特許第6302876号(P6302876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6302876車両の衝突回避制御装置および衝突回避制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302876
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】車両の衝突回避制御装置および衝突回避制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20180319BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   B60T8/17 Z
   B60T7/12 C
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-143481(P2015-143481)
(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公開番号】特開2017-24498(P2017-24498A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中川 友佑
(72)【発明者】
【氏名】大森 陽介
(72)【発明者】
【氏名】池 渉
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−212772(JP,A)
【文献】 特開2008−55994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/17
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両の実際の減速度である車体減速度を入力し、入力された前記車体減速度と、障害物との相対距離と、目標相対距離とに基づいて、前記障害物との衝突回避のための第1の要求減速度を求める衝突回避制御部と、
入力された前記車体減速度と、前記第1の要求減速度とに基づく第1の制御と、前記第1の要求減速度とに基づく第2の制御とにより、ブレーキ装置を制御するための要求減速度を求め、ドライバーによる制動動作が検出された場合に、前記第1の制御を停止するブレーキ制御部と、
を備えた車両の衝突回避制御装置。
【請求項2】
前記ブレーキ制御部は、前記制動動作が検出されなくなった場合に、前記第1の制御を再開する、
請求項1に記載の車両の衝突回避制御装置。
【請求項3】
前記ブレーキ制御部は、前記制動動作が検出された場合に、前記制動動作による要求減速度である第2の要求減速度と、前記第1の要求減速度を前記車体減速度でフィードバックした減速度である第3の要求減速度とを比較し、大きい方の減速度で前記ブレーキ装置を制御する、
請求項1または2に記載の車両の衝突回避制御装置。
【請求項4】
走行中の車両の実際の減速度である車体減速度を入力し、入力された前記車体減速度と、障害物との相対距離と、目標相対距離とに基づいて、前記障害物との衝突回避のための第1の要求減速度を求め、
入力された前記車体減速度と、前記第1の要求減速度とに基づく第1の制御と、前記第1の要求減速度とに基づく第2の制御とにより、ブレーキ装置を制御するための要求減速度を求め、ドライバーによる制動動作が検出された場合に、前記第1の制御を停止する、
ことを含む車両の衝突回避制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突回避制御装置および衝突回避制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自車両と自車両の進行方向前側に存在する先行車両との車間距離が一定距離以下になった場合に、ドライバーに対して警報を出力したり、自動ブレーキ等の回避制動を行い、先行車両との衝突を回避する衝突回避制御(PCS:Pre Crash Control)を行う車両制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような装置において、衝突回避制御における目標減速度に対する制御精度を向上させるためには、実際の車体の減速度(車体減速度)を用いてフィードバック制御を行うことが好ましい。
【0004】
このような衝突回避制御の実行中において、ドライバーのブレーキ操作等による制動が行われた場合、衝突回避制御における要求減速度を実際の車体減速度でフィードバックした減速度と、ドライバーの制動による要求減速度とを加算して制御を行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−296887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように、衝突回避制御における要求減速度を実際の車体減速度でフィードバックした減速度と、ドライバーの制動による要求減速度とを加算すると、ドライバーの制動動作による要求減速度の変化が遅れて実際の車体減速度に反映され、その後、フィードバック制御によって衝突回避制御のフィードバックした車体減速度が補正されて最終的な制動力に反映されてしまう。このため、ブレーキ操作等に対する応答遅れが大きく、車体減速度に変動が発生する。これは、ドライバーにとっては、衝突回避制御の実行中に、さらにブレーキ操作を行ったのに、要求した制動が実現されないことになる。
【0007】
このため、本発明の課題の一つは、衝突回避制御の実行中において、ドライバーがブレーキ操作を行った場合でも、要求した制動を実現することができる車両の衝突回避制御装置および衝突回避制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両の衝突回避制御装置は、走行中の車両の実際の減速度である車体減速度を入力し、入力された前記車体減速度と、障害物との相対距離と、目標相対距離とに基づいて、前記障害物との衝突回避のための第1の要求減速度を求める衝突回避制御部と、入力された前記車体減速度と、前記第1の要求減速度とに基づく第1の制御と、前記第1の要求減速度とに基づく第2の制御とにより、ブレーキ装置を制御するための要求減速度を求め、ドライバーによる制動動作が検出された場合に、前記第1の制御を停止するブレーキ制御部と、を備えた。当該構成により、一例として、衝突回避制御の実行中において、ドライバーがブレーキ操作を行った場合でも、要求した制動を実現することができる。
【0009】
また、本発明の車両の衝突回避制御装置において、前記ブレーキ制御部は、前記制動動作が検出されなくなった場合に、前記第1の制御を再開する。当該構成により、一例として、衝突回避制御の実行中において、ドライバーがブレーキ操作を行った後に、ブレーキ操作をやめた場合に、適切な衝突回避制御を実現することができる。
【0010】
また、本発明の車両の衝突回避制御装置において、前記ブレーキ制御部は、前記制動動作が検出された場合に、前記制動動作による要求減速度である第2の要求減速度と、前記第1の要求減速度を前記車体減速度でフィードバックした減速度である第3の要求減速度とを比較し、大きい方の減速度で前記ブレーキ装置を制御する。当該構成によれば、一例として、衝突回避制御中にドライバーによるブレーキ操作による制動力が小さい場合でも、障害物との衝突の回避を確実に行うことができる。
【0011】
本発明の車両の衝突回避制御方法は、走行中の車両の実際の減速度である車体減速度を入力し、入力された前記車体減速度と、障害物との相対距離と、目標相対距離とに基づいて、前記障害物との衝突回避のための第1の要求減速度を求め、入力された前記車体減速度と、前記第1の要求減速度とに基づく第1の制御と、前記第1の要求減速度とに基づく第2の制御とにより、ブレーキ装置を制御するための要求減速度を求め、ドライバーによる制動動作が検出された場合に、前記第1の制御を停止する、ことを含む。当該構成により、一例として、衝突回避制御の実行中において、ドライバーがブレーキ操作を行った場合でも、要求した制動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態の車両の衝突回避制御装置が搭載された車両の例示的かつ模式的な構成図である。
図2図2は、実施形態の車両の衝突回避制御装置による制御状態の遷移を示す例示的な説明図である。
図3図3は、実施形態の車両の衝突回避制御装置の例示的かつ模式的なブロック図である。
図4図4は、実施形態1の衝突回避制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態2の衝突回避制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態2において、減速度の変化の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0014】
また、以下では、一例として、車両100が、前方に走行中に、前方の障害物との衝突を回避するよう車両100の各部が制御される場合が、例示される。
【0015】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の車両100の例示的かつ模式的な構成図である。図1に示すように、車両100は、エンジン51や、モータジェネレータ62(M/G)、ブレーキ装置41等を備えている。エンジン51およびモータジェネレータ62は、車両100の加速度を生じさせる。よって、エンジン51およびモータジェネレータ62は、駆動源あるいは駆動装置とも称されうる。なお、車両100には、駆動源としては、エンジン51およびモータジェネレータ62のうち少なくとも一方が搭載されていればよい。また、車両100の加速度は、車両100の前方へ向かう速度の経時的な増分(時間微分)であり、車両100の減速度は、車両100の前方へ向かう速度の経時的な減分(時間微分)である。よって、加速度は、負の減速度でもあり、減速度は、負の加速度でもある。つまり、ブレーキ装置41による制動力すなわち減速度が減ると加速度が増大し、エンジン51やモータジェネレータ62による駆動力すなわち加速度が減ると減速度が増大する。
【0016】
車両100は、PCS−ECU10(pre-crash safety electronic control unit)とブレーキECU40とを備えている。ここで、PCS−ECU10とブレーキECU40は、衝突回避制御装置の一例である。
【0017】
PCS−ECU10は、走行中に車両100の前方に障害物があることが検知された場合に、当該障害物との衝突の可能性の有無を判定し、衝突の可能性がある場合に、当該障害物との衝突を回避するよう、ブレーキ装置41や、エンジン51、モータジェネレータ62等を制御するブレーキECU40やエンジンECU50やM/G ECU60等へ指示する。PCS−ECU10は、衝突回避制御装置の一例である。なお、本実施形態では、PCS−ECU10は、車両100の加速度または減速度、すなわち駆動力または制動力を制御するよう指示するが、PCS−ECU10は、さらに、車両100の操舵を制御するように指示してもよい。
【0018】
PCS−ECU10は、CPU(central processing unit)やコントローラ等の制御部や、ROM(read only memory)や、RAM(random access memory)、フラッシュメモリ等の記憶部を、有している。記憶部には、PCS−ECU10を動作させるためのプログラムや、PCS−ECU10の演算処理に用いられるデータ等が記憶されうる。
【0019】
また、車両100には、測距装置21、カメラ22、加速度センサ23、ブレーキ操作検出部24が搭載されている。
【0020】
測距装置21は、障害物との距離を非接触で無線により測定する装置であり、例えば、レーダ装置や、ソナー装置等である。PCS−ECU10は、測距装置21から、障害物との距離を示すデータを取得する。この場合、距離を示すデータは、距離そのものを示す数値のデータであってもよいし、距離に対応した値のデータであってもよい。
【0021】
カメラ22は、例えば、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。カメラ22は、所定のフレームレートで動画データを出力することができる。PCS−ECU10は、カメラ22で撮像された画像を示すデータを取得し、当該画像データを用いて、障害物までの距離を取得してもよい。
【0022】
加速度センサ23は、車体前後方向の加速度(前後加速度)を検出し、前後加速度を表す信号を出力する。
【0023】
また、図示されないが、PCS−ECU10には、車両100に搭載される各種センサから、当該各種センサによる検出結果を示すデータが入力される。車両100に搭載されるセンサには、車両100の状態の検出結果を示すセンサが含まれうる。車両100の状態の検出結果を示すセンサは、例えば、上述した加速度センサの他、車速センサや、ジャイロセンサ等である。
【0024】
また、車両100に搭載されるセンサには、ドライバーによって操作される操作部における操作量あるいは操作要求量の検出結果を示すセンサが含まれうる。ドライバーによる操作部は、例えば、アクセルペダルや、ブレーキペダル、ブレーキハンドル、ステアリングホイール、スイッチ等である。
【0025】
ここで、操作部がブレーキペダルの場合、ブレーキ操作の検出は、ブレーキ操作検出部24によって行われる。ブレーキ操作検出部24は、ブレーキペダルに設けられ、ドライバーによるブレーキペダルの操作を検出する。ブレーキ操作検出部24としては、例えば、ブレーキスイッチ、ブレーキペダルストロークセンサ、踏力センサ等があげられる。ブレーキスイッチは、ドライバーによるブレーキペダルの操作の有無を示すブレーキ操作信号を出力する。具体的には、ブレーキスイッチは、ブレーキペダルが操作されている場合にはオン(High)のブレーキ操作信号を出力し、ブレーキペダルBPが操作されていない場合にはオフ(Low)のブレーキ操作信号を出力する。ブレーキペダルストロークセンサは、ドライバーによるブレーキペダルの踏込み量(ストローク量)を検知し、検知信号を送出する。踏力センサは、ブレーキペダルが踏み込まれた際のブレーキ踏力またはペダル作動力を検出し、検知信号を送出する。ここで、ブレーキ操作信号、各検知信号は、ブレーキECU40に出力される。
【0026】
また、車両100に搭載されるセンサには、車両100に搭載される各装置の状態の検出結果を示すセンサが含まれうる。車両100に搭載される装置は、例えば、ブレーキ装置41や、エンジン51、モータジェネレータ62、インバータ61(IV)、操舵システム、サスペンションシステム等である。なお、車両100に搭載される各種センサによって検出される物理量は、例えば、距離、変位、速度、加速度、回転速度、角度、角速度、角加速度等である。また、PCS−ECU10には、各物理量そのものを示す数値のデータが入力されてもよいし、各物理量の大きさに対応した値のデータが入力されてもよい。
【0027】
PCS−ECU10に入力されるデータは、デジタルデータであってもよいし、数値化されていない電位等のアナログデータであってもよいし、物理量の値ではなくオンオフや段階に対応したデータ等であってもよい。
【0028】
PCS−ECU10は、衝突回避制御を行うにあたり、前方の障害物と衝突するまでの予測時間、すなわちTTC(time to collision)を算出する。最も単純な例では、障害物までの距離をD、障害物に対する車両100の相対速度をVrとすると、PCS−ECU10は、TTCを、TTC=D/Vrのような式によって算出することができる。なお、TTCは、障害物の相対加速度や、車両100の減速度等を考慮して算出されてもよい。
【0029】
また、PCS−ECU10は、ブレーキECU40で算出された車両100の加速度または減速度の、ブレーキ装置41、エンジン51、およびモータジェネレータ62のそれぞれによる分担を演算する。分担の割合は、例えば車両100の状況に応じて異なる。PCS−ECU10は、ブレーキECU40、エンジンECU50、およびモータジェネレータECU60に、それぞれが分担する加速度または減速度を示すデータを送信する。
【0030】
ブレーキECU40は、加速度センサ23からの検知信号から、車両100の加速度や減速度を演算する。ブレーキECU40は、演算された加速度または減速度が得られるよう、ブレーキ装置41を制御する。エンジンECU50は、PCS−ECU10で設定された加速度または減速度が得られるよう、エンジン51を制御する。また、モータジェネレータECU60は、PCS−ECU10で設定された加速度または減速度が得られるようにモータジェネレータ62が動作するよう、インバータ61を制御する。
【0031】
ブレーキECU40は、車両100の後端部に設けられたストップランプ42を、点灯するよう制御することができる。ストップランプ42の点灯は、車両100の周囲、例えば後続車等に対する警報表示となりうる。また、メータECU70は、インストルメントパネル等に設けられたメータ71を、警報表示を出力するよう、制御することができる。メータ71の表示出力は、ドライバーや車室内の乗員に対する警報表示となりうる。ストップランプ42およびメータ71は、警報出力装置や、出力装置、警報装置、表示出力装置等とも称されうる。なお、音声による出力は、図示されない音声出力装置から出力されうる。音声出力装置は、例えば、スピーカやブザー等であり、警報出力装置や、出力装置、警報装置等とも称されうる。
【0032】
図2は、ドライバーによるブレーキ操作が行われなかった場合の自動的な衝突回避制御における、制御状態の遷移の一例が示されている。なお、図2に含まれるグラフにおいて、横軸は時間、縦軸は減速度、αは加速度である。
【0033】
PCS−ECU10は、車両100の走行中に取得されたデータに基づいて、所定の時間間隔でTTCを算出し、このTTCの値に応じて、衝突回避制御を開始したり、衝突回避制御を次の段階に遷移させたり、衝突回避制御を終了したりする。すなわち、PCS−ECU10は、TTCに基づいて、衝突回避に関わる状況を監視している。
【0034】
まず、PCS−ECU10は、メータ71やスピーカ等による警報作動を開始する。
【0035】
次に、PCS−ECU10は、ブレーキ装置41のポンプ(不図示)を駆動するようにブレークECU40に指示する。ブレーキECU40は、指示に基づいて制御し、ブレーキパッドとブレーキディスクあるいはドラムとの間の隙間を解消する。この動作は、プレフィル(PF)とも称されうる。
【0036】
次に、PCS−ECU10は、予備制動を開始するようブレーキECU40に指示する。具体的には、PCS−ECU10は、ストップランプ42が点灯されるよう、ブレーキECU40に指示信号を送信する。また、PCS−ECU10は、例えば、ストップランプ42の点灯に伴う必要最低限度の減速度(制動力)が得られるよう、ブレーキECU40へ指示し、ブレーキECU40は指示に基づいてブレーキ装置41を制御する。なお、本実施形態では、予備制動の主目的はストップランプ42の点灯であるが、後方車両のドライバーに減速操作を意識づけるような所要の減速度が得られるようにしてもよい。
【0037】
次に、PCS−ECU10は、衝突回避を目的とした制動制御を開始するようブレーキECU40へ指示する。具体的には、PCS−ECU10は、車両100の速度が所要の減速度で変化するよう、すなわち、所要の制動力が得られるようブレーキECU40に指示し、ブレーキECU40は指示に基づいてブレーキ装置41を制御する。なお、制動制御にあっては、減速度(制動力)が段階的に増大してもよい。
【0038】
車両100が障害物に衝突することなく停車すると、PCS−ECU10は、所定期間、車両100が停車状態を維持するようブレーキECU40に指示し、ブレーキECU40は指示に基づいてブレーキ装置41を制御する。この動作は、ブレーキホールド(BH)とも称されうる。
【0039】
次に、本実施形態のPCS−ECU10とブレーキECU40の詳細について説明する。図3は、実施形態1のPCS−ECU10とブレーキECU40の機能的構成を示すブロック図である。PCS−ECU10は、図3に例示されるように、距離補正部11と、加算器14、15と、FB制御部13と、FF制御部12とを主に備えている。PCS−ECU10は、車両の車体減速度をフィードバックして、車体減速度と相対距離と目標相対距離とを用いて、距離補正部11、加算器14、FB制御部13によるフィードバック制御と、相対速度を入力するFF制御部12によるフィードフォワード制御とにより、衝突回避に必要な減速度であるPCS要求減速度を求める。
【0040】
PCS−ECU10は、独立したECUであってもよいし、車両に搭載されたいずれかのシステムのECUに組み込まれてもよい。PCS−ECU10は、インストールされ、ロードされたプログラムにしたがって処理を実行し、各機能を実現することができる。すなわち、プログラムにしたがって処理が実行されることにより、PCS−ECU10は、距離補正部11と、加算器14、15と、FB制御部13と、FF制御部12等として機能することができる。なお、上記各部の機能の少なくとも一部は、ハードウエアによって実現されてもよい。
【0041】
PCS−ECU10は、測距装置21から前方車両等の障害物との相対距離を入力する。入力された相対距離は、FF制御部12により減速度に変換され、その値が加算器15へ出力される。
【0042】
また、入力された相対距離は、距離補正部11に入力される。距離補正部11は、加速度センサ23の検出信号からブレーキECU40で算出された車両の実際の車体減速度(実車体減速度)をフィードバックして入力する。距離補正部11は、相対距離を、フィードバックされた車体減速度に応じた距離で補正して出力する。そして、加算器14は、補正後の相対距離と、相対距離の目標値として予め設定された目標相対距離との差分を演算して出力する。FB制御部13は、入力された距離の差分から減速度を演算して出力する。
【0043】
加算器15は、FF制御部12からの減速度の出力値とFB制御部13からの減速度の出力値とを加算した値を、PCS要求減速度としてブレーキECU40に出力する。PCS要求減速度は、衝突回避に必要な減速度であり、第1の要求減速度の一例である。このように、PCS−ECU10では、衝突回避に必要なPCS要求減速度が、そのときに発生している車両の車体減速度をフィードバックすることにより演算される。
【0044】
ブレーキECU40は、図3に例示されるように、規範減速度演算部47と、加算器46と、FB制御部43と、FF制御部48と、判定部45と、油圧換算部44とを主に備えている。ブレーキECU40は、加速度センサ23の検出信号を入力し、この検出信号から車両の実際の車体減速度(実車体減速度)を算出する。この車体減速度は、上述のように、PCS−ECU10へも入力される。
【0045】
ブレーキECU40は、独立したECUであってもよいし、車両に搭載されたいずれかのシステムのECUに組み込まれてもよい。ブレーキECU40は、インストールされ、ロードされたプログラムにしたがって処理を実行し、各機能を実現することができる。すなわち、プログラムにしたがって処理が実行されることにより、ブレーキECU40は、規範減速度演算部47と、加算器46と、FB制御部43と、FF制御部48と、判定部45と、油圧換算部44と等として機能することができる。なお、上記各部の機能の少なくとも一部は、ハードウエアによって実現されてもよい。
【0046】
ブレーキECU40は、車両の車体減速度をフィードバックして、車体減速度とPCS要求減速度とを用いて、規範減速度演算部47、加算器46、FB制御部43によるフィードバック制御(第1の制御の一例)と、PCS要求減速度を入力するFF制御部48によるフィードフォワード制御(第2の制御の一例)とにより、ブレーキに必要な減速度であるブレーキ目標減速度を求める。
【0047】
ブレーキECU40は、PCS−ECU10からPCS要求減速度を入力する。入力されたPCS要求減速度に対して、FF制御部48で所定の演算が行われて、その出力値が判定部45に出力される。
【0048】
また、入力されたPCS要求減速度は、規範減速度演算部47に入力される。規範減速度演算部47は、例えば、ステップ状のPCS要求減速度の入力値を所定値に設定した規範減速度を出力する。加算器46は、この規範減速度から、フィードバック入力された車体減速度を減算し、FB制御部43で減算値に対する所定の演算が行われて、その出力値が判定部45に出力される。
【0049】
判定部45は、ブレーキ操作検出部24で検出されたドライバーによるブレーキ操作の検出信号を入力し、ドライバーのブレーキ操作による減速度であるドライバー減速度を算出する。このドライバー減速度は、第2の要求減速度の一例である。
【0050】
また、判定部45は、FF制御部48からの減速度の出力値と、FB制御部43からの減速度の出力値とを入力し、両者を加算する。
【0051】
具体的には、判定部45は、FF制御部48からの減速度の出力値と、FB制御部43からの減速度の出力値との加算値を、各部から出力されるたびに、内部のメモリに逐次保存し、油圧換算部44へ送出する。
【0052】
ここで、FF制御部48からの減速度の出力値とFB制御部43からの減速度の出力値との加算値は、PCS要求減速度を車体減速度でフィードバックした減速度であり、ブレーキ目標減速度という。ブレーキ目標減速度は、ブレーキ装置41に真に発生させなければならない減速度である。油圧換算部44は、入力されたブレーキ目標減速度を生じるような油圧の指令に変換して、ブレーキ装置41に送出する。
【0053】
ここで、ドライバーがブレーキ操作を行い、ブレーキ操作による制動力が発生した場合、従来は、ブレーキECUは、ブレーキ操作による要求減速度であるドライバー減速度を、ブレーキ目標減速度に加算した減速度に対してフィードバック制御を行っていた。このため、衝突回避制御の減速度がブレーキ操作のない場合に比べ小さくなる場合が生じてくる。
【0054】
すなわち、衝突回避制御におけるフィードバック制御では、衝突回避に必要な減速度を制御対象として出力するため、ブレーキ目標減速度とドライバー減速度とを加算してフィードバック制御が行われると、衝突回避に必要な減速度に対して衝突回避制御が占める割合が小さくなり、ドライバー減速度の分だけ、衝突回避に必要な減速度を弱めるように制御される。
【0055】
また、ドライバーがブレーキ操作を行うたびに、衝突回避制御に必要な制御量(減速度)が変動するため、目標値が変動し、フィードバック制御は追従できなくなる。すなわち、ドライバーのブレーキ操作によるドライバー減速度の変化が遅れて実際の車体減速度に反映され、その後、フィードバック制御によって衝突回避制御のフィードバックした車体減速度が補正されて最終的な減速度に反映されてしまう。このため、ブレーキ操作に対する応答遅れが大きく、車体減速度に変動が発生する。
【0056】
このため、従来の衝突回避制御では、衝突回避制御の実行中に、ドライバーがさらにブレーキ操作を行ったのにもかかわらず、要求した制動が実現されなかったり、ドライバーがブレーキを急に緩めたときに減速度の回復が遅れる場合が生じてしまう。
【0057】
このため、本実施形態では、ドライバーによるブレーキ操作があり、ドライバーによる制動が生じた場合、判定部45は、このドライバー操作を検出して、ブレーキECU40における、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を停止する。具体的には、判定部45は、ブレーキ操作が入力された場合、入力された時点でメモリに保存されているFB制御部43の出力値とFF制御部48の出力値の加算値(ブレーキ目標減速度)にドライバーのブレーキ操作によるドライバー減速度を加算して、油圧換算部44に出力することで、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を停止する。
【0058】
これにより、本実施形態では、衝突回避制御の実行中に、ドライバーがブレーキ操作を行った場合でも、ドライバーのブレーキ操作によるドライバー減速度が、衝突回避制御に必要な減速度に加算されてフィードバック制御が行われなくなる。このため、衝突回避に必要な減速度が弱められたり、応答遅れは発生せずに、ドライバーが要求した制動を実現することができる。
【0059】
このようなフィードバック制御の停止中に、ドライバーによるブレーキ操作が終了し、ドライバーによる制動がなくなった場合、判定部45は、ブレーキECU40における、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を再開する。具体的には、判定部45は、FF制御部48からの減速度の出力値と、FB制御部43からの減速度の出力値との加算値(ブレーキ目標減速度)を、各部から出力されるたびに、内部のメモリに逐次保存し、油圧換算部44へ送出することを再開することで、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を再開する。
【0060】
次に、以上のように構成された本実施形態にかかる衝突回避制御処理について説明する。図4は、実施形態1の衝突回避制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。PCS−ECU10は、衝突回避制御(PCS制御)を開始する(S11)。衝突回避制御では、上述のように、PCS−ECU10によるフィードバック制御およびフィードフォワード制御と、ブレーキECU40によるフィードバック制御およびフィードフォワード制御が行われる。ブレーキECU40の判定部45は、FF制御部48の出力値とFB制御部43の出力値の加算値(ブレーキ目標減速度)を、逐次メモリに保存し、かつ油圧換算部44に出力する(S12)。
【0061】
判定部45が、ドライバーによるブレーキ操作を検出したか否かを判断する(S13)。ブレーキ操作が検出されない間は(S13:No)、S12により、判定部45によるFF制御部48の出力値とFB制御部43の出力値の加算値の保存、出力が繰り返し実行される。
【0062】
ドライバーによるブレーキ操作が検出された場合には(S13:Yes)、ブレーキECU40は、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を停止する(S14)。すなわち、この時点でメモリに保存されている加算値(FB制御部43の出力値とFF制御部48の出力値の加算値)にドライバーのブレーキ操作によるドライバー減速度を加算した値を、油圧換算部44に出力する(S15)。すなわち、判定部45は、FF制御部48の出力値、FB制御部43の出力値が変化しても、変化した加算値を算出せずに、メモリに保存されているブレーキ操作が入力された時点の加算値に基づいて求めた値を、油圧換算部44に出力し続ける。
【0063】
次に、判定部45が、ドライバーによるブレーキ操作を検出したか否かを判断する(S16)。ブレーキ操作が検出されている間は(S16:Yes)、S15で、判定部45は、メモリに保存されているブレーキ操作が入力された時点の加算値にドライバー減速度を加算した値を、油圧換算部44に出力し続ける。
【0064】
ドライバーによるブレーキ操作が検出されなくなったら(S16:No)、ブレーキECU40は、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を再開する(S17)。すなわち、判定部45は、FF制御部48からの減速度の出力値と、FB制御部43からの減速度の出力値との加算値を、各部から出力されるたびに、内部のメモリに逐次保存し、油圧換算部44へ送出する。
【0065】
そして、PCS−ECU10は、ドライバーから衝突回避制御(PCS制御)の終了指示があったか否かを判断する(S18)。衝突回避制御の終了指示がない場合には(S18:No)、S12からS18までの処理が繰り返される。衝突回避制御(PCS制御)の終了指示がある場合には(S18:Yes)、処理は終了する。
【0066】
このように本実施形態では、衝突回避制御の実行中に、ドライバーによるブレーキ操作で制動がかかった場合には、ブレーキECU40における、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を停止する。このため、本実施形態によれば、衝突回避制御の実行中に、ドライバーがブレーキ操作を行った場合でも、ドライバーのブレーキ操作によるドライバー減速度が、衝突回避制御に必要な減速度に加算されて、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御が行われなくなるため、衝突回避に必要な減速度が弱められたり、応答遅れは発生せずに、ドライバーが要求した制動を実現することができる。
【0067】
また、本実施形態では、ブレーキECU40における規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御の停止中に、ドライバーによるブレーキ操作がなくなった場合には、ブレーキECU40における上記フィードバック制御を再開する。このため、本実施形態によれば、衝突回避制御の実行中に、ドライバーによるブレーキ操作が行われた後、ドライバーがブレーキ操作をやめた場合に、もとの衝突回避制御におけるフィードバック制御が行われて、適切な衝突回避制御を実現することができる。
【0068】
(実施形態2)
実施形態1では、PCS制御中にドライバーによるブレーキ操作で制動がかかった場合には、ブレーキECU40における規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を停止していた。
【0069】
PCS制御中にドライバーによるブレーキ操作で制動がかかった場合において、ドライバーによるブレーキペダルの踏込みが小さく、ドライバー減速度が小さい場合がある。このような場合、ブレーキECU40で規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を停止すると、ブレーキ装置41を制御するための要求減速度が小さくなり、車体減速度が充分に大きくならない場合がある。
【0070】
この実施形態2では、衝突回避制御中にドライバーによるブレーキ操作で制動がかかった場合には、PCS要求減速度を車体減速度でフィードバック制御した要求減速度、すなわちブレーキ目標減速度と、ドライバーのブレーキ操作による要求減速度のうち大きい方を出力し、衝突回避制御の実行中に、ドライバーのブレーキ操作による制動が小さな制動である場合においても、より確実に衝突回避を実現している。
【0071】
本実施形態の車両100の構成、PCS−ECU10およびブレーキECU40の構成は、実施形態と同様である。
【0072】
本実施形態のブレーキECU40の判定部45は、ブレーキ操作が検出された場合に、ブレーキ操作による要求減速度であるドライバー減速度(第2の要求減速度の一例)を算出する。そして、判定部45は、算出したドライバー減速度と、PCS要求減速度を車体減速度でフィードバックした減速度、すなわちブレーキ目標減速度(第3の要求減速度の一例)とを比較し、大きい方の減速度を油圧換算部44に出力してブレーキ装置41を制御する。ここで、PCS要求減速度を車体減速度でフィードバックした減速度(ブレーキ目標減速度)は、FF制御部48の出力値とFB制御部43の出力値の加算値である。
【0073】
より具体的には、ブレーキECU40は、ドライバー減速度がブレーキ目標減速度より大きい場合には、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を停止し、ドライバー減速度を油圧換算部44に出力する。
【0074】
ブレーキECU40は、ブレーキ目標減速度がドライバー減速度以上である場合には、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を再開し、ブレーキ目標減速度を油圧換算部44に出力する。
【0075】
次に、以上のように構成された本実施形態にかかる衝突回避制御処理について説明する。図5は、実施形態2の衝突回避制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。PCS−ECU10は、衝突回避制御(PCS制御)を開始する(S31)。衝突回避制御(PCS制御)では、上述のように、PCS−ECU10によるフィードバック制御およびフィードフォワード制御と、ブレーキECU40によるフィードバック制御およびフィードフォワード制御が行われる。なお、実施形態1と同様に、ブレーキECU40の判定部45は、FF制御部48の出力値とFB制御部43の出力値の加算値(PCS要求減速度を車体減速度でフィードバックした減速度、すなわちブレーキ目標減速度)を逐次メモリに保存し、かつ、この加算値を油圧換算部44に出力する。
【0076】
次に、判定部45は、ドライバーによるブレーキ操作を検出したか否かを判断する(S32)。ブレーキ操作が検出されない間は(S32:No)、判定部45によるFF制御部48の出力値とFB制御部43の出力値の加算値の保存、出力が繰り返し実行される。
【0077】
ドライバーによるブレーキ操作が検出された場合には(S32:Yes)、判定部45は、ドライバー減速度を算出し、ドライバー減速度が、ブレーキ目標減速度より大きいか否かを判断する(S33)。そして、ドライバー減速度がブレーキ目標減速度より大きい場合には、ブレーキECU40は、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を停止し(S34)、判定部45は、ドライバー減速度を油圧換算部44に出力する(S35)。
【0078】
一方、S33で、ブレーキ目標減速度がドライバー減速度以上である場合には(S33:No)、ブレーキECU40は、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御が停止中の場合には再開し(S36)、判定部45は、ブレーキ目標減速度をブレーキ目標減速度として油圧換算部44に出力する(S37)。
【0079】
そして、PCS−ECU10は、ドライバーから衝突回避制御(PCS制御)の終了指示があったか否かを判断する(S38)。衝突回避制御の終了指示がない場合には(S38:No)、S32からS38までの処理が繰り返される。衝突回避制御の終了指示がある場合には(S38:Yes)、処理は終了する。
【0080】
図6は、実施形態2において、減速度の変化の状態を示す図である。図6(a)はドライバーによるブレーキ操作がない場合を示し、図6(b)はドライバーによるブレーキ操作がある場合を示している。図6において、横軸が時間であり、縦軸が減速度の大きさである。符号601は、ブレーキ目標減速度の変化を示す。符号602は、車両100の車体減速度の変化を示す。符号603は、PCS要求減速度を示す。符号604は、ブレーキ操作によるドライバー減速度を示す。符号610は、ブレーキECU40における規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御が停止している期間を示す。
【0081】
図6(a)に示すように、PCS制御が開始されると、PCS−ECU10によりPCS要求減速度603が出力され、これに基づいて、ブレーキECU40は、ブレーキ目標減速度601がPCS要求減速度603より大きい値で出力する。その結果、車両100の車体減速度602は、PCS要求減速度603とほぼ一致する大きさとなる。
【0082】
図6(b)に示すように、PCS制御中に、ドライバーがブレーキ操作を行い、ドライバー減速度604が生じたものとする。このドライバー減速度が小さく、ブレーキ目標減速度601を超えない場合には、ブレーキECU40における規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御は停止せず、続行される。このため、判定部45は、ブレーキ目標減速度601を油圧換算部44に出力する。しかし、ドライバー減速度604が大きくなり、ブレーキ目標減速度601を超えた場合には、その時点(「FB停止」)で、ブレーキECU40は、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を停止し、その結果、判定部45は、ブレーキ目標減速度601に代えてドライバー減速度604を油圧換算部44に出力する。また、ドライバー減速度604が小さくなり、ブレーキ目標減速度601より小さくなると、その時点で(「FB再開」)、ブレーキECU40は、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を再開する。このため、判定部45は、ブレーキ目標減速度601を油圧換算部44に出力する。また、ドライバー減速度604が選択されている間、フィードバック制御は停止されているため、ブレーキ目標減速度601より大きなドライバー減速度604が選択されている間にフィードバック制御によってブレーキ目標減速度601が小さくなることはなく、フィードバック制御再開時に適切な制御が実現される。
【0083】
このように本実施形態では、衝突回避制御中にドライバーによるブレーキ操作で制動がかかった場合には、ブレーキ目標減速度と、ドライバーのブレーキ操作によるドライバー減速度のうち大きい方でブレーキ装置41を制御する。このため、本実施形態では、衝突回避制御中にブレーキ操作で制動がかかり、規範減速度演算部47と加算器46とFB制御部43によるフィードバック制御を停止しても、ブレーキ装置41を制御するための要求減速度が小さくならず、車体減速度が小さくならない。このため、本実施形態によれば、衝突回避制御中にドライバーによるブレーキ操作による制動力が小さい場合でも、障害物との衝突の回避を確実に行うことができる。
【0084】
実施形態1では、FB制御部43の出力値とFF制御部48の出力値の加算値を記憶し、ブレーキ操作を検出した時には、判定部45は、記憶したFB制御部43の出力値とFF制御部48の出力値の加算値と、ドライバー減速度とを加算して油圧換算部44に出力していたが、FB制御部43の出力値のみを記憶し、ブレーキ操作を検出した時には、記憶したFB制御部43の出力値と最新のFF制御部48の出力値とドライバー減速度とを加算して油圧換算部44に出力するようにしてもよい。この場合、ブレーキ操作中にPCS−ECU10からのPCS要求減速度が変化に応じて最新のFF制御部48の出力値も変化するため、フィードバック制御中であってもPCS要求減速度の変化を反映することができる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
10…PCS−ECU(衝突回避制御部)、40…ブレーキECU(ブレーキ制御部)、41…ブレーキ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6