(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
なお、本願において、「軸方向」とは、シャフトの軸方向を意味する。本願において、「半径方向」とは、シャフトの半径方向を意味する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブ2を示す。ゴルフクラブ2は、ヘッド4と、シャフト6と、グリップ8とを備えている。シャフト6の先端部に、ヘッド4が取り付けられている。シャフト6の後端部に、グリップ8が取り付けられている。ヘッド4はアイアン型ヘッドである。ゴルフクラブ2は、アイアン型ゴルフクラブである。シャフト6は、アイアン用シャフトである。
【0020】
シャフト6は、複数の繊維強化樹脂層によって形成されている。シャフト6は、管状体である。シャフト6は中空構造を有する。
図1が示すように、シャフト6は、先端(チップエンド)Tpと後端(バットエンド)Btとを有する。先端Tpは、ヘッド4の内部に位置している。後端Btは、グリップ8の内部に位置している。
【0021】
ヘッド4はホーゼル孔を有している。このホーゼル孔に、シャフト6の先端部が挿入されている。シャフト6において、ホーゼル孔に挿入されている部分の軸方向長さは、通常、25mm以上70mm以下である。
【0022】
図1において両矢印Lsで示されているのは、シャフト長さである。シャフト長さLsは、先端Tpと後端Btとの間の軸方向距離である。
図1において両矢印Lgで示されているのは、先端Tpからシャフト重心Gまでの軸方向距離である。シャフト重心Gは、シャフト6単体の重心である。この重心Gは、シャフト軸線上に位置する。
【0023】
シャフト6は、いわゆるカーボンシャフトである。好ましくは、シャフト6は、プリプレグシートを硬化させてなる。このプリプレグシートでは、繊維は実質的に一方向に配向している。このように繊維が実質的に一方向に配向したプリプレグは、UDプリプレグとも称される。「UD」とは、ユニディレクションの略である。UDプリプレグでないプリプレグが用いられても良い。例えば、プリプレグシートに含まれる繊維が編まれていてもよい。
【0024】
プリプレグシートは、繊維と樹脂とを有している。この樹脂は、マトリクス樹脂とも称される。典型的には、この繊維は炭素繊維である。典型的には、このマトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂である。後述するように、一部のプリプレグでは、ガラス繊維が用いられている。
【0025】
シャフト6は、いわゆるシートワインディング製法により製造されている。プリプレグにおいて、マトリクス樹脂は、半硬化状態にある。シャフト6は、プリプレグシートが巻回され且つ硬化されてなる。
【0026】
プリプレグシートのマトリクス樹脂としては、エポキシ樹脂の他、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等も用いられ得る。シャフト強度の観点から、マトリクス樹脂として、エポキシ樹脂が好ましい。
【0027】
図2は、シャフト6を構成するプリプレグシートの展開図(シート構成図)である。シャフト6は、複数のシートにより構成されている。シャフト6は、第1シートs1から第11シートs11までの、11枚のシートにより構成されている。
図2で示される展開図は、シャフトを構成するシートを、シャフトの半径方向内側から順に示している。これらのシートは、展開図において上側に位置しているシートから順に、巻回される。この
図2において、図面の左右方向は、シャフト軸方向と一致する。
図2において、図面の右側は、シャフトの先端Tp側である。
図2において、図面の左側は、シャフトの後端Bt側である。
【0028】
この展開図は、各シートの巻き付け順序のみならず、各シートのシャフト軸方向における配置をも示している。例えば
図2において、シートs6、シートs10及びシートs11の端は、シャフト先端Tpに位置している。例えば
図2において、シートs3、シートs4、シートs5及びシートs8の端は、シャフト後端Btに位置している。
【0029】
本願では、「層」という文言と、「シート」という文言とが用いられる。「層」は、巻回された後における称呼であり、これに対して「シート」は、巻回される前における称呼である。「層」は、「シート」が巻回されることによって形成される。即ち、巻回された「シート」が、「層」を形成する。また、本願では、層とシートとで同じ符号が用いられる。例えば、シートs1によって形成された層は、層s1である。
【0030】
シャフト6は、ストレート層と、バイアス層とを有する。本願の展開図において、各シートには、繊維の配向角度Afが記載されている。この配向角度Afは、シャフト軸方向に対する角度である。
【0031】
「0°」と記載されているシートが、ストレート層を構成している。ストレート層用のシートは、本願においてストレートシートとも称される。
【0032】
ストレート層は、繊維の配向がシャフト軸方向に対して実質的に0°とされた層である。巻き付けの際の誤差等に起因して、繊維の配向はシャフト軸線方向に対して完全に0°とはならない場合がある。通常、ストレート層では、絶対角度θaが10°以下である。
【0033】
なお、 絶対角度θaとは、上記配向角度Afの絶対値である。例えば、絶対角度θaが10°以下とは、角度Afが、−10°以上+10°以下であることを意味する。
【0034】
図2の実施形態において、ストレートシートは、シートs5、シートs6、シートs7、シートs8、シートs9、シートs10及びシートs11である。
【0035】
バイアス層は、シャフトの捻れ剛性及び捻れ強度との相関が高い。好ましくは、バイアスシートは、繊維の配向が互いに逆方向に傾斜した2枚のシートペアを含む。捻れ剛性の観点から、バイアス層の絶対角度θaは、好ましくは15°以上であり、より好ましくは25°以上であり、更に好ましくは40°以上である。捻れ剛性及び曲げ剛性の観点から、バイアス層の絶対角度θaは、好ましくは60°以下であり、より好ましくは50°以下である。
【0036】
シャフト6において、バイアス層を構成するシートは、シートs1、シートs2、シートs3及びシートs4である。上述の通り、
図2には、シート毎に、上記角度Afが記載されている。角度Afにおけるプラス(+)及びマイナス(−)は、バイアスシートの繊維が互いに逆方向に傾斜していることを示している。本願において、バイアス層用のシートは、単にバイアスシートとも称される。シートs1及びシートs2は、第1のシートペアを構成する。シートs3及びシートs4は、第2のシートペアを構成する。これらのシートペアは、それぞれ、後述の合体シートを形成する。
【0037】
図2では、シートs2の繊維の傾斜方向が、シートs1の繊維の傾斜方向に等しい。しかし、後述の通り、シートs2は、裏返されて、シートs1に貼り合わせられる。この結果、シートs1の上記傾斜方向と、シートs2の上記傾斜方向とは、互いに逆向きとなる。同様に、シートs4は、裏返されて、シートs3に貼り合わせられる。
【0038】
1枚のシートから形成される層の数は限定されない。例えば、あるシートのプライ数が1であるとき、このシートは、周方向において1周巻かれる。シートのプライ数が1であるとき、このシートは、シャフトの周方向の全ての位置で、1つの層を形成する。
【0039】
例えば、あるシートのプライ数が2であるとき、このシートは、周方向において2周巻かれる。シートのプライ数が2であるとき、このシートは、シャフトの周方向の全ての位置で、2つの層を形成する。
【0040】
例えば、あるシートのプライ数が1.5であるとき、このシートは、周方向において1.5周巻かれる。シートのプライ数が1.5であるとき、このシートは、0〜180°の周方向位置で1つの層を形成し、180°〜360°の周方向位置で2つの層を形成する。
【0041】
皺等の巻回不良を抑制する観点から、幅が広すぎるシートは好ましくない。この観点から、1枚のバイアスシートのプライ数は、4以下が好ましく、3以下がより好ましい。巻回工程の作業効率の観点から、バイアスシートのプライ数は、1以上が好ましい。
【0042】
皺等の巻回不良を抑制する観点から、幅が広すぎるシートは好ましくない。この観点から、1枚のストレートシートのプライ数は、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がより好ましい。巻回工程の作業効率の観点から、ストレートシートのプライ数は、1以上が好ましい。全てのストレートシートにおいて、上記プライ数が1であってもよい。
【0043】
全長シートでは、巻回不良が生じやすい。巻回不良を抑制する観点から、好ましくは、全ての全長ストレートシートにおいて、1枚のシートのプライ数は2以下である。全ての全長ストレートシートにおいて、上記プライ数が1であってもよい。
【0044】
皺等の巻回不良を抑制する観点から、幅が広すぎるシートは好ましくない。この観点から、フープシートのプライ数は、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がより好ましい。巻回工程の作業効率の観点から、1枚のフープシートのプライ数は、1以上が好ましい。全てのフープシートにおいて、上記プライ数が2以下であってもよい。
【0045】
全長シートでは、巻回不良が生じやすい。巻回不良を抑制する観点から、好ましくは、全ての全長フープシートにおいて、1枚のシートのプライ数は2以下である。全ての全長フープシートにおいて、上記プライ数が1であってもよい。
【0046】
図示しないが、使用される前のプリプレグシートは、カバーシートにより挟まれている。通常、カバーシートは、離型紙及び樹脂フィルムである。即ち、使用される前のプリプレグシートは、離型紙と樹脂フィルムとで挟まれている。プリプレグシートの一方の面には離型紙が貼られており、プリプレグシートの他方の面には樹脂フィルムが貼られている。以下において、離型紙が貼り付けられている面が「離型紙側の面」とも称され、樹脂フィルムが貼り付けられている面が「フィルム側の面」とも称される。
【0047】
本願の展開図は、フィルム側の面が表側とされた図である。即ち、
図2において、図面の表側がフィルム側の面であり、図面の裏側が離型紙側の面である。
図2では、シートs1とシートs2とで、繊維方向を示す線が同方向であるが、後述される貼り合わせの際に、シートs2が裏返される。この結果、シートs1の繊維方向とシートs2の繊維方向とは互いに逆となる。従って、層s1の繊維方向と層s2の繊維方向とが互いに逆となる。この点を考慮して、
図2では、シートs1の繊維方向が「−45°」と表記され、シートs2の繊維方向が「+45°」と表記されている。
【0048】
プリプレグシートを巻回するには、先ず、樹脂フィルムが剥がされる。樹脂フィルムが剥がされることにより、フィルム側の面が露出する。この露出面は、タック性(粘着性)を有する。このタック性は、マトリクス樹脂に起因する。即ち、このマトリクス樹脂が半硬化状態であるため、粘着性が発現する。この露出したフィルム側の面の縁部が、巻き始め縁部とも称される。次に、巻き始め縁部が、巻回対象物に貼り付けられる。マトリクス樹脂の粘着性により、この巻き始め縁部の貼り付けが円滑になされうる。巻回対象物とは、マンドレル、又はマンドレルに他のプリプレグシートが巻き付けられてなる巻回物である。次に、離型紙が剥がされる。次に、巻回対象物が回転されて、プリプレグシートが巻回対象物に巻き付けられる。このように、先に樹脂フィルムが剥がされ、次に巻き始め端部が巻回対象物に貼り付けられ、次に離型紙が剥がされる。即ち、先に樹脂フィルムが剥がされ、巻き始め縁部が巻回対象物に貼り付けられた後に、離型紙が剥がされる。この手順により、シートの皺や巻き付け不良が抑制される。なぜなら、離型紙が貼り付けられたシートは、離型紙に支持されているため、皺となりにくいからである。離型紙は、樹脂フィルムと比較して、曲げ剛性が高い。
【0049】
図2の実施形態では、合体シートが形成される。合体シートは、2枚以上のシートが貼り合わされることによって形成される。
【0050】
図2の実施形態では、4つの合体シートが形成される。第一の合体シートは、シートs2をシートs1に貼り合わせることによって形成される。第二の合体シートは、シートs4をシートs3に貼り合わせることによって形成される。第三の合体シートは、シートs5とシートs6とをシートs7に貼り合わせることによって形成される。第四の合体シートは、シートs8をシートs9に貼り合わせることによって形成される。合体シートに係るシートは、合体シートの状態で巻回される。
【0051】
上記第三の合体シートでは、全長ストレートシートs7に、チップ低弾性シートs6が貼り合わされている。この合体シートにより、シートs7に対するシートs6の相対位置が正確に設定されるため、チップ低弾性シートs6の巻回精度が向上しうる。
【0052】
上記第四の合体シートでは、全長ストレートシートs9に、バット低弾性シートs8が貼り合わされている。この合体シートにより、シートs9に対するシートs8の相対位置が正確に設定されるため、バット低弾性シートs8の巻回精度が向上しうる。
【0053】
上述の通り、本願では、繊維の配向角度によって、シート及び層が分類される。更に、本願では、シャフト軸方向の長さによって、シート及び層が分類される。
【0054】
本願において、シャフト軸方向の略全体に配置される層が、全長層と称される。本願において、シャフト軸方向の略全体に配置されるシートが、全長シートと称される。巻回された全長シートが、全長層を形成する。
【0055】
先端Tpから軸方向に20mm隔てた位置がTp1とされ、先端Tpから位置Tp1までの領域が第1領域とされる。また、後端Btから軸方向に20mm隔てた位置がBt1とされ、後端Btから位置Bt1までの領域が第2領域とされる。上記第1領域及び上記第2領域が、シャフトの性能に与える影響は、限定的である。この観点から、全長シートは、上記第1領域及び上記第2領域に存在していなくてもよい。好ましくは、全長シートは、先端Tpから後端Btにまで延びている。換言すれば、全長シートは、シャフト軸方向の全体に配置されているのが好ましい。
【0056】
本願において、シャフト軸方向において部分的に配置される層が、部分層と称される。本願において、シャフト軸方向において部分的に配置されるシートが、部分シートと称される。巻回された部分シートが、部分層を形成する。好ましくは、部分シートの軸方向長さは、シャフト全長Lsの半分以下である。
【0057】
本願では、ストレート層である全長層が、全長ストレート層と称される。
図2の実施形態において、全長ストレート層は、層s7及び層s9である。全長ストレートシートは、シートs7及びシートs9である。
【0058】
本願では、ストレート層である部分層が、部分ストレート層と称される。
図2の実施形態において、部分ストレート層は、層s5、層s6、層s8、層s10及び層s11である。部分ストレートシートは、シートs5、シートs6、シートs8、シートs10及びシートs11である。
【0059】
なお、本願では、フープ層は設けられていない。フープ層が設けられても良い。
【0060】
本願では、バット部分層との文言が用いられる。このバット部分層として、バット部分ストレート層及びバット部分バイアス層が挙げられる。
【0061】
図2の実施形態において、バット部分ストレート層は、層s5及び層s8である。バット部分ストレートシートは、シートs5及びシートs8である。
【0062】
図2の実施形態において、バット部分バイアス層は、層s3及び層s4である。バット部分バイアスシートは、シートs3及びシートs4である。
【0063】
バット部分層は、比(Lg/Ls)の調整に寄与しうる。比(Lg/Ls)は、シャフト重心率とも称される。
【0064】
図2において両矢印Dbで示されるのは、バット部分層の後端とシャフト後端Btとの間の軸方向距離である。この軸方向距離Dbは、20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、0mmがより好ましい。本実施形態では、この軸方向距離Dbは、0mmである。
【0065】
本願では、チップ部分層との文言が用いられる。シャフト6は、このチップ部分層として、チップ部分ストレート層を有する。
図2において、チップ部分ストレート層は、層s6、層s10及び層s11である。チップ部分ストレートシートは、シートs6、シートs10及びシートs11である。チップ部分層は、シャフト6の先端部分の強度を高めうる。チップ部分層は、比(Lg/Ls)の調整に寄与しうる。
【0066】
図2において両矢印Dtで示されるのは、チップ部分層の先端とシャフト先端Tpとの間の軸方向距離である。この軸方向距離Dtは、20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、0mmがより好ましい。本実施形態では、この軸方向距離Dtは、0mmである。
【0067】
図2に示されるシートを用いて、シートワインディング製法により、シャフト6が作製される。
【0068】
以下に、このシャフト6の製造工程の概略が説明される。
【0070】
(1)裁断工程
裁断工程では、プリプレグシートが所望の形状に裁断される。この工程により、
図2に示された各シートが切り出される。
【0071】
なお、裁断は、裁断機によりなされてもよいし、手作業でなされてもよい。手作業の場合、例えば、カッターナイフが用いられる。
【0072】
(2)貼り合わせ工程
貼り合わせ工程では、前述した4つの合体シートが作製される。
【0073】
貼り合わせ工程では、加熱又はプレスが用いられてもよい。より好ましくは、加熱とプレスとが併用される。後述する巻回工程において、合体シートの巻き付け作業中に、シートのズレが生じうる。このズレは、巻き付け精度を低下させる。加熱及びプレスは、シート間の接着力を向上させる。加熱及びプレスは、巻回工程におけるシート間のズレを抑制する。
【0074】
(3)巻回工程
巻回工程では、マンドレルが用意される。典型的なマンドレルは、金属製である。このマンドレルに、離型剤が塗布される。更に、このマンドレルに、粘着性を有する樹脂が塗布される。この樹脂は、タッキングレジンとも称される。このマンドレルに、裁断されたシートが巻回される。このタッキングレジンにより、シート端部をマンドレルに貼り付けることが容易とされている。
【0075】
図2の展開図において上側に位置しているシートから順に、シートは巻回される。上記貼り合わせに係るシートは、合体シートの状態で、巻回される。
【0076】
この巻回工程により、巻回体が得られる。この巻回体は、マンドレルの外側にプリプレグシートが巻き付けられることによって形成されている。巻回は、例えば、平面上で巻回対象物を転がすことにより、達成される。この巻回は、手作業によりなされてもよいし、機械によりなされてもよい。この機械は、ローリングマシンと称される。
【0077】
(4)テープラッピング工程
テープラッピング工程では、上記巻回体の外周面にテープが巻き付けられる。このテープは、ラッピングテープとも称される。このテープは、張力を付与されつつ巻き付けられる。このテープにより、巻回体に圧力が加えられる。この圧力はボイドを低減させる。
【0078】
(5)硬化工程
硬化工程では、テープラッピングがなされた後の巻回体が加熱される。この加熱により、マトリクス樹脂が硬化する。この硬化の課程で、マトリクス樹脂が一時的に流動化する。このマトリクス樹脂の流動化により、シート間又はシート内の空気が排出されうる。ラッピングテープの圧力(締め付け力)により、この空気の排出が促進されている。この硬化により、硬化積層体が得られる。
【0079】
(6)マンドレルの引き抜き工程及びラッピングテープの除去工程
硬化工程の後、マンドレルの引き抜き工程とラッピングテープの除去工程とがなされる。両者の順序は限定されないが、ラッピングテープの除去工程の能率を向上させる観点から、マンドレルの引き抜き工程の後にラッピングテープの除去工程がなされるのが好ましい。
【0080】
(7)両端カット工程
この工程では、硬化積層体の両端部がカットされる。このカットにより、先端Tpの端面及び後端Btの端面が平坦とされる。
【0081】
なお、理解を容易とするため、本願の展開図では、両端カット後のシートが示されている。実際には、各シートの寸法の設定においては、両端カットが考慮される。すなわち、実際には、各シートの両端部には、両端カットによって切り落とされる部分が、付加される。
【0082】
(8)研磨工程
この工程では、硬化積層体の表面が研磨される。硬化積層体の表面には、ラッピングテープの跡として残された螺旋状の凹凸が存在する。研磨により、このラッピングテープの跡としての凹凸が消滅し、表面が平滑とされる。好ましくは、研磨工程では、全体研磨と先端部分研磨とが実施される。
【0083】
(9)塗装工程
研磨工程後の硬化積層体が、塗装される。
【0084】
以上のような工程により、シャフト6が得られる。シャフト6は、軽量で且つ強度に優れる。
【0085】
上述の通り、シャフト6は、バイアス層として、全長バイアス層s1、s2と、シャフト後端側に配置されたバット部分バイアス層s3、s4とを含んでいる。シャフト6は、ストレート層として、全長ストレート層s7、s9と、チップ部分ストレート層s6、s10、s11を含んでいる。シャフト6は、バット部分ストレート層s5、s8を含んでいる。
【0086】
[低弾性層]
本願では、低弾性層が定義される。低弾性層とは、強化繊維の弾性率が20ton/mm
2以下である層である。後述される効果を達成する観点から、低弾性層における強化繊維の弾性率は、15ton/mm
2以下が好ましく、10ton/mm
2以下がより好ましい。強度の観点から、低弾性層の強化繊維の弾性率は、4ton/mm
2以上が好ましい。
【0087】
低弾性層における強化繊維は限定されない。この強化繊維として、炭素繊維及びガラス繊維が例示される。炭素繊維として、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維が例示される。低弾性が得られやすいとの観点から、好ましい強化繊維はピッチ系炭素繊維及びガラス繊維である。後述の理由から、ガラス繊維がより好ましい。
【0088】
シャフト6において、チップ部分ストレート層s6は、チップ低弾性層である。一方、チップ部分ストレート層s10、s11は、低弾性層ではない。チップ部分ストレート層s10、s11は、中弾性層である。中弾性層とは、強化繊維の弾性率が20ton/mm
2よりも大きく40ton/mm
2以下である層である。このように、チップ部分ストレート層は、低弾性層と中弾性層とを含む。
【0089】
シャフト6において、バット部分ストレート層s8は、バット低弾性層である。一方、バット部分ストレート層s5は、低弾性層ではない。バット部分ストレート層s5は、中弾性層である。このように、バット部分ストレート層は、低弾性層と中弾性層とを含む。
【0090】
ヘッド4には、打撃による衝撃が生ずる。チップ低弾性層s6は、ヘッド4に近い。繊維が低弾性であるため、チップ低弾性層s6は、打撃による衝撃を効果的に吸収しうる。よって、打球感が向上しうる。チップ低弾性層s6は、先端部の撓りを増加させる。この撓りの反動として、撓り戻りが生じる。この撓り戻りにより、インパクトにおいてフェースが返りやすくなる。よって、インパクトにおけるフェースの開きが抑制されうる。フェースの開きが抑制されることで、飛距離が向上しうる。チップ低弾性層s6に起因するこれらの効果が、以下においてチップ効果Aとも称される。
【0091】
バット低弾性層s8は、グリップ8の内側に位置する。バット低弾性層s8は、グリップ8を握る人体の手に近い。バット低弾性層s8は、手が感じる衝撃を効果的に吸収しうる。よって、打球感が向上しうる。バット低弾性層s8により、シャフト6の後端部の曲げ剛性が抑制される。バット低弾性層s8は、シャフト6の後端部の撓りを増加させうる。後端部での撓りは、シャフト6の先端部を大きく変位させる。換言すれば、後端部での撓りは、ヘッド4を大きく変位させる。後端部での撓りは、ヘッドスピードに大きな影響を与える。この撓りは、撓り戻りを生じさせる。後端部での撓り戻りは、ヘッドスピードを向上させうる。バット低弾性層s8に起因するこれらの効果が、以下においてバット効果Bとも称される。
【0092】
本実施形態では、チップ低弾性層s6の強化繊維がガラス繊維である。換言すれば、チップ低弾性層s6はガラス繊維強化層である。
【0093】
本実施形態では、バット低弾性層s8の強化繊維がガラス繊維である。換言すれば、バット低弾性層s8はガラス繊維強化層である。
【0094】
典型的なガラス繊維の弾性率は、およそ7〜8ton/mm
2である。ガラス繊維の弾性率は、比較的低い。ガラス繊維強化層の配置により、衝撃吸収エネルギーが向上する。先端部のガラス繊維強化層s6により、打球の衝撃が効果的に吸収される。ガラス繊維強化層s6は、シャフトの強度を高める。ガラス繊維強化層s6は、上述のチップ効果Aを高めうる。
【0095】
後端部のガラス繊維強化層s8は、ゴルファーの手に近い。ガラス繊維に起因して、この層s8は衝撃吸収性に優れる。よって後端部の層s8は、打球感の向上に寄与しうる。更に、上述の通り、後端部のガラス繊維強化層s8は、ヘッドスピードの向上に寄与しうる。ガラス繊維強化層s8は、上述のバット効果Bを高めうる。
【0096】
本願では、ガラス繊維強化層の総重量がWgとされる。本実施形態では、Wgは、チップ低弾性層s6の重量とバット低弾性層s8の重量との合計である。
【0097】
本願では、シャフト重量がWsとされる。Wsは、シャフト全体の重量である。本実施形態では、層s1からs11の合計重量が、Wsである。
【0098】
本実施形態では、Wg/Wsは、0.10未満である。ガラス繊維の比重は、カーボン繊維の比重よりも大きい。Wg/Wsが0.10未満とされることで、シャフトの軽量化が達成されうる。この観点から、Wg/Wsは、0.08以下がより好ましく、0.06以下がより好ましく、0.05以下がより好ましい。ガラス繊維による上述の効果を高める観点から、Wg/Wsは、0.02以上が好ましい。
【0099】
本実施形態では、ガラス繊維強化層が先端部及び後端部に設けられている。一方、全長層はガラス繊維強化層を含まない。よって、Wg/Wsが抑制されている。
【0100】
図1及び
図2において符号T90で示されているのは、先端Tpから軸方向に90mm隔てた位置である。本願において、先端Tpから位置T90までの領域が、特定先端部Txとも称される。
【0101】
図1及び
図2において符号B50で示されているのは、後端Btから軸方向に50mm隔てた位置である。本願において、後端Btから位置B50までの領域が、特定後端部Bxとも称される。
【0102】
本願において、特定先端部Txの重量がWtとされる。特定後端部Bxの重量がWbとされる。特定先端部Txにおける上記チップ低弾性層の重量がWt1とされる。本実施形態において、Wt1は、チップ低弾性層s6の重量の一部である。特定後端部Bxにおける上記バット低弾性層の重量がWb1とされる。本実施形態において、Wb1は、バット低弾性層s8の重量の一部である。
【0103】
本実施形態では、チップ低弾性層s6及びバット低弾性層s8がガラス繊維強化層である。更に、Wb1/WbがWt1/Wtよりも大きい。上述のように、ガラス繊維の比重は大きい。Wb1/WbがWt1/Wtよりも大きくされることで、シャフト重心Gが後端Btに近づきやすい。換言すれば、前述の距離Lgは大きくなりやすい。よって、シャフト重心率(Lg/Ls)が大きくされうる。シャフト重心率の向上により、スイングバランスを軽くすることができ、ヘッドスピードが向上しうる。
【0104】
上述した衝撃吸収エネルギーの観点及び上記チップ効果Aを高める観点から、Wt1/Wtは、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.09以上がより好ましく、0.11以上がより好ましい。上述の通り、ガラス繊維の比重は高い。シャフト重心率を大きくする観点から、Wt1/Wtは、0.20以下が好ましく、0.18以下がより好ましく、0.16以下がより好ましい。
【0105】
上記バット効果B及び打球感を高める観点から、Wb1/Wbは、0.07以上が好ましく、0.09以上がより好ましく、0.11以上がより好ましく、0.13以上がより好ましい。シャフト重心率を大きくする観点からも、Wb1/Wbは大きいのが好ましい。Wb1/Wbが過大である場合、撓り戻りが十分に起こらない場合がある。この観点から、Wb1/Wbは、0.25以下が好ましく、0.23以下がより好ましく、0.21以下がより好ましい。
【0106】
前述のとおり、シャフト6は、バット部分バイアス層s3、s4を含む。このバット部分バイアス層により、ねじれ剛性が向上する。よって、打球の方向安定性が高まる。また、バット部分バイアス層s3、s4により、シャフト重心率が大きくされうる。
【0107】
バット部分バイアス層の重量がWxとされる。シャフト6では、層s3と層s4との合計重量がWxである。打球の方向安定性及びシャフト重心率の観点から、Wx/Wsは、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.09以上がより好ましく、0.11以上がより好ましい。シャフトの軽量化の観点から、Wx/Wsは、0.20以下が好ましく、0.18以下がより好ましく、0.16以下がより好ましい。
【0108】
図2において両矢印L1で示されるのは、バット部分バイアス層の軸方向長さである。打球の方向安定性を高める観点から、長さL1は、50mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、150mm以上がより好ましい。シャフトの軽量化の観点から、長さL1は、400mm以下が好ましく、350mm以下がより好ましく、300mm以下がより好ましく、250mm以下がより好ましい。
【0109】
図2において両矢印L2で示されるのは、チップ低弾性層の軸方向長さである。上述のチップ効果Aを高める観点から、長さL2は、50mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、150mm以上がより好ましい。シャフトの軽量化の観点から、長さL2は、400mm以下が好ましく、350mm以下がより好ましく、300mm以下がより好ましい。
【0110】
図2において両矢印L3で示されるのは、バット低弾性層の軸方向長さである。上述のバット効果Bを高める観点から、長さL3は、30mm以上が好ましく、50mm以上がより好ましく、80mm以上がより好ましく、100mm以上がより好ましい。シャフトの軽量化の観点から、長さL3は、300mm以下が好ましく、250mm以下が好ましく、200mm以下がより好ましい。
【0111】
上述の通り、
図1には、先端Tpからシャフト重心Gまでの軸方向距離Lgが示されている。シャフト重心率を大きくする観点から、距離Lgは、400mm以上が好ましく、420mm以上がより好ましく、440mm以上がより好ましく、460mm以上がより好ましい。シャフト先端部の強度を考慮すると、距離Lgは、750mm以下が好ましく、730mm以下がより好ましく、710mm以下がより好ましく、690mm以下がより好ましく、670mm以下がより好ましく、650mm以下がより好ましい。
【0112】
ヘッドスピードを高める観点から、シャフト重量Wsは、65g以下が好ましく、63g以下がより好ましく、61g以下がより好ましく、59g以下がより好ましい。シャフトの強度を考慮すると、シャフト重量Wsは、36g以上が好ましく、38g以上がより好ましく、40g以上がより好ましい。
【0113】
上述の通り、シャフト6は、打球の方向安定性に優れる。比較的短いクラブでは、打球の方向安定性が重視される傾向にある。この観点から、シャフト長さLsは、41インチ以下が好ましく、40インチ以下がより好ましく、39インチ以下がより好ましい。パターを除けば、シャフト長さLsは、通常、33インチ以上である。打球の方向安定性が良好なシャフトは、とくにアイアン型ゴルフクラブに好ましく用いられる。シャフト6は、好ましくは、アイアン用シャフトである。
【0114】
振りやすさ及びヘッドスピードの観点から、比(Lg/Ls)は、0.37以上が好ましく、0.40以上がより好ましく、0.43以上がより好ましく、0.46以上がより好ましく、0.49以上がより好ましい。先端部の強度の観点から、比(Lg/Ls)は、0.81以下が好ましい。
【0115】
シャフト重心率を調整する調整手段として、次の(a1)から(a12)が挙げられる。
(a1)バット部分層の巻回数の増減。
(a2)バット部分層の厚みの増減。
(a3)バット部分層の軸方向長さの増減。
(a4)バット部分層の樹脂含有率の増減。
(a5)バット部分層の比重の増減。
(a6)チップ部分層の巻回数の増減。
(a7)チップ部分層の厚みの増減。
(a8)チップ部分層の軸方向長さの増減。
(a9)チップ部分層の樹脂含有率の増減。
(a10)チップ部分層の比重の増減。
(a11)バット部分層の比重の増減。
(a12)シャフトのテーパー率の増減。
【0116】
以下の表1は、使用可能なプリプレグの例を示す。これらのプリプレグは市販されている。プリプレグの選択により、所望のスペックを有するシャフトが作製されうる。
【実施例】
【0118】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0119】
[実施例1]
図2に示される積層構成により、シャフトを作製した。製造方法は前述の通りとされた。用いられたプリプレグは、以下の通りとされた。
・シートs1、s2:TR350C−125S
・シートs3、s4:Q−U11H−1080
・シートs5:2255S−10
・シートs6:GE352H−160S
・シートs7:3255S−12
・シートs8:GE352H−160S
・シートs9:TR350C−125S
・シートs10:3255S−10
・シートs11:TR350C−125S
【0120】
バット部分バイアス層s3,s4として、Q−U11H−1080が用いられた。長さL1(
図2参照)は200mmとされた。
【0121】
ガラス繊維強化層を形成するため、シートs6及びs8に、商品名「GE352H−160S」が用いられた。このGE352H−160Sは、ガラス繊維強化プリプレグである。ガラス繊維はEガラスであり、このガラス繊維の引張弾性率は75GPa(7.65ton/mm
2)である。長さL2(
図2参照)は、250mmとされた。長さL3(
図2参照)は100mmとされた。
【0122】
得られたシャフトに、ヘッド及びグリップが装着され、実施例1のクラブを得た。このヘッドとして、ダンロップスポーツ社製の商品名「ゼクシオ セブン アイアン」の6番アイアンのヘッドが用いられた。この実施例1の仕様及び評価結果が下記の表2に示される。
【0123】
[実施例2から14及び比較例1から6]
下記の表2から表7に記載された仕様の他は実施例1と同様にして、実施例2から14及び比較例1から6のクラブを得た。
【0124】
実施例1から14の積層構成は、
図2で示される通りとされた。
【0125】
比較例1では、
図2で示されるシートs1からs11のうち、シートs3,s4、s6及びs8が用いられなかった。
【0126】
比較例2では、
図2で示されるシートs1からs11のうち、シートs3,s4及びs6が用いられなかった。
【0127】
比較例3では、
図2で示されるシートs1からs11のうち、シートs3,s4及びs8が用いられなかった。
【0128】
比較例4では、
図2で示されるシートs1からs11のうち、シートs3及びs4が用いられなかった。
【0129】
比較例5では、
図2で示されるシートs1からs11のうち、シートs6及びs8が用いられなかった。
【0130】
比較例6の積層構成は、
図2に示される通りとされた。ただし、比較例6では、シートs6及びシートs8に、中弾性シートが用いられた。よって、比較例6は、チップ低弾性層及びバット低弾性層を有していなかった。中弾性シートs6、s8において、強化繊維の弾性率は、24ton/mmであった。チップ中弾性シートs6の軸方向長さは、250mmであった。バット中弾性シートs8の軸方向長さは、100mmであった。特定先端部Txにおける中弾性シートs6の重量がW6とされるとき、W6/Wtは0.11であった。特定後端部Bxにおける中弾性シートs8の重量がW8とされるとき、W8/Wbは0.13であった。
【0131】
これら実施例の仕様及び評価結果が下記の表2から表5に示される。これら比較例の仕様及び評価結果が下記の表6及び表7に示される。各仕様を調整するため、上述した手段(a1)から(a12)が適宜選択された。また、表1に記載のプリプレグが適宜選択された。
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】
【表4】
【0135】
【表5】
【0136】
【表6】
【0137】
【表7】
【0138】
[評価方法]
【0139】
[3点曲げ強度]
SG式3点曲げ強度試験に準拠して、3点曲げ強度が測定された。これは、日本の製品安全協会が定める試験である。
図3は、この3点曲げ強度試験の測定方法を示す。測定点は、T点及びC点とされた。T点は、シャフト先端Tpから90mm隔てた地点である。このT点は、前述の位置T90である。C点は、シャフト後端Btから175mm隔てた地点である。
【0140】
図3が示すように、2つの支持点e1、e2においてシャフト20を下方から支持しつつ、荷重点e3において、上方から下方に向かって、荷重Fを加える。荷重点e3の位置は、支持点e1と支持点e2とを二等分する位置である。荷重点e3が、測定点である。スパンSは、支持点e1と支持点e2との間の距離である。T点が測定される場合、スパンSは、150mmとされた。C点が測定される場合、スパンSは300mmとされた。シャフト20が破損したときの荷重Fの値(ピーク値)が測定された。この値が、上記表2から7に示されている。
【0141】
[飛距離]
ハンディキャップが10以上20以下である10名のゴルファーが、実際にボールを打撃するテストを行った。各ゴルファーが各クラブを5球ずつ打撃した。全てのショットの飛距離(ヤード)が測定された。全てのデータの平均値が上記表2から7に示されている。
【0142】
[左右ズレ]
上記飛距離テストにおいて、打球の方向性も同時に測定された。各クラブについて、左右方向におけるショットのバラツキが計測された。この左右ズレが小さいほど、打球の方向安定性が良好である。各ゴルファーのバラツキの平均値が、上記表2から7に示される。
【0143】
[打球感]
上記飛距離テストにおいて、打球感のアンケート調査も同時に行われた。各テスターが1点から5点までの5段階で、打球感を評価した。点数が多いほど、打球感が良好である。各ゴルファーの評価点の平均値が、上記表2から7に示される。この平均値では、小数点以下は四捨五入されている。
【0144】
表2から7に示されるように、総合的に見て、実施例は比較例に比べて評価が高い。本発明の優位性は明らかである。