(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カルシウム拮抗薬及び有機溶媒を含み且つ水を含まない溶液を、アンジオテンシンII受容体拮抗薬に噴霧することにより、カルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を一緒に造粒する、請求項1に記載の製造方法。
前記有機溶媒が、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン及びジエチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
パドル法に基づく溶出試験で、カルシウム拮抗薬が試験開始7分後にその25〜55質量%が水に溶解し、アンジオテンシンII受容体拮抗薬が試験開始15分後にその75質量%以上が水に溶解する溶出プロファイルを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬製剤の製造方法。
パドル法に基づく溶出試験で、カルシウム拮抗薬が試験開始90分後にその75質量%以上が水に溶解し、アンジオテンシンII受容体拮抗薬が試験開始30分後にその85質量%以上が水に溶解する溶出プロファイルを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬製剤の製造方法。
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、カルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬の原薬は、いずれも水への溶解度が低く、原薬を投与しても効果が表れるまで時間がかかるという問題がある。例えば、カルシウム拮抗薬の1つであるシルニジピンは、20℃での水への溶解度が数ng/mLであり、アンジオテンシンII受容体拮抗薬の1つであるバルサルタンは、20℃での水への溶解度が0.17mg/mL程度である。そのため、現在市販されているカルシウム拮抗薬製剤及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬製剤は、溶出速度が大きくなるようそれぞれ工夫がなされている。
しかしながら、市販のカルシウム拮抗薬製剤と、アンジオテンシンII受容体拮抗薬製剤は、それぞれ別個の方法で溶出速度を向上させているため、1つの医薬製剤(配合剤)で両者の溶出プロファイルを実現することは難しい。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、市販のカルシウム拮抗薬製剤及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬製剤それぞれの溶出プロファイルに近い溶出プロファイルを実現できる医薬製剤(配合剤)の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用した。
【0009】
(1) カルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を有効成分として含む医薬製剤の製造方法であって、水を用いることなくカルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を一緒に又は別々に造粒する造粒工程を含むことを特徴とする医薬製剤の製造方法。
(2) 前記造粒工程において、有機溶媒を用いる、上記(1)に記載の製造方法。
(3) 前記造粒工程において、水を用いずにカルシウム拮抗薬をアンジオテンシンII受容体拮抗薬と共に造粒し、カルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を含む顆粒を得る、上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4) 水を用いずにカルシウム拮抗薬を造粒してカルシウム拮抗薬含有顆粒を得た後、アンジオテンシンII受容体拮抗薬を該顆粒と水を用いずに混合して造粒することにより、水を用いずにカルシウム拮抗薬をアンジオテンシンII受容体拮抗薬と共に造粒し、カルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を含む顆粒を得る、上記(3)に記載の製造方法。
(5) 前記造粒工程において、水を用いずにカルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を別々に造粒し、カルシウム拮抗薬含有顆粒とアンジオテンシンII受容体拮抗薬含有顆粒とを得る、上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(6) 造粒工程後に得られた顆粒を圧縮成形する工程を更に含む、上記(3)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7) カルシウム拮抗薬が、1,4−ジヒドロピリジン誘導体を含む、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8) 1,4−ジヒドロピリジン誘導体が、シルニジピン、アムロジピン、ニルバジピン、ニフェジピン、アゼルニジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ニトレンジピン及びマニジピンからなる群から選択される少なくとも1種である、上記(7)に記載の製造方法。
(9) アンジオテンシンII受容体拮抗薬が、バルサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、オルメサルタン、イルベサルタン、及びエプロサルタンからなる群から選択される少なくとも1種である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10) 前記有機溶媒が、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン及びジエチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である、上記(2)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11) 医薬製剤中に含まれるカルシウム拮抗薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬とが、質量比で1:1〜1:32である、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の製造方法。
(12) 造粒工程において、崩壊剤を用いる、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の製造方法。
(13) パドル法に基づく溶出試験で、カルシウム拮抗薬が試験開始7分後にその25〜55質量%が水に溶解し、アンジオテンシンII受容体拮抗薬が試験開始15分後にその75質量%以上が水に溶解する溶出プロファイルを有する、上記(1)〜(12)のいずれかに記載の製造方法。
(14) パドル法に基づく溶出試験で、カルシウム拮抗薬が試験開始90分後にその75質量%以上が水に溶解し、アンジオテンシンII受容体拮抗薬が試験開始30分後にその85質量%以上が水に溶解する溶出プロファイルを有する、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の製造方法。
(15) 医薬製剤が降圧剤である、上記(1)〜(14)のいずれかに記載の製造方法。
【0010】
本発明の方法により製造された医薬製剤は、市販のカルシウム拮抗薬製剤及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬製剤それぞれの溶出プロファイルに近い溶出プロファイルを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
本発明の医薬製剤の製造方法は、カルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を有効成分として含む医薬製剤の製造方法であって、水を用いることなくカルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を一緒に又は別々に造粒する造粒工程を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法により得られる医薬製剤は、少なくともカルシウム拮抗薬が固体分散体の形態にあることが好ましい。カルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬が固体分散体の形態にあってもよい。
本明細書及び特許請求の範囲において、「固体分散体」とは、不活性担体の中に薬物が単分子状に分散した固体を意味する。固体分散体内では、薬物が非晶質の状態で担体中に存在する。不活性担体としては、高分子化合物であれば特に制限なく用いることができ、例えば、結合剤、懸濁化剤、界面活性剤などの高分子化合物が挙げられる。懸濁化剤としては、アラビアゴム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレングリコールなどが挙げられる。
固体分散体は、例えば、薬物及び担体成分を有機溶媒に溶解させた溶液を用いて造粒した後、乾燥させることによって得ることができる。
【0013】
[造粒工程]
本発明の製造方法は、水を用いることなくカルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を一緒に又は別々に造粒する工程(造粒工程)を含む。したがって、本発明では、カルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬が水に溶解することなく造粒される。
また、造粒工程では、水を用いることなく有機溶媒を用いてカルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を一緒に又は別々に造粒することが好ましい。さらには、カルシウム拮抗薬及び/又はアンジオテンシンII受容体拮抗薬とともに、崩壊剤を用いて上記造粒を行うことが好ましい。
【0014】
水を用いることなくカルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を一緒に造粒する方法としては、流動層造粒機を用いて、水を用いることなくカルシウム拮抗薬をアンジオテンシンII受容体拮抗薬に噴霧することにより造粒する方法を挙げることができる。前記噴霧は、カルシウム拮抗薬を有機溶媒に溶解して得られる溶液を、アンジオテンシンII受容体拮抗薬に噴霧することが好ましい。造粒後、例えば、整粒機により整粒し、流動層乾燥機を用いて乾燥してもよい。上記方法により、カルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を含む顆粒を得ることができる。
【0015】
また、水を用いることなくカルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を一緒に造粒する方法として、水を用いずに(好ましくは有機溶媒を用いて)カルシウム拮抗薬を造粒してカルシウム拮抗薬含有顆粒を得た後、アンジオテンシンII受容体拮抗薬を該顆粒と水を用いずに混合して造粒する方法を挙げることもできる。造粒後、例えば、整粒機により整粒し、流動層乾燥機を用いて乾燥してもよい。上記方法により、カルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を含む顆粒を得ることができる。
アンジオテンシンII受容体拮抗薬とカルシウム拮抗薬含有顆粒との混合物を造粒する方法としては、例えば、乾式造粒機を用いた造粒法が挙げられる。該方法では、カルシウム拮抗薬を含む顆粒の一部または全部を覆うようにして、アンジオテンシンII受容体拮抗薬が存在してなる形態で、カルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を含む顆粒を得ることができる。得られた顆粒において、カルシウム拮抗薬を含む顆粒中及び該顆粒の外側の両方に崩壊剤が存在することが好ましい。
【0016】
水を用いることなくカルシウム拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体拮抗薬を別々に造粒する方法としては、カルシウム拮抗薬を水を用いずに造粒し、これとは別にアンジオテンシンII受容体拮抗薬を水を用いずに造粒する方法を挙げることができる。造粒後、例えば、整粒機により整粒し、流動層乾燥機を用いて乾燥してもよい。上記方法により、カルシウム拮抗薬含有顆粒とアンジオテンシンII受容体拮抗薬含有顆粒とを含む混合物を得ることができる。
【0017】
<カルシウム拮抗薬>
カルシウム拮抗薬とは、イオンチャネルを介した細胞内へのCa
2+の取り込みを抑制し、平滑筋の収縮を減弱化させることにより、血圧の降下作用を示す薬物である。
本発明で用いられるカルシウム拮抗薬は、1,4−ジヒドロピリジン誘導体を含むことが好ましい。1,4−ジヒドロピリジン誘導体としては、シルニジピン、アムロジピン、ニルバジピン、ニフェジピン、アゼルニジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ニトレンジピン及びマニジピンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらのなかでも、シルニジピン(化学名:(±)−2−methoxyethyl 3−phenyl−2(E)−propenyl 1,4−dihydro−2,6−dimethyl−4−(3−nitrophenyl)−3,5−pyridinedicarboxylate)が特に好ましい。
シルニジピンは、L型カルシウムチャネル及びN型カルシウムチャネルを共に阻害するL/N型カルシウム拮抗薬として公知の化合物であり、公知の製造方法により製造することが可能である。また、市販でその製剤を入手することも可能である。さらには、シルニジピンは該製剤から抽出等により取得することもできる。
【0018】
カルシウム拮抗薬は必要に応じ、薬理的に許容される塩、水和物、溶媒和物としてもよい。薬理学的に許容される塩としては、例えば、無機酸との塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など)、有機酸との塩(酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩など)などが挙げられる。さらに、本発明において使用されるカルシウム拮抗薬は必要に応じ、適当なその光学活性体を用いてもよい。
カルシウム拮抗薬は、医薬製剤100質量%に対して、0.1〜10質量%含まれることが好ましく、0.5〜5質量%含まれることがより好ましい。
【0019】
<アンジオテンシンII受容体拮抗薬>
アンジオテンシンII受容体拮抗薬とは、昇圧物質であるアンジオテンシンIIと拮抗し、アンジオテンシンIIがアンジオテンシンII受容体に結合するのを妨げることにより血圧の降下作用を示す薬物である。アンジオテンシンII受容体拮抗薬としては、例えば、バルサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、オルメサルタン、イルベサルタン、及びエプロサルタンなどが挙げられる。なかでも、バルサルタン(化学名:(−)−N−{4−[2−(1H−tetrazol−5−yl)phenyl]benzyl}−N−valeryl−L−valine)が特に好ましい。
アンジオテンシンII受容体拮抗薬は必要に応じ、薬理的に許容される塩、水和物、溶媒和物としてもよい。薬理学的に許容される塩としては、例えば、無機酸との塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など)、有機酸との塩(酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩など)などが挙げられる。さらに、本発明において使用されるアンジオテンシンII受容体拮抗薬は必要に応じ、適当なその光学活性体を用いてもよい。
アンジオテンシンII受容体拮抗薬は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、医薬製剤100質量%に対して、5〜50質量%含まれることが好ましく、10〜40質量%含まれることがより好ましい。
【0020】
また、カルシウム拮抗薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬との質量比は、1:1〜1:32の範囲内であることが好ましく、1:4〜1:16の範囲内であることがより好ましい。
【0021】
<有機溶媒>
造粒工程で使用できる有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン又はジエチルエーテルを挙げることができる。これらの中でも、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒を使用することが好ましい。有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒の量は、カルシウム拮抗薬又はカルシウム拮抗薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬とを造粒できる限り特に制限はなく、造粒方法に応じて適宜調節すればよい。
【0022】
<崩壊剤>
本発明の製造方法では、造粒工程において、崩壊剤を用いることが好ましく、崩壊剤とカルシウム拮抗薬及び/又はアンジオテンシンII受容体拮抗薬と混合させて得られた混合物を用いて造粒を行うことがより好ましい。また、崩壊剤をカルシウム拮抗薬及び/又はアンジオテンシンII受容体拮抗薬とともに有機溶媒に溶解させて造粒を行うことが好ましい。
崩壊剤をとしては、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウ、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム及びアルファー化デンプンが好ましく、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、クロスポビドン及び低置換度カルボキシメチルスターチナトリウムがより好ましく、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースがさらにより好ましく、クロスカルメロースナトリウムが特に好ましい。
崩壊剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
崩壊剤は、医薬製剤100質量%に対して5質量%以上含まれることが好ましく、5〜35質量%の範囲内で含まれることがより好ましく、6〜30質量%の範囲内であることがさらにより好ましい。また、カルシウム拮抗薬を造粒する場合には、崩壊剤は1〜15質量%の範囲内で含まれることが好ましく、1〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。カルシウム拮抗薬含有顆粒とアンジオテンシンII受容体拮抗薬との混合物を造粒する場合には、1〜30質量%の崩壊剤を混合物に添加することが好ましく、2〜25質量%の崩壊剤を混合物に添加することがより好ましい。
【0024】
<結合剤>
本発明の医薬製剤は、結合剤を含んでいてもよい。結合剤としては、種々のものを用いることができ、特に限定されることはなく、例えば、水溶性高分子が挙げられる。なかでも、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースフタル酸エステル、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースフタル酸エステルがより好ましい。
結合剤は、医薬製剤100質量%に対して、1〜90質量%含まれることが好ましく、3〜40質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらにより好ましい。
結合剤を用いる場合には、該結合剤は、カルシウム拮抗薬を含む顆粒内に含まれることが好ましい。
また、崩壊剤、結合剤以外に、滑沢剤、賦形剤、流動化剤などをカルシウム拮抗薬及び/又はアンジオテンシンII受容体拮抗薬に加えてもよい。
【0025】
ここで、賦形剤としては、種々のものを用いることができ、特に限定されることはなく、例えば、乳糖水和物、白糖、ブドウ糖、還元麦芽糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、デキストリン、プルラン等のデンプン類およびその誘導体、結晶セルロース、微結晶セルロース等のセルロース類、マクロゴール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの1種又は2種以上の混合物が挙げられる。なかでも、乳糖水和物、マンニトール、部分アルファー化デンプン、結晶セルロースが好ましく、乳糖水和物、結晶セルロースがより好ましい。
賦形剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
賦形剤は、医薬製剤100質量%に対して、1〜40質量%含まれることが好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
【0026】
[圧縮成形工程]
本発明の医薬製剤の製造方法は、造粒工程で得られた顆粒を圧縮成形する工程を含んでいてもよい。
圧縮成形は、公知の方法を用いて行えばよく、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム又は炭酸マグネシウムを添加・混合し、打錠機にて圧縮成形すればよい。
圧縮成形して得られる錠剤の形状は特に制限されず、例えば、丸形、楕円形(正円を除くあらゆる長円形:オーバル形、卵形、楕円胴形、小判形など)、ひし形、三角形等、が挙げられる。割線を設ける場合には、割線の形状は平溝型、U字溝型、V字溝型のいずれでもよく、錠剤が楕円形状である場合には、短軸に沿って形成することが好ましい。
【0027】
[その他の工程]
本発明の医薬製剤の製造方法は、圧縮成形工程後に、更にコーティング処理を施す工程を設けてもよい。コーティング処理に用いられるコーティング剤としては、ヒプロメロース、マグロゴール6000などが挙げられる。コーティング処理は、従来知られている方法を用いればよく、例えば、コーティング剤を水などの溶媒に溶かしたコーティング液を、パンコーディング装置、ドラムタイプコーティング装置、流動コーティング装置などを用いて、医薬製剤表面にコーティングすればよい。コーティング液には、コーティング剤の他に、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、食用青色1号、食用黄色4号、食用赤色2号などの着色剤を添加してもよい。これらの着色剤を添加することにより、カルシウム拮抗薬の光安定性を向上させることができる。
【0028】
本発明の方法により得られる医薬製剤は、固体製剤であることが好ましく、錠剤、カプセル剤、細粒剤又は顆粒の形態にあることがより好ましく、錠剤の形態にあることが特に好ましい。
本発明の方法により得られる医薬製剤は、パドル法に基づく溶出試験で、カルシウム拮抗薬が、試験開始から7分後にその25〜55質量%が水に溶解することが好ましい。同様に、パドル法に基づく溶出試験で、カルシウム拮抗薬が、試験開始から90分後にその75質量%以上が水に溶解することが好ましい。
また、パドル法に基づく溶出試験で、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、試験開始から15分後にその75質量%以上が水に溶解することが好ましい。同様に、パドル法に基づく溶出試験で、アンジオテンシンII受容体拮抗薬が、試験開始から30分後にその85質量%以上が水に溶解することが好ましい。
溶出率が上記範囲内であると、市販のカルシウム拮抗薬製剤、アンジオテンシンII受容体拮抗薬製剤それぞれの溶出プロファイルに近い溶出プロファイルを達成することができる。したがって、2種の製剤を併用投与した場合と同様の効果を奏する医薬製剤(配合剤)を得ることができる。
【0029】
<用途>
本発明の製造方法により得られる医薬製剤は、降圧作用を有するため、高血圧患者治療用の降圧剤として有用である。
【0030】
<投与対象>
本発明の製造方法により得られる医薬製剤の投与対象としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトなどの哺乳動物が挙げられる。特に、ヒトが投与対象として好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0032】
[実施例1]
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(22.4kg)、結晶セルロース(6.41kg)、乳糖水和物(4.86kg)、クロスカルメロースナトリウム(5.10kg)を攪拌造粒機に入れ混合した。その後、メタノール(28.3kg)及びジクロロメタン(8.5kg)にシルニジピン(2.04kg)、マクロゴール400(1.43kg)及びヒドロキシプロピルセルロース(8.16kg)を溶解した結合液を投入し造粒した。造粒後、整粒機(コーミル)により整粒(スクリーン:1.6mm)し、流動層乾燥機を用い排気温度60℃以下にて90分間乾燥してA顆粒を得た。
次に、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(52.4kg)、結晶セルロース(14.95kg)、クロスカルメロースナトリウム(11.90kg)を攪拌造粒機に入れ混合した。その後、メタノール(57.8kg)及びジクロロメタン(57.8kg)にシルニジピン(4.76kg)、マクロゴール400(3.33kg)及びヒプロメロースフタル酸エステル(19.04kg)を溶解した結合液を投入し造粒した。造粒後、整粒機(コーミル)により整粒(スクリーン:1.6mm)し、流動層乾燥機を用い排気温度60℃以下にて90分間乾燥してB顆粒を得た。
上記で得られたA顆粒とB顆粒を混合し、表1に示す処方のシルニジピン顆粒を得た。
【0033】
【表1】
【0034】
上記のシルニジピン顆粒(2966.4g)、バルサルタン(969.6kg)、結晶セルロース(936g)、クロスカルメロースナトリウム(960g)、含水二酸化ケイ素(96g)及びステアリン酸マグネシウム(24g)を混合機を用いて20分間混合し、混合末を得た。得られた混合末を乾式造粒(ロール圧力:6Mpa)にてフレークとし、整粒機(コーミル)により整粒(スクリーン:1.6mm)し、表2に示す処方のシルニジピン・バルサルタン配合顆粒を得た。
【0035】
【表2】
【0036】
上記にて得たシルニジピン・バルサルタン配合顆粒に、表3に示す処方となるようにステアリン酸マグネシウムを添加・混合し、打錠機にて圧縮成形することにより表3に示す処方の錠剤を得た。錠剤中に含まれるシルニジピンの割合:2.0%、バルサルタンの割合:16.0%、第1の崩壊剤の割合:5.0%、第2の崩壊剤の割合:16.0%(崩壊剤合計:21.0%)
【0037】
【表3】
【0038】
[実施例2]
バルサルタン(400g)、結晶セルロース(340g)及びクロスカルメロースナトリウム(400g)を流動層造粒機に入れ、メタノール(280g)及びジクロロメタン(1120g)にヒドロキシプロピルセルロース(100g)を溶解した結合液を噴霧(スプレー速度70g/mL、排気温度30℃)して表4に示す処方のバルサルタン顆粒を得た。
【0039】
【表4】
【0040】
上記にて得たバルサルタン顆粒、実施例1にて得たシルニジピン顆粒及びステアリン酸マグネシウムを表5に示す処方となるように添加・混合し、打錠機にて圧縮成形することにより表5に示す処方の錠剤を得た。錠剤中に含まれるシルニジピンの割合:2.0%、バルサルタンの割合:16.0%、第1の崩壊剤の割合:5.0%、第2の崩壊剤の割合:16.0%(崩壊剤合計:21.0%)
【0041】
【表5】
【0042】
[実施例3]
バルサルタン(200g)、結晶セルロース(550g)、クロスカルメロースナトリウム(275g)、乳糖水和物(90g)を流動層造粒機に入れ、メタノール(1120g)及びジクロロメタン(280g)にシルニジピン(25g)、ヒドロキシプロピルセルロース(100g)を溶解した結合液を噴霧(スプレー速度70g/mL、排気温度30℃)して表6に示す処方のシルニジピン・バルサルタン配合顆粒を得た。
【0043】
【表6】
【0044】
上記にて得たシルニジピン・バルサルタン配合顆粒に表7に示す処方となるようにステアリン酸マグネシウムを添加・混合し、打錠機にて圧縮成形することにより表7に示す処方の錠剤を得た。錠剤中に含まれるシルニジピンの割合:2.0%、バルサルタンの割合:16.0%、崩壊剤合計:22.0%
【0045】
【表7】
【0046】
[比較例1]
バルサルタン(40g)、シルニジピン(5g)、結晶セルロース(123g)、クロスカルメロースナトリウム(80g)及びステアリン酸マグネシウム(2g)を添加・混合し、打錠機にて圧縮成形することにより表8に示す処方の錠剤を得た。錠剤中に含まれるシルニジピンの割合:2.0%、バルサルタンの割合:16.0%、崩壊剤合計:32.0%)
なお、バルサルタンについては、粒子径D90が20μm以下の原薬を使用した。
【0047】
【表8】
【0048】
[比較例2]
バルサルタン(200g)、シルニジピン(25g)、結晶セルロース(550g)、クロスカルメロースナトリウム(275g)及び乳糖水和物(90g)を流動層造粒機に入れ、水(1400g)にヒドロキシプロピルセルロース(100g)を溶解した結合液を噴霧(スプレー速度70g/mL、排気温度30℃)して表6のシルニジピン・バルサルタン配合顆粒を得た。
その後、実施例3の方法により表7に示す処方の錠剤を得た。錠剤中に含まれるシルニジピンの割合:2.0%、バルサルタンの割合:16.0%、崩壊剤合計:22.0%
【0049】
[比較例3]
バルサルタン(484.8g)、結晶セルロース(378g)、クロスカルメロースナトリウム(480g)及びヒドロキシプロピルセルロース(150g)を攪拌造粒機に入れ、水(2100g)を投入し造粒した。造粒後、整粒機(コーミル)により整粒(スクリーン:1.6mm)し、流動層乾燥機を用い排気温度60℃以下にて45分間乾燥して表9に示す処方のバルサルタン顆粒を得た。
【0050】
【表9】
【0051】
上記にて得たバルサルタン顆粒、実施例1にて得たシルニジピン顆粒及びステアリン酸マグネシウムを表9に示す処方となるように添加・混合し、打錠機にて圧縮成形することにより表10に示す処方の錠剤を得た。錠剤中に含まれるシルニジピンの割合:2.0%、バルサルタンの割合:16.0%、第1の崩壊剤の割合:5.0%、第2の崩壊剤の割合:16.0%(崩壊剤合計:21.0%)
【0052】
【表10】
【0053】
[試験例1]
実施例1〜3、比較例1〜3の錠剤中のバルサルタンの粒度を測定した。バルサルタンの粒度分布測定については、50mgのバルサルタンを分散溶液(シリコンオイル:0.2%スパン85含有n−ヘプタン/60:40v/v)に分散した後、Malvern Particle size analyzerを用いて粒度を測定し、D90を算出した。
【0054】
[試験例2]
顆粒の粒度分布測定については、自動乾式音波ふるい分け測定器ロボットシフターRPS−95Cにて、目開き850μm、500μm、355μm、250μm、180μm、150μm、106μm及び75μmの篩を用いて粒度分布を測定し、D10、D50、D90を算出した。
【0055】
[試験例3]
バルサルタンの溶出試験については、第十六改正日本薬局方の項に記載されている溶出試験法(パドル法)に従い、毎分50回転、試験液として水900mLを用い、試験を行った。試験開始から15分、30分後の試験液を採取し、液体クロマトグラフィーにより試験を行い、シルニジピンの溶出率を算出した。
なお、実施例1、2及び比較例1については、1錠を用い、実施例3及び比較例2については2錠を用いて実施した。
【0056】
[試験例4]
シルニジピンの溶出試験については、第十六改正日本薬局方の項に記載されている溶出試験法(パドル法)に従い、毎分50回転、試験液として0.1w/v%ポリソルベート80を添加した溶出試験第2液900mLを用い、試験を行った。試験開始から7分、90分後の試験液を採取し、液体クロマトグラフィーにより試験を行い、シルニジピンの溶出率を算出した。
なお、実施例1、2及び比較例1については、1錠を用い、実施例3及び比較例2については2錠を用いて実施した。
【0057】
<結果>
バルサルタンの粒度を測定した結果、実施例1〜3、比較例1〜3に使用したバルサルタンの粒度は、すべてD90が20μm以下であった。
実施例1のシルニジピン顆粒及びシルニジピン・バルサルタン配合顆粒について、試験例2に従い粒度分布を測定した。その結果を表11に記載する。
【0058】
【表11】
【0059】
実施例1〜3、比較例1〜3にて作成し錠剤を試験例3及び4に従い溶出率を確認した。その結果を表12に記載する。
なお、シルニジピンの市販製剤であるアテレック(登録商標)錠及びバルサルタンの市販製剤であるディオバン(登録商標)錠の溶出速度を考慮して基準値を設定し、シルニジピン、バルサルタンそれぞれの溶出率が基準値を満たすものを○、満たさないものを×と評価した。
その結果、実施例1〜3については、すべて基準値内の溶出率となったが、比較例1〜3については、基準値内の溶出率が得られなかった。
【0060】
【表12】