(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1及び
図2に示す電動工具11は、電動モータ12を動力源とした動力工具である。電動工具11は、取り付けられる先端工具を変更することにより、複数種類の異なる作業を行うことができる。例えば、電動工具11に、鋸歯を備えた先端工具を取り付けると、電動工具11は先端工具により対象物を切断する作業を行うことができる。また、電動工具11に、ダイヤモンドチップやカーバイトチップ等が固定された先端工具を取り付けると、電動工具11は先端工具により対象物を研削または研磨する作業を行うことができる。さらに、電動工具11に、スクレーパ形状の先端工具を取り付けると、先端工具により対象物を物体から剥離する作業を行うことができる。
図1及び
図2に示す電動工具11は、スクレーパ形状の先端工具13を取り付けた例である。
【0012】
電動工具11は工具本体として筒形状のハウジング14を備え、動力源である電動モータ12はハウジング14の内部に収容されている。ハウジング14の長手方向の一端には電源コード15が接続されており、交流電源の電力が電源コード15を介して電動モータ12に供給される。
【0013】
電動工具11を制御する制御部としての制御装置の構成を、
図2〜
図4に基づいて説明する。電動工具11を制御する制御装置16はハウジング14に設けられている。交流電源20と電動モータ12とを接続する電気回路にメインスイッチ17が設けられており、メインスイッチ17には操作片18が接続されている。作業者が操作片18を操作してメインスイッチ17がオンされると、交流電源20の電力が、制御装置16を介して電動モータ12に供給されて、電動モータ12のモータ軸12aが回転する。これに対して、操作片18が操作されてメインスイッチ17がオフされると、交流電源20の電力は電動モータ12に供給されなくなり、電動モータ12のモータ軸12aが停止する。
【0014】
また、ハウジング14に変速ダイヤル19が設けられている。変速ダイヤル19は、電動モータ12の目標回転数を設定する機構であり、変速ダイヤル19は作業者により操作される。
【0015】
ハウジング14の内部には、電動モータ12に固定された樹脂製のホルダ21が収容されている。ホルダ21には、軸受23a,23bを介して出力軸22が回転自在に支持されている。モータ軸12aの中心線は、出力軸22の中心線と直交している。また、出力軸22の先端に工具保持部31が設けられており、工具保持部31はハウジング14の外部に配置されている。
【0016】
また、ホルダ21の内部に振動機構部24が設けられている。振動機構部24は、モータ軸12aの回転力を、出力軸22が所定角度の範囲内で往復動作する力に変換する機構である。振動機構部24は、
図2及び
図4に示すように、モータ軸12aに固定されるスピンドル25を備えている。このスピンドル25はモータ軸12aと同心状に設けられており、スピンドル25の先端部は、ホルダ21に装着された軸受28により回転自在に支持されている。スピンドル25の中心線はモータ軸12aの中心線と同軸であり、スピンドル25に偏心軸25aが設けられている。偏心軸25aの中心線は、スピンドル25の中心線から偏心した位置に配置されている。
【0017】
偏心軸25aの外周面に、ボールベアリング26の内輪が取り付けられている。偏心軸25aと出力軸22とが、スイングアーム27により連結されている。スイングアーム27は出力軸22に固定されている。スイングアーム27は、出力軸22と平行に延びる一対のアーム部27aを備えたU字形状に形成されている。これらのアーム部27aはボールベアリング26の外輪の外径に等しい間隔を開けて並んで配置されている。各アーム部27aは、ボールベアリング26の外輪に接触している。つまり、一対のアーム部27aの間に、ボールベアリング26の外輪を挟み込んだ状態となっている。
【0018】
先端工具13は工具保持部31に対して着脱可能である。先端工具13は、長方形状の板材を厚さ方向に折り曲げて形成された基部13aを備えている。この基部13aは、例えば鋼板等の金属材料により形成されている。基部13aの長手方向の一端に、鋼板製のスクレーパ本体13bが溶接により固定されている。スクレーパ本体13bの先端に、鋸形状の歯13cが設けられ、この歯13cを用いて剥離作業等が行われる。
【0019】
先端工具13は、ボルト33により工具保持部31に締結固定されている。つまり、先端工具13が工具保持部31に取り付けられると、先端工具13は、出力軸22の軸心から径方向の一方側に突出した構造となる。
【0020】
電動工具11において、電動モータ12に電力が供給されてモータ軸12aが回転すると、スピンドル25及びモータ軸12aが一体回転する。スピンドル25が回転すると、偏心軸25a及びボールベアリング26は、スピンドル25の中心線の回りを公転する。ボールベアリング26がスピンドル25の中心線の回りを公転すると、
図4(a)、(b)に示すように、スイングアーム27が、出力軸22を中心として所定の角度範囲で往復運動する。つまり、スイングアーム27及び出力軸22は、所定角度の範囲内で一体的に揺動、すなわち、往復運動する。このようにして、電動モータ12の回転力は、出力軸22の往復動作力に変換される。
【0021】
出力軸22が所定角度範囲内で往復動作すると、先端工具13も、出力軸22を中心として、所定角度の範囲内で往復動作、つまり、振動する。ここで、先端工具13の歯13cを対象物と物体との境界部分に押し付けると、歯13cが対象物と物体との間に食い込み、対象物を物体から離脱する剥離作業を行うことができる。対象物を物体から剥離させる作業を実行中は、先端工具13の振動を妨げようとする抵抗力が、電動モータ12に負荷として加わる。
【0022】
なお、スピンドル25の中心線を含む平面内において、ボールベアリング26の内輪の外周面は湾曲している。このため、スイングアーム27が出力軸22を中心として揺動し、スイングアーム27が、偏心軸25aに対して傾斜しても、アーム部27aがボールベアリング26の外輪に接触した状態が維持される。
【0023】
上記制御装置16の具体的な構成を、
図3に基づいて説明する。制御装置16は、電動モータ12の回転数を制御するための装置であって、交流電源20、メインスイッチ17、コイル29,30、回転数検出器49、電流検出用抵抗32等を有する。また、制御装置16は、電動モータ12の回転数、つまり、実回転数を検出する回転数検出器49を有する。さらに、制御装置16は、回転数制御回路34、回転数設定回路35等を有する。
【0024】
前記回転数設定回路35は、作業者の操作に基づいて、電動モータ12の目標回転数を設定する要素であり、回転数設定回路35は、可変抵抗器VR1及び可変抵抗器VR2と、制御切換スイッチ38と、目標回転数調整部39と、先端工具識別部50とを有する。目標回転数調整部39は、作業者が操作するレバー、ノブ、スイッチ等を含み、目標回転数調整部39は、前記ハウジング14に設けられている。
【0025】
可変抵抗器VR1は、変速ダイヤル19の操作に基づいて、電動モータ12の目標回転数として最高回転数を決定する。可変抵抗器VR2は、変速ダイヤル19の操作に基づいて、電動モータ12の目標回転数として最低回転数を決定する。
【0026】
先端工具識別部50は、先端工具13の種類、具体的には、先端工具13が、剥離用、切断用、研磨用のいずれであるかを判別する要素である。先端工具識別部50は、例えば、工具保持部31に設けることができる。そして、先端工具13の基部13aに、先端工具13の種類を表すバーコードが記録されたラベルを貼り付けておき、先端工具識別部50を非接触の光学センサで構成することができる。このように構成すると、先端工具識別部50でラベルのバーコードを読み取り、先端工具13の種類を判別することができる。
【0027】
また、先端工具13の基部13aに、先端工具13の種類に応じて異なる凹凸パターンを形成しておき、先端工具識別部50を接触式センサで構成することも可能である。そして、先端工具識別部50に凹凸パターンが接触することにより、先端工具13の種類を判別することもできる。そして、回転数設定回路35は、先端工具識別部50により判別した先端工具13の種類に応じて、電動モータ12の目標回転数を設定する。先端工具13の種類が異なると、異なる目標回転数が設定される。
【0028】
変速ダイヤル19の操作に基づいて、最低回転数及び最高回転数を決定する制御は、例えば、
図5のマップを用いて行われる。
図5のマップでは、横軸に変速ダイヤル19の操作位置が示され、縦軸に電動モータ12の回転数が示されている。この例では、変速ダイヤル19の操作位置として操作位置D1〜D6があり、各操作位置の間を選択することもできる。
図5のマップに示すように、操作位置D1から操作位置D6に近づくことに伴い、最低回転数及び最高回転数が高くなる特性を有する。
【0029】
なお、電動モータ12の目標回転数は、最低回転数と最高回転数との間に決定されることはない。また、電動モータ12の回転数を制御する場合、基本的には、電動モータ12の負荷に基づいて、最低回転数または最高回転数を選択する。
【0030】
制御切換スイッチ38は、電動モータ12の負荷に基づいて、最低回転数と最高回転数との切り換えを行うか否かを、作業者が決めるために操作される。作業者が制御切換スイッチ38をオンして「切換制御有り」を選択すると、電動モータ12の負荷に応じて、最低回転数と最高回転数との切り換えを行うことが可能である。これに対して、作業者が制御切換スイッチ38をオフして「切換制御無し」を選択すると、電動モータ12の負荷に関わりなく、最高回転数が選択される。
【0031】
目標回転数調整部39を操作すると、
図5のマップに示されている最低回転数及び最高回転数を、作業者が任意に変更することができる。すなわち、変速ダイヤル19の操作位置に応じて、
図5に示された最低回転数及び最高回転数が選択されるが、目標回転数調整部39を操作すると、
図5に示された最低回転数及び最高回転数を別々に作業者が設定可能である。
【0032】
次に、回転数制御回路34の構成を説明する。回転数制御回路34は、電動モータ12の実回転数を、回転数設定回路35で選択された目標回転数に近づけるフィードバック制御を行う。回転数制御回路34は、回転数検出回路40と位相制御回路41と電流検出回路42と比較演算回路43とを有する。回転数検出回路40は、回転数検出器49に接続されており、電動モータ12の実回転数を検出する。位相制御回路41は、回転数検出器49の誘導角を制御することで、電動モータ12の実回転数を制御する。例えば、電動モータ12に印加される電圧が上昇すると、電動モータ12の実回転数が上昇し、電動モータ12に印加される電圧が低下すると、電動モータ12の実回転数が低下する。電流検出回路42は、電動モータ12に供給される電力の電流値を検出する。電動モータ12に供給される電力の電流値に基づいて、電動モータ12の負荷が検知される。比較演算回路43は、実回転数と目標回転数とを比較する。
【0033】
さらに、ハウジング14には表示部47が設けられている。表示部47は、例えば、液晶画面を有しており、表示部47は、目標回転数、実回転数等を表示し、作業者は表示部47を目視確認できる。
【0034】
次に、電動工具11の制御例を、
図6のフローチャートに基づいて説明する。まず、ステップS11では、メインスイッチ17がオンされている状態で、制御切換スイッチ38がオンされているか否かが判断される。ステップS11の判断結果がNOの場合は、ステップS12に進み、電動モータ12の回転数設定を負荷モードに設定する処理が実行される。負荷モードとは、電動モータ12の目標回転数として最高回転数を選択することである。
【0035】
ステップS12に次ぐステップS13では回転数設定値を検出する。つまり、変速ダイヤル19の操作位置に対応する最高回転数を検出する。ステップS13に次ぐステップS14では、負荷モードに応じた回転数で電動モータ12を駆動する。つまり、ステップS14では、電動モータ12の実回転数を、ステップS13で検出された最高回転数とする制御を実行する。このように、制御切換スイッチ38がオフされている場合は、電動モータ12の回転数が最高回転数に固定され、最低回転数は選択されない。
【0036】
一方、ステップS11の判断結果がYESの場合は、ステップS15の制御を実行する。ステップS15の制御は、ステップS12の制御と同じである。また、ステップS15に次いでステップS16の制御を実行する。ステップS16の制御は、ステップS13の制御と同じである。ステップS16に次ぐステップS17では、負荷モードの回転数で電動モータ12が回転を開始してから、電動モータ12を1秒間駆動する。つまり、ステップS17では、電動モータ12の実回転数を、ステップS16で検出された最高回転数で1秒間維持する制御を実行する。
【0037】
これは、設定された最高回転数を作業者に知らせるためである。工具保持部31に取り付けられた先端工具13の種類、すなわち作業内容によって最適な回転数が存在するため、所望の作業が設定された最高回転数で適切か否かを作業者が知ることができる。
【0038】
ステップS17に次ぐステップS18では、電動モータ12の回転数設定を無負荷モードに設定する制御を実行する。この無負荷モードとは、電動モータ12の目標回転数として、
図5に示す最低回転数を選択することである。なお、無負荷モードにおける最低回転数は、負荷モードにおける最高回転数の80%程度である。ステップS18に次ぐステップS19では、無負荷モードの回転数で電動モータ12を駆動する。つまり、ステップS19では、電動モータ12の実回転数を最低回転数に近づける。
【0039】
さらに、ステップS20では、電動モータ12に供給される電力の電流値が検知され、ステップS21では、電動モータ12が無負荷モードで駆動されているか否かを判断する。電動モータ12が無負荷モードで駆動されているか否かは、電動モータ12に供給される電力の電流値から検知できる。ステップS21でYESと判断されると、ステップS22では、電流値が増加して負荷判定値を超えたか否かが判断される。
【0040】
例えば、
図7に示すように、電流値が、負荷判定値としての電流値A3以下であることにより、ステップS22でNOと判断されると、ステップS23に進み、回転数設定値を検出する制御を実行する。ステップS23の制御は、ステップS16の制御と同じである。また、ステップS24では、設定されたモード回転数で電動モータ12が駆動され、ステップS20に戻る。ステップS22でNOと判断されて、ステップS24に進んだ場合、ステップS24では、電動モータ12の実回転数を、変速ダイヤル19の操作位置に対応する最低回転数とする制御を実行する。
【0041】
一方、前記ステップS22の判断時点で、電流値が
図7に示す電流値A3を超えていることにより、ステップS22でYESと判断されると、ステップS25に進み、電流値が電流値A3を超えている状態が、判定時間以上継続されたか否かが判断される。判定時間は、予め回転数制御回路34に記憶されている。ステップS25でNOと判断されると、ステップS23に進む。ステップS25でYESと判断されると、ステップS26で回転数設定を負荷モードに設定し、ステップS23、S24の制御を実行する。つまり、ステップS26では、電動モータ12の目標回転数として最高回転数を選択する。
【0042】
そして、ステップS26を経由してステップS24に進んだ場合、ステップS24では、電動モータ12の実回転数を、変速ダイヤル19の操作位置に対応する最高回転数とする制御を実行する。なお、電動モータ12の目標回転数を、最低回転数から最高回転数に変更する場合、
図7の電流値A3から電流値A4の範囲に実線で示すように、予め定められた勾配で緩やかに変更する。
【0043】
前記ステップS21でNOと判断された場合は、ステップS27において、電流値が低下して、
図7の無負荷判定値としての電流値A2未満になったか否かが判断される。ステップS27でNOと判断されると、ステップS23、S24の制御を実行する。ステップS27でNOと判断されてステップS24に進んだ場合、ステップS24では、電動モータ12の実回転数を、変速ダイヤル19の操作位置に対応する最高回転数とする制御を実行する。
【0044】
これに対して、ステップS27でYESと判断された場合は、ステップS28に進み、電流値が電流値A4未満である状態が、判定時間以上継続されたか否かが判断される。ステップS28でNOと判断されると、ステップS23、S24の制御を実行する。ステップS28でNOと判断されてステップS24に進んだ場合、ステップS24では、電動モータ12の実回転数を、変速ダイヤル19の操作位置に対応する最高回転数とする制御を実行する。
【0045】
ステップS28でYESと判断されると、ステップS29では、回転数設定モードを無負荷モードに設定する制御を実行し、次いで、ステップS23、S24の制御を実行する。ステップS29の制御は、ステップS18の制御と同じである。上記のように、ステップS21でNOと判断されてステップS29に進み、電動モータ12の目標回転数を最高回転数から最低回転数に変更する場合、
図7の電流値A2から電流値A1の範囲に破線で示すように、予め定められた勾配で緩やかに変更する。なお、
図7のマップにおいて、
電流値A1<電流値A2<電流値A3<電流値A4
の関係にある。また、
図7に示す最高回転数及び最低回転数は、作業者が目標回転数調整部39を操作して、別々に変更可能である。さらに、作業者が目標回転数調整部39を操作して最高回転数を変更すると、これと連動して最低回転数が変更される構成とすることもできる。この場合、例えば、最高回転数の80%の値に最低回転数が設定される。
【0046】
次に、電動工具11で実行される他の制御例を、
図8のフローチャートに基づいて説明する。ステップS51では、制御切換スイッチ38がオンされて「切換制御有り」が選択され、かつ、メインスイッチ17がオンされると、電動モータ12の目標回転数として、負荷モード回転数の設定値を検出する。つまり、ステップS51では、変速ダイヤル19の操作位置に対応する最高回転数が検出される。また、ステップS52では、ステップS51で設定された回転数の設定値を、表示部47で表示する制御を実行する。
【0047】
ステップS53では、負荷モード回転数が設定されてから所定時間が経過すると、電動モータ12の目標回転数の設定値を、負荷モードから無負荷モードに変更する。ステップS54では、変速ダイヤル19の操作位置に対応する無負荷モード回転数の設定値、つまり、最低回転数を目標回転数として設定する。そして、ステップS55では、ステップS54で設定された無負荷モード回転数で、電動モータ12を駆動する制御が実行される。
【0048】
さらに、ステップS56では電流値が検出され、ステップS57では無負荷モードであるか否かが判断される。ステップS56の制御はステップS20の制御と同じであり、ステップS57の制御は、ステップS21の制御と同じである。ステップS57でYESと判断されると、ステップS58の制御をおこなう。ステップS58の制御はステップS22の制御と同じである。ステップS58でYESと判断されると、ステップS59の制御を実行する。ステップS59の制御はステップS23の制御と同じである。
【0049】
また、ステップS59に次ぐステップS60では、設定された電動モータ12の目標回転数を表示部47で表示する制御をおこなう。そして、ステップS61の制御を実行し、ステップS56に戻る。ステップS61の制御は、ステップS24の制御と同じである。
【0050】
前記ステップS58でYESと判断されると、ステップS62の制御が実行される。ステップS62の制御は、ステップS25の制御と同じであり、ステップS62でNOと判断されると、ステップS59に進む。ステップS62でYESと判断されると、ステップS63の制御を実行し、ステップS59に進む。ステップS63の制御は、ステップS26の制御と同じである。
【0051】
一方、前記ステップS57でNOと判断されると、ステップS64の制御が実行される。ステップS64の制御はステップS27の制御と同じであり、ステップS64でNOと判断されると、ステップS59に進む。ステップS64でYESと判断されると、ステップS65の制御が実行される。ステップS65の制御はステップS28の制御と同じである。ステップS65でNOと判断されるとステップS59に進み、ステップS65でYESと判断されるとステップS66に進む。ステップS66の制御はステップS29の制御と同じである。すなわち、本実施の形態では、作業を開始する前に設定された回転数を表示部47に表示することで作業者に知らせることができる。
【0052】
次に、電動工具11で実行される他の制御例を、
図9のフローチャートに基づいて説明する。ステップS31では、制御切換スイッチ38がオンされて「切換制御有り」が選択され、かつ、メインスイッチ17がオンされていると、電動モータ12の目標回転数として、負荷モードの最高回転数を設定する。また、回転数設定回路35は、ステップS32において、先端工具識別部50が発生する先端工具13の識別信号を検出する。回転数設定回路35は、ステップS33において、識別信号に基づいて先端工具13の種類を判別する。例えば、先端工具13が研磨作業用、剥離作業用、切断作業用のいずれであるかを判別する。
【0053】
そして、回転数設定回路35は、ステップS34において、電動モータ12の目標回転数として、識別した先端工具13の種類に応じて、無負荷モードの最低回転数、負荷モードの最高回転数を設定する。また、ステップS34では、先端工具13の種類のそれぞれ毎に、負荷判定値及び判定時間、無負荷判定値及び判定時間、回転数切換時間を設定する。
【0054】
ステップS34の制御を、
図10のマップを参照して説明する。
図10には、電動モータ12の回転数として、研磨用の先端工具の回転数が破線で示され、剥離用の先端工具の回転数が二点鎖線で示され、切断用の先端工具の回転数が実線で示されている。また、電流値A1は、研磨用先端工具の負荷判定値であり、電流値A2は、研磨用先端工具の無負荷判定値である。
【0055】
また、電流値A3は、剥離用先端工具の負荷判定値であり、電流値A4は、剥離用先端工具の無負荷判定値であり、かつ、切断用先端工具の負荷判定値である。電流値A5は切断用先端工具の無負荷判定値である。
図10のマップにおいては、先端工具の種類が異なれば、電動モータの目標回転数が設定される電流値が異なる。
【0056】
ここで、電流値A1〜A5は
電流値A1<電流値A2<電流値A3<電流値A4<電流値A5
の関係にある。なお、
図10に示す最高回転数及び最低回転数は、作業者が目標回転数調整部39を操作して別々に変更可能である。切断用先端工具が取り付けられている場合、電動モータ12の回転数を上昇させる判定値を、研磨用や剥離用の先端工具と同じ電流値としてしまうと、刃先を相手材に位置合わせして少し押し込むだけで電流値が判定値を超えてしまう。その結果、位置合わせの最中に電動モータ12の回転数が上昇してしまい、切断箇所がずれてしまうことが考えられる。そのため、切断用先端工具の場合には、他の作業用の先端工具よりも大きな負荷判定値としている。
【0057】
さらに、判定時間は、負荷モードと無負荷モードとの間で切り換えを行う場合に、所定の電流値が継続されていることの判断基準である。さらに、回転数切換時間は、負荷モードの回転数と無負荷モードの回転数との間で、相互に回転数を切り換える制御を開始してから、制御を完了するまでの所要時間である。つまり、
図10のように、最高回転数と最低回転数との間で相互に切り換えを行う場合は、予め定められた勾配で回転数を切り換える。
【0058】
ステップS34に次いで、ステップS35の制御を実行する。ステップS35の制御は、ステップS19の制御と同じである。ステップS35に次いで、ステップS36の制御を実行する。ステップS36の制御は、ステップS20の制御と同じである。ステップS36に次いで、ステップS37の制御を実行する。ステップS37の制御は、ステップS21の制御と同じであり、かつ、ステップS37では、先端工具13の種類に応じた電流値を用いる。
【0059】
ステップS37でYESと判断されると、ステップS38の制御を実行する。ステップS38の制御は、ステップS22と同じであり、ステップS38では、先端工具13の種類に応じた負荷判定値を用いる。ステップS38でNOと判断されると、ステップS39の制御を実行し、ステップS36に戻る。ステップS39の制御は、ステップS24の制御と同じであり、先端工具13の種類及びモードに応じた回転数を用いる。
【0060】
前記ステップS38でYESと判断されると、ステップS40の制御を実行する。ステップS40の制御は、ステップS25の制御と同じであり、先端工具13の種類毎に、ステップS34で設定した判定時間を用いる。ステップS40でNOと判断されると、ステップS39に進み、ステップS40でYESと判断されると、ステップS41の制御を実行する。ステップS41の制御はステップS26の制御と同じであり、ステップS41では、ステップS34で先端工具13の種類毎に負荷モードに設定した最高回転数を用いる。ステップS41に次ぐステップS42では、ステップS34で先端工具13の種類毎に設定した回転数切換時間を用いて、電動モータ12の回転速度を加速して、回転数を上昇させる制御を実行する。また、ステップS42の実行後は、ステップS39に進む。
【0061】
一方、前記ステップS37でNOと判断されると、ステップS43の制御が実行される。ステップS43の制御はステップS27の制御と同じであり、ステップS43でNOと判断されると、ステップS39に進む。ステップS43でYESと判断されると、ステップS44の制御が実行される。ステップS44の制御はステップS28の制御と同じである。ステップS44でNOと判断されるとステップS39に進み、ステップS44でYESと判断されるとステップS45に進む。
【0062】
ステップS45の制御はステップS29の制御と同じであり、ステップS34で先端工具13の種類毎に設定された無負荷モードの回転数を用いる。ステップS45に次ぐステップS46では、ステップS34で設定された回転数切換時間により、電動モータ12の回転数を低下する制御、つまり、回転速度を減速する制御を実行する。つまり、最高回転数から最低回転数に切り換える制御を、回転数切換時間を使って完了させる。なお、ステップS46の制御が実行された後は、ステップS39に進む。
【0063】
次に、電動モータ12の回転数を制御する際の特性を、
図11に基づいて説明する。電動モータ12の目標回転数として最低回転数を選択すると、先端工具13の最高振動数は毎分15,000回、先端工具13の歯13cの最高周速度は毎分16,000mである。電動モータ12の目標回転数として最高回転数を選択すると、先端工具13の最高振動数は毎分18,000〜20,000回、先端工具13の歯13cの最高周速度は毎分19,000〜21,000mである。
ここで、振動数1回は、先端工具13が出力軸22を中心として1往復することであり、周速度は、出力軸22の中心を基準とする歯13cの移動速度である。
【0064】
上記のように、電動工具11は、
電動モータ12の負荷の変化を検知し、検知結果に基づいて電動モータ12の実回転数を自動的に制御することができ、振動及び騒音を軽減できる。特に、無負荷時には電動モータ12の回転数を低下させるため、消費電力も軽減することができる。また、制御切換スイッチ38を操作して「切換制御有り」が選択されていると、電動モータ12の目標回転数として、一旦、最高回転数が選択され、電動モータ12の実回転数を最高回転数に近づける制御が自動的に実行される。したがって、作業者は、変速ダイヤル19を操作して設定した最高回転数を、触感及び先端工具13の動きで確認することができる。
【0065】
さらに、制御切換スイッチ38を操作して「切換制御有り」が選択されていると、電動モータ12の目標回転数として、一旦、最高回転数が選択され、その後、電動モータ12の目標回転数として最低回転数が選択される。したがって、作業者が先端工具13の歯13cを対象物と物体との境界部分に位置合わせし易くなり、作業性が向上する。
【0066】
また、電動モータ12の負荷が変化すると、電動モータ12の実回転数が自動的に変更される。このため、作業者は、負荷に応じて電動モータ12の実回転数を手動操作で切り換える煩わしさがない。したがって、電動工具11の操作性及び作業性が向上する。
【0067】
さらに、電動モータ12の目標回転数を、最低回転数と最高回転数との間で相互に切り換える際には、電動モータ12の負荷の変化に対応させて徐々に目標回転数を変化させるため、目標回転数が急激に変化することを防止できる。したがって、作業者の違和感を回避できる。また、先端工具13が相手材に食いついた際の反動を低減することができる。
【0068】
さらに、作業者は電動工具11を使用して行う作業内容に合わせて、制御切換スイッチ38を操作して「切換制御有り」または「切換制御無し」を選択することができる。例えば、対象物を先端工具13で研磨作業を行う場合は、制御切換スイッチ38を操作して「切換制御無し」を選択することができる。すると、作業者の意図により、先端工具13を対象物に押し付ける力を変化させて、電動モータ12の負荷が変化しても、目標回転数は最高回転数に維持されるため、作業者が違和感を持つことを回避できる。
【0069】
さらに、作業者が目標回転数調整部39を操作して、最高回転数及び最低回転数を調整することにより、先端工具13の最高振動数を作業内容に合わせることができ、作業性が一層向上する。
【0070】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、本発明の電動工具は、交流電源から電力コードを介して電動モータに電力を供給する構造の他、ハウジングに着脱される電池パックを備え、電池パックから電動モータに電力を供給する構造を含む。また、
図5、
図7、
図10のマップでは、変速ダイヤル19の操作位置に対応させて、最高回転数及び最低回転数が変更されているが、変速ダイヤル19の操作位置に関わりなく、最低回転数を同一にすることも可能である。また、先端工具を識別するセンサは、スイッチ等がある。また、
電動モータの負荷として電動モータの回転数を用いてもよい。