特許第6302735号(P6302735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302735
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】リリーフ弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20180319BHJP
【FI】
   F16K17/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-89796(P2014-89796)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-209856(P2015-209856A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100157473
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 啓
(72)【発明者】
【氏名】久保 康平
(72)【発明者】
【氏名】長坂 良一
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−089727(JP,A)
【文献】 特開平03−089085(JP,A)
【文献】 特開2002−081562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の圧力が設定圧に達すると開弁するリリーフ弁であって、
作動流体が供給される供給通路を有するシート部材と、
前記シート部材に着座した状態では前記供給通路を閉塞し、前記供給通路から供給される作動流体の圧力が前記設定圧に達すると前記シート部材から離間する球体と、
前記球体を前記シート部材との間で支持する球体支持部材と、
前記球体支持部材を前記シート部材に向けて付勢して前記設定圧を設定する付勢部材と、を備え、
前記球体支持部材は、
端面が形成される端部に拡径して形成される鍔部と、
前記供給通路と対向する位置に形成されて前記球体を保持する保持凹部と、
前記保持凹部の周囲に形成されて前記保持凹部に向かって深くなるように傾斜するテーパ部と、を有し、
前記保持凹部及び前記テーパ部は、前記鍔部の前記端面から凹状に形成されることを特徴とするリリーフ弁。
【請求項2】
前記付勢部材と前記球体支持部材と前記球体とを収容し、前記供給通路から供給された作動流体を排出する排出通路を有するケース部材を更に備え、
前記テーパ部は、前記ケース部材の側壁に前記球体が当接した状態で前記球体の中心が前記テーパ部上に位置するように形成されることを特徴とする請求項1に記載のリリーフ弁。
【請求項3】
前記保持凹部は、前記球体支持部材の前記端面から形成される円錐状の穴部であり、
前記球体は、前記保持凹部の側面と当接して支持されることを特徴とする請求項1又は2に記載のリリーフ弁。
【請求項4】
前記テーパ部は、前記保持凹部の傾斜角度と比較して小さな傾斜角度に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のリリーフ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リリーフ弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リリーフ弁は、流体圧回路内の作動流体の圧力が設定圧に達した場合に開弁して、作動流体の圧力が異常に高圧となることを防止するものである。
【0003】
特許文献1には、コイルスプリングによって付勢されるボールがシート部材のシート面に着座してシートするリリーフバルブが開示されている。このリリーフバルブでは、作動油の圧力がコイルスプリングの付勢力によって設定された設定圧に達すると、作動油の圧力によってボールがシート面から離間する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−266402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のリリーフバルブでは、組み立ての際に、ケーシングの開口部からボールを挿入しても、ボールがシート面の正常な位置に着座しないおそれがある。このような場合、ボールの位置を修正して正常な位置に着座させる必要があり、組立性の向上が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、リリーフ弁の組立性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、作動流体の圧力が設定圧に達すると開弁するリリーフ弁であって、作動流体が供給される供給通路を有するシート部材と、前記シート部材に着座した状態では前記供給通路を閉塞し、前記供給通路から供給される作動流体の圧力が前記設定圧に達すると前記シート部材から離間する球体と、前記球体を前記シート部材との間で支持する球体支持部材と、前記球体支持部材を前記シート部材に向けて付勢して前記設定圧を設定する付勢部材と、を備え、前記球体支持部材は、端面が形成される端部に拡径して形成される鍔部と、前記供給通路と対向する位置に形成されて前記球体を保持する保持凹部と、前記保持凹部の周囲に形成されて前記保持凹部に向かって深くなるように傾斜するテーパ部と、を有し、前記保持凹部及び前記テーパ部は、前記鍔部の前記端面から凹状に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、球体支持部材の保持凹部の周囲にテーパ部が形成されることによって、組み立ての際に球体が保持凹部からずれた位置に挿入されても、球体はテーパ部を転動して保持凹部に案内される。よって、球体を球体支持部材の正常な位置に着座させることができる。したがって、球体の位置を修正する必要がないため、リリーフ弁の組立性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係るリリーフ弁の正面の断面図である。
図2図1における要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るリリーフ弁100について説明する。
【0011】
リリーフ弁100は、作動油の圧力が設定圧に達すると開弁し、作動油の圧力が異常に高圧となることを防止するものである。本実施の形態では、作動流体として作動油が用いられるが、作動水や圧縮空気などの他の流体を用いてもよい。
【0012】
リリーフ弁100は、作動油が供給される供給通路11を有するシート部材10と、シート部材10に着座した状態で供給通路11を閉塞する球体20と、球体20をシート部材10との間で支持する球体支持部材30と、球体支持部材30をシート部材10に向けて付勢する付勢部材としてのリターンスプリング40と、供給通路11から供給された作動油を排出する排出通路51を有するケース部材50と、を備える。
【0013】
シート部材10は、円筒状に形成される。シート部材10は、ケース部材50の内周に圧入されて固定される。シート部材10は、球体支持部材30に臨む面に、球体20が着座する着座部12を有する。
【0014】
供給通路11は、シート部材10の中央を軸方向に貫通して形成される円形の孔である。供給通路11は、例えば油圧ポンプ(図示省略)からの吐出通路(図示省略)に接続される。供給通路11は、排出通路51と比較して高圧の作動油が供給される通路に接続される。
【0015】
着座部12は、供給通路11の端部が拡径されて球体20が着座するように形成される。着座部12は、球体20の直径と比較して小径に形成される。着座部12に球体20が着座した状態では、球体20の一部が供給通路11に入り込む。このとき、着座部12と球体20とは円環状に線接触しており、着座部12と球体20との間に隙間は形成されない。
【0016】
球体20は、供給通路11から供給される作動油の圧力が設定圧に達するとシート部材10の着座部12から離間する。球体20が着座部12から離間すると、球体20と着座部12との間に隙間ができて、高圧側の供給通路11と低圧側の排出通路51とが連通する。これにより、供給通路11から流入する作動油が、排出通路51を通じてタンク(図示省略)へ還流される。
【0017】
図2に示すように、球体支持部材30は、略円柱状に形成される。球体支持部材30は、供給通路11の着座部12と対向する位置に形成されて球体20を保持する保持凹部31と、保持凹部31の周囲に形成されて保持凹部31に向かって深くなるように傾斜するテーパ部32と、を備える。球体支持部材30は、リターンスプリング40の内周に挿入される挿入部34と、リターンスプリング40によって付勢される鍔部35と、を有する。
【0018】
保持凹部31は、球体支持部材30の端面33から形成される円錐状の穴部である。保持凹部31は、球体支持部材30の中央に形成される。保持凹部31に球体20が保持された状態では、球体20の一部が保持凹部31に入り込む。
【0019】
球体20は、保持凹部31の側面31aと円環状に線接触して支持される。そのため、球体20と保持凹部31との位置関係は、テーパ部32が形成されていない場合と同様である。よって、従来の球体支持部材を球体支持部材30に変更しても、リリーフ弁100の特性が変化することはなく、また、球体20を安定して保持することができる。これに限らず、球体20が保持凹部31の側面31aと当接する構成に代えて、球体20が保持凹部31とテーパ部32との境目と円環状に線接触する構成としてもよい。
【0020】
テーパ部32は、球体支持部材30の端面33から形成される円錐台状の凹部である。テーパ部32は、保持凹部31の最外周から連続して形成される。テーパ部32は、保持凹部31の傾斜角度と比較して小さな傾斜角度に形成される。なお、ここでいう傾斜角度とは、端面33に対する角度である。
【0021】
テーパ部32は、球体支持部材30の外周から内周に向かって保持凹部31に近付くほど端面33からの深さが深くなるように形成される。つまり、テーパ部32は、球体支持部材30の端面33に載置された球体20を保持凹部31に導くように傾斜して形成される。
【0022】
テーパ部32は、球体支持部材30の端面33が上面となるように置いたときに、ケース部材50の内側の側壁50aに球体20が当接した状態(図2に示す状態)で球体20の中心が当該テーパ部32上に位置するように形成される。これにより、球体20は、球体支持部材30上のどの位置に挿入されても、中心がテーパ部32上に位置するため、テーパ部32上を転動して保持凹部31に導かれる。
【0023】
テーパ部32は、リターンスプリング40と球体支持部材30とがケース部材50に対して傾いて挿入されている場合であっても、ケース部材50の側壁50aに球体20が当接した状態で常に球体20の中心がテーパ部32上に位置するような大きさに形成されてもよい。リターンスプリング40と球体支持部材30とは、最大で、球体支持部材30の外周がケース部材の側壁50aと当接する角度まで傾斜する。このとき、テーパ部32の外径を大きく形成しておくことで、球体20が球体支持部材30上のどの位置に挿入されても球体20の中心がテーパ部32上に位置するようにできる。
【0024】
挿入部34は、リターンスプリング40の内径よりも小径に形成される。挿入部34がリターンスプリング40の内周に挿入されることによって、球体支持部材30がリターンスプリング40に保持される。
【0025】
鍔部35は、球体支持部材30の端面33が形成される端部に拡径して形成される。鍔部35は、挿入部34と比較して大径に形成される。また、鍔部35は、ケース部材50の内周と比較して小径に形成される。鍔部35の裏面35aには、リターンスプリング40が当接する。
【0026】
図1に示すように、リターンスプリング40は、一端40aがケース部材50の底面部53に当接し、他端40bが球体支持部材30に当接するコイルばねである。リターンスプリング40の外径は、ケース部材50の内周と比較して小径に形成される。
【0027】
リターンスプリング40は、圧縮された状態でケース部材50内に収容される。リターンスプリング40は、ケース部材50にシート部材10を圧入する際に、球体20を介して軸方向に圧縮される。リターンスプリング40は、その付勢力によってリリーフ弁100が開弁する設定圧を設定する。
【0028】
なお、本実施の形態では、リターンスプリング40は予め設定された所定の付勢力によって球体支持部材30を付勢するものであるが、これに限らず、付勢力が調整可能なものであってもよい。
【0029】
ケース部材50は、有底円筒状に形成される。ケース部材50の開口部52は、シート部材10が圧入されることによって閉塞される。ケース部材50は、リターンスプリング40と球体支持部材30と球体20とを収容する。
【0030】
ケース部材50の底面部53は、リターンスプリング40の外径と略同径の凹状に形成される。よって、ケース部材50にリターンスプリング40が挿入されると、リターンスプリング40は、底面部53にぴったりと嵌まる。底面部53は、リターンスプリング40をケース部材50と同軸な状態に保持可能な深さに形成される。
【0031】
排出通路51は、ケース部材50の底面部53近傍の側壁50aに開口する貫通孔である。排出通路51は、ケース部材50の周方向の四箇所に90度間隔で形成される。これに限らず、排出通路51は、球体20と着座部12との間の隙間を介して供給通路11から流入した作動油を排出可能な位置であれば、ケース部材50のどの位置に開口してもよい。排出通路51は、例えば、作動油を貯留するタンク(図示省略)に連通する。
【0032】
次に、リリーフ弁100の組み立て手順について説明する。
【0033】
最初に、ケース部材50を、開口部52が上になるように置き、ケース部材50にリターンスプリング40と球体支持部材30とを挿入する。次に、ケース部材50の開口部52から球体20を挿入する。
【0034】
ここで、球体20が球体支持部材30の端面33上のどの位置に挿入されても、球体20の中心はテーパ部32上に位置する。そのため、球体20が保持凹部31からずれた位置に挿入されても、球体20はテーパ部32上を転動して保持凹部31に案内される。よって、球体20を球体支持部材30の正常な位置に着座させることができる。したがって、球体20の位置を修正する必要がないため、リリーフ弁100の組立性を向上させることができる。
【0035】
最後に、シート部材10をケース部材50の開口部52に圧入する。これにより、ケース部材50の開口部52が閉塞される。シート部材10は、ケース部材50に対して所定の圧入量だけ圧入される。
【0036】
シート部材10は、球体20と球体支持部材30とを介してリターンスプリング40を予め設定された長さになるまで圧縮する。よって、シート部材10の着座部12と球体支持部材30の保持凹部31との間に球体20を位置させるとともに、リターンスプリング40の付勢力をリリーフ弁100の設定圧に対応する大きさに設定することができる。
【0037】
このとき、球体20は、保持凹部31に保持されているため、シート部材10を圧入する際に、シート部材10の着座部12との間に確実に球体20を位置させることができる。
【0038】
ケース部材50の中心軸が鉛直に近い状態でリリーフ弁100が組み立てられる場合には、上述したように球体20が保持凹部31に案内される。しかしながら、ケース部材50の中心軸が傾斜した状態でリリーフ弁100が組み立てられる場合には、球体20をケース部材50の中に挿入しただけでは、球体20が側壁50aに当接したままとなり保持凹部31に案内されないこともある。このような場合であっても、シート部材10をケース部材50に圧入する際に、シート部材10によって押圧された球体20が、テーパ部32上を移動して保持凹部31に案内される。よって、ケース部材50の中心軸が傾斜した状態でリリーフ弁100を組み立てても、球体20を球体支持部材30の正常な位置に着座させることができる。
【0039】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0040】
球体支持部材30の保持凹部31の周囲にテーパ部32が形成されることによって、組み立ての際に球体20が保持凹部31からずれた位置に挿入されても、球体20はテーパ部32上を転動して保持凹部31に案内される。よって、球体20を球体支持部材30の正常な位置に着座させることができる。したがって、球体20の位置を修正する必要がないため、リリーフ弁100の組立性を向上させることができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0042】
100 リリーフ弁
10 シート部材
11 供給通路
20 球体
30 球体支持部材
31 保持凹部
31a 側面
32 テーパ部
40 リターンスプリング(付勢部材)
50 ケース部材
50a 側壁
51 排出通路
図1
図2