(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6303044
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】押出し造粒法を用いたイミダフェナシンを含有する製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4174 20060101AFI20180319BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20180319BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20180319BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20180319BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20180319BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20180319BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20180319BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
A61K31/4174
A61K9/20
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/12
A61P13/02
A61P43/00 111
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-67520(P2017-67520)
(22)【出願日】2017年3月30日
【審査請求日】2017年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001395
【氏名又は名称】杏林製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 義一
(72)【発明者】
【氏名】坂野 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】湯本 和宏
【審査官】
原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第01/34147(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/096559(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/096560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4174
A61K 9/20
A61K 47/12
A61K 47/32
A61K 47/36
A61K 47/38
A61P 13/02
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)イミダフェナシン、1または2以上の薬学的に許容される賦形剤、薬学的に許容される結合剤および薬学的に許容される溶媒を練合し練合物を製造する工程、
(ii)上記練合物を押出造粒機から押し出して造粒物を製造する工程、および
(iii)上記造粒物を乾燥する工程
を含む、イミダフェナシンを含有する造粒物の製造方法。
【請求項2】
薬学的に許容される賦形剤が部分アルファー化デンプンおよび/または結晶セルロースであり、薬学的に許容される結合剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれるものであり、薬学的に許容される溶媒が精製水および/またはアルコールである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
(iv)請求項1または2に記載の製造方法で得られたイミダフェナシンを含有する造粒物と、薬学的に許容される添加剤とを混合し混合粉末を製造する工程、および
(v)上記混合粉末を圧縮成型する工程
を含む、イミダフェナシンを含有する錠剤の製造方法。
【請求項4】
薬学的に許容される添加剤が薬学的に許容される賦形剤および/または滑沢剤である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
薬学的に許容される賦形剤が結晶セルロースであり、薬学的に許容される滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミダフェナシンを含有する製剤の新規製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イミダフェナシンはムスカリンM1受容体及びM3受容体を選択的に阻害する抗コリン薬であり、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁の治療薬として広く使用されている。現在、イミダフェナシンを有効成分とする医薬品としては、フィルムコーティング錠(FC錠)と口腔内崩壊錠(OD錠)が市販されている(非特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、イミダフェナシンを有効成分とするFC錠やその製造方法が開示されている。また、特許文献2〜8には、イミダフェナシンを有効成分とするOD錠やその製造方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜8には、流動層造粒法によりイミダフェナシンを含有する造粒物を製造し、これを用いて錠剤化する方法しか開示されておらず、その他の造粒法を用いてイミダフェナシンを含有する製剤を製造した報告はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ウリトス錠0.1mg、ウリトスOD錠0.1mg 添付文書、2014年6月改訂(第11版)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4610834公報
【特許文献2】特許4656672公報
【特許文献3】特許4524502公報
【特許文献4】特開2010−229075公報
【特許文献5】特開2010−229076公報
【特許文献6】特開2011−32183公報
【特許文献7】特開2011−68640公報
【特許文献8】特開2014−172855公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでに、イミダフェナシンを含有する製剤の製造に、流動層造粒法以外の製造方法が使用できるか否かについてはわかっていなかった。したがって、イミダフェナシンを含有する製剤の新たな製造方法を提供することが、本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、押出し造粒法を用いることで、製剤中のイミダフェナシンの光安定性が優れた製剤を製造することができることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1](i)イミダフェナシン、1または2以上の薬学的に許容される賦形剤、薬学的に許容される結合剤および薬学的に許容される溶媒を練合し練合物を製造する工程、
(ii)上記練合物を押出造粒機から押し出して造粒物を製造する工程、および
(iii)上記造粒物を乾燥する工程
を含む、イミダフェナシンを含有する造粒物の製造方法。
[2]薬学的に許容される賦形剤が部分アルファー化デンプンおよび/または結晶セルロースであり、薬学的に許容される結合剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれるものであり、薬学的に許容される溶媒が精製水および/またはアルコールである、[1]に記載の製造方法。
[3](iv)[1]または[2]に記載の製造方法で得られたイミダフェナシンを含有する造粒物と、薬学的に許容される添加剤とを混合し混合粉末を製造する工程、および
(v)上記混合粉末を圧縮成型する工程
を含む、イミダフェナシンを含有する錠剤の製造方法。
[4]薬学的に許容される添加剤が薬学的に許容される賦形剤および/または滑沢剤である、[3]に記載の製造方法。
[5]薬学的に許容される賦形剤が結晶セルロースであり、薬学的に許容される滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、[4]に記載の製造方法。
[6]工程(iii)の後に、乾燥した造粒物を整粒する工程を含む、[1]または[2]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、押出し造粒法を用いることで、製剤中のイミダフェナシンの光安定性が優れた製剤を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、イミダフェナシンとは4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−2,2−ジフェニルブタンアミドを表す。
【0011】
本発明において、錠剤中のイミダフェナシンの含量は0.025〜2mgが好ましく、0.05〜0.25mgが更に好ましく、0.1mgが特に好ましい。
【0012】
本発明の造粒物および錠剤は、任意の薬学的に許容される添加剤を含むことができる。添加剤は有効成分(イミダフェナシン)以外の成分を表し、医薬品添加物事典[日本医薬品添加剤協会、薬事日報社(2016年)]に記載されているものを適宜使用できる。例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、光沢剤などが挙げられる。
【0013】
本発明において、薬学的に許容される賦形剤としては、乳糖および白糖などの糖類、D−ソルビトールおよびマンニトールなどの糖アルコール類、結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類、部分アルファー化デンプンおよびトウモロコシデンプンなどのデンプン類などが挙げられる。本発明においては、結晶セルロースおよび/または部分アルファー化デンプンが好ましく、結晶セルロースと部分アルファー化デンプンの両方を配合する場合、結晶セルロースと部分アルファー化デンプンの配合比率は流動性と成形性の観点から4:1が好ましい。
【0014】
本発明において、薬学的に許容される崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびメチルセルロースなどのセルロース類、部分アルファー化デンプンおよびトウモロコシデンプンなどのデンプン類、クロスポビドンなどが挙げられる。
【0015】
本発明において、薬学的に許容される結合剤としては、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロースおよびメチルセルロースなどのセルロース類、ポビドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール完全けん化物、ポリビニルアルコール部分けん化物、カルボキシビニルポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニル系高分子物質、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E、RS)、メタクリル酸コポリマー(L、S、LD)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液などのアクリル系高分子物質、ステアリルアルコール、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、プルラン、マクロゴール、デンプン、などが挙げられる。本発明においては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルピロリドンが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
【0016】
本発明において、薬学的に許容される滑沢剤としては、ステアリン酸およびその金属塩類、タルク、硬化油、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。本発明においては、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0017】
本発明において、薬学的に許容されるコーティング剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどのセルロース類、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E、RS)、メタクリル酸コポリマー(L、S、LD)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液などのアクリル系高分子物質、ポビドン、ステアリルアルコール、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートなどが挙げられる。
【0018】
本発明において、薬学的に許容される着色剤としては、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄などが挙げられる。
【0019】
本発明において、薬学的に許容される光沢剤としては、カルナウバロウなどが挙げられる。
【0020】
本発明において、薬学的に許容される溶媒としては、製剤を製造する際に使用が許容され得る溶媒であれば特に制限されない。例えば、精製水、有機溶媒、および精製水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。本発明においては、精製水および/またはアルコールが好ましく、精製水および/またはエタノールがさらに好ましく、精製水およびエタノールの混合溶媒が特に好ましい。
【0021】
本発明の造粒物は、例えば、1または2以上の薬学的に許容される賦形剤に、イミダフェナシンと薬学的に許容される結合剤を薬学的に許容される溶媒に溶解した溶液を添加後、練合し、得られた練合物を押出造粒機のダイスやスクリーン面より押し出して造粒し、得られた造粒物を乾燥することで製造することができる。乾燥した造粒物は整粒した後、下記の錠剤の製造に用いることが好ましい。
【0022】
本発明の錠剤は、例えば、上記の方法で製造した造粒物を薬学的に許容される添加剤と混合することで混合粉末を製造し、これを任意の打錠機を用いて圧縮成型することで製造することができる。
【0023】
本発明の錠剤をフィルムコーティング錠とする場合は、例えば、国際公開WO2001/034147に記載の方法により行うことができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
結晶セルロース211.4g、部分アルファー化デンプン52.8gおよびヒドロキシプロピルセルロース2.8gをとり、ハイスピードミキサー(商品名)(LFS−GA−2J、深江パウテック)を用いて30秒間混合した。得られた混合品に、イミダフェナシン0.20gを溶解した精製水/エタノール(95)混液および精製水を添加しながら、ハイスピードミキサー(商品名)(LFS−GA−2J、深江パウテック)を用いて4.5分間練合した。得られた練合品をドームグラン(商品名)(DG−L1、不二パウダル製)を用いて、スクリーンダイを3回通過させ造粒した。得られた造粒品を通気乾燥機(30C、不二パウダル製)を用いて65℃で75分間乾燥した。得られた乾燥品をコーミル(商品名)(QC−197S、パウレック製)を用いて整粒し造粒物232.7gを得た。
【0026】
(実施例2)
実施例1で得た造粒物133.6gに、結晶セルロース104.6gおよびステアリン酸マグネシウム1.8gを加え、ポリエチレン袋中で混合した。得られた混合品を打錠機(VELA5、菊水製作所、直径9mmの臼、曲率半径12mmのR面杵)を用いて1錠あたり質量240mgとなるように打錠し、錠剤685錠を得た。
【0027】
(比較例1)
イミダフェナシン0.2g、結晶セルロース211.4g、部分アルファー化デンプン52.8gおよびヒドロキシプロピルセルロース2.8gをとり、ワンダーブレンダー(商品名)(WB−1、大阪ケミカル)を用いて1分間混合した。得られた混合品をローラーコンパクター(商品名)(TF−MINI、フロイント産業、ロール形状:DPS、ロール圧力:50kgf・cm
2)を用いて造粒した。得られた造粒品をロールグラニュレーター(商品名)(GRN−T54S、日本グラニュレーター)を用いて整粒した。得られた整粒品をステンレス篩(目開き710μm)を用いて篩過し、造粒物243.5gを得た。
【0028】
(比較例2)
比較例1で得た造粒物133.6gに、結晶セルロース104.6gおよびステアリン酸マグネシウム1.8gを加え、ポリエチレン袋中で混合した。得られた混合品を打錠機(VELA5、菊水製作所、直径9mmの臼、曲率半径12mmのR面杵)を用いて1錠あたり質量240mgとなるように打錠し、錠剤788錠を得た。
【0029】
(比較例3)
イミダフェナシン800mgをエタノール(95)274gに溶解した後、精製水274gを加え混和した。得られた溶液にヒドロキシプロピルセルロース11.2gを溶解し結合液を作製した。結晶セルロース211.4gおよび部分アルファー化デンプン52.8gをとり、ポリエチレン袋中で混合した。得られた混合品にニューマルメライザー(商品名)(NQ−160、不二パウダル)を用いて結合液140gを噴霧し、造粒物254.6gを得た。
【0030】
(比較例4)
比較例3で得た造粒物133.6gに、結晶セルロース104.6gおよびステアリン酸マグネシウム1.8gを加え、ポリエチレン袋中で混合した。得られた混合品を打錠機(VELA5、菊水製作所、直径9mmの臼、曲率半径12mmのR面杵)を用いて1錠あたり質量240mgとなるように打錠し、錠剤756錠を得た。
【0031】
(光安定性試験)
実施例1、2および比較例1〜4の製剤について光安定性試験を実施した。試験開始時とD65ランプ4000ルクス×約14日間照射時における不純物の割合を測定した。なお、不純物の定量は液体クロマトグラフ法(HPLC法)により評価した。
【0032】
HPLC法
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(平均粒径5μm、内径4.6mm×長さ250mm)(ジーエルサイエンス株式会社 商品名Inertsil ODS−3)
A液:薄めたリン酸(1→200)にジエチルアミンを加え、pHを6.0に調整した液
B液:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
C液:液体クロマトグラフィー用メタノール
検出器:UV
測定波長:220nm
【0033】
実施例1および比較例1、3で得られた造粒物の処方(各成分の量の単位:mg/錠)と造粒法、並びに、それらの光安定性試験の結果を表1に示す。なお、表中、HPCはヒドロキシプロピルセルロースを表す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から明らかなように、他の造粒法(乾式造粒法、流動層造粒法)により得られた造粒物と比較して、押出し造粒法により得られた造粒物は良好な光安定性を示した。
【0036】
実施例2および比較例2、4で得られた錠剤の処方(各成分の量の単位:mg/錠)と造粒法、並びに、それらの光安定性試験の結果を表2に示す。なお、表中、HPCはヒドロキシプロピルセルロースを表す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2から明らかなように、他の造粒法(乾式造粒法、流動層造粒法)により得られた造粒物を含有する錠剤と比較して、押出し造粒法により得られた造粒物を含有する錠剤は良好な光安定性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、押出し造粒法を用いることで、製剤中のイミダフェナシンの光安定性が優れた製剤を製造することができる。
【要約】
【課題】イミダフェナシンを含有する製剤の新たな製造方法を提供することが、本発明が解決しようとする課題である。
【解決手段】押出し造粒法を用いることで、製剤中のイミダフェナシンの光安定性が優れた製剤を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし