(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該初期混合物は原料混合物の処理の末端で得られ、該原料混合物は発酵性、合成又は酵素性液であり、及び、前記処理は、遠心分離、フロント濾過、結晶化、タンジェンシャル濾過、精密濾過、及び限外濾過から選ばれる一又は二以上の工程を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
芳香族アミノ酸は、発酵により、酵素反応により、又は合成経路により製造することができる。
【0003】
トリプトファン、フェニルアラニン、及びヒスチジンは(子供にとって)必須アミノ酸の一種である:そのため、それらは栄養補助食品として使用されている。
【0004】
発酵、合成又は酵素的経路により製造されたアミノ酸液は不純物を含み、それらのうちには糖、残留基質、ミネラル、顔料などがある。商業的な使用において要求される純度を達成するために、これらの不純物は除去されなければならない。
【0005】
芳香族アミノ酸を精製するために種々の精製方法が開発されている。それらは、以下の主な技術に基づく:結晶化、液/液抽出及び樹脂上への結合。
【0006】
結晶化による精製は、水又は溶媒の使用により行われる。該結晶の純度を高めるために、結晶化の予備処理工程が時々用いられる。これは、活性炭による精製工程であり得る(中国特許公開第101245047号公報、及び中国特許公開第102146052号公報);ステンレス鋼フィルター上での膜濾過工程(中国特許公開第101376646号公報);限外濾過工程(中国特許公開第101691349号公報);又は、いくつかの種類の不純物を除去するための、いくつかの連続濾過の組合わせ、例えば精密濾過/限外濾過/ナノ濾過連続法(中国特許公開第101812009号公報)。
【0007】
より高い純度を達成するために、結晶化の間、時々、溶媒、例えば酢酸(日本国特許第2097801号公報及び欧州特許公開第1 756 055号公報)又は脂肪族アルコール(欧州特許公開第0 274 728号公報)が添加される。これらの溶媒の使用は、製造コスト及び母液の処理もしくは再使用のコストの増大を招く。
【0008】
第二の精製経路は、アミノ酸の液/液抽出処理からなる。例えば、逆ミセル相を形成するために界面活性剤を使用する(中国特許公開第102382030号公報)、又はトルエンを使用する(欧州特許公開第0 299 715号公報)、トリプトファンの精製法が提案されている。これらの技術は、それ自体では高純度を達成するのには決して十分ではない。前及び後処理工程が必要である。さらに、相当な量の溶媒の使用は、数キロトン/年/ユニットの工業的規模の量でアミノ酸を処理するのには経済的に不向きである。
【0009】
最後に第三の経路はポリマー樹脂上での処理である。
中国特許公開第101812488号公報、中国特許公開第101948420号公報、及び米国特許公開第2013/0079527号公報には、アミノ酸を樹脂吸着剤(従って、中性)上で捕捉し及び結合し、次いでエタノール(最初の2つの文献中)又は塩(第三番目の文献)で溶出する。
【0010】
フランス国特許公開第2 581 654号公報は、低架橋度の強カチオン性ポリスチレン樹脂上へのトリプトファンの吸着を記載する。目的化合物を沈澱させ、酸溶液、とりわけpH1〜2を有する硫酸溶液又は塩酸溶液に溶解させる。該酸溶液は、次いで、カチオン性イオン交換樹脂と接触させられ、それが水でリンスされた後、塩基により溶出される。この「バッチ」型の方法が、工業的に今日使用されている経路である。
【0011】
フランス国特許公開第1 502 814号公報は、トリプトファンの強カチオン性樹脂又は強アニオン性樹脂上の吸着を記載する。両方の場合において、選択された樹脂は低架橋度を有する。強カチオン性樹脂の場合、トリプトファンを含む混合物のpHが該樹脂に接触させる前に2に調整される。溶出は、二段階で行われる:汚染アミノ酸を除去するための中性塩溶液による第一溶出、及び次いで、トリプトファンを脱着させるための塩基性溶液による溶出。この方法は、二つの別々の溶出液と相当な量の再生剤を必要とする。
【0012】
上記樹脂による処理方法の欠点は、結合後にアミノ酸を溶出させるための、濃い(通常、2〜10質量%)化学的再生剤の大量の消費を要することである。再生剤と等しい量の廃液も同様に引き起こされる。
【0013】
米国特許第5,300,653号明細書は、最初にアルカリ金属で塩型に転換されたゲル型強カチオン性樹脂の単一カラム上での少なくとも一の芳香族アミノ酸の、他の非芳香族アミノ酸からのバッチ毎の分離を記載する。該アミノ酸を含む溶液は、好ましくはpH2〜12を有する。該アミノ酸は該溶液が該樹脂上を通過するときに吸着され、次いで、酸又は塩基又は有機溶剤を使用せずに、水によって脱着される。
【0014】
この方法の欠点は、溶出モードにおいて樹脂のイオン型の制御が可能ではない事である。実際、処理される該溶液中に存在する該カチオン種は、アルカリ金属に交換され得、いかなる溶出液も初期のイオン型を維持することはできない。アミノ酸間の分離性能は、これらの時宜を逸したイオン交換機構に影響される:従って、時間が経つと、生成されるアミノ酸の収率及び純度が制御されない態様で減じ又は変化する危険性がある。
【0015】
樹脂上でのこれらの処理の大抵のものは、「バッチ」型の適用、即ち、非連続的適用に基づく。該樹脂がカラムに装備され、次々と溶出液(アミノ酸を含む液;リンス水;再生溶液−塩、塩基、酸又はアルコール溶液)が該カラムを通して連続的に注がれる。
【0016】
しかし、上記文献米国特許公開第2013/0079527号公報は、3つの分離ゾーンを有する疑似移動床(SMB)を含むクロマトグラフィーシステムにおけるXAD7型吸着樹脂上での半連続的分離を記載する。該システムは、水又は塩により溶出される。この方法は、吸着樹脂、従ってイオン交換樹脂より高価な樹脂上での操作の欠点を有する。吸着樹脂は速く汚染され易い。これらの使用は、該汚染の原因である不純物を除くため、アルコール、塩基、及び酸での洗浄を必要とし、それはコスト及び設置された装置の点で操作上の制限を増す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、芳香族アミノ酸を精製するための改良された方法、特に最低限の化学物質の消費で、標的アミノ酸と不純物、例えば塩、糖、色との分離を可能とする方法、を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、第一に初期混合物からアミノ酸を精製する方法であって、該アミノ酸が芳香環を有し且つ酸解離定数Kaを有する方法に関し、該方法は以下を含む:
該初期混合物をpKa以上のpHで強カチオン性樹脂と接触させる第一工程;
第一工程での該pHより高いpHを有する溶出液水溶液を用いて溶出し、該アミノ酸が富化された流れを回収することを可能とする第二溶出工程。
【0020】
一の実施態様に従い、該初期混合物は糖及び/又は塩をさらに含み、該アミノ酸が富化された該流れは、該初期混合物よりも少ない糖及び/又は塩を含む。
【0021】
一の実施態様に従い、該第二溶出工程は、定組成溶出工程である。
【0022】
一の実施態様に従い、該アミノ酸が塩基解離定数Kbを有し、及び、該第一工程の間、該pHがpKb−3以下、好ましくはpKb−4以下、最も好ましくはpKb−5以下であり、及び理想的にはpKb−6以下である。
【0023】
一の実施態様に従い、該第二溶出工程が、中間のリンス無しに、第一接触工程に直接続いて実施される。
【0024】
一の実施態様に従い、該溶出溶液は、塩基の水溶液であり、該塩基は、好ましくは苛性ソーダ、苛性カリ、アンモニア、又はこれらの混合物であり、及びより特に好ましくはアンモニアである。
【0025】
一の実施態様に従い、該塩基の該溶出溶液中の濃度が0.01〜50g/L、好ましくは0.2〜20g/L、より特に0.5〜10g/L、及び最も特に1〜5g/Lである。
【0026】
一の実施態様に従い、該第二工程で使用される該溶出溶液中の塩基のモル数の、該第一工程で接触させられる該初期混合物中のアミノ酸のモル数に対する比が3以下、好ましくは2以下、好ましくは1.5以下、好ましくは1以下、好ましくは0.9以下、好ましくは0.8以下、好ましくは0.7以下、好ましくは0.6以下、好ましくは0.5以下、好ましくは0.4以下である。
【0027】
一の実施態様に従い、該アミノ酸はトリプトファン又はフェニルアラニン又はチロシン又はヒスチジンである。
【0028】
一の実施態様に従い、該強カチオン性樹脂はポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体である。
【0029】
一の実施態様に従い、該強カチオン性樹脂は5〜12%、好ましくは6〜11%、より特に7〜10%、好ましくは8〜9%の架橋度を有する。
【0030】
一の実施態様に従い、該強カチオン性樹脂は一価カチオン型、好ましくはNa
+又はK
+又はNH
4+型であり、及び最も好ましくはNH
4+型である。
【0031】
一の実施態様に従い、該方法は複数カラムクロマトグラフィー装置に適用され、該装置は好ましくは最大30カラム、より好ましくは最大20カラム、又は最大12カラム、又は最大8カラム、又は最大6カラムを含む。
【0032】
一の実施態様に従い、該方法は非固定床を備えるクロマトグラフィー装置に適用され、及び好ましくは疑似移動床、又は真性移動床、又は改良された疑似移動床、又は連続的疑似移動床、及び好ましくは連続的疑似移動床、を備えるクロマトグラフィー装置に適用される。
【0033】
一の実施態様に従い、該初期混合物は原料混合物の処理の末端で得られ、該原料混合物は好ましくは発酵性、合成又は酵素性液であり、及び、前記処理は好ましくは、遠心分離、フロント濾過、結晶化、タンジェンシャル濾過、精密濾過、及び限外濾過から選ばれる一又は二以上の工程を含む。
【0034】
一の実施態様に従い、該方法はアミノ酸が富化された流れを濃縮する一または二以上の工程を含み、好ましくは蒸発による濃縮、及びとりわけ流下膜による蒸発、多重効用蒸発による濃縮、膜濃縮、及びとりわけナノ濾過から選ばれる。
【0035】
一の実施態様に従い、該濃縮工程の終わりに、一方で濃縮されたアミノ酸の流れと、及び他方で溶出溶液の流れが回収され、該方法はこの溶出溶液の流れを第二溶出工程で再使用することを含む。
【0036】
一の実施態様に従い、該第二工程で使用される該溶出溶液のpHと、該第一工程のpHとの差が2以上、好ましくは4以上、より特に6以上、及びとりわけ8以上である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、先行技術の欠点を克服することが可能である。該発明は、芳香族アミノ酸を精製する改良された方法をより特に提供し、とりわけ標的アミノ酸と不純物、例えば塩、糖、色との分離を最低限の化学物質の消費で可能とする。
【0038】
これは強カチオン性樹脂(イオン交換樹脂)の使用によって達成され、それはイオン交換モードでは使用されない。該発明はクロマトグラフィー溶出モードに基づき、該芳香族アミノ酸は該樹脂との親和性による遅延現象によって、その初期溶液から分離される。このようにして、該発明はそのほとんどが両性イオンの形態である該アミノ酸を、(該アミノ酸のpKa以上のpHで)該樹脂と接触させ、次いで、より高いpHの溶液で溶出させることを企図する。
【0039】
該動作モードは、該アミノ酸の固定化による捕捉現象、及びそれに続く濃再生溶出液を用いた脱着を適用する既存の方法と異なる。
【0040】
いかなる理論にも束縛される意図ではないが、本発明者らは、適用される分離機構は、おそらく芳香族基のパイ結合及び/又はアミノ酸の環に存在する窒素原子の電子対(doublet)と、該樹脂マトリックスの疎水性官能基の間の疎水性相互作用による吸着現象と考える。従って該分離はイオン交換による分離から成るものではない。
【0041】
本発明は、とりわけ希薄溶出溶液と、より低い溶出液/アミノ酸比を適用することによって、化学物質の消費及び廃液の量を最小限にすることを可能とする。
【0042】
該発明は、生成されるアミノ酸の収率及び純度の実質的な変動が無い、制御された様式での精製機構の実施を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明がより詳細に及び非限定的な様式で以下に記載される。
【0045】
本発明は、一般に種々の性質の不純物:色素、塩/ミネラル、糖を含む水溶液(発酵された、合成の、又は酵素反応からの液)である、初期混合物中の芳香族アミノ酸を精製された形態で回収することを可能とする。
【0046】
従って、一の実施態様に従い、初期混合物は、糖、例えば発酵栄養物(グルコース及び/又は蔗糖等)及び/又は代謝物を含む。初期混合物中の糖の合計含有量(及び特に単糖類及び二糖類の含有量)は、従って、例えば0.01〜100g/L及び好ましくは0.1〜15g/Lであってよい。
【0047】
一の実施態様に従い、初期混合物は塩を含み、それはミネラル塩及び/又は有機塩であってよい。初期混合物中の塩の合計含有量は、従って例えば0.01〜80g/L及び好ましくは0.5〜20g/Lであってよい。
【0048】
初期混合物の導電率は、例えば1〜200mS/cm、好ましくは2〜100mS/cm及びとりわけ5〜50mS/cmであってよい。
【0049】
一の実施態様に従い、初期混合物は培養液(又は酵素反応)の清澄化による予備処理の終端で得られる。この清澄化操作は種々の技術で行われて良い:
−デカンテーション/遠心分離。
−カットオフ閾値が典型的には2,000〜300,000Daの平面又はらせん状有機膜でのタンジェンシャル濾過。
−カットオフ閾値が典型的には10,000Daより大きいセラミック膜でのタンジェンシャル濾過。
−ステンレス鋼フィルターでの濾過。
−上記操作の組合わせ、但し、その順番は該初期混合物の性質及び該方法の目的に依存して適宜調整される。
【0050】
芳香族アミノ酸は好ましくはフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ヒスチジン又はそれらの誘導体である。芳香族アミノ酸の混合物の回収も好ましくあり得る。
【0051】
本発明は強カチオン性樹脂上でのクロマトグラフィー分離を提供する。「強カチオン性樹脂」は、グラフトされた強酸性の酸官能基を有する樹脂を意味する。
【0052】
一の好ましい実施態様において、「強カチオン性樹脂」は、スルホン酸官能基を有する樹脂を意味する。
【0053】
一の実施態様に従い、カチオン性樹脂は強カチオン性ポリスチレン−ジビニルベンゼン(DVB)樹脂である。
【0054】
一の実施態様に従い、樹脂は粒子の形態であり、その体積平均径(Dv50)が好ましくは20〜600μm、とりわけ200〜350μmである。好ましくは、粒子の体積径の分布は唯一のピーク(単分散)を有する。この分布の均等係数は例えば1.5以下、又は1.3以下、又は1.15以下である。この樹脂粒子サイズ分布は、レーザー粒度分析計(NF13320標準)により求めてよい。
【0055】
樹脂は、好ましくはマクロ架橋樹脂(及び従って、ゲル型樹脂ではない)である。そこで、本発明の実施態様に従い、樹脂の架橋度(樹脂が上記共重合体の場合にはジビニルベンゼン(DVB)比)は5〜6%;又は6〜7%;又は7〜8%;又は8〜9%;又は9〜10%;又は10〜11%;又は11〜12%である。架橋度は、樹脂の製造において用いられる架橋剤モノマー(例えばDVBモノマー)の量の、合計モノマー量(例えばDVBモノマーと樹脂の他のモノマー)に対する比(これらの量はモル量で表される)である。
【0056】
一実施態様に従い、樹脂は一価型である。例えばそれはNa
+、K
+又は好ましくはNH
4+型であってよい。
【0057】
所望により、本発明の方法は、樹脂を所望のイオン型、とりわけNa
+、K
+又は好ましくはNH
4+型にする、コンディショニング準備工程を含んでよい。準備工程は、とりわけ、好適な塩又は塩基溶液を樹脂の上を通過させることによって実施してよい。
【0058】
アミノ酸は弱酸及び弱塩基として振る舞う。それらは酸解離定数Ka及び塩基解離定数Kbを有する。pKa=−log
10(Ka)及びpKb=−log
10(Kb)と定義される。pKa及びpKbは半解離pH、即ち酸官能基及び塩基官能基が夫々半分イオン化されているpHである。
【0059】
酸官能基及びアミン(塩基)官能基の双方がイオン化されているアミノ酸の形態は両性イオンと呼ばれる。
【0060】
上記四種の芳香族アミノ酸のpKa及びpKb値は、以下のとおりである:
フェニルアラニン:pKa=1.8及びpKb=9.1。
トリプトファン:pKa=2.4及びpKb=9.4。
チロシン:pKa=2.2及びpKb=9.1。
ヒスチジン:pKa=1.8及びpKb=9.2。
【0061】
本発明は、初期混合物(又は負荷又は原料製品)をクロマトグラフィー樹脂と接触させ、次いで溶出する工程を提供する。
【0062】
第一工程において、アミノ酸が顕著に両性イオンの形態であることを確実にするために、pHは所望の芳香族アミノ酸のpKa(又は所望の芳香族アミノ酸がいくつかある場合には、それらのpKa)以上である。
【0063】
いくつかの実施態様に従い、第一工程の間のpHはpKa+0.5以上;又はpKa+1以上;又はpKa+1.5以上;又はpKa+2以上;又はpKa+2.5以上;又はpKa+3以上である。
【0064】
但し、第一工程の間のpHは、pKa+3以下;又はpKa+2.5以下;又はpKa+2以下;又はpKa+1.5以下;又はpKa+1以下;又はpKa+0.5以下であってもよい。
【0065】
いくつかの実施態様に従い、第一工程の間のpHはpKb−3以下;又はpKb−3.5以下;又はpKb−4以下;又はpKb−4.5以下;又はpKb−5以下;又はpKb−5.5以下;又はpKb−6以下である。
【0066】
例えば、第一工程の間のpHは、pKaとpKb−3の間、又はpKaとpKb−4の間、又はpKaとpKb−5の間、又はpKaとpKb−6の間である。
【0067】
いくつかの実施態様に従い、第一工程の間のpHは、1.8〜1.9;又は1.9〜2.0;又は2.0〜2.1;又は2.1〜2.2;又は2.2〜2.3;又は2.3〜2.4;又は2.4〜2.5;又は2.5〜2.6;又は2.6〜2.7;又は2.7〜2.8;又は2.8〜2.9;又は2.9〜3.0;又は3.0〜3.2;又は3.2〜3.4;又は3.4〜3.6;又は3.6〜3.8;又は3.8〜4.0;又は4.0〜4.5;又は4.5〜5.0;又は5.0〜5.5;又は5.5〜6.0;又は6.0〜6.5;又は6.5〜7.0である。
【0068】
原料(初期混合物)のpHは、樹脂と接触させる前に酸又は塩基を添加することによって調整してよい。
【0069】
第二工程において、溶出液は第一工程でのpHより大きいpHを有する水溶液である。溶出液は、塩基性水溶液、例えば、とりわけNH
3又はNaOH溶液であり得る。
【0070】
第二工程と第一工程のpHの差(ΔpH)は、0.5〜1.0;又は1.0〜1.5;又は1.5〜2.0;又は2.0〜2.5;又は2.5〜3.0;又は3.0〜3.5;又は3.5〜4.0;又は4.0〜4.5;又は4.5〜5.0;又は5.0〜5.5;又は5.5〜6.0;又は6.0〜6.5;又は6.5〜7.0;又は7.0〜7.5;又は7.5〜8.0;又は8.0〜8.5;又は8.5〜9.0;又は9.0〜9.5;又は9.5〜10.0;又は10.0〜10.5;又は10.5〜11.0;又は11.0〜11.5;又は11.5〜12.0であってよい。
【0071】
溶出液のpH(第二工程)は、とりわけ、7.0〜7.5;又は7.5〜8.0;又は8.0〜8.5;又は8.5〜9.0;又は9.0〜9.5;又は9.5〜10.0;又は10.0〜10.5;又は10.5〜11.0;又は11.0〜11.5;又は11.5〜12.0;又は12.0〜12.5;又は12.5〜13.0;又は13.0〜13.5;又は13.5〜14.0であってよい。
【0072】
溶出液は、塩基、例えばNaOH又はNH
3、の水溶液であってよく、その濃度は0.001〜0.01g/L;又は0.01〜0.1g/L;又は0.1〜0.5g/L;又は0.5〜1g/L;又は1〜2g/L;又は2〜3g/L;又は3〜4g/L;又は4〜5g/L;又は5〜6g/L;又は6〜7g/L;又は7〜8g/L;又は8〜9g/L;又は9〜10g/L;又は10〜15g/L;又は15〜20g/L;又は20〜25g/L;又は25〜50g/L;又は50〜100g/Lであってよい。
【0073】
一の実施態様において、溶出に使用される塩基のモル数の、注入されたアミノ酸のモル数に対する比は、3以下、又は2以下、又は1.5以下、又は1以下、又は0.9以下、又は0.8以下、又は0.7以下、又は0.6以下、又は0.5以下、又は0.4以下である。
【0074】
溶出は、好ましくは定組成溶出であり、即ち溶出液の組成は時間で変化しない。
【0075】
好ましい実施態様において、溶出に使用される塩基のカチオンは、樹脂のカチオンである。従って、例えば、仮に樹脂がNa
+型であれば、溶出液はNaOHの水溶液であり;仮に樹脂がK
+型であれば、溶出液はKOHの水溶液であり;及び仮に樹脂がNH
4+型であれば、溶出液はアンモニアの水溶液である。
【0076】
塩基による溶出は、樹脂のイオン型を維持することを可能とし、さもなくば原料溶液中に存在するミネラル塩によって変わり得る。さらに、何らの理論にも縛られないが、本発明者は樹脂に対する浸透性電荷効果(effet de charge osmotique)も吸着種を放出する傾向があると推測する。
【0077】
所望の芳香族アミノ酸は、大抵の他の不純物よりも樹脂に対して強い親和性を有する。従って、アミノ酸が抽出分で回収される一方、不純物(例えば糖及び塩)がラフィネート(raffinat)画分で回収される。
【0078】
一の実施態様に従い、抽出分中の糖(特に単糖類及び二糖類)の合計質量は、初期混合物中の糖(特に単糖類及び二糖類)の合計質量に基づき、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.9%減じられる。好ましくは、抽出分(アミノ酸が富化された流れ)には、糖(特に単糖類及び二糖類)が無いか、実質的に無い。
【0079】
一の実施態様に従い、抽出分中の塩の合計質量は、初期混合物中の
塩の合計質量に基づき、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.9%減じられる。好ましくは、抽出分(アミノ酸が富化された流れ)には、塩が無いか、実質的に無い。
【0080】
一の実施態様において、何らかの高度に保持される不純物は、水性の、塩の、又は極性の溶出液による追加の溶出によって脱着され得る。
【0081】
一の実施態様において接触工程と溶出工程との中間のリンス工程が無い。溶出液の注入は、従って、初期混合物の注入に直接、続く。
【0082】
一の実施態様に従い、クロマトグラフィー分離由来の抽出分中に回収されたアミノ酸には、例えば以下の追加の処理が行われる:
−炭による脱色。
−脱ミネラル。
−逆浸透型膜又はナノ濾過膜による濃縮。
−蒸発又は多重効用蒸発、それはエネルギー消費の最適化を可能とする。
−結晶化。
−上記操作の組合わせ。その順番は初期混合物の性質及び方法の目的に依存して適宜調整される。
【0083】
好ましい実施態様に従い、溶出液(好ましくはNH
3溶液)がアミノ酸から分離され、及び、クロマトグラフィー分離工程の開始点にリサイクルするために、上記後処理工程の間に回収される。
【0084】
本発明に従う方法は、非連続法(「バッチ法」)、半連続法又は連続法であってよい。好ましくは、半連続法又は連続法である。
【0085】
本発明に従うクロマトグラフィー分離は、固定床を備えるクロマトグラフィーユニット内で、又は好ましくは非固定床を備えるクロマトグラフィーユニット内で適用され得る。
【0086】
固定床を備えるクロマトグラフィーシステムにおいて、分離されるべき化合物の混合物は、一般的に円筒形状の容器(又はカラム)中に浸透する。カラムは、多孔性材料床(固定相)を備え、それは流体が浸透可能である。混合物中の各化合物の浸透速度は、化合物の物理的特性に依存する。固定相上で最も保持される化合物は、固定相上により弱く保持される化合物に比べて、ゆっくり浸透する。この原理が所望の分離を実施することを可能とする。
【0087】
そのような処理は、直列又は並列のいくつかのカラム上で実施することが可能であるが、一般には固定床を備えるクロマトグラフィー分離は、単一カラムに適用される。
【0088】
そのような固定床を備えるクロマトグラフィーシステムの例は、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)又はCYCLOJET(登録商標)システム(固定床内でリサイクルするシステム)である。
【0089】
CYCLOJET(登録商標)システムは、米国特許第6,063,284号明細書に記載されており、明示的にそれを引用する。これは、単一カラムを備える非連続的クロマトグラフィー分離システムであり、(i)最も保持される種及び(ii)より弱く保持される種がカラムの出口で別々に回収され、クロマトグラムの非分離部が主ポンプによりリサイクルされる;そして、分離されるべき混合物が、実質的にクロマトグラムのリサイクル部分の中央部に位置する注入ループにより周期的に注入される。いくつかのクロマトグラフィーサイクルの後、プロセスが周期的に定常状態に達し、状態では注入する製品の量がカラムの出口で別々に回収される分離された製品の量と同じである。
【0090】
二つのカラムを用いたCYCLOJET(登録商標)システムの他の態様が米国特許第5,630,943号明細書に記載されており、明示的にそれを引用する。
【0091】
非固定床を用いるシステムは、マルチカラムシステムであり、システムでは固定相床、及び流れの中の注入または回収点(ポイント)の相対的位置が時間と共に動く。
【0092】
非固定床を備えるクロマトグラフィーシステムの例は、SMB(疑似移動床)、iSMB(改良された疑似移動床)、SSMB(連続的疑似移動床)、AMB(真性移動床)、VARICOL(登録商標)、MODICON(登録商標)、POWERFEED(登録商標)、MCSGP又はGSSR(マルチカラムグラジエントクロマトグラフィー)システムである。
【0093】
SMBシステムは、吸着剤を含む複数の個別のカラムを備え、それらが直列に接続されている。溶出液が、第一の方向に沿ってカラムを亘って流れる。原料フロー及び溶出液フローの注入点及び分離された化合物を回収する点が周期的及び同時に一組のバルブによってシフトされる。全体的な効果は、固体吸着剤の移動床を含み、固体吸着剤が溶出液フローに対して向流方向に動く、単一カラムの動作を模することである。このように、SMBシステムは、溶出液が通過するところの、固体吸着剤の固定床を含む複数のカラムからなるが、その動作は向流での連続的移動床を模するようなものである。
【0094】
SMBシステムの最も伝統的な形態は、4つのゾーンを備えるSMBシステムである。他の可能な形態は、(Kwangnam Lee、「2セクション疑似移動床プロセス」、Separation Science and Technology、第35巻(4)、第519−534頁、2000年に記載されているような)3つのゾーンを備えるSMBシステム及び2つのゾーンを備えるSMBシステムである(文献を明示的に引用する)。
【0095】
iSMB及びSSMBシステムには、製品の導入又は取り出しが無い、閉鎖ループで動作する少なくとも一の工程がある。
【0096】
iSMBシステムは、欧州特許公開第0 342 629号公報、及び米国特許第5,064,539号明細書に記載されており、それらを明示的に引用する。
【0097】
SSMBシステムは、導入及び回収のフローを周期的に適用されるサブシーケンスに分ける。
【0098】
SMBシステムの他の態様は以下のとおりである:時間で変化するSMBシステム、及び、POWERFEED(登録商標)、これらは米国特許第5,102,553号明細書及びZhangら、「疑似移動床のパワーフィード操作:スイッチング間隔の間に流速を変化させる」、Journal of Chromatography A、第1006巻、第87−99頁、2003年に記載され、それらを明示的に引用する;MODICON(登録商標)システム、これは米国特許第7,479,228号明細書に記載され、それを明示的に引用する;及び内部再循環を行うSMBシステム、これは米国特許第8,282,831号に記載され、それを明示的に引用する。
【0099】
AMBシステムは、SMBシステムと類似の動作をする。しかし、一組のバルブによって原料フローと溶出フローの注入点、並びに回収点を変化させる代わりに、一組の吸着ユニット(カラム)が、原料及び回収点に対して、物理的に移動される。動作は、連続式向流移動床を模することを可能とする。
【0100】
VARICOL(登録商標)クロマトグラフィーシステムは、米国特許第6,136,198号明細書、米国特許第6,375,839号明細書、米国特許第6,413,419号明細書、及び米国特許第6,712,973号明細書に記載されており、それらを明示的に引用する。VARICOL(登録商標)システムは、吸着剤を含む複数の個別のカラムを含み、それらが直列に結合されている。溶出液がカラム中を第一の方向に通過させられる。SMBシステムと異なり、システムにおいて、分離されるべき混合物及び溶出液の注入点及び分離された化合物の回収点が、一組のバルブによって、周期的に、非同期的に移動される。全体的な効果は、時間経過と共に種々の長さの分離ゾーンが生成することであり、これによって、ゾーンにおいて最も有用な固定相を動的に割り当てて、より少ないクロマトグラフィー分離ユニットによって同等の分離力と向上された生産性を可能とする。SMBシステムと異なり、VARICOL(登録商標)システムは、溶出フローに対して向流方向に動く、固体吸着剤移動床を含む単一カラムの動作を模するのではなく、従って、VARICOL(登録商標)の動作原理は、同等のAMBシステムには適用できない。
【0101】
疑似移動床の好ましい例が、6つのセル又はカラムでの連続疑似移動床型(SSMB)のクロマトグラフィーシステムの形態である
図1を参照して示される。このシステムは、4つの段階の循環操作に従い操作されてよい。
−第1段階(
図1A):溶出液を注入せずに、一のセルの間隙体積を次のセルへと移動するための、直列に位置された全てのセル上の閉ループ内の連続循環が維持されるループ段階。
−第2段階(
図1B):原料/原料の注入。原料(F)が第4セルの頂部に注入される。同時に、実質的に同一体積の回収液(R)が第5セルの出口で回収される。ここでは第4及び第5セルは第3ゾーンを形成する。第2及び第3セルが抽出分及び原料注入の間の分離ゾーンを形成する。ここでは、これらが第2ゾーンを形成する。
−第3段階(
図1B):抽出分の溶出。溶出液(EL)が抽出分(EX)を溶出するために第1セル上に注入され、それは第1セルの底部で、実質的に同一体積で回収される。ここでは、第1セルが第1ゾーンを形成する。
−第2及び第3段階は、システムの生産性を増すために好ましくは同時に行われる。
−第4段階:ラフィネートの溶出:溶出液(EL)が第1セルの頂部に注入され、及び、実質的に同一体積のラフィネート(R)が第5セルの出口で回収される。第6セルは、ここで抽出分の終端とラフィネートの先端との分離を確実にする可能性を付与するためのバッファーセルである。これは第4ゾーンを形成する。このゾーンは、純度及び/又は所望の収率の度合いが比較的限定されているときには、除いてもよい。
【0102】
この好ましい実施態様において、これらの段階は、1〜4のこの順で操作される。これらのシーケンスで、完全なシーケンスが形成される。
【0103】
各シーケンス(第1〜第4段階)が、システムの左から右へ、セル番号を増やすことで、セルの入口と出口をずらしながら6回繰り返される:原料が、第1シーケンスで第1セルの頂部に、次いで、第2シーケンスでは第2セルの頂部に注入される、等々。
【0104】
6つの連続シーケンスの完了後、最初に第1セルの入口であった原料の注入点が、再び第1セルの入口に戻ったときに、完全な製造サイクルが達成される。
【0105】
以上において、セルがカラムに対応するときの場合に関してSSMBシステムの記載が為された。これは限定的なものではなく、発明はセル、又はさらに区画が、カラムの一部分であるシステムにも適用される。
【0106】
さらに、第1、2、3、4ゾーンに存在するカラムの数は、所望の分離の品質に依存して変えてもよい。従って、同じ型のシステムを1つのセル、2つのセル、3つのセル、4つのセル及び12のセル、又はそれより多くのセルで構築することが可能である。
【0107】
方法は、閉ループ又は国際公開2007/012750号に記載のDCCシステムのようなオープンループでの、非連続マルチカラム装置にも適用され得る。
【0108】
一の実施態様に従い、マルチカラム装置(とりわけSMB型等)は、一又はいくつかのクリーニングゾーンを含み、強く吸着している化合物(不純物)を周期的に脱着し、次いで再生し及び分離の溶出液と吸着剤を再バランスさせるために、分離ループのカラムの切り離しを可能とする。
【実施例】
【0109】
以下の実施例は、本発明を、それらに限定することなく説明する。
[実施例1−トリプトファンの保持の検討]
この例では、pH=2.6に調整され、セラミック膜上で精密濾過及びダイアフィルトレーション(diafiltration)予備処理後のトリプトファン発酵液が処理される。
【0110】
製品はカラム当たり30mL(この例では、30mLが1ベッド体積(BV)である)のApplexion(登録商標)XA2014−22樹脂で処理される。樹脂は8%DVBのポリスチレン−DVBポリマー型の強カチオン性樹脂であり、単分散の粒径220μm及びイオン交換容量1.8当量/L
樹脂を有する。樹脂は4%NaOH水溶液で予めNa型に転換される。
【0111】
クロマトグラフィー工程用の初期混合物は、17.5g/Lのトリプトファン、3.7g/Lの糖、及び溶液中の塩による18.5mS/cmの導電率を有する。
【0112】
この混合物が樹脂上に過剰量注入される。注入段階の間、樹脂上での異なる種の異なる挙動が観察される:
−塩不純物は、樹脂上に保持されない:それらのイオン電荷と樹脂の電荷との間のイオン排除現象がそれらのマトリックス中への浸透を阻止するものと考えられる。溶出段階の間、カラム出口で初期混合物と同じ導電率が測定される。
−糖、それは中性種であり、樹脂マトリックス中に浸透し得、そして少し減速されるが、保持されない:それらは注入段階の間、塩と一緒に溶出される。
−注入されたトリプトファンは、pH=2.6で大半が両性イオン型であり、そのため、その芳香環と樹脂のそれとの相互作用により遅延現象を起こす。
【0113】
このようにして保持されたトリプトファンの溶出分が2BV/hで、4g/L濃度のNaOHにより得られる。
【0114】
図2は、システム中の、ラフィネートの溶出の開始から抽出分のリンスの終わりまで、分離工程の全行程が起こるポイントにおける、濃度の時間による変化を示す。段階Aは初期混合物の注入段階であり、段階BはNaOH水溶液による溶出段階である。
このシステムは、下記性能での動作を可能とする:
−8時間製造サイクルでの、樹脂1L当たり205.6gのトリプトファンの処理;
−トリプトファン抽出分の回収の間、99.5%の脱ミネラル化に相当する100μS/cm未満の
導電率。
【0115】
[実施例2−トリプトファンのマルチカラム分離]
この例では、本発明が40g/Lのトリプトファンを含むpH=4の発酵液に対し、連続及びマルチカラムシステム上でのクロマトグラフィーモードにおいて適用される。主な不純物は基質の残渣、ミネラル、並びに細胞代謝の固体状残渣である。
【0116】
該液のpHはここではH
2SO
4を添加して2.7に調整される。このpKaより大きいpHで、トリプトファンのほとんどが両性イオン型である。
【0117】
次いで、セラミック膜によりタンジェンシャル精密濾過で浄化される。固体懸濁物質は膜に維持され、保持分と呼ばれる画分に濃縮される。トリプトファン並びに可溶性不純物のほとんどのものは、膜を通過して浸透分と呼ばれる画分へと運ばれる。
【0118】
濃縮の最後に、保持分画分中に水を添加することによって、希釈し及び保持分を再濃縮することが可能である:この操作はダイアフィルトレーションと呼ばれ、保持分画分中の残渣量を減らすことでトリプトファンの全体収率の上昇を可能とする。
【0119】
このようにして処理された精密濾過浸透分は、液中に当初存在したトリプトファンの98%を15g/Lの濃度で含む。そのなかに存在する不純物は25g/Lのミネラル塩:その導電率は15.9mS/cmである。3g/Lの糖レベルも測定される。
【0120】
この浸透分は上記SSMBシステムに投入するための製品として使用される。
【0121】
上記SSMB原理に従い、この特定の例で使用されるシステムは、以下のように分布されたカラムとして適用された9つの分離セルからなる。
−ゾーン1:3つのカラム=トリプトファン溶出ゾーン;
−ゾーン2:2つのカラム=分離ゾーン;
−ゾーン3:3つのカラム=トリプトファンの減速ゾーン;
−ゾーン4:1つのカラム=ループゾーン
【0122】
各カラムは、475mLのApplexion(登録商標)XA2014−22樹脂を含む。床体積(ベッド体積)の大きさは従って:1BV=475mLである。
【0123】
樹脂は、最初に3NのNH
3を注ぐことによってNH
4+型にされる。
【0124】
システムは4.5BV/hで操作される。
【0125】
原料製品をゾーン3の頂部に注入する。各製造期間において、7.5BVの原料製品を注入する。3つのカラム上において、トリプトファンが樹脂による遅延現象によって減速され、それによってゾーンの出口で「ラフィネート」と言われる画分として溶出及び回収される不純物から分離される。不純物の主なもの(塩及び糖)がこのラフィネート内へと溶出される:その導電率は17.6mS/cmである。
【0126】
システムは、0.1%の初期トリプトファンがラフィネート画分中へと溶出するように調整される。
【0127】
ゾーン1の頂部において、2g/L(溶出液)に薄められたアンモニアが注入され、それはトリプトファンの脱着を可能とする。各製造期間において、5BVの溶出液が注入される。トリプトファンは「抽出」画分と呼ばれるこの溶出の間に回収される。抽出分の導電率は、200μS/cm未満である:これは原料製品に対して98.8%の脱ミネラル化であり、残留糖の89%の減少、及び色の75%の減少も観測される。
【0128】
非常に少量のアンモニア溶出液が使用される:溶出液/原料製品比は、0.67(体積/体積)である。また、この操作の間濃縮現象も観察される:トリプトファンが(原料製品中の15g/Lに対して)20 g/Lで溶出される。初期トリプトファンの99%超がこの工程の間抽出分中に回収される。SSMBサイクルの各シーケンスにおいて、使用されたNH
3の量は、1.47モル/L樹脂のトリプトファンの注入量に対して、樹脂1L当たり0.59モルである(トリプトファン1モル当たり0.4モルのNH
3である):これは、保持機構がイオン交換ではないことを示す。
【0129】
連続操作、及びループ工程の間に、9つのカラムにおいて観測されたプロフィールを
図3に示す。
【0130】
トリプトファン濃度、Brix(乾燥分濃度を示す)、及び導電率(塩不純物の濃度を示す)のプロフィールがそこに示される。トリプトファンの溶出ゾーン(ゾーン1,カラム2、3及び4)とラフィネートの回収のためのゾーン(ゾーン3、カラム7、8及び9)の分離が、このように観察される。
【0131】
[実施例3−フェニルアラニンの保持の検討]
この例は、pH=2に調整し、次いでセラミック膜上でマイクロ濾過することによって予備処理したフェニルアラニンの発酵液に適用される。
【0132】
製品が1カラム当たりの体積30mL=1BVの、Applexion(登録商標)XA2014−22樹脂で処理される。樹脂は、3%NH
3により予めNH
4+型に転換され、リンスされ、次いで2g/LのNH
3を通過させてバランスされる。
【0133】
クロマトグラフィー原料製品は、32.76g/Lのフェニルアラニンを含み、及び媒体の塩濃度により36.8mS/cmの導電率を有する。
【0134】
原料製品の過剰量が4BV/hで樹脂上に注入される:フェニルアラニンの塩及び糖に対する保持、次いで、アミノ酸のリークが観察される。アミノ酸の出口での濃度が入口での濃度と同じになったら、原料製品の注入が中止される。
【0135】
フェニルアラニンの溶出が4BV/hで、2g/L濃度のNH
3で達成される。
【0136】
図4は、システム中の、分離工程における、ラフィネートの溶出の開始から抽出分のリンスの終了迄の全ての分離工程の発生が見られるポイントにおける濃度の時間変化を示す。段階Aは初期混合物の注入段階であり、段階BはNH
3溶液による溶出段階である。
【0137】
このシステムは下記性能での動作を可能とする。
−6.75時間の製造周期で、樹脂1L当たり169gのフェニルアラニンの処理。
−フェニルアラニン抽出分の回収の間、98.5%の脱ミネラル化に相当する約600μS/cmの
導電率。
【0138】
[実施例4−ヒスチジンの保持の検討]
この実施例は、17.48mS/cmの導電率を有し、3.9g/Lの糖を含む、12.98g/Lのヒスチジン溶液から出発する。溶液のpHは、H
2SO
4を添加して、予め2.7に調整される。
【0139】
製品は1カラム当たり17mLの体積(=1BV)の、Applexion(登録商標)XA2014−22樹脂で処理される。樹脂は予め3%NH
3によりNH
4+型に転換され、リンスされ、次いで2g/LのNH
3を通過させてバランスされる。
【0140】
原料製品の過剰量が2BV/hでカラム上に注入される:ヒスチジンの保持現象が、次いでアミノ酸のリークが観察される。アミノ酸の出口での濃度が入口での濃度と等しくなったら、原料製品の注入が中止される。
【0141】
ヒスチジンの溶出が2BV/hで、2g/L濃度のNH
3により達成される。
【0142】
図5は、システム中の、ラフィネートの溶出の開始から抽出分のリンスの終了迄の全ての分離工程の発生が見られるポイントにおける濃度の時間変化を示す。段階Aは初期混合物の注入段階であり、段階BはNH
3溶液による溶出段階である。
【0143】
このシステムは下記性能での動作を可能とする。
−30時間の製造周期で、樹脂1L当たり120gのヒスチジンの処理。
−
ヒスチジン抽出分の回収の間、98.8%の脱ミネラル化に相当する約220μS/cmの
導電率。