【実施例1】
【0014】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0015】
自動車などの車両には、車室内の前部に、
図1に示すように、インストルメントパネル1などの内装部品が設けられている。
【0016】
このようなインストルメントパネル1を、例えば、
図2に示すように、表皮材2と芯材3との間に柔軟な発泡層4を形成した多層構造のものとする。多層構造のインストルメントパネル1は、例えば、発泡成形などによって製造される。少なくとも表皮材2は、予め、インストルメントパネル1の形状に賦形される。なお、車両用の内装部品には、上記したインストルメントパネル1以外にも、インストルメントパネル1と同様の多層構造を有するものが存在している。
【0017】
そして、このような車両用の内装部品に対して、高級感を演出するなどのために縫製線5を形成する(
図1参照)。このような縫製線5は、上記した内装部品を多層化する前の立体形状に賦形された表皮材2に対し、例えば、手作業などで縫製加工を行うことによって形成される。但し、縫製加工は、可能であれば、機械加工としても良い。
【0018】
より具体的には、
図1に示すように、表皮材2は、製品面部分11と、この製品面部分11の一部に対して機器取付用凹部などを形成するために後工程で上記製品面部分11から切除される切除部分13とを有するものとされる。
そして、上記製品面部分11と切除部分13との境界線部分14が、曲率の小さいアール部またはコーナー部15を少なくとも1箇所有する非直線形状のものとされる。また、この境界線部分14に沿って裏面側へ段差状に屈曲する段差部16が設けられる。
更に、このような立体形状の表皮材2に対し、上記製品面部分11から上記境界線部分14の段差部16を通って上記切除部分13へと延びるように、上記した縫製線5が形成される。
【0019】
ここで、機器取付用凹部は、例えば、車幅方向の中央部における、空調装置やオーディオ装置などのための操作部を設置するためのものとされる。但し、機器取付用凹部は、上記に限るものではない。アール部やコーナー部15は、機器取付用凹部の形状を規定するためのものとされる。段差部16は、機器取付用凹部に機器を取付ける際に、係止部などとなるものとされる。縫製線5は、シングルスティッチやダブルスティッチとすることができる。この場合には、縫製線5は、合わせ線の両側にダブルスティッチを形成したものとされている。
【0020】
そして、以上のような表皮材縫製方法に対し、この実施例では、以下のような構成を備えるようする。
【0021】
(1)
図3、
図4に示すように、上記切除部分13に、切除部分13の端部から上記アール部またはコーナー部15へ向かって延びる切込部21を形成する。そして、この切込部21によって、上記立体形状の表皮材2を、より平たい状態に潰せるようにしてから縫製線5の形成を行うようにする。
【0022】
(2)この際、上記切除部分13に対し、切除部分13の端部から上記アール部またはコーナー部15へ向かって予め切断予定線31を形成しておくようにする。そして、この切断予定線31に沿い、切断予定線31の端部に形成された上記アール部またはコーナー部15の近傍に位置するストップホール32まで切込部21を形成する。
【0023】
ここで、切断予定線31は、凹条または凸条などとすることができる。ストップホール32は、所要の大きさの丸穴などとする。
【0024】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0025】
(1)表皮材2は、製品面部分11と、機器取付用凹部となる切除部分13とを有するものとされる。また、表皮材2は、ミシンなどによって縫製線5が形成されるものとなっている。製品面部分11と切除部分13との境界線部分14は、曲率の小さいアール部またはコーナー部15を少なくとも1箇所有する非直線形状のものとされると共に、裏面側へ段差状に屈曲する段差部16を有するものとされる。よって、表皮材2は、機器取付用凹部の縁部となる、境界線部分14の段差部16や、アール部またはコーナー部15の周辺に、複雑な凹凸が多く見られる、立体形状のものとなっており、これらの複雑な凹凸部分の周辺が特に縫製し難く、上記部分を無理に縫製すると、例えば、折れ皺の発生や、ミシンの突っ掛かりによる縫い目の乱れなどの不具合を生じるおそれがある。このような不具合は、特に、表皮材2が大面積のものである場合に顕著となる。
【0026】
そこで、切除部分13に、切除部分13の端部からアール部またはコーナー部15へ向けて切込部21を形成し、アール部またはコーナー部15の周辺を曲がり易くして、立体形状の表皮材2を、より平たい状態に潰してから縫製線5の形成を行なわせるようにした。これにより、容易に縫製を行うことが可能となるので、折れ皺の発生や、ミシンの突っ掛かりによる縫い目の乱れなどの不具合をなくすことができ、熟練を要することなく、誰でも簡単にきれいな縫製線5を効率良く形成することが可能となる。特に、表皮材2が大面積のものであっても、容易に縫製線5を形成することができる。また、製品歩留まりも向上することができる。
【0027】
(2)立体形状の表皮材2を平たい状態に潰す際に、切除部分13に、切除部分13の端部からアール部またはコーナー部15へ向かう切断予定線31とストップホール32とを予め形成して、切断予定線31に沿ってストップホール32に達するまで切込部21を予め形成すれば良いようにした。これにより、誰でも、短時間のうちに簡単に正確な切込部21を形成することが可能となる。
しかも、表皮材2は、切断予定線31に沿って切込部21を入れることで、常に同じ形状に潰されることになるので、縫製線5の形成をより正確化および効率化することが可能となる。
【0028】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。