(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態では、本発明を、1対または複数対の投光部・受光部を有し、たとえば、物体との間の距離を測定する測距装置等に用いる投光・受光デバイスを例示して説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1(a)および(b)を参照して、本実施の形態に係る投光・受光デバイス10の構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、投光・受光デバイス10は、光集積回路12、発光素子24、受光素子26、レンズ18、および迷光防止部材32を含んで構成されている。
【0022】
光集積回路12は、発光素子24および受光素子26を搭載する基板としての機能、およびレンズ18と発光素子24および受光素子26との間の光の導波路としての機能を有する。
【0023】
光集積回路12の内部にはコア20A、20B(以下、総称する場合は「コア20」と称する場合がある。)が形成されており、また、レンズ18と対向する側の端面には、光集積回路の一部が斜めにカットされて形成された光路変換部としての光屈折部14A、14Bを有する。
【0024】
コア20は、周囲の光集積回路の部分(以下、「光集積回路本体」と称する場合がある。)よりも屈折率が大きくされており、該コア20と相対的に屈折率の低いクラッドとしての光集積回路本体部分とで光導波路を構成している。
【0025】
発光素子24は光集積回路12に設けられた開孔部34Aに搭載され、コア20Aの端面と光結合されている。また、受光素子26は光集積回路12に設けられた開孔部34Bに搭載され、コア20Bの端面と光結合されている。
【0026】
図2を参照して、上記光導波路についてさらに説明する。
図2は、
図1(a)におけるA−A’線に沿って切断した断面図を示している。
図2に示すように、コア20Bとその周囲を取り囲んで形成されたクラッド30(光集積回路本体の一部)により光導波路70が形成されている。
【0027】
図2に示すコア20およびクラッド30の材料に関しては特に制限はないが、本実施の形態に係る光集積回路12では、コア20をシリコン(Si)を用いて形成し、クラッド30を二酸化シリコン(SiO
2)を用いて形成している。コア20は、たとえば、シリコン細線であってもよい。
【0028】
発光素子24としては、一例として、チップ形態のレーザダイオード、あるいは発光ダイオード等を用いることができ、また、受光素子26としては、一例として、チップ形態のフォトダイオード等を用いることができる。
【0029】
迷光防止部材32は、光集積回路12から出射する発光素子24からの光と、光集積回路12に入射する受光素子26への光とのクロストークを防ぐための部材であり、たとえば、適宜な形状の黒色のフィルムを、レンズ18の中央部分に貼ることにより構成してもよい。
ただし、本迷光防止部材32は必須のものではなく、投光部側、受光部側の分離を特に厳密に行いたい場合などに採用すればよい。
【0030】
なお、
図1(a)に示すxyz座標軸は、レンズ18の中心の光軸CAに沿う方向をx軸にとり、紙面に平行な面内でx軸と直行する方向にy軸をとり、当該x軸−y軸に対して、右手系でz軸をとっている。
【0031】
つぎに、
図1(a)を参照して、本実施の形態に係る投光・受光デバイス10の作用について説明する。
【0032】
まず、投光・受光デバイス10から出射する光の光路、つまり、発光素子24側の光路は以下のようになる。すなわち、発光素子24より出射した光はコア20Aと結合されて伝搬し、光集積回路12のバルク部BGを直進して光屈折部14Aに達し、光屈折部14Aで屈折される。光屈折部14Aで屈折された光はレンズ18に到達した後、平行光としてレンズ18から出射する。
【0033】
ここで、バルク部BGとは、光に対して透明な材料で形成された光集積回路12のコア20が形成されていない領域(つまり、光集積回路本体の領域)であり、バルク部BGにおいて光はバルク伝搬(
図1(a)の紙面垂直方向には閉じ込められるが、紙面水平方向には制約のないモードの光伝搬)する。
【0034】
図中の仮想焦点Fは、光集積回路12が存在しないとした場合に、レンズ18が焦点を結ぶ位置を示しており、本実施の形態に係る投光・受光デバイス10では、この仮想焦点Fを、光の進行方向においてコア20の端面の位置に等しい位置または略等しい位置としている。また、図中の仮想光線DAおよびDBは、レンズから仮想焦点Fに向かう光線の光路を示している。
つまり、発光素子24から出射した光は、光屈折部14Aで光路を変換された後、仮想焦点Fからレンズに向かう仮想光線DAに沿って進む。
【0035】
一方、投光・受光デバイス10へ入射する光、つまり、受光素子26側の光路はつぎのようになる。すなわち、レンズに平行光として入射した光はレンズを通過した後、仮想焦点Fに向かう光路、つまり仮想光線DBに沿ってみ、光屈折部14Bに到達する。光屈折部14Bで光路を変換された光はバルク部BGを直進してコア20Bと結合し、コア20Bを伝搬して受光素子26へと導かれる。
【0036】
図3は、上記の作用を等価的な光学系に置き換えて説明するための図である。
図3(a)に示すように、投光・受光デバイス10におけるレンズ18は、発光素子24側、受光素子26側の光線に各々対応して、紙面上下方向に各々半面の2つの仮想レンズ18A、18Bに分けて考えることができる。
【0037】
このように考えた場合、
図3(b)に示すように、仮想レンズ18Aは、コア20Aから出射された光を投光・受光デバイス10の外部に放射し、仮想レンズ18Bは、投光・受光デバイス10の外部から入射した光をコア20Bに入射させるように作用する。つまり、投光・受光デバイス10は、投光側の光軸と受光側の光軸とが一致している完全同軸光学系に対して、投光側の光軸と受光側の光軸とが分離している擬似同軸光学系を構成している。
【0038】
以上の説明で明らかなように、本実施の形態に係る投光・受光デバイス10では、仮想光線DA,DBの光路を途中の光屈折部14A、14Bで曲げることにより、本来であれば仮想焦点Fに集束する光線を2つに分離した上でコア20A、20Bと光結合させている。そのため、単一のレンズ18を用いながらも2つのコア20A、20Bと光結合させることが可能となる。本実施の形態に係るこのような構成によれば、レンズ18の位置を固定すれば、発光素子24、受光素子26に対する光軸が決定するので、1回のアライメントで2つの光軸調整を行うことができる。
【0039】
つぎに、
図4を参照して、光屈折部14の傾斜角(ファセット角θ
F)の求め方について説明する。
図4は、コア20および光集積回路12と、レンズ18からの光線L(光線Lのうち空気側の光線をL
a、光集積回路12側の光線をL
rとする。)との関係を示しており、光集積回路12の外側は空気である。
図4に示すx軸、y軸の定義は、
図1(a)におけるx軸、y軸の定義と同様である。
【0040】
ファセット角θ
Fはy軸と光屈折部14の端面とのなす角度で定義される角度である。
ここで、
図4(a)に示すように、光集積回路12の光集積回路本体(バルク部BG)の屈折率をn
r、空気の屈折率をn
aとし、光線L
aとx軸とのなす角度をθ
1、コア20の中心軸とx軸とのなす角度(すなわち、光線L
rとx軸とのなす角度)をθ
2とする。
この場合、光屈折部14の端面の法線l
hに対する角度は
図4(b)に示すような関係となるから、スネルの法則より、下記式(1)が成立する。
【0042】
したがって、光集積回路12の本体の材料(屈折率)と、光線L
aとx軸とのなす角度をθ
1と、コア20の中心軸とx軸とのなす角度θ
2が与えられた場合に、式(1)を満たすθ
Fを算出することにより、ファセット角θ
Fを求めることができる。
【0043】
なお、上記式(1)の特別な場合として、θ
2=0、すなわち、コア20の中心軸をx軸に平行とし、空気の屈折率n
a=1を代入した場合には、上記式(1)は、下記式(2)のように変形される。
【数2】
【0044】
一例として、n
r=1.471(SiO
2の屈折率)、θ
1=20°を上記式(2)に代入すると、θ
Fは約33°となる。
【0045】
つぎに、
図5を参照して、本実施の形態に係る投光・受光デバイス10における光集積回路12の製造方法について説明する。
【0046】
光集積回路12は、一例として、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いた製造プロセスにより製造することができる。
図5は、該SOI基板を用いた、本実施の形態に係る投光・受光デバイス10における光導波路70を含む光集積回路12の製造方法を示している。なお、
図5に示す製造方法は、たとえば発光素子24あるいは受光素子26の駆動用電源を接続するための電極、および後述する回折格子の形成方法を含む製造方法である。
【0047】
図5(a)に示すように、まず、Si(シリコン)基板80上に形成されたSiO
2(二酸化ケイ素)層82と、該SiO
2層82上に形成された厚さ0.2μm程度のSi層84とを有するSOI基板74を準備する。
つぎに、
図5(b)に示すように、SOI基板74のSi層84上にレジストを塗布した後露光して、Si層84を、たとえばコア20にパターニングするためのレジストパターン86を形成する。
【0048】
つぎに、
図5(c)に示すように、上記レジストパターン86をマスクとし、SF
6およびO
2の混合ガス等を用いた反応性イオンエッチング等により、Si層84を所望の形状(たとえば、コア20の形状)にパターニングする。
つぎに、
図5(d)に示すように、酸素プラズマを用いた反応性イオンエッチング等により、不要なレジストを剥離する。
【0049】
つぎに、
図5(e)に示すように、Si層84の一部をN型Si(N型層90)に変えるべく、レジストを塗布した後露光して、N型Siに変える部分以外のSi層84上にレジストパターン88を形成する。
つぎに、
図5(f)に示すように、上記レジストパターン88をマスクとし、イオン注入等によってAs(ヒ素)等を打ち込み、N型層90を形成する。
【0050】
つぎに、
図5(g)に示すように、酸素プラズマを用いた反応性イオンエッチング等により不要なレジストを剥離した後、熱処理することでアニーリングし、シリコン結晶の欠陥を修復する。
【0051】
つぎに、
図5(h)に示すように、Si層84の回折格子を形成する部分にレジストを塗布した後露光して、レジストパターン92を形成する。
つぎに、
図5(i)に示すように、レジストパターン92をマスクとして、反応性イオンエッチング等により開孔94を形成する。その後、不要なレジストを反応性イオンエッチング等により剥離する。該開孔94が回折格子の一部となる。
【0052】
つぎに、
図5(j)に示すように、プラズマ化学気相成長などによりSiO
2膜96を堆積させる。この後、B(ボロン)やP(リン)を添加して軟化加熱しSiO
2膜96を平坦化させる方法、あるいは化学研磨による方法でSiO
2膜96を平坦化させてもよい。
【0053】
つぎに、SiO
2膜上にレジストを塗布して露光し、ドーピングの必要がない部分を覆うレジストパターン76を形成した後、
図5(k)に示すように、CF
4プラズマラを用いた反応性イオンエッチング等により、SiO
2膜を削ってコンタクトホール98を形成する。その後、酸素プラズマを用いた反応性イオンエッチング等により、不要なレジストを剥離する。
【0054】
つぎに、
図5(l)に示すように、スパッタリング等によりSiO
2膜96上に金属薄膜(たとえば、Al(アルミニウム)膜)を成膜する。その後、該金属薄膜上にレジストを塗布した後露光し、電極として残したい部分をレジストパターンで覆う。その後、Clプラズマを用いたドライエッチング等により電極78を形成する。
不純物残渣は、Alドライエッチング残渣除去液等により除去してもよい。
【0055】
つぎに、光集積回路の端面をドライエッチング等によりエッチングして傾斜端面を形成し、光屈折部とする。
【0056】
以上の製造工程により、回折格子、電極等を含む光集積回路を製造することができる。
なお、上述した光集積回路の製造方法は、以下に説明する光集積回路の製造方法にも同様に適用可能である。
【0057】
ここで、本実施の形態に係る光集積回路12の製造方法は、上記SOI基板を用いた製造方法に限られない。たとえば、光屈折部14も含めて、透光性樹脂を材料とした射出成型による一体成型で製造してもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、レンズ18を光集積回路12と分離した形態を例示して説明したが、これに限られず、たとえば、光集積回路12の本体を構成する材料(上記各実施の形態では、SiO
2あるいは透光性樹脂)にレンズ18を作り込み、レンズ18も含めた形態の光集積回路12としてもよい。
【0059】
以上の説明で明らかように、本実施の形態に係る投光・受光デバイスによれば、光軸調整がより容易な同軸光学系を実現することができる。
【0060】
[第2の実施の形態]
図6および
図7を参照して、本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス100について説明する。投光・受光アレイデバイス100は、第1の実施の形態に係る投光・受光デバイス10を複数集積してアレイ化したデバイスである。
【0061】
図6(a)に示すように、投光・受光アレイデバイス100は、チャンネル1〜チャンネル3(CH1〜CH3)の3個の単体投光・受光デバイスを集積化した光集積回路40と、単一のレンズ28を含んで構成されている。
CH1は、光軸をCA1とし、発光素子24−1、受光素子26−1、コア20C、20D、光屈折部14C、14Dを含んで構成されている。CH1は、
図1(a)に示す投光・受光デバイス10と基本的に同じ構成のものである。
【0062】
一方、CH2は光軸をCA2とし、発光素子24−2、受光素子26−2、コア20E、20F、光屈折部14E、14Fを含んで構成されており、コア20Eおよび20Fは、光軸CA2に平行に配置されている。
また、CH3は光軸をCA3とし、発光素子24−3、受光素子26−3、コア20G、20H、光屈折部14G、14Hを含んで構成されており、コア20Gおよび20Hは、光軸CA3に平行に配置されている。
【0063】
上記のような構成を有する投光・受光アレイデバイス100では、投光部・受光部駆動回路(図示省略)によりCH1、CH2、CH3の発光素子24および受光素子26を各々独立に駆動することが可能なように構成されている。
【0064】
つぎに、
図7を参照して、投光・受光アレイデバイス100を応用した装置の一例である、マルチビーム走査装置について説明する。
【0065】
図7(a)は、CH2の発光素子24−2を発光させ、該発光した光を投光・受光アレイデバイス100の外部へ放射し、外部の物体(図示省略)等で反射した光を受光素子26−2で受光する場合の光線を図示している。
図7(b)は、CH1の発光素子24−1を発光させ、該発光した光を投光・受光アレイデバイス100の外部へ放射し、外部の物体等で反射した光を受光素子26−1で受光する場合の光線を図示している。
図7(c)は、CH3の発光素子24−3を発光させ、該発光した光を投光・受光アレイデバイス100の外部へ放射し、外部の物体等で反射した光を受光素子26−3で受光する場合の光線を図示している。
【0066】
投光・受光アレイデバイス100では、上記の各チャンネルについて、CH2→CH1→CH3と順番に発光・受光動作を行わせることにより、スキャニング動作を行わせることが可能となる。投光・受光アレイデバイス100は、このようなスキャニング動作を行わせることにより、たとえば、外部の物体の表面形状を面で走査するマルチビーム走査装置として構成することができる。
なお、投光・受光アレイデバイス100では、必ずしも各チャンネルを前記のように順番に発光・受光動作させる必要はなく、任意の順序で発光・受光動作させることが可能であり、たとえば、各チャンネルを同時に動作させてもよい。
【0067】
本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス100を用いたマルチビーム走査装置では、たとえば、ガルバノミラーによる走査などとは異なり、可動部分を有さないマルチビーム走査装置を構成することが可能となる。したがって、簡易な構成でしかも高信頼度のマルチビーム走査装置を構成することができる。
【0068】
なお、本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス100における、CH1ないしCH3ごとの発光素子24、受光素子26の配置は
図6(a)に限られるものではなく、任意の配置が可能であり、たとえば、
図6(b)のように配置してもよい。
図6(b)では、CH2で受光素子26−2の代わりに発光素子24−3を配置して、
CH2を投光部として構成し、CH3で発光素子24−3の代わりに受光素子26−2を配置して、CH2を受光部として構成している。
【0069】
このように、本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス100では、たとえば、投光部からの光放射パワー、受光部での受光感度等を考慮して、チャンネルごとに投光部、
受光部を任意に配置することができる。
【0070】
本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス100によれば、複数の投光・受光デバイスの個々の光軸調整が、1個のレンズ28の位置合わせを行うだけで達成されるので、
光軸調整がさらに容易なものとなる。
【0071】
なお、投光・受光アレイデバイス100は、第1の実施の形態と同様の製造方法、すなわち、SOI基板を用いた方法、あるいは透光性樹脂による一体成型等による製造方法で製造することができる。
【0072】
ここで、上記実施の形態では、チャンネルの数が3チャンネルの形態を例示して説明したが、これに限られず、4チャンネル以上としてもよい。また、上記実施の形態では、1次元配列を例示して説明したが、これに限られず、2次元的なマトリクス状に配置してもよい。マトリクス状に配置した場合には、たとえば、面で物体の形状等をスキャニングするレーザレーダー等の用途が考えられる。
【0073】
[第3の実施の形態]
つぎに、
図8を参照して、本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス350について説明する。本実施の形態は、投光・受光デバイスを2次元的に面状に配列するとともに、光路変換部とレンズとを一体的に形成した形態である。
図8(a)は、投光・受光アレイデバイス350の側面図であり、
図8(b)は、投光・受光アレイデバイス350のレンズ352の平面図および側面図である。
【0074】
図8(a)に示すように、投光・受光アレイデバイス350は、光集積回路360、レンズ352、複数(本実施の形態では、
図8(b)に示すように、19個)の光屈折部354A、354Bの対(以下、総称する場合は、光屈折部354)、および光集積回路360内に埋設されたコア356を含んで構成されている。各コア356のレンズ352と対向する側と反対側には、発光素子または受光素子(図示省略)が配置されている。また、光屈折部354は、
図8(b)に示すように、レンズ352の光出射面に2次元的(面状)に形成されている。
【0075】
図8(a)に示すように、投光・受光アレイデバイス350においても、光屈折部354Aおよび354Bで仮想焦点Fに向かう仮想光線を2つに分離しており、分離された各々の仮想光線の進行方向にコア356を配置している。したがって、個々のコア356とレンズとの間における光線の経路は、
図8(a)に示すように、
図6と同様である。
【0076】
本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス350によれば、2次元的に面状に配置された複数の投光・受光デバイスの各々に対応する光屈折部354とレンズ352とのアライメントは不要となる。光軸調整は、光屈折部354と光導波路のコア356との位置合わせで行われる。
【0077】
また、本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス350によれば、投光・受光デバイスを面状に配置しているので、たとえば、上述のマルチビーム走査装置やレーザレーダー等の用途に好適に用いることができる。
【0078】
また、先述の投光・受光デバイス10あるいは投光・受光アレイデバイス100では、
光路変換部としての光屈折部を光集積回路に形成する形態を例示して説明したが、これに限られず、本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス350のように、レンズ側に設けてもよい。このような構成によれば、光屈折部354も含むレンズ352を、たとえば透光性樹脂による射出成形で製造することができるので、投光・受光アレイデバイスの製造をより簡易にすることができる。
【0079】
[第4の実施の形態]
図9を参照して、本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス250について説明する。
投光・受光アレイデバイス250は、半導体素子252、レンズ254、および半田バンプ256を含んで構成されている。
【0080】
投光・受光アレイデバイス250も、上記各実施の形態と同様、半導体素子252の主面258に形成された光路変換部としての光屈折部(図示省略)を有し、該光屈折部で仮想光線を複数(
図9では2つ)に分離する。そして、分離された各々の仮想光線の進行方向に光導波路、あるいは発光素子、受光素子(図示省略)を配置している。
【0081】
投光・受光アレイデバイス250の光屈折部は、半導体素子252の主面258に異方性エッチング等により形成することができる。また、レンズ254は、たとえば、樹脂を用いたナノインプリント等で成形することができる。
したがって、本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス250は、小型化が可能であり、また低コストで製造することができる。また、ナノインプリントによるレンズの成形はアレイ化が容易なので、投光・受光アレイデバイスの簡易な製造、あるいは投光・受光デバイスの一括製造等が可能となる。
【0082】
さらに、投光・受光アレイデバイス250は、半導体素子252に形成された半田バンプ256を有しているので、たとえば、光を基板表面に対し垂直に出射、入射するタイプの光基板(たとえば、特開2013−137419号公報等参照)に実装して、マルチビーム走査装置等のシステムを簡易に構成することができる。
【0083】
[第5の実施の形態]
図10を参照して、本実施の形態に係る投光・受光デバイス200について説明する。
図10(a)は、投光・受光デバイス200の平面図、
図10(b)は、投光・受光デバイス200の、
図10(a)におけるB−B’線に沿って切断した断面図を示している。
投光・受光デバイス200は、同軸光学系を面型発光・受光デバイス(面型光学装置)として構成するものであり、そのため、光路変換部として回折格子を用いている。つまり、投光・受光デバイス200では、投光・受光デバイス10の光屈折部14の代わりに回折格子50A、50Bを配置している。
【0084】
図10に示すように、投光・受光デバイス200は、光集積回路56、およびレンズ68を含んで構成されている。
【0085】
光集積回路56は、投光・受光デバイス10と同様に、内部に埋設されたコア52Aおよび52B(以下、総称する場合には「コア52」と称する場合がある。)を有し、その表面には、回折格子50Aおよび50B(以下、総称する場合には「回折格子50」と称する場合がある。)が形成されている。
【0086】
また、光集積回路56には、投光・受光デバイス10と同様に、開孔部54Aおよび54Bが形成されている。開孔部54Aには発光素子24が搭載され、該発光素子24の光出射部はコア52Aの端面と光結合されている。また、開孔部54Bには受光素子26が搭載され、該受光素子26の受光部はコア52Bの端面と光結合されている。そして、投光・受光デバイス10と同様、投光部・受光部駆動回路(図示省略)により、発光素子および受光素子が独立に駆動されるように構成されている。
さらに、コア52と光集積回路56の光集積回路本体部分で形成されたクラッドとで光導波路を構成していることも投光・受光デバイス10と同様である。
【0087】
つぎに、投光・受光デバイス200の作用について説明する。
【0088】
図10(a)において、発光素子24から出射した光は、コア52Aの内部を進み、点PAで示される部分において90°光路を曲げられ、回折格子50Aに到達する。回折格子50Aに到達した光は回折格子の回折作用により紙面垂直に立ち上げられ、紙面手前に向かって出射し、
図10(b)に示すように、レンズ68の仮想焦点Fに集束する仮想光線DAに沿って進み、レンズ68から平行光として出射する。
【0089】
一方、
図10(b)に示すように、投光・受光デバイス200の外部からレンズ68に向かって入射した光は、仮想光線DBにそって進み、回折格子50Bで光集積回路56の表面に対し垂直な方向に光路を曲げられて、光集積回路56に入射する。さらに、
図10(a)に示すように、光集積回路56に入射した後、コア52Bに光結合した光は、点PBで示される部分において90°光路を曲げられ、コア52Bの内部を進んだ後、受光素子26で受光される。
【0090】
ここで、投光・受光デバイス200では、コア52の先端から光を拡げて回折格子50に光結合させている。コア52の先端は光集積回路56内でそのまま開放してもよいが、
コア52の先端に、
図11に示すテーパ58を設けて、光の拡がりをより確実なものとしてもよい。テーパ58は、たとえばSiによるコア52形成時に同時に形成することができる。
なお、
図10(a)では、発光素子側のテーパ58をテーパ58A、受光素子側のテーパ58をテーパ58Bと表記している。
【0091】
ここで、回折格子50の回折角度θ
dについて説明する。
上述したように、本発明は、仮想光軸DAおよびDBに沿って進む光の光路を途中で変換し、仮想焦点Fに集束する光路を複数(
図10では2つ)に分離する点を1つの特徴としている。
【0092】
この特徴を実現すべく、本実施の形態に係る投光・受光デバイス200の回折格子50では、
図10(b)に示すように、光集積回路56の表面に対する法線l
A、l
Bに平行に光が進むのではなく、該法線l
A、l
Bに対しθ
dなる角度で進むように構成されている。そして、この角度θ
dは、仮想光線DA、DBが前記法線l
A、l
Bとなす角度と略同一の角度とされている。
回折格子50の回折角度θ
dをこのように設定することにより、回折格子50は、投光・受光デバイス10の光屈折部14と同様の作用を奏することができる。
【0093】
なお、投光・受光デバイス200は、第1の実施の形態と同様の製造方法、すなわち、
SOI基板を用いた方法、あるいは透光性樹脂による一体成型等による製造方法で製造することができる。
【0094】
以上のように、本実施の形態に係る投光・受光デバイス200によっても、光軸調整がより容易な同軸光学系を実現することができる。
また、本発明の光路変換手段は、光集積回路の端面の傾斜部を用いる方法のみならず、
光路を変換する方法であれば得に制約なく採用することが可能であり、本実施の形態のように回折格子を採用することも可能である。
【0095】
[第6の実施の形態]
図12を参照して、本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス300について説明する。
図12(a)は投光・受光アレイデバイス300の平面図を、
図12(b)は投光・受光アレイデバイス300の
図12(a)におけるC−C’線に沿って切断した断面図を示している。
図12に示すように、投光・受光アレイデバイス300は、先述した投光・受光デバイス200を複数(
図12では、一例として19個)アレイ状に配置したものである。
【0096】
投光・受光アレイデバイス300は、投光・受光デバイス200を複数形成した光集積回路60およびレンズ62を含んで構成されている。投光・受光デバイス200の部分は、回折格子50(回折格子50A、50B)を含んで構成されており、個々の投光・受光デバイス200は、上述した作用・機能を奏する。
【0097】
また、投光・受光アレイデバイス300も、投光・受光アレイデバイス200と同様に、投光部・受光部駆動回路(図示省略)によって、各投光・受光デバイス200の発光素子24、受光素子26を個別に駆動することが可能なように構成されている。
【0098】
したがって、投光・受光アレイデバイス300でも、たとえば、投光・受光デバイス200を順番に発光・受光動作を行わせることにより、スキャニング動作を行わせることが可能となる。したがて、投光・受光アレイデバイス300も、このようなスキャニング動作を行わせることにより、たとえば、外部の物体の表面形状を面で走査するマルチビーム走査装置として構成することが可能である。
【0099】
本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス300を用いたマルチビーム走査装置でも、たとえば、ガルバノミラーによる走査などとは異なり、可動部分を有さないマルチビーム走査装置を構成することが可能となる。したがって、簡易な構成でしかも高信頼度のマルチビーム走査装置を構成することができる。
【0100】
なお、投光・受光アレイデバイス300では、必ずしも各投光・受光デバイス200を順番に発光・受光動作させる必要はなく、各チャンネルの動作のタイミングは任意に設定することができる。このように設定した場合の投光・受光アレイデバイス300の用途としては、たとえば、面で物体の形状をスキャニングし、物体の有無等を検知するレーザレーダー等の用途が考えられる。
【0101】
また、投光・受光アレイデバイス300は、第1の実施の形態と同様の製造方法、すなわち、SOI基板を用いた方法、あるいは透光性樹脂による一体成型等による製造方法で製造することができる。
【0102】
[第7の実施の形態]
図13を参照して、本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス150について説明する。本実施の形態は、投光・受光アレイデバイス300において分離されていた回折格子とレンズとを一体的に構成した形態である。
図13(a)は投光・受光アレイデバイス150の斜視図、
図13(b)は、
図13(a)におけるD−D’線に沿って切断した断面図を示している。
【0103】
図13に示すように、投光・受光アレイデバイス150は、光集積回路部152、レンズ部154、および回折格子部156を含んで構成され、光集積回路部152、レンズ部154、および回折格子部156は、同一の材料で一体的に形成されている。
回折格子部156の作用は、投光・受光アレイデバイス300の回折格子50と同様であり、各回折格子部156には、光導波路あるいは発光素子、受光素子(図示省略)が光結合されていることも同様である。
【0104】
投光・受光アレイデバイス150は、回折格子部156を内部に作り込んだ光集積回路部152とレンズ部154を、たとえば、透光性樹脂による射出成型により一体的に製造することができる。さらに、投光・受光デバイス200のように、光導波路部、および発光素子搭載部、受光素子搭載部も含めた形態の投光・受光デバイスとして一体的に製造することも可能である。本実施の形態に係る投光・受光アレイデバイス150によれば、射出成型の段階で回折格子とレンズとの位置合わせが行われるので、さらに光軸調整が容易なものとなる。
【0105】
[第8の実施の形態]
図14および
図15を参照して、本実施の形態に係る投光・受光デバイス400および500について説明する。
【0106】
図14(a)は投光・受光デバイス400の側面図、
図14(b)は、投光・受光デバイス400のコーンミラー64の平面図を示している。
図14に示すように、投光・受光デバイス400は、投光・受光アレイデバイス300および、投光・受光アレイデバイス300からの出射光および投光・受光アレイデバイス300への入射光に光結合されたコーンミラー64を含んで構成されている。コーンミラーとは、円錐の周囲面を鏡面としたミラーである。
【0107】
コーンミラー64は、投光・受光アレイデバイス300の面状に配置された複数の投光・受光デバイス200から出射する光を全周方向に放射し、投光・受光デバイス200に向かう光を全周方向から受光している。つまり、投光・受光デバイス400は、投光・受光アレイデバイス300の発光素子からの光線が全周方向に出射し、あるいは受光素子への光線が全周方向から入射するようにしたものである。
このような構成を有する投光・受光デバイス400をレーザ測距装置になどに適用すれば、全方向計測が可能となる。
【0108】
なお、本実施の形態に係る投光・受光デバイス400では、コーンミラー64と光結合させる投光・受光デバイスとして投光・受光アレイデバイス300を採用した場合を例示して説明したが、これに限られず、上記各実施の形態に係る投光・受光デバイスを採用することができる。
【0109】
図15(a)は投光・受光デバイス500の平面図、
図15(b)は、
図15(a)のE−E’線に沿って切断した断面図を示している。
図15に示す投光・受光デバイス500は、投光・受光アレイデバイス300および魚眼レンズ66を含んで構成されている。先述した各実施の形態に係る投光・受光デバイスでは、その構造上、出射する光線の振れ角には制約がある。そこで、本実施の形態に係る投光・受光デバイス500では、投光・受光デバイスからの出射光に対し魚眼レンズ66を配して、上記投光・受光デバイス400同様全周方向に光を出射し、全周方向から光を入射するとともに、出射光および入射光の振れ角を拡大している。
【0110】
図15(b)において、光集積回路60の表面に対する法線l
s1に対してα
1なる角度で出射(あるいは入射)した光線は、魚眼レンズ66の作用により法線l
s2に対してα
2(>α
1)なる角度をなす光線に変換される。その結果、投光・受光アレイデバイス300内の投光・受光デバイス200から出射する光線、あるいは投光・受光デバイス200に入射する光線の振れ角を拡大することができる。
したがって、上記構成を有する投光・受光デバイス500をレーザを用いたスキャナや、マルチビーム走査装置等に適用すれば、出射する光線、入射する光線の偏光角を拡大することができる。
【0111】
なお、本実施の形態に係る投光・受光デバイス500では、魚眼レンズ66と光結合させる投光・受光デバイスとして投光・受光アレイデバイス300を採用した場合を例示して説明したが、これに限られず、上記各実施の形態に係る投光・受光デバイスを採用することができる。
【0112】
なお、上記各実施の形態では、発光素子または受光素子から光路変換部(光屈折部14、回折格子50)にかけての、コア(コア20、コア52)を含む光導波路の構成については特に言及しなかったが、たとえば、発光素子24等から出射する光のビーム形状と、
光集積回路から出射させる光のビーム形状との関係に応じて、スポットサイズ変換導波路(たとえば、参考文献1等参照)として構成してもよい。
[参考文献1]
K. Shiraishi, et al.,‘A silicon-based spot-size converter between single-mode fibers and Si-wire waveguides using cascaded tapers’,Applied Physics Letters 91,141120(2007)