(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6303399
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】EUV露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20180326BHJP
B08B 7/00 20060101ALI20180326BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
G03F7/20 503
B08B7/00
H01L21/304 645Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-223115(P2013-223115)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-88510(P2015-88510A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋介
【審査官】
山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−226887(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/087345(WO,A1)
【文献】
特開平06−198533(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0266140(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0087939(US,A1)
【文献】
特開2012−009537(JP,A)
【文献】
特開2012−182235(JP,A)
【文献】
特開2005−228978(JP,A)
【文献】
特開2008−032884(JP,A)
【文献】
実開昭60−111038(JP,U)
【文献】
特開2007−227499(JP,A)
【文献】
特開2012−033569(JP,A)
【文献】
特開2011−134929(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/005294(WO,A1)
【文献】
特開2009−117441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B08B 7/00
G03F 1/24
G03F 7/20
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVマスクの多層反射膜が形成された面とは反対側の面に形成された導電膜を静電吸着する静電チャックを有するEUV露光装置において、
前記静電チャックの表面に、厚さ500nm〜1μmの有機高分子材料からなり、ファンデルワールス力により前記静電チャック上に吸着され、前記静電チャックの表面から除去可能な保護被膜を備えたことを特徴とするEUV露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型マスク露光装置及び反射型マスクの露光方法及び反射型マスク露光用保護被膜に係わり、より具体的には、極端紫外光(Extreme Ultra Violet:以降、EUV光)を用いてマスクパターンをウェハ上に転写するための露光装置及び露光方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微細化、高集積化が進んでおり、回路パターンを形成するためのリソグラフィ技術についても、より微細なパターンを高精度に形成するための技術開発が進められている。
【0003】
これに伴い、パターン形成に使用される露光装置の光源についても短波長化が進められ、波長13.5nmのEUV光を用いた露光装置及びパターン転写のプロセスが開発されている。
【0004】
EUV光は、空気を含むあらゆる物質に対して吸収されやすく、かつ屈折率が1に近いため、従来の可視光または紫外光を用いたフォトリソグラフィのような屈折光学系を使用することができない。このため、EUV光を用いたリソグラフィ装置(以降、EUV露光装置)では、真空環境下において反射光学系、すなわち反射型フォトマスク(以降、EUVマスク)とミラーを用いる構造となっている。
【0005】
このようなEUVマスクは、基板上にEUV光を反射する多層膜からなる反射層を有し、反射層の上に形成されたEUV光を吸収する吸収層を部分的に除去することにより、パターンが形成されたものである。
【0006】
EUV露光装置は内部が真空であるため、EUVマスクを搭載する際には、EUVマスクの吸収層のパターンが形成された面とは反対側の面を静電チャックにより静電吸着させる方法が一般的に採用されている。
【0007】
それゆえ、通常のEUVマスクは、吸収層のパターンが形成された面とは反対側の面に、導電膜が形成されている。この導電膜により低電圧でも十分なチャック力を確保し、電荷を除電して絶縁破壊を防止することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
導電膜としては、Crを主成分とする膜が主に採用されており、20nm〜200nm程度の厚さのものが主流である。
【0009】
EUVマスクの露光を行う場合、EUVマスクの表面形状が平坦でないと、ウェハ上に転写されるパターンが歪んでしまうという問題や、位置ずれを生じてしまうという問題がある。それゆえ、EUVマスクには高い平坦度が求められている。
【0010】
しかし、上述のように、静電チャックとEUVマスクの導電膜間には非常に強い吸着力がかけられ、剛性の高い物質同士が貼り合わされることにより、双方に異物が圧着され、EUVマスクの導電膜上に固着することが数々の実験により確認されている。
【0011】
固着した異物は、EUVマスクの平坦度を悪化させ、ひいてはウェハ上に転写されるパターンの歪みや位置ずれを引き起こす。
【0012】
固着した異物は、洗浄薬液のみならず、物理力を加えた洗浄によっても、完全に除去することが不可能である場合が多く、さらには、固着した異物により、静電チャックおよびEUVマスクの導電膜の双方が損傷してしまい、さらなる異物発生を引き起こす場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−122304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の問題点を解決するため、本発明は、EUV露光装置の静電チャックの表面またはEUVマスクの導電膜の表面に異物が存在していても、その両者が静電吸着された際にEUVマスクの平坦度を悪化させることがなく、またその双方に損傷を生じて劣化することがなく、またEUVマスクの着脱が繰り返されて異物が静電チャックの表面に持ち込まれても、常に異物が無い静電チャックの表面を再生できるEUV露光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決する手段として、請求項1に記載の発明は、
EUVマスクの多層反射膜が形成された面とは反対側の面に形成された導電膜を静電吸着する静電チャックを有するEUV露光装置
において、
前記静電チャックの表面に、
厚さ500nm〜1μmの有機高分子材料からなり、ファンデルワールス力により前記静電チャック上に吸着され、前記静電チャックの表面から除去可能な保護被膜を備えたことを特徴とするEUV露光装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、EUVマスクを静電チャックに吸着保持する際に、静電チャック上またはEUVマスクの導電膜に付着した異物を、静電チャック上に形成した保護被膜に取り
込むことで、EUVマスクの平坦度悪化を防止することができ、ひいてはウェハ上に転写されるパターンの歪みや位置ずれを防止することができる。
【0024】
また、本発明の保護被膜は取り込まれた異物ごと静電チャック上から除去可能であるため、EUVマスクの着脱が繰り返されることにより異物が静電チャック上に持ち込まれる場合においても、常に新しい保護被膜により静電チャック上に異物の無い良好な環境を維持することができる。
【0025】
さらに、本発明の保護被膜は、剛性の強いEUVマスクと静電チャック間の緩衝材としても機能するため、異物によるEUVマスクと静電チャック双方の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係わるEUV露光装置の一例を示す断面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明に係わるEUV露光装置の一部である静電チャック11にEUVマスク17が静電吸着された状態の一例を示す断面概略図である。
EUVマスク17においては、露光時に吸収されたEUV光が熱エネルギーに変化するため、基板14は通常のフォトマスクで使用される合成石英ではなく、TiO
2をドープした低熱膨張ガラスなどが使用される。基板14の一方の面には、EUV光に対して透過性が高く、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層させたEUV光を反射する多層反射膜15が形成される。一例として、Si膜とMo膜を交互に積層させたSi/Mo多層膜が挙げられる。
【0029】
多層反射膜15上に形成される吸収膜16の構成材料としては、EUV光に対する吸収係数の高い材料が選択され、具体的にはTa及びその窒化物で構成されることが多い。また、多層反射膜15と吸収膜16の間、もしくは吸収膜16上にその他の機能膜が形成されても良い。一例を挙げると、多層反射膜15表面の酸化や加工でのダメージを防止するために、多層反射膜15と吸収膜16の間に保護被膜を形成する場合があり、Ruを主原料とする合金、Siなどから構成される材料が使用される。
【0030】
基板14の多層反射膜15が形成された面とは逆の面には、基板14よりも高い誘電率及び導電性を有する導電膜13が形成される。一例としては、Crを主成分とする膜が用いられる場合が多い。
【0031】
EUVマスク17は、導電膜13を本発明のEUV露光装置の静電チャック11に吸着させることにより保持される。静電チャック11は、EUVマスク17と接する面はセラミック、石英などの材質で形成され、その裏面には金属の電極が配置されているのが一般的であり、その電極に電圧を印加することにより、EUVマスク17を吸着する静電気力が発生する。本発明は、静電チャック11のEUVマスク17の導電膜13を吸着する面に保護被膜12を形成することを特徴とする。
【0032】
保護被膜12は有機高分子材料から形成することが可能である。例えばポリオレフィンや、PMMA等のアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルアルコール、多糖類から形成されることが望ましい。しかしながら、有機高分子材料に限定する必要はなく、保護被膜12の上の異物やEUVマスク17の導電膜13の上の異物を、静電チャック11にEUVマスク17を吸着した時に、保護被膜12の中に取り込むことができる材料
であれば良い。
【0033】
保護被膜12を静電チャック11上に形成する際には接着剤を用いず、例えばテープ状に加工した保護被膜12をファンデルワールス力により静電チャック11上に吸着させる方法や、ダイコート、スリットコート、スピンコート等による塗布する方法が挙げられる。
【0034】
保護被膜12の厚さは、異物を取り込むのに十分かつ、膜厚の均一性を維持できる値に設定する必要がある。そのため、100nm〜10μmであることが望ましく、更に望ましくは500nm〜1μmである。
【0035】
テープ状に加工した保護被膜12は、物理的外力により静電チャック上から除去可能である。また、塗布形成した保護被膜12は、酸化反応に代表される分解反応時に、酸化ケイ素、フッ素ポリマー、難溶解性金属酸化物などの不揮発性物質を生成するが、それらは表面に固着することがないため、有機溶剤や様々な酸、アルカリ系薬液を用いた洗浄にて除去可能である。このようにすることで、静電チャック11の表面から保護被膜12を除去可能なEUV露光装置とすることができる。
【0036】
このように形成された保護被膜12上にEUVマスク17を吸着保持した際に、保護被膜12と導電膜13との間に異物を挟んでしまった場合であっても、異物は保護被膜12の内部に取り込まれるため、EUVマスク17の平坦度悪化を阻止することができ、且つ異物による静電チャック11と導電膜13の損傷の生成などの劣化を阻止することができる。
【0037】
また、保護被膜12は取り込まれた異物ごと静電チャック11上から除去可能であるため、EUVマスク17の着脱が繰り返されることにより、異物が静電チャック11上に持ち込まれる場合においても、常に新しい保護被膜12を静電チャック11に形成することにより、静電チャック11上に異物の無い状態を維持することができる。
【0038】
このような保護被膜12を有するEUV露光装置に、EUVマスク17を保持し、該EUVマスク17に形成されたパターンをウェハ上に露光転写することにより、パターンの歪みや位置ずれを抑制した半導体集積回路を安定的に形成することができるEUVマスクの露光方法およびそのことを可能とするEUV露光装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
11・・・静電チャック
12・・・保護被膜
13・・・導電膜
14・・・基板
15・・・多層反射膜
16・・・吸収膜
17・・・EUVマスク