特許第6303503号(P6303503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6303503樹脂組成物、硬化膜、積層フィルム、および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6303503
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化膜、積層フィルム、および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20180326BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20180326BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20180326BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20180326BHJP
   H01B 17/60 20060101ALI20180326BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20180326BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   B32B27/34
   C08L79/08 Z
   C08K5/16
   C08G73/10
   H01B17/60 K
   C09J179/08
   C09J11/06
【請求項の数】13
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-555106(P2013-555106)
(86)(22)【出願日】2013年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2013075886
(87)【国際公開番号】WO2014050878
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年9月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-210689(P2012-210689)
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓生
(72)【発明者】
【氏名】李 忠善
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−265571(JP,A)
【文献】 特開2011−123278(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/078365(WO,A1)
【文献】 特開2007−314647(JP,A)
【文献】 特開2006−133757(JP,A)
【文献】 特開2005−043883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08L 79/00−79/08
C08G 73/00−73/26
C08K 5/00−5/59
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド系樹脂およびメチロール系化合物を含有する樹脂組成物であって、前記ポリイミド系樹脂が酸二無水物残基およびジアミン残基を有し、前記ジアミン残基として、少なくとも一般式(1)で表されるポリシロキサン系ジアミンの残基および水酸基を有する芳香族ジアミンの残基を有し、前記メチロール系化合物が一般式(6)で表される基を2個以上有する化合物である、樹脂組成物を、耐熱性絶縁フィルムの少なくとも片面に積層した積層フィルム。
【化1】
(nは自然数であって、ポリシロキサン系ジアミンの平均分子量から算出される平均値が5〜30の範囲である。RおよびRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30のアルキレン基またはフェニレン基を示す。R〜Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30のアルキル基、フェニル基またはフェノキシ基を示す。)
【化2】
(R47は化合物中に複数存在する場合はそれぞれ同じでも異なっても良く、水素または炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記耐熱性絶縁フィルムの表面が、離型処理されている請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
耐熱性絶縁フィルムの少なくとも片面に積層した樹脂組成物表面に、離型処理された耐熱性絶縁フィルムをさらに積層した請求項1または2記載の積層フィルム。
【請求項4】
ポリイミド系樹脂およびメチロール系化合物を含有する樹脂組成物であって、前記ポリイミド系樹脂が酸二無水物残基およびジアミン残基を有し、前記ジアミン残基として、少なくとも一般式(1)で表されるポリシロキサン系ジアミンの残基および水酸基を有する芳香族ジアミンの残基を有し、一般式(1)で表されるポリシロキサン系ジアミンの残基を全ジアミン残基中80〜99モル%、水酸基を有する芳香族ジアミンの残基を全ジアミン残基中1〜20モル%含み、前記メチロール系化合物が一般式(6)で表される基を2個以上有する化合物である、樹脂組成物。
【化3】
(nは自然数であって、ポリシロキサン系ジアミンの平均分子量から算出される平均値が5〜30の範囲である。RおよびRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30のアルキレン基またはフェニレン基を示す。R〜Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30のアルキル基、フェニル基またはフェノキシ基を示す。)
【化4】
(R47は化合物中に複数存在する場合はそれぞれ同じでも異なっても良く、水素または炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
【請求項5】
水酸基を有する芳香族ジアミンが、一般式(2)〜(5)のいずれかで表される芳香族ジアミンである請求項4記載の樹脂組成物。
【化5】
(R〜R10のうち少なくとも1つは水酸基で、それ以外は同じでも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基およびシアノ基から選ばれる基を示す。)
【化6】
(Xは直接結合、O、S、SO、SO、CO、CH、C(CH)およびC(CF)から選ばれる基を示す。R11〜R18のうち少なくとも1つは水酸基で、それ以外は同じでも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基およびシアノ基から選ばれる基を示す。)
【化7】
(X、Yはそれぞれ同じでも異なっていても良く、直接結合、O、S、SO、SO、CO、CH、C(CH)およびC(CF)から選ばれる基を示す。R19〜R30のうち少なくとも1つは水酸基で、それ以外は同じでも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基およびシアノ基から選ばれる基を示す。)
【化8】
(X、Y、Zはそれぞれ同じでも異なっていても良く、直接結合、O、S、SO、SO、CO、CH、C(CH)およびC(CF)から選ばれる基を示す。R31〜R46のうち少なくとも1つは水酸基で、それ以外は同じでも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基およびシアノ基から選ばれる基を示す。)
【請求項6】
メチロール系化合物の含有量が、ポリイミド系樹脂100重量部に対して1〜20重量部である請求項4記載の樹脂組成物。
【請求項7】
酸二無水物残基が芳香族テトラカルボン酸二無水物の残基である請求項4記載の樹脂組成物。
【請求項8】
硬化後のガラス転移温度が40℃以下である請求項4記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項4〜いずれかに記載の樹脂組成物を硬化した硬化膜。
【請求項10】
請求項1〜3いずれかに記載の積層フィルムを用いた半導体装置の製造方法。
【請求項11】
半導体回路形成用基板と支持基板とが少なくとも1層の粘着剤樹脂層を介して接合され、該粘着剤樹脂層が前記積層フィルムを用いたものであり、少なくとも、半導体回路形成用基板を薄く加工する工程、半導体回路形成用基板をデバイス加工する工程、および、半導体回路形成基板を支持基板から剥離する工程を含む請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項4〜いずれかに記載の樹脂組成物を用いた半導体装置の製造方法。
【請求項13】
半導体回路形成用基板と支持基板とが少なくとも1層の粘着剤樹脂層を介して接合され、該粘着剤樹脂層が前記樹脂組成物であり、少なくとも、半導体回路形成用基板を薄く加工する工程、半導体回路形成用基板をデバイス加工する工程、および、半導体回路形成基板を支持基板から剥離する工程を含む請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性粘着剤として好適に用いられる樹脂組成物、硬化膜、積層フィルム、および半導体装置の製造方法に関する。より詳しくは、高温環境下でも粘着剤の分解等による揮発分の発生が無く、優れた粘着性を有し、電子デバイス製造時の工程用材料等に使用可能な耐熱性粘着剤として好適に用いられる樹脂組成物これを用いた硬化膜および積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着剤としては、天然ゴムやスチレン−ブタジエンゴム等のゴム系粘着剤が一般的に多く使われてきたが、電子デバイス製造時の工程用材料等には高い耐熱性が要求されるため、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂が使用されてきた。
【0003】
アクリル系樹脂は高い透明性も有するため、液晶ディスプレイ等のフラットディスプレイ用の光学材料に多く用いられているが(例えば、特許文献1参照)、200℃以上、さらには250℃以上の温度に長時間放置した場合、アクリル樹脂自体が分解して揮発成分が発生するため、耐熱性としては不十分であった。シリコーン系樹脂は低温から高温まで広い使用温度範囲を持ち、アクリル系樹脂に比べ高い耐熱性を示すが(例えば、特許文献2参照)、250℃以上、さらには300℃以上の温度に長時間放置した場合には、分解等により揮発成分が発生する。また、シリコーン系粘着剤には、低分子量のシリコーン成分が含まれるため、これらが電子部品に悪影響を及ぼす問題もある。
【0004】
250℃以上の耐熱性を有する樹脂としては、ポリイミド樹脂が挙げられる。接着剤としての用途に供するためのポリイミド樹脂としては、例えば、キュア時に発生するガスを抑え、さらに優れた接着性を発現することを目的として、シロキサン系ジアミンを共重合したシロキサン系ポリイミド樹脂が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、300℃以下での半導体接着テープの貼り付けを可能とすることを目的として、ジアミン成分にポリシロキサン系ジアミンを共重合してガラス転移温度を100〜150℃としたポリシロキサン系ポリイミド樹脂が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−308549号公報
【特許文献2】特開2005−105246号公報
【特許文献3】特開平5−200946号公報
【特許文献4】特開2004−277619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように接着力を高めたポリイミド樹脂であっても、180℃以下の低温で他の基材と圧着させることはできず、粘着剤としては使用できなかった。また、アクリル系、シリコーン系の粘着剤は180℃以下の低温で他の基材を圧着することができるが、熱処理工程等を通過した後に接着力が上昇し、基材を剥離する時に、室温で容易に剥離できない問題点があった。
【0007】
かかる状況に鑑み、本発明の目的は、250℃以上の高温でも分解等による揮発分の発生が少なく、180℃以下の低温で良好な粘着性を有し、熱処理工程を通過した後でも接着力の上昇が小さく、室温で容易に剥離することができる樹脂組成物と、これを用いた硬化物および積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、ポリイミド系樹脂およびメチロール系化合物を含有する樹脂組成物であって、前記ポリイミド系樹脂が酸二無水物残基およびジアミン残基を有し、前記ジアミン残基として、少なくとも一般式(1)で表されるポリシロキサン系ジアミンの残基および水酸基を有する芳香族ジアミンの残基を有し、前記メチロール系化合物が一般式(6)で表される基を2個以上有する化合物である、樹脂組成物を、耐熱性絶縁フィルムの少なくとも片面に積層した積層フィルムである。
【0009】
【化1】
【0010】
(nは自然数であって、ポリシロキサン系ジアミンの平均分子量から算出される平均値が5〜30の範囲である。RおよびRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30のアルキレン基またはフェニレン基を示す。R〜Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30のアルキル基、フェニル基またはフェノキシ基を示す。)
【化9】
(R47は化合物中に複数存在する場合はそれぞれ同じでも異なっても良く、水素または炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、180℃以下の低温で良好な粘着性を発現し、250℃以上の高温でも分解等による揮発分の発生が少なく、また、熱処理工程を通過した後でも接着力の上昇が小さいため、基材の剥離時に室温で容易に剥離することができる高耐熱性の樹脂組成物と、これを用いた硬化膜および積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性絶縁フィルムやガラス基板、シリコンウエハ等に積層することで、粘着層積層フィルム、又は、粘着層積層基板として使用できるものである。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、少なくともポリイミド系樹脂およびメチロール系化合物を含有する樹脂である。
【0014】
本発明のポリイミド系樹脂は高い耐熱性を示す。本発明での耐熱性とは分解等により揮発分が発生する分解開始温度で定義されるものである。好ましい分解開始温度は250℃以上、さらに好ましくは300℃以上である。
【0015】
本発明の分解開始温度は熱重量分析装置(TGA)を用いて測定することができる。測定方法を具体的に説明する。所定量のポリイミド系樹脂をTGAに仕込み、60℃で30分保持してポリイミド系樹脂が吸水している水分を除去する。次に、5℃/分で500℃まで昇温する。得られた重量減少曲線の中から重量減少が開始する温度を分解開始温度とした。
【0016】
本発明のポリイミド系樹脂は、少なくとも酸二無水物残基とジアミン残基を有する。本発明においては、ジアミン残基に一般式(1)で示されるポリシロキサン系ジアミンの残基および、水酸基を有する芳香族ジアミンの残基を含む。
【0017】
【化2】
【0018】
nは自然数であって、ポリシロキサン系ジアミンの平均分子量から算出される平均値が5〜30の範囲である。RおよびRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30のアルキレン基またはフェニレン基を示す。R〜Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30のアルキル基、フェニル基またはフェノキシ基を示す。好ましい炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0019】
また上記ポリシロキサン系ジアミンの平均分子量は、ポリシロキサン系ジアミンのアミノ基の中和滴定することによりアミノ基当量を算出し、このアミノ基当量を2倍することで求めることができる。例えば、試料となるポリシロキサン系ジアミンを所定量採取してビーカーに入れ、これを所定量のイソプロピルアルコール(以下、IPAとする。)とトルエンの1:1混合溶液に溶解し、この溶液に撹拌しながら0.1N塩酸水溶液を滴下していき、中和点となったときの0.1N塩酸水溶液の滴下量からアミノ基当量を算出することができる。このアミノ基当量を2倍した値が平均分子量である。
【0020】
一方、用いたポリシロキサン系ジアミンがn=1であった場合およびn=10であった場合の分子量を化学構造式から計算し、nの数値と分子量の関係を一次関数の関係式として得ることができる。この関係式に上記平均分子量をあてはめ、上記nの平均値を得ることができる。
【0021】
また一般式(1)で示されるポリシロキサン系ジアミンは、nが単一ではなく複数のnを持つ混合体である場合があるので、本発明でのnは平均値を表す。nは5〜30の範囲であり、7〜25の範囲のものがより好ましい。nが5〜30の範囲にあることで、樹脂組成物を硬化した膜のガラス転移温度を40℃以下に調整することができる。また、ポリイミド系樹脂の重合時にゲル化が起こらない。
【0022】
一般式(1)で示されるポリシロキサン系ジアミンの具体例としては、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジエチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジプロピルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジブチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェノキシシロキサン、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジフェノキシシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジフェノキシシロキサン、α,ω−ビス(5−アミノペンチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(5−アミノペンチル)ポリジフェノキシシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジフェノキシシロキサンなどが挙げられる。上記ポリシロキサン系ジアミンは単独でも良く、2種以上使用してもよい。
【0023】
本発明のポリイミド系樹脂は、全ジアミン残基中に一般式(1)で示されるポリシロキサン系ジアミンの残基を40モル%以上含むことが好ましく、60モル%以上、99モル%以下がより好ましい。一般式(1)で示されるポリシロキサン系ジアミンの残基を40モル%以上含むことにより、樹脂組成物を硬化した膜のガラス転移温度を40℃以下にすることができ、180℃以下の低温での良好な粘着性を発現することができる。
【0024】
本発明のポリイミド系樹脂は、全ジアミン残基中に水酸基を有する芳香族ジアミンの残基を1モル%以上、好ましくは5モル%以上、40モル%以下、好ましくは30モル%以下含む。水酸基を有する芳香族ジアミンの残基を1モル%以上、40モル%以下含むことにより、良好な粘着性を有し、さらに熱処理工程を通過した後でも接着力の上昇が小さいため、基材の剥離時に室温で容易に剥離することができる。
【0025】
本発明において、水酸基を有する芳香族ジアミンは一般式(2)〜(5)のいずれかで表される芳香族ジアミンであることがより好ましい。
【0026】
【化3】
【0027】
〜R10のうち少なくとも1つは水酸基で、それ以外は同じでも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基およびシアノ基から選ばれる基を示す。
【0028】
【化4】
【0029】
は直接結合、O、S、SO、SO、CO、CH、C(CH)およびC(CF)から選ばれる基を示す。R11〜R18のうち少なくとも1つは水酸基で、それ以外は同じでも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基およびシアノ基から選ばれる基を示す。
【0030】
【化5】
【0031】
、Yはそれぞれ同じでも異なっていても良く、直接結合、O、S、SO、SO、CO、CH、C(CH)およびC(CF)から選ばれる基を示す。R19〜R30のうち少なくとも1つは水酸基で、それ以外は同じでも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基およびシアノ基から選ばれる基を示す。
【0032】
【化6】
【0033】
、Y、Zはそれぞれ同じでも異なっていても良く、直接結合、O、S、SO、SO、CO、CH、C(CH)およびC(CF)から選ばれる基を示す。R31〜R46のうち少なくとも1つは水酸基で、それ以外は同じでも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、スルホン基、ニトロ基およびシアノ基から選ばれる基を示す。
【0034】
一般式(2)〜(5)で示される水酸基を有する芳香族ジアミンの具体例としては、2,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、4,4’−ジヒドロキシ―3,3’―ジアミノフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシ―3,3’―ジアミノフェニルヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジヒドロキシ―3,3’―ジアミノフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ―3,3’―ジアミノフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシ―4,4’―ジアミノフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ―3,3’―ジアミノフェニルプロパンメタン、4,4’−ジヒドロキシ―3,3’―ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、ビス(4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン)プロパン、ビス(4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン)スルホン、ビス(4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニルなどが挙げられる。上記水酸基を有する芳香族ジアミンは単独でも良く、2種以上使用してもよい。
【0035】
本発明においては、上記ポリシロキサン系ジアミンの残基と水酸基を有する芳香族ジアミンの残基以外に、芳香族ジアミンの残基または脂環式ジアミンの残基を有しても良い。芳香族ジアミンまたは脂環式ジアミンの具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,6−ジアミノ安息香酸、2−メトキシ−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノベンズアニリド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メトキシ−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−4−カルボン酸、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−4−メチル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−4−メトキシ、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−4−エチル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−4−スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−3−カルボン酸、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−3−メチル、1,3−ジアミノシクロヘキサン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメメトキシベンジジン、2,4−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、p−アミノベンジルアミン、m−アミノベンジルアミン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、3,3’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシル、ベンジジンなどが挙げられる。上記芳香族ジアミンまたは脂環式ジアミンは単独でもよく、2種以上使用してもよい。
【0036】
これら芳香族ジアミンまたは脂環式ジアミンの中でも、屈曲性の高い構造を持つ芳香族ジアミンが好ましく、具体的には、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノンが特に好ましい。
【0037】
本発明のポリイミド系樹脂は、酸二無水物残基として芳香族テトラカルボン酸二無水物の残基を含むことが好ましい。芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’ジメチル−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’ジメチル−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホキシドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルメチレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−イソプロピリデンジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−パラターフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−メタターフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。上記芳香族テトラカルボン酸二無水物は単独でもよく、2種以上使用してもよい。
【0038】
また本発明においては、ポリイミド系樹脂の耐熱性を損なわない程度に脂肪族環を持つテトラカルボン酸二無水物を含有させることができる。脂肪族環を持つテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオンが挙げられる。上記テトラカルボン酸二無水物は単独でもよく、2種以上使用してもよい。
【0039】
本発明のポリイミド系樹脂の分子量の調整は、合成に用いるテトラカルボン酸成分またはジアミン成分を等モルにする、または、いずれかを過剰にすることにより行うことができる。テトラカルボン酸成分またはジアミン成分のどちらかを過剰とし、ポリマー鎖末端を酸成分またはアミン成分などの末端封止剤で封止することもできる。酸成分の末端封止剤としてはジカルボン酸またはその無水物が好ましく用いられ、アミン成分の末端封止剤としてはモノアミンが好ましく用いられる。このとき、酸成分またはアミン成分の末端封止剤を含めたテトラカルボン酸成分の酸当量とジアミン成分のアミン当量を等モルにすることが好ましい。
【0040】
テトラカルボン酸成分が過剰、あるいはジアミン成分が過剰になるようにモル比を調整した場合は、安息香酸、無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、アニリンなどのジカルボン酸またはその無水物、モノアミンを末端封止剤として添加してもよい。
【0041】
本発明において、ポリイミド系樹脂のテトラカルボン酸成分/ジアミン成分のモル比は、樹脂溶液の粘度が塗工等で使用し易い範囲になるように、適宜調整することができ、100/100〜100/95、あるいは100/100〜95/100の範囲でテトラカルボン酸成分/ジアミン成分のモル比を調整することが一般的である。ただし、モルバランスを崩していくと、樹脂の分子量が低下して形成した膜の機械的強度が低くなり、粘着力も弱くなる傾向にあるので、粘着力が弱くならない範囲でモル比を調整することが好ましい。
【0042】
本発明のポリイミド系樹脂を合成する方法には特に制限は無い。例えば、本発明のポリイミド系樹脂の前駆体であるポリアミド酸を重合する時は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを有機溶剤中、0〜100℃で1〜100時間撹拌してポリアミド酸樹脂溶液を得る。ポリイミド系樹脂の組成が有機溶媒に可溶性となる場合には、ポリアミド酸を重合後、そのまま温度を120〜300℃に上げて1〜100時間撹拌し、ポリイミドに変換し、ポリイミド系樹脂溶液を得る。この時、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンなどを反応溶液中に添加し、イミド化反応で出る水をこれら溶媒と共沸させて除去しても良い。
【0043】
ポリイミド、あるいはポリイミド前駆体であるポリアミド酸合成の溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系極性溶媒、また、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン系極性溶媒、他には、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、乳酸エチルなどを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上用いても良い。ポリイミド系樹脂溶液、あるいはポリアミド酸樹脂溶液の濃度は、通常10〜80重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜70重量%である。
【0044】
ポリアミド酸樹脂溶液の場合、フィルムやガラス等の基材に塗布、乾燥して塗工膜形成後に熱処理してポリイミドに変換する。ポリイミド前駆体からポリイミドへの変換には240℃以上の温度が必要であるが、ポリアミド酸樹脂組成物中にイミド化触媒を含有することにより、より低温、短時間でのイミド化が可能となる。イミド化触媒の具体例としては、ピリジン、トリメチルピリジン、β-ピコリン、キノリン、イソキノリン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2,6−ルチジン、トリエチルアミン、m−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p−フェノールスルホン酸、p−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
イミド化触媒は、ポリアミド酸固形分100重量部に対して3重量部以上が好ましく、より好ましくは5重量部以上である。イミド化触媒を3重量部以上含有することにより、より低温の熱処理でもイミド化を完結させることができる。また、好ましくは10重量部以下、より好ましくは8重量部以下である。イミド化触媒の含有量を10重量部以下とすることにより、熱処理後にイミド化触媒がポリイミド系樹脂層中に残留する量を極小化でき、揮発分の発生を抑制できる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、メチロール系化合物を含有する。メチロール系化合物は架橋剤であり、架橋剤は熱硬化時にポリイミド系樹脂を架橋し、ポリイミド系樹脂中に取り込まれる化合物である。樹脂中に架橋構造を導入することにより、熱処理工程時の樹脂組成物硬化膜の流動性を抑制するため、接着力の上昇を抑えることができる。架橋剤としては一般式(6)で表される基、エポキシ基、マレイミド基、オキセタン基、イソシアネート基、アクリロイル基の群から選択される架橋性官能基を2個以上有する化合物が挙げられ、一般式(6)で表される基を2個以上有する化合物が好ましい。
【0047】
【化7】
【0048】
47は化合物中に複数存在する場合はそれぞれ同じでも異なっても良く、水素または炭素数1〜10のアルキル基を示す。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基が挙げられる。
【0049】
一般式(6)で表される基を2個以上有するメチロール系化合物の具体例としては、以下のようなメラミン誘導体や尿素誘導体(三和ケミカル(株)製)が挙げられる。
【0050】
【化8】
【0051】
本発明においては、樹脂組成物に一般式(1)で表されるポリシロキサン系ジアミンの残基および水酸基を有する芳香族ジアミンの残基を有するポリイミド系樹脂と、メチロール系化合物を含有することが重要であり、ポリイミド系樹脂100重量部に対して、1重量部以上、好ましくは3重量部以上、20重量部以下、好ましくは15重量部以下である。メチロール系化合物を1重量部以上、20重量部以下含むことにより、良好な粘着性を持ち、熱処理工程を通過した後の接着力の上昇を大きく抑制することができるため、剥離時に基材を室温で容易に剥離することができる。
【0052】
本発明の樹脂組成物には、ポリイミド系樹脂とメチロール系化合物の他にも、本発明の効果を損なわない範囲でその他の樹脂や充填剤を添加することができる。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂などの耐熱性高分子樹脂が挙げられる。充填剤は、有機あるいは無機からなる微粒子、フィラーなどが挙げられる。微粒子、フィラーの具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、石英粉、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸バリウム、マイカ、タルクなどが挙げられる。また、粘着性、耐熱性、塗工性、保存安定性などの特性を改良する目的で界面活性剤、シランカップリング剤などを添加しても良い。
【0053】
本発明の樹脂組成物を硬化した硬化膜は、ガラス転移温度が40℃以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。ガラス転移温度が40℃以下であると、本発明の樹脂組成物を用いて形成される硬化膜に被着体となる基材を圧着した際に良好な粘着性を示す。
【0054】
ここで言う粘着性とは、20℃から30℃の室温で前記粘着層フィルムを基材に圧着した時に基材が自然に剥がれない程度以上の接着力を有することを示す。具体的には、90度の剥離角度、50mm/分で被着体となる基材を剥離した時に、1g/cm以上の接着力を有することを示す。
【0055】
また、ガラス転移温度の下限は特に制限はないが、好ましくは−30℃以上、より好ましくは−20℃以上である。ガラス転移温度が−30℃以上であると、適度なタック性を有し、例えば、離型処理した保護フィルムを張り合わせた後、簡単に剥がすことができる。
【0056】
本発明の樹脂組成物は高い耐熱性を示し、分解開始温度が250℃以上、好ましくは300℃以上である。
【0057】
本発明の積層フィルムは主に粘着剤積層フィルムとして使用できるものであり、本発明の樹脂組成物を耐熱性絶縁フィルムの片面、又は両面に積層することで得ることができる。本発明の積層フィルムは、そのまま粘着フィルムとして使用することもできる。また、積層フィルムの粘着剤層をガラス基板等に圧着した後、耐熱性絶縁フィルムのみを剥離し、粘着剤層をガラス基板等に転写する、粘着剤転写フィルムとして使用することもできる。
【0058】
本発明の積層フィルムに用いられる耐熱性絶縁フィルムとしては、芳香族ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂などからなるフィルムが挙げられ、芳香族ポリイミド系樹脂からなるポリイミドフィルムが特に好ましい。ポリイミドフィルムの具体的な製品としては、東レ・デュポン(株)製“カプトン”(登録商標)、宇部興産(株)製“ユーピレックス”(登録商標)、(株)カネカ製“アピカル”(登録商標)などが挙げられる。
【0059】
耐熱性絶縁フィルムの厚みは特に限定されないが、支持体としての強度の観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。また、柔軟性の観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0060】
樹脂組成物の塗布方法としては、バーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター、ドクターブレードフロートコーター、グラビアコーター、スリットダイコーターなどを用いる方法が挙げられる。塗布後は熱処理することにより、樹脂組成物中の有機溶媒を除去し、イミド化を行う。熱処理温度は100〜300℃、好ましくは150〜250℃である。熱処理時間は通常20秒〜30分で適宜選択され、連続的でも断続的でもかまわない。耐熱性絶縁フィルムの両面に樹脂組成物を積層する場合、樹脂組成物を片面ずつ塗布・乾燥してもよく、両面同時に塗布・乾燥してもよい。必要に応じて、塗工した樹脂組成物表面に離型処理されたフィルムを積層しても良い。
【0061】
積層する樹脂組成物の厚みは適宜選択することができるが、0.1μm〜500μm、好ましくは1μm〜100μm、さらに好ましくは2μm〜50μmである。
【0062】
本発明の積層フィルムを粘着テープとして使用する時は、耐熱性絶縁フィルムの片面あるいは両面に目的に応じて接着性改良処理が施されていてもよい。接着改良処理としては、常圧プラズマ処理、コロナ放電処理、低温プラズマ処理などの放電処理が好ましい。
【0063】
粘着テープに他の基材を圧着するにはプレス、ロールラミネータ等を用いることができる。温度をかけて圧着しても良いが、100℃以下、好ましくは80℃以下である。20〜30℃の室温で圧着することが最も好ましい。圧着は空気中でも良く、窒素中でも良い。好ましくは真空中である。
【0064】
本発明の積層フィルムを粘着剤転写フィルムとして使用する時は、耐熱性絶縁フィルムの片面あるいは両面に目的に応じて離型処理が施されていてもよい。離型処理としては、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等を塗工して処理されたものが好ましい。
【0065】
転写する時は、ガラス基板等の基材に、積層フィルムの樹脂組成物層を張り合わせて圧着する。圧着はプレス、ロールラミネータ等を用いることができ、必要あれば加熱して圧着しても良い。この時の温度は20℃以上、200℃以下、好ましくは180℃以下である。圧着は空気中でも良く、窒素中でも良い。好ましくは真空中である。
【0066】
転写した樹脂組成物層に他の基材を圧着するには、耐熱性絶縁フィルムを剥離した後、プレス、ロールラミネータ等を用いて圧着する。温度をかけて圧着しても良いが、180℃以下、好ましくは100℃以下である。20〜30℃の室温で圧着することが最も好ましい。圧着は空気中でも良く、窒素中でも良い。好ましくは真空中である。
【0067】
本発明においては、樹脂組成物をガラス基板等に直接塗布・乾燥しても良い。塗布方法としては、スピンコーター、スクリーン印刷、グラビアコーター、スリットダイコーター、バーコーターなどの方法が挙げられる。
【0068】
本発明の樹脂組成物は半導体装置の製造にも用いることができる。詳しくは、半導体素子を高集積化、高密度化するために、半導体チップをシリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Via)によって接続しながら積層する技術である。本技術は、パッケージを薄くする必要があり、半導体回路形成基板の厚みを100μm以下に薄型化する工程が含まれる。半導体回路形成用基板には一般的にシリコンウエハが使用される。
【0069】
シリコンウエハを100μm以下に薄型化すると搬送が困難になるため、シリコンウエハなどの支持基板に粘着剤等を介して半導体回路形成用基板を接着し、この半導体回路形成用基板の非回路形成面(裏面)を研磨することで薄型化し、この裏面に裏面電極を形成した後、半導体回路形成基板を剥離する。本発明の樹脂組成物は上記工程を含む半導体装置の製造における粘着剤として好適に使用することができる。
【0070】
支持基板への樹脂組成物の塗布方法としてはスピンコーター、ロールコーター、スクリーン印刷、スリットダイコーターなどが挙げられる。塗布後の乾燥は100〜300℃で通常20秒〜1時間連続的または断続的に熱処理して行うことができる。また、離型処理を施した基材フィルムに樹脂組成物を塗布、乾燥して積層した積層フィルムを用いて支持基板であるシリコンウエハに樹脂組成物の塗布膜を転写積層しても良い。樹脂組成物を積層後、さらに180〜350℃で30秒〜1時間熱処理しても良い。
【0071】
本発明においては、支持基板に樹脂組成物を塗工して積層するだけでなく、半導体回路形成用基板に樹脂組成物を塗工して積層しても良く、半導体回路形成用基板に積層フィルムを用いて樹脂組成物の塗布膜を転写積層しても良い。また、支持基板側、または半導体回路形成用基板側に他の樹脂組成物からなる層が存在しても良い。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ガラス転移温度、重量減少率、接着力の評価方法について述べる。
【0073】
(1)ガラス転移温度の測定
下記製造例22〜48に記載の粘着剤樹脂溶液(AH1〜AH27)を厚さ18μmの電解銅箔の光沢面に厚さ20μmになるようにバーコーターで塗布後、80℃で10分、150℃で10分乾燥し、さらに窒素雰囲気下250℃で10分加熱処理を行って、ポリイミドに変換し、粘着剤樹脂積層銅箔を得た。次に得られた粘着剤樹脂積層銅箔の銅箔を塩化第2鉄溶液で全面エッチングし、粘着剤樹脂の単膜を得た。
【0074】
得られた粘着剤樹脂の単膜約10mgをアルミ製標準容器に詰め、示差走査熱量計DSC−50(島津製作所(株)製)を用いて測定し(DSC法)、得られたDSC曲線の変曲点からガラス転移温度を計算した。80℃×1時間で予備乾燥した後、昇温速度20℃/分で測定を行った。
【0075】
(2)熱分解開始温度の測定
上記で得られた粘着剤樹脂の単膜約15mgをアルミ製標準容器に詰め、熱重量分析装置 TGA−50(島津製作所(株)製)を用いて測定した。測定条件は、60℃で30分保持した後、昇温速度5℃/分で500℃まで昇温した。
【0076】
得られた重量減少曲線から重量減少が始まる温度を読み出し、この温度を熱分解開始温度とした。
【0077】
(3)粘着力(常態)の測定
各実施例および比較例で得られたポリイミドフィルム積層ガラス基板上のポリイミドフィルムを10mm幅に切り目を入れ、10mm幅のポリイミドフィルムをTOYO BOLDWIN社製”テンシロン”UTM−4−100にて引っ張り速度50mm/分、90゜剥離で測定した。
【0078】
(4)ポリシロキサン系ジアミンの平均分子量の測定およびnの数値の算出
試料となるポリシロキサン系ジアミン5gをビーカーに採取し、ここに、IPA:トルエンが1:1の混合溶液を50mL入れ溶解した。次に、京都電子工業(株)製の電位差自動測定装置AT−610を用い、0.1N塩酸水溶液を撹拌しながら滴下し、中和点となる滴下量を求めた。得られた0.1N塩酸水溶液の滴下量から下式(7)を用いて平均分子量を算出した。
2×〔10×36.5×(滴下量(g))〕/5=平均分子量 (7)
次に、用いたポリシロキサン系ジアミンがn=1であった場合およびn=10であった場合の分子量を化学構造式から計算し、nの数値と分子量の関係を一次関数の関係式として求めた。この関係式に上記平均分子量をあてはめ、nの平均値を求めた。
【0079】
以下の製造例に示してある酸二無水物、ジアミンの略記号の名称は下記の通りである。
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
APPS1:α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量:400、式(1)においてn=3)
APPS2:α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量:860、式(1)においてn=9)
APPS3:α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量:1600、式(1)においてn=19)
APPS4:α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量:3000、式(1)においてn=37)
44DAE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
APB:1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン
35DAP:3,5−ジアミノフェノール
BAP:4,4’−ジヒドロキシ―3,3’―ジアミノフェニルプロパン
DABS:4,4’−ジヒドロキシ―3,3’―ジアミノフェニルスルホン
AHPB:1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ベンゼン
BAHF:4,4’−ジヒドロキシ―3,3’―ジアミノフェニルヘキサフルオロプロパン
BAHPS:ビス(4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン)スルホン
100LM:ニカラック(登録商標)MW−100LM(三和ケミカル(株)製)
MX270:ニカラック(登録商標)MX−270(三和ケミカル(株)製)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
製造例1(ポリアミド酸溶液の重合)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および、攪拌装置を付した反応釜に、APPS1 320g(0.8mol)、44DAE 20g(0.1mol)、BAP 25.8g(0.1mol)をNMP 1577gと共に仕込み、溶解させた後、ODPA 310.2g(1mol)を添加し、室温で1時間、続いて60℃で5時間反応させて、30重量%のポリアミド酸樹脂溶液(PA1)を得た。
【0080】
製造例2〜21(ポリアミド酸溶液の重合)
酸二無水物、ジアミンの種類と仕込量を表1、表2のように変えた以外は製造例1と同様の操作を行い、30重量%のポリアミド酸樹脂溶液(PA2〜PA21)を得た。
【0081】
製造例4ではポリアミド酸重合時に重合溶液がゲル化した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
製造例22(粘着剤樹脂溶液の調整)
攪拌装置を付した反応釜に、製造例1で得たポリアミド酸溶液(PA1) 100g、メチロール系化合物である100LM 5gをNMP 11.7gと共に仕込み、室温で2時間撹拌して、30重量%の粘着剤樹脂溶液(AH1)を得た。
【0085】
製造例23〜47(粘着剤樹脂溶液の調整)
ポリアミド酸溶液の種類と仕込量、メチロール系化合物の種類と仕込量を表3のように変えた以外は製造例22と同様の操作を行い、30重量%の粘着剤樹脂溶液(AH2〜26)を得た。
【0086】
製造例25において、ポリアミド酸溶液(PA4)がゲル化していたため、粘着剤樹脂溶液もゲル化したままであった。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例1
厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(コーニング社製)上に、製造例23で得られた粘着剤樹脂溶液(AH2)を、乾燥、イミド化後の厚みが10μmになるようにスピンコーターで回転数を調整して塗布し、120℃で10分熱処理して乾燥した後、250℃で10分熱処理して完全にイミド化を行い、粘着剤樹脂積層ガラス基板を得た。
【0089】
上記方法で作成した粘着剤樹脂積層ガラス基板に、ポリイミドフィルム(“カプトン”150EN 東レ・デュポン(株)製)を重ね合わせ、160℃ホットプレート上でハンドロールを用いてポリイミドフィルムを圧着し、ポリイミドフィルム積層ガラス基板を得た。得られたポリイミドフィルム積層ガラス基板を、300℃に設定した熱風オーブンで15分間熱処理した。
【0090】
得られたポリイミドフィルム積層ガラス基板の圧着後熱処理前の粘着力、熱処理後の粘着力、粘着剤樹脂のガラス転移温度、熱分解開始温度を表4にまとめた。
【0091】
実施例2
粘着剤樹脂溶液を表4のごとく変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリイミドフィルム積層ガラス基板を得た。
【0092】
得られたポリイミドフィルム積層ガラス基板の圧着後熱処理前の粘着力、熱処理後の粘着力、粘着剤樹脂のガラス転移温度、熱分解開始温度を表4にまとめた。
【0093】
比較例1〜4
粘着剤樹脂溶液を表4のごとく変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリイミドフィルム積層ガラス基板を得た。
【0094】
得られたポリイミドフィルム積層ガラス基板の圧着後熱処理前の粘着力、熱処理後の粘着力、粘着剤樹脂のガラス転移温度、熱分解開始温度を表4にまとめた。
【0095】
比較例2は、粘着剤樹脂溶液(AH4)がゲル化しているため、均一な硬化膜を得ることができなかった。
【0096】
【表4】
【0097】
実施例の通り、樹脂組成物がポリイミド系樹脂とメチロール系化合物を含有し、該ポリイミド系樹脂が、一般式(1)においてnが5〜30の範囲を示すポリシロキサン系ジアミンの残基と水酸基を有する芳香族ジアミンの残基を有するため、圧着後に良好な粘着力を有し、300℃処理後でも粘着力の上昇が少なく、室温で容易に基材であるポリイミドフィルムを剥離することができた。
【0098】
比較例では、ポリイミド系樹脂中の水酸基を有する芳香族ジアミンの残基、または樹脂組成物中のメチロール系化合物のどちらかが存在しないと、300℃処理後に基材であるポリイミドフィルムとの接着力が大きく上昇し、室温で剥離することができなかった。また、一般式(1)で表されるポリシロキサン系ジアミンのnが5以下であると、基材であるポリイミドフィルムとの粘着力がほとんど無く、nが30以上であると、ポリアミド酸重合時にゲル化がおこり、均一な硬化膜を得ることができなかった。
【0099】
実施例3〜8
粘着剤樹脂溶液を表5のごとく変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリイミドフィルム積層ガラス基板を得た。
【0100】
得られたポリイミドフィルム積層ガラス基板の圧着後熱処理前の粘着力、熱処理後の粘着力、粘着剤樹脂のガラス転移温度、熱分解開始温度を表5にまとめた。
【0101】
【表5】
【0102】
樹脂組成物中に含まれるポリイミド系樹脂において、該ポリイミド系樹脂中のポリシロキサン系ジアミンの残基の含有率が40モル%以上であると良好な粘着性を示した。また、ポリシロキサン系ジアミンの残基の含有率が60〜90モル%で良好な粘着性を示すとともに、熱処理後の粘着力の上昇が少なく、良好な剥離性も示した。
【0103】
実施例9〜13
粘着剤樹脂溶液を表6のごとく変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリイミドフィルム積層ガラス基板を得た。
【0104】
得られたポリイミドフィルム積層ガラス基板の圧着後熱処理前の粘着力、熱処理後の粘着力、粘着剤樹脂のガラス転移温度、熱分解開始温度を表6にまとめた。
【0105】
【表6】
【0106】
樹脂組成物中に含まれるポリイミド系樹脂において、該ポリイミド系樹脂中の水酸基を有する芳香族ジアミンの残基の含有率が1〜40モル%であると、良好な粘着性を示し、熱処理後の粘着力の上昇が少なく、良好な剥離性も示した。
【0107】
実施例14〜18
粘着剤樹脂溶液を表7のごとく変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリイミドフィルム積層ガラス基板を得た。
【0108】
得られたポリイミドフィルム積層ガラス基板の圧着後熱処理前の粘着力、熱処理後の粘着力、粘着剤樹脂のガラス転移温度、熱分解開始温度を表7にまとめた。
【0109】
【表7】
【0110】
樹脂組成物中に含まれるメチロール系化合物の含有量がポリイミド系樹脂100重量部に対して1〜20重量部であると、良好な粘着性を示し、熱処理後の粘着力の上昇が少なく、良好な剥離性も示した。
【0111】
実施例19〜23
粘着剤樹脂溶液を表8のごとく変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリイミドフィルム積層ガラス基板を得た。
【0112】
得られたポリイミドフィルム積層ガラス基板の圧着後熱処理前の粘着力、熱処理後の粘着力、粘着剤樹脂のガラス転移温度、熱分解開始温度を表8にまとめた。
【0113】
【表8】
【0114】
実施例24
シリコーン樹脂で離型処理した厚み100μm、幅250mmのポリイミドフィルム(“カプトン”300H 東レ・デュポン(株)製)に、製造例40で得られた粘着剤樹脂溶液(AH19)を、乾燥、イミド化後の膜厚が15μmになるようにコンマコーターで塗工後、120℃で1分、続いて250℃で1分熱処理し、片面に粘着剤樹脂層を有する粘着剤樹脂積層フィルムを得た。次に、粘着剤樹脂層上にシリコーン樹脂で離型処理した厚み38μm、幅250mmのPETフィルムを25℃でラミネートし、保護フィルム付き粘着剤樹脂積層フィルムを得た。
【0115】
上記で得られた保護フィルム付き粘着剤樹脂積層フィルムを所定の大きさに切りだした後、保護フィルムであるPETフィルムを剥がし、ホットプレート表面温度を120℃に設定したホットプレート上に厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(コーニング社製)を置き、ハンドロールで粘着剤樹脂積層フィルムを圧着した。次に、ポリイミドフィルムを剥がし、粘着剤樹脂積層ガラス基板を得た。剥がしたポリイミドフィルムの剥離面を観察したところ、表面に粘着剤樹脂の残渣は無かった。
【0116】
上記方法で作成した粘着剤樹脂積層ガラス基板に、ポリイミドフィルム(“カプトン”150EN 東レ・デュポン(株)製)を重ね合わせ、160℃でハンドロールを用いてポリイミドフィルムを圧着し、ポリイミドフィルム積層ガラス基板を得た。得られたポリイミドフィルム積層ガラス基板の粘着力は32g/cmであった。次に、ポリイミドフィルム積層ガラス基板を熱風オーブンを用いて300℃で15分熱処理した。熱処理後の粘着力は30g/cmで、室温で容易にポリイミドフィルムを剥離することができた。
【0117】
実施例25
厚さ750μmの6インチシリコンウエハに、製造例40で得られた粘着剤樹脂溶液(AH19)を、乾燥、イミド化後の膜厚が15μmになるようにスピンコーターで塗布後、140℃で10分、続いて250℃で30分熱処理し、粘着剤樹脂積層支持基板を得た。
【0118】
上記の粘着剤樹脂積層支持基板に厚さ750μmの6インチシリコンウエハを粘着剤樹脂積層上に張り合わせ、200℃、0.5MPaの条件で120秒圧着し、半導体回路形成用基板/粘着剤樹脂層/支持基板の積層体を得た。
【0119】
積層体の半導体回路形成用基板をグラインダーDAG810(DISCO製)にセットし、半導体回路形成用基板を厚み100μmまで研磨した。半導体回路形成用基板を研磨した後の積層体を300℃で1時間熱処理した。積層体の半導体回路形成用基板を肉眼で観察したとこと、膨れ、割れ、クラックなどは無かった。
【0120】
次に、半導体回路形成用基板にダイシングフレームを用いてダイシングテープを貼り、このダイシングテープ面を真空吸着によって吸着盤にセットした後、室温で支持基板の一点をピンセットで持ち上げて支持基板を剥離した。半導体回路形成用基板に割れ、クラックなどは無かった。
【0121】
実施例26
厚み750μmの6インチシリコンウエハに、実施例24で作製した保護フィルム付き粘着剤樹脂積層フィルムの保護フィルムであるPETフィルムを剥がした後、ホットプレート表面温度を120℃に設定したホットプレート上に厚さ750μmの6インチシリコンウエハを置き、ハンドロールで粘着剤樹脂積層フィルムを圧着した。次に、ポリイミドフィルムを剥がし、250℃で30分熱処理し、粘着剤樹脂積層支持基板を得た。
【0122】
後は実施例25と同様の操作を行った。支持基板を剥離した後、半導体回路形成用基板に割れ、クラックなどは無かった。