特許第6303276号(P6303276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6303276
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ボールペン用ボール
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/08 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   B43K1/08 100
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-68685(P2013-68685)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-188947(P2014-188947A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 元
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−005797(JP,A)
【文献】 特開昭56−058899(JP,A)
【文献】 特開2005−254609(JP,A)
【文献】 特開2000−062379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/08
B43K 7/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステンカーバイドを主成分とする硬質粒子と、コバルトを主成分とする結合相と、二炭化三クロムとを有する焼結体であって、硬質粒子の真球度が0.04μm以上0.5μm以下であるボールペン用ボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被筆記面に対して接触してインキ転写部材となるボールペン用ボールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボールペンは基本的にインキを収容したインキ収容管と、このインキ収容管に直接又は接続部材を介して接続され、インキを流通可能に連通させたたペン先部材であるボールペンチップとにより構成されている。ボールペンチップは、被筆記面に接触してインキを転写するボールと、このボールを回転自在に抱持するボールホルダーとから少なくとも構成されている。ボールペン用ボールとして使用される材料として、一般的にWC−Co系超硬ボールと称されているものは、結合成分としてコバルトを主成分とする結合相にてタングステンカーバイドを主成分とする硬質粒子をつなぎとめる形で焼結した焼結体であり、優れた機械的性質により、広く用いられている。しかし、このWC−Co系超硬ボールは硬質粒子であるタングステンカーバイドの真球度が低いと、前記硬質粒子が紙面やボールホルダーに接触した際に発生する転がり摩擦力が大きくなり、書き味の滑らかさが失われる問題がある。さらに、このWC−Co系超硬ボールは酸性および中性溶液中では結合成分としてのコバルトが優先的に溶出するという性質があることから、インキや長期経時によりpHが低下したインキと接触することによって、ボール中の結合成分であるコバルトが溶出する所謂腐食が発生する。ボール中の結合成分が溶出すると、結合相の界面が低下し、結合粒子の存在する部分との段差が大きくなり、表面に大きく露出したタングステンカーバイド粒子が紙面やボールホルダーに接触した際に発生する転がり摩擦力がさらに増大することで、書き味の滑らかさが失われる場合があった。
【0003】
これを防止するために、インキ中に一般的な金属防錆剤であるカルボキシベンゾトリアゾールを添加する例(特許文献1)、ボール表面に物理的蒸着にて層状に酸化アルミニウム等を被覆する例(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−199107号公報
【特許文献2】特開2001−80262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のカルボキシベンゾトリアゾールは、一般的な金属防錆剤として知られているが、インキ中に添加することで、長期経時による酸化によりインキpHが低下してしまうため、十分な腐食防止効果を得ることができなかった。
特許文献2に記載の物理的蒸着にて層状に酸化アルミニウム等を被覆する方法は、現実的にはボールペンのボールのような小径の球状物質への均一な物理蒸着は困難であり、その結果被覆されていない場所が多数存在してしまうため、十分な腐食防止効果を得ることができなかった。
また、WC−Co系超硬材料は、長期経時によりpHが低下したインキと接触することによって起きるCoの溶出を完全に防ぐことはできず、僅かであってもCoが溶出してしまうとWC相とCo相の段差が大きくなり、表面に大きく露出したWC粒子が紙面やボールホルダーに接触した際に発生する転がり摩擦力が増大することで、書き味の滑らかさ失われてしまう問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タングステンカーバイドを主成分とする硬質粒子と、コバルトを主成分とする結合相と、二炭化三クロムとを有する焼結体であって、硬質粒子の真球度が0.04μm以上0.5μm以下であるボールペン用ボールを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
WC−Co系超硬ボールにおいて、タングステンカーバイド粒子の真球度を0.04μm以上0.5μm以下にすることで、硬質粒子の角が極端に少なくなり、かつ、二炭化三クロムの添加によって耐食性が向上し結合相が溶出しにくくなるため、硬質粒子と結合相間に段差が生じにくくなり、紙面やボールホルダーとの接触による引っ掛かりが発生せず、硬質粒子が紙面やボールホルダーに接触した際に発生する転がり摩擦力を低くすることができ、良好な書き味を得ることができるようになる。また、コバルトが溶出し、タングステンカーバイドを主成分とする硬質粒子の相と結合相との段差が大きくなったとしても、低い転がり摩擦力を維持することができるため、良好な書き味を長期継続できるようになる。
ここでいう真球度は、JIS B 1501に玉軸受用鋼球の測定方法として規定されているものと同等のものをいう。これによると真球度は、測定する鋼球1個を真円度測定器で互いに90°をなす2または3赤道平面上の鋼球表面の輪郭を測定し、それぞれの最小外接円から鋼球表面までの半径方向の距離の最大値として求めるとあるが、本発明のタングステンカーバイド粒子はこの方法では測れないためJISに準拠した測定を行うこととした。SEM画面上で観察されるタングステンカーバイド粒子10個の1赤道平面についてのみ、最小外接円から粒子表面までの半径方向の距離の最大の値として真円度を画像処理によって測定し、真球度の値とした。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のボールペン用ボールは、タングステンカーバイドを主成分とし、コバルトをバインダー成分として焼結させた所謂WC−Co系超硬合金であり、タングステンカーバイド粉体の形状は、焼結できるものであれば特に限定されない。また、タングステンカーバイド粉体の平均粒子径も特に限定されないが、小球状の表面を研磨し、ナノスケールレベルの平滑性を要求されるボールペン用ボールにおいては、平均粒子径が10μm以下であることが望ましい。また、バインダー成分として使用されるコバルト粉体は超硬ボール全体に対して5重量%以上15重量%以下が好ましい。
【0009】
タングステンカーバイド粒子の真球度は、タングステンカーバイド粉体とバインダー成分であるコバルト粉体を粉砕・混合し、タングステンカーバイド粒子を研磨する際の時間を制御することによって、タングステンカーバイド粒子の真球度を0.04μm以上0.5μm以下にすることが可能である。
【0010】
また、さらに耐食性を向上させる目的として、焼結体材料中に二炭化三クロムを添加することもできる。平均粒子径は特に限定されないが、超硬ボール全体に対して1重量%以上8重量%以下であることが好ましい。
【0011】
超硬ボールを焼結させる方法としては、タングステンカーバイド粉体とコバルト粉体、さらに必要であれば二炭化三クロムを粉砕・混合させた後、熱プラズマ焼結法やマイクロ波焼結法やミリ波焼結法などの無加圧焼結法、ホットプレス焼結法や放電プラズマ焼結法や超高電圧焼結や熱間等方加圧焼結法や高圧ガス反応焼結法などの加圧焼結法が用いることができる。焼結合金における欠陥を極力なくすためには加圧焼結法がよく、特に放電プラズマ焼結法は、粉体が自己発熱し表面の金属皮膜への熱の伝わりがよいことから好適に使用できる。
【0012】
本発明に係るボールを使用したボールペンとしては、このボールをステンレスなどの合金を機械的に切削、圧延加工などすることによって形成したボールホルダーに、ボールの一部を突出した状態で抱持させてボールペンチップとし、このボールペンチップにインキ収容管を接続したものに好適に使用することができる。ボールホルダーの形態としては、棒材を削りだして作られるものの他に、パイプ材を加工して得られるパイプ式ボールペンチップを使用することもできる。更に、コイルスプリングなどを配置して、ボールをボールホルダーの開口部内縁に押し付ける構造のものとすることもできる。
【0013】
筆跡・塗布跡を形成するインキとしては、水を主媒体とする所謂水性インキ、有機溶剤を主媒体とする所謂油性インキのいずれをも使用することができる。
溶剤としては、水の他に、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ベンジルアルコール等の水溶性有機溶剤が使用できる。
着色剤としては、酸性染料、直接染料塩基性染料等の染料及び/又は各種のアゾ系顔料、ニトロソ系顔料、ニトロ系顔料、塩基性染料系顔料、酸性染料系顔料、建て染め染料系顔料、媒染染料系顔料、及び天然染料系顔料等の有機系顔料、黄土、バリウム黄、紺青、カドミウムレッド、硫酸バリウム、酸化チタン、弁柄、鉄黒、カーボンブラック等の無機顔料からなる着色剤が使用できる。その他に、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等の樹脂やヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ガーガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸等の多糖類からなる粘度調整剤、界面活性剤、防錆剤、防黴・防腐剤、場合によっては、アスコルビン酸、コウジ酸やハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、タンニン酸、没食子酸等のポリフェノール類などの還元性を有する物質などが使用できる。
着色剤として顔料を用いた場合に、顔料を安定に分散させるために分散剤を使用することは差し支えない。分散剤として従来一般に用いられているスチレンアクリル酸塩やスチレンマレイン酸塩等の水溶性樹脂もしくは水可溶性樹脂や、アニオン系もしくはノニオン系の界面活性剤など、顔料の分散剤として用いられるものが使用できる。
【0014】
インキの乾燥、逆流を防ぐ目的でインキ逆流防止体組成物を使用することもできる。基材としては、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等の不揮発性液体又は難揮発性液体、ゲル化剤としては、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物が挙げられる。その他、アルコール系溶剤やグリコール系溶剤、界面活性剤、樹脂、金属酸化物等の微粒子を添加してインキ逆流防止体に必要な機能(ゲル化、着色防止、逆流防止)を向上させることもできる。
【実施例】
【0015】
実施例1
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)89重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%と二炭化三クロム(三津和化学薬品(株)製)3重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、240時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0016】
実施例2
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)92重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、240時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0017】
実施例3
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)92重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、288時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0018】
実施例4
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)92重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、216時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0019】
実施例5
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)92重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、168時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0020】
実施例6
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)92重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、144時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0021】
比較例1
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)89重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%と二炭化三クロム(三津和化学薬品(株)製)3重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、48時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0022】
比較例2
炭化タングステン粉体(WC15;(株)アライドマテリアル製)92重量%とコバルト粉体(関東化学(株)製)8重量%をステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に挿入し、48時間の混合粉砕後、乾燥して混合粉末を得た。これらの混合粉末を内部が球状の金型に投入し、放電プラズマ焼結法にて球状焼結合金を得た。なお、放電プラズマ焼結は、放電プラズマ焼結装置(SPS−1050;SPSシンテックス(株)製)を用いて、焼結圧力15MPa、on−off時間100ms、短形波直流パルス電流100Aの条件で900sの予備焼結を行った後、焼結圧力を40MPaに上げ焼結温度が1500℃になるように連続パルス通電を600s間行った。さらに前記球状焼結合金の表面を鏡面研磨し、φ0.7mmのボールペン用ボールを得た。
【0023】
インキ1
WaterBlack256L(黒色染料の14%水溶液、オリエント化学工業(株)製) 40.0重量部
エチレングリコール 10.0重量部
グリセリン 8.0重量部
プロクセルGXL(1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの20%ジプロピレングリコール溶液、ICIジャパン製) 0.2重量部
ケルザンAR(キサンタンガム、三晶(株)製) 0.3重量部
水 41.5重量部
上記成分のうち、ケルザンARの全量を水5重量部に攪拌しながら加え1時間攪拌してケルザンARの溶液を得た。この液と残りの成分を混合し均一になるまで1時間攪拌して黒色水性インキを得た。このもののインキpHは8.5であった。
【0024】
ボールペン1
実施例1のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0025】
ボールペン2
実施例2のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0026】
ボールペン3
実施例3のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0027】
ボールペン4
実施例4のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0028】
ボールペン5
実施例5のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0029】
ボールペン6
実施例6のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0030】
ボールペン7(比較例)
比較例1のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0031】
ボールペン8(比較例)
比較例2のボールペン用ボールを、ぺんてる(株)製の水性ゲルインキボールペン、エナージェル(BL57)に組み込み、インキ1と組み合わせた。
【0032】
タングステンカーバイド粒子の真球度測定
実施例1〜6および比較例1〜2のボールペン用ボールを、走査型電子顕微鏡(JSM−6510LA 日本電子(株)/JEOL)により、5000倍の倍率でボール表面を撮影し、画面上で観察されたタングステンカーバイド粒子10個の最小外接円から粒子表面までの半径方向の距離の最大の値として求めた。
【0033】
書き味の軽さ、滑らかさ
ボールペン1〜8のボールペンサンプルを、初期と経時後(ボールペンサンプルを50℃30%RHの高温槽に、ペン先を下向きにして90日間放置したボールペン)のそれぞれ、自動筆記機を用いて、筆記荷重100gf、筆記速度2mm/秒、筆記角度70条件で、直線筆記し、筆記方向にかかる荷重を測定し、筆記抵抗値を測定した。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例1〜6のボールペン用ボールは、タングステンカーバイド粒子の真球度が0.04μm以上0.5μm以下であることから、硬質粒子の角が極端に少なくなるため紙面やボールホルダーとの接触による引っ掛かりが発生せず、硬質粒子が紙面やボールホルダーに接触した際に発生する転がり摩擦力を低くすることができ、良好な書き味を得ることができた。さらに長期経時において、コバルトが溶出し、タングステンカーバイドを主成分とする硬質粒子の相と結合相との段差が大きくなったとしても、低い転がり摩擦力を維持することができるため、良好な書き味を長期継続できるようになった。
【0036】
これに対して比較例1〜2のボールペン用ボールは、タングステンカーバイド粒子の真球度が0.5μmを越えているため、硬質粒子が紙面やボールホルダーに接触した際に発生する転がり摩擦力が大きくなり、書き味の滑らかさが失われてしまう。さらに長期経時において、コバルトが溶出し、タングステンカーバイドを主成分とする硬質粒子の相と結合相との段差が大きくなった際に、表面に大きく露出したタングステンカーバイド粒子が紙面やボールホルダーに接触した際に発生する転がり摩擦力がさらに増大してしまうため、書き味の滑らかさがさらに失われてしまう。