク位置及びピーク幅と比較することで、ステップ(c1)で算出する必要のある標準ラマンスペクトル曲線を予め選択するステップと、
を更に含んでもよい。
【0014】
本発明の別の案は、ステージと、光学プローブと、データ処理装置とを含む珠玉宝石鑑定機器を提供する。
【0015】
前記ステージは、被検品を載置する載置表面を有し、前記載置表面には1つ以上の光出射孔が設けられ、前記光出射孔は1つ以上の測定位置に対応し、
前記光学プローブは、前記載置表面の下方に位置するものであり、励起光を前記載置表面の下方から前記光出射孔のうちの1つを介してその対応する測定位置に出射し、かつ該測定位置から、被検品からのラマン光を収集し、
前記データ処理装置は、光学プローブが収集したラマン光に基づいてラマンスペクトル曲線を生成し、このラマンスペクトル曲線を珠玉宝石の標準ラマンスペクトログラムライブラリーと比較することで被検品を鑑定する。
【0016】
さらに、前記珠玉宝石鑑定機器は防護板と、防護板を載置するスライドレールとをさらに含み、前記防護板は、前記載置表面の上方に位置するとともに、前記スライドレールに沿って縦方向に摺動することができる。
【0017】
さらに、前記光出射孔の直径は、拡大縮小可能である。
【0018】
また、前記載置表面は、第1の測定位置に対応する第1の光出射孔と、第2の測定位置に対応する第2の光出射孔とを有し、前記ステージは、光学プローブに対して水平方向に移動することで、前記光学プローブが対応する測定位置を、第1の測定位置と第2の測定位置との間で切り替える。
【0019】
本発明の上述技術案のうちの少なくとも1つは、ステージ上の載置表面の光出射孔と載置表面の下方の光学プローブとの組合せにより、珠玉宝石に対する迅速的な検出を実現することができる。このような技術案により、珠玉宝石試料に対する効率的で、簡単で、正確な鑑定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の1実施例に係る珠玉宝石鑑定機器の斜視図を模式的に示す。
図2】本発明の1実施例に係る珠玉宝石鑑定機器の側面図を模式的に示す。
図3】本発明の1実施例に係る珠玉宝石鑑定方法のフローチャートを模式的に示す。
図4】本発明の別の1実施例に係る珠玉宝石鑑定方法のフローチャートを模式的に示す。
図5】本発明の1実施例に係る被検品のラマンスペクトル曲線と標準ラマンスペクトログラムライブラリーとを比較するステップのフローチャートを模式的に示す。
図6】本発明の実施例に係る珠玉宝石鑑定方法の鑑定例を示す。
図7】本発明の実施例に係る珠玉宝石鑑定方法の鑑定例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の技術案を実施例にてさらに具体的に説明する。明細書において、同じ又は類似の符号は同じ又は類似の部品を示す。下記の図面を参照しながらの実施形態に対する説明は、本発明の全体的な発明構想を釈明するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。
【0022】
図1図2は本発明の1実施例に係る珠玉宝石鑑定機器の斜視図及び側面図を模式的に示す。この珠玉宝石鑑定機器20は、ステージ21、光学プローブ22及びデータ処理装置(図示せず)を含んでもよい。前記ステージ21(例えばブラケット、トレー、パレットなどの形式であってもよい)は、被検品26を載置するための載置表面211を有してもよく、前記載置表面211には、測定位置に対応する光出射孔212、213が設けられている。前記光出射孔は1つ以上であり、相応的には、それに対応する測定位置も1つ以上であってもよい。前記光学プローブ22は前記載置表面211の下方に位置するものであり、励起光を前記載置表面211の下方から前記光出射孔212、213を介して測定位置に出射し、かつ測定位置から、被検品26からのラマン光を収集する。前記データ処理装置は、光学プローブ22が収集したラマン光に基づいてラマンスペクトル曲線を生成し、このラマンスペクトル曲線を珠玉宝石の標準ラマンスペクトログラムライブラリーと比較することで被検品26を鑑定することができる。
【0023】
本発明の実施例において、被検品26(例えば連なり真珠)は載置表面211上に配置され、光学プローブ22は下方から励起光を載置表面211上の光出射孔212、213を介して被検品26に照射する。光学装置を被検品の上方に配置する伝統的な方式に比べて、光学装置が被検品26の配置を妨害することを避けるとともに、光学プローブ22の光出射口と被検品26との距離を安定的に保持することができる。例えば、励起光を光出射孔212、213の近傍に集光させることができる。これで、被検品26の複数回の測定、複数の被検品26の測定が同様な照射光強度で行われることを正確に保証することができ、光学プローブ22と被検品26との相対的な位置を毎回調整する必要がない。したがって、測定の不均一による誤差を軽減できる。かつ、光学プローブ22と被検品26との相対的な位置を毎回調整する必要がないため、この珠玉宝石鑑定機器20は連なった被検品26の迅速な検出に用いられやすい。例えば、珠のつながりについて、載置表面211上において珠のつながりを移動させ、珠のつながりにおける珠を順に光出射孔212、213の箇所に配置すれば、珠のつながりにおける各珠の迅速な検出を実現することができる。
【0024】
例としては、光学プローブ22の光学システムは光学分立素子から構成してもよく、あるいは、光学プローブ22は光ファイバプローブであってもよい。例としては、光学プローブ22はレーザ光源を含んでもよく、あるいは、レーザ光源は光学プローブ22と分立したものであってもよい。一例においては、用いられるレーザ光の波長は785nmであってもよく、ほかの波長であってもよい。例としては、光学プローブ22はレーザ光駆動や制御に用いられるモジュールのような、必要な制御モジュールを含んでもよく、あるいは、当該制御モジュールは光学プローブ22の外部に設けられてもよく、例えばデータ処理装置内に設けられる。
【0025】
例としては、前記データ処理装置は、比較に用いられる既知成分の珠玉宝石試料の標準ラマンスペクトログラム及び模倣品(例えばプラスチック、ガラス等)の標準ラマンスペクトログラムのライブラリーを有してもよい。前記データ処理装置は、使用者が標準ラマンスペクトログラムライブラリーを採集、作成又は補充することを容易にする専門的なツールを有してもよい。
【0026】
例としては、図1図2に示すように、珠玉宝石鑑定機器20は防護板23と、防護板23を載置するためのスライドレール24とをさらに含んでもよい。前記防護板23は前記載置表面211の上方に位置するとともに、前記スライドレール24に沿って縦方向に摺動することができる。一例においては、防護板23は移動スライダ25上に取り付けられ、移動スライダ25を介してスライドレール24との摺接を実現してもよい。前記防護板23は検出時に載置表面211の上方から光出射孔を遮蔽するためのものであり、励起光が操作者の目を損傷させることを防止する。
【0027】
一例においては、前記光出射孔212、213の直径は拡大縮小可能である。珠玉宝石は、その異なる部分が異なる成分を有する可能性がある。したがって、被検品26のある小さい部分を特別に検出する必要な場合がある。励起光を検出すべき被検品26の部分に精確に入射させ、被検品26のほかの部分の検出結果への妨害を避けるために、光出射孔212、213の直径を縮小させてもよい。被検品26のより大きい部分を検出する必要がある場合、光出射孔212、213の直径を拡大させてより多くの励起光を被検品26に到達させることで、光強度の損失を避けて信号雑音比を高めることができる。
【0028】
上述のように、光出射孔212、213は1つ以上であってもよい。例えば、前記載置表面211は、第1の測定位置に対応する第1の光出射孔212と、第2の測定位置に対応する第2の光出射孔213とを有してもよく、前記ステージ21は、光学プローブ22に対して水平方向に移動することで、前記光学プローブ22が対応する測定位置を、第1の測定位置と第2の測定位置との間で切り替えることができる。したがって、異なる被検品26を異なる光出射孔(例えば第1の光出射孔212、第2の光出射孔213)の箇所に予め配置すれば、被検品を移動せずに、異なる被検品26に対する検出をステージ21の平行移動で切り替えることができる。特に多くの光出射孔が設けられた場合、前記の方法は、迅速検出の効率を高めることに貢献する。例えば、ステージ21の平行移動方向に沿って、両側から被検品26の乗せ/卸しを行い、ステージ21の往復平行移動を利用して被検品26を切り替えて効率を高めることができる。
【0029】
図3は本発明の1実施例に係る珠玉宝石鑑定方法10のフローチャートを模式的に示す。図3における実線枠に示すように、この珠玉宝石鑑定方法10は以下のステップを含んでもよい。
【0030】
ステップ200:被検品26をステージ21の載置表面211上の光出射孔212の箇所に配置し、載置表面211の下方に位置する光学プローブ22を利用し、励起光を前記光出射孔212を介して前記被検品26に出射し、かつ被検品からのラマン光を収集すること;
【0031】
ステップ300:収集した被検品のラマン光に基づいて被検品のラマンスペクトル曲線を取得すること;及び
【0032】
ステップ400:このラマンスペクトル曲線を珠玉宝石の標準ラマンスペクトログラムライブラリーと比較することで被検品を鑑定すること。
【0033】
例としては、図3における点線枠に示すように、この珠玉宝石鑑定方法10は上記ステップ200の前に、以下のステップ100を選択的に含んでもよい。
ステップ100:既知成分の珠玉宝石試料のラマンスペクトル及び/又は模倣品のラマンスペクトルを測定することで、標準ラマンスペクトルを取得して標準ラマンスペクトログラムライブラリーを作成すること。
【0034】
本発明の上記実施例において、標準ラマンスペクトログラムライブラリーは現場で採集されたものであってもよく、前もって収集されたものであってもよく、又は市販されている商業標準ラマンスペクトログラムライブラリーモジュールであってもよい。
【0035】
図4は本発明の別の1実施例に係る珠玉宝石鑑定方法10’を模式的に示しているが、2つ以上の光出射孔を利用している。当該珠玉宝石鑑定方法10’は、図3に示された珠玉宝石鑑定方法10に比べて、その相違点は、さらに以下のステップを含むことにある。
【0036】
ステップ500:別の被検品26をステージ21の載置表面211上の別の光出射孔213の箇所に配置し、ステージ21を光学プローブ22に対して水平方向に移動させることで、前記光学プローブ22が、励起光を載置表面211上の前記別の光出射孔213を介して前記別の被検品26に出射し、かつ前記別の被検品26からのラマン光を収集すること;
【0037】
ステップ600:収集した前記別の被検品26のラマン光に基づいて前記別の被検品26のラマンスペクトル曲線を取得すること;及び
【0038】
ステップ700:前記別の被検品26のラマンスペクトル曲線を珠玉宝石の標準ラマンスペクトログラムライブラリーと比較することで前記別の被検品26を鑑定すること。
【0039】
当業者であれば理解できるように、上記例は2つの光出射孔の場合を例として紹介したが、より多くの光出射孔を採用し、かつステージ21の平行移動によりこれらの光出射孔の間で切り替えることで、異なる被検品26の交換を実現してもよい。前記のように、2つ以上の光出射孔を有する構造を利用すれば、検出効率をさらに高めることができ、迅速検出において特に有利である。
【0040】
図5は上記珠玉宝石鑑定方法10、10’におけるステップ400の例を模式的に示す。この例において、ステップ400は以下のステップを含んでもよい。
【0041】
ステップ403:前記ラマンスペクトル曲線と標準ラマンスペクトログラムライブラリーにおける標準ラマンスペクトル曲線との類似度を算出すること。
【0042】
類似度を算出するには複数種の方法がある。例えば、被検品のラマンスペクトル曲線関数をA(x)とし、標準ラマンスペクトル曲線関数をB(x)とすると、一例においては、式(1)に基づいて両者の類似度を算出することができる。
【数4】
ただし、Corrは被検品のラマンスペクトル曲線関数と標準ラマンスペクトル曲線関数との類似度を示し、「・」はドット積演算を示す。
【0043】
別の一例においては、A(x)とB(x)に対してそれぞれサンプリングすることで、A, A, …, A及びB, B, …, Bで示されるn個のサンプリング点をそれぞれ取得するが、被検品のラマンスペクトル曲線関数と標準ラマンスペクトル曲線関数との類似度Corrを式(2)に基づいて算出することができる。
【数5】
ただし、「・」もドット積演算を示す。
【0044】
別の一例においても、A(x)とB(x)に対してそれぞれサンプリングすることで、A, A, …, A及びB, B, …, Bで示されるn個のサンプリング点をそれぞれ取得するが、被検品のラマンスペクトル曲線関数と標準ラマンスペクトル曲線関数との類似度Corrを式(3)に基づいて算出することができる。
【数6】
【0045】
上記類似度算出はラマンスペクトル曲線全体に対して行われてもよく、ラマンスペクトル曲線における特徴を有する部分に対して行われてもよい。上記ステップ700における別の被検品のラマンスペクトル曲線関数と標準ラマンスペクトル曲線関数との類似度の算出は、上記被検品のラマンスペクトル曲線関数と標準ラマンスペクトル曲線関数との類似度の算出と基本的に同じであるため、ここでは贅言しない。上記は類似度算出の例を与えているが、当業者に知られているほかの類似度算出方法を使用することもできる。
【0046】
被検品のラマンスペクトル曲線関数と標準ラマンスペクトル曲線関数との類似度が予め設定された閾値を超えた場合、被検品の成分と標準ラマンスペクトル曲線の対応する試料の成分とが一致すると判断することができ、被検品に対する鑑定を完成する。逆に、それが予め設定された閾値より低い場合、被検品の成分と標準ラマンスペクトル曲線の対応する試料の成分とが一致しないと判断することができる。この予め設定された閾値は、実際の検出需要、検出器械の精度などの要素に基づいて決められてもよい。
【0047】
図示のように、ステップ400は上記ステップ403の前に、2つのステップをさらに選択的に含んでもよい。即ち、
ステップ401:前記ラマンスペクトル曲線から1つ以上の特徴的なピークを捜索すること;及び
ステップ402:見つけ出された特徴的なピークのピーク位置及びピーク幅を算出し、かつ前記ピーク位置及びピーク幅を標準ラマンスペクトル曲線における特徴的なピークのピーク位置及びピーク幅と比較することで、ステップ403で算出する必要のある標準ラマンスペクトル曲線を予め選択すること。
【0048】
珠玉宝石の種類が多いため、珠玉宝石を鑑定する場合、被検品26のラマンスペクトル曲線を複数種の標準ラマンスペクトル曲線のそれぞれと比較する必要がある可能性がある。各種の標準ラマンスペクトル曲線について類似度の算出を行う場合、算出量が大きいことを招く。上記ステップ401、402によって、ピークの捜索及びピークの選択で被検品26のラマンスペクトル曲線と明らかに異なる標準ラマンスペクトル曲線を排除することができるため、ステップ403での算出量を減らすことができる。特徴的なピークの捜索及びピーク幅とピークの高さの算出について、例えば、ラマンスペクトル曲線におけるピーク信号統計分布を利用して2つの高低閾値を推定することができ、捜索過程において、信号幅が高閾値よりも大きい場合、ピークを見つけたと考え、かつその前後で低閾値よりも低い箇所を見つけてピークの始点と終点として考え、さらにピークの高さ、ピーク幅などのパラメータを算出する。本発明はこの方法に限らず、特徴的なピークの捜索及びピーク幅、ピーク位置の算出を行えるほかの方法を使用することもできる。
【0049】
また、例としては、被検品26のラマンスペクトル曲線の特徴的なピークが比較的に明らかである場合、実際に、類似度算出は、被検品26のラマンスペクトル曲線における1つ以上の位置に、標準ラマンスペクトル曲線の特徴的なピークに対応する特徴的なピークが存在するか否かを捜索することで、直接に確定するように簡略化することもできる。
【0050】
図6図7は、本発明の実施例に係る珠玉宝石鑑定方法を利用して試料を鑑定する例を与えている。図6は和田玉試料の鑑定結果図を示しているが、点線は測定した試料のラマンスペクトル曲線を示し、実線は和田玉の標準ラマンスペクトル曲線を示している。図6から明らかであるように、測定した試料のラマンスペクトル曲線の特徴的なピークが標準ラマンスペクトル曲線に基本的に一致するため、この試料が和田玉であると判定し得る。
【0051】
別の鑑定例において、図7に示す鑑定結果は、被検品のラマンスペクトル曲線がポリスチレンプラスチックの標準ラマンスペクトル曲線に一致することを表明し、この被検品がポリスチレンプラスチックから作製された模倣品であることを表明している。
【0052】
図面を参照して本発明を説明したが、図示の実施例は本発明の好ましい実施の形態を例示的に説明するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。
【0053】
本発明の全体的な構想は幾つかの実施例を参照して説明されているが、当業者であれば理解できるように、本発明の全体的な構想の原則及び精神に悖らない前提で、これらの実施例を変更することができる。本発明の範囲は特許請求の範囲及びその等価体によって限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7