特許第6303490号(P6303490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6303490
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】車両用冷却液制御弁
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/16 20060101AFI20180326BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   F01P7/16 502H
   F01P7/16 502B
   F16K31/06 305L
   F16K31/06 305S
   F16K31/06 305J
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-267652(P2013-267652)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-124617(P2015-124617A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小室 健一
(72)【発明者】
【氏名】松坂 正宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠祐
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−096377(JP,A)
【文献】 実開昭60−191779(JP,U)
【文献】 実開昭51−085135(JP,U)
【文献】 特開2003−236876(JP,A)
【文献】 実開昭63−154879(JP,U)
【文献】 特表2013−525653(JP,A)
【文献】 特開2009−301847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/16
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流通させるバルブ本体と、磁性体を有し前記流体の流通を制御する弁体と、前記バルブ本体に設けられて前記流体の流路を構成し、前記弁体と当接して前記流路を閉塞可能な弁座と、通電により磁力を発生させることで前記弁体と前記弁座とを当接させるソレノイドと、前記弁体を前記弁座の側に付勢する付勢機構とを備え、
前記弁体は、前記磁性体の前記弁座に対する当接部を露出させつつ、当該弁体の表面と裏面とに亘って形成された樹脂部を有し、
前記磁性体に形成された貫通孔が、前記樹脂部の成形の際に成形型が当接して位置保持される成形型当接部と成形用樹脂が流通する樹脂流通部として機能するように構成してある車両用冷却液制御弁。
【請求項2】
流体を流通させるバルブ本体と、磁性体を有し前記流体の流通を制御する弁体と、前記バルブ本体に設けられて前記流体の流路を構成し、前記弁体と当接して前記流路を閉塞可能な弁座と、通電により磁力を発生させることで前記弁体と前記弁座とを当接させるソレノイドと、前記弁体を前記弁座の側に付勢する付勢機構とを備え、
前記弁体は、前記磁性体の前記弁座に対する当接部を露出させつつ、当該弁体の表面と裏面とに亘って形成された樹脂部を有するとともに、前記弁座に対する前記磁性体の露出部とは反対の側に前記磁性体の露出部を有する車両用冷却液制御弁。
【請求項3】
流体を流通させるバルブ本体と、磁性体を有し前記流体の流通を制御する弁体と、前記バルブ本体に設けられて前記流体の流路を構成し、前記弁体と当接して前記流路を閉塞可能な弁座と、通電により磁力を発生させることで前記弁体と前記弁座とを当接させるソレノイドと、前記弁体を前記弁座の側に付勢する付勢機構とを備え、
前記弁体は、前記磁性体の前記弁座に対する当接部を露出させつつ、当該弁体の表面と裏面とに亘って形成された樹脂部を有するとともに、前記弁座に対する前記磁性体の露出部とは反対の側に前記磁性体の露出部を有し、
前記磁性体に形成された貫通孔が、前記樹脂部の成形の際に成形型が当接して位置保持される成形型当接部と成形用樹脂が流通する樹脂流通部として機能するように構成してあ
車両用冷却液制御弁。
【請求項4】
前記弁体が、前記付勢機構であるコイルスプリングを外挿固定するよう前記弁座とは反対の側の前記樹脂部に形成された筒状の受部を有し、前記受部の外周側端部にテーパ部が形成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用冷却液制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等の冷却系に使用される車両用冷却液制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンは、燃費の向上やエンジンを円滑に運転する等のために、エンジン温度が低い場合に暖機運転を行い、エンジン温度が上昇した後にその温度を略一定にする制御がなされる。そのため、冷却水温度が低い場合には、エンジンの冷却系に設けた冷却液制御弁を閉じて冷却水がラジエータを経由せずにバイパス通路を循環するものとし、冷却水温度が高くなった場合に、当該制御弁を開いて冷却水をラジエータに循環させ、冷却水温を一定に制御する。
【0003】
特許文献1には、エンジンの冷却水出口側に配置された車両用冷却水制御弁が開示されている。この制御弁は、磁性体を有する弁体と、弁体が当接可能な弁座と、弁体を弁座側に付勢する付勢機構(スプリング)と、弁体を弁座側に移動させるソレノイドとを備える。ポンプ作動時には、ポンプから吐出される流体の流体圧により、付勢機構の付勢力に抗して弁体が開方向に移動するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013−525653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される制御弁では、弁体は鉄や電磁鋼等の金属材料によって構成されている。このため、弁体の重量が重くなり、弁体の開閉動作が不正確なものとなる。また、弁体が金属材料であると、弁体の外巻形状が制限され、バルブ本体に対する弁体の取付け自由度が損なわれる。
【0006】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、弁体の開閉動作の精度に優れ、弁体の形状選択の自由度を高めた車両用冷却液制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用冷却液制御弁の特徴構成は、流体を流通させるバルブ本体と、磁性体を有し前記流体の流通を制御する弁体と、前記バルブ本体に設けられて前記流体の流路を構成し、前記弁体と当接して前記流路を閉塞可能な弁座と、通電により磁力を発生させることで前記弁体と前記弁座とを当接させるソレノイドと、前記弁体を前記弁座の側に付勢する付勢機構とを備え、前記弁体は、前記磁性体の前記弁座に対する当接部を露出させつつ、当該弁体の表面と裏面とに亘って形成された樹脂部を有し、前記磁性体に形成された貫通孔が、前記樹脂部の成形の際に成形型が当接して位置保持される成形型当接部と成形用樹脂が流通する樹脂流通部として機能するように構成してある点にある。
【0008】
本構成の如く、弁体が磁性体と樹脂部とによって構成されることで、弁体が軽量となる。これにより、弁体を弁座に向けて付勢する付勢機構の付勢力を軽減でき、弁体を開状態にするために必要な流体圧も軽減できる。その結果、弁体の開閉方向の動作精度が高まる。また、体格の小さいソレノイドの使用が可能となり、付勢機構として付勢力が弱いものも採用できるので、車両用冷却液制御弁がコンパクトな構成となる。また、弁体が軽量となることで、バルブ本体において弁体が摺動する部位の摩耗を抑制できる。
【0009】
また、弁体は、磁性体の弁座に対する当接部が露出されている。本構成により、弁体は、ソレノイドによる磁力を磁性体に直接作用させ、弁座に対する当接部以外の外面を樹脂部によって形成することができる。これにより、弁体の形状選択の自由度が高まる。
さらに、樹脂部は弁体の表面と裏面とに亘って形成される。そのため、磁性体は樹脂部によって表裏両側から挟まれた状態となり、弁体において磁性体は樹脂部によって強固に保持される。
【0010】
また、本構成によれば、磁性体に形成された貫通孔が成形型当接部と樹脂流通部として機能するので、樹脂部の成形の際に、貫通孔の成形型当接部に成形型を当接させて磁性体の位置を保持しつつ、樹脂流通部に溶融樹脂を流通させて樹脂部を形成することができる。これにより、磁性体の表裏両側の樹脂部を効率よく形成することができる。
【0011】
本発明に係る車両用冷却液制御弁は、流体を流通させるバルブ本体と、磁性体を有し前記流体の流通を制御する弁体と、前記バルブ本体に設けられて前記流体の流路を構成し、前記弁体と当接して前記流路を閉塞可能な弁座と、通電により磁力を発生させることで前記弁体と前記弁座とを当接させるソレノイドと、前記弁体を前記弁座の側に付勢する付勢機構とを備え、前記弁体は、前記磁性体の前記弁座に対する当接部を露出させつつ、当該弁体の表面と裏面とに亘って形成された樹脂部を有するとともに、前記弁座に対する前記磁性体の露出部とは反対の側に前記磁性体の露出部を有してもよい。
【0012】
本発明に係る車両用冷却液制御弁は、流流体を流通させるバルブ本体と、磁性体を有し前記流体の流通を制御する弁体と、前記バルブ本体に設けられて前記流体の流路を構成し、前記弁体と当接して前記流路を閉塞可能な弁座と、通電により磁力を発生させることで前記弁体と前記弁座とを当接させるソレノイドと、前記弁体を前記弁座の側に付勢する付勢機構とを備え、前記弁体は、前記磁性体の前記弁座に対する当接部を露出させつつ、当該弁体の表面と裏面とに亘って形成された樹脂部を有するとともに、前記弁座に対する前記磁性体の露出部とは反対の側に前記磁性体の露出部を有し、前記磁性体に形成された貫通孔が、前記樹脂部の成形の際に成形型が当接して位置保持される成形型当接部と成形用樹脂が流通する樹脂流通部として機能するように構成してもよい。
【0013】
本構成の如く、弁体の表面側(弁座とは反対の側)にも磁性体の露出部を有することで、樹脂部の領域が減少するため、弁体をさらに軽量化することができる。また、弁体の表裏両面に磁性体の露出部を設けることで、樹脂注入時に露出部を利用して磁性体を両面から保持することもできる。よって、弁体の樹脂部の成形がさらに効率的なものとなる。
【0014】
本発明に係る車両用冷却液制御弁は、前記弁体が、前記付勢機構であるコイルスプリングを外挿固定するよう前記弁座とは反対の側の前記樹脂部に形成された筒状の受部を有し、前記受部の外周側端部にテーパ部が形成されてもよい。
【0015】
本構成によれば、樹脂部に形成された筒状の受部の外周側端部にコイルスプリングをスムーズに外挿することができ、バルブ機構に備えられる付勢機構の組付けを簡易に行うことができる。また、弁体がさらに軽量化される効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】エンジン冷却系の全体構成を示す概略図である。
図2】車両用冷却液制御弁の分解斜視図である。
図3】車両用冷却液制御弁の閉状態を示す図である。
図4】車両用冷却液制御弁の開状態を示す図である。
図5】磁性体の斜視図である。
図6】磁性体に成形型が配置された状態を示す部分底面図である。
図7】弁体の上方斜視図である。
図8】弁体の下方斜視図である。
図9】別実施形態の弁体の部分断面図である。
図10】別実施形態の弁体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る車両用冷却液制御弁の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1には、車両におけるエンジン冷却系30の全体構成を示す。エンジン31の冷却水(冷却液)流出ポート32にラジエータ33の流入ポート34が接続され、ラジエータ33の流出ポート35は、サーモスタットバルブ36の流入ポート37に接続される。サーモスタットバルブ36の流出ポート38は、ウォータポンプ41の吸込ポート42に接続され、ウォータポンプ41の図示しない吐出ポートは、エンジン31の図示しない冷却水(冷却液)流入ポートに接続される。一方、エンジン31の図示しない暖房用流出ポートは、車両用冷却液制御弁1(以下、冷却液制御弁1と略称する)の流入ポート6(図3及び図4参照)に接続される。冷却液制御弁1の流出ポート7は、ヒータコア43の流入ポート44に接続され、ヒータコア43の流出ポート45は、サーモスタットバルブ36のバイパス流入ポート39に接続される。バイパス流入ポート39は流出ポート38に連通する。
【0019】
冷却液制御弁1は、図2図4に示すように、ハウジング(バルブ本体)8と、ハウジング8内に設けられたバルブ機構10とを備える。
【0020】
バルブ機構10は、弁座11と、弁座11から離間する位置と当該弁座11に当接する位置とに移動可能な弁体12と、弁座11と弁体12との当接を通電により維持可能なソレノイド2とを備えている。
【0021】
ソレノイド2は、図示しないコネクタにより駆動回路に電気的に接続され、鉄等の磁性体により成形されたボビン4の内径部4aの外側に巻かれ、内径部4aと外径部4bに内包される銅線により構成される。ボビン4は、流入ポート6及び流出ポート7を備えたハウジング8内に設置される。ボビン4の内径部4aの内側には弁内流路9が形成されており、弁内流路9は流入ポート6に連通する。
【0022】
弁体12は円盤状の磁性体20と樹脂部21とにより成形されている。弁体12を磁性体20と樹脂部21とで構成することで、弁体12が軽量となる。これにより、弁体12を弁座11に向けて付勢する付勢機構(コイルスプリング14)の付勢力を軽減でき、弁体12を開状態にするために必要な流体圧も軽減できる。その結果、弁体12の開閉方向の動作精度が高まる。また、体格の小さいソレノイド2の使用が可能となり、コイルスプリング14も付勢力の弱いものを採用できるので、冷却液制御弁1がコンパクトな構成となる。また、弁体12が軽量となることで、ハウジング8において弁体12が摺動する部位の摩耗を抑制できる。
【0023】
第1ハウジング8Aの内周面には流体の流れ方向にリブ状の案内部13が複数設けられている。弁体12は、この案内部13によってスライド可能に支持されている。弁体12と当接する弁座11は、ボビン4における下流側のフランジ面に形成される。弁体12と第2ハウジング8Bとの間には、付勢機構としてコイルスプリング14が設置されている。
コイルスプリング14は、樹脂部21に形成された筒状の受部29に外挿固定され、弁体12を弁座11の方向に付勢する。第2ハウジング8Bの内周面には径方向にリブ状のストッパ部15が設けられている。第1ハウジング8Aの外周部に外周凹部16が形成され、第2ハウジング8Bの外周部に外周凸部17が形成されている。外周凹部16に外周凸部17が係合されると、第1ハウジング8Aに第2ハウジング8Bが接合されるとともに、案内部13の上面にストッパ部15が位置するよう構成されている。
【0024】
弁体12は、ソレノイド2が通電により励磁されると弁座11に吸着され、弁体12と弁座11が当接して、バルブ本体(ハウジング8)が閉状態となる。
【0025】
エンジン31の停止時には、ウォータポンプ41も停止しており流体圧は発生していない。したがって、弁体12はコイルスプリング14の付勢力により付勢されて弁座11に当接した閉状態が保持される(図3参照)。
【0026】
エンジン31の始動時には、ソレノイド2は通電により励磁され、磁性体20により成形された弁体12に吸引力が作用する。弁体12は、ソレノイド2による吸引力とコイルスプリング14による付勢力とを受けて、弁座11に当接し、ウォータポンプ41の吐出による流体圧が弁体12に作用しても閉状態に保持される(図3)。
【0027】
エンジン31内の温度が所定温度まで上昇し冷却液制御弁1に対し流体の供給要求が与えられると、ソレノイド2への通電が弱まり、弁体12は流入ポート6からの流体圧を受けることにより開方向に移動する。(図4参照)。
【0028】
弁体12が開状態になることで、エンジン31内の温度が、緩やかに低下する。このように弁体12を開閉制御することで、エンジン31内の温度を一定範囲に維持し、エンジン31の燃焼状態を安定化させることができる。
【0029】
冷却水はエンジン31の内部で加熱された後、ラジエータ33により冷却され、サーモスタットバルブ36を経由してウォータポンプ41に戻る。エンジン31が低温のとき、サーモスタットバルブ36は閉状態となる。暖房作動時には、エンジン31の内部で加熱された冷却水は、流体圧によって開状態に保持された冷却液制御弁1を経由してヒータコア43に供給され、室内が暖められる。ヒータコア43で冷却された冷却水は、サーモスタットバルブ36を経由して再びウォータポンプ41に戻る。
【0030】
冷却液制御弁1は、サーモワックス等の熱膨張によって開動作するものではなく、電流により自在に制御でき応答性に優れたソレノイド2により開動作する。このため、暖房の効きを早めることができ寒冷時の快適性が向上する。また、閉状態では、弁体12と弁座11とが当接して磁性体間の距離が接近するため電流当たりの吸引力が増大し、コイルスプリング14の付勢力により弁体12が閉状態に付勢されることにより、ソレノイド2の小型化及び電力消費を低減できる。さらに、コイルスプリング14によって弁体12は常時弁座11に付勢されるから液圧脈動による弁体12の振動を抑制することができる。
【0031】
図5及び図6に示すように、弁体12の磁性体20は、中央部に流体の流れ方向に凹部22を有し、凹部22には貫通孔23が形成されている。貫通孔23は、平面視において円形の成形型当接部24と、成形型当接部24の外周部を径方向外方に切欠いて形成された孔部の樹脂流通部25(図では3箇所)とを有する。図6に示すように、樹脂部21の成形の際に貫通孔23に成形型Fが挿入されると、成形型当接部24に成形型Fが当接する。これにより、磁性体20の位置が保持される。一方、樹脂流通部25は成形型Fとは当接しないため、磁性体20の表裏を貫通した状態が保持される。これにより、樹脂流通部25に溶融樹脂を流通させることができる。このように、磁性体20の位置を保持しつつ樹脂流通部25に溶融樹脂を流通させることで、磁性体20の表裏両側の樹脂部21を効率よく形成することができる。
【0032】
こうして、図7及び図8に示すように、樹脂部21は、弁体12の表面と裏面とに亘って形成される。磁性体20は樹脂部21によって表裏両側から挟まれた状態となり、磁性体20から樹脂部21によって強固に保持される。
【0033】
弁体12において、磁性体20は樹脂部21によって全て被覆されておらず、磁性体20の弁座11に対する当接部26は露出している。これにより、ソレノイド2による磁力を磁性体20に直接作用させることができる。一方、バルブ本体8に形成される案内部13やストッパ部15に接触する部位には樹脂部21が設けられている。このように、弁体12は弁座11に対する当接部26以外の外面を樹脂部21によって形成できるので、弁体12の形状選択の自由度が高まる。
【0034】
弁体12は、弁座11側とは反対の側にも磁性体20の露出部27を有する。露出部27は樹脂部21に形成された複数の円弧状の孔部21aによって露出している。このように、弁体12の表面側(弁座11とは反対の側)に、樹脂部21の一部が除去されることで、弁体12のさらなる軽量化を図ることができる。また、露出部26,27は磁性体20の両面に位置するので、弁体12の樹脂成形の際に成形型を露出部26,27に当接させて磁性体20を保持することができる。
【0035】
弁体12の弁座11側の中央には磁性体20の貫通孔23が露出されるよう樹脂部21に流体の流れ方向に凹部28が形成されている。ポンプ作動時には、流体は弁体12の弁座11側において凹部28に流れ込み易く、弁体12に対する流体圧の作用点が弁体12の上方に偏位する(図3図4)。これにより、流体の流れ方向に対して弁体12の姿勢が維持され易くなり、冷却液制御弁1が開状態にあるときの流量が安定する。
【0036】
〔別実施形態〕
図9に示すように、弁体12において、弁座11とは反対の側の樹脂部21に形成された筒状の受部29は、外周側端部にテーパ部29aが形成されていると好適である。テーパ部29aにより、受部29に対しコイルスプリング14をスムーズに外挿することができる。その結果、バルブ機構10に備えられる付勢機構の組付けを簡易に行うことができる。また、テーパ部29aにより、弁体12がさらに軽量化される効果も得られる。
【0037】
弁体12の樹脂部21の成形にあたり、樹脂注入用のゲートは例えば受部29に設けられる。ただし、ゲートからあふれ出た余剰の樹脂が弁体12の全体形状に影響しないよう、ゲートを設ける位置には、樹脂注入する上で所定の厚み幅が必要となる。ここで、テーパ部29aにより筒状の受部29の厚みは先端に向かうほど小さい。このため、受部29の一部を切り欠いた底部29bにゲートGを設けてある(図10)。
【0038】
〔他の実施形態〕(1)上記の実施形態では、弁体12の磁性体20が凹部22を有する例を示したが、磁性体20は全体が平板状に形成されていてもよい。
【0039】
(2)上記の実施形態では、弁体12の磁性体20が貫通孔23を有する例を示したが、貫通孔23を有しない磁性体20であってもよい。
【0040】
(3)上記の実施形態では、弁体12の表面側に磁性体20の露出部27を有する例を示したが、露出部27を有さずに弁体12の表面側が樹脂部21によって全て被覆されていてもよい。
【0041】
(4)上記の実施形態では、弁体12の磁性体20の貫通孔23に樹脂流通部25として3箇所の切欠き孔を形成する例を示したが、樹脂流通部25は3箇所に限定されない。磁性体20の貫通孔23に樹脂流通部25を有しないものであってもよい。その場合には、樹脂部21は磁性体20の外周部を介して弁体12の表面側から裏面側に亘って形成される。
【0042】
(5)上記の実施形態では、冷却液制御弁1をヒータコア43への流路を開閉する冷却液制御弁に適用した例を示したが、ラジエータ33への流路を開閉するサーモスタットバルブ36に適用してもよい。
【0043】
(6)上記の実施形態では、冷却液制御弁1のソレノイド2は弁内流路9の周囲に設置されているが、搭載上等の理由により冷却水流路から離れた位置に設置されていてもよい。
また、弁体12の付勢機構としてコイルスプリング14が用いられているが、空気ばね、磁力、弁体12の質量に作用する重力等の他の移動手段で弁体12を閉方向に付勢してもよい。冷却水を循環させる手段はウォータポンプ41だけでなく、蓄圧器等を補助的に用いてもよい。
【0044】
(7)上記の実施形態では、冷却液制御弁1をエンジン31本体の冷却系に用いているが、排気管に設置される触媒の冷却系又は液冷式オイルクーラ等に適用してもよい。他に、電動車両に使用されるモータ、インバータ、二次電池、燃料電池等の熱源の冷却系又は排熱回収系の冷却液制御弁として適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る車両用冷却液制御弁は、各種車両における幅広い冷却対象に対して利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 車両用冷却液制御弁(冷却液制御弁)
2 ソレノイド
8 ハウジング(バルブ本体)
9 弁内流路
10 バルブ機構
11 弁座
12 弁体
14 コイルスプリング
20 磁性体
21 樹脂部
23 貫通孔
24 成形型当接部
25 樹脂流通部
26 露出部(当接部)
27 露出部
28 凹部
29 受部
29a テーパ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10