特許第6303341号(P6303341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6303341
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20180326BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20180326BHJP
   H01F 41/10 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   H01F15/10 G
   H01F15/10 C
   H01F17/04 F
   H01F41/10 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-182084(P2013-182084)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-50373(P2015-50373A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100127199
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 信雄
(72)【発明者】
【氏名】土田 せつ
(72)【発明者】
【氏名】御子神 祐
(72)【発明者】
【氏名】去石 悟
【審査官】 馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5673585(JP,B2)
【文献】 実開平5−43513(JP,U)
【文献】 特開2005−322675(JP,A)
【文献】 特開2011−253889(JP,A)
【文献】 特開2004−311560(JP,A)
【文献】 特開2004−228361(JP,A)
【文献】 特開2003−188018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/04
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを巻回してなるコイルと、
前記コイルを支持する基体と、
前記コイルの端末部が接続される端子電極とを備え、
前記基体は、前記コイルの端末部の延在方向と平行な第1の表面を有し、
前記端子電極は、前記基体の前記第1の表面に印刷された第1の端子部を有し、
前記第1の表面は上段面及び下段面からなる段差面を有し、
前記第1の端子部は、前記上段面に形成された上段部と、前記下段面に形成された下段部からなる段差形状を有し、
前記上段部は、前記端末部と接触する第1の端子面を有し、
前記下段部は、前記端末部の延長線上に位置し、前記端末部と接触しない第2の端子面を有し、
前記基体は、前記第1の表面と直交する第2の表面を有し、
前記端子電極はL字型であって、前記基体の前記第2の表面に印刷された第2の端子部をさらに有し、
前記第2の端子部は前記第1の端子部の前記下段部に接続されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記基体は、前記コイルが巻回される巻芯部と当該巻芯部の両端に設けられた一対の鍔部とを有するドラムコアであり、
前記鍔部に前記端子電極が設けられている、請求項に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記一対の鍔部に固定された板状コアをさらに備えることを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
【請求項4】
ワイヤを巻回してなるコイルと、
前記コイルを支持する基体と、
前記コイルの端末部が接続される端子電極とを備え、
前記基体は、前記コイルの端末部の延在方向と平行な第1の表面を有し、
前記端子電極は、前記基体の前記第1の表面に印刷された第1の端子部を有し、
前記第1の表面は上段面及び下段面からなる段差面を有し、
前記第1の端子部は、前記上段面に形成された上段部と、前記下段面に形成された下段部からなる段差形状を有し、
前記上段部は、前記端末部と接触する第1の端子面を有し、
前記下段部は、前記端末部の延長線上に位置し、前記端末部と接触しない第2の端子面を有し、
前記基体は、前記コイルが巻回される巻芯部と当該巻芯部の両端に設けられた一対の鍔部とを有するドラムコアであり、
前記鍔部に前記端子電極が設けられており、
前記一対の鍔部に固定された板状コアをさらに備えることを特徴とするコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関し、特に、表面実装型コイル部品の端子電極構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化に伴い、コイル部品にも高密度実装が要求されている。例えば特許文献1には、高密度実装が可能な表面実装型のコイル部品が開示されている。
【0003】
このコイル部品は、巻芯部と鍔部とを有するコアと、コアの収容空間が形成された絶縁性のケースと、少なくとも一部が外部に露出した状態でケースに機械的に固定される金属金具からなる端子電極と、端子電極に継線されると共にケースを介して巻芯部の周囲に巻回される巻線(ワイヤ)とを備えている。コアの収容空間は、実装面と略平行な底面を含んで画成され、巻芯部と鍔部とは底面と対峙する巻芯部の下面と鍔部の下面とをそれぞれ有し、巻芯部の下面は鍔部の下面に対して同一平面上にある。ケースの鍔部と対向する位置には実装面に向けて突出する脚部が規定され、脚部に端子電極の実装部が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−117627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のコイル部品において、ワイヤと端子電極との接続は、ワイヤの先端部を端子電極上に熱圧着することで実現される。ワイヤを端子電極に熱圧着すると、ワイヤの線材(Cu)と端子電極の表面のめっき膜(Ni及びSn)とが反応して合金層が形成される。ここで、合金層は融点が高いことから、コイル部品を回路基板上に実装するときにこの部分が半田の接合面となる場合には、半田の濡れ性を低下させる要因となる。特に、図9(a)に示すように、熱圧着されるワイヤ20の先端部20eの位置を、端子電極21の端子面の端部に合わせると、ワイヤの延在方向における端子面の端から端まで、つまり端子面の広範囲に合金層が形成されるとともに、側面電極のめっき厚が減少してしまい、半田フィレットの形成が阻害されて実装不良を引き起こすおそれがある。
【0006】
この問題を解決するためには、図9(b)に示すように、ワイヤ20の先端部20eを端子電極21の端子面の端部ではなく、それよりも内側(中央付近)に設定すればよい。この場合、コアの巻芯部から引き出されたワイヤ20は、端子電極21の端子面を通過してそれよりも前方に引き出された後、ワイヤの先端部とすべき位置よりも後方のワイヤ部分(実践部分)が端子面に熱圧着され、前方のワイヤ部分(破線参照)は切断して取り除く必要がある。しかしながら、前方のワイヤ部分が端子電極21の端子面に接触していると、熱圧着時の熱で端子電極の表面のめっき膜が溶融した際に、ワイヤが端子電極21の表面に固着してしまい、うまく切断して除去することができないという問題がある。このような問題は、端子電極を金属金具で構成する場合に限らず、印刷電極で構成する場合でも同様に生じており、その対策が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によるコイル部品は、ワイヤを巻回してなるコイルと、前記コイルを支持する基体と、前記コイルの前記端末部が接続される端子電極とを備え、前記基体は、前記コイルの端末部の延在方向と平行な第1の表面を有し、前記端子電極は、前記基体の前記第1の表面に印刷された第1の端子部を有し、前記第1の表面は上段面及び下段面からなる段差面を有し、前記第1の端子部は、前記上段面に形成された上段部と、前記下段面に形成された下段部からなる段差形状を有し、前記上段部は、前記端末部と接触する第1の端子面を有し、前記下段部は、前記端末部の延長線上に位置し、前記端末部と接触しない第2の端子面を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、熱圧着時にワイヤの端末部が端子電極の第1の端子部の第1の端子面だけに圧接され、第2の端子面には圧接されないので、合金層が広範囲に形成されることがない。したがって、合金層により半田フィレットの形成が阻害されることを回避することができる。また、熱圧着後においてワイヤの切断除去を確実かつ容易に行うことができる。
【0009】
本発明において、前記基体は、前記第1の表面と直交する第2の表面を有し、前記端子電極はL字型であって、前記基体の前記第2の表面に印刷された第2の端子部をさらに有し、前記第2の端子部は前記第1の端子部の前記下段部に接続されていることが好ましい。この構成によれば、ワイヤの端末部を熱圧着したとき第1の端子部の下段部は合金化されないので、第1の端子部の合金化の影響を受けて第2の端子部に半田フィレットが形成されにくくなる事態を防止することができる。
【0010】
本発明において、前記基体は、前記コイルが巻回される巻芯部と当該巻芯部の両端に設けられた一対の鍔部とを有するドラムコアであり、前記鍔部に前記端子電極が設けられていることが好ましい。この構成によれば、ドラムコアを用いた表面実装型のコイル部品において、ワイヤが継線される端子面の半田の濡れ性を高めることができ、電気的かつ機械的接続の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱圧着後のワイヤの不要部分を確実に切断し、容易に除去することができる。したがって、半田の濡れ性が良好な端子面を有するコイル部品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品の外観構成を示す略斜視図である。
図2図2は、図1のコイル部品の分解斜視図である。
図3図3は、図1のコイル部品を上下反転させた状態を示す略斜視図である。
図4図4は、ドラムコア2の構成を示す略斜視図であって、端子電極6a〜6fが設けられた状態を示すものである。
図5図5は、端子電極6a〜6fがない状態のドラムコア2であって、底面が上方を向いた反転状態を示している。
図6図6は、端子電極が形成された鍔部の構成であって、(a)は、鍔部を底面側から見た略平面図であり、(b)は、鍔部を外側側面側から見た略平面図である。
図7図7(a)及び(b)は、鍔部4A,4Bにそれぞれ設けられた端子電極の形状を示す略側面断面図である。
図8図8(a)〜(c)は、ヒータチップを用いたワイヤの熱圧着工程を説明するための模式図である。
図9図9(a)及び(b)は、従来のコイル部品について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態による表面実装型コイル部品の外観構成を示す略斜視図である。また、図2は、図1のコイル部品の分解斜視図であり、図3は、図1のコイル部品を上下反転させた状態を示す略斜視図である。
【0015】
図1図3に示すように、このコイル部品1は、ドラムコア2と、板状コア5と、6つの端子電極6a〜6fと、ドラムコア2に巻回されたワイヤからなるコイル7とを備えている。特に限定されないが、コイル部品1は表面実装型のパルストランスであり、そのサイズは、約4.5×3.2×2.6mmである。
【0016】
ドラムコア2は例えばNi−Zn系フェライトなどの磁性材料からなり、コイル7が巻回された巻芯部3と、巻芯部3の両端に配置された一対の鍔部4A,4Bを有している。板状コア5もまたNi−Zn系フェライトなどの磁性材料からなり、一対の鍔部4A,4Bの上面に載置され、接着剤等で固定されている。
【0017】
板状コア5の上面は平坦な平滑面であるため、コイル部品1を実装時に、この平滑面を吸着面として吸着実装することができる。さらに、鍔部4A,4Bの上面と接着される板状コア5の表面も平滑面であることが好ましい。板状コア5の平滑な表面が鍔部4A,4Bと当接することにより、両者を確実に密着させることができ、磁束漏れのない閉磁路を形成することができる。
【0018】
端子電極6a〜6fは、鍔部4A,4Bの底面から外側側面にかけて延設されたL字型の印刷電極である。ここで、鍔部の外側側面とは、巻芯部3の取り付け面とは反対側に位置する面である。これらの端子電極6a〜6fは、導電性ペーストを塗布して焼き付けた後、Ni及びSnのめっき膜を順に成膜することにより形成することができる。
【0019】
端子電極6a〜6fのうち、3つの端子電極6a,6b,6cは鍔部4A側に設けられており、他の3つの端子電極6d,6e,6fは鍔部4B側に設けられている。さらに3つの端子電極6a,6b,6cのうち、2つの端子電極6a,6bは鍔部4Aの右側寄りに設けられており、端子電極6cは鍔部4Aの左側寄りに設けられており、両者の間には一定の絶縁間隔が設けられている。これと同様に、3つの端子電極6d,6e,6fのうち、2つの端子電極6d,6eは鍔部4Bの右側寄りに設けられており、端子電極6fは鍔部4Bの左側寄りに設けられており、両者の間には一定の絶縁間隔が設けられている。
【0020】
図2に示すように、L字型の端子電極6a〜6fの各々は、鍔部4A,4Bの底面(第1の表面)に接する底面部T(第1の端子部)と、鍔部4A,4Bの外側側面(第2の表面)に接する側面部T(第2の端子部)とを有している。そして図3に示すように、コイル7の端末部は、端子電極6a〜6fの底面部Tの表面に熱圧着されている。
【0021】
図4は、ドラムコア2の構成を示す略斜視図であって、端子電極6a〜6fが設けられた状態を示すものである。また、図5は、端子電極6a〜6fがない状態のドラムコア2であって、底面が上方を向いた反転状態を示している。さらに、図6(a)は、鍔部4Aを底面側から見た略平面図であり、図6(b)は、鍔部4Aの外側側面側から見た略平面図である。
【0022】
図4及び図5に示すように、ドラムコア2は、巻芯部3と、巻芯部3の両端に配置された一対の鍔部4A,4Bとで構成されている。ドラムコア2は平面視にて回転対称な形状であり、鍔部4A,4Bは同一の形状を有している。したがって、図6には鍔部4Aのみを示し、鍔部4Bの図示は省略する。
【0023】
図4に示すように、鍔部4A,4Bの上面Sは平滑な平坦面であり、これにより板状コア5との密着性が高められている。上述のように、鍔部4A,4Bの上面S間には板状コア5が架設され、これにより実質的な閉磁路が形成される。
【0024】
図4図5及び図6(b)に示すように、鍔部4A,4Bの外側側面Sは平坦面を構成している。一方、図5及び図6(a)に示すように、鍔部4A,4Bの底面Sは、端子電極6a〜6fの基端部側の設置領域が高く、先端部側の設置領域が低い段差面となっている。すなわち、鍔部4A,4Bの内側側面寄りに上段面SB1が設けられており、外側側面S寄りに下段面SB2が設けられている。本実施形態において、上段面SB1及び下段面SB2は鍔部4A,4Bの底面Sの長手方向の全体(鍔部4A,4Bの幅方向の全体)に形成されている。そして、端子電極6a〜6fの底面部Tの基端部側は鍔部4A,4Bの底面Sの上段面SB1に設けられており、端子電極6a〜6fの底面部Tのコーナー部側は鍔部4A,4Bの底面Sの下段面SB2に設けられている。図6(a)において、ハッチングが付された領域が上段面SB1であり、ハッチングがない領域が下段面SB2である。
【0025】
図7(a)及び(b)は、鍔部4A,4Bにそれぞれ設けられた端子電極6a〜6fの形状を示す略側面断面図であって、(a)はドラムコア全体を含む略側面図、(b)は鍔部4A側の端子電極の部分拡大図である。なお、鍔部4B側の構成は、鍔部4A側と同一である。
【0026】
図7(a)及び(b)に示すように、L字型の端子電極6a〜6fの底面部T及び側面部Tは、鍔部4A,4Bの底面S(第1の表面)及び外側側面S(第2の表面)にそれぞれ形成されている。鍔部4A,4Bの底面Sは段差面を有しており、端子電極6a〜6fの底面部Tは、鍔部4A,4Bの底面Sの段差面に合わせた段差形状を有している。
【0027】
端子電極6a〜6fの底面部Tは、鍔部4A,4Bの内側側面寄り(巻芯部3寄り)に設けられた上段部TB1と、鍔部4A,4Bの外側側面S寄りに設けられた下段部TB2からなり、側面部Tは底面部Tの下段部TB2に接続されている。ここで、上段部TB1は、コイル7の端末部と接触する端子面(第1の端子面S)を提供する部位であり、下段部TB2は、コイル7の端末部と接触しない端子面(第2の端子面S)を提供する部位である。すなわち、下段部TB2の第2の端子面Sは、上段部TB1の第1の端子面Sと同一平面を構成していない。
【0028】
端子電極6a〜6fの底面部Tの第1の端子面Sは、熱圧着時にコイル7の端末部への圧接力を受ける「圧接面」を提供する。また、端子電極6a〜6fの底面部Tの第2の端子面Sは、コイル7の端末部への圧接力を逃がす「非圧接面」を提供する。端子電極6a〜6fの底面部Tが第1の端子面S及び第2の端子面Sからなる段差面を有することにより、コイル7の端末部が、端子電極6a〜6fの底面部における当該コイルの延在方向の全幅にわたって熱圧着されることを回避することができる。したがって、ワイヤとめっき膜との反応による合金層が形成されない領域を広く確保することができ、ワイヤの切断除去を確実かつ容易に行うことができる。
【0029】
図8(a)〜(c)は、コイル7の端末部の熱圧着工程を説明するための模式図である。
【0030】
図8(a)に示すように、熱圧着工程では、ドラムコア2の巻芯部3に巻回されたコイル7の端末部を、対応する端子電極6a〜6f上に配線する。コイル7の端末部は、端子電極6a〜6fを通過して鍔部4A,4Bの外側まで引き出され、鍔部4A,4Bの底面とほぼ平行に延在している。
【0031】
次に、図8(b)に示すように、ヒータチップ12を用いて、コイル7の端末部を端子電極6a〜6fの表面に熱圧着する。端子電極6a〜6fの底面部Tの第1の端子面Sの上方に位置するワイヤ部分は、ヒータチップ12と第1の端子面Sとの間に挟み込まれ、高温なヒータチップ12の圧接力で端子面に押し付けられ、ワイヤの線材(Cu)と端子面のめっき膜(Ni及びSn)とが合金化して十分な接合力が得られる。
【0032】
一方、端子電極6a〜6fの底面部Tの第2の端子面Sの上方に位置するワイヤ部分は、ヒータチップ12と第2の端子面Sとの間の隙間dに逃げ込み、第1の端子面Sのような十分な圧接力が付与されない。そのため、このワイヤ部分の第2の端子面Sへの熱圧着を回避することができる。
【0033】
図8(c)に示すように、こうして端子電極6a〜6f上に熱圧着されたコイル7の端末部は、カッター13により切断されてその長さが整えられる。このとき、コイル7の切断位置は端子電極6a〜6fの段差付近である。コイル7の端末部の切断時において、熱圧着されなかったワイヤの余線部分7rは、端子面に固着されていないか、仮に熱圧着時に溶融しためっき膜によって端子面に固着されていたとしてもその固着力は弱いので、少しの力を加えるだけで剥離される。その結果、端子電極の底面部Tの表面うち第1の端子面Sだけにワイヤが熱圧着され、第2の端子面Sにはワイヤがない状態となる。
【0034】
第1の端子面Sにおいて、ワイヤの周囲は合金化によって半田の濡れ性の悪い領域となるが、さらにその周りには合金化されなかった領域も存在し、この領域は半田接続に寄与する。一方、第2の端子面Sにはワイヤが存在せず、合金化されないので、半田の濡れ性の良好な領域となる。
【0035】
第2の端子面Sは端子電極の側面部Tに接する部分であり、表面実装時には、側面部Tと共に半田フィレットの形成に寄与する部分である。第2の端子面Sは合金化されないので、側面部TのSnめっき膜が熱圧着時の熱で溶融して底面部T側に流れ込み、その膜厚が減少してしまう事態を防止することができる。そのため、このようなコイル部品1を表面実装した場合には、端子電極6a〜6fの半田の濡れ性を高めることができ、端子電極の下段部TB2から側面部Tにかけて半田フィレットを確実に形成することができる。したがって、コイル部品1の電気的かつ機械的接続の信頼性を向上させることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によるコイル部品1は、コイル7の端末部が接合される端子電極6a〜6fの端子面に、コイル7の先端部との接触を回避させる段差面が設けられているので、ワイヤに先端部が端子面に熱圧着されることを回避することができる。したがって、熱圧着後のワイヤの切断除去を確実かつ容易に行うことができる。また、熱圧着時に側面部Tのめっき厚が減少し、これにより半田フィレットの形成が阻害されることを回避することができる。
【0037】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
【0038】
例えば、上記実施形態においては、コイルが巻回される基体として、コイルが巻回される巻芯部とその両端に設けられた一対の鍔部とを有する横型のドラムコアを用いているが、いわゆる縦型のドラムコアを用いてもかまわない。また、端子電極の取付け個数は特に限定されない。したがって、例えば鍔部4A,4Bの各々に4つの端子電極を形成することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 コイル部品
2 ドラムコア
3 巻芯部
4A,4B 鍔部
5 板状コア
6a〜6f 端子電極
7 コイル
7r ワイヤの余線部分
12 ヒータチップ
13 カッター
20 ワイヤ
20e 先端部
21 端子電極
隙間
鍔部の上面
鍔部の底面
B1 鍔部の底面の下段面
B2 鍔部の底面の上段面
鍔部の外側側面
端子電極の底面部の第1の端子面
端子電極の底面部の第2の端子面
端子電極の底面部
B1 端子電極の底面部の上段部
B2 端子電極の底面部の下段部
端子電極の側面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9