(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
円すいころ軸受では、円すいころの大端面が内輪の軸方向端部に設けられている鍔部に摺接することから、円すいころの大端面には、摩擦抵抗を低減するために研磨による仕上げ加工が施されている。このように大端面を研磨するための装置として、例えば、特許文献1に開示されている研磨装置がある。
【0003】
従来の研磨装置として、
図7に示す装置がある。この研磨装置101は、軸線102aを上下方向とする支軸102を中心として回転自在に設けられた円盤状のキャリア103と、キャリア103の上下に配置された円盤状の上盤104及び下盤105と、上盤104用の回転駆動装置106及び下盤105用の回転駆動装置107と、キャリア103の径方向外側に設けられた砥石108とを有している。上盤104、下盤105及び砥石108は、キャリア103と同心状に配置されている。
【0004】
砥石108は、平面視において円の一部が取り除かれた形状(C形状)であり、この取り除かれている間欠領域において、研磨対象となる円すいころ110が上盤104と下盤105との間に投入され、また、研磨を終えた円すいころ110が上盤104と下盤105との間から取り出される。
キャリア103の外周縁部には、上下及び径方向外側に開口するポケット103aが周方向に複数形成されている。このポケット103aには、投入された円すいころ110が大端面110aを径方向外側として収容され、また、大端面110a側がポケット103aから径方向外側に突出した状態となる。
ポケット103aに収容された円すいころ110は、上盤104と下盤105との間に上下挟まれた状態にあり、回転駆動装置106、107により上盤104と下盤105とが周方向に関して相互に反対方向に回転する。これにより、円すいころ110には径方向外側へ向かう推力が生じて大端面110aが砥石108の内周面108aに押し付けられた状態となり、そして、この円すいころ110を自転させながら軸線102aを中心としてキャリア103と共に公転させることができる。
以上より、円すいころ110は前記間欠領域から研磨装置101に投入されると、支軸102を中心としてほぼ1周公転する間に大端面110aが砥石108に摺接して研磨され、そして、前記間欠領域において、大端面110aが研磨された円すいころ110が取り出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、円すいころの形状に関して説明する。
図8(a)は、テーパー角(率)T3が大きな円すいころ115(以下、大円すいころという)の説明図である。
図8(b)は、テーパー角T4(T4<T3)が小さな円すいころ116(以下、小円すいころという)の説明図である。大(小)円すいころ115(116)の外周面115b(116b)を、小端面115c(116c)から延長すると、1点P2(P3)で収束する。以下、この収束する点をコーンセンタという。大小円すいころ115,116の大端面115a,116aは凸曲面であり、これら大端面115a,116aにおける、コーンセンタP2,P3を中心とする半径(以下、曲率半径という)をR2,R3とすると、R2<R3となる。つまり、円すいころ115,116では、テーパー角が大きくなるほど、曲率半径が小さくなる。
【0007】
そして、
図7に示す研磨装置101において、砥石108の内周面108aは、支軸102の軸線102aを中心とする環状面であり、この内周面108aの内径をR4とすると、内径R4は、研磨対象となる円すいころ110の大端面110aにおけるコーンセンタP4を中心とする曲率半径R5と(ほぼ)同一となるように設定されている。
【0008】
そこで、前記のとおり(
図8(a)(b)参照)、円すいころ110のテーパー角が大きくなるほどその曲率半径が小さくなることから、
図7に示すように、研磨対象となる円すいころ110のテーパー角が大きくて曲率半径R5が小さくなると、砥石108の前記内径R4も小さくなり、これにより、砥石108の内周面108aの周方向長さが短くなる。
すなわち、これは、研磨装置101による研磨作業において、円すいころ110が投入されてから砥石108により研磨され、取り出されるまでの公転移動距離が短くなることを意味しており、また、円すいころ110の自転回数も少なくなる。このため、円すいころ110の曲率半径R5が小さい場合には、砥石108に対する円すいころ110の大端面110aの摺接(研磨)距離が短くなり、この結果、大端面110aを十分に研磨できず、大端面110aの取代不足が発生するおそれがある。
【0009】
また、
図7に示す研磨装置101の場合、円すいころ110の大端面110aに砥石108を単に押し付けて研削しているのみであるため、大端面110aの研削中に、大端面110aに対する砥石108の切り込み量(深さ)を調整できない。このため、大端面110aに対して仕上げ加工を再度行なう必要がある場合もあり、研削能率が悪い。
【0010】
そこで、本発明は、円すいころの研削能率を向上させることが可能となる円すいころの研削装置及び円すいころの研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明の円すいころの研削装置は、円すいころを保持すると共に当該円すいころのころ軸線回りに回転させる回転保持装置と、前記円すいころの大端面を研削するための砥石と、回転する前記円すいころの前記大端面に対して回転速度差が生じるようにして前記砥石を回転駆動する砥石用駆動装置と、研削している前記円すいころの外径を測定するゲージと、測定された前記外径に応じて前記大端面に対する前記砥石の切り込み量を調整する調整手段とを備え、
前記大端面の一部が軸方向から当接可能である基準体を、更に備え、前記ゲージは、前記基準体を基準とした軸方向所定位置における前記円すいころの外径を測定し、前記調整手段は、前記ゲージが測定した前記軸方向所定位置における前記円すいころの外径に応じて前記切り込み量を調整することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、測定された円すいころの外径に応じて大端面に対する砥石の切り込み量が調整(変更)されるので、測定された外径が所定値になった際に切り込み量を変化させることができ、これにより、大端面の荒研削だけではなく、その大端面の仕上げ研削まで行なうことが可能となる。したがって、従来のように、研削終了後に、仕上げ加工を再び行う必要がなくなり、研削能率を向上させることが可能となる。
【0013】
(2)また、研削装置は、前記大端面の一部が軸方向から当接可能である基準体を、更に備え、前記ゲージは、前記基準体を基準とした軸方向所定位置における前記円すいころの外径を測定し、前記調整手段は、前記ゲージが測定した前記軸方向所定位置における前記円すいころの外径に応じて前記切り込み量を調整するのが好ましい。この構成によれば、円すいころの大端面の研削作業時に、この大端面を基準として円すいころの外径寸法の制御が可能となる。
【0014】
(3)また、前記回転保持装置は、前記円すいころのころ軸線と平行なロール軸線を有し当該円すいころの外周面に当接して当該円すいころを挟む一対のロールと、前記一対のロールを前記ロール軸線回りに回転駆動して前記円すいころを前記ころ軸線回りに回転させる駆動装置と、前記一対のロール間から前記円すいころが当該ロールの接線方向へ脱落するのを防ぐシューとを備えることもある。
この構成によれば、両ロールの間隔を変更することにより、各種サイズの円すいころに対応して研削作業を行うことができる。
【0015】
(4)本発明の円すいころの研削方法は、円すいころの大端面を砥石により研削する円すいころの研削方法であって、前記円すいころを保持しながら当該円すいころのころ軸線回りに回転させ、回転する前記円すいころの前記大端面に対して回転速度差が生じるようにして前記砥石を回転駆動
する手段と、研削している前記円すいころの外径を測定するゲージと、前記大端面の一部が軸方向から当接可能である基準体を備え、前記ゲージは、前記基準体を基準とした軸方向所定位置における前記円すいころの外径を測定し、測定された前記外径に応じて前記大端面に対する前記砥石の切り込み量を調整することを特徴とする。
この構成によれば、上記(1)の場合と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、円すいころの外径が所定値になった際に切り込み量を変化させることができ、これにより、大端面の荒研削だけではなく、その大端面の仕上げ研削まで行なうことが可能となる。したがって、従来のように、研削終了後に、仕上げ加工を再び行う必要がなくなり、研削能率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る円すいころの研削装置の概略構成を示す正面図である。
図2は、
図1のA−A線矢視図である。
図1及び
図2に示すように、研削装置1は、回転保持装置3と、基準体(フロントプレート)4と、インプロセスゲージ5と、砥石6と、砥石用駆動装置7と、砥石用進退装置8と、バックアップシリンダ9と、変位センサー10と、制御装置11とを有する。
研削対象となる円すいころ2は(
図2参照)、その軸方向一端に位置する小端面2aと、軸方向他端に位置する大端面2bと、テーパー状の外周面2cとを有する。そして、この円すいころ2は、その軸線(ころ軸線)2dを水平として研削装置1に設置され、砥石6により大端面2bの研削が行われる。
【0019】
回転保持装置3は(
図1参照)、円すいころ2を保持しながら軸線2d回りに回転させる機能を有する。本実施形態の回転保持装置3は、2ロール・1シュータイプであり、上・下ロール19,20と、各ロール19,20をそれぞれの軸線(ロール軸線)19a,20a回りに回転可能に支持するための軸受装置21,22と、上・下ロール用駆動装置23,24と、両ロール用進退装置25と、シュー26とを有する。
両ロール19,20は円すいころ2の上下に配置され、円すいころ2の軸線2dと平行な軸線19a,20aを有し、円すいころ2を挟持する。上ロール19の外周面19bは径方向外側に向かって湾曲凸状とされている。下ロール20の外周面20bは、軸方向一方(
図1では、右方向)に向かってテーパー状(縮径形状)とされている。
【0020】
図1では、円すいころ2が左側に向かってテーパー状(縮径形状)とされているのに対し、下ロール20は右側に向かってテーパー状(縮径形状)とされている。そして、円すいころ2のテーパー角と下ロール20のテーパー角とは同一とされており、下ロール20は円すいころ2の外周面と線接触することができる。
各ロール19,20の中心部には支軸27,28が設けられ、支軸27,28が軸受装置21,22により回転自在に支持されている。そして、各ロール19,20はモータ等を含む各駆動装置23,24により周方向に関して同一方向に回転駆動される。
両ロール19,20の内、一方、例えば、上ロール19は、進退装置25により、下ロール20に対して進退自在とされ、これにより、両ロール19,20の間隔が調整される。この進退装置25により、ロール19,20の間隔が調整され、これらロール19,20に挟まれる円すいころ2には、基準体4側へ向かう推力(推進力)が発生する。なお、各ロール19,20にそれぞれ進退装置を備えることもある。
【0021】
図2において、シュー26は円すいころ2の外周面2cの側方に設けられている。シュー26の側面26aは、円すいころ2のテーパー状外周面2cと対応するように、円すいころ2の大端面2b側に向かうにしたがって円すいころ2の軸線2dから離間する傾斜面とされている。この側面26aは、円すいころ2の外周面2cと摺接することで円すいころ2をガイドすることができ、回転する円すいころ2がロール19,20間からこれらロール19,20の接線方向(
図2は、上方向)へ脱落する(飛び出す)のを防いでいる。
基準体4は、軸線方向の前記推力が作用する円すいころ2の大端面2bの一部と軸方向から当接可能な部材である。基準体4は移動不能とされており(固定されており)、前記推力が作用する円すいころ2を軸方向に関して位置決めすることができる。基準体4は、大端面2bと当接可能となる面を基準面4aとして有している。
前記推力、つまり、円すいころ2の大端面2bを基準体4方向に押圧する押圧力が不足する場合に、バックアップシリンダ9は円すいころ2を軸方向に押圧する。これにより、砥石6に対して大端面2bを一定の圧力で押し付ける定圧加工が可能となる。バックアップシリンダ9としては油圧シリンダや空気圧シリンダ等が使用される。
変位センサー10は、前記押圧する力(押圧力)を調整するために、バックアップシリンダ9による円すいころ2の押出量を監視する。
【0022】
砥石6は垂直な円盤状とされ、その軸線及び当該軸線に直交する方向(径方向6a)が水平方向となるようにして設けられている。砥石6の外周面6cが、円すいころ2の大端面2bの一部に摺接して、その摺接部分が研削される。
図2に示すように、大端面2bの半分の領域において基準体4が当接可能であり、残りの領域において砥石6が接触する。
そして、砥石6はモータ等を含む砥石用駆動装置7により回転駆動される。砥石6と円すいころ2の大端面2bとの摺接部分では、砥石6と大端面2bとの回転方向が相互に反対方向となるように設定されている。つまり、回転する円すいころ2の大端面2bに対して回転速度差が生じるようにして砥石6は回転する。
図3は、砥石6の外周面6cの成形方法を示す説明図である。
図3に示すように、砥石6の外周面6cは、ドレッサまたはロータリドレッサ29により、湾曲凹形状に加工されている。円すいころ2(
図2参照)の大端面2bは、砥石6の外周面6cの湾曲凹形状に沿う湾曲凸状に研削される(転写される)。ドレッサ29は2軸数値制御(NC)され、外周面6cに対して進退可能とされると共に、上下方向に移動可能とされている。
なお、砥石6は他の形態のものであってもよい。
図4は、
図3の砥石6と異なる形状の砥石6を示す断面図である。砥石6を円盤状とせず、
図4に示すように、有底円筒状のカップ型とすることもある。この場合には、砥石6を、有底円筒状の装着体30と、装着体30の開口縁部に固設した環状の砥石本体31とから構成する。そして、装着体30をクイル(主軸)32に装着し、この砥石6を回転させ、砥石本体31により円すいころ2の大端面2bを研削してもよい。
【0023】
また、砥石6は伸縮アクチュエータ等からなる砥石用進退装置8により大端面2bに対して進退可能とされている。本実施形態では、円すいころ2の大端面2bが当接可能である基準体4の基準面4aを軸方向に関する基準位置とすることから、この基準面4aからの砥石6の外周面6cの軸方向突出量(突出寸法)が砥石6の大端面2bに対する切り込み量として設定される。このように、大端面2bと当接可能である基準面4aからの砥石6の突出量を砥石6の切り込み量として設定しているので、円すいころ4に対する切り込み量を正確に制御することができる。以上より、砥石用進退装置8が、砥石6の切り込み量を調整する調整手段として機能する。
【0024】
図2において、インプロセスゲージ5は、円すいころ2の研削作業中に円すいころ2の大端面2b側の所定位置における外径を測定する。特に、本実施形態では、インプロセスゲージ5は、基準体4の基準面4aを基準とした軸方向所定位置における円すいころ2の外径を測定する。つまり、基準面4aから軸方向所定位置における円すいころ2の外径が測定される。インプロセスゲージ5は、処理回路等を有するゲージ本体33と、ゲージ本体33を内有するケーシング34と、円すいころ2の外周面2cに一部が接触(点接触)するアーム35等を有する。なお、ゲージ5は他の形式のものであってもよく、非接触式の計測器であってもよい。
【0025】
制御装置11は、インプロセスゲージ5や変位センサー10からの信号(計測値についての信号)を受信すると共に、砥石用駆動装置7、砥石用進退装置8、バックアップシリンダ9、各ロール用駆動装置23,24、及びロール用進退装置25の動作を制御する。
特に、インプロセスゲージ5により測定された円すいころ2の所定位置における外径に応じて、制御装置11は、砥石用進退装置8(及びバックアップシリンダ9)を制御し、大端面2bに対する砥石6の切り込み量の制御を行う。つまり、制御装置11は、大端面2bの研削に関する全体的な制御を行う。これにより、大端面2bにおいて所望の取代(削り代)が得られる。
【0026】
上記構成を備えている研削装置1によれば、円すいころ2の大端面2bを以下のようにして研削することができる。
図1において、上・下ロール19,20により円すいころ2を挟持すると共に、上・下ロール19,20を上・下ロール用駆動装置23,24により回転駆動し、シュー26によりこの円すいころ2をガイドすることで、円すいころ2を保持しながら軸線2d回りに回転させることができる。上・下ロール19,20が円すいころ2のテーパー状の外周面2cに当接することにより、円すいころ2は基準体4側に押される。
【0027】
この状態で、砥石6を砥石用駆動装置7により回転駆動すると共に、砥石6を砥石用進退装置8により円すいころ2の大端面2bに向かって前進させ、
図2の仮想線で示すように、砥石6の外周面6cを大端面2bに摺接させ、砥石6により大端面2bを研削する。なお、
図2の仮想線では、砥石6は基準体4の基準面4aから大きく軸方向に突出しているが、これは分かり易いように誇張して描いたものである。砥石6の実際の突出量は僅かである。
【0028】
この際、回転する円すいころ2の大端面2bに対して砥石6は回転速度差を有して回転する。つまり、本実施形態では、上・下ロール19,20により円すいころ2が回転している状態で、砥石6も砥石用駆動装置7により回転駆動され、砥石6と円すいころ2の大端面2bとの摺接部分では、砥石6と大端面2bとの両者の回転方向が相互に反対方向となる。これにより、砥石6の大端面2bに対する砥石6の相対的な摺接(研削)速度を高くすることができ、大端面2bの研削能率を向上でき、円すいころ2の1個当たりの研削時間を短縮できる。
また、研削時には、研削負荷(抵抗)により、円すいころ2は砥石6からバックアップシリンダ9側に向かう軸方向の力(反力)を受ける。この力が大きく、大端面2bを基準体4側及び砥石6側に押す力が不足する場合、バックアップシリンダ9を機能させる。
【0029】
また、研削時には、基準体4の基準面4aよりも砥石6を大端面2b側に軸方向に突出させる。この突出量が、大端面2bに対する砥石6の切り込み量となる。そして、円すいころ2の大端面2bから軸方向に所定距離離間した位置の外径(以下、大端面2b側の外径という)をインプロセスゲージ5により測定しながら、切込み量を調整して研削を下記のように行なう。つまり、砥石6による大端面2bの研削中に円すいころ2の大端面2b側の外径をインプロセスゲージ5により測定し、測定した前記外径に応じて大端面2bに対する砥石6の切り込み量を、制御装置11及び砥石用進退装置8を機能させることにより、調整する。
【0030】
図5は、大端面2bに対する砥石6の切り込み量と時間経過の関係を示すグラフである。
図5の縦軸は、砥石6の切り込み量を示し、
図5の横軸は時間経過を示している。
研削作業開始前は、
図5の「点A」に示すように、砥石6(
図2参照)の外周面6cの円すいころ2側の端縁は、円すいころ2の大端面2b及びこの大端面2bが当接している基準体4の基準面4aから大きく後退した待機位置に位置している。
研削作業を開始するためには、先ず、
図5の「点A」から「点B」に示すように、砥石6を待機位置から比較的高速の第1前進速度で円すいころ2方向へ前進させ、基準面4aよりも待機位置側の準備位置まで移動させる。
次に、
図5の「点B」から「点C」に示すように、砥石6を準備位置から第1前進速度よりも遅い第2前進速度で前進させ、基準面4aと軸方向に関して同一位置である研削開始位置まで移動させる。
【0031】
その後、
図5の「点C」から「点D」に示すように、砥石6を研削開始位置から第2前進速度よりも遅い第3前進速度で前進させ、砥石6を、基準面4aから第1の所定寸法y
1について円すいころ2側(前方側)へ突出させた荒研削位置まで移動させる。この前進時に、砥石6は大端面2bに摺接して、大端面2bを研削する。
砥石6を荒研削位置まで移動させた後、
図5の「点D」から「点E」で示すように、砥石6を荒研削位置に保持し、砥石6により前記第1の所定寸法y
1の大きな切り込み量で大端面2bを荒研削する。なお、両ロール19,20が円すいころ2のテーパー状の外周面2cを挟持していることにより、円すいころ2は基準面4a側への押された状態にあるが、大端面2bと基準面4aとの間には隙間が生じる。大端面2bが研削されるにつれて、円すいころ2は基準面4a側へ僅かに移動する。したがって、インプロセスゲージ5による測定値は、極僅かに小さくなる。
【0032】
そして、インプロセスゲージ5による測定値が予め定められた第1設定値(荒研削終了値)となった際に、
図5の「点E」から「点F」に示すように、砥石6を荒研削位置から比較的高速の第1後退速度で後退させ(待機位置側へ移動させ)、砥石6を、基準面4aから第2の所定寸法y
2だけ円すいころ2側へ突出させた仕上げ研削位置まで移動させる。この後退時にも、砥石6は大端面2bに摺接して、大端面2bを研削する。なお、両ロール19,20が円すいころ2のテーパー状の外周面2cを挟持していることにより、円すいころ2は基準面4a側への押された状態にあり、大端面2bと基準面4aとの間には極小さな隙間が生じている。
砥石6を前記仕上げ研削位置まで移動させた後、
図5の「点F」から「点G」で示すように、砥石6を仕上げ研削位置に保持し、砥石6により第2の所定寸法y
2の小さな切り込み量で大端面2bを仕上げ研削する。この研削により、インプロセスゲージ5による測定値は、極僅かに小さくなる。
そして、測定値が予め定められた第2設定値(仕上げ研削終了値)となった際に、または所定時間が経過すると、
図5の「点G」から「点H」で示すように、砥石6を仕上げ研削位置から第1後退速度よりも高速の第2後退速度で後退させ、待機位置まで移動させる。
これにより、円すいころ2の大端面2bは荒研削を経て仕上げ研削され、研削作業が終了する。
前記第1の所定寸法y
1及び前記第2の所定寸法y
2は、可変であり、製品特性や要求精度等に合わせて適宜設定する。
【0033】
以上のように、本実施形態の研削装置2及びこの装置2による研削方法によれば、インプロセスゲージ5により測定された円すいころ2の外径に応じて、円すいころ2の大端面2bに対する砥石6の切り込み量が調整される(変更される)。このため、ゲージ5により測定された外径が所定値(前記第1設定値、前記第2設定値)になった際に、砥石6の切り込み量を変化させることができ、これにより、大端面2bの荒研削だけではなく、その大端面2の仕上げ研削まで行なうことが可能となる。したがって、従来のように、研削終了後に、仕上げ加工を再び行う必要がなくなり、研削能率を向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、インプロセスゲージ5は、基準面4aを基準とした軸方向所定位置における円すいころ2の外径を測定し、このゲージ5が測定した前記軸方向所定位置における円すいころ2の外径に応じて、切り込み量が調整される。このため、円すいころ2の大端面2bの研削作業時に、この大端面2bを基準として円すいころ2の外径寸法の制御が可能となる。つまり、外径寸法についての精度も確保することが可能となる。
また、円すいころ2を上・下ロール19,20により挟持して回転させる際に、円すいころ2の外周面2cにシュー26を当接させて、円すいころ2を位置決めすると共に、円すいころ2の軸方向の移動を基準体4により制限して、円すいころ2を軸方向に関して位置決めしている。これにより、研削作業時に、円すいころ2を正確に位置決めすることができ、円すいころ2の挙動を安定させて研削作業を行うことができ、精度の高い円すいころ2が得られる。
【0034】
なお、参考として、円すいころ2の外径の一般的な測定方法を
図6に示している。この
図6に示すように、円すいころ2のテーパー状の外周面2cを小端面2a側で延長すると、コーンセンタP1に収束する。コーンセンタP1を中心とする大端面2bの曲率半径はR1となる。
円すいころ2の軸方向所定位置(2c2,2c3)における外径を測定する場合には、上面が水平とされた測定台14にサインバー15を載置する。サインバー15の上面は傾斜状の載置面15aとなる。載置面15aの傾斜角θは、円すいころ2のテーパー角T1の2倍とされている。
これにより、載置面15aに載置された円すいころ2の外周面2cの上側輪郭線2c1が水平となるようにされている。なお、測定台14には、円すいころ2の大端面2bと当接するストッパ16が設けられ、円すいころ2がサインバー15から滑り落ちることを防いでいる。そして、円すいころ2の外径は、外周面2cにおける大端面2bを基準として軸方向の所定位置にある第1の測定箇所2c2や、第2の測定箇所2c3の測定が可能となる。
【0035】
なお、本発明の研削装置1は、上記の実施形態に限定されることなく適宜変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、円すいころ2を上・下ロール19,20により回転させたが、円すいころ2を旋盤のチャックにより保持して、回転させるようにしてもよい。