(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
本願発明の実施形態に係るガラス材の製造方法は、
(1) 外径が20mm以上のガラス材の端部をチャック機構で把持し、バーナで加熱するガラス旋盤装置を用いてガラス材を加熱溶断するガラス材の製造方法であって、
前記ガラス材の溶断予定部を前記バーナの火炎により加熱溶融する工程と、
前記チャック機構を移動させて前記溶断予定部をガラス材の軸方向に引き伸ばしながら、前記溶断予定部の最小外径を2mm以上5mm以下、かつ長さを100mm以上150mm以下となるように調整した後、前記チャック機構の位置を固定する工程と、
前記チャック機構の位置を固定した状態で前記溶断予定部を加熱して溶融させることで前記ガラス材を溶断する工程と、
前記溶断予定部を溶断した後、溶断した部分が互いに離れる方向に前記チャック機構の位置を移動させる工程と、
を有する。
溶断予定部の最小外径を2mm以上5mm以下、かつ長さを100mm以上150mm以下とした後、チャック機構の位置を固定して溶断予定部を加熱して溶融させることで溶断するので、溶断後の端部は糸状にならず、製品(溶断後のガラス材)に糸状のガラスが付着することもない。
【0010】
(2) 前記溶断予定部を溶断した後、前記ガラス材の溶断端部を前記バーナで加熱しつづけて、前記溶断端部を丸める。
溶断端部をバーナの火炎によりさらに丸めるので、溶断端部の角部が除去された丸い形状に加工することができる。
【0011】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るガラス材の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
ガラス材の製造方法において、ガラス材の端部をチャックで把持し、バーナで加熱するガラス旋盤装置を用いて、ガラス材を溶断する方法が知られている。
なお、上記溶断するガラス材は、例えば光ファイバ母材となる石英ガラス母材などである。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るガラス材の製造方法で使用するガラス旋盤装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示すガラス旋盤装置1は、ベース2、チャック機構3,4、支持部3a,4a、バーナ5を備えている。
【0014】
ガラス旋盤装置1は、ベース2の両端部にガラス材6を把持するためのチャック機構3,4を備えている。
チャック機構3,4は、支持部3a,4aによりベース2上に設けられ、支持部3a,4aの少なくとも一方は移動可能に設けられている。例えば
図1では、支持部4aは移動可能に設けられ、支持部3aは固定されている。
また、バーナ5は、ベース2上を移動可能に設けられており、加熱位置を変えることができる。
【0015】
次に、
図1のガラス旋盤装置1を用いてガラス材を溶断する方法について、
図1および
図2を参照して工程順に説明する。なお、ガラス材は、外径が20mm以上のガラス材である。
図1に示すガラス旋盤装置1のチャック機構3,4に、ガラス材6の両端部6a,6bを把持する。そして、以下のように、
図2に示す工程1〜5の順でガラス材の製造を行う。
図2においては、ガラス材6の溶断予定部6cとその近傍のみを図示する。
【0016】
[工程1]
バーナ5をガラス材6の溶断予定部6cの直下の位置に移動させる。そして、ガラス材6の溶断予定部6cをバーナ5の火炎により加熱溶融する。
【0017】
[工程2]
次に、支持部4aをA方向に移動させる。この際、両端部6a,6bをチャック機構3,4に把持されたガラス材6には、その軸方向にテンションがかかる。よって、溶断予定部6cが溶融されて柔らかくなった状態で、支持部4aをA方向に移動させることにより、ガラス材6を引き伸ばすことができる。このようにして、溶断予定部6cをガラス材6の軸方向に引き伸ばす。そして、溶断予定部6cの最小外径Mが2mm以上5mm以下、かつ溶断予定部6cの長さLが100mm以上150mm以下となるように調整した後、チャック機構4の位置を固定する。なお、溶断予定部6cの長さLは、元のガラス材料の径の90%以下となる箇所の長さである。
【0018】
[工程3]
上記工程2の後、チャック機構4の位置を固定する。なお製品(製品となるガラス材)と非製品(製品とならないガラス材)とに溶断する場合は、非製品側にバーナ5を僅かに少しずらしておくと良い(
図2は図に向かって左側が非製品、右側が製品となるケース)。
【0019】
[工程4]
そして、チャック機構4の位置を固定した状態で、ガラス材6が溶断されるまで、バーナ5で溶断予定部6cを加熱し続ける。ガラス材6が溶断されると、ガラス材6は第1のガラス材16(非製品)と第2のガラス材26(製品)とに分離される。
【0020】
[工程5]
次に、第1のガラス材16と第2のガラス材26とが離れる方向Cに向かって、チャック機構4を移動させる。また、バーナ5を方向Dに向かって移動させ、第2のガラス材26(製品)の溶断端部26aの直下の位置に固定する。そして、バーナ5の火炎により溶断端部26aを丸めるように加熱する。
【0021】
従来のガラス材の製造方法では、チャックを移動させることでガラス材を引きちぎるように溶断するため、ガラス材の溶断端部で糸状のガラスが発生する場合があるが、上記実施形態では発生しない。
すなわち、上記実施形態によれば、溶断予定部6cの最小外径Mを2mm以上5mm以下、かつ溶断予定部6cの長さLを100mm以上150mm以下とした後、チャック機構4の位置を固定して、溶断予定部6cを加熱して溶融させることで溶断する。これにより、ガラス材6はガラス製品として第1のガラス材16と第2のガラス材26とに分離されるが、これらの端部は糸状にならず、第1のガラス材16および第2のガラス材26に糸状のガラスが付着することもない。
【0022】
また、上記実施形態の工程5では、第2のガラス材26の溶断端部26aをバーナ5の火炎によりさらに丸めるので、溶断端部26aの角部が除去された丸い形状に加工することができる。
端部を丸い形状にすることにより、端部同士を再度溶着する際などに気泡が発生しないようにすることができる。このため、例えば第2のガラス材26を光ファイバ母材と溶着する場合などに、良好な光ファイバ母材とすることができる。
【0023】
なお、上記実施形態の工程5では、第2のガラス材26の溶断端部26aをバーナ5の火炎で丸めているが、例えば、棒状の治具等を使用して溶断端部26aを丸めてもよい。
【0024】
なお、上記工程2において、溶断予定部6cの最小外径Mは、ガラス材の粘度が高い場合は比較的に大きくし、ガラス材の粘度が低い場合は比較的に小さくするとよい。例えば、粘度が高いガラスの場合は最小外径Mを5mm程度とし、粘度が低いガラスの場合は最小外径Mを2mm程度とするのが好ましい。
【0025】
[実施例]
次に、本発明に係る実施例および比較例について説明する。
本実施例および比較例では、ガラス材として外径が30mmの光ファイバ用石英ガラス母材を用いた。
図1に示したガラス旋盤装置1を使用して、
図2に示した実施形態の工程1を実行し、次に、バーナ5の火炎として1600℃±100℃の酸水素火炎を使用して工程2を実行した。実施例と比較例1、2とでは、工程2において溶断予定部6cの最小外径Mおよび長さLを変えて実行した。
次に、工程3、4を実行してガラス材6を溶断した。なお、工程4では、1〜2分の間、上記バーナ5の火炎で加熱することにより溶断した。
そして、実施例および比較例1、2におけるガラス材6の溶断結果は以下のようになった。
【0026】
(溶断予定部6cの最小外径Mを変化させた場合の結果)
比較例1:最小外径Mを2mm未満とした場合。
(結果)溶断端部26aが糸状となって、第2のガラス材26に付着した。
実施例:最小外径Mが2mm以上5mm以下とした場合。
(結果)溶断端部26aが糸状にならずに溶断することができた。
比較例2:最小外径Mが5mmより大きい場合。
(結果)ガラス材6の溶断に時間が掛かり、また溶断できずに溶融したガラスが垂れて糸状になる場合もあった。
【0027】
(溶断予定部6cの長さLについての考察)
バーナ5の火炎により形成される加熱範囲で溶断結果が良好となる溶断予定部6cの長さLは異なり、上記加熱範囲が広いと溶断予定部6cの長さLを長く取る必要があり、逆に上記加熱範囲が狭いと溶断結果が良好となる溶断予定部6cの長さLは短くなる。本願発明者は、溶断結果が良好となる溶断予定部6cの長さLの範囲は100mm以上150mm以下であることを見出した。
【0028】
以上の結果から、溶断予定部6cの最小外径Mを2mm以上5mm以下、かつ長さLを100mm以上150mm以下とした場合は、溶断端部が糸状にならず丸みをおびた形状とすることができ、第1のガラス材16および第2のガラス材26に糸状のガラスが付着しないという良好な結果が得られた。