特許第6303262号(P6303262)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6303262
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 25/08 20060101AFI20180326BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20180326BHJP
   F16C 33/60 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   F16C25/08 Z
   F16C19/18
   F16C33/60
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-8498(P2013-8498)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-139460(P2014-139460A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関本 浩
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−014502(JP,U)
【文献】 特開2001−173669(JP,A)
【文献】 特開2001−065562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 21/00−27/08
F16C 33/30−33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に複列の内輪軌道が形成され中心軸を水平方向に向けた状態で配置される回転輪としての内輪と、
水平方向に並べて配置され、それぞれの内周に前記内輪軌道に対向している外輪軌道が形成された一対の固定輪としての外輪と、
前記内輪軌道と前記外輪軌道との間に介在している複数の転動体と、
前記一対の外輪の外周側に配置され前記一対の外輪を保持している外筒部材と、
前記外筒部材の内周面に一体に形成され、前記一対の外輪部材の軸方向間に介在配置され、前記一対の外輪が軸方向に互いに離間する方向に当該一対の外輪を押圧することで軸方向に軸受予圧を付与している環状の押圧部材と、
を備え
前記外筒部材は、半円筒状に形成され軸方向に2分割された一対の分割部材をそれぞれの分割面同士を突き合わせた状態で連結することで構成されており、
前記分割部材の分割面が鉛直方向に沿って配置されることによって、内輪の回転時に連結部に作用するモーメントを小さくしたことを特徴とする転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CTスキャナ装置のガントリ部等に使用される転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
CTスキャナ装置では、環状のガントリ部に設けられているX線発生器や検出器等を当該ガントリ部の周方向に沿って移動可能に支持するために、比較的大径の転がり軸受が用いられている。このような転がり軸受では、CTスキャナ装置の高性能化に伴う静音性や高速回転化への要求に対応するために、従来から複列のアンギュラ玉軸受が採用されることがある。
【0003】
図7は、CTスキャナ装置に用いられている従来の転がり軸受の一例を示す断面図である。図中、従来の転がり軸受100は、外輪101と、内輪102と、内外輪101,102間に複列で介在している複数の玉103とを備えており、複列のアンギュラ玉軸受を構成している。
内輪102は、外周面に複列の軌道面102a,102bを有しており、環状の内輪本体104と、内輪本体104の外周面一方端部に形成された小径部105に外嵌された環状部材106と、内輪本体104の一方端面に固定され環状部材106を他方側に押圧する押さえ部材107とを備えている。
環状部材106は、その外周面に軌道面102bが形成されているとともに、小径部105に比較的緩いはめあいで外嵌されており、軸方向に移動可能とされている。
押さえ部材107は、内輪本体104にボルト108によって固定されており、マイナスすきまの場合、ボルト108が締め込まれることで環状部材106を軸方向他方側に押圧し、軸受予圧を付与している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−3152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に示す転がり軸受100の軸受予圧は、押さえ部材107を固定しているボルト108の締め込みによって調整することができる。
ボルト108は、比較的大径な転がり軸受100の押さえ部材107を固定するために、周方向に沿って複数個設けられている。
転がり軸受100の軸受予圧は、周方向に均等となるように調整する必要があるので、複数個のボルト108それぞれを相互に調整しながら締め付けなければならないという煩雑な作業を行う必要がある。
【0006】
これに対し、互いに隣接しているボルト108の周方向の間隔を比較的広めに設定すれば、ボルト108の個数を減らすことができ、複数個のボルト108の締め付け調整を、より容易にできることが考えられる。
【0007】
しかし、互いに隣接しているボルト108の周方向の間隔を広くすると、ボルト108で締め込まれている部分と、互いに隣接しているボルト108同士の中間部分であって比較的ボルト108の締め込みが緩い部分との間で、軸受予圧が不均一となり、環状部材106に軸方向へのうねりが生じ易くなる。
環状部材106にうねりが生じると、軌道面102bにもうねりが生じ、玉103が転走する際に異常音が発生したり、玉103が軌道面内でスリップし異常摩耗の原因となる。
【0008】
このため、うねりの発生を抑制できる程度にボルト108の周方向の間隔を狭くすべく、ボルト108の個数を増やさざるを得ず、転がり軸受100に多数のボルト108を設けるための加工に必要な工数や、多数のボルト108それぞれを相互に調整しながら締め付ける作業に必要な工数等、転がり軸受100を製造するために、非常に多くの工数を要するという問題を有していた。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、異常音や異常摩耗の発生を抑制しつつ、製造工数を低減することができる転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、外周に複列の内輪軌道が形成され中心軸を水平方向に向けた状態で配置される回転輪としての内輪と、
水平方向に並べて配置され、それぞれの内周に前記内輪軌道に対向している外輪軌道が形成された一対の固定輪としての外輪と、前記内輪軌道と前記外輪軌道との間に介在している複数の転動体と、前記一対の外輪の外周側に配置され前記一対の外輪を保持している外筒部材と、前記外筒部材の内周面に一体に形成され、前記一対の外輪部材の軸方向間に介在配置され、前記一対の外輪が軸方向に互いに離間する方向に当該一対の外輪を押圧することで軸方向に軸受予圧を付与している環状の押圧部材と、を備え、前記外筒部材は、半円筒状に形成され軸方向に2分割された一対の分割部材をそれぞれの分割面同士を突き合わせた状態で連結することで構成されており、前記分割部材の分割面が鉛直方向に沿って配置されることによって、前記内輪の回転時に連結部に作用するモーメントを小さくしたことを特徴としている。
【0011】
上記構成の転がり軸受によれば、環状の押圧部材を一対の外輪の軸方向間に介在させて軸受予圧を付与しているので、上記従来例のように、軸受予圧を付与するために多数のボルトを設けかつそれら多数のボルトそれぞれを相互に調整するといった煩雑な作業を行う必要がなく、容易に軸受予圧を付与できる。この結果、当該転がり軸受の製造工数を低減することができる。
また、環状の押圧部材を一対の外輪の間に介在させることで軸受予圧を付与するので、外輪に生じるうねりを抑制しつつ軸受予圧を付与することができる。この結果、うねりに起因する異常音や異常摩耗の発生を抑制することができる。
【0012】
押圧部材が外筒部材の内周面に一体に形成されていれば、転がり軸受にスラスト方向の荷重が作用したとしても、外筒部材が軸方向に移動するのを防止できるとともに、押圧部材を一対の外輪の軸方向間に介在配置するのを容易とすることができるが、この場合、外筒部材が筒状で一体に形成されていると、当該外筒部材を一対の外輪の外周面に配置することが困難となり、転がり軸受として組み立てることができない場合がある。
このため、上記転がり軸受において、前記押圧部材が、前記外筒部材の内周面に一体に形成されている場合には、前記外筒部材は、周方向に複数に分割された分割部材を連結することで構成されている。これにより、押圧部材を外筒部材に一体に形成したとしても、転がり軸受として組み立て可能としつつ、スラスト方向の荷重に対して、外筒部材が軸方向に移動するのを防止できる。
【0013】
上記転がり軸受において、前記外筒部材は、半円筒状に形成された一対の前記分割部材で構成され、当該外筒部材を一対の前記分割部材に分割している分割面が鉛直方向に沿うように配置されていることが好ましく、この場合、転がり軸受が、当該転がり軸受に取り付けられる部材を回転可能に支持したときに、連結部において一対の分割部材が互いに離間する方向に作用する荷重を小さくできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の転がり軸受によれば、異常音や異常摩耗の発生を抑制しつつ、製造工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る転がり軸受の断面図である。
図2】(a)は、外筒部材6の一部外観図であり、(b)は、連結部を径方向外側からみたときの外観図である。
図3】(a)は、連結部の他の態様を示している外筒部材6の要部外観図であり、(b)は、連結部を径方向外側からみたときの外観図である。
図4】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る転がり軸受の要部断面図であり、(b)は、押圧部材を示した外観図である。
図5】(a)は、互いに隣接している円弧状部材同士の連結部の一例を示す図であり、(b)は、外筒部材を外輪の外周面に配置する際の態様を示す断面図である。
図6】(a)は、本発明の第3の実施形態に係る転がり軸受の断面図であり、(b)は(a)中の要部断面図である。
図7】従来の転がり軸受の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る転がり軸受の断面図である。
図1中、本実施形態の転がり軸受1は、内輪2と、この内輪2と同心に配置された一対の外輪3と、内輪2及び外輪3の間に配置された複数の転動体としての玉4と、内輪2及び外輪3の間に配置され複数の玉4を保持する環状の保持器5と、一対の外輪3の外周側に配置された外筒部材6と、外筒部材6の内周面の軸方向両端に設けられて内外輪2,3の環状開口部を塞ぐ環状のシール板7とを備えている。
【0017】
内輪2は、軸受鋼や機械構造用合金鋼等を用いて形成された環状の部材であり、外周面には複数の玉4が転動する内輪軌道2aが複列で形成されている。また、内輪2には、軸方向に貫通した貫通孔2bが、周方向に沿って複数設けられている。これら貫通孔2bには、内輪2に装置や部材を固定したり、当該内輪2を装置や部材に固定するための固定ボルトが挿通される。
一対の外輪3も内輪2と同様、軸受鋼や機械構造用合金鋼等を用いて形成された環状の部材であり、内周面には複数の玉4が転動する外輪軌道3aが形成されている。一対の外輪3は、外輪軌道3aが内輪軌道2aに対向するように、軸方向に並べて配置されている。
【0018】
複数の玉4は、軸受鋼等を用いて形成された部材であり、内外輪2,3それぞれの軌道2a,3aの間に転動自在に介在している。玉4は、ラジアル方向に対して所定の傾斜角度をもって内輪軌道2a及び外輪軌道3aに接触しており、転がり軸受1は、複列のアンギュラ玉軸受を構成している。
本実施形態では、一対の外輪3は、互いの背面3b同士が軸方向内方に向くように配置されており、転がり軸受1は、背面組み合わせ型の複列のアンギュラ玉軸受を構成している。
従って、複列の内輪軌道2aが形成されている内輪2は、正面同士を軸方向内方に向けて組み合わせた一対の単列の内輪を一体に形成したときの形状と同様の形状となっている。
【0019】
外筒部材6は、軸受鋼や機械構造用合金鋼等を用いて形成された筒状の部材であり、一対の外輪3の外周側に配置され、これら一対の外輪3を保持している。外筒部材6の内周面6aには、押圧部材10が一体に形成されている。外筒部材6は、押圧部材10を一対の外輪3の軸方向間に介在させかつ、内周面6aが外輪3の外周面3cに外嵌した状態で一対の外輪3を保持している。これによって、外筒部材6は、一対の外輪3を一体に保持している。
外筒部材6には、軸方向に貫通した貫通孔6bが、周方向に沿って複数設けられている。これら貫通孔6bには、外筒部材6に装置や部材を固定したり、当該外筒部材6を装置や部材に固定するための固定ボルトが挿通される。
【0020】
内輪2、及び外筒部材6に保持された一対の外輪3は、上記構成によって、相対回転自在である。また、転がり軸受1は、内輪2の貫通孔2b、及び外筒部材6の貫通孔6bに挿通される固定ボルトによって装置等に組み込まれる。
【0021】
本実施形態の転がり軸受1は、例えば、CTスキャナ装置の環状のガントリ部に組み込まれる。この場合、外筒部材6は、貫通孔6bに挿通される固定ボルトによって前記ガントリ部の架台に固定される。内輪2には、CTスキャナ装置の一部であるX線発生器や検出器等が内輪2の貫通孔2bに挿通される固定ボルトによって固定される。これによって、転がり軸受1は、CTスキャナ装置の環状のガントリ部に組み込まれ、ガントリ部に設けられているX線発生器や検出器等を当該ガントリ部の周方向に沿って移動可能に支持する。
【0022】
外筒部材6に一体に形成されている押圧部材10は、外筒部材6の内周面6aの軸方向ほぼ中央から径方向内側に向かって環状に突設されている。
押圧部材10は、その両側面10aが一対の外輪3の背面3bに当接した状態で、一対の外輪3の軸方向間に介在配置されている。
押圧部材10は、一対の外輪3の軸方向間に介在配置されることで、一対の外輪3が軸方向に互いに離間する方向に一対の外輪3を押圧しており、これによって、内外輪2,3に対して軸方向に軸受予圧を付与している。
【0023】
押圧部材10の軸方向の幅寸法は、当該押圧部材10が一対の外輪3の軸方向間に介在配置されたときに、内外輪2,3に対して適切な軸受予圧を軸方向に与えるように押圧することができる寸法に設定されている。
【0024】
上記構成の転がり軸受1によれば、押圧部材10を一対の外輪3の軸方向間に介在させて軸受予圧を付与しているので、上記従来例のように、軸受予圧を付与するために多数のボルトを設けかつそれら多数のボルトそれぞれを相互に調整するといった煩雑な作業を行う必要がなく、容易に軸受予圧を付与できる。この結果、当該転がり軸受1の製造工数を低減することができる。
また、環状の押圧部材10を一対の外輪3の間に介在させることで軸受予圧を付与するので、外輪3に生じるうねりを抑制しつつ軸受予圧を付与することができる。この結果、うねりに起因する異常音や異常摩耗の発生を抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態では、押圧部材10が、外筒部材6の内周面6aに一体に形成されているので、転がり軸受1にスラスト方向の荷重が作用したとしても、外筒部材6が軸方向に移動するのを防止できるとともに、押圧部材10を一対の外輪3の軸方向間に介在配置するのを容易とすることができる。
【0026】
この場合、例えば、押圧部材10が一体に形成された外筒部材6が筒状一体であるとすると、当該外筒部材6を一対の外輪3の外周面3cに配置することが困難となり、転がり軸受1として組み立てることができない場合がある。
このため、本実施形態の転がり軸受1では、外筒部材6は、周方向に分割された分割部材を連結することで構成されている。
【0027】
図2(a)は、外筒部材6の一部外観図である。図に示すように、外筒部材6は、当該外筒部材6を径方向で2分割することで半円筒状に形成された一対の分割部材20で構成されている。一対の分割部材20は、2箇所の連結部Rによって連結されている。
ここで、本実施形態の転がり軸受1を、当該転がり軸受1が組み込まれる装置に組み込む場合、外筒部材6を一対の分割部材20に分割している分割面が鉛直方向に沿うように外筒部材6を配置する。
このようにすることで、転がり軸受1が、当該転がり軸受1の軸方向中心からオフセットした位置で、当該転がり軸受1に取り付けられる部材を回転可能に支持したとしても、2箇所の連結部Rに作用するモーメントを小さくすることができ、一対の分割部材20の端部が互いに離間する方向に作用する荷重を小さくできる。
【0028】
図2(b)は、連結部Rを径方向外側からみたときの外観図である。一対の分割部材20は、連結部Rにおいて、互いの端面21を突き合わせた状態で連結ボルト22、及び連結ナット23を締め付けることで互いに連結されている。
分割部材20の端部には、外周面から径方向内側に凹んだ凹部24が形成されている。凹部24には、端面21とほぼ平行に形成された平面部24aが形成されている。
端面21と平面部24aとによって形成されている平板部25には、連結ボルト22を周方向に沿って挿通するための貫通孔25aが形成されている。貫通孔25aは、当該貫通孔25aに挿通される連結ボルト22、及び連結ナット23が凹部24の内部に収容可能な位置に設けられている。よって、連結ボルト22、及び連結ナット23は、外筒部材6の外周面よりも内側に収められている。
【0029】
貫通孔25aに挿通された連結ボルト22は、連結ナット23との間で、一対の分割部材20それぞれの平板部25を重ね合わせた状態で周方向に沿う方向に挟持し、締め付けている。これにより、一対の分割部材20は、連結部Rにおいて、互いの端面21を突き合わせた状態で互いに連結されている。
【0030】
本実施形態の転がり軸受1は、以下のようにして組み立てることができる。すなわち、まず、外輪3、保持器5、及び玉4を、内輪2に対して一列づつ組み込む。
次いで、一対の分割部材20を、外輪3の径方向両側から取り付ける。このとき、押圧部材10を一対の外輪3の軸方向間に介在配置させつつ、一対の分割部材20を外輪3の径方向両側から挟み込むように取り付ける。
その後、一対の分割部材20を互いに連結することで、転がり軸受1として組み立てることができる。
【0031】
本実施形態の転がり軸受1では、上記のように外筒部材6が、周方向に複数に分割した分割部材20を連結することで構成されているので、押圧部材10を外筒部材6に一体に形成したとしても、転がり軸受1として組み立て可能としつつ、スラスト方向の荷重に対して、外筒部材6が軸方向に移動するのを防止できる。
また、本実施形態では、一対の分割部材20が互いの端面21を突き合わせた状態で互いに連結されているので、精度よく連結でき精度の高い外筒部材6を得ることができる。
【0032】
なお、本実施形態では、外筒部材6を径方向で2分割することで半円筒状の分割部材20を連結した場合を示したが、例えば、外筒部材6は、当該外筒部材6を周方向に3つ以上に分割した分割部材を連結して構成してもよい。
また、上記実施形態では、連結部Rにおいて、連結ボルト22、及び連結ナット23を周方向に沿う方向に締め付けて連結する場合を示したが、連結ボルト22、及び連結ナット23を周方向に交差する方向に締め付けるように構成してもよい。
【0033】
図3(a)は、連結部Rの他の態様を示している外筒部材6の要部外観図であり、図3(b)は、連結部Rを径方向外側からみたときの外観図である。
この例では、一対の分割部材20の端面21には、径方向に延びる板状の突設部28が形成されており、突設部28を互いに重ね合わせた状態で連結ボルト22、及び連結ナット23を締め付けることで互いに連結されている。
【0034】
突設部28は、側面28aが分割部材20のほぼ軸方向中心となるように形成されており、一対の分割部材20は、互いの突設部28の側面28a同士を当接させるとともに、突設部28の先端面28bを接続する相手側の分割部材20の端面21に当接させた状態で連結されている。
また、突設部28には、連結ボルト22を周方向に交差する方向に挿通するための貫通孔28cが形成されている。
【0035】
貫通孔28cに挿通された連結ボルト22は、連結ナット23との間で、一対の分割部材20それぞれの突設部28を重ね合わせた状態で周方向に交差する方向に挟持し、締め付けている。このように、この例では、連結ボルト22、及び連結ナット23を周方向に交差する方向に締め付けて連結する構成とされている。
【0036】
図4(a)は、本発明の第2の実施形態に係る転がり軸受の要部断面図である。
本実施形態と第1の実施形態との相違点は、押圧部材10を外筒部材6とは別部材として形成している点、及び外筒部材6が円筒状の部材として一体に形成されている点である。
図中、本実施形態の外筒部材6の内周面6aには、軸方向ほぼ中央に、周方向に沿って径方向外側に凹んだ溝部30が形成されている。
押圧部材10は、環状に形成されており、一対の外輪3の軸方向間に介在配置するとともに、溝部30内に嵌め込まれている。
【0037】
図4(b)は、押圧部材10を示した外観図である。図に示すように本実施形態の押圧部材10は、複数の円弧状部材31(図例では4つ)を組み合わせることで環状に構成されている。
各円弧状部材31は、互いに隣接している円弧状部材31との間で、弾性的に伸縮可能に連結されている。これによって、押圧部材10は、外径寸法が縮径可能とされている。押圧部材10は、外部から縮径するように押圧されることで、外輪3の外径寸法よりも小さく縮径し、押圧されない自由状態では、外輪3の外径寸法よりも大きい状態を維持する。
【0038】
図5(a)は、互いに隣接している円弧状部材31同士の連結部の一例を示す図である。
図中、互いに隣接している円弧状部材31は、その端面31a同士の間に設けられた複数本(図例では2本)のスプリング32によって連結されている。スプリング32の両端は、互いに隣接している円弧状部材31の端面31aに固定されている。
押圧部材10は、各円弧状部材31をスプリング32によって連結することで、外径寸法が縮径可能とされている。
【0039】
よって、図5(b)に示すように、外筒部材6を一対の外輪3の外周面に外嵌配置し、押圧部材10を一対の外輪3の軸方向間に配置するときは、押圧部材10の外径寸法が外輪3の外径寸法と同一又はそれよりも小さくなるように押圧部材10を縮径させる。
そして、押圧部材10を縮径させた状態で外筒部材6を外輪3の外周側に配置し、外筒部材6を軸方向に移動させる。押圧部材10は、溝部30に到達すると、弾性的に拡径して溝部30内に嵌る。
このとき、溝部30の溝深さ及び押圧部材10の径方向の厚み寸法は、押圧部材10が溝部30の底面に当接する位置まで嵌ったときに、押圧部材10の内周面10cが、外筒部材6の内周面6aよりも径方向内周側に突出して一対の外輪3の軸方向間に介在させることができるような寸法に設定されている。
【0040】
本実施形態によれば、押圧部材10を複数の円弧状部材31によって構成することでその外径寸法が縮径可能なので、外筒部材6を第1の実施形態のように分割部材20で構成された分割構造とする必要がなく、円筒状の部材として一体に形成した外筒部材6とすることができる。
【0041】
図6(a)は、本発明の第3の実施形態に係る転がり軸受の断面図であり、(b)は(a)中の要部断面図である。
本実施形態と第2の実施形態との相違点は、押圧部材10を構成している円弧状部材31が、外筒部材6側に固定されている点である。なお、図6は、理解容易とするため、玉4や、内輪2等を省略して示している。
図中、本実施形態の円弧状部材31は、周方向に所定間隔を置いて複数個配置されている。
各円弧状部材31は、一対の外輪3の軸方向間に介在配置するとともに、溝部30内に嵌め込まれている。円弧状部材31の円弧長さ、及び互いに隣接している円弧状部材31同士の周方向間隔は、各円弧状部材31が一対の外輪3の軸方向間に介在配置した状態で、環状の押圧部材10を構成する寸法に設定されているとともに、外輪3にうねりが生じたとしても、転がり軸受1を運転させたときに異常音や異常摩耗が生じない程度となるような寸法に設定されている。
【0042】
各円弧状部材31は、その外周面10bに設けられた保持ピン35によって外筒部材6に保持されている。
保持ピン35は、外筒部材6を径方向に貫通している貫通孔6cに挿通されている。保持ピン35は、一端が円弧状部材31に固定され、他端が外筒部材6の外周面に設けられた座ぐり部6dから突出している。保持ピン35の他端には、座ぐり部6dに収容されて保持ピン35が径方向内側に移動するのを制限しているナット36が螺合されている。ナット36は、円弧状部材31が内側方向に最大限突出した位置が、一対の外輪3の軸方向間に介在配置するとともに溝部30内に嵌め込まれている状態となるとなるように保持ピン35の移動を制限している。
【0043】
また、外筒部材6と、円弧状部材31の外周面10bとの間には、外筒部材6の内側方向に向けて円弧状部材31を付勢しているスプリング37が介在配置されている。
スプリング37は、保持ピン35が挿通された状態で、外筒部材6と、円弧状部材31の外周面10bとの間に介在している。
円弧状部材31は、スプリング37の付勢力によって、一対の外輪3の軸方向間に介在配置するとともに溝部30内に嵌め込まれている状態となる位置に保持される。
【0044】
よって、外筒部材6を一対の外輪3の外周面に外嵌配置し、押圧部材10を一対の外輪3の軸方向間に配置するときは、各円弧状部材31を、溝部30に押し込んで当該溝部30内に収容する。
そして、円弧状部材31を収容した状態で外筒部材6を外輪3の外周側に配置し、外筒部材6を軸方向に移動させる。各円弧状部材31は、一対の外輪3の軸方向間のすき間に到達すると、スプリング37の付勢力によって径方向内側に突出し一対の外輪3の軸方向間に介在する。
なお、外筒部材6を一対の外輪3から取り外すときは、保持ピン35を径方向外側方向に引き上げることで、各円弧状部材31を一対の外輪3の軸方向間から抜き出す。外筒部材6は、一対の外輪3の軸方向間から各円弧状部材31が抜き出されている間、一対の外輪3から取り外すことができる。
【0045】
本実施形態においても、第2の実施形態と同様、外筒部材6を第1の実施形態のように分割部材20で構成された分割構造とする必要がなく、円筒状の部材として一体に形成した外筒部材6とすることができる。
【0046】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、転がり軸受として、複列のアンギュラ玉軸受を構成した場合を例示したが、本発明は、例えば、通常、軸受予圧を付与して用いられる円すいころ軸受にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1:転がり軸受 2:内輪 2a:内輪軌道 3:外輪
3a:外輪軌道 4:玉 6:外筒部材 6a:内周面
6b:貫通孔 6c:貫通孔 10:押圧部材 20:分割部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7