(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
紙類、繊維類、木材類、植物類、プラスチック類、ゴム類、有機性汚泥及び動物性廃材のうち少なくとも一種類の材料から構成される芯部材料と、合成樹脂系接着剤と、を含む粒状芯部と、
前記粒状芯部を被覆する被覆層部と、を有し、
前記被覆層部は、
HLB値が6以下である界面活性剤を含む撥水層部と、
陽イオン性官能基を有する殺菌性界面活性剤を含み、前記撥水層部の内側に形成された抗菌層部とから構成される2層構造を有することを特徴とする排泄物処理材。
紙類、繊維類、木材類、植物類、プラスチック類、ゴム類、有機性汚泥及び動物性廃材のうち少なくとも一種類の材料から構成される芯部材料と、合成樹脂系接着剤と、を含む粒状の排泄物処理材において、
当該排泄物処理材は、当該排泄物処理材の表層から所定厚さの領域において、
HLB値が6以下である界面活性剤を含有させることにより形成されている撥水層部と、
陽イオン性官能基を有する殺菌性界面活性剤を含有させることにより、前記撥水層部の内側に形成されている抗菌層部とから構成される2層構造を有することを特徴とする排泄物処理材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の排泄物処理材は、表面積の30%乃至70%の撥水部と、それ以外の吸水部から構成されていることからもわかるように、吸水することを前提としており、また、撥水剤を粒状ゼオライトに噴霧しているにすぎないため、撥水効果が乏しく、上面や側面部に開口部を有し、下部に排尿を流下させる動物用トイレ(以下、「開放式流下型トイレ」という。)に使用した場合に、吸水された愛玩動物の尿から悪臭が外部に発生する場合があるという問題点を有していた。また、ゼオライトを使用しているため、製造コストが高価となってしまうという問題点も有していた。
【0006】
本発明は、上記の各問題点を解決するためになされたものであり、悪臭を効果的に防止することができる、主として開放式流下型トイレに好適に使用可能である安価な非吸水性の排泄物処理材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の排泄物処理材は、紙類、繊維類、木材類、植物類、プラスチック類、ゴム類、有機性汚泥及び動物性廃材のうち少なくとも一種類の材料から構成される芯部材料と、合成樹脂系接着剤と、を含む粒状芯部と、上記粒状芯部を被覆する被覆層部と、を有し、上記被覆層部は、HLB値(Hydrophile Lipophile Balance値)が6以下(更に好ましくは3以下)である界面活性剤を含む撥水層部と、陽イオン性官能基(カチオン荷電)を有する殺菌性界面活性剤を含む抗菌層部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明は、構成材料として芯部材料と合成樹脂系接着剤を含むことにより、空隙が少ない状態で強固に結着している粒状芯部を有していることから、粒状芯部自体に吸水を妨げる性能を有している。そして、HLB値6が以下と小さく、優れた撥水性能を有する界面活性剤を含む撥水層部により粒状芯部を被覆しているため、より効果的に非吸水性能(透水性能)を発揮させることができる。
また、陽イオン性官能基を有する殺菌性界面活性剤を含む抗菌層部を備えているため、悪臭の原因となる雑菌の繁殖を防ぐことができる。
したがって、本発明を開放式流下型トイレに使用した場合において、排尿を吸水することなく、表層に沿って流下させることができるため、排尿が排泄物処理材の内部に残留することがないことから悪臭を効果的に防止することができる。
【0009】
上記本発明の第1の排泄物処理材において、上記撥水層部を、粒状芯部を被覆する内側の被覆層部として構成し、抗菌層部を、上記撥水層部をさらに被装する外側の被覆層として構成した場合であっても、所定の効果を奏することになる。
しかし、上記抗菌層部を、粒状芯部を被覆する内側(粒状芯部側)の被覆層部として構成し、撥水層部を、抗菌層部をさらに被装する外側の被覆層として構成した場合には、外側の被覆層の撥水性能を高めることにより非吸水性能を増加させるとともに、内側の被覆層に殺菌性能を保持させることにより、何らかの原因で少量の水分が撥水層部を透過等した場合であっても、悪臭の原因となる雑菌の繁殖を防ぐことができるため、さらに好適である。
【0010】
また、本発明の第2の排泄物処理材は、紙類、繊維類、木材類、植物類、プラスチック類、ゴム類、有機性汚泥及び動物性廃材のうち少なくとも一種類の材料から構成される芯部材料と、合成樹脂系接着剤と、を含む粒状の排泄物処理材において、上記排泄物処理材の表層から所定厚さの領域において、HLB値が6以下である界面活性剤を含有させることにより形成されている撥水層部と、上記排泄物処理材の表層から所定厚さの領域において、陽イオン性官能基を有する殺菌性界面活性剤を含有させることにより形成されている抗菌層部と、を備えることを特徴としている。
【0011】
本発明の第2の排泄物処理材によれば、各界面活性剤を粒状芯部に被覆させるのではなく、粒状芯部の表層近傍の所定厚さの領域に含有させることで、撥水層部及び抗菌層部を形成することにより、上記本発明の第1の排泄物処理材と同様の効果を奏することができる。
【0012】
なお、上記本発明の第2の排泄物処理材において、上記抗菌層部が、上記撥水層部の内側に設けられている構成とすれば、上記第1の排泄物処理材の場合と同様の理由により好適である。
【0013】
なお、被覆層部を形成する界面活性剤として、HLB値が6以下であり、かつ、陽イオン性官能基を有する殺菌性能を有する物質が存在している。その場合には、形式的には、単層の被覆層部であるが、本発明の作用効果を奏するものであるため権利範囲に含まれるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、悪臭を効果的に防止することができる、主として開放式の動物用トイレに好適に使用可能である安価な非吸水性の排泄物処理材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための一形態(以下、「実施形態」という。)について、猫や犬等の愛玩動用の排泄物を処理するための排泄物処理材(以下、「本排泄物処理材」という。)を例として、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
[排泄物処理材]
(粒状芯部10)
図1に示すように、本排泄物処理材1の実施形態の一例は、粒状芯部10と、この粒状芯部10の表層を被覆する所定厚さの被覆層部15とから形成される複層構造を有している。
【0018】
粒状芯部10は、芯部材料と合成樹脂系接着剤を主要な構成材料としている。
この粒状芯部10は、小塊の形状に形成されていればよく、完全な球形等である必要はないものであり、柱状体(細長形)、扁平形等、その形状は問わない。
【0019】
(1)芯部材料
芯部材料は、紙類、繊維類、木材類、植物類、プラスチック類、ゴム類、有機性汚泥材質及び動物性廃材の少なくとも1種類のいずれかの材料を用いることができる。
【0020】
上記紙類は、パルプを原材料としているものであるならば種類を問うものではなく、バージンパルプはもちろん、各種の廃材等を用いることができる。例えば、薄葉紙廃材、衛生用紙廃材、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー廃材、化粧紙廃材、ちり紙廃材、紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、新聞紙屑、雑誌屑、バフ粉(主として印刷会社において、製本の切断時や削り時に発生する微細な紙粉)、機械パルプ廃材、化学パルプ廃材、チタン紙廃材、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ廃材、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、フラッフパルプ、吸水性繊維廃材、不織布廃材、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉若しくは衛生材料製造時に発生する紙粉、ラミネート紙廃材、ラミネート紙の印刷屑、ラミネート紙の端屑、ダンボール屑、損紙(衛生材メーカーから発生するトリムロス、不織布等、製紙メーカーから発生する紙屑全般)、包装紙、板紙、使用済み切符、パンチ屑等を使用することができる。
【0021】
上記繊維類とは、布等の原材料となる糸状の物質であり、天然繊維及び化学繊維等の種類を問わず、繊維工場から廃棄される繊維くず(木綿くず、羊毛くず、麻くず、糸くず、布くず、綿くず、くずまゆ、レーヨンくず、ナイロンくず、ポリエステルくず、ロープくず)等を使用することができる。
【0022】
木材類も種類を問うものではなく、各種廃木材(構造物の廃木材、木製品製造業等関係の廃木材、木製家具、木製パレット、鉋くず、おがくず、バーク類、梱包材くず、板きれ、廃チップ、伐採材や伐根、剪定枝、木粉等)を使用することができる。
【0023】
植物類も種類を問うものではなく、ササ、竹、落葉、刈草などはもちろん、植物性残渣等を使用することができる。ここで、植物性残渣とは、食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業又は飲食店等において原料として使用した植物の固形状の不要物をいい、ソースかす、しょうゆかす、こうじかす、酒かす、ビールかす、あめかす、海苔かす、でんぷんかす、豆腐かす、おから、あんかす、茶殻、焙煎コーヒー豆の抽出残渣、米・麦粉、大豆かす、果実の皮・種子、野菜くず、薬草かす、油かす等を使用することができる。
【0024】
プラスチック類も合成高分子化合物の固形状物質(例えば、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニール、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニリデン、アクリル樹脂、ポリウレタン(ウレタンフォーム)等の他、生分解性プラスチック等)であれば種類は問わないものであり、各種廃材を使用することができる。すなわち、廃プラスチック類、廃ポリウレタン、廃スチロール(発泡スチロールを含む)、廃農業用フィルム、壁紙廃材(壁紙廃材の分級残渣を含む)、各種合成樹脂系包装材料のくず、廃写真フィルム、廃ポリ容器類、電線の被覆くず、ライニングくず、廃ポリマー、塗料かす、接着剤かす、廃ベークランド(プリント基盤等)を使用することができる。
【0025】
また、他の排泄物処理材の廃材、紙おむつ廃材、生理用ナプキン廃材、乳パッド廃材、汗パッド廃材、失禁パッド廃材、動物用シーツ廃材、寝具用シーツ廃材、マスク廃材、アイマスク廃材、座席用ヘッドカバー廃材、枕カバー廃材等を使用することができる(いずれも各廃材のプラスチックに富む分離産物も含む)。
【0026】
ゴム類は、伸縮性に優れた高分子材料であれば、天然ゴム及び合成ゴム等、その種類は問わないものであり、各種廃材を使用することができる。例えば、廃タイヤ、合成ゴムくず等を使用することができる。
【0027】
有機性汚泥とは、工場廃水等の処理後に残る泥状物質及び各種製造業の製造工程において生ずる泥状物質であり、有機性及び無機性の総ての物質を使用することができる。例えば、製紙スラッジ、パルプスラッジ、下水汚泥、消化汚泥(余剰汚泥)、糊かす等を使用することができる。
【0028】
動物性廃材とは、食料品製造業、医薬品製造業、皮革製造業又は飲食店等において原料として使用した動物の不要物をいい、皮革、骨類等その種類は問わないものである。
【0029】
上記芯部材料は、1種類を用いるものでもよいが、性状が異なる2種類以上の様々な材料を組み合わせることも可能である。
【0030】
(2)合成樹脂系接着剤
合成樹脂系接着剤は、可能な限り間隙を形成しないように芯部材料を強固に結着させ、完成品の形状保持をさせるための材料である。この合成樹脂系接着剤は、ポリビニルアルコール(PVA)等の水溶性合成樹脂系接着剤を使用することも可能であるが、非吸水性能を発揮させるためには、非水溶性合成樹脂系接着剤であることが好適である。この非水溶性合成樹脂系接着剤は、例えば、ホットメルト接着剤やエマルジョン系接着剤等、公知の物質を使用することができる。
【0031】
上記芯部材料と合成樹脂系接着剤の配合割合は、芯部材料97重量部〜80重量部、合成樹脂系接着剤3重量部〜20重量部となるようにすることが好適である。
【0032】
なお、粒状芯部10には、石膏やベントナイト等の無機質系固化材を配合すると、さらに、各構成材料が密実に固着させることができ、空隙を少なくすることができることから、透水性能を高めることができるため非常に好適である。粒状芯部に無機質系固化材を配合する場合、芯部材料100重量部に対して、1重量部〜10重量部の配合割合とすることが好適である。
【0033】
また、粒状芯部10を構成する材料として、脱臭材料、消臭材料、殺菌作用を有する物質、着色物質(油性着色料など)等の物質を配合することもできる。
【0034】
(被覆層部15)
被覆層部15は撥水性能を保持させること、及び、殺菌作用を保持させるために設けられるものであり、本実施形態では、内側に設けられる抗菌層部16と、当該抗菌層部16をさらに被装する撥水層部17から構成される2層構造の場合について説明する。
【0035】
本実施形態では、上記粒状芯部10を直接的に被覆する抗菌層部16は、殺菌効果に優れた陽イオン性官能基を有する殺菌性界面活性剤(陽イオン界面活性剤、相対的にカチオン性が優っている両性界面活性剤等)から形成されている。また、撥水層部17は、撥水性能に優れたHLB値が6以下である界面活性剤から形成されている。
【0036】
抗菌層部16を構成する陽イオン性官能基を有する殺菌性界面活性剤としては、例えば、アルキル鎖長の短い第4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩等の公知物質のいずれか1種類、又は、複数種類の混合物を用いることができる。
【0037】
撥水層部17を構成する界面活性剤は、撥水性能に優れた物質を使用することが好ましいことは言うまでもなく、発明者は鋭意実験を重ねた結果、一部水に分散するに留まるHLB値6を基準とし、HLB値が6以下(好ましくは、ほとんど水に分散しない3以下)である界面活性剤を用いることが好適であることを見出したものである。
【0038】
このような性質を有する界面活性剤として、フッ素系界面活性剤(例えば、ペルフルオロアルキルスルホン酸、ペルフルオロアルキルカルボン酸等を主な成分とするもの)、シリコン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤(例えば、アルキル鎖長の長い第4級アンモニウム塩、2−エチルヘキサン酸トリグリセライド)等の公知物質のいずれか1種類、又は、複数種類の混合物を用いることができる。
【0039】
なお、この被覆層部15は、粒状芯部10をむらなく被覆できるような層厚に形成する必要がある。
【0040】
[製造方法]
続いて、本排泄物処理材1の製造方法(以下、「本製造方法」という。)について説明する。
本製造方法は、成形工程と、被覆工程と、分粒工程と、香料添加工程と、袋詰め工程とを主な工程として構成されている。
【0041】
(1)成形工程
本工程は、粒状芯部を形成する工程である。
本工程では、紙類、繊維類、木材類、植物類、プラスチック類、ゴム類、有機性汚泥又は動物性廃材から構成される芯部材料を破砕機で所定の大きさに粉砕し、当該粉砕された芯部材料と、合成樹脂系接着剤等の材料を所定の割合となるようにミキサに投入して混ぜ合わせる。そして、必要に応じて、所望量の加水を行い、当該芯部材料を造粒機による押出造粒やその他の成形方法を用いて粒状芯部10を形成する作業を行うことになる。
【0042】
なお、通常、押出成形等を行った場合には、加圧されることにより50℃以上(好ましくは60℃以上)となる。そのため、芯部材料に、壁紙廃材等(塩化ビニル壁紙廃材等)の合成高分子化合物材料を用いた場合には、当該温度条件下で、合成樹脂材料が熱変形し、成形後に固化する課程において、強固に結着することになるため、完成品の崩壊等を防止することができるため好適である。
【0043】
(2)被覆工程
本工程は、粒状芯部10の周囲を上記被覆材料で被覆することにより、被覆層部15を形成する工程である。本工程では、コーティング装置等を用いて、粒状芯部10の周囲に被覆材料を散布または噴霧(以下、「散布等」という。)し、被覆層部15を形成する作業を行う工程である。本工程では、内側となる被覆層から順番に、各層を構成する被覆材料を、散布等することにより、被覆層部15を形成することができる。
【0044】
(3)分粒工程
本工程は、排泄物処理材の寸法が所定の規格になるように分粒する工程である。本工程では、所定の寸法の篩目を有する篩に、前工程で製造された排泄物処理材を通過させることにより規格外の製品を分別し、所定の規格品のみを抽出する作業を行うことになる。
【0045】
(4)香料添加工程
本工程は、排泄物処理材を封入するための包装袋内に、空気等と共に香料を充填する工程である。
【0046】
(5)袋詰め工程
本工程は、製造された排泄物処理材を香料が充填された包装袋に詰める工程である。本工程では、香料が入れられた包装袋に、所定量の排泄物処理材を詰めた後、包装袋の開口部を封止する作業を行うことにより、当該包装袋内で、排泄物処理材の表面に香料が付着することになる。
【0047】
なお、被覆工程から香料添加工程に至るまでの間に、適宜、排泄物処理材を乾燥機で乾燥させる乾燥工程を設ける場合もある。
【0048】
[作用効果]
本排泄物処理材1は、構成材料として芯部材料と合成樹脂系接着剤を含み、空隙が少ない状態で強固に結着している粒状芯部10を有していることから、粒状芯部10自体に吸水を妨げる性能を有している。そして、HLB値が6以下と小さく、優れた撥水性能を有する界面活性剤を含む撥水層部17により、粒状芯部10を被覆しているため、より効果的に非吸水性能を発揮させることができる。
また、陽イオン性官能基を有する殺菌性界面活性剤を含む抗菌層部16を備えているため、何らかの原因で少量の水分が撥水層部17を透過等した場合であっても、悪臭の原因となる雑菌の繁殖を防ぐことができることになる。
そのため、本排泄物処理材1を開放式流下型トイレに使用した場合において、排尿を吸水することなく、表層に沿って、流下させることができる。したがって、排尿が排泄物処理材の内部に残留しないため、悪臭を効果的に防止することができる。
【0049】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、上記の本排泄物処理材1は、粒状芯部10の周囲に被覆層部15を形成したが、粒状芯部20の表層近傍の内側部の所定深さに、直接に撥水層部20aと、抗菌層部20bとを設けることにより、排泄物処理材2を形成してもよい(
図2)。この場合には、粒状芯部20の表層から所定厚さの領域において、HLB値が6以下である界面活性剤を浸潤又は練り込み等することにより含有させて撥水層部20aを形成するとともに、撥水層部20aの内側領域(粒状芯部20の表層から所定厚さの領域)において、陽イオン性官能基を有する殺菌性界面活性剤を浸潤又は練り込み等することにより含有させて抗菌層部20bを形成することができる。
【0050】
なお、本排泄物処理材は、特に、開放式の動物用トイレに使用することが最適であるが、その他の使用目的で使用することも当然に可能である。
【実施例】
【0051】
本排泄物処理材の性質を調べるために、下記のサンプルを作成し、吸水試験及び抗菌力試験を行った。
【0052】
[吸水試験]
(1)試験内容
各サンプルの吸水性能を調べるために、以下の吸水試験を行った。
直径100mm、深さ50mmの半球体であり、底面部に目開2mmの網体を有する容器に、サンプルを上記底面部から20mmの高さとなるまで充填する。そして、25℃±3℃の水に3秒間浸潤させた後に引上げる。その後、表1の条件下で計3回サンプルの重量を計測し、下式により吸水率を算出した。
吸水率(%)=(浸潤後のサンプル重量−浸潤前のサンプル重量)
/浸潤前のサンプル重量×100
【0053】
【表1】
【0054】
(2)サンプル
以下の試験で使用した本排泄物処理材の各サンプルは、粒状芯部と被覆層部とから形成される排泄物処理材である。
【0055】
<A>本排泄物処理材の各サンプル
各サンプル1,2は、粒状芯部は、塩化ビニル含有壁紙廃材97重量%、ポリビニルアルコール3重量%の混合物とした。
各サンプル1,2は、内側被覆層部と外側被覆層部を備える2層構造の被覆層部を形成した。
【0056】
サンプル1は、内側被覆層部に殺菌性能が高い陽イオン界面活性剤(ライオン株式会社 アーカード210−80E ジアルキルアンモニウム
クロライド)を用いて、外側被覆層部に、撥水性能が高い陽イオン界面活性剤(ライオン株式会社 製 エソカード 0/12E EO付加型アンモニウム クロライド)を用いている。
一方、サンプル2は、内側被覆層部に撥水性能が高い陽イオン界面活性剤(ライオン株式会社 製 エソカード 0/12E EO付加型アンモニウム クロライド)を、外側被覆層部に、殺菌性能が高い陽イオン界面活性剤(ライオン株式会社 アーカード210−80E ジアルキルアンモニウム
クロライド)を用いている。
【0057】
<B>比較対象製品のサンプル
比較対象サンプル3は、古紙パルプとシリカゲルの混合物から形成される粒状芯部を、撥水剤により被覆した単層構造の被覆部である製品(他社製品)である。
【0058】
(3)試験結果
表2は、吸水試験の結果を示したものである。吸水率は小さいほど透水性能が高いことを示す指標であるが、被覆層部に上記陽イオン界面活性剤を使用したサンプル1,2は、比較対象サンプル3と比べて、良好な透水性能を示すことが確認された。
その中でも、特に、サンプル1は、内側被覆層部に殺菌性能が高い陽イオン界面活性剤を用い、外側被覆層部に、撥水性能が高い陽イオン界面活性剤を用いたサンプル1が、サンプル2と比較して、良好な透水性能を示すことが確認された。
【0059】
【表2】
【0060】
[抗菌力試験]
排尿による悪臭の原因となる黄色ブドウ球菌数を計測するために、以下の抗菌力試験を行った。
本抗菌力試験は、各サンプルにサンプル1g当たり4.0×10
12の黄色ブドウ球菌を接種し、24時間後及び48時間後の黄色ブドウ球菌数を計測することにより実施した。
また、抗菌力試験は、同一の試験を3回実施し、その平均値を採用した。
【0061】
本排泄物処理材の各サンプル1,2は、抗菌力試験で使用したものと同一のサンプルを使用した。
一方、比較対象サンプル4は、10重量%濃度のNB培地に、2重量%濃度の尿素液を含ませた脱脂綿とした。
【0062】
表3は、抗菌力試験の結果(各サンプル1g当たりの黄色ブドウ球菌数)を示したものである。黄色ブドウ球菌数は小さいほど、悪臭の原因物質が少ないことを示す指標であるが、被覆層部に上記陽イオン界面活性剤を使用したサンプル1,2は、比較対象サンプル4と比べて、良好な抗菌性能を示すことが確認された。
また、吸水試験の場合と同様に、サンプル2と比較して、サンプル1の方が良好な抗菌性能を示すことが確認された。
【0063】
【表3】
【0064】
以上より、本排泄物処理材に関し、透水性能が良好であり、悪臭発生原因となる黄色ブドウ球菌数の抑制に優れた効果を発揮することが確認された。