特許第6302914号(P6302914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6302914カラーを利用した自己位置合わせ式気管チューブ汚れ取り装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302914
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】カラーを利用した自己位置合わせ式気管チューブ汚れ取り装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20180319BHJP
   B08B 9/055 20060101ALN20180319BHJP
【FI】
   A61M16/04 Z
   !B08B9/055 557
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-533728(P2015-533728)
(86)(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公表番号】特表2015-530179(P2015-530179A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】IB2013058645
(87)【国際公開番号】WO2014049493
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年8月22日
(31)【優先権主張番号】61/707,259
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/026,122
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514300557
【氏名又は名称】アヴェント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステーデルマン、ジェニファー・エス
(72)【発明者】
【氏名】セサ、ジョセフ・エー
(72)【発明者】
【氏名】サージェント、キャロライン・ワイ
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0092956(US,A1)
【文献】 特開2000−175923(JP,A)
【文献】 特表2008−544822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
A61M 25/00
B08B 9/00−9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルの内壁を洗浄するためのデバイスであって、
外周面、近位端及び遠位端を有する洗浄ルーメンと、
前記洗浄ルーメンの前記外周面に沿って軸線方向に第1の位置から第2の位置へ摺動可能なカラーであって、前記洗浄ルーメンに近接して摺動可能にそれを包囲する内側環状部と、外側環状リングと、前記内側環状部及び前記外側環状リングを互いに結合する網目状支持部とを含む、該カラーとを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記網目状支持部が、前記洗浄ルーメンの前記外周面から外向きに離れる向きに可逆的に曲げ変形するように付勢されていることを特徴とする請求項に記載のデバイス。
【請求項3】
前記カテーテル内に前記洗浄ルーメンを同心配置させた場合に、前記外側環状リングから前記内側環状部までの半径方向距離が、前記洗浄ルーメンの前記外周面及び前記カテーテルの内壁間の半径方向距離よりも大きくなるように構成したことを特徴とする請求項に記載のデバイス。
【請求項4】
前記カラーが、前記洗浄ルーメンの前記外周面によって画定される断面積の約150%以下かつ前記カテーテルの前記内壁によって画定される断面積の80%以下の大きさの断面積を有する開口を通り抜け可能であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記洗浄ルーメンの前記近位端に加えられる吸引力が、前記洗浄ルーメンの前記遠位端において吸引力を生じさせるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1及び第2の位置間において、1若しくは複数の側面開口部を有することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記洗浄ルーメンの前記近位端に加えられる吸引力が、前記側面開口部において吸引力を生じさせるように構成したことを特徴とする請求項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記カラーが、前記カテーテルの内部に当該デバイスを同心配置させることを特徴とする請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
気管チューブの内壁を洗浄するための自己位置合わせ式デバイスであって、
外周面、近位端及び遠位端を有する洗浄ルーメンと、
前記外周面に支持されており、かつ前記洗浄ルーメンの前記外周面に沿って軸線方向に摺動可能なカラーであって、前記カラーは、前記洗浄ルーメンの前記軸線方向の位置とは無関係に第1のポジションから該第1のポジションよりも前記カラーの半径方向の大きさが小さい第2のポジションへ変形し得るカラーとを含み、
前記カラーが、
前記洗浄ルーメンを最も近接して包囲する内側環状部と、
外側環状リングと、
前記内側環状部及び前記外側環状リングを互いに結合する網目状支持部とを有し、
前記第1のポジションから前記第2のポジションへの前記変形が可能であるように、前記外側環状リング及び前記網目状支持部が変形することを特徴とするデバイス。
【請求項10】
前記外側環状リングが、
第1の周囲長さを持つ近位面と、
前記第1の周囲長さよりも小さい第2の周囲長さを持つ遠位面とを有することを特徴とする請求項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気管チューブの中央(呼吸)ルーメン用の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気管内挿管には、患者の気管内への中空管状デバイス(気管チューブとして知られている)の挿入が含まれる。チューブは、口から挿入するか、またはそれよりは望ましくないが鼻から挿入するか、あるいは喉の正面を切開して首から挿入することができる。口または鼻から挿入されるチューブは気管内チューブと呼ばれ、喉の正面から挿入されるチューブは気管切開チューブと呼ばれる。本明細書においては、この2つのタイプのチューブを気管チューブと呼ぶ。気管チューブは、気管を経て、気管分岐部の上方の位置でかつ第2胸椎と第4胸椎の間の位置の前方まで挿管される。その後、気管チューブの中央ルーメンを介して患者の肺にガスを導入することができる。
【0003】
気管内挿管の主目的は、患者が通常の呼吸誘導換気ができない場合に、患者の肺を機械的に換気することである。また、外科的処置中に麻酔ガスを送り込むために挿管を用いることもある。機械的換気中に空気を肺に送り込むのに十分でかつチューブを通過したガスの漏出(すなわち、肺の「短絡」またはバイパス)を防止するのに十分な空気圧を維持するために、気管チューブの周りの通路を密閉することが望ましい。そのような密閉は、気管チューブの遠位端付近において該チューブを取り囲む膨張可能なカフまたはバルーンを用いることによってなされ得る。患者の気管内への気管チューブの導入が完了したとき、膨張可能なカフは、通常、気管分岐部の約3〜5センチメートル上方かつチューブ様気管内に位置している。
【0004】
カフを膨張させると、カフは気管壁に係合し、それによって気管を塞ぐことになり、気管チューブを介して導入されているガスがチューブの遠位端から出た後に単純に逆戻りしチューブの周囲を上昇して口から出ることがないようにする。慢性または急性呼吸器疾患の患者にとってこのような処置が功を奏することは分かっているが、いくつかの合併症のリスクが恒常的に存在する。
【0005】
機械的換気において最もよく見られる合併症の1つは、人工呼吸器関連肺炎(VAP)として知られている。気管内挿管を受けている患者は、人工呼吸器関連肺炎を肺の感染症から発症することがあり、肺の感染症は、気管チューブの中央ルーメン内の暖かく湿っぽい環境で成長した後で気管及び肺に入る汚染された分泌物、粘液またはバイオフィルムによって誘発される可能性がある。これらの分泌物を気管チューブのルーメンから除去することが肺感染症のリスクを低下させるであろう。
【0006】
さらに、抜管された気管内チューブは、未使用のチューブと比較して、ルーメンの容積及び半径の著しい減少が報告されている。ルーメン半径の変化がたとえ僅かであっても、空気流への抵抗を大きく変化させ、それにより呼吸仕事量が増大し、呼吸が困難になり、入院期間が長くなる。気管チューブ内に粘稠度の高い分泌物が堆積することで、人工呼吸器を引き離すことが難しくなったり、緊急の気管チューブ交換が必要になったり、気管切開が必要になったりし得るが、これらは全て、患者がさらなる合併症を併発するリスクを高くする。
【0007】
気管チューブの中央ルーメン用の洗浄装置を開発するために、数多くの試みがなされてきた。英国特許公開2482618号明細書(Airway Medix Spolka Z.O.O.)(特許文献1)には、遠位端にバルーンを有し、かつ加圧液体源と、中央ルーメンの内側を洗浄して液体及びバイオフィルムを除去するための吸引源とを有する洗浄デバイスが記載されている。米国特許第8,157,919号明細書(Endoclear LLC)(特許文献2)では、機械的に作動する非膨張式洗浄部材を備えた医療用チューブ洗浄装置が提供されている。液体及び吸引は使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】英国特許公開2482618号明細書
【特許文献2】米国特許第8,157,919号明細書
【特許文献3】米国特許第4,569,344号明細書
【特許文献4】米国特許第6,802,317号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
気管チューブの中央ルーメンを徹底的に洗浄するための装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、カテーテルや気管チューブなどの呼吸ルーメンの内壁を洗浄するためのデバイス(洗浄デバイス、自己位置合わせ式洗浄デバイス、または自己位置合わせ式気管チューブ洗浄デバイス)に関する。本デバイスは、洗浄ルーメンと、非膨張式除去要素とを含み、該要素は、洗浄ルーメンまたはカテーテル上の第1の位置と、第2の位置とをとる。除去要素は摺動式カラーを含む。
【0011】
摺動式カラーは、洗浄ルーメンに固定された2つの停止部材間を軸線方向に洗浄ルーメンに沿って変位する。カラーは半径方向の全体寸法を変えることができ、かつ、カラーは、圧迫されているときには洗浄ルーメンに近接可能であるが、押え付け力が加えられていないとき(非圧迫時)には洗浄ルーメンから離間されるような部品を有する。カラーは、気管チューブ内に同心状にデバイスの自己位置合わせをなさしめる。洗浄ルーメンには使用中に吸引力を加えることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】洗浄デバイスであって、カラーを備えており、洗浄デバイスをカテーテル内で変位させるとき、例えば気管チューブを矢印で示されているようにカテーテルの遠位端に向かって変位させるときに、カラーが、洗浄ルーメンの外周面上に配置された近位停止部材に接触している様子を示す図。
図2図1の洗浄デバイスであって、洗浄デバイスを矢印で示されているように気管チューブの遠位端から遠ざかる方向にさせるときに、カラーが、カテーテル内で遠位停止部材に接触している様子を示す図。デバイスがカテーテルの遠位端から遠ざかる方向に変位するときに、カラーはカテーテルの内壁に接触する。
図3】気管チューブの外側における、図1及び図2の洗浄デバイスの一実施形態。デバイスのカラーは、洗浄ルーメンの外側に位置しかつ洗浄ルーメンを取り囲んでいる。洗浄ルーメンは、吸引開口部と、近位停止部材及び遠位停止部材とを有する。これらの停止部材は、洗浄ルーメンに対するカラーの少なくとも2つの位置を画定する。すなわち、近位停止部材に接触する第1の位置と、遠位停止部材に接触する第2の位置である。洗浄ルーメン、開口部、停止部材、カラー及び側孔がはっきり見えている。
図4】気管チューブの外側における、別の洗浄デバイス。
図5図4のデバイスのカラー及び該カラーに形成された任意選択の空気チャンネルの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、1若しくは複数の実施形態について詳細に言及する。実施形態の例を図面に示す。当然のことながら、1つの実施形態の一部として図示または記載されている特徴部を別の実施形態とともに使用することにより、さらに別の実施形態を作り出すことができる。
【0014】
吸引カテーテルは、よく知られており、多くの医学的用途のために幅広く市販されている。吸引は、「開放式」または「閉鎖式」システムを用いて行うことができる。開放式システムでは、吸引カテーテルは、気管チューブの呼吸ルーメン内に挿入されるフレキシブルなプラスチック製のチューブにすぎず、吸引カテーテルの近位端には吸引源が接続されている。患者において、または患者に隣接して「滅菌野」が形成されるように、吸引カテーテルがルーメンに入る前に接触する如何なるものも滅菌状態に維持されることが好ましい。吸引カテーテルは、使用後に、患者の分泌物で覆われることになるので、注意深く取り扱わなければならない。対照的に、「閉鎖式」システムでは、例えば米国特許第4,569,344号明細書(特許文献3)に開示されている「閉鎖式」システムにおいて、分泌物を吸引するために用いるデバイスが略円筒形のプラスチック袋の中に入れられているので、使用前の吸引カテーテルの汚染は排除されるかまたは最小限に抑えられている。これは一般的に「閉鎖式吸引カテーテル」と呼ばれるものであり、キンバリークラーク社(Kimberly-Clark Corporation)からトラックケアー(TRACH CARE)(登録商標)(バラード(BALLARD)(登録商標)メディカルプロダクツ)という商標名で販売されている。
【0015】
人工呼吸器回路を開放することによって、または気管チューブへのアクセスを与えるアクセス開口部を介して挿入させることによって、気管チューブ内に挿入されるデバイスを開示する。本デバイスは、近位端と、遠位端と、両端間に位置する除去要素とを有する。デバイスの遠位端が先ず気管チューブに挿入される。気管チューブ内でのデバイスの進み具合を示すマークをデバイスに付したり、例えばデバイスの遠位端が気管チューブの遠位端に到達したときなど、デバイスの気管チューブ内における位置に関する情報を使用者に伝えるようにしたりすることができる。洗浄ルーメンは、当然のことながら、気管チューブの内径よりも小さくなければならない。除去要素は、気管チューブの内部に収まるように変形しなければならない。カラーは、少なくともいくつかの弾性材料部品で作製されており、それによりカラーの全体的な形状の変化を可能にする。すなわち、カラーが第1のポジションをとっているときの、部品全てが最大限に拡張されている、押え付けられていない形態から、気管チューブの内部に挿入されている間にカラーが可逆的に変形するときの第2のポジションへ、及び気管チューブ内において気管チューブの内壁により画定される空間内に圧迫された状態で収まるように弾性部品がその寸法を調整するときの別の第2のポジションへと、カラーの全体的な形状が変化し得る。カラーのポジションにかかわらず、すなわち、圧迫されているときに第2のポジションをとっているのか、押え付け力が加えられていないとき(非圧迫時)に第1のポジションをとっているのかにかかわらず、カラーは、洗浄ルーメンに沿って2つの停止部材間を摺動する。カラーは通常、洗浄ルーメンカテーテルがカテーテル内を前進するときには洗浄ルーメン上の第1の位置をとり、カラーが停止部材に接触したことを受けて洗浄ルーメンが後退するときには第2の位置をとる。洗浄ルーメン上のカラーの中間位置は、洗浄ルーメンが気管チューブ内で軸線方向に変位しているときに第1及び第2の位置間に現れる。
【0016】
洗浄ルーメンには使用中に吸引力を加えることが望ましい。
【0017】
除去要素は、洗浄ルーメンが気管チューブ内に位置しているときに気管チューブ内に概ね同心状にデバイスの自己位置合わせをなさしめる。この自己位置合わせは、カラーの弾性部品の付勢、除去要素の第1のポジションにおける最大寸法、並びに洗浄ルーメン及び気管チューブ内壁の半径寸法によってもたらされる。
【0018】
除去要素は、第1のポジションにおいて最大半径寸法を有する。第2のポジションにおける除去要素の最も大きい半径寸法は、第1のポジションにおける最大半径寸法よりも小さい。このポジションの変更は、例えば気管チューブ内でカラーに加えられる押え付け力を受けて生じる。この変更により、洗浄デバイスは、除去要素の最大半径寸法よりも小さい開口を通り抜けることができる。第1及び第2のポジション間の移行(変更)は、繰り返し可逆的に行うことができる。
【0019】
従来の気管内チューブの使用においては、チューブ20の内部の呼吸チャンネルまたは呼吸ルーメン介して患者の肺に空気が送り込まれる。チューブ20はバルーンカフ30を有し、カフ30は、カフの上方及びチューブの外側の分泌物が下方に移動して肺の中に入らないように気管10を塞ぐことが望ましい(図1)。バルーンカフの機能に関するさらなる説明は、例えば、米国特許第6,802,317号明細書(Goebel)(特許文献4)を参照されたい。それでもなお、粘液は、チューブの呼吸チャンネルまたは呼吸ルーメン内に堆積し、それによってルーメンの断面積を減少させてルーメン内における空気流への抵抗を増大させるので、患者の肺への空気流が減少し得る。粘液はまた、チューブの内部の暖かく湿っぽい環境で活発に増殖し得る厄介な細菌に隠れ場所を提供し得る。
【0020】
図1は、矢印で示されているように気管チューブ内を前進している自己位置合わせ式気管チューブ洗浄デバイス400を示している。洗浄デバイス400は、上記した改変された閉鎖式吸引カテーテルであってよい。洗浄デバイス400は、使用の度に気管チューブの内側を拭き取り、堆積した分泌物を除去する。このデバイス400は、洗浄ルーメン402の遠位端に設けられた遠位開口部404と、洗浄ルーメンの内部に流体連通している側面開口部410とを有する。デバイス400は除去要素を有しており、該除去要素は、洗浄ルーメン402の外周面上に同心配置されかつ洗浄ルーメン402に沿って摺動することができる形状調整カラー408である。遠位停止部材406及び近位停止部材412は洗浄ルーメン402上に配置され、カラー408は2つの停止部材間に存在する。これらの停止部材は、カラー408が停止部材406、412間のみで変位するように制限する。
【0021】
カラー408は、近位停止部材及び遠位停止部材にそれぞれ最も近い近位端及び遠位端を有する。図3ではっきり分かるように、カラー408の近位端は遠位端よりも幅広であることが望ましい。カラー408は、第1のポジションをとっているときに半径寸法が最大になる外側環状リング416を有する。リング416の最大半径寸法は、気管チューブの断面内径にほぼ一致するかまたはそれより僅かに大きい。環状リング416は、連続的であっても不連続であってもよい。環状リング416は、第1の周囲長さを持つ近位面と、第2の周囲長さを持つ遠位面とを有し、第2の周囲長さは第1の周囲長さよりも小さい。網目状支持部(support network)418は、例えば、ストラット(支柱)、リング、スポーク、網目状部材、メッシュなどであって、環状リング416に結合され、かつ、押え付け力がない状態で環状リング416をその最大寸法まで外向きに拡張するように付勢するように構成されている。網目状支持部418は、洗浄ルーメン402を取り囲む少なくとも1つの内側環状部420にも結合されており、内側環状部420は、押え付け力が加わっていない状態において洗浄ルーメン402に最も近いカラー408の部品である。
【0022】
網目状支持部418は、押え付け力が加わっていない場合に、洗浄ルーメン402の外周面から外向きに離れる向きに可逆的に曲げ変形するように付勢されている。洗浄ルーメン402が気管チューブ内に同心配置された場合、網目状支持部418によって隔てられる外側環状リング416と内側環状部420間の距離は、洗浄ルーメン402の外周面と気管チューブの内壁間の半径方向距離よりも大きい。網目状支持部418の一実施形態は、内側環状部420に結合された曲げ領域422を有しており、かつ外側環状リング416への結合部と曲げ領域422との間に中間部分424を有している。他の実施形態では、中間部分が省略されている。
【0023】
内側環状部420は、比較的不動である。すなわち、カラー408が気管チューブ内で停止部材406、412間を前進するか後退するかにかかわらず、内側環状部420の寸法は基本的に固定されたままである。しかし、押え付け力を受けると、網目状支持部418の曲げ領域422及び環状リング416は、カラー408が洗浄ルーメン402の外周面によって画定される断面積の約150%以下でかつ気管チューブの内壁によって画定される断面積の80%以下である開口を通り抜けることができるように、可逆的に変形しかつ/または向きを変えることができる。デバイスを気管チューブ内で前進させるとき、網目状支持部418は、前進方向と逆方向に洗浄ルーメン402の外周面に向かって可逆的に屈曲するかまたは曲げ変形することができるように構成されている。このような可逆的屈曲は、気管チューブの内壁とリングとの間に働く摩擦力及び押え付け力を受けて気管チューブ内のリングの最大半径寸法が変化し得るように環状リング416を変形させることができる。屈曲は、リング416の近位面と遠位面の間でリングの最大半径寸法を変化させることができる。第1のポジションは、カラーが気管チューブ外に存在するときに見られ、第2のポジションは、カラーが気管チューブ内に存在するときに現れる。
【0024】
デバイスを気管チューブ内で後退させるとき、網目状支持部418の付勢は、環状リング416を拡張状態に保持する傾向があり、拡張状態では環状リング416はチューブ内で最大半径寸法を達成しようとする。デバイスを後退させる間、リング416は気管チューブの内壁に極めて近接しているかまたは接触しているので、カラーは、気管チューブの内部へ突出する粘液40、分泌物などの付着物を除去することができる。環状リング416が上記付着物を回収する部分を有するか、または網目状支持部418が上記付着物を回収する部分を有するか、あるいはこれらの部分がともに上記付着物を回収することができる。
【0025】
図2は、矢印で示されているように気管チューブ内で後退させている洗浄デバイス400を示している。デバイス400がチューブの遠位端から遠ざかる方向に移動するとき、上記したようにカラー408がチューブの内壁に接触し、付着物を軟らかくして回収する。側孔410は、洗浄ルーメン402の内部に流体連通している。カラーが各側孔410に近づくと、洗浄ルーメン402の近位端(図示せず)に加えられた吸引力によって、付着物は側孔410を介して洗浄ルーメン402に吸入される。カラー408は、2つの停止部材406、412間で自由に変位できるものとする。
【0026】
図3は、気管チューブ外の洗浄デバイス400を示している。洗浄ルーメン402、遠位開口部404、停止部材406、412、カラー408及び側孔410がはっきり見えている。図4は、洗浄デバイス400の別の実施形態の別の図を示している。図5は、図4に示したデバイスのカラー408の断面図を示している。この実施形態及び他の実施形態で、空気チャンネル414は任意選択である。
【0027】
本発明について特定の好適実施形態に関連して説明してきたが、本発明に含まれる主題はこれらの特定の実施形態に限定されるものではない。逆に、本発明の主題は、本発明の趣旨及び以下の特許請求の範囲に含まれ得る全ての代替形態、変更形態及び等価形態を含むことを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5