(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に即して説明する。
図1は本発明の第1例のシーリングシートの模式断面図、
図2は本発明の第2例のシーリングシートの模式断面図である。
【0012】
本発明のシーリングシートは、かかる第1及び第2の例によるシーリングシート10、11に示されるように、難燃剤含有粘着層1を備えた難燃性粘着シート3を含むものであり、難燃性粘着シート3の難燃剤含有粘着層1における気泡率が5〜40%であることを主たる特徴とするものである。
【0013】
図1の第1例のシーリングシート10では、難燃性粘着シート3が、難燃剤含有粘着層1/芯体フィルム2/難燃剤含有粘着層1の順に積層された積層体からなる。また、
図2の第2例のシーリングシート11では、難燃性粘着シート3が単一の難燃剤含有粘着層1によって形成されている。なお、
図1及び
図2中の符号4は難燃性粘着シート3の片側面に積層された基材シートである。
【0014】
本発明において、「難燃性粘着シートの難燃剤含有粘着層における気泡率」とは、難燃剤含有粘着層全体における気泡が占める割合(体積%)であり、難燃性粘着シート3が、
図2に示す単一の難燃剤含有粘着層1で形成されている場合、単一の難燃剤含有粘着層1を全体としたときの単一の難燃剤含有粘着層1に含まれる気泡の占める割合(体積%)であり、難燃性粘着シート3が、
図1に示す、難燃剤含有粘着層1/芯体フィルム2/難燃剤含有粘着層1の順に積層された積層体からなる場合は、2つの難燃剤含有粘着層1を全体としたときの2つの難燃剤含有粘着層1に含まれる気泡(合計量)の占める割合(体積%)である。
【0015】
図3、4は、それぞれ、
図1、2のシーリングシート10、11の使用状態の一例を示す模式断面図である。
図3に示されるように、本発明のシーリングシート10、11は、難燃性粘着シート3の難燃剤含有粘着層1の粘着面を被シール体20に貼り付けて使用される。
【0016】
なお、
図1のシーリングシート10の場合、難燃性粘着シート3(難燃剤含有粘着層1/芯体フィルム2/難燃剤含有粘着層1の順に積層された積層体)は、芯体フィルム2を内在することから、難燃性粘着シート3の全体の厚みを大きくせずとも、自体が優れた耐透湿性を示す。このため、難燃性粘着シート3が芯体フィルム2を有することで、シーリングシート10におけるシーリング性(被シール体20を湿気や水(塩水)から隔絶するシーリング性)がより向上する。
【0017】
また、
図1及び
図2中の、難燃性粘着シート3の片側面に積層されている基材シート4は、シーリングシート10、11の剛性(自己支持性)、耐透湿性、耐透水性、耐塩水性等の向上に寄与する。但し、基材シート4は必ずしも必要ではなく、基材シート4を設けるか否かはシーリングシートの適用箇所、止水性の必要性等に応じて、適宜選択することができる。
【0018】
シーリングシートは、
図3、4に示されるように、シーリングシート10、11の難燃性粘着シート3における難燃剤含有粘着層1の粘着面を被シール体20に貼り付けて使用されるが、対向する2つの被シール体の間を湿気や水(塩水)から隔絶する場合、
図5に示されるように、シーリングシート10、11を2つの被シール体20、21の間に介在させて使用する。この場合、2つの被シール体20、21をその上下方向から加圧してシーリングシート10、11が被シール体20、21の対向面の間に挟持される態様が採られることがあるが、そのような場合に、シーリングシート10、11が基材シート4(
図1、2参照)を有していると、シーリングシート10、11が一様な形状を維持することができ、その結果、被シール体20、21へのシーリングシート10、11の均一な密着性が長期に亘って維持されて、優れたシーリング性能をより長期に亘って維持することができる。
【0019】
[難燃性粘着シート]
本発明のシーリングシートでは、難燃性粘着シート3の難燃剤含有粘着層1における気泡率を5〜40%の範囲内に調整されている。難燃剤含有粘着層1がかかる気泡率を有することで、シーリングシートは十分に高い難燃性を有するとともに、被シール体を湿気や水(塩水)から長期に亘って確実に隔絶し得る十分に高いシール性能を有するものとなる。気泡率は7%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましく、17%以上がとりわけ好ましい。また、気泡率は38%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。
【0020】
本発明における「難燃性粘着シートにおける難燃剤含有粘着層の気泡率」は次の式(1)によって算出される。
気泡率(%)=(1−実比重/理論比重)×100 (1)
【0021】
式(1)中の「実比重」とは、比重計で測定した難燃性粘着シートの比重であり、「理論比重」とは、80℃雰囲気(湿度:50%RH)下で3tプレスを15分間行なった後の難燃性粘着シートの比重(比重計で測定した比重)である。なお、ここでの難燃性粘着シートは平面サイズが50mm×50mmの測定サンプルである。
【0022】
難燃性粘着シート3における難燃剤含有粘着層1は、後述の通り、感圧性粘着剤(粘着基材)と難燃剤とを少なくとも含む難燃剤含有粘着組成物を、芯体フィルムや基材シートの一方の片面に所定厚みの塗膜となるように塗布する工程を経て作製される。通常、難燃剤含有粘着組成物の調製の際の混合操作(撹拌操作)によって、組成物中に空気が巻き込まれて、それが難燃剤含有粘着層1中の気泡となる。従って、例えば、攪拌回転数、攪拌時間等を制御することで、難燃剤含有粘着層1中の気泡率を調整できる。また、混合操作後に脱泡処理を行ったり、脱泡処理の条件(例えば、静置脱泡の場合の静置時間など)の制御によって難燃剤含有粘着層1中の気泡率を調整することができる。
【0023】
<難燃剤含有粘着層>
難燃剤含有粘着層1は、感圧性接着剤に難燃剤を配合せしめた粘着剤組成物によって形成される。感圧性接着剤は特に限定はされないが、弾力性、圧縮性及び密着性に優れる粘着層を形成できるものが好ましく、アクリル系、シリコーン系又はポリオキシアルキレン系の粘着剤が挙げられる。なかでも、ポリオキシアルキレン系粘着剤は弾力性、圧縮性及び密着性に優れ、しかも、再剥離性に優れる粘着層を形成できるので、ポリオキシアルキレン系粘着剤を使用することで、メンテナンス時の被シール体からのシーリングシートの離脱を容易に行えるので好ましい。
【0024】
(アクリル系粘着剤)
アクリル系粘着剤としては、具体的には、アルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい(ここで、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。)。
【0025】
アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の平均炭素数は1〜18程度が好ましく、かかるアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用される。中でもアルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
アクリル系ポリマー中には、ノンハロゲン系難燃剤含有粘着シートの被シール体への接着性や耐熱性の改善を目的に、1種類以上の各種モノマーを共重合により導入してもよい。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;アクリル酸2−(ホスホノオキシ)エチルなどの燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。また、窒素含有ビニルモノマーが挙げられ、例えば、マレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド;N−アクリロイルモルホリン;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、3−(3−ピリジニル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマーなどが挙げられる。
【0027】
さらに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども挙げられる。
【0028】
これらの中でも、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いる場合に、イソシアネート基との反応性が良好である点から、ヒドロキシル基含有モノマーが好適である。また、ノンハロゲン系難燃剤含有粘着シートの被シール体への接着性、接着耐久性、耐候性などの点から、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーが好適であり、特に好ましくはアクリル酸である。
【0029】
アクリル系ポリマー中の共重合モノマーの割合は、重量比率において、0.1〜10重量%程度であるのが好ましい。
【0030】
アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量が、一般に30万〜250万程度である。
【0031】
アクリル系ポリマーは種々の公知の手法により製造され、たとえば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法などのラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50〜80℃程度、反応時間は1〜8時間とされる。
【0032】
アクリル系粘着剤にはベースポリマーに加えて架橋剤を含有することができ、架橋剤により、被シール体との密着性や耐久性を向上でき、また高温での信頼性や粘着剤自体の形状の保持を図ることができる。架橋剤としては、イソシアネート系、エポキシ系、過酸化物系、金属キレート系、オキサゾリン系などの公知の架橋剤を適宜に使用可能である。これら架橋剤は1種を、または2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.02〜3重量部である。架橋剤の使用割合が、10重量部を超えると架橋が進みすぎて接着性が低下するおそれがある点で好ましくない。
【0033】
(シリコーン系粘着剤)
シリコーン系粘着剤としては、特に限定されず、一般的に多く用いられている、過酸化物架橋型シリコーン系粘着剤(過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤)や、付加反応型シリコーン系粘着剤を好適に用いることができる。これら、過酸化物架橋型シリコーン系粘着剤及び付加反応型シリコーン系粘着剤は市販品を使用することができ、過酸化物架橋型シリコーン系粘着剤の具体例としては、信越化学工業社製のKR−3006A/BT、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSH 4280 PSAなどが挙げられる。また、付加反応型シリコーン系粘着剤の具体例としては、信越化学工業社製のX−40−3501、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のBY 24−712、GE東芝シリコーン社製のTSE32Xなどが挙げられる。
【0034】
(ポリオキシアルキレン系粘着剤)
ポリオキシアルキレン系粘着剤としては、下記A〜C成分を含む組成物の硬化物が好ましい。
A:1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体
B:1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物
C:ヒドロシリル化触媒
【0035】
上記A成分の「1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体」は、特に制限はなく、各種のものを用いることができるが、中でも、重合体の主鎖が、下記の一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものが好適である。
【0036】
一般式(1):−R
1−O−
(式中、R
1はアルキレン基である)
【0037】
R
1は、炭素数1〜14の、さらには2〜4の、直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましい。
【0038】
一般式(1)で示される繰り返し単位の具体例としては、−CH
2O−、−CH
2CH
2O−、−CH
2CH(CH
3)O−、−CH
2CH(C
2H
5)O−、−CH
2C(CH
3)
2O−、−CH
2CH
2CH
2CH
2O−などが挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特に、入手性、作業性の点から、−CH
2CH(CH
3)O−を主たる繰り返し単位とする重合体が好ましい。また、重合体の主鎖にはオキシアルキレン基以外の繰り返し単位が含まれていてもよい。この場合、重合体中のオキシアルキレン単位の総和は、80重量%以上が好ましく、特に好ましくは90重量%以上である。
【0039】
A成分の重合体は、直鎖状の重合体でも分岐を有する重合体でもよく、それらの混合物であってもよいが、粘着層が種々の材質の面に対して良好な粘着性を示すために、直鎖状の重合体を50重量%以上含有していることが好ましい。
【0040】
A成分の重合体の分子量としては、数平均分子量で500〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がさらに好ましい。数平均分子量が500未満のものでは、得られる硬化物が脆くなりすぎる傾向があり、逆に数平均分子量が50,000を超えるものは、高粘度になりすぎて作業性が著しく低下する傾向となるために好ましくない。ここでいう数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求められる値のことである。
【0041】
また、A成分の重合体は、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.6以下である分子量の分布が比較的狭いものが好ましく、Mw/Mnが1.6以下である重合体は、組成物の粘度が低くなり、作業性が向上する。よって、Mw/Mnは、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.4以下である。なお、ここでいう、Mw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求められる値のことである。
【0042】
ここで、GPC法による分子量の測定は、東ソー社製GPC装置(HLC−8120GPC)を用いて測定される、ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
サンプル濃度:0.2重量%(THF溶液)
サンプル注入量:10μl
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
カラム:サンプルカラム TSKgel GMH−H(S)
検出器:示差屈折計
【0043】
A成分の重合体(1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体)において、アルケニル基は特に制限はないが、下記の一般式(2)で示されるアルケニル基が好適である。
【0044】
一般式(2):H
2C=C(R
2)−
(式中、R
2は水素又はメチル基である)
【0045】
アルケニル基のポリオキシアルキレン系重合体への結合様式は、特に制限はないが、例えば、アルケニル基の直接結合、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、ウレア結合などが挙げられる。
【0046】
かかるA成分の重合体の具体例としては、
一般式(3):{H
2C=C(R
3a)−R
4a−O}a
1R
5a
(式中、R
3aは水素又はメチル基、R
4aは炭素数1〜20の2価の炭化水素基であって、1個以上のエーテル基が含まれていてもよい、R
5aはポリオキシアルキレン系重合体残基であり、a
1は正の整数である。)
で示される重合体が挙げられる。式中のR
4aは、具体的には、−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2OCH
2CH
2−、または−CH
2CH
2OCH
2CH
2CH
2−などを挙げることができるが、合成の容易さからは−CH
2−が好ましい。
【0047】
また、一般式(4):{H
2C=C(R
3b)−R
4b−OCO}a
2R
5b
(式中、R
3b、R
4b、R
5b及びa
2は、それぞれR
3a、R
4a、R
5a、a
1と同義である。)
で示されるエステル結合を有する重合体が挙げられる。
【0048】
また、一般式(5):{H
2C=C(R
3c)}a
3R
5c
(式中、R
3c、R
5c及びa
3は、それぞれR
3a、R
5a、a
1と同義である。)
で示される重合体も挙げられる。
【0049】
さらに、一般式(6):{H
2C=C(R
3d)−R
4d−O(CO)O}a
4R
5d(式中、R
3d、R
4d、R
5d及びa
4は、それぞれR
3a、R
4a、R
5a及びa
1と同義である。)
で示されるカーボネート結合を有する重合体も挙げられる。
【0050】
アルケニル基は、A成分の重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは1〜5個、より好ましくは、1.5〜3個存在するのがよい。A成分の重合体1分子中に含まれるアルケニル基の数が1個未満になると、硬化性が不充分になり、また5個より多くなると網目構造があまりに密となるため、良好な粘着特性を示さなくなる場合がある。なお、A成分の重合体は、特開2003-292926号公報に記載の方法に従って、合成することができる。なお、市販されているものは、市販品を使用してもよい。
【0051】
A成分の重合体の特に好ましい態様としては、ポリプロピレングリコールの両末端にアリル基が結合した末端アリル化ポリオキシプロピレンが挙げられる。
【0052】
B成分である「1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を含有する化合物」は、ヒドロシリル基(Si−H結合を有する基)を有するものであれば特に制限無く使用できるが、原材料の入手の容易さやA成分への相溶性の面から、特に有機成分で変性されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。上記有機成分で変性されたポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子中に平均して2〜8個のヒドロシリル基を有するものがより好ましい。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの構造を具体的に示すと、例えば、
【0054】
(式中、2≦m
1+n
1≦50、2≦m
1、0≦n
1である。R
6aは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であり、1個以上のフェニル基を含有してもよい)、
【0056】
(式中、0≦m
2+n
2≦50、0≦m
2、0≦n
2である。R
6bは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であり、1個以上のフェニル基を含有してもよい)、
又は、
【0058】
(式中、3≦m
3+n
3≦20、2≦m
3≦19、0≦n
3<18である。R
6cは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であり、1個以上のフェニル基を含有してもよい)
などで示される鎖状又は環状のものや、これらのユニットを2個以上有する、以下の
【0060】
(式中、1≦m
4+n
4≦50、1≦m
4、0≦n
4である。R
6dは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であり、1個以上のフェニル基を含有してもよい。2≦b
1である。R
8aは2〜4価の有機基であり、R
7aは2価の有機基である。ただし、R
7aは、R
8aの構造によってはなくても構わない。)、
【0062】
(式中、0≦m
5+n
5≦50、0≦m
5、0≦n
5である。R
6eは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であり、1個以上のフェニル基を含有してもよい。2≦b
2である。R
8bは2〜4価の有機基であり、R
7bは2価の有機基である。ただし、R
7bは、R
8bの構造によってはなくても構わない。)、又は
【0064】
(式中、3≦m
6+n
6≦50、1≦m
6、0≦n
6である。R
6fは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であり、1個以上のフェニル基を含有してもよい。2≦b
3である。R
8cは2〜4価の有機基であり、R
7cは2価の有機基である。ただし、R
7cは、R
8cの構造によってはなくても構わない。)
などで示されるものが挙げられる。
【0065】
B成分の「1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物」は、A成分及びC成分との相溶性、又は、系中での分散安定性が良好なものが好ましい。特に系全体の粘度が低い場合には、B成分として上記各成分との相溶性の低いものを使用すると、相分離が起こり硬化不良を引き起こすことがある。
【0066】
A成分及びC成分との相溶性、又は、分散安定性が比較的良好なB成分を具体的に示すと、以下のものが挙げられる。
【0068】
(式中、n
7は4以上10以下の整数である。)
【0070】
(式中、2≦m
8≦10、0≦n
8≦5であり、R
6gは炭素数8以上の炭化水素基である。)
当該B成分の好ましい具体例としては、ポリメチルハイドロジェンシロキサンが挙げられ、また、A成分との相溶性確保と、SiH量の調整のために、α−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、アリルアルキルエーテル、アリルアルキルエステル、アリルフェニルエーテル、アリルフェニルエステルなどにより変性した化合物が例示され、一例として、以下の構造があげられる。
【0072】
(式中、2≦m
9≦20、1≦n
9≦20である。)
【0073】
B成分は、公知の方法により合成することができるが、市販されているものは、市販品を使用してもよい。
【0074】
C成分の「ヒドロシリル化触媒」は特に限定されず、任意のものを使用できる。具体例としては、たとえば、塩化白金酸;白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Pt
n(ViMe
2SiOSiMe
2Vi)
m、Pt〔(MeViSiO)
4〕
mなど};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh
3)
4、Pt(PBu
3)
4など};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)
3〕
4、Pt〔P(OBu)
3〕
4など};Pt(acac)
2;Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号に記載された白金−炭化水素複合体;Lamoreauxらの米国特許第3220972号に記載された白金アルコラート触媒などが挙げられる。なお、これらの式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基、acacはアセチルアセトナトを表し、n、mは整数を表す。
【0075】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh
3)
3、RhCl
3、Rh/Al
2O
3、RuCl
3、IrCl
3、FeCl
3、AlCl
3、PdCl
2・2H
2O、NiCl
2、TiCl
4などが挙げられる。
【0076】
これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−ホスフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)
2などが好ましい。
【0077】
C成分の配合量は、特に制限はないが、組成物のポットライフの確保及び硬化物(粘着層)の透明性の観点から、A成分中のアルケニル基1molに対して一般に1×10
−1mol以下、好ましくは5.3×10
−2mol以下であり、硬化物(粘着層)の透明性の観点から、より好ましくは3.5×10
−2mol以下、とりわけ好ましくは1.4×10
−3mol以下である。A成分中のアルケニル基1molに対して1×10
−1molを超えると、最終的に得られる硬化物(粘着層)が黄変しやすく、硬化物(粘着層)の透明性が損なわれる傾向となる。なお、C成分の配合量が少なすぎる場合、組成物の硬化速度が遅く、また硬化性が不安定になる傾向となるため、C成分の配合量は8.9×10
−5mol以上が好ましく、1.8×10
−4mol以上がより好ましい。
【0078】
以上説明したA〜C成分を含む組成物は、加熱により硬化する。すなわち、A成分(1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体)中のアルケニル基が、ヒドロシリル化触媒(C成分)の存在下、B成分の1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物のヒドロシリル基(Si−H結合を有する基)でヒドロシリル化されて、架橋構造が進行することによって硬化が成される。かかる硬化物は、粘着付与樹脂を無添加または少量添加であっても、粘着特性(他の物体への接着機能)を発現できるという特徴を有する。また、活性が低く、水、金属、プラスチック材料などの種々の物質に接触しても反応しない。
【0079】
A〜C成分を含む組成物において、A成分とB成分は、B成分(化合物B)のヒドロシリル基が、A成分(化合物A)のアルケニル基に対して官能基比が0.3以上、2未満となるように配合されることが好ましく、より好ましくは0.4以上、1.8未満の範囲であり、さらに一層好ましくは0.5以上、1.5未満の範囲である。前記官能基比が2以上の組成では、架橋密度が高くなり、粘着付与樹脂を無添加または少量添加において粘着性を得ることはできなくなる場合がある。また、官能基比が0.3未満になると、硬化物における架橋が緩くなりすぎて、高温で特性保持が困難となる場合がある。
【0080】
(難燃剤)
本発明において、難燃剤は、特に限定されないが、有毒なハロゲン系ガスを発生しない、ノンハロゲン系難燃剤が好ましく、例えば、水和金属化合物系、無機化合物系、リン系、シリコーン系、窒素化合物系、有機金属化合物系などの公知のハロゲン原子を含有しない難燃剤を使用することができる。なかでも、難燃性の付与効果、燃焼時のドリップ抑制、環境規制への適合性などに優れる点でリン系難燃剤が好ましい。
【0081】
水和金属化合物系難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。また、無機化合物系難燃剤としては、アンチモン化合物、硼酸亜鉛、錫酸亜鉛、モリブデン化合物、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ゼオライト、酸化チタン、ナノフィラー(モンモリロナイト(MMT)、ナノ水和金属化合物、シリカ)、カーボンナノチューブ、炭酸カルシウムなどがあげられる。
【0082】
リン系難燃剤としては、リン酸エステル類、芳香族縮合リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウム類などが挙げられる。リン酸エステル類の具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート(TEP)、トリn−ブチルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート(XDP)などが挙げられる。芳香族縮合リン酸エステル類の具体例としては、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビスジキシレニルホスフェートなどが挙げられる。ポリリン酸アンモニウム類の具体例としては、ポリリン酸アンモニウム(APP)、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム、被覆ポリリン酸アンモニウムが挙げられる。ここで被覆ポリリン酸アンモニウムとは、ポリリン酸アンモニウムを樹脂で被覆もしくはマイクロカプセル化して耐水性をあげたものである。なお、リン酸エステル類、芳香族縮合リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウム類は併用することができる。中でも、リン酸エステル類による炭化層形成の難燃効果と、ポリリン酸アンモニウム類による不燃性ガス発生の難燃効果の組み合わせにより、固相と気相の双方を難燃化できる点で、リン酸エステル類とポリリン酸アンモニウム類の併用が好ましい。
【0083】
シリコーン系難燃剤としては、ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0084】
窒素化合物系難燃剤としては、ヒンダードアミン化合物、メラミンシアヌレート、トリアジン化合物、グアニジン化合物などが挙げられる。
【0085】
有機金属化合物系難燃剤としては、エチレンジアミン4酢酸銅、パーフルオロブタンスルホン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0086】
難燃剤は1種又は2種以上を併用することができる。また、その使用量は難燃剤の種類によっても異なるが、一般的には、難燃性付与、炭化層形成によるドリップ抑制効果などがより効果的に得られるという観点から、粘着剤100重量部に対して10重量部以上が好ましく、20重量部以上がより好ましく、30重量部以上が特に好ましい。また、より良好な粘着特性、保存性などが得られるという観点から350重量部以下が好ましく、250重量部以下がより好ましく、150重量部以下が特に好ましい。
【0087】
(粘着付与樹脂)
難燃剤含有粘着層1には、シーリングシートの被シール体への密着性及び難燃性を向上させるために、粘着付与樹脂を含有させることができる。粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、石油系粘着付与樹脂などが挙げられる。粘着付与樹脂は1種又は2種以上を使用できる。
【0088】
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0089】
フェノール系粘着付与樹脂としては、各種フェノール類(例えば、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなど)とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂など)、前記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、前記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックなどが挙げられる。
【0090】
ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)、これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合などにより変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンの他、その他の化学的に修飾されたロジンなど)、各種のロジン誘導体などが挙げられる。前記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物などのロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン類又は不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体などのロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩などが挙げられる。また、ロジン誘導体としては、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂なども用いることができる。
【0091】
なお、上記のロジンエステル類を得る際に使用されるアルコール類はエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの2価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価アルコール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなどが挙げられ、これらはいずれか1種が単独で、または2種以上が組み合わせて使用される。
【0092】
石油系粘着付与樹脂としては、例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂(脂肪族環状石油樹脂)、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加石油樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂などの公知の石油樹脂を用いることができる。具体的には、芳香族系石油樹脂としては、例えば、炭素数が8〜10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、インデン、メチルインデンなど)が1種のみ又は2種以上用いられた重合体などが挙げられる。芳香族系石油樹脂としては、ビニルトルエンやインデンなどの留分(いわゆる「C9石油留分」)から得られる芳香族系石油樹脂(いわゆる「C9系石油樹脂」)を好適に用いることができる。また、脂肪族系石油樹脂としては、炭素数4〜5のオレフィン(例えば、ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1など)、ブタジエン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン、イソプレンなどのジエン類から選択される1種又は2種以上を用いて得られた重合体などが挙げられる。また、脂肪族系石油樹脂としては、ブタジエン、ピペリレン、イソプレンなどの留分(いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」など)から得られる脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)を好適に用いることができる。脂環族系石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン、エチリデンビシクロヘプテン、ビニルシクロヘプテン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、リモネンなど)の重合体又はその水素添加物、前記の芳香族系炭化水素樹脂や下記の脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂などが挙げられる。脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、スチレン−オレフィン系共重合体などが挙げられる。また、脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、いわゆる「C5/C9共重合系石油樹脂」などを用いることができる。
【0093】
粘着付与樹脂は、シーリングシートの難燃性の点から、テルペン系粘着付与樹脂及び/又はロジン系粘着付与樹脂が好ましく、ロジン系粘着付与樹脂が特に好ましい。テルペン系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂は難燃助剤としての効果が得られやすく、これらを使用することで、シーリングシートの被シール体への密着性とともにシーリングシートの難燃性をより顕著に向上させることができる。なお、テルペン系粘着付与樹脂は、テルペンフェノール樹脂が特に好ましく、ロジン系粘着付与樹脂はロジンエステル類(すなわち、未変性ロジン、水添ロジン、不均化ロジン又は重合ロジンのエステル化物)が特に好ましく、ロジンエステル類は、3価以上の多価アルコールエステルが好ましく、4〜6価の多価アルコールエステルが特に好ましい。
【0094】
粘着付与樹脂は1種又は2種以上を併用でき、その使用量は特に限定されないが、炭素源となって、リン系難燃剤の助剤としての効果が十分に発揮されるという観点から、粘着剤100重量部に対して5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましく、15重量部以上が特に好ましい。また、粘着特性の維持、保存性、ハンドリング性、分散性などの観点から、100重量部以下が好ましく、60重量部以下がより好ましく、40重量部以下が特に好ましい。
【0095】
難燃剤含有粘着層1には、必要に応じて、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末などからなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜配合することもできる。
【0096】
本発明のシーリングシートを基材シート4を有するものとする場合、難燃剤含有粘着層1に、基材シート4との接着性をより高めるために接着付与剤を添加することができる。接着付与剤の例としては、各種シランカップリング剤やエポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、エポキシ基、メタクリロイル基、ビニル基などの官能基を有するシランカップリング剤は接着性の発現にも効果が大きいため、好ましい。また、シランカップリング剤やエポキシ樹脂と併用して、シリル基やエポキシ基を反応させるための触媒を添加することができる。なお、粘着剤にポリオキシアルキレン系粘着剤(上記A〜C成分を含む組成物の硬化物からなる粘着剤)を使用する場合、かかる触媒は、粘着剤を生成させる硬化反応(ヒドロシリル化反応)に対する影響を考慮しなければならない。
【0097】
また、粘着剤にポリオキシアルキレン系粘着剤(上記A〜C成分を含む組成物の硬化物からなる粘着剤)を使用する場合、保存安定性を改良する目的で、保存安定性改良剤を配合してもよく、この保存安定性改良剤としては、上記B成分の保存安定剤として知られている公知の化合物を制限なく使用できる。例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などを好適に用いることができる。具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルフォリニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチル−3−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
難燃性粘着シート3における、難燃剤含有粘着層1の厚みは特に限定されないが、難燃性粘着シート3が
図2に示す単一の難燃剤含有粘着層1にて形成されたものである場合、シール性能などの観点から200μm以上が好ましく、より好ましくは300μm以上である。また、耐透湿性、切断適性等の観点から、1200μm以下が好ましく、より好ましくは1000μm以下である。
【0099】
一方、難燃性粘着シート3が、
図1に示す、芯体フィルム2の両面に難燃剤含有粘着層1を有するもの(すなわち、難燃剤含有粘着層1/芯体フィルム2/難燃剤含有粘着層1の積層構成のもの)である場合、芯体フィルム2を挟む2つの難燃剤含有粘着層の合計厚みは、シーリングシートのシール性能などの観点から、200μm以上が好ましく、より好ましくは300μm以上である。また、耐透湿性、切断適性等の観点から、1200μm以下好ましく、より好ましくは1000μm以下である。なお、芯体フィルム2を挟む2つの難燃剤含有粘着層の層厚は、同一でも、異なっていてもよいが、製造工程の簡略化によるコストダウンの観点から、同一であるのが好ましい。
【0100】
なお、シーリングシートは適用箇所に応じて、スコア巻き替え機等の切断装置で所望のサイズにカット(切断)して使用される。上記の切断適性とは、かかる切断加工での加工性のことであり、難燃剤含有粘着層1の厚みが1200μmを超えると、切断加工において、糊はみ出し、ブロッキング等の不具合を生じやすくなる恐れがある。
【0101】
<芯体フィルム>
芯体フィルム2の材質は、特に制限されないが、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)など);ナイロン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、リアクターTPO、エチレン−酢酸ビニル共重合体など);フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)など)などから選ばれる1種又は2種以上からなる単層または積層のプラスチックフィルム、金属箔などが挙げられる。また、プラスチックフィルムと金属箔を積層したフィルムであってもよい。なお、芯体フィルムは非多孔性フィルムであることが好ましい。「非多孔性フィルム」とは、網布、織布、不織布、メッシュフィルム(シート)、穿孔処理を施したフィルム(シート)などは除かれ、中実のフィルムであること意味する。
【0102】
本発明のシーリングシートは、使用時までは、通常、ロール状物にして保管される。このため、製造されたシーリングシートはロール状に巻き取られるが、芯体フィルムの厚みが大きいと、シーリングシートの巻き取り作業において、芯体フィルム2と難燃剤含有粘着層1とが部分的に分離して、空隙が形成されシーリングシートのシール性能の低下や外観低下に繋がる。従って、シーリングシートの外観、シーリングシートのシール性能、シーリングシートを装着する際のシーリングシートの位置決め作業性などの観点から、芯体フィルム2は比較的薄い厚みであるのが好ましい。フィルムの材質によっても異なるが、芯体フィルム2の厚みは、一般的には、70μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。しかし、芯体フィルム2の厚みが薄すぎると、シール性能の低下、再剥離作業性の低下、貼合不良などを生じる傾向となるため、芯体フィルム2の厚みは10μm以上が好ましく、12μm以上がより好ましい。
【0103】
[基材シート]
本発明のシーリングシートは、基材シート4を有しない態様及び基材シート4を有する態様の両方を包含する。基材シート4を有する態様の場合、基材シート4は、シーリングシートに自己支持性を与えて、シーリングシートの取り付け作業性を向上させるとともに、シーリングシートの耐透湿性を向上させる。
【0104】
基材シート4には、シーリングシートに要求される耐熱性を有するだけでなく、優れた撥水性を有するか、及び/又は、耐透湿性の高い材料からなるフィルムが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などのフッ素樹脂、シリコーン樹脂などからなるプラスチックシートが好ましく、特に好ましくはフッ素樹脂シートであり、とりわけ好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートである。
【0105】
基材シート4の厚みは、被シール体へのシーリングシートの良好な密着性及びメンテナンス時の剥離作業性を向上させるという観点から、30〜200μmが好ましく、80〜150μmがより好ましい。
【0106】
また、基材シート4の難燃剤含有粘着層1側の表面には、難燃剤含有粘着層1と基材シート4間の接着性を向上させるためのコロナ処理、スパッタ処理、ナトリウム処理などを行うのが好ましく、これらの表面処理は2以上を組み合わせて実施できる。
【0107】
[プライマー層]
難燃性粘着シート3が、
図1に示す、難燃剤含有粘着層1/芯体フィルム2/難燃剤含有粘着層1の積層構成である場合、芯体フィルム2の表面(少なくとも片面)にはプライマー層を形成することができる。プライマー層を形成すると、芯体フィルム2と難燃剤含有粘着層1間の結合力が高まるため、シーリングシートの耐透湿性を一層向上させることができる。また、製造後のシーリングシートをロール状に巻き取る(ロール状シーリングシートを作製する)際や、ロール状シーリングシートからシーリングシートを引き出して(巻き戻して)、被シール体に装着する際の、芯体フィルム2と難燃剤含有粘着層1間における空隙生成をより高いレベルで防止することができる。このようなプライマー層は芯体フィルム2の片面に形成するだけでなく、芯体フィルム2の両面に形成することができるが、基材シート4を有するシーリングシートの場合、芯体フィルム2の基材シート4側とは反対側の片面に形成するのが好ましい。プライマー層6を芯体フィルム2の基材シート4側とは反対側の片面に形成することで、シーリングシートを被シール体から離脱させる際に、被シール体に接着した難燃剤含有粘着層1から芯体フィルム2が分離せず、基材シート4側の難燃剤含有粘着層1と芯体フィルム2との間で剥離が生じ、その結果、被シール体に対して難燃剤含有粘着層1のみが残留せず、難燃剤含有粘着層1と芯体フィルム2が一体化した状態で残留する。このため、被シール体から残留する難燃剤含有粘着層1を剥離して回収する際の作業がしやすくなる。
【0108】
このようなプライマー層は芯体フィルム2とノンハロゲン系難燃剤含有粘着層1間の結合力を高めることができるものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリウレタン;塩素化ポリプロピレンなどの塩素化炭化水素樹脂;アクリル系ポリマーなどを挙げることができる。好ましくは、ポリエステルポリウレタンである。ポリエステルポリウレタンは、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基を2個以上有するポリエステルをポリイソシアネート化合物(2官能以上のイソシアネート化合物)によってウレタン変性させたものが挙げられる。
【0109】
ウレタン変性の方法としては、例えば、ヒドロキシ基を2個以上有するポリエステルを、ポリイソシアネート化合物とは反応しない有機溶剤に溶かし、これにポリイソシアネート化合物を加え、必要に応じてアミン化合物、有機金属化合物などの反応触媒を添加し、加熱することにより得られる。
【0110】
ポリエステルポリウレタンの製造の際に使用されるヒドロキシ基を2個以上有するポリエステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの二塩基酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3′−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのグリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステル;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)などのラクトン類を開環重合して得られるポリエステルが挙げられる。これらは、1または2種以上を使用することができる。
【0111】
ポリエステルポリウレタンの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂環族、芳香族、脂肪族のジイソシアネート化合物を用いることができる。例えば、脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシネート、ジシクロヘキシルメタン−4、4'−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0112】
芳香族ジイソシアネートとしては、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0113】
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートなどが挙げられる。
【0114】
ポリイソシアネート化合物はアダクト体、イソシアヌレート体、ビュレット体などの3官能以上のポリイソシアネート化合物も用いることができる。ポリイソシアネート化合物は、ゲル化しにくいという観点から、ジイソシアネート化合物が好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0115】
ポリエステルポリウレタンは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0116】
プライマー層の厚みは、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。かかる厚みであれば、芯体フィルム2と難燃剤含有粘着層1との結合力を十分に高めることができる。
【0117】
本発明のシーリングシートにおいて、難燃性粘着シート3の作製方法は特に制限されず、一般的な両面粘着シートの製造方法を適用できる。例えば、アクリル系粘着剤を使用した難燃性粘着シートの作製は、難燃性粘着シートが、難燃剤含有粘着層1/芯体フィルム2/難燃剤含有粘着層1の順に積層された積層体(
図1)である場合、例えば、ベースポリマーの主骨格用モノマーと共重合用モノマーにラジカル重合開始剤、架橋剤などを配合してなる光重合性組成物にさらに難燃剤を混合し、それを芯体フィルムの一方の片面に所定厚みの塗膜となるように塗布し、その上に離型シートの剥離処理面を貼り合わせ、これに紫外線を照射して重合反応を進行させることにより、一方の難燃剤含有粘着層1を形成し、さらに芯体フィルムの他方の片面に対して同様の手順により他方の難燃剤含有粘着層1を形成する方法が挙げられる。難燃性粘着シート3が単一の難燃剤含有粘着層1からなる場合(
図2)、ベースポリマーの主骨格用モノマーと共重合用モノマーにラジカル重合開始剤、架橋剤などを配合してなる光重合性組成物にさらに難燃剤を混合し、それを適当な離型シートの剥離処理面に所定厚みの塗膜となるように塗布し、その上に別の離型シートの剥離処理面を貼り合わせ、これに紫外線を照射して重合反応を進行させることにより、難燃剤含有粘着層1を形成する方法が挙げられる。なお、難燃剤含有粘着層に粘着付与樹脂やその他の添加剤を含有させる場合、光重合性組成物に難燃剤とともにそれらを混合すればよい。
【0118】
一方、シリコーン系粘着剤を使用した難燃剤含有粘着シートの作製は、難燃性粘着シート3が、難燃剤含有粘着層1/芯体フィルム2/難燃剤含有粘着層1の順に積層された積層体(
図1)である場合、難燃剤などを混合したシリコーン系粘着剤を芯体フィルムの一方の片面に塗布し、その上に離型シートの剥離処理面を貼り合わせ、これを所定の加熱乾燥を行うことにより、一方の難燃剤含有粘着層1を形成し、さらに芯体フィルム2の他方の片面に対して同様の手順により他方の難燃剤含有粘着層を形成する方法が挙げられる。難燃性粘着シート3が単一の難燃剤含有粘着層1からなる場合(
図2)、難燃剤などを混合したシリコーン系粘着剤を適当な離型シートの剥離処理面に所定厚みの塗膜となるように塗布し、その上に別の離型シートの剥離処理面を貼り合わせ、これを所定の加熱乾燥を行うことにより、難燃剤含有粘着層1を形成する方法が挙げられる。難燃剤含有粘着層に粘着付与樹脂やその他の添加剤を含有させる場合、シリコーン系粘着剤にノンハロゲン系難燃剤とともにそれらを混合すればよい。
【0119】
アクリル系粘着剤を使用した難燃剤含有粘着シート、シリコーン系粘着剤を使用した難燃剤含有粘着シートのいずれの製造においても、離型シートの剥離処理には、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤など一般的な剥離剤を適宜使用することができる。
【0120】
ポリオキシアルキレン系粘着剤を使用した難燃剤含有粘着シートは、例えば、以下の方法で作製される。難燃性粘着シート3が、難燃剤含有粘着層1/芯体フィルム2/難燃剤含有粘着層1の順に積層された積層体(
図1)である場合、先ず、前述のA〜C成分と難燃剤(D成分)を、攪拌装置で攪拌して、液温を25℃にして静置脱泡を48〜96時間して脱泡された混合物(組成物)を調製する。難燃剤含有粘着シートに粘着付与樹脂やその他の添加剤を含有させる場合は、上記A〜D成分とともに粘着付与樹脂やその他の添加剤を加えて混合物(組成物)を調製する。次に、かかる脱泡処理後のA〜D成分を含む組成物(混合物)を芯体フィルムの一方の片面上に所定厚みの塗膜となるように塗布し、その上に離型シートの剥離処理面を貼り合わせ、所定の熱処理を行なって、A〜D成分を含む組成物(混合物)を硬化させる。硬化反応は、A成分(1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体)中のアルケニル基が、ヒドロシリル化触媒(C成分)の存在下、B成分の1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物のヒドロシリル基(Si−H結合を有する基)でヒドロシリル化されて架橋構造が進行することによって成され、一方の難燃剤含有粘着層が形成される。さらに芯体フィルムの他方の片面に対して同様の手順により他方の難燃剤含有粘着層を形成する。
【0121】
混合物の塗布は、例えば、グラビア、キス、コンマなどのロールコーター、スロット、ファンテンなどのダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーターなどの公知の塗布装置によって行うことができる。また、熱処理条件としては50〜200℃(好ましくは100〜160℃)で、0.01〜24時間(好ましくは0.05〜4時間)程度加熱するのが好ましい。脱泡時間に関しては、流動物の処理量によっても異なるが、例えば、混合物を静置脱泡する場合、混合物の液温を概ね25℃に管理し、48〜96時間程度静置した後に塗工するのが好ましい。
【0122】
離型シートの剥離処理は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤などを使用でき、中でも、シリコーン系剥離剤が好ましく、硬化方法としては、紫外線照射や電子線照射などの硬化方法を用いるのが好ましい。さらに、シリコーン系剥離剤の中でもカチオン重合性の紫外線硬化型シリコーン系剥離剤が好ましい。カチオン重合性の紫外線硬化型シリコーン系剥離剤は、カチオン重合型のシリコーン(分子内にエポキシ官能基を有するポリオルガノシロキサン)とオニウム塩系光開始剤を含む混合物であるが、オニウム塩系光開始剤がホウ素系光開始剤からなるものが特に好ましく、このようなオニウム塩系光開始剤がホウ素系光開始剤からなるカチオン重合性の紫外線硬化型シリコーン系剥離剤を使用することで特に良好な剥離性(離型性)が得られる。カチオン重合型のシリコーン(分子内にエポキシ官能基を有するポリオルガノシロキサン)は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ官能基を有するものであって、直鎖状のもの、分岐鎖状のものまたはこれらの混合物であってもよい。ポリオルガノシロキサンに含有されるエポキシ官能基の種類は特に制限されないが、オニウム塩系光開始剤によって開環カチオン重合が進行するものであればよい。具体的には、γ−グリシジルオキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、β−(4−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基などが例示できる。かかるカチオン重合型のシリコーン(分子内にエポキシ官能基を有するポリオルガノシロキサン)は上市されており、市販品を使用することができる。例えば、東芝シリコーン社製のUV9315、UV9430、UV9300、TPR6500、TPR6501など、信越化学工業社製のX−62−7622、X−62−7629、X−62−7655、X−62−7660、X−62−7634Aなど、荒川化学社製のPoly200、Poly201、RCA200、RCA250、RCA251などを挙げることができる。
【0123】
カチオン重合性のシリコーンの中でも下記の構造単位(A)〜(C)からなるポリオルガノシロキサンが特に好ましい。
【0125】
また、かかる構造単位(A)〜(C)からなるポリオルガノシロキサンにおいては、構造単位(A)〜(C)の組成比((A):(B):(C))が50〜95:2〜30:1〜30(mol%)であるものが特に好ましく、50〜90:2〜20:2〜20(mol%)であるものがとりわけ好ましい。なお、かかる構造単位(A)〜(C)からなるポリオルガノシロキサンはPoly200、Poly201、RCA200、X−62−7622、X−62−7629、X−62−7660として入手できる。
【0126】
一方、オニウム塩系光開始剤としては、公知のものを特に制限無く使用できる。具体例としては、例えば、(R
1)
2I
+X
−、ArN
2+X
−、又は(R
1)
3S
+X
−、(これらの式中、R
1はアルキル基および/またはアリール基を、Arはアリール基を、X
−は[B(C
6H
5)
4]
−、[B(C
6F
5)
4]
−、[B(C
6H
4CF
3)
4]
−、[(C
6F
5)
2BF
2]
−、[C
6F
5BF
3]
−、[B(C
6H
3F
2)
4]
−、BF
4−、PF
6−、AsF
6−、HSO
4−、またはClO
4−などを示す。)で表される化合物が挙げられるが、これらの中でも、式中のX
−が[B(C
6H
5)
4]
−、[B(C
6F
5)
4]
−、[B(C
6H
4CF
3)
4]
−、[(C
6F
5)
2BF
2]
−、[C
6F
5BF
3]
−、[B(C
6H
3F
2)
4]
−又はBF
4−である化合物(ホウ素系光開始剤)が好ましく、特に好ましくは(R
1)
2I
+[B(C
6F
5)
4](式中、R
1は置換又は非置換のフェニル基を示す)で表わされる化合物(アルキルヨードニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)である。なお、オニウム塩系光開始剤として、従来からアンチモン(Sb)系開始剤が知られているが、アンチモン(Sb)系開始剤を使用した場合、重剥離化が起こり、透明粘着シートを離型シートから剥離しにくい傾向となる。
【0127】
オニウム塩系光開始剤の使用量は特に制限されるものではないが、カチオン重合型のシリコーン(ポリオルガノシロキサン)100重量部に対して、0.1〜10重量部程度とするのが望ましい。使用量が0.1重量部より少ないと、シリコーン剥離層の硬化が不十分となるおそれがある。また使用量が10重量部より多いと、コスト面において実用的ではない。なお、カチオン重合型のシリコーン(ポリオルガノシロキサン)とオニウム塩系光開始剤を混合する際、オニウム塩系開始剤を有機溶剤に溶解または分散させてポリオルガノシロキサンに混合してもよい。有機溶剤の具体例としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチルなどのエステル系溶剤などが挙げられる。
【0128】
剥離処理剤の塗布は、例えば、ロールコーター法、リバースコーター法、ドクターブレード法などの一般的な塗工装置を用いて行うことができる。剥離処理剤の塗布量(固形分量)は特に限定はされないが、一般に0.05〜6mg/cm
2程度である。
【0129】
なお、難燃性粘着シート3が、難燃剤含有粘着層1/芯体フィルム2/難燃剤含有粘着層1の順に積層された積層体からなり、かつ、基材シート4を有するシーリングシート(
図1のシーリングシート10)を製造する場合、以下の
図6に示す方法が好ましい。
先ず、基材シート4の片面にノ難燃剤含有粘着層1を形成し、ノン難燃剤含有粘着層1に芯体フィルム2を貼り合わせる(
図6(A))。
【0130】
離型シート7を用意し、離型シート7の片面に難燃剤含有粘着層1を形成する(
図6(B))。
【0131】
上記の離型シート7の片面に形成された難燃剤含有粘着層1を芯体フィルム2の片面(粘着層非形成面)に圧着して貼り合わせる(
図6(C))。この際の圧着条件は0.5〜5kgf/cm
2程度が好ましい。
【0132】
本発明のシーリングシートは、
図7(A)及び
図7(B)に示されるように、シール対象物(被シール体)の表面に貼り付ける前は、ロール状物(ロール状シーリングシート)100として保管するのが好ましく、この場合、基材シート4の背面(基材シート4の難燃剤含有粘着シート5の側とは反対側の片面)に剥離処理を行ったものを使用する。
【0133】
なお、本発明のシーリングシートにおいて、
図5に示されるように、シーリングシート10、11を2つの被シール体20、21の間に介在させて使用する場合、2つの被シール体間にシーリングシート10、11を介在させた状態で2つの被シール体20、21の間をボルト締めで固定する態様を採ることができる。
【0134】
本発明のシーリングシートは、航空機、車、電車等における外板の表面や、航空機、車、電車等の内部におけるその表面を湿気や水(塩水)から隔絶すべき部材等の表面や、航空機、車、電車等の内部における湿気や水(塩水)から隔絶すべき2つの部材の間の隙間に適用するシーリングシート等の、難燃性が要求されるシーリングシートとして有用である。また、本発明のシーリングシートは高い難燃性を有するだけでなく、金属板の表面に貼り付けるだけで、金属板を湿気や水(塩水)から隔絶する良好なシール性能を発現するため、例えば、ジュラルミン板のような腐食しやすい金属板の腐食をも防止できる、高い腐食防止効果が得られる。
[実施例]
【0135】
以下、実施例と比較例を示して、本発明をより具体的に説明する。なお、実施例及び比較例のシーリングシートの物性評価試験は次の方法で行った。
【0136】
1.定荷重剥離試験
シーリングシートを10mm幅×50mm長さのテープにカットし、このテープの粘着面をジュラルミンパネル(JIS規格:A7075)へ5kgfローラーにて圧着する。ローラーはテープの長手方向の一方の端部から他方の端部へ転がす(片道圧着)。このようにして得たサンプルを常温(湿度:50%RH)で24時間放置後、テープの一方の端部に荷重(錘)30gを付け、テープの剥離距離が30mmに達するまでの時間を計測する。
【0137】
2.燃焼試験
(1)水平燃焼試験
試験サンプル:幅3inch×長さ10inch
試験雰囲気:大気中
点火時間:15秒間
試験手順:ステンレスからなる枠体により試験サンプルを水平に支持し(試験サンプルの平面と鉛直方向とが直交する関係)、試験サンプルの一端を15秒間接炎した後、燃焼時間を測定する。
規格:燃焼時間12秒以下
【0138】
(2)垂直難燃試験
試験サンプル:幅3inch×長さ10inch
試験雰囲気:大気中
点火時間:12秒間
試験手順:試験サンプルを垂直に配置し(試験サンプルの平面と鉛直方向とが平行な関係)、試験サンプルの下端を12秒間接炎した後、燃焼時間を測定する。
規格: 燃焼時間20秒未満
【0139】
3.耐腐食性試験(シール性評価試験)
シーリングシートを2インチ×2インチの平面サイズにカットし、これを平面サイズが4インチ×4インチのジュラルミンパネル(A7075)に上に貼り付け、5kgfローラーで1往復し、常温で24時間エージングして試験サンプルを作製し、試験サンプルを下記条件の塩水噴霧試験に供する。
【0140】
塩水噴霧試験(ASTM B117に準拠)
サンプルセット角度:30°
温度:35+1.1〜1.7℃
塩水濃度:5wt%
噴霧量:1.5ml/80cm
2/hrs
試験時間:600時間
【0141】
シール性能評価:試験後にジュラルミンパネルからシーリングシートを剥離し、シーリングシートを貼り付けていた領域の面積全体に対する腐食している部分の面積の割合を求める。なお、腐食は目視で判断する。
【0142】
実施例1
平均分子量約28000のポリプロピレングリコールの両末端にアリル基を結合させてなる末端アリル化ポリオキシプロピレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂(カネカ社製、商品名「ACX022」)100重量部に、粘着付与樹脂であるロジンペンタエリスリトール15重量部を添加混合し、100℃に加熱して30分間攪拌した。そして、混合液が透明になっていることを確認して、粘着付与樹脂が熱硬化性常温液状樹脂に溶解していることを確認した。ここに、白金/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の2−プロパノール溶液(錯体濃度3%、エヌ・イーケムキャット社製、製品名「3%Pt−VTS−IPA溶液」)よりなる硬化触媒0.05重量部、分子中に平均5個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物(カネカ社製、商品名「CR500」)よりなる硬化剤7.65重量部、難燃剤であるポリリン酸アンモニウム(APP)50重量部、トリクレジルホスフェート(TCP)30重量部を、各々添加し攪拌して混合した。その後、液温25℃での静置脱泡を60時間行い、均一な組成物を得た。
【0143】
上記の粘着剤組成物を、厚み135μmのPTFE製シートに、加熱処理後の厚みが400μmとなるように塗布し、130℃で、10分間加熱処理し、その上に厚み20μmのポリプロピレンフィルムを重ねて、第1の粘着シートを形成した。
【0144】
また、上記の粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム製離型シートの剥離処理面に、加熱処理後の厚みが400μmとなるように塗布し、130℃で、10分間加熱処理し、その上にポリエチレンテレフタレートフィルム製離型シートの剥離処理面を重ねて、第2の粘着シートを形成した。
【0145】
第2の粘着シートの離型シートを剥離して粘着層を露出させ、その粘着層を第1の粘着シートのポリプロピレンフィルムに貼り合わせて、シーリングシートを完成させた。
【0146】
実施例2
粘着剤組成物の調製における、静置脱泡の条件を液温25℃で48時間に変更した以外は実施例1と同様にして、シーリングシートを得た。
【0147】
実施例3
静置脱泡の条件を液温25℃で72時間に変更した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を、厚み135μmのPTFE製シートに、加熱処理後の厚みが800μmとなるように塗布し、その上にポリエチレンテレフタレートフィルム製離型シートの剥離処理面を重ねて、130℃で、10分間加熱処理して、総厚みが935μmのシーリングシートを完成させた。
【0148】
比較例1
粘着付与樹脂(ロジンペンタエリスリトール)を使用せず、難燃剤であるトリクレジルホスフェート(TCP)の配合量を20重量部に変更し、脱泡処理を、真空装置付攪拌装置による液温25℃、3kPa以下の減圧下での2時間程度の減圧脱泡処理に変更した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を使用して、実施例1と同様にして、第1の粘着シート及び第2の粘着シートを形成し、第2の粘着シートの離型シートを剥離して粘着層を露出させ、その粘着層を第1の粘着シートのポリプロピレンフィルムに貼り合わせて、シーリングシートを完成させた。
【0149】
比較例2
粘着付与樹脂(ロジンペンタエリスリトール)の配合量を15重量部に変更し、脱泡処理を、真空装置付攪拌装置による液温25℃、3kPa以下の減圧下での2時間程度の減圧脱泡処理に変更した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を使用して、実施例1と同様にして、第1の粘着シート及び第2の粘着シートを形成し、第2の粘着シートの離型シートを剥離して粘着層を露出させ、その粘着層を第1の粘着シートのポリプロピレンフィルムに貼り合わせて、シーリングシートを完成させた。
【0150】
比較例3
静置脱泡の条件を液温25℃で24時間に変更した以外は実施例1と同様にして、シーリングシートを得た。
【0151】
以上の実施例1〜3、比較例1〜3で作製したそれぞれのシーリングシートに対し、前述の試験を実施した。その結果を下記の表1に示す。なお、表1中、難燃剤の項目の括弧内の数字は、末端アリル化ポリオキシプロピレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂(カネカ社製、商品名「ACX022」)100重量部当たりの配合量(重量部)を示す。また、粘着層の気泡率は、前記で説明した気泡率の計算式(1)に基づいて算出した。
【0153】
表1から分かるように、本発明のシーリングシートは、塩水に対しても安定で反応性せず、優れた耐透湿性(耐透水性)を有し、被シール体(ジュラルミン板)に対して優れたシール性能が持続し得る、高い難燃性と高いシール性能とが両立したシーリングシートを実現していることがわかる。
【0154】
本出願はアメリカ仮出願No.61/745860を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含される。