(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関の回転数に対して発生するトルクを示す制御用性能線として、前記内燃機関の性能に基づいた第一の制御用性能線に加えて、この第一の制御用性能線よりも消費される燃料を低減するようにそれぞれの出力可能な最大の馬力がその第一の制御用性能線における出力可能な最大の馬力から段階的に低くなる複数の低燃費制御用性能線を設け、
前記第一の制御用性能線と複数の前記低燃費制御用性能線の内から、各前記出力可能な最大の馬力が、前記内燃機関を搭載した車両の走行負荷抵抗に対してその車両を走行させるために必要な馬力である走行負荷抵抗馬力とこの走行負荷抵抗馬力で走行しているその車両を加減速させるために前記走行負荷抵抗馬力に上乗せする馬力である余裕馬力とを足した参照馬力と等しいか、又はこの参照馬力よりも大きく且つこの参照馬力に最も近い制御用性能線を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した前記制御用性能線に沿って、前記内燃機関の出力を制御する出力制御手段とを備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
前記余裕馬力を、前記車両の現在の現車両総重量と最大車両総重量との重量比と、前記内燃機関の性能に基づいた最大馬力から定められる馬力基準値とに基づいて算出する余裕馬力算出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
前記第一の制御用性能線が、前記内燃機関の性能に基づいた最大馬力を出力可能に形成されると共に、前記低燃費制御用性能線が、出力可能な最大の馬力が前記最大馬力よりも低い制限馬力に制限され、該制限馬力から前記内燃機関の回転数が上がるにつれて、前記制限馬力の等馬力線に沿って形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
前記第一の制御用性能線に、無負荷での最高回転数を規定する無負荷最高回転数点を設けると共に、前記低燃費制御用性能線に、前記低燃費ガバニング開始点よりも低トルクで、高回転の、且つ前記無負荷最高回転数点よりも高トルクで、低回転の経由点を設け、
前記低燃費制御用性能線が、前記低燃費ガバニング開始点から前記経由点までの形状が、前記第一の制御用性能線の前記ガバニング開始点から前記無負荷最高回転数点までの形状と略等しい形状に形成されることを特徴とする請求項4又は5に記載の内燃機関の制御装置。
内燃機関の回転数に対して発生するトルクを示す制御用性能線として、前記内燃機関の性能に基づいた第一の制御用性能線に加えて、この第一の制御用性能線よりも消費される燃料を低減するようにそれぞれの出力可能な最大の馬力がその第一の制御用性能線における出力可能な最大の馬力から段階的に低くなる複数の低燃費制御用性能線を設けた内燃機関の制御方法であって、
前記内燃機関を搭載した車両の走行負荷抵抗に対してその車両を走行させるために必要な馬力である走行負荷抵抗馬力とこの走行負荷抵抗馬力で走行しているその車両を加減速させるために前記走行負荷抵抗馬力に上乗せする馬力である余裕馬力とを足して参照馬力を算出し、
前記第一の制御用性能線と複数の前記低燃費制御用性能線の内から、各前記出力可能な最大の馬力が、算出した前記参照馬力と等しいか、又はこの参照馬力よりも大きく且つこの参照馬力に最も近い制御用性能線を選択し、
選択したその制御用性能線に沿って、前記内燃機関の出力を制御することを特徴とする内燃機関の制御方法。
前記余裕馬力を、前記車両の最大積載量と現在の前記車両の積載量の重量比と、前記内燃機関の性能に基づいた最大馬力から定められる馬力基準値とに基づいて算出することを特徴とする請求項8に記載の内燃機関の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その課題は、運転手の感じる内燃機関の出力不足感を緩和しながら、車両状況や道路状況に基づいて燃料消費量を低減することができる内燃機関の制御装置、内燃機関、及び内燃機関の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明の内燃機関の制御装置は、内燃機関の回転数に対して発生するトルクを示す制御用性能線として、前記内燃機関の性能に基づいた
第一の制御用性能線に加えて、
この第一の制御用性能線よりも消費される燃料を低減するように
それぞれの出力可能な最大の馬力がその第一の制御用性能線における出力可能な最大の馬力から段階的に低くなる複数の低燃費制御用性能線
を設け、
前記第一の制御用性能線と複数の前記低燃費制御用性能線の内から、各前記出力可能な最大の馬力が、前記内燃機関を搭載した車両の走行負荷抵抗に対してその車両を走行させるために必要な馬力である走行負荷抵抗馬力とこの走行負荷抵抗馬力で走行しているその車両を加減速させるために前記走行負荷抵抗馬力に上乗せする馬力である余裕馬力とを足した参照馬力と等しいか、又はこの参照馬力よりも大きく且つこの参照馬力に最も近い制御用性能線を選択する選択手段と、前記選択手段が選択した前記制御用性能線に沿って、前記内燃機関の出力を制御する出力制御手段
とを備えて構成される。
【0007】
なお、ここでいう制御用性能線とは、性能曲線やトルクカーブとも言われる内燃機関の出力の状態を示すものであり、この制御用性能線に沿った出力となるように燃料噴射量や吸気量などが決定される。
【0008】
また、ここでいう走行負荷抵抗馬力とは、ロードロード馬力ともいい、道路勾配や天候条件などの道路状況、及び車両の走行抵抗や車両の積載量などの車両状況の両方に基づく総合的な抵抗である走行負荷抵抗に対して車両を走行させるために必要な馬力のことをいう。
【0009】
加えて、余裕馬力とは、車両を加減速するために必要な馬力のことをいい、詳しくは、車両の重量に基づいて算出される馬力である。
【0010】
この構成によれば、通常制御用性能線に加えて、通常制御用性能線よりも消費される燃料を低減するように設定された低燃費制御用性能線を設け、その通常制御用性能線と低燃費制御用性能線の中から、車両状況や道路状況により変化する走行負荷抵抗馬力と車両の重量により変化する余裕馬力に基づいて選択された制御用性能線に沿って内燃機関の出力を自動的に制御するので、低燃費制御用性能線による低燃費効果の機会を増やして、燃料消費量を低減することができる。
【0011】
また、走行負荷抵抗馬力と余裕馬力に基づいて選択された制御用性能線に沿って内燃機関の出力を制御することで、幅広い内燃機関の運転条件に対して最適な出力を得ることができる。これにより、内燃機関の出力不足を緩和しながら、燃料消費量を低減することができる。
【0012】
また、上記の内燃機関の制御装置において、それぞれの出力可能な最大の馬力が段階的に低くなる複数の前記低燃費制御用性能線を設け、前記通常制御用性能線と複数の前記低燃費制御用性能線の内から、各前記出力可能な最大の馬力が、前記走行負荷抵抗馬力と前記余裕馬力とを足した参照馬力と等しいか、又は該参照馬力よりも大きく且つ該参照馬力に最も近い制御用性能線を選択する選択手段を備えて構成されると、車両を加速するための余裕馬力分を考慮しつつ、最も出力可能な最大の馬力が低い、つまり消費される燃料の低い制御用性能線を選択することができる。これにより、内燃機関の出力不足を回避しながら、燃費を向上することができる。
【0013】
加えて、上記の内燃機関の制御装置において、前記余裕馬力を、前記車両の現在の現車両総重量と最大車両総重量との重量比と、前記内燃機関の性能に基づいた最大馬力から定められる馬力基準値とに基づいて算出する余裕馬力算出手段を備えて構成されると、車両を加速するために必要な余裕馬力を単純なロジックで算出することができる。
【0014】
なお、余裕馬力は現車両総重量と最大車両総重量の重量比に基づいて算出されるため、現車両総重量が重くなる程大きくなる値となる。
【0015】
また、ここでいう馬力基準値とは、車両の積載量、車両の大きさ、及び内燃機関の出力性能などにより予め定められた値であって、例えば、車両の積載量や大きさに基づいて定められた定数と内燃機関の最大馬力とを乗算して算出される値である。この定数は、車両の最大車両総重量が重いほど大きく、内燃機関の最大馬力が大きいほど小さくすることが望ましい。
【0016】
さらに、上記の内燃機関の制御装置において、前記通常制御用性能線が、前記内燃機関の性能に基づいた最大馬力を出力可能に形成されると共に、前記低燃費制御用性能線が、出力可能な最大の馬力が前記最大馬力よりも低い制限馬力に制限され、該制限馬力から前記内燃機関の回転数が上がるにつれて、前記制限馬力の等馬力線に沿って形成されるように構成されると、低燃費制御用性能線に沿って内燃機関の出力を制御した場合の出力可能な最大の馬力を制限することで、速度超過の抑制による消費馬力を低減することができ、燃料消費量を低減することができる。
【0017】
なお、この低燃費制御用性能線で内燃機関の出力で制御する場合でも、制限馬力を規定する制限馬力点までは、通常制御用性能線に沿うことが好ましい。そこで、例えば、低燃費制御用性能線として、ゼロから最高回転数までの内燃機関の回転数に対して発生するトルクを示すように形成したものは、回転数が上がるに連れて制限馬力点までは通常制御用性能線に沿うように形成され、制限馬力点からは制限馬力の等馬力線に沿うように形成される。一方、一つの通常制御用性能線から複数の低燃費制御用性能線を分岐するように形
成したものは、制限馬力を規定する制限馬力点から通常制御用性能線から分岐して等馬力線に沿って形成される。
【0018】
その上、上記の内燃機関の制御装置において、ガバニング開始回転数を規定するガバニング開始点を設けると共に、前記低燃費制御用性能線に、前記ガバニング開始回転数よりも回転数の低い低燃費ガバニング開始回転数を規定する低燃費ガバニング開始点を設けて構成されることが望ましい。
【0019】
なお、ガバニング開始回転数とは、内燃機関の回転数が高回転領域となった場合に、内燃機関の出力トルクが高トルクにならないように、内燃機関の出力の制御を開始する回転数である。車両の走行中にこのガバニング開始回転数が変速機のギヤ段をシフトする目安となる。
【0020】
この構成によれば、低燃費制御用性能線における低燃費ガバニング開始回転数を通常制御用性能線のガバニング開始回転数よりも低く設定することで、燃料消費率の低い領域に内燃機関の回転数を早期にシフトさせることができる。これにより、内燃機関を燃料消費率の低い領域で運転する機会が多くなり、燃料消費量を低減することができる。
【0021】
例えば、内燃機関の動力伝達が手動変速機を経由する場合には、それぞれの消費される燃料が段階的に低くなる複数の低燃費制御用性能線の各低燃費ガバニング開始回転数が段階的に低くなるように設定することが望ましい。これにより、運転手の変速作業を早期に促して、内燃機関の回転数を燃料消費率の低い領域に維持することができる。
【0022】
また、内燃機関の動力伝達が自動変速機を経由する場合には、それぞれの消費される燃料が段階的に低くなる複数の低燃費制御用性能線の各低燃費ガバニング開始回転数を同じ回転数にすることが望ましい。これにより、自動変速機が自動で、内燃機関の回転数を燃料消費率の低い領域に維持することができる。
【0023】
その上さらに、上記の内燃機関の制御装置において、前記通常制御用性能線に、無負荷での最高回転数を規定する無負荷最高回転数点を設けると共に、前記低燃費制御用性能線に、前記低燃費ガバニング開始点よりも低トルクで、高回転の、且つ前記無負荷最高回転数点よりも高トルクで、低回転の経由点を設け、前記低燃費制御用性能線が、前記低燃費ガバニング開始点から前記無負荷最高回転数点までが、前記経由点で折れ曲がる、又は前記経由点を湾曲しながら通過するように形成されるように構成されると、空吹かし時の内燃機関の最高回転数を低燃費制御用性能線に沿って出力が制御されている場合でも通常制御用性能線の無負荷最高回転数と同じにすることで、走行中のシフト時やエアタンク充填時の高アイドル時などでの違和感を抑制することができる。
【0024】
なお、経由点は、低燃費ガバニング開始点と無負荷最高回転数点を結ぶ直線よりも原点側に配置されることが望ましい。
【0025】
また、上記の内燃機関の制御装置において、前記通常制御用性能線に、無負荷での最高回転数を規定する無負荷最高回転数点を設けると共に、前記低燃費制御用性能線に、前記低燃費ガバニング開始点よりも低トルクで、高回転の、且つ前記無負荷最高回転数点よりも高トルクで、低回転の経由点を設け、前記低燃費制御用性能線が、前記低燃費ガバニング開始点から前記経由点までの形状が、前記通常制御用性能線の前記ガバニング開始点から前記無負荷最高回転数点までの形状と略等しい形状に形成されるように構成されると、低燃費ガバニング開始回転数からの吹き上がり感を、通常制御用性能線に沿って制御された場合の吹き上がり感と同様にすることができるので、低燃費制御用性能線に沿って出力が制御されている場合でも、通常制御用性能線に沿って制御されている場合と同様の感覚
でシフト操作などを行うことができる。
【0026】
そして、上記の課題を解決するための本発明の内燃機関は、上記に記載の内燃機関の制御装置を備えて構成される。この構成によれば、運転手の感じる内燃機関の出力不足感を緩和しながら、燃料消費量を低減することができる。
【0027】
そして、上記の課題を解決するための本発明の内燃機関の制御方法は、
内燃機関の回転数に対して発生するトルクを示す制御用性能線として、前記内燃機関の性能に基づいた第一の制御用性能線に加えて、この第一の制御用性能線よりも消費される燃料を低減するようにそれぞれの出力可能な最大の馬力がその第一の制御用性能線における出力可能な最大の馬力から段階的に低くなる複数の低燃費制御用性能線を設けた内燃機関の制御方法であって、前記内燃機関を搭載した車両の走行負荷抵抗に対してその車両を走行させるために必要な馬力である走行負荷抵抗馬力とこの走行負荷抵抗馬力で走行しているその車両を加減速させるために前記走行負荷抵抗馬力に上乗せする馬力である余裕馬力とを足して参照馬力を算出し、前記第一の制御用性能線と複数の前記低燃費制御用性能線の内から、各前記出力可能な最大の馬力が、算出した前記参照馬力と等しいか、又はこの参照馬力よりも大きく且つこの参照馬力に最も近い制御用性能線を選択し、選択
したその制御用性能線に沿って、前記内燃機関の出力を制御することを特徴とする方法である。
【0028】
また、上記の内燃機関の制御方法において、前記通常制御用性能線とそれぞれの出力可能な最大の馬力が段階的に低くなる複数の前記低燃費制御用性能線の内から、出力可能な最大の馬力が、前記走行負荷抵抗馬力と前記余裕馬力とを足した参照馬力と等しいか、又は該参照馬力よりも大きく且つ該参照馬力に最も近い制御用性能線を選択することを特徴とすることが望ましい。
【0029】
加えて、上記の内燃機関の制御方法において、前記余裕馬力を、前記車両の最大積載量と現在の前記車両の積載量の重量比と、予め定めた馬力基準値とに基づいて算出することを特徴とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の内燃機関の制御装置、内燃機関、及び内燃機関の制御方法によれば、通常制御用性能線に加えて、通常制御用性能線よりも消費される燃料を低減するように設定された低燃費制御用性能線を設け、その通常制御用性能線と低燃費制御用性能線の中から、車両状況や道路状況により変化する走行負荷抵抗馬力と車両の重量により変化する余裕馬力に基づいて選択された制御用性能線に沿って内燃機関の出力を制御するので、低燃費制御用性能線による低燃費効果の機会を増やして、燃料消費量を低減することができる。
【0031】
また、走行負荷抵抗馬力と余裕馬力に基づいて選択された制御用性能線に沿って内燃機関の出力を制御することで、幅広い内燃機関の運転条件に対して最適な出力を得ることができる。これにより、内燃機関の出力不足を緩和しながら、燃料消費量を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関の制御装置、内燃機関、及び内燃機関の制御方法について説明する。
【0034】
なお、
図1及び
図6では、この実施の形態のエンジン(内燃機関)1及び50とそのエンジン1及び50を制御するECU(内燃機関の制御装置)2及び51は、車両に搭載されているものとして説明するが、必ずしも、車両に搭載されるものに限定されない。また、エンジン1及び50は、直列四気筒のディーゼルエンジンとして説明するが、本発明は、ガソリンエンジンでも適用することができ、その気筒の数や配列は特に限定されない。
【0035】
また、以下の実施の形態では、エンジン1及び50の出力可能な最大の馬力と、エンジン1及び50の性能に基づいた最大の馬力を区別し、そのエンジン1及び50の性能に基づいた最大の馬力を最大馬力P1とする。加えて、実際の制御に使用されるトルクカーブ(制御用性能線)は、符号TCを付けて区別する。
【0036】
図1に示すように、第一の実施の形態のエンジン1とECU2を搭載した車両においては、エンジン1の動力は、クラッチ3を経由して手動変速機(マニュアルトランスミッション)4に伝達され、さらに、手動変速機4より推進軸(プロペラシャフト)5を介して作動装置(デファレンシャルギヤ)6に伝達され、作動装置6より駆動軸(ドライブシャフト)7を介して車輪8に伝達される。これにより、エンジン1の動力が車輪8に伝達され、車両が走行する。
【0037】
このECU2は、電気回路によってエンジン1の制御を担当している電気的な制御を総合的に行うマイクロコントローラであり、主にエンジン1の燃料噴射量や吸気量を制御して、エンジン1の出力を制御している。
【0038】
そして、このECU2は、エンジン1の燃料噴射量や吸気量を制御するための予め記憶させた制御マップ(制御用性能線図)9を備えると共に、その制御マップ9に、エンジン1の回転数に対して発生するトルクを示すトルクカーブ(制御用性能線)として、エンジン1の性能に基づいた通常トルクカーブ(通常制御用性能線)10に加えて、通常トルクカーブ10よりも消費される燃料を低減するように設定された低燃費トルクカーブ(低燃費制御用性能線)20、30、及び40を設けて構成される。
【0039】
また、その制御マップ9に設けられる通常トルクカーブ10に、ガバニング開始回転数N
GS1を規定するガバニング開始点12を設けると共に、低燃費トルクカーブ20、30、及び40に、ガバニング開始回転数N
GS1よりも回転数の低い低燃費ガバニング開始回転数N
GS2、N
GS3、及びN
GS4をそれぞれ規定する低燃費ガバニング開始点22、32、及び42を設けて構成される。
【0040】
加えて、このECU2は、エンジン1の出力を制御するためのプログラムとして記憶されている、ロードロード馬力(走行負荷抵抗馬力)算出手段M1、余裕馬力算出手段M2、参照馬力算出手段M3、トルクカーブ選択手段(制御用性能線選択手段)M4、出力制御手段M5、及び選択解除手段M6を備えて構成される。
【0041】
まず、制御マップ9について
図2及び
図3を用いて説明する。
図2に示すように、制御マップ9は、エンジン回転数(以下、回転数とする)とエンジン出力トルク(以下、トルクとする)に基づいた、四つのトルクカーブ10、20、30、及び40が記憶されている。
【0042】
通常トルクカーブ10は、エンジン1の最大馬力P1を規定する最大馬力点11と、トルクの制限が開始されるガバニング開始回転数N
GS1を規定するガバニング開始点12
と、無負荷最高回転数(N.L.M.)N
NLMを規定するNLM点(無負荷最高回転数点)13を設ける。
【0043】
エンジン1の始動から最大馬力点11までの馬力上昇区間14では、回転数が上がるに連れて、出力馬力が最大馬力P1まで増加していく。なお、この最大馬力P1は、エンジン1が出力可能な最大の馬力であり、エンジン1の種類や気筒数などのエンジン1の性能に基づいて定められる。
【0044】
最大馬力点11からガバニング開始点12までの馬力減少区間15は、回転数が上がるに連れて、出力馬力は最大馬力P1から緩やかに減少していく。そして、ガバニング開始点12からのガバニング区間16は、燃料噴射量や吸気量を制限することに伴って、トルクが制限され、出力可能な最大の馬力は一気に減少していく。
【0045】
ガバニング開始点12で規定されるガバニング開始回転数N
GS1は、エンジン1の回転数が高回転領域の場合にトルクが高トルクとならないように、燃料噴射量や吸気量を制限することでトルクの制限が開始される回転数である。このガバニング開始回転数N
GS1は、図示しない回転速度計(タコメータ)に表示され、運転手に手動変速機4のギヤ段の変更を促すシフトポイントとなっている。また、このガバニング開始回転数N
GS1からは、エンジン1のトルクが抑制されるため、エンジン1の吹け上がり感を運転手が感じ易くなっており、ガバニング開始回転数N
GS1からの吹け上がり感によっても運転手にギヤ段の変更を促すことができる。
【0046】
NLM点13で規定される無負荷最高回転数N
NLMは、空吹かし時のエンジン1の最高回転数であり、走行中の手動変速機4によるギヤ段のシフト時や図示しないエアタンク充填時のハイアイドル(高回転アイドル)時に到達する回転数である。
【0047】
低燃費トルクカーブ20、30、及び40は、順に消費される燃料が段階的に低くなるように設定されている。詳しくは、低燃費トルクカーブ20、30、及び40は、順にそれぞれの出力可能な最大の馬力が段階的に低くなるように設定され、低燃費トルクカーブ20は最大馬力P1よりも小さい制限馬力P2に、低燃費トルクカーブ30は制限馬力P2よりも小さい制限馬力P3に、低燃費トルクカーブ40は制限馬力P3よりも小さい制限馬力P4にそれぞれ設定される。
【0048】
また、それぞれの低燃費トルクカーブ20、30、及び40は、それぞれに設けられた低燃費ガバニング開始点22、32、及び42が、順に回転数が低くなるように設定されている。詳しくは、
図2に示すように、低燃費ガバニング開始点22の規定する低燃費ガバニング開始回転数N
GS2は、通常トルクカーブ10のガバニング開始点12の規定するガバニング開始回転数N
GS1よりも回転数が低く、低燃費ガバニング開始点32の規定する低燃費ガバニング開始回転数N
GS3は、低燃費ガバニング開始回転数N
GS2よりも回転数が低く、低燃費ガバニング開始点42の規定する低燃費ガバニング開始回転数N
GS4は、低燃費ガバニング開始回転数N
GS3よりも回転数が低く設定される。
【0049】
ここで、低燃費トルクカーブ20を例にして説明する。
図3に示すように、低燃費トルクカーブ20は、制限馬力点21と低燃費ガバニング開始点22と折曲点(経由点)23とNLM点13を備えて構成される。
【0050】
制限馬力点21は、制限馬力P2を規定している。この低燃費トルクカーブ20は、エンジン1の始動からこの制限馬力点21までは、通常トルクカーブ10の馬力上昇区間14の一部に沿った馬力上昇区間24を備え、この馬力上昇区間24では、回転数が上がるに連れて、出力馬力が制限馬力P2まで増加していく。
【0051】
そして、この制限馬力点21から低燃費ガバニング開始点22までは、制限馬力P2の等馬力線に沿った等馬力区間25とされ、この等馬力区間25では、回転数が上がっても、出力可能な最大の馬力は制限馬力P2に制限される。よって、この等馬力区間25では、車速が必要以上に増加することを抑制するので、燃料消費量を低減することができる。
【0052】
低燃費ガバニング開始点22は、低燃費ガバニング開始回転数N
GS2を規定している。この低燃費ガバニング開始回転数N
GS2は、通常トルクカーブ10のガバニング開始回転数N
GS1よりも回転数が低く設定されている。
【0053】
つまり、低燃費トルクカーブ20に沿ってエンジン1の出力が制御されると、通常トルクカーブ10に沿ってエンジン1の出力が制御されているときと比較して、手動変速機4のギヤ段のシフトポイントが早くなる。
【0054】
図2に示すように、エンジン1には、燃料の単位容量あたりの走行距離、あるいは一定の距離をどれだけの燃料で走行可能かを示す指標として燃料消費率(SFC)が定められており、制御マップ9には、最も燃料消費率の低い領域SFC1から順に燃料消費率が高くなる領域SFC2、SFC3、SFC4が設けられている。
【0055】
低燃費トルクカーブ20は、ガバニング開始点12よりも回転数が低い低燃費ガバニング開始点22を設けることで、通常トルクカーブ10に沿ってエンジン1が制御される場合と比べて、早期に燃料消費率の低い領域SFC2への手動変速機4のギヤ段のシフトが促されるので、燃料消費量を低減することができる。
【0056】
図3に示すように、折曲点23は、低燃費ガバニング開始点22よりも低トルクで、高回転の、且つNLM点13よりも高トルクで、低回転の点であり、NLM点13の手前に設けられる点である。そして、低燃費ガバニング開始点22からNLM点13までが、この折曲点23で折れ曲がるように形成される。
【0057】
詳しくは、折曲点23を、低燃費ガバニング開始点22とNLM点13を結ぶ直線より原点側に配置して、低燃費ガバニング開始点22からNLM点13までが、原点側を凸として折れ曲がるように形成される。
【0058】
この折曲点23は、低燃費ガバニング開始点22から折曲点23までの低燃費ガバニング区間26に沿ってエンジン1の出力が制御された場合に、そのエンジン1の状況、例えば運転手の感じる吹き上がり感などが、通常トルクカーブ10のガバニング区間16に沿って制御された場合と略同様になるように定められる。
【0059】
詳しくは、低燃費ガバニング開始点22から折曲点23までの形状が、通常トルクカーブ10のガバニング区間16のガバニング開始点12からNLM点13までの形状と略等しい形状になるように、つまり、低燃費ガバニング区間26の直線の傾きがガバニング区間16の直線の傾きと略同等となるようにする。
【0060】
ガバニング区間16の直線の傾きを傾きθ1とし、低燃費ガバニング区間26の直線の傾きを傾きθ2とする。この傾きθ1と傾きθ2は、以下の数式(1)でその関係を表す。
【数1】
【0061】
このように、低燃費ガバニング区間26に沿って制御されたエンジン1の出力が、ガバニング区間16に沿って制御されたエンジン1の出力と略同様になることで、低燃費ガバニング開始回転数N
GS2からの吹き上がり感を、通常トルクカーブ10に沿って制御された場合の吹き上がり感と同様にすることができる。これにより、低燃費トルクカーブ20に沿って出力が制御されている場合でも通常トルクカーブ10に沿って制御されている場合と同様の感覚でシフト操作などを行うことができる。
【0062】
また、この折曲点23からNLM点13までは、空吹かし区間27とされ、低燃費トルクカーブ20における空吹かし時のエンジン1の最高回転数、つまり無負荷最高回転数N
NLMを変えないように設定される。これにより、走行中のシフト時や図示しないエアタンク充填時の高アイドル時などで、通常トルクカーブ10と同様になることで、違和感を抑制することができる。
【0063】
なお、無負荷最高回転数N
NLMを規定するNLM点13が示すトルクT1は、エンジン1の性能になどにより定められ、折曲点23が示すトルクT2は、トルクT1よりも大きい値、好ましくは10kgm程度大きい値に設定される。
【0064】
低燃費トルクカーブ20と同様に、低燃費トルクカーブ30は、制限馬力P3を規定する制限馬力点31と、低燃費ガバニング開始回転数N
GS3を規定する低燃費ガバニング開始点32と、折曲点33とを備え、制限馬力点31までの馬力上昇区間34と、制限馬力点31から低燃費ガバニング開始点32までの等馬力区間35と、低燃費ガバニング開始点32から折曲点33までの低燃費ガバニング区間36と、折曲点33からNLM点13までの空吹かし区間37を設ける。
【0065】
同じく、低燃費トルクカーブ40は、制限馬力P4を規定する制限馬力点41と、低燃費ガバニング開始回転数N
GS4を規定する低燃費ガバニング開始点42と、折曲点43とを備え、制限馬力点41までの馬力上昇区間44と、制限馬力点41から低燃費ガバニング開始点42までの等馬力区間45と、低燃費ガバニング開始点42から折曲点43までの低燃費ガバニング区間46と、折曲点43からNLM点13までの空吹かし区間47を設ける。
【0066】
低燃費トルクカーブ30及び40の各点及び各区間の特徴については、低燃費トルクカーブ20と同様のためその説明については省略する。
【0067】
次に、ECU2の各手段について説明する。ロードロード馬力算出手段M1は、ロードロード馬力(走行負荷抵抗馬力)P
RLを算出する手段である。詳しくは、道路勾配や天候状況などの道路状況と、車両の積載量や車両の速度に応じた車両の走行抵抗などの車両状況に基づいてロードロード馬力P
RLを算出する手段である。
【0068】
このロードロード馬力算出手段M1は、道路状況取得手段として、加速度センサなどの検知信号から道路勾配を取得する道路勾配取得手段、及び受信した天候情報から路面状況を類推する路面類推手段などを備える。また、車両状況取得手段として、速度センサなど
の検知信号から車速を取得する車速取得手段、車速と道路勾配から転がり抵抗、空気抵抗、勾配抵抗、及び加速抵抗を含む走行抵抗を算出する走行抵抗算出手段、その走行抵抗と車両の駆動力を用いて車両の現在の現車両総重量GVWを算出する重量算出手段などを備える。なお、これらの道路状況取得手段や車両状況取得手段は周知の技術を用いることとし、その詳細については説明を省略する。
【0069】
そして、このロードロード馬力算出手段M1は、それらで取得及び算出した全ての値を考慮してロードロード馬力P
RLを算出する。このロードロード馬力P
RLは、道路勾配が大きい程大きくなり、車両の速度が速くなる程大きくなり、車両の現車両総重量GVWが重くなる程大きくなる値である。
【0070】
余裕馬力算出手段M2は、車両を加速するために必要な最小限の余裕馬力P
EXを算出する手段である。通常、この余裕馬力P
EXは、エンジン1の出力した馬力からロードロード馬力P
RLを引いた馬力となるが、この余裕馬力算出手段M2では、余裕馬力P
EXを、車両の現在の現車両総重量GVWと最大車両総重量GVW
MAXとの重量比Rと、エンジン1の性能に基づいた最大馬力P1から定められる馬力基準値P1’とに基づいて算出する。
【0071】
詳しくは、余裕馬力P
EXを以下の数式(2)を用いて算出する。
【数2】
【0072】
なお、上記の数式(2)の定数kと最大馬力P1を乗算した値が、馬力基準値P1’となる。この定数kは、車両の積載量や大きさに基づいて定められた定数であり、実験などにより求められる定数であり、以下の数式(3)を満たすように設定される。
【数3】
【0073】
また、この定数kは、最大車両総重量GVW
MAXが重いほど大きく、且つ、最大馬力P1が大きいほど小さく設定されることが望ましい。
【0074】
この余裕馬力算出手段M2で算出される余裕馬力P
EXは、上記の数式(2)からも明らかなように、車両の現車両総重量GVWが重くなる程大きくなる値となる。
【0075】
参照馬力算出手段M3は、上記で算出したロードロード馬力P
RLと余裕馬力P
EXを加算する手段である。よって、この参照馬力P
REは、現時点の道路状況と車両状況に基づいた走行させるために必要な最低限の馬力(ロードロード馬力P
RL)に、現時点の車両を加速するために必要な最低限の馬力(余裕馬力P
EX)を加えた馬力となる。なお、この参照馬力P
REは、算出された値がP1より大きい場合は、全て最大馬力P1に設定される。
【0076】
トルクカーブ選択手段M4は、エンジン1を搭載した車両の車両状況、又は道路状況の少なくとも一方に基づいて、通常トルクカーブ10と低燃費トルクカーブ20、30、及び40の内のいずれか一つを選択する手段である。
【0077】
詳しくは、参照馬力P
REに基づいて、前述した制御マップ9の通常トルクカーブ10と低燃費トルクカーブ20、30、及び40の内から一つを選択する手段である。それらのトルクカーブ10、20、30、及び40のそれぞれの出力可能な最大の馬力である最大馬力P1、制限馬力P2、制限馬力P3、及び制限馬力P4の中から、参照馬力P
REと等しいか、又は参照馬力P
REよりも大きく且つ参照馬力P
REに最も近いものを選択し、その出力可能な最大の馬力を有するものを選択されたトルクカーブTCとする手段である。
【0078】
図4に示すように、例えば、参照馬力P
RE1の場合は、通常トルクカーブ10を選択する。参照馬力P
RE2の場合は、低燃費トルクカーブ20を選択する。参照馬力P
RE3の場合は、低燃費トルクカーブ30を選択する。
【0079】
これにより、車両を加速するための余裕馬力P
EX分を考慮しつつ、最も消費される燃料の低いトルクカーブTCを選択することができる。これにより、エンジン1の出力不足を回避しながら、燃費を向上することができる。
【0080】
出力制御手段M5は、トルクカーブ選択手段M4を実施して、通常トルクカーブ10及び低燃費トルクカーブ20、30、及び40の中から選択されたトルクカーブTCに沿ってエンジン1の出力を制御する手段である。詳しくは、エンジン1の図示しないインジェクタを制御して燃料噴射量を調節したり、図示しない吸気スロットルやEGR弁などを制御して吸気量を調節したりする手段である。
【0081】
特に、この出力制御手段M5は、低燃費トルクカーブ20、30、及び40における、それぞれの等馬力区間25、35、及び45と、低燃費ガバニング区間26、36、及び46に沿ってエンジン1の出力を制御することで、燃料消費量を低減することができる。
【0082】
選択解除手段M6は、トルクカーブ選択手段M4で、通常トルクカーブ10以外が選択されていた場合に、それを手動で解除する手段である。詳しくは、トルクカーブTCとして低燃費トルクカーブ20、30、及び40が選択されていた場合で、
図1に示すアクセルペダルSW1を大きく、あるいは急激に踏み込んだときに、トルクカーブTCとして通常トルクカーブ10を選択する手段である。
【0083】
この選択解除手段M6は、自動変速機のギヤ段を手動で低速に切り換える手動変速作業、所謂キックダウンと同様の原理で、トルクカーブTCを通常トルクカーブ10とする手段である。例えば、アクセルペダルSW1が、燃料噴射量などを決定する踏み込み量を超えて踏み込めるように構成され、その踏み込み量を超えて踏み込まれたときに解除するようにする。
【0084】
次に、本発明に係る実施の形態のエンジン1の制御方法について、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。まず、ロードロード馬力算出手段M1を実施して、ロードロード馬力P
RLを算出するステップS10を行う。次に、余裕馬力算出手段M2を実施して、余裕馬力P
EXを算出するステップS20を行う。ステップS10とステップS20の順序は逆にしても構わない。
【0085】
ロードロード馬力P
RLと余裕馬力P
EXが算出されると、次に、参照馬力算出手段M3を実施して、参照馬力P
REを算出するステップS30を行う。次に、トルクカーブ選
択手段M4を実施して、トルクカーブTCを選択するステップS40を行う。次に、出力制御手段M5を実施して、トルクカーブTCに沿って、エンジン1の出力を制御するステップS50を行って、この制御方法は完了する。
【0086】
なお、上記の制御方法の途中に、選択解除手段M6が実施された場合は、上記の制御方法が途中でも即座にトルクカーブTCとして通常トルクカーブ10を選択するようにするとよい。
【0087】
次に、本発明に係る第二の実施の形態のエンジン50のECU(制御装置)51、エンジン50、及びエンジン50の制御方法について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。この第二の実施の形態のエンジン50の動力は、自動変速機52を経由して推進軸5に伝達される。
【0088】
このECU51は、第一の実施の形態の制御マップ9に代えて、制御マップ53を備えて構成され、更に、クラッチ3と自動変速機52を制御する変速制御手段M7を備えて構成される。
【0089】
制御マップ53は、通常トルクカーブ10に加えて、それぞれの消費される燃料が段階的に低くなる、詳しくはそれぞれの出力可能な最大の馬力が制限馬力P6、P7、及びP8に制限された低燃費トルクカーブ60、70、及び80を設ける。
【0090】
また、その制御マップ53に設けられる低燃費トルクカーブ60、70、及び80に、ガバニング開始回転数N
GS1よりも回転数の低い低燃費ガバニング開始回転数N
GS6をそれぞれ規定する低燃費ガバニング開始点62、72、及び82を設けて構成される。
【0091】
図7に示すように、それらの低燃費トルクカーブ60、70、及び80は、第一の実施の形態の低燃費トルクカーブ20と略同様に形成されるが、低燃費ガバニング開始点62、72、及び82と湾曲点(経由点)63、73、及び83が異なる。
【0092】
低燃費トルクカーブ60、70、及び80は、通常トルクカーブ10のガバニング開始回転数N
GS1よりも回転数の低い低燃費ガバニング開始回転数N
GS6を規定するガバニング開始点62、72、及び82をそれぞれ設けて構成される。
【0093】
第一の実施の形態では、各低燃費トルクカーブ20、30、及び40のそれぞれに異なる低燃費ガバニング開始回転数N
GS2、N
GS3、及びN
GS4を規定する低燃費ガバニング開始点22、32、及び42を設けたが、第二の実施の形態では、各低燃費トルクカーブ60、70、及び80の低燃費ガバニング開始回転数N
GS6が同じになるように設定される。
【0094】
これは、第二の実施の形態では、動力の伝達が自動変速機52を経由して行われており、各低燃費トルクカーブ60、70、及び80の低燃費ガバニング開始回転数N
GS6を同じにすることで、変速制御手段M7を簡素化することができる。なお、自動変速機52におけるシフト回転数は、運転状況に応じて低燃費になるように、自動的に決められるので、低燃費ガバニング開始回転数N
GS6を可変する必要がない。
【0095】
また、各低燃費トルクカーブ60、70、及び80には、折曲点の代わりに湾曲点63、73、及び83を設け、低燃費ガバニング開始点62、72、及び82からNLM点13までが、各湾曲点63、73、及び83を湾曲しながら通過するように形成される。
【0096】
詳しくは、各湾曲点63、73、及び83を、各低燃費ガバニング開始点62、72、
及び82とNLM点13を結ぶ直線より原点側に配置して、各低燃費ガバニング開始点62、72、及び82からNLM点13までが、原点側を凸として湾曲するように形成される。
【0097】
これにより、低燃費ガバニング開始点62、72、及び82から湾曲点63、73、及び83までは通常トルクカーブ10のガバニング区間16と略同様にエンジン1の出力を制御することができ、湾曲点63、73、及び83からNLM点13までを空吹かし区間とすることができる。
【0098】
第一及び第二の実施の形態のエンジン1のECU2及び50、エンジン1、エンジン1の制御方法によれば、エンジン1の性能に基づいた通常トルクカーブ10に加えて、通常トルクカーブ10よりも消費される燃料を低減するように設定された低燃費トルクカーブ20、30、及び40(60、70、及び80)の内から、車両状況や道路状況により変化するロードロード馬力P
RLと車両の重量により変化する余裕馬力P
EXを加算して算出された参照馬力P
REに基づいてトルクカーブTCを選択し、そのトルクカーブTCに沿ってエンジン1の出力を制御する。これにより、出力可能な最大の出力が抑えられた低燃費トルクカーブ20、30、及び40(60、70、及び80)による低燃費効果の機会を増やして、燃料消費量を低減することができる。
【0099】
詳しく説明すると、第一の実施の形態では、各低燃費トルクカーブ20、30、及び40は、それぞれ、通常トルクカーブ10のガバニング開始回転数N
GS1よりも回転数の低い低燃費ガバニング開始回転数N
GS2、N
GS3、及びN
GS4をそれぞれ規定する低燃費ガバニング開始点22、32、及び42を設ける。これにより、通常トルクカーブ10に沿ってエンジン1の出力を制御するよりも、早期にエンジン1の回転数を燃料消費率の低い領域にシフトさせることを促すことができので、燃料消費量を低減することができる。
【0100】
第二の実施の形態では、各低燃費トルクカーブ60、70、及び80は、それぞれ、通常トルクカーブ10のガバニング開始回転数N
GS1よりも回転数の低い低燃費ガバニング開始回転数N
GS6をそれぞれ規定する低燃費ガバニング開始点62、72、及び82を設ける。これにより、通常トルクカーブ10に沿ってエンジン1の出力を制御するよりも、早期にエンジン1の回転数を燃料消費率の低い領域にシフトさせることができので、燃料消費量を低減することができる。
【0101】
また、第一の実施の形態では、各低燃費トルクカーブ20、30、及び40がそれぞれ出力可能な最大の馬力が制限馬力P2、P3、及びP4に制限されていることで、一方、第二の実施の形態では、各低燃費トルクカーブ60、70、及び80がそれぞれ出力可能な最大の馬力が制限馬力P6、P7、及びP8に制限されていることで、速度超過の抑制による消費馬力低減を通して、燃料消費量を低減することができる。
【0102】
そして、第一及び第二の実施の形態では、前述のように燃料消費量を低減すると共に、ロードロード馬力P
RLと余裕馬力P
EXに基づいたトルクカーブTCを選択するので、幅広いエンジン1及び50の運転条件に対して最適なトルクカーブTCに沿ってエンジン1及び50の出力を制御することで、エンジン1及び50の出力不足を緩和することができる。
【0103】
なお、変速機として手動変速機4を設けた第一の実施の形態に、第二の実施の形態の制御マップ53を適用することができ、逆に変速機として自動変速機52を設けた第二の実施の形態に、第一の実施の形態の制御マップ9を適用することもできる。
【0104】
また、第一の実施の形態の制御マップ9の各低燃費トルクカーブ20、30、及び40
に、折曲点23、33、及び43を設けて形成したが、その代わりに第二の実施の形態の各低燃費トルクカーブ60、70、及び80のような湾曲点を設けて形成してもよい。逆に、第二の実施の形態の各低燃費トルクカーブ60、70、及び80の湾曲点63、73、及び83の代わりに第一の実施の形態のような折曲点を設けて形成してもよい。
【0105】
加えて、制御マップ9及び53に記憶されるトルクカーブは、通常トルクカーブ10と低燃費トルクカーブ20(60)の少なくとも二つ以上であればよく、その数は限定されない。
【0106】
更に、上記の実施の形態では、制御マップ9(53)に設けられた通常トルクカーブ10と低燃費トルクカーブ20、30、及び40(60、70、及び80)が、それぞれエンジン1(50)の始動(回転数ゼロ)から最高回転数N
MAXまで別々となるものを例に説明したが、低燃費トルクカーブ20、30、及び40(60、70、及び80)を、各制限馬力点21、31、及び41(61、71、及び81)から分岐するものとして形成してもよい。
【0107】
その上、上記の実施の形態の各トルクカーブ10、20、30、40、60、70、及び80の形状は一例であり、本発明はその形状に限定されない。
【0108】
それから、本発明は、エンジン1からの動力伝達を、クラッチ3の操作のみを自動化したセミオートマチックトランスミッションを経由させる場合にも適用することができる。