【0013】
筆跡・塗布跡を形成するインキとしては、水を主媒体とする所謂水性インキ、有機溶剤を主媒体とする所謂油性インキのいずれをも使用することができる。
溶剤としては、水の他に、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ベンジルアルコール等の水溶性有機溶剤が使用できる。
着色剤としては、酸性染料、直接染料塩基性染料等の染料及び/又は各種のアゾ系顔料、ニトロソ系顔料、ニトロ系顔料、塩基性染料系顔料、酸性染料系顔料、建て染め染料系顔料、媒染染料系顔料、及び天然染料系顔料等の有機系顔料、黄土、バリウム黄、紺青、カドミウムレッド、硫酸バリウム、酸化チタン、弁柄、鉄黒、カーボンブラック等の無機顔料からなる着色剤が使用できる。その他に、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等の樹脂やヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ガーガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸等の多糖類からなる粘度調整剤、界面活性剤、防錆剤、防黴・防腐剤、場合によっては、アスコルビン酸、コウジ酸やハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、タンニン酸、没食子酸等のポリフェノール類などの還元性を有する物質などが使用できる。
着色剤として顔料を用いた場合に、顔料を安定に分散させるために分散剤を使用することは差し支えない。分散剤として従来一般に用いられているスチレンアクリル酸塩やスチレンマレイン酸塩等の水溶性樹脂もしくは水可溶性樹脂や、アニオン系もしくはノニオン系の界面活性剤など、顔料の分散剤として用いられるものが使用できる。
【実施例】
【0015】
実施例1
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)89重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%と二炭化三クロム(三津和化学薬品(株)製)3重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、240時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0016】
実施例2
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)92重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、240時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0017】
実施例3
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)92重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、288時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0018】
実施例4
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)92重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、216時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0019】
実施例5
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)92重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、168時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0020】
実施例6
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)92重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、144時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0021】
比較例1
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)89重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%と二炭化三クロム(三津和化学薬品(株)製)3重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、48時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0022】
比較例2
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)92重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、48時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0023】
インキ1
WaterBlack256L(黒色染料の14%水溶液、オリエント化学工業(株)製) 40.0重量部
エチレングリコール 10.0重量部
グリセリン 8.0重量部
プロクセルGXL(1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの20%ジプロピレングリコール溶液、ICIジャパン製) 0.2重量部
ケルザンAR(キサンタンガム、三晶(株)製) 0.3重量部
水 41.5重量部
上記成分のうち、ケルザンARの全量を水5重量部に攪拌しながら加え1時間攪拌してケルザンARの溶液を得た。この液と残りの成分を混合し均一になるまで1時間攪拌して黒色水性インキを得た。このもののインキpHは8.5であった。
【0024】
ボールペン1
実施例1のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0025】
ボールペン2
実施例2のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0026】
ボールペン3
実施例3のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0027】
ボールペン4
実施例4のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0028】
ボールペン5
実施例5のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0029】
ボールペン6
実施例6のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0030】
ボールペン7(比較例)
比較例1のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0031】
ボールペン8(比較例)
比較例2のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0032】
タングステンカーバイド粒子の真球度測定
実施例1〜6および比較例1〜2のボールペン用ボールを、走査型電子顕微鏡(JSM−6510LA 日本電子(株)/JEOL)により、5000倍の倍率でボール表面を撮影し、画面上で観察されたタングステンカーバイド粒子10個の最小外接円から粒子表面までの半径方向の距離の最大の値として求めた。
【0033】
書き味の軽さ、滑らかさ
ボールペン1〜8のボールペンサンプルを、初期と経時後(ボールペンサンプルを50℃30%RHの高温槽に、ペン先を下向きにして90日間放置したボールペン)のそれぞれ、自動筆記機を用いて、筆記荷重100gf、筆記速度2mm/秒、筆記角度70条件で、直線筆記し、筆記方向にかかる荷重を測定し、筆記抵抗値を測定した。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例1〜6のボールペン用ボールは、タングステンカーバイド粒子の真球度が
0.04μm以上0.5μm以下であることから、硬質粒子の角が極端に少なくなるため紙面やボールホルダーとの接触による引っ掛かりが発生せず、硬質粒子が紙面やボールホルダーに接触した際に発生する転がり摩擦力を低くすることができ、良好な書き味を得ることができた。さらに長期経時において、コバルトが溶出し、タングステンカーバイドを主成分とする硬質粒子の相と結合相との段差が大きくなったとしても、低い転がり摩擦力を維持することができるため、良好な書き味を長期継続できるようになった。
【0036】
これに対して比較例1〜2のボールペン用ボールは、タングステンカーバイド粒子の真球度が0.5μmを越えているため、硬質粒子が紙面やボールホルダーに接触した際に発生する転がり摩擦力が大きくなり、書き味の滑らかさが失われてしまう。さらに長期経時において、コバルトが溶出し、タングステンカーバイドを主成分とする硬質粒子の相と結合相との段差が大きくなった際に、表面に大きく露出したタングステンカーバイド粒子が紙面やボールホルダーに接触した際に発生する転がり摩擦力がさらに増大してしまうため、書き味の滑らかさがさらに失われてしまう。