(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
地部が白色金属酸化物を0.6〜5.0重量%含むポリエステル繊維からなり、柄部が白色金属酸化物を0〜0.5重量%含むポリエステル繊維からなることを特徴とする請求項1または2に記載のビジネスシャツ用編地。
地部が白色金属酸化物を0.6〜5.0重量%含むポリエステル繊維からなり、柄部がカチオン染料可染性ポリエステル繊維からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のビジネスシャツ用編地。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従来から、編地は、通気性が良く柔軟性が高いことに特徴があり、特に丸編地は、経緯の伸度が大き過ぎて着用したときのシルエットが綺麗にならず、保形性が低くなり易い性質がある。本発明者は、ビジネスシャツに用いる柄物の編地において、経緯の伸長率、特にタテ方向の伸長率を特定の範囲に調整できる特定の編構造を採用することによってビジネスシャツのシルエットや保形性、着用快適性を満足するビジネスシャツに好適な編地を見出した。ここでいうビジネスシャツとは、一般のビジネスシーンでも違和感のないシャツであり、例えば会社間の面談においても失礼のないレベルに許容される装いのシャツをいう。シャツの形態としては、例えば衿や前立てがある仕様のものが含まれる。
【0013】
編地では、身体を大きく動かしたときの皮膚の伸縮性や関節の曲げ伸ばしに追随することが着用快適性に大きく影響する。従来から編地が好んで用いられるポロシャツやスポーツシャツでは、経緯の伸度が高いと身体の動きに追随しやすく快適になる。しかし、織物が従来使われているビジネスシャツでは、逆に経緯の伸度、特にタテ方向の伸度を少なくすることが、ドレスシャツのハリ、コシ感、シルエット、保形性を得るために重要である。本発明者は、着用試験にてビジネスシャツに用いる編地の最適な経緯伸度領域を検証した結果、タテ方向の伸長率(EMT)と、ヨコ方向の伸長率(EMT)を比較的低伸度の範囲にすることが必要であることが判った。
【0014】
具体的には、本発明の編地では、タテ方向の伸長率(EMT)は、5〜25%、好ましくは5〜20%、さらに好ましくは8〜15%である。タテ方向の伸長率(EMT)が上記範囲を超えると、生地のハリ、コシ感の低下につながるとともに製品の保形性が低下する。タテ方向の伸長率(EMT)が上記範囲未満の場合は、ビジネスシャツの着用に必要な適度な伸度を得ることができず、本発明の目的を達成することが困難となる。
【0015】
また、本発明の編地では、ヨコ方向の伸長率(EMT)は、好ましくは10〜35%、より好ましくは15〜30%、さらに好ましくは15〜28%である。ヨコ方向の伸長率(EMT)がこの範囲内であると、編地の柔軟性がシャツに活かされて着用快適性が得られる。ヨコ方向の伸長率(EMT)が上記範囲未満の場合は、着用時の快適性が無くなる。また、ヨコ方向の伸長率(EMT)が上記範囲を超えると、伸長した後の回復が悪くなりやすくなる。
【0016】
さらに、本発明の編地では、タテ方向とヨコ方向の伸長率(EMT)の平均値は、丸編としては非常に低い9〜30%であり、好ましくは12〜25%、さらに好ましくは12〜22%である。伸長率(EMT)の平均値が上記範囲を超えると、編地が伸び縮みして、肌着のような柔らかな風合いとなり、保形性が低下しやすい。
【0017】
織物のビジネスシャツ地では、織柄物が多用されており、本発明の編地でもダブル編機を使って織柄を再現するが、このとき前述のタテ方向及びヨコ方向の伸長率を実現するために、編地を構成する基本組織において全ニットループ数に対する全ウエルト数の比率を0.15〜0.8とすることが必要である。好ましくは0.3〜0.7であり、更に好ましくは0.4〜0.65である。編地基本組織においてニットループに対してウエルトを特定の割合で構成することで、伸縮性を抑えてビジネスシャツに適度なハリ、コシを発現することが可能である。
【0018】
さらに必要なことは、編地裏組織において編構造にニット−ウエルト構造を一定割合以上含めることである。ニット−ウエルト構造とは、編地の片面でニットループとウエルトが隣り合った構造をいう。例えば、
図1のaの編組織図では、(1)と(2)のニット−ウエルト、又は(2)と(3)のウエルト−ニットの一対をニット−ウエルト構造という。
図1のaでは、ニット−ウエルト構造が(1)(2)、(3)(4)、(5)(6)の3対(6個)連なった図になっている。編構造において、ニット−ウエルト構造の比率を高めると、編地の伸度を低下させて、ビジネスシャツに必要な保形性やハリコシを編地に与えることができる。但し、本発明の編地は編柄を有するため、表面にニット−ウエルト構造を多用すると柄の形成が困難になるので、裏組織にニット−ウエルト構造を一定割合以上含めることで本発明の効果を達成することができる。本発明では、編地の裏組織において全構造に対するニット−ウエルト構造の占める比率が0.25〜1.0であることが必要である。好ましくは0.26〜1.0、より好ましくは0.3〜1.0、さらに好ましくは0.4〜1.0である。裏組織においてニット−ウエルト構造の比率が上記範囲を下回ると、編地の伸度が高まり保形性やハリコシが得られにくくなり易い。
【0019】
また、本発明の編地は、ニットループとウエルトで組織を作ることが好ましく、メッシュ部を作る以外はできるだけタックループを組織に含めないことが好ましい。特に裏組織にはタックループを作らないことが好ましい。タックループの比率は、組織全体に対して0.2以下の比率にすることが好ましい。より好ましくは0.1以下である。更に好ましくは、基本組織(完全組織)にタックループを含まないことが好ましい。タックループが入ると、組織が緻密になりにくく、伸びやすくなる傾向があるためである。
【0020】
本発明における編地の柄としては、例えば、チェック、千鳥格子、ダイヤ、ドット、ストライプ、水玉、ディンプル、その他の幾何学模様や、ツイル、カルゼ、ピッケ、ヘリンボン等の織柄に似せた編柄にすることができる。実際の柄を形成する際にニットループとウエルトを上記比率にしたうえで、目的の柄を形成する例として、組織図でニット−ウエルトの編構造とウエルトループ比率を示す。
図2にピンヘッド、
図3にカルゼ、
図4にダイヤ、
図5にディンプルメッシュの編組織図を示す。
【0021】
ここで前記組織図におけるニットループ、タック、ウエルト及びニット−ウエルト構造の数え方を
図1で説明する。
図1のbでは、編糸が表裏両面にループを形成する組織であるが、(1),(2),(3),(5)及び(6)がニットループである。(4)がウエルト、(7)がタックである。
図1のbには、ニットループが5個、ウエルトが1個、タックが1個の7個のループとウエルトからなる。この組織には、ニット−ウエルト構造(3),(4)が一対(ループ数2個と数える)含まれる。
【0022】
本発明では、編地の密度設計も重要である。適度なタテヨコのループ密度に調整することで、上記の編組織とあいまって編地でありながら、適度なハリ・コシを与えることが可能となる。本発明の編地は、ハイゲージのダブル編機で編成して高密度に仕上げられる。本発明の編地では、染色加工上がりのウエール密度は、30〜70個/2.54cmである。より好ましくは30〜65個/2.54cm、さらに好ましくは33〜60個/2.54cmである。ウエール密度が上記範囲より低いと、柔軟性が高くなりすぎてハリ、コシが得られにくくなり、上記範囲より高いと、使っている糸が細いため生地が薄くなりすぎたり、ヨコ方向のストレッチが小さくなり過ぎて着用感が悪くなりうる。また、染色加工上がりの編地コース密度は30〜100個/2.54cmである。より好ましくは33〜95個/2.54cm、さらに好ましくは33〜90個/2.54cmである。コース密度が上記範囲より低いと、柔軟性が高くなりすぎてハリ、コシが得られにくくなり、上記範囲より高いと、生地が硬くなり、また通気性が低くなり蒸れ感が高まりやすい。
【0023】
本発明の編地は、表裏のあるダブル編地であるが、本発明の効果を引き出すために、コース方向の糸密度は多い方が好ましい。この糸密度は、コース方向2.54cm幅の中に含まれる表裏合わせた糸本数(フィーダー数)である。コース方向糸密度は80〜210本/2.54cmが好ましく、88〜200本/2.54cmがより好ましい。本発明の編地は、前述のウエルト/ニットループ比率の範囲としたとき、編地のウェール密度に対するコース方向の糸密度の比率は1.5〜6.0とするのが好ましい。より好ましくは1.8〜5.6である。比率が上記範囲未満又は上記範囲を超えると、経緯の伸長率が適正範囲から外れやすく、特にタテ方向の伸長率が高くなり易くなる。
【0024】
本発明の編地は、従来の編地に比べて経緯の伸度を低く抑えるために、100ウエール(W)当りの糸長を制限して編み込むことが好ましい。編地を構成している全ての糸の平均糸長として、90〜200mm/100Wとするのが好ましい。編柄を作るときのウエルトの比率と編地を構成する糸長を適正な範囲とすることで、保形性とハリコシを編地に付与することができる。より好ましくは100〜180mm/100Wである。平均糸長が上記範囲未満では、安定的に生産するのが難しくなり、編み欠点が発生し易くなる。また、上記範囲を超えると、編地の伸度が高くなって本発明の効果が得られにくくなりやすい。
【0025】
本発明の編地は、比較的ハイゲージの丸編機を用いることにより高密度に編み立てることができる。本発明で使う編機としては、針床における編針の密度(ゲージ)が、1インチ(2.54cm)あたり26以上でかつ針床が1列の、いわゆるハイゲージシングルニット編機が採用される。好ましい編機ゲージは28〜55本/2.54cmである。より好ましい編機ゲージは32〜46本/2.54cmである。編機ゲージが上記範囲を超えると、より細い糸を用いる必要があり、透け感が出やすくなり、上記範囲より少なくても透け感が出やすくなり、風合いも柔らかくなりすぎる傾向がある。
【0026】
本発明の編地を構成する糸条は、フィラメント、又は少なくともフィラメントを含んだ複合糸を用いることが好ましい。より好ましくはポリエステルフィラメントである。ポリエスエルフィラメントを用いることで編地の柔軟性と保形性をより向上させることができる。ポリエステルフィラメントには、フラットヤーン(生糸)や、仮撚加工糸、エアー交絡糸等の糸加工された糸を用いることができる。編地の風合いの柔らかさや透け防止の観点から仮撚加工糸がより好ましい。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリ乳酸繊維等の生分解性繊維を用いることができる。特に好ましくはポリエステル系繊維である。これらの糸条は、編物中に80重量%以上含まれればよい。尚、本発明の編地の糸条を構成する単繊維の断面形状は、限定されるものではなく、丸形、三角形、八葉形、扁平形、Y字形などに代表される様々な異形断面糸を使用することができる。
【0027】
糸条の繊度は、好ましくは30〜180dtex、より好ましくは50〜110dtexである。上記範囲内で繊度の違う糸同士を交編しても構わない。使用する糸条の繊維繊度が上述の範囲より細い場合は、編地の透け感が大きくなるとともに、ハリ、コシが弱くなり、上述の範囲より太い場合は、厚ぼったい編地となり、いずれの場合もビジネスシャツとして望ましくないものになりうる。
【0028】
本発明では、保形性やハリ、コシをより高めるために、前述の方策に加えて、単糸繊度が3〜12dtexの太い繊維を混用することが有効である。より好ましくは5〜10dtexである。混用の手段としては、交編したり、他の糸と混繊、混紡して編み込んでもよい。太い繊維は3〜25重量%の割合で編地に混用することが好ましい。この太い繊維は非常に曲げ硬いので25重量%を超えると、風合いが硬くなりすぎてゴアゴア感が出て不快になりやすくなる。3重量%未満では、ハリコシを高める効果が少なくなる。この単糸繊度が太い繊維は、長繊維であれば仮撚加工やエアー加工、撚糸等されていてもよいが、生糸を用いるのがより好ましい。この長繊維の総繊度は30〜120dtexであることが好ましい。より好ましくは30〜115dtexである。上記範囲未満では、ハリ、コシを高める効果が少なく、上記範囲を超えると、風合いが硬くなりすぎるおそれがある。
【0029】
本発明の編地の主たる糸条には酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸亜鉛等の白色金属酸化物を0.6〜5.0重量%含んだフルダルのポリエステルフィラメントを用いることが好ましい。本発明の編地は、薄地であり、透け感を防止するために有効である。このフルダル糸の混用率は30〜100重量%が好ましい。混用率が少ないと、透け感が強まって下着や肌が見えやすくなり見栄えが悪くなる。本発明の編地は柄物なので、柄部を異色染めにしたり、柄部に白色微粒子の含有量が低い繊維や異形繊維を使用して、光沢感や透け感の違いで柄部を強調することができる。このため使用する柄に応じて上記混用率の範囲で適宜フルダル糸を使用することが好ましい。
【0030】
本発明の編地では、地部又は柄部に白色金属酸化物を0.6〜5.0重量%含んだフルダル糸を用いて、その反対の柄部又は地部にカチオン染料可染性ポリエステル繊維を用いると,編立て後の染色加工で柄部又は地部を先染め調の異色染めにして、柄を強調したり、柄を作ることができる。また、上記の反対の柄部又は地部に白色金属酸化物を0〜0.5重量%含んだポリエステルフィラメントを用いると、編地を単一色で染めても、或いは染めなくても、それぞれの糸で光沢や光の透過性が違うために、綺麗に柄が浮き立たせることができる。但し、この場合は透け感が強くならないために白色金属酸化物を0〜0.5重量%含んだポリエステルフィラメントは1〜50重量%の範囲で用いるのが好ましい。より好ましくは10〜40重量%である。
【0031】
ビジネスシャツには薄地織物が好ましく使用されてきたこともあり、本発明の編地もビジネスシャツとして使用するために軽くて薄いものが要求される。そのため、本発明の編地の目付は、80〜180g/m
2であり、好ましくは90〜175g/m
2、より好ましくは100〜170g/m
2である。目付が上記範囲を外れると、厚み寸法が大きくなりすぎて厚ぼったくなり、ビジネスシャツの要件である薄さおよび軽さを達成することができない可能性がある。また、目付が上記範囲未満であると、ハリ、コシが弱くなり、ビジネスシャツとしての適正なシルエットを生み出すことができない可能性がある。本発明の編地の厚みは、0.3〜0.8mmとするのが好ましい。より好ましくは0.4〜0.7mmであり、さらに好ましくは0.4〜0.65mmである。上記範囲より薄い編地では、透け感が強くなりすぎる傾向になり、上記範囲を超えると、肉感が付き過ぎてカジュアルシャツの外観や着用感になりやすく、ビジネスシャツに使い難くなる。
【0032】
本発明の編地を染色加工する場合、一般的なポリエステルフィラメント編地の加工方法で行えばよいが、タテ方向の伸度を抑えて、タテヨコ伸度バランスを調整するために、ヨコ方向に比べてタテ方向は若干引っ張り気味にして、編地ニットループを縦長にするように仕上げるのが好ましい。また、本発明の編地には、所定の吸水加工や各種の機能加工を施してもよい。このような特化加工を施された編地を使用すると、吸水速乾性や快適性が一層改善されたビジネスシャツを得ることができる。また、仕上げ加工でアクリル系樹脂やポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、酢酸ビリル樹脂、エポキシ系樹脂等の硬仕上加工を行うことでハリ、コシをより高めることもできる。
【0033】
本発明の編地の力学特性は、KES(Kawabata’s Evaluation System for Fabrics)に従ったものである。本発明の編地の伸長率(EMT)は、KES−FB1で測定される。伸長率(EMT)の測定は、20cm×20cmの試料を間隔5cmのチャックに把持し、4.00×10
−3/secの歪み速度で最大荷重250gf/cmまで引っ張って行なう。本発明の編地は、比較的伸度が低く、ビジネスシャツに最適である。縦方向の伸長率(EMT)は5〜25%、横方向の伸長率(EMT)は好ましくは10〜35%と適正な値を示す。EMTの縦横の平均値は9〜30%である。本発明の編地は、ハリ、コシがあることが特徴であるが、その代用メジャーとしてKES−FB2で測定できる。B値及び2HB値の縦横平均値は0.010〜0.020gf・cm/cmの範囲であり、編物でありながら織物に近い数値範囲をとることができる。
【0034】
本発明の編地は、透け感を抑えながらも60cc/cm
2・sec以上の通気性を達成することができる。この数値は、従来のビジネスシャツに使用されている一般的にいうブロード織物の通気性が20cc/cm
2・sec程度であることを考えると、高い値である。
【0035】
本発明の編地は、透け難いので、ビジネスシャツに、特にその身頃に好適に用いることができる。本発明の編地は、丸編地でありながら、透け防止度は70以上である。更に柄部を淡色に染めることで、柄が目立ち視覚的にシャツの内側を見えにくくする効果も得られる。
【0036】
本発明の編地に使用されるビジネスシャツは、ビジネスシーンで使用できる衿付のシャツである。例えば、カッターシャツ、ドレスシャツ、ドレスブラウス、ボタンダウンシャツ、ダンガリーシャツ等が挙げられる。前立ては必ずしもある必要はないが、前立てがある仕様である方がよりフォーマルとなりビジネスシーンに使用しやすい。また、ビジネスシーン用途のみに限定するものではない。
【実施例】
【0037】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各性能評価は、以下の方法により行った。
【0038】
(編地密度)
JIS−L1096 8.6.2 編物の密度に準拠して編地のコース密度(個/2.54cm)、ウェール密度(個/2.54cm)を測定した。目視で測定する際、ウエール方向(又はコース方向)に組織図上で最もニットループが多いところを選んで、そのニットループ数を測定して密度とした。
【0039】
(編地の目付)
JIS−L1096 8.3.2A法の標準状態における単位面積当たりの質量に準拠して編地の目付を測定した。
【0040】
(編地の厚み)
JIS−L1096 8.4A法の厚さに準拠して編地の厚みを測定した。測定条件の一定圧力は23.5kPaで行った。
【0041】
(通気度)
JIS−L−1096 8.26.1に規定されている通気度(フラジール形法 A法)に準拠して編地の通気度を測定した。
【0042】
(力学特性)
編地の力学特性は、KES(Kawabata’s Evaluation System for Fabrics)に従った。編地の伸長率(EMT)は、カトーテック社製KES−FB1で測定された。伸長率(EMT)の測定は、20cm×20cmの試料を間隔5cmのチャックに把持し、4.00×10
−3/secの歪み速度で最大荷重250gf/cmまで引っ張って行った。伸びにくい生地はEMT値が低くなる。曲げ特性は、カトーテック株式会社製KES−FB2を用いて、各サンプルの所定領域の1cm幅を試料として1cm間隔のチャック間に固定し、最大曲率+2.5cm
−1まで表側に曲げ、次に、最大曲率−2.5cm
−1まで裏側に曲げた後に元に戻すことによって測定した。曲げ剛性(B)[
N・cm
2/cm]は、表側に曲げはじめて曲率に対する曲げモーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きから算出した。また、曲げ回復性(2HB)[
N・cm/cm]は、そのヒステリシス幅から求めた。B値が大きい程曲げ硬く、ハリが高い傾向がある。2HB値が大きい程曲げ戻り性が悪く、コシが少ない傾向を示す。
【0043】
(ハリ及びコシの官能評価)
手で生地を触ったときのハリ・コシの風合い評価として、綿ブロードを「ハリ・コシ」の最高ランク5とし、最低ランクを1として、5段階評価を行った。判定は、風合の熟練者1名にて行った。
【0044】
(透け感)
一般財団法人ボーケン品質評価機構のボーケン規格BQE A038透け防止性試験を用いて評価した。試験片の肌側に白色板を重ね、外側面の可視光線(380nm〜780nm)の反射率(RS−white)を測定する。同様に黒色板を重ね、反射率(Rs−black)を測定し、透け防止度を算出する。透け防止度が74以上であればドレスシャツとして透け感を気にせず使用できる。 透け防止度=Rs−black/Rs−white×100
【0045】
(編地のW&W性)
アパレル製品等品質性能対策協議会法に従ってドレスシャツの形態安定性(W&W性)を評価した。判定は、AATCC 124−1984に規定する判定標準立体レプリカを用いて行った。判定は、5級(良好)〜1級(不良)で表示した。
【0046】
(製品の保形性)
JIS−L1060:2012の編物のプリーツ性試験方法を用いて、洗濯後のプリーツの形状の立体感にて保形性の代用評価とした。洗濯前のプリーツ形状、及び洗濯操作、乾燥操作を5回繰り返した後のプリーツ形状を判定基準によって等級を判定した。プリーツ判定用標準は、AATCC TestMethod 88Cに規定する5段階の判定標準立体レプリカを用いた。判定は、5級(良好)〜1級(不良)で表示した。
【0047】
(ドレスシャツを着用したときの上半身の動きやすさ)
生地を首回り41と裄丈84の長袖ドレスシャツに縫製した後、中肉中背の30才男性が着用して、両手を横に拡げて、背骨を軸に両手/両肩を水平に回旋したときの動きやすさ(動きに対する生地の抵抗)を感覚値として、動きやすい:○>△>×:動きにくいの順で三段階評価を行った。
【0048】
(実施例1)
33インチ,36ゲージのダブル丸編機(福原精機製作所製 V−4AL)を用いて、インターロックゲージングで
図2に示す完全組織F1からF6からなるピンヘッド柄の生機を製編した。その際、給糸口F1〜F5に酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面糸である84dtex(T),48filament(f)のポリエチレンテレフタレート仮撚糸(FD)を用いた。次に給糸口F6には、高圧カチオン可染ポリエステルの丸断面糸である84T36fの仮撚加工糸(CD)を用いた。各フィーダーの糸長は、F1は191mm/100W、F2〜6の糸長は113mm/100Wとした。F1〜6の平均糸長は139mm/100Wであった。
【0049】
出来上がった生機を開反し、ヒラノテクシード製ピンテンターを用いて160℃×2分のプリセットを行い、その後、下記の処方で精練、染色、仕上げ加工を行なった。
精練処方:日阪製作所製液流染色機NSタイプを用いて里田加工 ノニゾールN 1g/l、日華化学 ネオクリスタル CG1000 0.5g/l、ソーダ灰0.5g/l、浴比1:15、95℃×30分。
染色処方:日阪製作所製液流染色機NSタイプ、浴比1:15 130℃×45分で酢酸0.2g/l pH=4、明成化学 ディスパーN 700 0.5g/l、日華化学 ネオクリスタル GC1000 0.5g/l、高松油脂 SR1800 1.5%owf、分散型カチオン染料Kayacryl Ligt Blue4GSL−ED 0.5%owfで染色後、遠心脱水、乾燥(120℃×3分)を行ない、以下の条件で仕上げ剤を付与した。仕上げ剤のピックアップは70%であった。
サンスタット ES−11(三洋化成工業製 帯電防止剤)1% ows(on the weight of solution)
その後、最終セットをピンテンター160℃×2分の条件で行ない、性量調整し、最終生地を得た。仕上げでは縦に若干引っ張って仕上げた。仕上がった編地の密度はコース数61個/2.54cm、ウェール数33個/2.54cmであった。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0050】
(実施例2)
実施例1と同じ丸編機を用いて、リブゲージングにて
図3に示す完全組織F1〜F18からなるカルゼ柄の生機を製編した。その際、給糸口F1,2,4,5,7、8、10、11、13,14、16、17に酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面糸である84T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(FD)を用いた。次に給糸口F3,6,9,12、15、及び18には、高圧カチオン可染ポリエステルの丸断面糸である84T36fの仮撚加工糸(CD)を用いた。F1〜18の完全組織を構成する糸の平均糸長は135mm/100Wであった。
【0051】
出来上がった生機に対し、実施例1と同様に染色加工して仕上げた。仕上がった編地の密度はコース数55個/2.54cm、ウェール数45個/2.54cmであった。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0052】
(実施例3)
30インチ,28ゲージのダブル丸編機(福原精機製作所製 V−4AL)を用いて、リブゲージングにて
図4に示す完全組織F1〜F24からなるダイヤ柄の生機を製編した。その際、給糸口F1,5,9,13,17,21のフィーダーには酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面糸である84T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(FD)を用いた。F2,3,6,7、10,11、14,15,18,19、22,23には酸化チタン微粒子を0.5重量%練りこんだ丸断面セミダル糸(SD)である56T24fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸を用いた。更に、F4,8,12,16,20,24に酸化チタン微粒子を0.1重量%練りこんだ丸断面ブライト糸(BR)である84T36fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸を用いた。完全組織を構成する全糸の平均糸長は175mm/100Wであった。
【0053】
出来上がった生機に対し、染料を入れない以外は実施例1と同様に染色加工して、オフホワイト色に仕上げた。密度はコース数36個/2.54cm、ウェール数46個/2.54cmの仕上編地を得た。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0054】
(実施例4)
実施例3と同様にしてダイヤ柄の生機を作成するが、その際、F2、6、10,14、18、22の丸断面セミダル糸に代えて、酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面糸である56T6f(単糸繊度9.3dtex)のポリエチレンテレフタレート生糸を用いて製編した。完全組織に用いる糸全ての平均糸長は175mm/100Wであった。
【0055】
出来上がった生機に対し、実施例3と同様の染色加工を行い、最終編地を得た。出来上がった編地の密度はコース数35個/2.54cm、ウェール数46個/2.54cmであった。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0056】
(実施例5)
実施例4と同じダイヤ柄の生機を用いて、実施例3と同様の染色加工を行った。仕上げ工程ではパラゾールP−6(大原パラヂウム化学製 酢酸ビニル共重合物)1.0%ows,ウエットピックアップ率100%の処方でパディング−乾燥して硬仕上げを行った。出来上がった編地の密度はコース数36個/2.54cm、ウェール数46個/2.54cmであった。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0057】
(実施例6)
実施例1と同じ編機を用いて、リブゲージングにて
図5に示す完全組織F1〜F26からなるディンプルメッシュ柄の生機を製編した。その際、給糸口F1〜9、F14〜22には酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面セミダル糸(SD)である84T36fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸を用いた。また、給糸口F10〜13、F23〜26には酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面フルダル糸である84T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(FD)を用いた。完全組織を構成する糸の平均糸長は155mm/100Wであった。
【0058】
出来上がった生機に対し、実施例1と同様の染色加工を行い、最終編地を得た。出来上がった編地の密度はコース数86個/2.54cm、ウェール数45個/2.54cmであった。詳細な構成と評価結果を表1に示す。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1)
実施例3と同じ編機を用いて、
図6に示すインターロックの生機を製編した。使用した糸は、酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面フルダル糸である84T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(FD)を用いた。各フィーダーの平均糸長は210mm/100Wであった。
【0060】
出来上がった生機に対し、実施例2と同様に加工を行って仕上編地を得た。出来上がった編地の密度はコース数31個/2.54cm、ウェール数45個/2.54cmであった。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0061】
(比較例2)
オーストラリア綿(マイクロネアー:4.0〜4.6、平均繊維長:1.12〜1.21インチ、強度:30〜34g/tex)と、ポリエステル短繊維(繊度1.5dtex、繊維長38mm)を各50重量%の割合で混綿して、一般的な紡績の前紡工程(混綿−梳綿−錬篠−粗紡)を経て120ゲレン/15ydロービングを作成、豊田紡織株式会社製リング紡績装置RX−240(リンクコーナー)により、撚係数k=3.7でトータルドラフト38.4、ブレーキドラフト1.40で40Ne(英式綿番手)の紡績糸を製造した。経糸及び緯糸にこの紡績糸を用い、経密度127本/2.54cm、緯密度70本/2.54cmの平織物を製織し、通常の方法により、毛焼、糊抜き、連続精練・漂白、シルケットを行い、更に分散染料と反応染料にて連続精練染色して薄いサックス色に染めたのち、テンターにて柔軟剤を付与して仕上げた。仕上密度は経129本/2.54cm、緯72本/2.54cmであった。出来上がった仕上織物の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
編物でありながらタテ方向の伸度が制限されており、ビジネスシャツとして適度な伸度と柔らかさ、通気性、保形性を兼ね備えた編地を提供する。目付が80〜180g/m
である柄を有するダブル編地からなり、編地の裏組織において全構造に対するニット−ウエルト構造の比率が0.25〜1.0であり、編地基本組織を構成する全ニットループ数に対する全ウエルト数の比率が0.15〜0.8であり、コース密度が30〜100個/2.54cm、ウェール密度が30〜70個/2.54cmであり、且つタテ方向の伸長率(EMT)が5〜25%、タテ方向とヨコ方向の伸長率(EMT)の平均が9〜30%であることを特徴とするビジネスシャツ用編地。