特許第6302666号(P6302666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6302666-ラミネート用接着剤 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302666
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】ラミネート用接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20180319BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20180319BHJP
   C09J 129/04 20060101ALI20180319BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   C09J175/04
   C09J175/06
   C09J129/04
   B32B27/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-266871(P2013-266871)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-120856(P2015-120856A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】釜井 教義
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰史
(72)【発明者】
【氏名】池田 仁志
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−029936(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/082363(WO,A1)
【文献】 特開2002−285118(JP,A)
【文献】 特開2005−154504(JP,A)
【文献】 特表平06−506007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/04
C09J 175/06
C09J 129/04
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオール成分、(B)イソシアネート成分および(C)酸変性されたブチラール樹脂が配合されて得られる、ラミネート用接着剤であって、
(A)〜(C)の総重量100重量部に対し、(C)酸変性されたブチラール樹脂が0.01〜1.0重量部配合された、ラミネート用接着剤
【請求項2】
(A)ポリオール成分は、ポリエステルポリウレタンポリオールを含む、請求項に記載のラミネート用接着剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のラミネート用接着剤を用いて得られるラミネートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート用接着剤、より詳細には、初期接着強度(養生後の接着強度)、耐内容物性(特に、耐酸性及び耐油性)に優れ、更に、経時(例えば、加熱及び加湿等)による接着強度の低下が小さいラミネート用接着剤及びそれを用いたラミネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療品及び化粧品等の包装用材料、及びFPC基板及びTAB基板等の基板を製造する際に、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル及びポリイミド等)、金属蒸着フィルム、及び金属箔(例えば、アルミ及び銅等の箔)を貼り合わせた複合フィルムが使用されている。これらのプラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、及び金属箔等を接着するために、有機ポリオールと有機イソシアネートを組み合せたウレタン接着剤が知られている。
特許文献1〜3は、ウレタン接着剤で複合フィルムを作製し、食品包装フィルムとして利用すること、及び金属箔とプラスチックフィルムとを貼り合わせ、絶縁性に優れたプリント配線基板を製造することを開示する。
【0003】
特許文献1は、リンの酸素酸、カルボン酸及びその無水物、及びエポキシ樹脂がウレタン樹脂と配合された食品包装フィルム用接着剤を開示する(特許文献1[請求項1]及び[実施例]参照)。特許文献1のウレタン接着剤は、その表3に示されるように、耐熱性及び耐酸性試験に優れ、60℃保存安定性にも優れる。
【0004】
特許文献2及び3は、ブチラール樹脂が配合されたウレタン接着剤で金属箔をプラスチック基材に貼り付け、配線基板用の積層体を作製することを開示する。特許文献2は、ポリイミドフィルムに銅箔を貼り付け、接着性、耐薬品性及び絶縁性を評価している(特許文献2[表1]参照)。特許文献3は、接着剤付銅箔をプリプレグに重ね、耐熱性及び熱時引き剥がし強さを評価している(特許文献3[0018]〜[0021]及び[表1]参照)。
【0005】
特許文献1〜3のウレタン接着剤は、耐熱性に優れるが、フィルムで包装袋を製造する際の作業効率を考慮すると、養生後のフィルムへの初期接着強度が充分ではない。
更に、ウレタン接着剤で食品包装袋を製造する場合、食品包装フィルム用接着剤は、滅菌処理後、ある程度の期間を経ても、包装フィルムの外観に影響を及ぼさないこと、即ち、耐内容物性に優れることが要求される。
【0006】
特許文献1の食品包装フィルム用接着剤は、エポキシ樹脂及びリンの酸素酸の添加によって、耐熱性及び耐酸性がある程度向上するが、近年の高いレベルの要求を十分に満たすと言い難い。近年では、この接着剤を用いて製造された袋内に、食酢の他に、様々な内容物が存在しても、接着強度に優れること(耐熱性および耐酸性に優れること)、及び食品包装フィルムの外観が維持されること(耐内容物性に優れること)が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2683937号明細書
【特許文献2】特許第2844235号明細書
【特許文献3】特開平10−158614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するためにされたもので、その課題は、プラスチックフィルム及び金属箔等を積層してラミネートフィルムを製造する際、養生後のフィルムへの初期接着強度に優れ、ラミネートフィルムで袋を作成後、内容物を入れて滅菌処理した後、ラミネートフィルムが剥離し難く(加熱及び加湿後の経時による接着強度の低下が小さく)、さらに、ラミネートフィルムの外観を長期にわたって維持できる(耐内容物性に優れる)、ラミネート用接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、ウレタン樹脂を製造する際、変性されたブチラール樹脂を配合すると、養生後の初期接着性および滅菌後の剥離強度に優れ、耐内容物性に優れるウレタン樹脂が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の一の要旨において、
(A)ポリオール成分、(B)イソシアネート成分および(C)酸変性されたブチラール樹脂が配合されて得られる、ラミネート用接着剤を提供する。
かかるラミネート用接着剤は、食品包装袋を製造するための積層物(又はラミネート)を製造するために好適に使用することができる。
【0011】
本発明の一の態様において、(A)〜(C)の総重量100重量部に対し、(C)酸変性されたブチラール樹脂が0.01〜1.0重量部配合されて得られる、ラミネート用接着剤を提供する。
本発明の他の態様において、(A)ポリオール成分は、ポリエステルポリウレタンポリオールを含む、ラミネート用接着剤を提供する。
【0012】
本発明の好ましい態様において、
ポリエステルポリウレタンポリオールは、ポリエステルポリオールがイソシアネート化合物によって鎖延長されて得られる、ラミネート用接着剤を提供する。
本発明の他の要旨において、本発明に係るラミネート用接着剤を用いて得られるラミネートフィルムを提供する。かかるラミネートフィルムは、食品包装袋を製造するために好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のラミネート用接着剤は、(A)ポリオール成分と(B)イソシアネート成分が配合されて得られるウレタン樹脂であるが、更に、(C)酸変性されたブチラール樹脂が配合されることによって、養生後の初期接着強度、経時による接着強度の低下が小さく、及び耐内容物性に優れる。
本発明のラミネート用接着剤を用いて得られるラミネートフィルムは、経時による接着強度の低下が少ないので、ラミネートフィルムに剥離が生じ難く、長期間にわたって外観を維持することができる。
【0014】
本発明のラミネート用接着剤は、(A)〜(C)の総重量100重量部に対し、(C)酸変性されたブチラール樹脂が0.01〜1.0重量部配合されて得られる場合、耐内容物性がより向上する。
本発明の他の態様において、(A)ポリオール成分は、ポリエステルポリウレタンポリオールを含む場合、耐内容物性がより向上する。
【0015】
本発明のラミネート用接着剤は、ポリエステルポリウレタンポリオールが、ポリエステルポリオールがイソシアネート化合物によって鎖延長されて得られる場合、耐内容物性がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のラミネートフィルムの一実施形態を示す断面図である。
図2】酸変性されたブチラール樹脂(C1)の赤外線吸収スペクトルを示す。
図3】酸変性されていないブチラール樹脂(C’2)の赤外線吸収スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のラミネート用接着剤は、(A)ポリオール成分(以下、「(A)成分」ともいう)、(B)イソシアネート成分(以下、「(B)成分」ともいう)、(C)酸変性されたブチラール樹脂(以下、「(C)成分」ともいう)が配合(又は混合)されて得られる。
【0018】
(A)成分と(B)成分が反応してウレタン樹脂が得られるが、更に(C)成分も反応してよい。(C)成分は、かかるウレタン樹脂と結合しても、結合しないで存在してもよく、本発明が目的とする接着剤を得られる限り、(C)成分の存在形態は、特に制限されるものではない。
【0019】
本発明に係る接着剤は、目的とする接着剤を得ることができる限り、(A)〜(C)成分の配合順序及び配合方法等によって、特に制限されるものではない。接着剤は、例えば、(A)ポリオール成分、(B)イソシアネート成分および(C)酸変性されたブチラール樹脂の3成分を同時に配合して得られるものであっても、(A)成分又は(C)成分のいずれかを予め(B)成分と配合させ、その後、残り一成分を配合して得られるものであっても良いが、(A)成分と(C)成分とを予め混合し、その混合物を(B)成分と配合して得られるものがより好ましい。
【0020】
(A)成分、(B)成分、及び(C)を配合(又は混合)することによる接着剤の製造は、既知の方法により行うことができる。溶媒中で(A)〜(C)成分を配合して接着剤を得ることができるが、互いに溶媒を用いずに(A)〜(C)成分を配合することもできる。
【0021】
本発明において「(A)ポリオール成分」とは、目的とする本発明のラミネート用接着剤を得ることができ、接着剤の製造に悪影響を与えるものでなければ特に限定されない。
【0022】
(A)成分は、ウレタン樹脂を得るために一般的に使用されるポリオールであれば良く、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、またはこれらポリオールの変性物を例示できる。
ポリエステルポリウレタンポリオールが(A)成分に含まれると、本発明のラミネート用接着剤の耐内容物性がさらに向上する。
【0023】
本発明では、「ポリエステルポリオール」とは、「主鎖型」ポリエステルであって、「主鎖」にエステル結合と水酸基を有する化合物をいう。この水酸基は、主鎖の末端に通常位置し、イソシアネート基と反応する官能基として作用する。
ポリエステルポリオールは、一般に、低分子ポリオールと、ジカルボン酸及びその無水物との縮合重合反応によって得られる。
【0024】
そのようなジカルボン酸として、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリト酸、トリメシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が例示される。これらは、単独又は組み合わせて使用される。
【0025】
カルボン酸無水物として、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。これらは、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0026】
低分子ポリオールとして、官能基数が1〜3個のものが好ましく、特に、二官能性ポリオール、いわゆるジオールが好ましい。低分子ポリオールは、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0027】
ジオールとして、例えば、エチレングリコール、1−メチルエチレングリコール、1−エチルエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジブチル−1,5−ペンタンジオール等の低分子量ジオールが含まれる。特には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールから選択される少なくとも一種を用いても良い。
【0028】
「アクリルポリオール」とは、水酸基を有する(メタ)アクリレートの付加重合反応によって得られる化合物をいい、「側鎖」にエステル結合を有する。
本発明では、「アクリルポリオール」は、水酸基を有する(メタ)アクリレートの単独重合体でも、「その他の重合性単量体」との共重合体であってもよい。アクリルポリオールの水酸基がイソシアネート基と反応する。
【0029】
「水酸基を有する(メタ)アクリレート」として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等を例示する事ができる。
【0030】
「その他の重合性単量体」とは、「水酸基を有する(メタ)アクリレート」以外の「エチレン性二重結合を有するラジカル重合性単量体」である。具体的には、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、スチレン及びビニルトルエン等を例示する事ができる。
【0031】
本発明では、「ポリエーテルポリオール」として、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及びポリオキシエチレングリコール(PEG)等を例示する事ができる。
【0032】
「ポリエーテルポリウレタンポリオール」とは、上記ポリエーテルポリオールをイソシアネート化合物で鎖長延長し、ウレタン化したものである。
「ポリエステルポリウレタンポリオール」とは、上記ポリエステルポリオールをイソシアネート化合物で鎖長延長し、ウレタン化したものである。
「ポリエーテルエステルポリオールとは、」主鎖中に、エステル基とエーテル基の双方を有するポリオールである。
尚、(A)成分は、低分子ポリオールを含んでよい。そのような低分子ポリオールとして、ポリエステルポリオールの製造に使用される低分子ポリオールを例示できる。
【0033】
本発明にかかる「(B)イソシアネート成分」とは、例えば、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート、脂環式イソシアネートを含み、本発明が目的とするラミネート用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。
【0034】
本発明において、(B)イソシアネート成分は、脂肪族イソシアネートもしくは脂環式イソシアネートのみから構成されることを意味しない。本発明が目的とするラミネート用接着剤を得られる限り、即ち、本発明のラミネート用接着剤の剥離強度及び耐内容物性に悪影響を与えず、かつ芳香族アミン類の溶出が確認されない範囲で、(B)イソシアネート成分は芳香族イソシアネートを含んでも良い。
【0035】
本明細書において、「脂肪族イソシアネート」とは、鎖状の炭化水素鎖を有し、その炭化水素鎖にイソシアネート基が直接結合している化合物であって、環状の炭化水素鎖を有さない化合物をいう。「脂肪族イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、直接その芳香環と、イソシアネート基は結合していない。尚、本明細書では、芳香環は環状の炭化水素鎖に含まれない。
【0036】
「脂環式イソシアネート」とは、環状の炭化水素鎖を有し、鎖状の炭化水素鎖を有してよい化合物である。イソシアネート基は、環状の炭化水素鎖と直接結合していても、有し得る鎖状の炭化水素鎖と直接結合してもよい。「脂環式イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、その芳香環と、イソシアネート基は直接結合していない。
【0037】
「芳香族イソシアネート」とは、芳香環を有し、かつイソシアネート基がその芳香環と直接結合している化合物をいう。従って、たとえ芳香環をその分子内に有していたとしても、イソシアネート基が芳香環に直接結合していない化合物は、脂肪族イソシアネートか、脂環式イソシアネートに分類される。
【0038】
従って、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(OCN−C−CH−C−NCO)は、イソシアネート基が芳香環に直接結合しているので、芳香族イソシアネートに該当する。一方、例えば、キシリレンジイソシアネート(OCN−CH−C−CH−NCO)は、芳香環を有するが、イソシアネート基が芳香環に直接結合せず、メチレン基と結合しているので、脂肪族イソシアネートに該当する。尚、芳香環は、二つ以上のベンゼン環が縮環していてもよい。
【0039】
脂肪族イソシアネートとして、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(以下、HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート)(以下、XDI)等を例示できる。
【0040】
脂環式イソシアネートとしては、例えば、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)(以下、IPDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン等を例示できる。
【0041】
芳香族イソシアネートとして、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDI)、トルエンジイソシアネート(以下、TDI)、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート等を例示できる。
これらのイソシアネート化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0042】
本発明では、(B)イソシアネート成分は、HDI、IPDI、XDI及びこれらの変性体から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリメチロールプロパンアダクト体及びキシリレンジイソシアネート(XDI)のトリメチロールプロパンアダクト体から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。さらに、本発明のラミネート用接着剤を食品包装フィルム用接着剤として利用する場合、接着剤の耐内容物性も向上する。
【0043】
本発明において、(C)酸変性されたブチラール樹脂(酸変性ブチラール樹脂)は、酸基(例えば、カルボキシル基、無水カルボン酸基、スルホ基及びスルホン酸基等)を含む単量体に由来する構造を有するブチラール樹脂を意味し、本発明が目的とするラミネート用接着剤を得られる限り、特に制限されることはない。酸基は、カルボキシル基を含むことが好ましい。
一般的なブチラール樹脂は、下記化学式(1)で表される構造を有し、ブチラール基の他に、少量の水酸基と少量のアセチル基(又は酢酸エステル基)を有し得る。
本明細書において、「酸変性」とは、酸価が0.3mgKOH/g以上あることを意味する。
【0044】
【化1】
【0045】
(C)酸変性ブチラール樹脂は、一般的に化学式(1)で示される構造に、更に、酸基が(直接又は間接に)結合した構造を有する。従って、(C)酸変性ブチラール樹脂は、一般的に、化学式(1)で示される構造が、更に、酸基で変性された構造を有する。
【0046】
本発明において、(C)酸変性ブチラール樹脂は、酸価が0.3〜5.0mgKOH/gであることが好ましい。酸価が上記範囲にある場合、本発明のラミネート用接着剤は、耐内容物性により優れる。
尚、本発明に係る(C)酸変性ブチラール樹脂の「酸価」は、樹脂1g中に含まれる酸基が全て遊離した酸であると仮定して、それを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数の計算値で表す。従って、実際の系内で塩基として存在しているとしても、遊離した酸として考慮する。
【0047】
本発明に係る「酸価」は、JISK 0070に従い、(C)酸変性ブチラール樹脂を溶剤に溶かし、指示薬としてフェノールフタレインを加え、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定して求められる。具体的には、以下の数式(I)で「酸価」を求める。
【0048】
【数1】
B:測定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
F:0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:資料の質量(g)
5.611:水酸化カリウムの式量56.11×1/10
【0049】
本発明において、(C)酸変性ブチラール樹脂は、数平均分子量が10,000〜150,000であることが好ましい。数平均分子量が上記範囲にある場合、本発明のラミネート用接着剤は、塗工性、養生後のフィルムへの初期接着強度、および耐内容物性により優れる。
尚、本明細書において、数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定し、ポリスチレン標準を用いて換算して得られる値である。具体的には、下記のGPC装置及び測定方法を用いて値を測定し、換算することができる。GPC装置は、東ソー社製のHCL−8220GPCを用い、検出器として、RIを用いる。GPCカラムとして、東ソー社製のTSKgel SuperMultipore HZ−M 2本を用いる。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を0.35ml/min、カラム温度を40℃にて流して、測定値を得る。標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて、測定値を換算して、目的とするMnを得る。
【0050】
本発明の実施形態として、(A)〜(C)の総重量100重量部当たり、(C)酸変性ブチラール樹脂を0.01〜1.0重量部を使用することが好ましく(固形分換算)、(C)酸変性ブチラール樹脂を0.01〜0.5重量部を使用することがより好ましく、(C)酸変性ブチラール樹脂を0.05〜0.2重量部を使用することが特に好ましい。
上記範囲内で(C)酸変性ブチラール樹脂を使用すると、本発明のラミネート用接着剤の耐内容物性がよりいっそう向上する。
【0051】
本発明のラミネート用接着剤は、(A)〜(C)成分の他に、その他の成分を配合(又は混合)して得てもよい。「その他の成分」として、例えば、溶媒、粘着付与樹脂、顔料、可塑剤、触媒及び接着促進剤等を例示できる。
【0052】
「粘着付与樹脂」として、例えば、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、ロジンエステル、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂(ポリエステルポリオールを除く)等を例示できる。粘着付与樹脂は、一般に、1500g/モル未満、特に1000g/モル未満の低い分子量を有する。粘着付与樹脂の添加量は、接着剤の総重量100重量部(固形分)に対し、0〜50重量部であることが好ましく、30重量部以下であることがより好ましい。
【0053】
「顔料」として、例えば、TiO、SiO、FeOまたは類似の酸化物またはオキシヒドレートに基づくナノ顔料が挙げらる。これらの顔料は、通常、500nm以下の粒度を有することが好ましく、100nm未満の粒度を有することがより好ましい。
【0054】
「可塑剤」として、例えば、ホワイトオイル、ナフテン鉱油、パラフィン炭化水素油、ポリプロピレンオリゴマー、ポリブテンオリゴマー、ポリイソプレンオリゴマー、水素化ポリイソプレンおよび/またはポリブタジエンオリゴマー、フタレート、アジペート、ベンゾエートエステル、植物油または動物油およびこれらの誘導体等を例示できる。植物油、動物油及びこれらの誘導体は、一般的に食品に使用され、安全性がより高いと考えられるので、本発明のラミネート用接着剤を食品包装フィルムの製造に利用することを考慮すると、より好ましい。
【0055】
「触媒」として、金属触媒、例えば、錫触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛等)、そのほかの金属触媒(ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等)、及びアミン系触媒、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルへキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類、ジアルキルアミノアルキルアミン類等を例示できる。
【0056】
「接着促進剤」としては、シラン化合物が挙げられる。既知の有機官能性シラン、例えば(メタ)アクリルオキシ官能性、エポキシ官能性、アミン官能性及び非反応性置換シランを、接着促進剤として用いることができる。その例は、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシメチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシメチルトリエトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン等である。
本発明の実施態様として、接着剤の総重量100重量部(固形分)に対し、接着促進剤0.1〜5重量部を含むことが好ましい。
【0057】
本発明のラミネート用接着剤は、上述したように、成分(A)、(B)および(C)成分を混合することによって製造することができる。場合により、その他の成分を混合してよい。混合方法は、本発明が目的とするラミネート用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。成分を混合する順序等についても、特に限定されるものではない。本発明に係るラミネート用接着剤は、特別な混合方法及び特別な混合順序等を要することなく製造することができる。得られたラミネート用接着剤は、養生後のフィルムへの初期接着強度および経時による接着強度の低下が小さい。
【0058】
本発明のラミネート用接着剤で食品包装フィルムを製造した場合、食品包装分野で要求される耐内容物性により優れる。
本発明のラミネート用接着剤は、15〜100℃でフィルムに塗布されるので、この温度領域において低粘度であるべきである。食品包装フィルム用接着剤の粘度は、塗布性を考慮すると、(Brookfield粘度計)を用いて測定して、100〜5000mPasであることが好ましく、100〜500mPasであることがより好ましい。
【0059】
本発明のラミネートフィルムは、上述のラミネート用接着剤を用いて製造された積層体である。積層体を形成するために使用されるフィルムは、本発明に係る積層体を得られる限り特に制限されることはないが、例えば、プラスチック基材に金属層が形成されたフィルム、金属層が形成されていないフィルムを例示できる。
【0060】
ラミネートフィルムを作製する際には、本発明のラミネート用接着剤をフィルムへ塗布する。塗布方法として、例えば、グラビアコート、ワイヤーバーコート、エアナイフコート、ダイコート、リップコート、コンマコートなどの様々な方法により行うことができる。本発明のラミネート用接着剤が塗布された複数のフィルムを貼り合わせ、ラミネートフィルムを製造することができる。
フィルムへラミネート用接着剤を塗布する場合、塗布量は、1〜100g/mであることが好ましく、2〜35g/mであることがより好ましい。
【0061】
本発明のラミネートフィルムの一形態を図1に例示するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【0062】
図1は、ラミネートフィルム10の断面図を示す。このラミネートフィルム10は、1枚の金属箔14と、2枚のプラスチックフィルム12及び13を含む積層体(ラミネート)であり、接着剤層11を用いて、金属箔14の両面にプラスチックフィルム12及び13が、接着されている。より具体的には、例えば、プラスチックフィルム12はPETフィルムであり、フィルム13はポリオレフィンフィルムが好ましく、PPフィルムがより好ましく、最も好ましくはCPPフィルムであり、それらの間に、金属箔14が挿入されている。金属箔14は、例えば、アルミニウム箔である。そのフィルム12と金属箔14の間と、フィルム13と箔14の間は、いずれも、ラミネート用接着剤層11で接着されている。
【0063】
積層されるフィルムとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド等のプラスチックフィルム、または、アルミニウム箔等の金属箔、金属蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム、ステンレス、鉄、銅、鉛等の金属フィルム等が挙げられる。また、その厚みは、例えばプラスチックフィルムの場合には、5〜200μmであることが好ましい。
【0064】
本発明のラミネートフィルムは、耐内容物性が優れているので、食品包装フィルムに適している。フィルムに内包される食品は、加圧加熱滅菌した食品、すなわち、レトルト食品であり、一般的なレトルト食品、例えば、カレー、シチュー、ミートソース及びスープ等が挙げられる。
【0065】
本発明のラミネートフィルムを食品包装フィルムとして使用する場合、レトルト食品を封入する包装袋、いわゆる、レトルトパウチとして利用されるのが好ましい。
食品包装フィルムは、本発明のラミネート用接着剤で製造されるので、フィルムが剥離し難く、滅菌処理後、2週間経過しても、フィルム外観に変化が見られず、従来の食品包装フィルムと比較して、耐内容物性により優れる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、これらの例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0067】
<ラミネート用接着剤の製造>
実施例および比較例で使用したラミネート用接着剤の原料を以下に記載する。
(A)ポリオール成分
A1:ポリエステルポリウレタンポリオール(ヘンケル社製 Liofol UR2790−22(商品名))
A2:ポリエステルポリオール(ヘンケル社製 Liofol LA2770−21(商品名))
【0068】
(B)イソシアネート成分
B1:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(三井化学(株)社製 タケネートD110N(商品名))
B2:イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(三井化学(株)社製 タケネートD140N(商品名))
【0069】
(C)酸変性されたブチラール樹脂
C1:酸変性されたポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)社製 エスレック HR−7 酸価2mgKOH/g)
(C’)酸変性されていないブチラール樹脂
C’2:ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製 エスレックB BL−10(商品名) 酸価0.1mgKOH/g)
【0070】
下記の実施例1〜5及び比較例1〜2のラミネート用接着剤を、上記成分を混合して製造した。
C1及びC’2の酸変性の有無は、酸価及びIRスペクトルで判断した。
既出の計算式(I)でC1よびC’2の酸価を算出し、更に、赤外分光装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、各々のIRスペクトルを測定した。C1の赤外吸収スペクトルを図2に示し、C’2の赤外吸収スペクトルを図3に示した。
ラミネート用接着剤の詳細な組成を、表1〜2に示した。実施例1の接着剤の製造方法を具体的に下記に示した。実施例2〜5及び比較例1〜2の接着剤は、実施例1の製造方法と同様の方法を用いて製造した。各接着剤は、下記の試験方法を用いて評価された。
【0071】
<実施例1>
表1に示すように、74.0gの(A1)ポリエステルポリウレタンポリオール[105.6gの(A1)ポリエステルポリウレタンポリオールの酢酸エチル溶液(固形分70.0重量%)]、(C1)酸変性されたブチラール樹脂0.05g[0.5gの酸変性されたポリビニルブチラールのジプロピレングリコール溶液(固形分10.0重量%)]を秤量して混合し、その後、この混合物に(B1)15.6g及び(B2)10.4gを添加し、さらに、酢酸エチルを加え、固形分30重量%の接着剤溶液を製造した。この溶液をラミネート用接着剤として用いて、以下の試験を行った。
【0072】
<接着剤塗布CPPシート及び積層体の製造>
先ず、実施例1の食品包装フィルム用接着剤を無延伸ポリプロピレン(CPP)シート(東レフィルム加工社製 トレファンNO ZK207(商品名) 厚さ70μm)に固形分重量が4g/mとなるように塗布し、80℃で5分間乾燥させ、接着剤塗布CPPシートを得た。
その後、接着剤塗布CPPシートの接着剤塗布面に、アルミ箔(住友軽金属社製 1N30 厚さ50μm)のマット面を被せ、平面プレス機(神藤金属工業社製のASF−5(商品名))を用いて、圧締圧1.0MPa 50℃で30分間、CPPシートとアルミ箔をプレスした。プレスされたシートと箔を50℃で3日間養生して、CPPシート/接着剤/アルミ箔からなる積層体を得た。
【0073】
<評価>
1.養生後接着剤の初期接着強度
積層物を15mm幅に切り出した。引っ張り強度試験機(オリエンテック社製のテンシロンRTM−250(商品名))を用いて、室温環境下、引っ張り速度300mm/min、90°の剥離試験を行って、養生後接着剤の初期接着強度を評価した。
評価基準は以下のとおりである。
○:9N/15mm以上
△:7N/15mm以上、9N/15mm未満
×:7N/15mm未満
【0074】
2.滅菌後の接着強度
積層物の両端をヒートシールし、CPPシートが内側になるように内寸が14cm×14cmの袋(又はパウチ)を作製した。その袋にサラダ油:ケチャップ:食酢=1:1:1(重量比)で混合した擬似食品を100g入れ、121℃で30分間滅菌処理をした。試験後の袋を切り開き、積層物を15m幅に切り出した。その後、養生後の初期接着強度の測定と同様の方法を用いて、滅菌後の接着強度を測定して、接着強度を評価した。
評価基準は以下のとおりである。
○:8N/15mm以上
△:6N/15mm以上、8N/15mm未満
×:6N/15mm未満
【0075】
3.耐内容物性
滅菌後の接着強度の測定と同様の方法を用いて、擬似食品(内容物)を含む滅菌処理をした袋を、更に50℃で2週間保管した。1週間保管後および2週間保管後の袋を切り開き、CPPシート/アルミ箔層間のデラミネーション(浮き又は剥がれの有無)を目視にて観察した。
○:デラミネーションなし
△:僅かにデラミネーション有り
×:明らかにデラミネーションが発生
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1に示すように、実施例1〜5のラミネート用接着剤は、養生後の初期接着強度、滅菌後の接着強度、耐内容物性(耐酸性および耐油性)に優れる。様々な性能に優れるラミネート用接着剤は、長期保管が要求されるレトルト食品袋用接着剤としても、十分に使用できる。
【0079】
これに対し、比較例のラミネート用接着剤は、表2に示すように、実施例のラミネート用接着剤と比較すると何れかの性能が劣る。
比較例1のラミネート用接着剤は酸変性されたブチラール樹脂を含まないので、耐内容物性に劣る。比較例2のラミネート用接着剤は酸変性されていないブチラール樹脂を用いているため、アルミ箔との密着性が低下し、耐内容物性に劣る。
【0080】
図2はC1の赤外吸収スペクトルを示し、図3はC’2の赤外吸収スペクトルを示す。
図2の1700cm−1付近に、明確に高いピークが認められる。このピークは、カルボキシル基に含まれるカルボニル基の伸縮振動と考えられる。これは、(C1)がカルボン酸で変性されており、多くのカルボキシル基を有することを示す。
これに対し、図3の1700cm−1付近のピークは、図2よりかなり低い。(C’2)は、カルボン酸で変性されていないが、少量のアセチル基を有するので、そのカルボニル基の伸縮振動が観察されていると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、ラミネート用接着剤を提供する。
本発明係るラミネート用接着剤は、養生後の初期接着強度に優れ、経時による接着強度の低下が小さく、及び耐内容物性に優れるので、様々な用途に利用することができる。特に、優れた耐熱性が要求され、かつ長期保管が可能なことが求められる食品包装フィルム用接着剤として適する。好ましくはレトルト食品の包装フィルムを製造するために用いるレトルトパウチ用接着剤として利用できる。
【符号の説明】
【0082】
10:食品包装フィルム、11:接着剤層、12:プラスチック(PET)フィルム、13:プラスチック(PP)フィルム、14:金属(アルミニウム)箔
図1
図2
図3