特許第6303196号(P6303196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レキット アンド コールマン (オーヴァーシーズ) リミテッドの特許一覧

特許6303196洗浄機に対して処理組成物の制御した注入を行う方法及び装置
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6303196
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】洗浄機に対して処理組成物の制御した注入を行う方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/46 20060101AFI20180326BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20180326BHJP
   C11D 7/54 20060101ALI20180326BHJP
   A47L 15/44 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   A47L15/46 Z
   C11D3/395
   C11D7/54
   A47L15/44
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-541763(P2014-541763)
(86)(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公表番号】特表2015-502783(P2015-502783A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】GB2012052892
(87)【国際公開番号】WO2013076491
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年11月20日
(31)【優先権主張番号】1120117.5
(32)【優先日】2011年11月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509134020
【氏名又は名称】レキット アンド コールマン (オーヴァーシーズ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】マッケンナ ショーナ
(72)【発明者】
【氏名】ペドリー エドモンド
(72)【発明者】
【氏名】トーマス デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ワソンガ ジョン
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−527918(JP,A)
【文献】 特表2009−504318(JP,A)
【文献】 特表2008−510550(JP,A)
【文献】 特表2010−527721(JP,A)
【文献】 特開2009−136654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 15/00−21/06
C11D 3/395
C11D 7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理組成物を多段式自動洗浄機に分配する方法であって、該方法は前記洗浄機内の装置を作動させる段階を含み、
前記装置が、各々が組成的に異なる処理組成物を収容する少なくとも2つのチャンバを備え、前記装置が、さらに、洗浄液を集めるための関連のリザーバと、前記リザーバ内に配置されるセンサとを備え、
前記リザーバは、洗浄液が前記リザーバに入る入口と、洗浄液が前記リザーバを出る出口とを備え、
前記リザーバが継続的に排水されて、前記リザーバに収容された前記洗浄液が、前記多段式自動洗浄機の内部の前記洗浄液の最新のパラメータを正確に反映するようになっており、
前記センサからの入力に応答して前記多段式自動洗浄機内に前記処理組成物を注入するように前記チャンバを作動させる段階を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
1つのチャンバは、漂白剤含有処理組成物を含み、別のチャンバは、酵素含有処理組成物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記漂白剤含有処理組成物は、過酸化剤系漂白剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記センサは、混濁度センサ、温度センサ、水センサ、水分センサ、水硬度センサ、光センサ、導電率センサ、振動センサ、及び音センサから選択される、請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記センサが、前記多段式自動洗浄機の洗浄液の混濁度を感知する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記センサが、前記多段式自動洗浄機内の洗浄液の温度を感知する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記センサが、前記多段式自動洗浄機内の水の存在を感知する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記多段式自動洗浄機が、自動式皿洗い機であることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記リザーバが、バッフルを有する、請求項1から請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記リザーバの前記入口は、懸濁粒子ではなく洗浄液が前記リザーバ内に入るのを可能にする、網または細線金網の形態のカバーによって覆われている、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の洗剤組成物、すすぎ助剤、及び他の添加剤を、自動式洗浄機の一回の完結した洗浄サイクルにおいて使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な洗浄用組成物を、種々の異なる分量、時間、及び順序で洗浄機サイクル中の種々異なる継続時間に合わせて、機械に注入することができる。複数の洗浄用組成物を使用することによって、洗浄性能を高め、最適化することができる。
【0003】
自動式皿洗い機に使用される、現在一般的であるシステムは、洗浄サイクルごとに一種類の洗浄組成物のみを注入し、すすぎ剤組成物を洗浄機サイクルの最後に任意で追加する。洗剤組成物は、主として酵素系であるか又は塩素系酸化性漂白剤(例えば次亜塩素酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムなど)を含む。
【0004】
酵素系洗剤は、酵素感受性の汚れ(タンパク質とデンプンとを主とする)を洗浄することに非常に優れているが、コーヒー、紅茶、及びトマトのシミのような、取り除くことが難しいシミを落とすための性能を備えることはできない。
【0005】
塩素系洗剤(例えば塩素系漂白剤)は、取り除くことが難しいシミを洗浄することには非常に優れているが、酵素感受性の汚れを洗浄するための性能を備えることはできない。
【0006】
酵素系及び塩素系酸化性漂白剤は、同一の化学式マトリクスに両立性をもたないので、消費者は、性能について妥協的な判断をし、一方の洗剤組成物を使用するか、もう一方の洗剤組成物を使用するかを決めなければならない。このことは、取り除くことが困難なシミの除去を行う代わりに酵素感受性の汚れを洗浄するか、又はその逆をとるか、ということについて消費者にジレンマを感じさせる。
【0007】
一つの洗浄機サイクル中に複数の洗剤組成物を使用することは、この妥協的な判断を緩和するものとなり、自動式皿洗い機が通常遭遇するシミ及び汚れの範囲にわたり最良の効果を発揮することになるであろう。しかしながら、酵素系洗剤と塩素系洗剤に両立性がないことを考慮すると、これらの洗剤組成物は、各々の洗剤の性能が、もう一方の洗剤が存在することによって影響を受けることがないように、別々に保存して、異なる時間に注入する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の目的は、内部に作動装置を含む多段式洗浄機に複数の処理組成物を分配する方法であって、装置は少なくとも2つのチャンバを備え、該チャンバの各々に一つの処理組成物を収容し、チャンバがセンサからの入力に応答して作動し、装置は洗浄液を集めるための関連のリザーバを有する。
【0009】
複数のリザーバを設けることができる。
【0010】
本発明の他の目的は、カートリッジを備える多段式自動洗浄機に複数の処理組成物を分配するための装置を提供するものであり、カートリッジが少なくとも2つのチャンバを含み、該チャンバの各々が一つの処理組成物を収容し、該チャンバはセンサからの入力に応答して作動し、装置は洗浄液を集めるための関連のリザーバを有する。
【0011】
本発明のさらに別の目的によれば、複数の洗剤組成物を多段式自動洗浄機内に分配するための、取り外し可能な、自動式洗浄機の独立装置が提供され、該独立装置は、
a)各々が一つの処理組成物を収容する、少なくとも2つのチャンバを含むカートリッジと、
b)カートリッジのチャンバがその入力に応答して作動される、少なくとも1つのセンサと、
c)多段式自動洗浄機の洗浄液を集めるためのリザーバと、
を備え、
センサがリザーバ内の洗浄液を監視できるように装置内に配置される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
装置は、少なくとも7つのチャンバをもつカートリッジを有し、チャンバの数は10であることが好ましく、少なくとも15であることがより好ましく、少なくとも18以上であることが最も好ましい。
【0013】
装置はバッテリ駆動とすることができる。
【0014】
装置は、少なくとも2つの異なる処理組成物を分配することができる。例えば、これら処理組成物は、洗剤組成物及び効能促進剤、又は、洗剤組成物及びすすぎ助剤とすることができる。
【0015】
装置は、少なくとも3つの異なる処理組成物を分配することが好ましい。組成物の各々は、センサからの入力に基づいて、独立して分配することができる。
【0016】
装置は、センサからの入力に基づく処理組成物の分配を制御するソフトウェアを有することができる。
【0017】
装置は、何らかの市販の洗浄機に配置できるように、洗浄機から完全に独立したものであることが理想的である。
【0018】
本発明による方法及び装置を使用することにより、最適な(そして非常に洗練された形での)装置の作動を達成可能であることが分かっている。これは、(多くの先行文献と比べて)本装置が、例えば洗浄液/水の量が少ない/0である乾燥段階のような、機械サイクル内の段階を識別することができる、ということを含む、多くの事実によるものであると推測される。(これらの段階は一般に、機械サイクルの性質の違いを示すものであり、したがって顕著な指標の形態である。)加えて、リザーバが検知可能な量の洗浄液を含む状態となったとき、水のパラメータを測定して、適切な洗剤の適量を、洗浄液中に注入することができる。全体として、本装置によって、経験した洗浄状態に応じて、洗浄サイクルの様々な時点において、(すべての段階と、その内容物に関して)洗剤組成物をインテリジェント注入することができる。
【0019】
一般に、リザーバは装置に組み込まれる。そのため、リザーバが装置の残りの部分に隣接して配置されることが好ましい。
【0020】
センサは、リザーバ内、例えばリザーバの底部又はその付近に配置することが好ましい。これによって、例えば機械内の水(及び該水の何らかの特性)が少なくなった状態のような、装置が応答することのできない「不感時間」が短くなることが分かっている。さらに、センサをリザーバ内に設置することにより、閉鎖されたリザーバ内の状態を監視する場合に比べて、パラメータの変化を正確に監視できると推定される。
【0021】
複数のセンサは、同一平面上に存在することが好ましい。これは、各々のセンサが同じように洗浄液に接触して装置の監視動作を確実に最適化するために有用である。センサが異なる大きさでもよいことは認識されるべきであり、この点において、各センサの感知部分の少なくとも一部が、残りのセンサに対し同一平面上、又はその付近にあることが好ましいということを意味する。
【0022】
複数のリザーバが存在する場合、センサは、別個のリザーバ内に収容することができる。
【0023】
以下の式によってリザーバが充填されることが好ましい。
(Vi-min−Vo-min)/Cav>H
ただし、
o-minは、1分間に減少する水の体積(mm3
i-minは、1分間に集められる水の体積(mm3
avは、平均断面積(mm2
Hは、水槽の底部から、センサの上端部までの高さ(mm)
である。
【0024】
以下の式によって、リザーバから排出することが好ましい。
o-min/Cav>H
【0025】
一又はそれ以上の前記数式に基づいて充填し/排出することによって、装置を最適な状態で運転できることが分かっている。これは、少なくとも部分的には、急速な充填及び/又は排出に起因し、これにより洗浄サイクルの開始時期及び/又は排出/排水時期を迅速に認識できるためであると推測される。洗剤成分の放出、及び/又は、反対に洗剤成分放出の中止の必要性に関連する場合が多いのはこの時期である。
【0026】
(水/洗浄液が存在するとき)リザーバは、1分以内にその特性を感知するための量の水/洗浄液を収容する状態に達していることが好ましい。(水/洗浄液が存在しないとき)リザーバは、1分以内に空の状態に達することが好ましい。これによって、選択サイクルにおいて最も短い排水時間を検知することができ、その時間は、4分といった短い時間とすることができ、より可能性が高い時間は2分より短いものであり、さらに可能性が高い時間は1分より短いものである。
【0027】
この場合、短い排水サイクルを達成するには、充填/排出の時間が30秒より短いことが最も好ましい。そのような場合には、数式は以下に示すものとなる。
(Vi-min−Vo-min)/Cav>2H
o-min/Cav>2H
【0028】
入口(場合によっては出口)は、洗浄液中に存在する汚れ粒子が、リザーバ内に蓄積するのを防止することを助けるカバーをもつことができる。そのようなカバーは、洗浄液(懸濁粒子ではない)が、リザーバ内に入るのを可能にする網/細線金網とすることができる。
【0029】
皿洗い機の水の処理量は、皿洗い機の型式及び製造業者により異なる可能性がある。従って、全ての皿洗い機システムのための水槽を30秒以内に満たすようにするためには、水槽は、処理量が最低のものに対応するように設計されることが必要である。
【0030】
ボッシュSGS58M02EU Logixx(登録商標)モデルは、調査された種々の皿洗い機の処理量の中でも、最も低い処理量をもつことが分かっている。従って、この皿洗い機が、水槽の設計式を設定するための、実験的作業において適切なものとして考慮した。
【0031】
水槽は、その望ましい機能のために正確に作動するように、以下の数式の仕様で設計されることが望ましい。水槽の機能は、水が30秒以内にセンサを水面下に沈めるように、水を水槽内に集めるための機能である。これらのセンサは、皿洗い機内の水の状況を検知するために使用することができる。水の状態に応じて、又はその状態がどのよう変化したかに応じて、装置は、どの段階で薬剤を分配すべきかを決定するアルゴリズムに従うことができる。

ここで、
Aは、水平方向の充填面積であり、
aは、収集領域の角度であり、
hは、容器の高さであり、
rは、皿洗い機内の位置(r=1ならば中央に位置し、r=0ならば端部に位置する)であり、
Dは、何段目の引き出しに入れられるか(D=0ならば最下部の引き出し、D=1ならば最上部の引き出しに入れられる)、
avは、mm2で示される平均水平方向断面面積であり、
Hは、リザーバの底部からセンサの最上部までの高さであり、
hは、センサリザーバ内の流体の高さであり、
a2は、排水口面積であり、
pは、流体の密度であり、
gは、mm/min2で表した重力である。
【0032】
前記の式の作成原理
質量バランス
上述の水槽設計式は、本質的に、水の流入量から水の流失量を引いた水量が、1分の半分以内に、Cav.Hの分量だけ蓄積される、水槽の質量バランスである。
一般式は、(Vi-min−Vo-min)/Cav>2Hである。
【0033】
i -minを質量バランスに挿入するための式の実験的作成
【0034】
水槽のパラメータの観点から一般的な質量バランスを詳細に説明するために、皿洗い機システムにおいて、多くの実験的な研究を行う必要があった。Vi -min、つまり水槽内への流量は、収集領域の角度Aと、収集領域の水平面積aと、容器の高さhと、皿洗い機内の位置rと、水が入れられる引き出しDと、皿洗い機充填量fとの関数である。これらパラメータの各々の変化によって流量の変化を決定した。次に、装置内への水の流入量の式にこれらのデータを代入した。次いで、この式を質量バランスに挿入した。
【0035】
o -minを質量バランスに挿入するための式の実験的作成
o -min、つまり水槽から出る水の流量は、排水口の大きさa2と、重力の加速度gと、充填後の流体の最終的な高さzとの関数である。したがって、ベルヌーイのエネルギバランスを用いて、水槽からの水の流量を求める式を作成した。
【0036】
ベルヌーイのエネルギバランスを、容器に適用することができる。エネルギの生成又は消滅が起こり得ないので、点2におけるエネルギの合計は、点1における最初のエネルギと同じでなければならない。以下の式が、排水全体の平均体積流量ではなく、挿入された高さにおける流体の流量を与える。したがって、平均体積流量が、Vo-minの高いレベル及び低いレベルについて求められる。Vo -minは平方根関数であるので、これら二つの点の平均が、平方根関数としてあるべき値より僅かに小さい値を与えることが分かるであろう。しかしながら、この差異は無視できるほど十分小さいと考えられる。

ここで、
PEは、位置エネルギであり
KEは、運動エネルギであり、
1は、位置1であり、
2は、位置2であり、
ρは、流体の密度であり、
o-min1は、点1における体積流量であり、
o-min2は、点2における体積流量であり、
gは、9.81m/s2の重力であり、
a2は、排水口面積であり、
a3は、容器外に流出する容積流体流の面積であり、
zは、点1から点2までの高さであり、
1/2zは、充填過程における流体の平均高さである。
【0037】
仮定
1.主容器の排水量が、短時間dtにおいてほぼ0と等しい、準静的状態を考える。
2.摩擦を無視できるものと考える。これは、容器の縁部と乱流とにおける剪断力に関連する摩擦である。
3.a3のための補正係数を考慮すると、容積流出流体の面積を無視することができるので、a3はa2とほぼ同じになる。
【0038】
上述の式及び仮定が、本発明を限定するものではないことに留意することは重要である。これは最高の性能のために収集用リザーバが必要とするパラメータの計算方法を例示するものである。当業者であれば、所望の排水時間を導出するために、式を修正する(又は独自に提供する)ことができるであろう。
【0039】
式を作成するための仮定及び方法
i-min=f(A、a、h、r、D、f)
ここで、
i-minは、水槽への水の流入量である。
【0040】
i-minつまり水槽内への水の流入量は、収集領域の角度Aと、収集領域の水平面積aと、容器の高さhと、皿洗い機内の位置rと、水が入れられる引き出しDと、皿洗い機の充填状態fの関数である。
【0041】
これらのパラメータの各々は、実験においてそれぞれ独立であると仮定した。
【0042】
ボッシュ社のLogixx(登録商標)SGS58M02EU型皿洗い機は、実験の結果、利用できる皿洗い機の中でも処理量が最も低く、そのため、実験を行うには最も適した機械であると考えた。これは、処理量が最も低い皿洗い機は水の蓄積速度が最も低いので、充填条件が全ての皿洗い機に対して適切であるようにするためには、水槽はこの皿洗い機に対して設計する必要があるからである。
【0043】
本実験は、種々異なる寸法の容器を用いてこの皿洗い機で行った。
【0044】
データの結果は、ニュートン補間を用いて4次までの補間を行った。高次の導関数は、その値が十分小さい場合は無視できると考えた。
o-min=a2√(gz)
ここで、
o-minは、水槽から流出する流体の量を示す。
【0045】
ベルヌーイの式を用いると、容器からの流体の平均排水率であるVo -minは、排水口の寸法a2と、重力の加速度gと、流体の最終的な高さzの関数である。
【0046】
主容器の排水量が、短期間dtにおいてほぼ0と等しい、準静的状態を考える。
【0047】
摩擦を無視できるものとみなす。これは、容器の縁部と乱流とにおける剪断力に関連する摩擦である。
【0048】
a3のための補正係数を考慮すると、流出流体の体積流量の項を無視することができるので、a3をa2とほぼ同じにする。
【0049】
zの値が小さい場合は、zの値が大きい場合よりも長い時間がかかるということは無視できると考えられ、したがって、高さの変化は、時間に対応して線形であると仮定される。これは、Vi-min>>Vo-minであるから、合理的な仮定のはずである。システム内に流入する流量は、システム外へ流出する流量よりも遥かに大きく、このため、システム外への流量は蓄積速度への影響がより小さい。従って、この式において、流体の平均高さを示すため、1/2zが用いられる。
【0050】
流体の温度及び粘性のようなその他の影響は、すべて無視できると考えた。
【0051】
リザーバは、バッフルを含むことができる。これは、内部の水の動きを抑制する機能を果たし、それによって、洗浄サイクルの充填/排出段階におけるよりも、リップル波によってセンサが水没したり再度現れたりする可能性を減らすことができる。
【0052】
注入は、装置の汚れ量のような荷重の特徴、及び/又は、洗浄液の温度のような洗浄液の特徴を判定する装置内のセンサからのフィードバックに基づいて行うことが好ましい。このようにして、装置内の所望のチャンバを作動させることができる。同時に、一又はそれ以上の他のチャンバは、その中の材料を機械に注入できないように、「閉鎖する」ことができる。
【0053】
センサは、一又はそれ以上の形式のセンサを含むことができ、混濁度センサ、温度センサ、水/水分センサ、水硬度センサ、光センサ、導電率センサ、振動/音センサを含むである。
【0054】
装置は、装置と関連するが、装置か離間した位置にある(例えば上述した形式の)センサをさらに含むことができる。例えば、装置は、機械の他の部分及び/又は水の入口内及び水の出口内に配置された、比較的遠く離れた位置にあるセンサと関連することができる。
【0055】
追加的に又は代替的に、機械内のセンサは、投入物の種類又は品質、又は、適切な時点における水の硬度を検知するために使用することができる。常に行われるとは限らないが、通常、このことはサイクルの始めに行われる。このような検知は、サイクルを通して継続することが好ましい。
【0056】
本発明において、処理組成物(又は薬剤)は、衣類洗濯機内での使用に適した何らかの化学組成を意味する場合がある。
【0057】
非限定的な例として、洗剤組成物、漂白剤含有組成物、酵素含有組成物、すすぎ助剤、及び水軟化容組成物を含む。
【0058】
特定の例においては、最初に酵素系洗剤、次に塩素系洗剤、そして最後にすすぎ助剤を注入することが好ましいであろう。他の例においては、最初に塩素系洗剤、次に酵素系洗剤、そして最後にすすぎ助剤を注入することが好ましいであろう。別の例においては、最初に酵素系洗剤、次にすすぎ助剤、その次に塩素系洗剤、最後にすすぎ助剤を注入することが好ましいであろう。更に異なる例においては、最初に塩素系洗剤、次にすすぎ助剤を、その次に酵素系洗剤、そして最後にすすぎ助剤を注入することが好ましいであろう。更に異なる例において、最初に水処理剤(例えば、石鹸充填剤、水軟化剤、キレート化合物など、及びそれらに類似するもの)、そして次に酵素系洗剤又は塩素系洗剤の一方を、次に、塩素系洗剤又は酵素系洗剤の他方を、そして最後にすすぎ助剤を注入することが好ましいであろう。更に異なる例は、最後のすすぎ助剤注入区間よりも前に、抗石灰スケール剤を注入する区間を含む。更に異なる例においては、添加剤(例えば、すすぎ助剤)を、塩素系洗剤又は酵素系洗剤と同時に注入することが好ましいであろう。当業者は、他の多くの区間の組み合わせを想定でき、これらの全てが本発明の範囲内にあることを認識するであろう。
【0059】
機械内に注入される処理剤によっては、最後のすすぎ区間又は区域に先立って、好ましくは、第1の洗浄区間又は洗浄区域に先立って、洗剤を注入することができる。
【0060】
自動式洗浄機は、自動式皿洗い機であることが最も好ましい。
【0061】
随意的に、自動式皿洗い機の内部に複数の装置を設けることができ、各々の装置は処理組成物を保持/注入するための複数のチャンバを有する。
【0062】
装置のチャンバは、少なくとも2つの異なる処理組成物を含むことが最も好ましい。随意的に、各々の処理組成物は、互いに異なる処理組成物とすることができる。
【0063】
処理組成物は、単一の処理剤又は処理組成物から成ること、代替的には、複数の処理剤又は処理組成物から成ることができる。
【0064】
別々のチャンバに独立して収容することができる処理剤の種類としては、酵素系洗剤、塩素系/過酸化剤系洗剤、水処理剤、すすぎ助剤、抗石灰スケール除去剤、消毒剤、香料、及び表面修復剤を挙げることができる。
【0065】
これらのチャンバを個別に作動させることによって、装置は、(全体のレベル及びその内容物に関し)経験した洗浄状態に応じて、洗剤組成物を洗浄サイクルの様々な時点においてインテリジェント注入でき、それによって、洗浄性能を改善できることが分かっている。
【0066】
典型的な皿洗いサイクルは、前すすぎ区間、洗浄区間、さらに2つの洗浄区間、最終的な乾燥区間から構成される。幾つかの皿洗い機は、処理区間(例えば、水処理剤注入区間又は抗石灰スケール注入区間)のような、追加の区間を備えることができる。皿洗い機内のタイミング装置は、全ての電子回路を正確に制御して、各区間に関連する構成要素を作動させる。
【0067】
前すすぎ区間で作動するカートリッジ式チャンバは、酵素系洗剤及び/又は界面活性剤及び/又は石鹸充填剤を含むことが好ましい。
【0068】
洗浄区間で作動する複数のカートリッジ式チャンバは、塩素系/過酸化剤系洗剤、酵素系洗剤、界面活性剤、石鹸充填剤、艶出し剤を独立に含むことが好ましい。
【0069】
すすぎ区間で作動するカートリッジ式チャンバは、すすぎ助剤を含むことが好ましい。
【0070】
処理区間で作動するカートリッジ式チャンバは、抗石灰スケール剤又は水処理剤を含むことが好ましい。
【0071】
この概念を明確に示すために、本発明の方法による一般的な皿洗い機内でのカートリッジの動作を以下に示す。
【0072】
典型的な多段式皿洗い機に使用するために、カートリッジは、前述のサイクルの各々に対して1つずつ、4つのチャンバを備える。各々のカートリッジチャンバは、他のカートリッジチャンバとは独立して充填されるか、部分的に充填されるか、或いは空にされる。各々のカートリッジに対する充填は、皿洗い機のサイクルの性質、例えば、特定の区間が前述のサイクルに存在するかどうか、というようなことに依存して行うことができる。代替的に、消費者は、洗浄される物品でのニーズ及び各々のチャンバに加えられる処理組成物の量に関して、何らかの影響を与えることができる。
【0073】
カートリッジはまた、処理剤が必要に応じて各々のカートリッジチャンバに加えられた状態で、商業的に販売されるようにすることができる。
【0074】
通常は、(前すすぎ区間において作動する)チャンバ1は、酵素系洗剤を含み、(洗浄区間において作動する)チャンバ2は、塩素系洗剤を含み、(すすぎ区間において作動する)チャンバ3は、すすぎ助剤を含み、(処理区間において作動する)チャンバ4は、水処理剤を含む。チャンバ1、チャンバ2、チャンバ3、及びチャンバ4は、皿洗い機サイクルの間に順番に作動して、それぞれの内容物を(存在する場合)所定の区間に機械に注入するが、単一のチャンバのみが作動し、その中の物質がその区間において機械に注入され、前の段階が完了するまでは他のどのチャンバも作動せず、他のどの物質も機械に注入されないようになっている。
【0075】
自動式皿洗い機に見られる、典型的な予めプログラムされたサイクルは、「HEAVY」および「CHINA CRYSTAL」を含む。これらの及び他の自動式皿洗い機のサイクルの中には(例えば使用者が選択できる)、選択肢の配列がある。選択肢の例は、「DELAY START」、「AIR DRY」、「LOW ENERGY RINSE」、「HIGH TEMPO WASH」、及び「CHANCEL DRAIN」である。
【0076】
各々のサイクルが、例えば「HEAVY」サイクルのために、独自の処理剤分配必要条件をもつことができ、この場合、最初に前すすぎ剤を注入し、次に、酵素系洗剤を注入し、その次に塩素系洗剤を注入し(もしくはこの逆)、そして最後に抗石灰スケール剤を注入することが好ましいか又は必須である。
【0077】
他の例においては、「CHINA CRYSTAL」サイクルのためには、最初に前すすぎ剤を注入し、次に、酵素系洗剤(又は塩素系洗剤)を注入し、その次に塩素系洗剤(又は酵素系洗剤)を注入し、そして最後に抗石灰スケール剤を注入することが好ましいか又は必須である。
【0078】
当業者は、処理剤の必要な数及び種類を容易に選択することができるであろう。
【0079】
典型的な自動式皿洗い機に関しては、洗浄される物品及び/又は処理される物品を機械に注入して、洗浄機の扉を閉じて使用者が特定のサイクルを選択すると(事前にプログラムされた又はプログラムされた)、以下の事象が生じる。
【0080】
(1)ドアをラッチすることによって、タイマ及び他の制御手段が作動する。使用者は、皿洗い機の前方パネルのボタンを押すこと及び/又はダイヤルを回すことによって、サイクルを選択する。
【0081】
(2)タイマは水入口用バルブを開き、皿洗い機内の水槽の水が適切なレベルに達したとき、水入口用バルブを閉じる。タイマは、次に進んでモータ駆動ポンプを作動させ、該モータ駆動ポンプが、ポンプハウジングを通して水をスプレーアーム及びタワーに強い勢いで送り、スプレーアームを回転させて皿に水を噴霧する。
【0082】
(3)水が食べかすによって汚れ始めると、水は濾過システムの中を通って循環し、水から食べかすを除去する。
【0083】
(4)すすぎ区間の終了時に、タイマは、機械に対し、水を排除して家庭の排水システムに流すように信号を送る。サイクルが他のすすぎ区間を必要とする場合には、タイマは、主洗浄区間に入る前に、水の再充填、すすぎ、及び排水を行うように機械を作動させる。
【0084】
(5)主洗浄区間において、タイマは洗剤用分配器に信号を送り、分配器を開いてその内容物を水が充満された水槽に排出する。
【0085】
(6)湯又は洗剤は、機械全体にわたってポンプ送給され、皿及び器具についた汚れを分解して遊離させる。タイマは、ポンプに指示を出して、水槽を排水し、最終的なすすぎ区間のために清浄な温水を再充填する。
【0086】
(7)最終的すすぎ区間が終了すると、自動的に乾燥区間が始まる。
【0087】
当然のことながら、上述のサイクル中の特定の時点で、すすぎ、洗浄、消毒、水処理、及び処理剤が意図する他の作業を行うために、本明細書に記載の処理剤を洗浄機に注入することができる。
【0088】
例えば、区間(2)において、何らかの水硬度の問題に対処するために水処理剤を洗浄機に注入することができる。もちろん、このことは個々の使用者の水質によって異なる。また、その後、すすぎ助剤を注入することもできる。
【0089】
例えば、区間(5)において、最初に酵素系洗剤を洗浄機に注入して作用できるようにしてもよい。その場合、短いすすぎを行う区間(5A)が想定でき、次いで、区間(5B)で塩素系洗剤を注入する。その後、区間(6)が続く。
【0090】
前述の通り、サイクルを規定するために、様々な順序で、様々な異なる区間をセットすることができる。洗浄機製造業者が様々なサイクルを予めプログラムすること、又は使用者がプログラムすることが可能である。さらに考えられることは、洗浄機内に、投入物の荷重及び汚れの荷重を検知することができるセンサを設けることである。そのようにすることで、注入される処理剤の量を、荷重要求に合わせて変更することができる。
【0091】
実際には、洗浄機の使用者は洗浄物を洗浄機に投入する。予めプログラムされたサイクルを選択するか、又はサイクルを構成する区間を選択した後、洗浄機を作動させる。
【0092】
水硬度センサを使用することができる。水硬度センサは、イオン選択性電極、又は水中のカリウム及び/又はマグネシウムの量を計測できる検知器とすることができる。水の硬度に応じて適切な量の水処理剤を加えることができるように、センサを前もって調整することができる。水の硬度は、米国の屋内及び水質委員会によって分類されており、軟水の範囲(0−17mg/1又はppmの硬度)、中程度の硬水の範囲(60−120mg/1又はppmの硬度)、硬水の範囲(120−180mg/1又はppmの硬度)、非常に硬い硬水の範囲(180mg/1又はppm以上の硬度)に分類される。流入する水を適切な水硬度に調整するために加える必要のある水処理剤の量は、センサ内にプログラムすることができる。さらに、種々の異なる種類の水処理剤が入手可能であり、カートリッジに収容された洗剤を識別する製造業者のセンサによって、カートリッジ内の水処理剤を識別するようにセンサをプログラムすることができる。
【0093】
水の硬度が適切な程度に調整されると、洗浄機に配置された赤外線及び/又は紫外線センサが、投入物を検査して、投入物の種類及び品質を判別することができる。例えば、赤外線及び/又は紫外線センサは、投入物を検査するための信号を出すことができる。前述のように、酵素感受性の汚れ及び除去することが困難な汚れの両方を検出することができる。主な汚れが、除去することが困難な汚れ、例えば、トマト系の汚れであることを示す赤い色素を含む汚れであると分かれば、前述のように塩素系洗剤を用いて処理することが好ましい。これが検知された場合には、センサに接続された論理スイッチが、塩素系洗剤を含むチャンバに信号を送って塩素系洗剤を分配させ、それによって、第1の洗浄区間を開始することができる。次に、この洗浄区間の終了後、キャビティ内の水が排出され、新しい水が投入されて、水硬度を再び検査し、次に、酵素系洗剤を機械に投入して第2の洗浄区画を開始することができる。この洗浄区間の終了後、キャビティ内の水を除去して、すすぎ区画を開始することができる。
【0094】
当業者は、赤外線及び/又は紫外線センサが、タンパク質を多く含む汚れ(例えば卵)を検出したとき、所定量の酵素系洗剤のキャビティ内に注入して、第1の洗浄区間を実行できることを理解できるはずである。第2の洗浄区画は、塩素系洗剤を用いて行われる。