【0011】
本願発明は、(1)波長多重光を増幅する光半導体増幅器と、前記光半導体増幅器によって増幅された波長多重光を異なる波長の複数の信号光に分波する光分波器と、前記光分波器により分波された各信号光をそれぞれ受光する複数の受光素子と、前記光分派器の前段の前記波長多重光の強度を検出する検出器と、前記検出器の検出結果に対応した前記光半導体増幅器の駆動電流の上限値を格納するメモリと、前記検出器の検出結果を参照して、前記メモリから前記上限値を取得し、これを参照して前記光半導体増幅器の駆動電流を決定するコントローラと、を備える光受信器である。
(2)前記上限値は、前記複数の受光素子のすべてについて、そのダイナミックレンジを超えない範囲、あるいは、前記受光素子それぞれに接続された出力回路のすべてについて、そのダイナミックレンジを超えない範囲のいずれかの条件を満たしてもよい。
(3)前記コントローラは、さらに前記光半導体増幅器に入力する駆動電流に下限値を設定していてもよい。
(4)前記検出器は、前記光半導体増幅器に入力される前記波長多重光の強度を検出してもよい。
(5)他の発明は、波長多重光を増幅する光半導体増幅器と、前記光半導体増幅器によって増幅された波長多重光を異なる波長の複数の信号光に分波する光分波器と、前記光分波器の分波により得られた各信号光をそれぞれ受光する受光素子と、前記光分波器の前段の前記波長多重光の強度を検出する検出器と、を備える光受信モジュールである。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係る光受信器100の全体構成を説明するためのブロック図である。光受信器100は、波長多重光から各波長の信号光を得る装置である。
図1に示すように、光受信器100は、筐体に、入力端10、ビームスプリッタ20、受光素子30、コントローラ40、光半導体増幅器50、光分波器60、複数の受光素子70、複数の出力回路80、複数の出力端90などを備える。
【0014】
入力端10は、外部の光ファイバ等に接続されている。入力端10には、外部から波長多重光が入射される。ビームスプリッタ20は、入力端10に入射された波長多重光を分岐し、一方の分岐光を参照光として受光素子30に入射し、他方の分岐光を光半導体増幅器50に入射する。受光素子30は、半導体受光素子であり、入射された参照光を光電変換することによって、当該参照光の光強度に応じた電流を出力する。本実施例においては、ビームスプリッタ20および受光素子30が、光分派器の前段の波長多重光の強度を検出する検出器として機能する。
【0015】
コントローラ40は、CPU(中央演算装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)などから構成されている。コントローラ40は、ビームスプリッタ20の分岐比と受光素子30が出力する電流とに応じて、光半導体増幅器50に入射される波長多重光の光強度が所定値になるように、光半導体増幅器50に入力する駆動電流を制御する。それにより、光半導体増幅器50の利得(ゲイン)が制御される。
【0016】
光半導体増幅器50は、コントローラ40から入力される駆動電流に応じて、入射される波長多重光を増幅する。光分波器60は、光半導体増幅器50で増幅された波長多重光を、異なる波長の複数の信号光に分波する。本実施例においては、光半導体増幅器50は、一例として、入射される波長多重光を4つの波長の信号光に分波する。各信号光は、レーン0〜レーン3を介してそれぞれ異なる受光素子70に入射される。受光素子70は、各レーンに設けられており、本実施例においては4つ設けられている。
【0017】
各受光素子70は、半導体受光素子であり、入射される信号光を光電変換することによって、信号光の光強度に応じた電流を、それぞれ異なる出力回路80に出力する。出力回路80および出力端90は、受光素子70と同数設けられている。出力回路80は、例えば、TIA(トランスインピーダンスアンプ)である。各出力回路80は、入力される電流を電圧信号に変換し、それぞれ異なる出力端90を介して外部に出力する。
【0018】
本実施例によれば、光半導体増幅器50の前段で波長多重光の光強度を検出するための受光素子30が設けられ、光分波器60の前段に光半導体増幅器50が設けられていることから、各受光素子70で受光する信号光の強度を適切に制御することができる。なお、コントローラ40は、端子等を介して光受信器100の外部に設けられていてもよい。この場合、光受信器100は、光受信モジュールと称することもできる。
【0019】
次に、コントローラ40による光半導体増幅器50のゲイン制御の詳細について説明する。
図2は、波長多重光に含まれる各信号光の光強度を示す図である。
図2において、レーン0〜レーン3は、光半導体増幅器50で増幅していないと仮定した場合の、各レーンの信号光の光強度である。
図2に示すように、波長多重光に含まれる各信号光においては、光強度にばらつきがみられない。しかしながら、光半導体増幅器50のゲインには、波長に応じてばらつきが生じる。これは、入力光の増幅に寄与する光半導体増幅器の自然放出光(ASE:amplified spontaneous emission)のスペクトルが均一でない為である。
【0020】
図3(a)は、各信号光の波長と、光半導体増幅器50に入力される駆動電流と、各信号光が増幅される際のゲインとの関係を示す図である。
図3(a)に示すように、同じ駆動電流に対して、波長ごとにゲインが変化する。すなわち、光半導体増幅器50を用いた場合、波長が異なる各信号光に対して同じゲインで増幅することは困難である。
【0021】
図3(b)〜
図3(d)は、光半導体増幅器50の駆動電流の相違に起因する、ゲインの相違を示す図である。
図3(b)〜
図3(d)は、それぞれ駆動電流1〜駆動電流3(駆動電流1<駆動電流2<駆動電流3)に対する、各信号光のゲインを示す。
図3(b)〜
図3(d)に示すように、各信号光のゲインにはばらつきが現れている。このばらつきは、駆動電流が大きいほど大きくなっている。
【0022】
受光素子30の出力に応じて、あらかじめ定められた所定の光強度が光半導体増幅器50から出力されるように光半導体増幅器50の駆動電流を制御すると、いずれかの信号光が過剰に増幅されるおそれがある。ここで、受光素子70のダイナミックレンジについて説明する。
図4は、受光素子70のダイナミックレンジを示す図である。一例として、受光素子70のダイナミックレンジは、−10dBm〜5dBmである。ダイナミックレンジを超えた信号光が受光素子70に入力されると、当該信号光のエラーレートが増大してしまう。なお、信号光の光強度が受光素子70のダイナミックレンジを超えなくても、出力回路80のダイナミックレンジまたは出力端90に接続される外部の入力回路のダイナミックレンジを超えると、エラーレートが増大してしまう。したがって、信号光の光強度に上限値を設定することが好ましい。
【0023】
そこで、コントローラ40は、光半導体増幅器50に入力する駆動電流に上限値を設ける。具体的には、
図5に示すように、コントローラ40は、上記上限値をメモリ95に格納しておき、当該上限値を参照することによって、光半導体増幅器50の駆動電流が上記上限値を超えないようにする。それにより、少なくともいずれかの受光素子70に入射される信光光強度が過度に大きくなることを抑制することができる。
【0024】
上記上限値は、受光素子70のダイナミックレンジを超えない範囲で設定されていてもよく、出力回路80のダイナミックレンジまたは出力端90に接続される外部の入力回路のダイナミックレンジを超えない範囲で設定されていてもよい。
図6は、上記上限値の決定フローの一例である。
図6に示すように、コントローラ40は、光半導体増幅器50の駆動電流を上昇させる(ステップS1)。次に、コントローラ40は、出力回路80のいずれかで出力がダイナミックレンジを超えたか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2で「No」と判定された場合、ステップS1が実行される。ステップS2で「Yes」と判定された場合、コントローラ40は、その直前の当該駆動電流を上限値としてメモリ95に格納する(ステップS3)。この上限値の決定フローを、入力光強度を変更して複数回実行する。これにより、入力光強度毎に駆動電流の上限値が取得できる。入力光強度の変更間隔が小さいほど、高精度な上限値の設定が可能となり、入力光強度の変更間隔が大きいほど、上限値を格納するメモリ容量が小さくて済む。実際の実行にあたっては、精度とメモリ容量から最適な入力光強度の変更間隔を決定すればよい。なお、ステップS2において、各レーンのエラーレートが上限を超えたか否かを判定してもよい。
【0025】
または、コントローラ40は、メモリ95に、各信号光の波長と、光半導体増幅器50に入力される駆動電流と、各信号光が増幅される際のゲインとの関係を格納しておき、当該関係から上限値を算出してもよい。
図7は、この場合のフローチャートの一例である。
図7に示すように、コントローラ40は、受光素子30の出力電流に応じて、光半導体増幅器50に入射される波長多重光の強度を検出する(ステップS11)。
【0026】
次に、コントローラ40は、ステップS11で検出された強度を4等分する(ステップS12)。4等分は、dBで6dBダウンに相当する。次に、コントローラ40は、ステップS12で得られた強度と、受光素子70のダイナミックレンジの上限である最大受信感度レベル(オーバーロード出力)との差を計算する(ステップS13)。次に、コントローラ40は、ステップS13で計算された差がゼロ以下にならないように、各信号光の波長と、光半導体増幅器50に入力される駆動電流と、各信号光が増幅される際のゲインとの関係から光半導体増幅器50の駆動電流の上限値を決定する(ステップS14)。ステップS14で得られた上限値はメモリ95に格納され、その後においては、コントローラ40は、当該上限値を光半導体増幅器50の駆動電流の上限値として用いる。
【0027】
なお、コントローラ40は、光半導体増幅器50の駆動電流に下限値を設定してもよい。
図8は、この場合のフローチャートの一例である。
図8に示すように、コントローラ40は、受光素子30の出力電流に応じて、光半導体増幅器50に入射される波長多重光の強度を検出する(ステップS21)。次に、コントローラ40は、ステップS21で検出された強度を4等分する(ステップS22)。4等分は、dBで6dBダウンに相当する。
【0028】
次に、コントローラ40は、ステップS22で得られた強度と、受光素子70のダイナミックレンジの下限である最小受信感度レベルとの差を計算する(ステップS23)。次に、コントローラ40は、ステップS23で計算された差がゼロ以下にならないように、各信号光の波長と、光半導体増幅器50に入力される駆動電流と、各信号光が増幅される際のゲインとの関係から光半導体増幅器50の駆動電流の下限値を決定する(ステップS24)。ステップS24で得られた下限値はメモリ95に格納され、その後においては、コントローラ40は、当該下限値を光半導体増幅器50の駆動電流の下限値として用いる。
【0029】
このように、各受光素子70が受光する信号光の強度がダイナミックレンジ内に入ることによって、エラーレートの低下を抑制することができる。なお、
図3(a)の例は一例であり、所定の波長においてゲインにピークが現れる場合もある。また、信号光の波長とゲインとの関係は、駆動電流に応じて変化する場合もある。