特許第6302593号(P6302593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6302593
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】排ガス分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20180319BHJP
   G01M 15/10 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   G01N1/22 G
   G01M15/10
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-217213(P2017-217213)
(22)【出願日】2017年11月10日
【審査請求日】2017年11月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594207610
【氏名又は名称】株式会社ベスト測器
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 啓史
(72)【発明者】
【氏名】高宮 明豊
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05563330(US,A)
【文献】 特開2010−054443(JP,A)
【文献】 特開平11−241977(JP,A)
【文献】 特開平09−061361(JP,A)
【文献】 特開2001−013045(JP,A)
【文献】 特開2015−079006(JP,A)
【文献】 特開2010−139281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/22
G01N 1/00
G01M 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部をエンジンの排ガスが流れる排気管と、
排ガスの成分濃度を検出する濃度検出部と、
前記排気管に分岐接続され、当該排気管を前記濃度検出部に接続するサンプリング管と、
前記サンプリング管または前記濃度検出部の排気系に設けられ、常時前記濃度検出部にガス供給を行うポンプと、
前記サンプリング管における前記ポンプの上流側に分岐接続された代替ガス導入管と、
前記代替ガス導入管に接続され、既知の代替ガスとしてのゼロガスが充填された代替ガス容器と、
前記サンプリング管における前記代替ガス導入管の分岐部、または前記サンプリング管における前記分岐部の上流側および前記代替ガス導入管に設けられた流路切替手段と、
前記エンジンの作動の有無をモニタリングし、当該作動の有無に応じて前記流路切替手段を制御する流路切替制御部と、
前記代替ガス容器または前記代替ガス導入管に設けられた圧力制御器と、
前記代替ガス導入管における前記圧力制御器の下流側に分岐接続されたオーバーフロー管と、を備え、
前記エンジンの作動時は、前記サンプリング管における前記分岐部の上流側と前記分岐部の下流側とが接続されると同時に、前記代替ガス導入管が閉じられることによって、前記濃度検出部が前記排気管に接続される一方、前記エンジンの一時停止時は、前記代替ガス導入管と前記サンプリング管における前記分岐部の下流側とが接続されると同時に、前記サンプリング管における前記分岐部の上流側が閉じられることによって、前記濃度検出部が前記代替ガス導入管に接続されるようになっており、さらに、
前記エンジンの一時停止時に、前記濃度検出部による検出データを用いて前記濃度検出部のゼロ点補正を行う校正部を備え、
前記校正部が、
移動平均取得時間、補正開始時間および濃度閾値が予め格納されたパラメータ値格納部と、
前記濃度検出部の前記排気管から前記代替ガス導入管への接続の切り替え後の経過時間を計測する時間計測部と、
前記濃度検出部の前記排気管から前記代替ガス導入管への接続の切り替え後、前記濃度検出部によって検出された濃度瞬間値を順次格納する検出データ格納部と、
前記移動平均取得時間に基づき、前記検出データ格納部に格納された前記濃度瞬間値を用いて濃度移動平均値を順次算出する移動平均値算出部と、
前記移動平均値算出部によって前記濃度移動平均値が算出されるたびに、前記時間計測部による計測値から前記移動平均取得時間を減算した値を前記補正開始時間と比較し、前記減算した値が前記補正開始時間を超えたときに、補正開始信号を出力する補正タイミング検出部と、
前記補正タイミング検出部から前記補正開始信号が出力されたとき、前記移動平均値算出部によって算出された前記濃度移動平均値を前記濃度閾値と比較し、前記濃度移動平均値が前記濃度閾値を超える場合に前記濃度検出部のゼロ点補正を行うゼロ点補正部と、を有していることを特徴とする排ガス分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排ガスの成分濃度を測定する排ガス分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車(HEV)やアイドリング・ストップ車等の運転中にエンジンが一時停止する車両が普及しており、このような車両の運転中の排ガス成分濃度測定に対応した排ガス分析装置が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の排ガス分析装置は、内部をエンジンからの排ガスが流れる排ガス流路と、排ガス流路に分岐接続された排ガス導入管と、排ガス導入管に接続された分析機器と、排ガス導入管に分岐接続された大気導入管と、排ガス導入管における大気導入管の分岐部に設けられた流路切替機構とを備えている。
【0004】
そして、分析機器がエンジンの運転中は動作して常時ガスを吸引するとともに、流路切替機構によって、エンジンが作動状態のとき、排ガス導入管における分岐部の上流側の部分と分岐部の下流側の部分が接続される一方、エンジンが一時停止状態のときは、大気導入管と排ガス導入管における分岐部の下流側の部分が接続される。
【0005】
そして、この構成によれば、エンジンの一時停止中に分析機器のポンプを動作させた状態でも、エンジンや大気側から排ガス流路への不意のガス流、触媒の温度変化、排気ポートの圧力低下等の発生を回避することができる。
【0006】
しかしながら、大気中には分析計の測定対象成分(排ガス規制物質を含む)が含まれているため、上記の排ガス分析装置では、エンジンが一時停止状態から再始動せしめられて、分析機器のサンプリングラインが大気導入管側から排ガス導入管側に切り替えられた直後は、排ガスの成分濃度を正確に測定することができないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−79006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、車両の運転中にエンジンが一時停止状態から再始動した直後でも、排ガス成分濃度の測定が正確に行える排ガス分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によれば、内部をエンジンの排ガスが流れる排気管と、排ガスの成分濃度を検出する濃度検出部と、前記排気管に分岐接続され、当該排気管を前記濃度検出部に接続するサンプリング管と、前記サンプリング管または前記濃度検出部の排気系に設けられ、常時前記濃度検出部にガス供給を行うポンプと、前記サンプリング管における前記ポンプの上流側に分岐接続された代替ガス導入管と、前記代替ガス導入管に接続され、既知の代替ガスとしてのゼロガスが充填された代替ガス容器と、前記サンプリング管における前記代替ガス導入管の分岐部、または前記サンプリング管における前記分岐部の上流側および前記代替ガス導入管に設けられた流路切替手段と、前記エンジンの作動の有無をモニタリングし、当該作動の有無に応じて前記流路切替手段を制御する流路切替制御部と、前記代替ガス容器または前記代替ガス導入管に設けられた圧力制御器と、前記代替ガス導入管における前記圧力制御器の下流側に分岐接続されたオーバーフロー管と、を備え、前記エンジンの作動時は、前記サンプリング管における前記分岐部の上流側と前記分岐部の下流側とが接続されると同時に、前記代替ガス導入管が閉じられることによって、前記濃度検出部が前記排気管に接続される一方、前記エンジンの一時停止時は、前記代替ガス導入管と前記サンプリング管における前記分岐部の下流側とが接続されると同時に、前記サンプリング管における前記分岐部の上流側が閉じられることによって、前記濃度検出部が前記代替ガス導入管に接続されるようになっており、さらに、前記エンジンの一時停止時に、前記濃度検出部による検出データを用いて前記濃度検出部のゼロ点補正を行う校正部を備え、前記校正部が、移動平均取得時間、補正開始時間および濃度閾値が予め格納されたパラメータ値格納部と、前記濃度検出部の前記排気管から前記代替ガス導入管への接続の切り替え後の経過時間を計測する時間計測部と、前記濃度検出部の前記排気管から前記代替ガス導入管への接続の切り替え後、前記濃度検出部によって検出された濃度瞬間値を順次格納する検出データ格納部と、前記移動平均取得時間に基づき、前記検出データ格納部に格納された前記濃度瞬間値を用いて濃度移動平均値を順次算出する移動平均値算出部と、前記移動平均値算出部によって前記濃度移動平均値が算出されるたびに、前記時間計測部による計測値から前記移動平均取得時間を減算した値を前記補正開始時間と比較し、前記減算した値が前記補正開始時間を超えたときに、補正開始信号を出力する補正タイミング検出部と、前記補正タイミング検出部から前記補正開始信号が出力されたとき、前記移動平均値算出部によって算出された前記濃度移動平均値を前記濃度閾値と比較し、前記濃度移動平均値が前記濃度閾値を超える場合に前記濃度検出部のゼロ点補正を行うゼロ点補正部と、を有していることを特徴とする排ガス分析装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンジンの作動の有無に応じて濃度検出部の接続を排気管側と代替ガス導入管側に切り替え、エンジンの作動時は濃度検出部にエンジンからの排ガスを供給する一方、エンジンの一時停止時には濃度検出部に既知の代替ガスとしてのゼロガスを供給するようにした。
【0013】
そのため、エンジンの一時停止時は、濃度検出部には既知の代替ガスとしてのゼロガスが供給され、濃度検出部がゼロガスの成分濃度の検出を行う一方、排気管内にはエンジン停止直後の排ガスが滞留したままであり、大気が排気管内に吸入されて排ガスの組成や温度に影響を及ぼすことはない。また、ゼロガスは濃度検出部の検出対象の成分ガスを含まないので、ゼロガスについて濃度検出部で得られる濃度検出値はゼロであることが予めわかっており、それによって、エンジンの一時停止時に濃度検出部のゼロ点補正を行うことができる。
【0014】
そして、エンジンが一時停止状態から再始動すると、濃度検出部が代替ガス導入管側から排気管側に切り替えられて濃度検出部に排ガスが供給され、濃度検出部による排ガスの成分濃度の検出が開始されるが、このとき、濃度検出部による排ガスの検出データはゼロガスの検出データから明確に区別し得る。
それによって、エンジンが一時停止状態から再始動した直後でも、排ガス成分濃度の測定が正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の1実施例による排ガス分析装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】(A)は本発明の別の実施例による排ガス分析装置の概略構成を示すブロック図であり、(B)は(A)の校正部の構成を示すブロック図である。
図3】濃度検出部の接続の排気管側から代替ガス導入管側への切り替え後に濃度検出部で得られる濃度瞬間値の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明の1実施例による排ガス分析装置の概略構成を示すブロック図である。
図1を参照して、1はエンジンであり、2はエンジン1の排ガスが流れる排気管であり、3は排ガスの成分濃度を検出する濃度検出部である。
【0017】
排気管2にはサンプリング管4が分岐接続され、サンプリング管4は排気管2を濃度検出部3に接続している。サンプリング管4には、常時濃度検出部3にガス供給を行うポンプ5が設けられている。
【0018】
また、サンプリング管4におけるポンプ5の上流側に代替ガス導入管6が分岐接続され、代替ガス導入管6には、代替ガス容器7が接続されている。この実施例では、代替ガス容器7と代替ガス導入管6の接続は、代替ガス容器7(の出口)に圧力制御器10を取り付け、圧力制御器10に代替ガス導入管6を接続することによってなされている。
【0019】
代替ガス容器7には既知の代替ガスが充填されている。
既知の代替ガスとしては、濃度検出部3の検出対象である成分ガス(濃度既知)のみからなるガス、または、濃度検出部3の検出対象である成分ガス(濃度既知)の少なくとも1種類と濃度検出部3の検出対象でない成分ガス(濃度不定でもよい)の少なくとも1種類が混合されたガス、または、濃度検出部の検出対象でない成分ガス(濃度不定でもよい)のみからなるガスが挙げられる。
【0020】
また、サンプリング管4における代替ガス導入管6の分岐部4aに、流路切替弁8が設けられている。この実施例では、流路切替弁8は、三方電磁弁からなっている。
【0021】
さらに、エンジン1の作動の有無をモニタリングし、エンジン1の作動の有無に応じて流路切替弁8を制御する流路切替制御部9が設けられている。
流路切替制御部9によるエンジン1の作動の有無のモニタリングは、例えば、エンジン1の点火信号を監視することや、エンジン1の回転数を検出するセンサからの出力信号を監視することや、排気管2を流れる排ガス流量を検出するセンサからの出力信号を監視することや、エンジン1の吸気流量を検出するセンサからの出力信号を監視することや、エンジン停止信号や燃料供給停止信号を監視すること等によってなされる。
【0022】
また、代替ガス導入管6における圧力制御器10の下流側にオーバーフロー管11が分岐接続されている。
【0023】
そして、流路切替制御部9は、エンジン1が作動状態にあると判定したとき、サンプリング管4における分岐部4aの上流側と分岐部4aの下流側とを接続すると同時に、代替ガス導入管6を閉じることによって、濃度検出部3を排気管2に接続し、エンジン1が一時停止状態にあると判定したときは、代替ガス導入管6とサンプリング管4における分岐部4aの下流側とを接続すると同時に、サンプリング管4における分岐部4aの上流側を閉じることによって、濃度検出部3を代替ガス導入管6に接続する。
【0024】
こうして、本発明の排ガス分析装置によれば、エンジン1の作動の有無に応じて濃度検出部3の接続を排気管2側と代替ガス導入管6側に切り替え、エンジン1の作動時は濃度検出部3にエンジン1からの排ガスを供給する一方、エンジン1の一時停止時には濃度検出部3に既知の代替ガスを供給するようにしている。
【0025】
そのため、エンジン1の一時停止時は、濃度検出部3に代替ガスが供給されて濃度検出部3が代替ガスの成分濃度の検出を行う一方、排気管2内にはエンジン1の停止直後の排ガスが滞留したままとなり、大気が排気管2内に吸入されて排ガスの組成や温度に影響を及ぼすことはない。
【0026】
また、既知のガスに含まれる濃度検出部3の検出対象の成分ガスは濃度が既知であるから、当該成分ガスについて濃度検出部3で得られる検出データは予めわかっており、既知のガスに含まれる濃度検出部3の検出対象でない成分ガスは、濃度検出部3によって検出されることがない。
【0027】
そして、エンジン1が一時停止状態から再始動すると、濃度検出部3のガス供給路が代替ガス導入管6から排気管2側に切り替えられて濃度検出部3に排ガスが供給され、濃度検出部3による排ガスの成分濃度の検出がなされるが、このとき、濃度検出部3による排ガスの検出データは代替ガスの検出データから明確に区別され得る。
それによって、エンジン1が一時停止状態から再始動した直後でも、排ガス成分濃度の測定が正確に行える。
【0028】
図2には、本発明の別の実施例の構成を示した。
この実施例は、図1の実施例と、濃度検出部3のゼロ点補正を行う校正部を備えた点が異なるだけである。よって、図2中、図1に示したものと同じ構成要素には同一番号を付し、以下ではそれらの詳細な説明を省略する。
【0029】
図2(A)を参照して、この実施例では、既知の代替ガスがゼロガスからなり、排ガス分析装置は、さらに、エンジン1の一時停止中に、濃度検出部3による検出データを用いて濃度検出部3のゼロ点補正を行う校正部12を備えている。
【0030】
校正部12は、図2(B)に示すように、移動平均取得時間、補正開始時間および濃度閾値が予め格納されたパラメータ値格納部13を有している。
ここで、移動平均取得時間、補正開始時間および濃度閾値はそれぞれ次のように規定される。
・移動平均取得時間:濃度検出部3の排気管2から代替ガス導入管6への接続の切り替え後、濃度検出部3で得られる濃度瞬間値の移動平均をとる時間間隔。平均時間としては、例えば、5〜10秒が設定される。
・補正開始時間:濃度検出部3の排気管2から代替ガス導入管6への接続の切り替え後、ゼロ点補正を開始するまでの時間(管路の切り替え後、十分なガス置換が行われるまでの時間が考慮される)。例えば、1〜2分が設定される。
・濃度閾値:校正の要否を判定するための参照濃度値。濃度ゼロの点を挟んでプラス・マイナス2つの値が設定される。
【0031】
校正部12は、また、濃度検出部3の排気管2から代替ガス導入管6への接続の切り替え後の経過時間を計測する時間計測部14と、濃度検出部3の排気管2から代替ガス導入管6への接続の切り替え後、濃度検出部3によって検出された濃度瞬間値を順次格納する検出データ格納部15と、移動平均取得時間に基づき、検出データ格納部15に格納された濃度瞬間値を用いて濃度移動平均値を順次算出する移動平均値算出部16を有している。
【0032】
校正部12は、さらに、移動平均値算出部16によって濃度移動平均値が算出されるたびに、時間計測部14による計測値から移動平均取得時間を減算した値を補正開始時間と比較し、当該減算値が補正開始時間を超えたときに、補正開始信号を出力する補正タイミング検出部17と、補正タイミング検出部17から補正開始信号が出力されたとき、移動平均値算出部16によって算出された濃度移動平均値を濃度閾値と比較し、濃度移動平均値が濃度閾値を超える場合に濃度検出部3のゼロ点補正を行うゼロ点補正部18を有している。
【0033】
次に、校正部12の動作を具体的に説明する。
図3(A)〜(C)は、濃度検出部3の接続の排気管2側から代替ガス導入管6側への切り替え後に濃度検出部3で得られた濃度瞬間値の時間変化の一例を示すグラフである。なお、図3(A)〜(C)のグラフ中、縦軸は濃度瞬間値(%FS)を表し、横軸は経過時間(秒)を表している。
【0034】
図3(A)を参照して、濃度検出部3が排気管2から代替ガス導入管6に接続を切り替えられると(点P)、代替ガス導入管6から濃度検出部3へのゼロガスの供給が開始されて、濃度検出部3内のガス置換(排ガス→ゼロガス)が進行し、それによって、濃度検出部3で得られる濃度瞬間値が急激に低下する。
【0035】
また、濃度検出部3が排気管2から代替ガス導入管6に接続を切り替えられた後、移動平均取得時間毎に、検出データ格納部15に格納された濃度瞬間値に基づき、検出データ移動平均値算出部16によって濃度移動平均値が算出される。
また、濃度移動平均値が算出されるたびに、補正タイミング検出部17において、時間計測部14による計測値から移動平均取得時間を減算した値が補正開始時間と比較される。
【0036】
そして、図3(B)に示すように、上記減算した値が補正開始時間を超えたとき(点P)、補正タイミング検出部17から補正開始信号が出力される。
補正開始信号が出力されると、ゼロ点補正部18において、その時点で移動平均値算出部16によって算出されている濃度移動平均値が濃度閾値(±δ)と比較され、濃度移動平均値が濃度閾値(±δ)を越えていると判定された場合には、ゼロ点補正部18によって濃度検出部3のゼロ点補正がなされる(図3(C)の点P)。
【0037】
この実施例によれば、図1の実施例で得られる効果に加えて、エンジン1の一時停止中に、濃度検出部3のゼロ点補正を自動的に行えるという効果が得られる。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明の構成は上記実施例には限定されず、当業者は、本願の特許請求の範囲に記載した構成の範囲内で種々の変形例を案出し得る。
【0039】
例えば、上記実施例では、流路切替手段として、サンプリング管における代替ガス導入管の分岐部に流路切替弁が配置されたが、この構成の代わりに、流路切替手段として、サンプリング管における分岐部の上流側および代替ガス導入管にそれぞれ第1および第2の流路切替弁を配置し、エンジンが作動状態のとき、第1の流路切替弁を開くと同時に、第2の流路切替弁を閉じ、エンジンが一時停止状態のときは、第1の流路切替弁を閉じると同時に、第2の流路切替弁を開く構成としてもよい。
【0040】
また、例えば、上記実施例では、圧力制御器を代替ガス容器に設けたが、圧力制御器を代替ガス導入管に設けてもよい。また、上記実施例では、濃度検出部にガス供給を行うポンプをサンプリング管(濃度検出部の上流側)に設けたが、ポンプを濃度検出部の排気系(濃度検出部の下流側)に設けることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 エンジン
2 排気管
3 濃度検出部
4 サンプリング管
4a 分岐部
5 ポンプ
6 代替ガス導入管
7 代替ガス容器
8 流路切替弁
9 流路切替制御部
10 圧力制御器
11 オーバーフロー管
12 校正部
13 パラメータ値格納部
14 時間計測部
15 検出データ格納部
16 移動平均値算出部
17 補正タイミング検出部
18 ゼロ点補正部
【要約】
【課題】車両の運転中にエンジンが一時停止状態から再始動した直後でも、排ガス成分濃度の測定が正確に行える排ガス分析装置を提供する。
【解決手段】排気管2と、排気管と濃度検出部3を接続するサンプリング管4と、サンプリング管に設けられて常時濃度検出部にガスを供給するポンプ5と、サンプリング管に接続された代替ガス導入管6と、代替ガス導入管に接続され、既知の代替ガスが充填された代替ガス容器7と、サンプリング管と代替ガス導入管の分岐部4aに配置された流路切換弁8と、エンジン1の作動の有無に応じて流路切替手段を制御する流路切替制御部9を備える。エンジンの作動時は、サンプリング管における分岐部の上流側と分岐部の下流側とが接続されて濃度検出部が排気管に接続され、エンジンの一時停止時は、代替ガス導入管とサンプリング管における分岐部の下流側とが接続されて濃度検出部が代替ガス導入管に接続される。
【選択図】図1
図1
図2
図3