(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生理開始日から次の生理開始日間の基礎体温データにおいて、時系列的に隣り合う基礎体温データにおける先に測定された基礎体温に対する後に測定された基礎体温の温度上昇を検出する温度上昇検出部と、
検出された前記温度上昇が最大の日の前記先に測定された基礎体温の日を、排卵日として推定する推定部と、
を有する排卵日推定装置。
前記生理開始日と前記次の生理開始日を基準に予め設定された複数日内の基礎体温データにおいて、前記後に測定された基礎体温が前記先に測定された基礎体温から第3の値を超えて低下している日を、スキャン開始日として決定するスキャン開始日決定部を有し、
前記温度上昇検出部は、前記複数日内において前記スキャン開始日以降の前記基礎体温の前記温度上昇を検出する請求項1から3のいずれか1つに記載の排卵日推定装置。
前記スキャン開始日決定部は、前記スキャン開始日以降最も古い日から、前記後に測定された基礎体温が前記先に測定された基礎体温から前記第3の値を超えて低下した日の有無をチェックし、前記後に測定された基礎体温が前記先に測定された基礎体温から前記第3の値を超えて低下した日の中で最も新しい日を、前記スキャン開始日として決定する請求項4に記載の排卵日推定装置。
前記スキャン開始日決定部は、前記後に測定された基礎体温が前記先に測定された基礎体温から前記第3の値を超えて低下し、かつ第4の値よりも低い日を前記スキャン開始日として決定する請求項5に記載の排卵日推定装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
(構成)
図1は、本実施形態に係わる排卵日推定システムのブロック図である。
排卵日推定システム1は、スマートフォン2と、スマートフォン2とネットワーク3を介して接続されたサーバ4とを含む。スマートフォン2には、体温計5で測定された基礎体温データが入力される。
図1では、1つのスマートフォン2のみ示されているが、排卵日推定システム1は、複数のスマートフォン2がネットワーク3を介してサーバ4と通信可能に接続され、サーバ4は、スマートフォン2を有する多くのユーザの基礎体温データ等を、収集し、蓄積している。すなわち、サーバ4は、女性の生理周期及び基礎体温についてのデータを有し、後述するように、ユーザの排卵日の推定を行う排卵日推定装置である。
【0010】
携帯端末であるスマートフォン2は、制御部11と、メモリ12と、入力部13と、表示部14と、通信部15とを含む。制御部11は、中央処理装置(CPU)、ROM、RAM等を有し、ROM等に記憶されたプログラムあるいはネットワーク3を介してダウンロードされたプログラムを実行し、所定の機能を実行する処理部である。
【0011】
なお、ここでは、スマートフォン2がサーバ4との通信を行うが、スマートフォン2は、タブレット端末、パーソナルコンピュータや、専用端末であってもよい。
ネットワーク3は、LAN、インターネットである。
【0012】
メモリ12は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリである。メモリ12には、ユーザである女性の基礎体温データ等と、基礎体温データ等をサーバ4へ送信するためのアプリケーションプログラムとが記憶される。
【0013】
入力部13は、ユーザが基礎体温データ及び生理開始日を入力するためのタッチパネルであり、表示部14に取り付けられている。表示部14は、液晶表示器のような表示装置である。通信部15は、無線通信機能を有し、近傍の基地局等と通信して、ネットワーク3を介して通話及びデータ通信を行うための回路である。よって、通信部15は、制御部11の制御の下、サーバ4とのデータ通信を行う。
【0014】
なお、スマートフォン2に代えて、パーソナルコンピュータを、基礎体温データ等の送信端末とする場合は、通信部15は、有線通信機能を有するものでもよい。
【0015】
制御部11は、メモリ12に記憶されたアプリケーションプログラムを読み出して実行し、入力部13から入力された基礎体温データ等を、メモリ12に記憶し、通信部15からネットワーク3を介してサーバ4へ送信する処理、及びサーバ4からのデータを受信する処理を実行する。
【0016】
よって、アプリケーションプログラムを利用して、ユーザは、タッチパネルである入力部13により、体温計5により測定された基礎体温データ及び生理開始日を入力して、サーバ4へ送信することができる。
【0017】
なお、ここでは、ユーザがマニュアルで基礎体温データを入力しているが、体温計5がデータ送信機能を有する場合は、入力部13は、体温計5から送信される基礎体温データを受信する受信回路である。
【0018】
サーバ4は、制御部21と、記憶部22と、解析処理部23と、推定処理部24と、通信部25とを含む。
制御部21は、中央処理装置(CPU)、ROM、RAM等を有し、ROM等の記憶装置に記憶されたプログラムを実行し、所定の機能を実行する処理部である。
記憶部22は、ネットワーク3を介して受信したユーザからのデータ、及びそのデータを解析して得られた各種データにより構成されるデータベース(DB)22aを有している。
【0019】
解析処理部23は、制御部21の制御の下、スマートフォン2から送信されたユーザの基礎体温データ等を解析して、排卵日推定のための各種データを得る。推定処理部24は、制御部21の制御の下、ユーザの基礎体温データ及び解析処理部23により解析して得られた各種データに基づいて、排卵日の推定を行う。解析処理部23と推定処理部24は、ソフトウエアプログラムにより実現されているが、ハードウエア回路により実現してもよい。解析処理部23と推定処理部24のソフトウエアプログラムは、記憶部22に記憶されている。
【0020】
通信部25は、ネットワーク3を介してデータ通信を行う。通信部25は、制御部21の制御の下、各スマートフォン2との通信を行う。よって、通信部25は、ユーザからの複数日に亘る基礎体温データを収集する基礎体温情報収集部を構成する。
【0021】
ここで、基礎体温の変化について説明する。
図2は、生理開始日から次の生理開始日までの女性の基礎体温の変化を説明するための図である。
【0022】
図2では、生理開始日を0日とし、次の生理開始日を29日目として、生理開始日から次の生理開始日までの女性の基礎体温の変化の例を示している。基礎体温は、一般に、十分な睡眠をとった後の起床直後、寝たままの状態で口(舌下)において測定される。
【0023】
生理周期は、生理開始日直後の「高低温過渡期」、「低温期」、低温期と高温期の間の「低高温過渡期」、及び低高温過渡期後の「高温期」を有する。高温期は、さらに、前期、中期及び後期に分けられる。
【0024】
生理周期は、生理開始日から次の生理開始日の前日までの期間である。
上述したように、ユーザは、スマートフォン2のメモリ12に記憶されたアプリケーションプログラムを利用して、体温計5で測定した基礎体温と生理開始日を、スマートフォン2からサーバ4へ送信することができる。サーバ4は、ユーザからの基礎体温データと生理開始日のデータを受信し、データベース22aに登録する。ユーザから少なくとも2つの生理開始日がデータベース22aに登録されると、サーバ4は、
図3と
図4に示す処理を実行する。
【0025】
図3と
図4は、基礎体温データに対する解析処理の流れの例を示すフローチャートである。解析処理部23は、制御部21の制御の下、生理開始日が登録されているユーザの基礎体温データをデータベース22aから読み出し、
図3の処理を実行する。
【0026】
なお、以下の説明する解析処理及び推定処理が実行されることにより、生理周期内の全ての日について基礎体温データが揃っている場合だけでなく、生理周期内の全ての日について基礎体温データが揃っていない場合であっても、所定の条件の下で、排卵日の推定が可能となる。
【0027】
まず、解析処理部23は、一生理周期の日数が所定日数以上で、かつ基礎体温データが第1の所定数n1以上あるか否かを判定する(S1)。所定日数は、ここでは、例えば20日である。第1の所定数n1は、予め決められた数であり、ここでは例えば6個である。生理周期の日数が所定日数未満のユーザの場合は(S1:NO)、以下に説明する解析はできないので、処理は、終了する。
【0028】
さらに、基礎体温データの数が、予め決められた第1の所定数n1未満の場合も(S1:NO)、以下に説明する解析はできないので、処理は、終了する。
【0029】
一生理周期の日数が所定日数以上で、かつ基礎体温データが第1の所定数n1以上ある場合(S1:YES)、解析処理部23は、高温期の基礎体温データ数が第2の所定数n2以上あるか否かを判定する(S2)。第2の所定数n2は、予め決められた数であり、ここでは例えば8個である。高温期の基礎体温データ数が第2の所定数n2以上ない場合(S2:NO)、処理は、S4へ移行する。
具体的には、生理開始日よりも12日前(
図2における17日目)から生理開始日の前日(
図2における28日目)を仮の高温期とし、その仮の高温期中の基礎体温データの数が第2の所定数n2以上あるか否かが判定される。
【0030】
高温期の基礎体温データ数が第2の所定数n2以上ある場合(S2:YES)、解析処理部23は、高温期の基礎体温の平均である高温期平均基礎体温HTAVを求める(S3)。
高温期の基礎体温データ数が第2の所定数n2以上ない場合(S2:NO)、及び高温期の平均基礎体温HTAVを求めた後、解析処理部23は、低温期の基礎体温データ数が第3の所定数n3以上あるか否かを判定する(S4)。予め決められた第3の所定数n3は、ここでは例えば2個である。低温期の基礎体温データ数が第3の所定数n3以上ない場合(S4:NO)、処理は、S6へ移行する。
具体的には、生理開始日から3日目から13日目を仮の低温期とし、その仮の低温期中の基礎体温データの数が第3の所定数n3以上あるか否かが判定される。
【0031】
低温期の基礎体温データ数が第3の所定数n3以上ある場合(S4:YES)、解析処理部23は、低温期の基礎体温の平均である低温期平均基礎体温LTAVを求める(S3)。
低温期の基礎体温データ数が第3の所定数n3以上ない場合(S4:NO)、及び低温期平均基礎体温LTAVを求めた後、解析処理部23は、高温期平均基礎体温HTAVと低温期平均基礎体温LTAVの両方のデータがあるかを判定する(S6)。
高温期平均基礎体温HTAVと低温期平均基礎体温LTAVの両方のデータがある場合(S6:YES)、解析処理部23は、低温期平均基礎体温LTAVと高温期平均基礎体温HTAVの差(以下、低温期高温期平均差という)AVdを求める(S7)。低温期高温期平均差AVdは、高温期平均基礎体温HTAVから低温期平均基礎体温LTAVを引いた値である。高温期平均基礎体温HTAVと低温期平均基礎体温LTAVの両方のデータがない場合(S6:NO)、処理は、S13に移行する。
【0032】
低温期高温期平均差AVdを求めた後、解析処理部23は、オフセットデータDを求める(S8)。オフセットデータDは、低温期高温期平均差AVdに対して所定の係数を乗算して求められる。ここでは、低温期高温期平均差AVdに第1の係数α1を乗算した値(すなわちAVd*α1)と、例えば0.15のうち大きい方を、オフセットデータDとする。第1の係数α1は、例えば0.3である。
【0033】
オフセットデータDを求めた後、解析処理部23は、第1の閾値TH1を求める(S9)。第1の閾値TH1は、ここでは、高温期平均基礎体温HTAVからオフセットデータDを引いた値であり(すなわちTH1=HTAV−D)、高温期判定基準体温である。
【0034】
高温期判定基準体温である第1の閾値TH1を求めた後、解析処理部23は、第2の閾値TH2を求める(S10)。第2の閾値TH2は、ここでは、低温期高温期平均差AVdに第2の係数α2を乗算して求めた値を、低温期平均基礎体温LTAVに加算した値であり(すなわちTH2=LTAV+α2*AVd)、低温期判定基準体温である。第2の係数α2は、例えば0.4である。
【0035】
低温期判定基準体温である第2の閾値TH2を求めた後、解析処理部23は、低温期高温期平均差AVdが、第1の所定値d1を超えるかを判定する(S11)。第1の所定値d1は、例えば0.2℃である。
【0036】
S11でYESの場合、排卵日推定処理(S12)が実行される。S11でNOの場合、処理は、S13へ移行する。
図5は、排卵日推定処理(S12)の流れの例を示すフローチャートである。排卵日推定処理は、推定処理部24により実行される。
【0037】
まず、推定処理部24は、生理開始日の16日前から9日前までの範囲を、仮のスキャン範囲として設定する(S21)。
図2の場合、13日目が、生理開始日よりも16日前であり、仮のスキャン開始日として最初に設定される。仮のスキャン範囲は、生理開始日を基準として予め設定された複数日(ここでは生理開始日の16日前から9日前まで)であり、仮のスキャン範囲内の最も古い日(ここでは生理開始日の16日前)が、仮のスキャン開始日として最初に設定される。
【0038】
すなわち、
図2における13日目(生理開始日よりも16日前)から
図2における20日目(生理開始日よりも9日前)までが、仮のスキャン範囲と設定される。
図2における20日目が、生理開始日よりも9日前であり、スキャン終了日となる。
以上のようにして、仮のスキャン範囲が設定された後、スキャン開始日が決定される。
【0039】
そして、推定処理部24は、仮のスキャン範囲内の中、生理開始日よりも15日前(
図2における14日目)から12日前(
図2における17日目)までの範囲において、古い日から順番に基礎体温データを取得して、取得した基礎体温データが所定の条件を満たすかを判定する(S22)。すなわち、仮のスキャン範囲内の基礎体温データについてS22の処理を実行する。S22では、仮のスキャン範囲内の各基礎体温データについて、当該日の基礎体温(時系列的に隣り合う基礎体温データにおける後に測定された基礎体温)がその当該日の直前の基礎体温(時系列的に隣り合う基礎体温データにおける先に測定された基礎体温)から、第2の所定値d2を超えて低下しており、かつ低温期平均基礎体温LTAVに、第3の所定値d3を加算した値よりも低いかが判定される。
【0040】
具体的には、最初に、生理開始日よりも15日前(
図2における14日目)の基礎体温データについて、S22の判定が行われる。生理開始日よりも15日前の基礎体温が、直前(生理開始日よりも16日前)の基礎体温から、第2の所定値d2を超えて低下しており、かつ低温期平均基礎体温LTAVに、第3の所定値d3を加算した値よりも低いかが判定される(S22)。第2の所定値d2は、例えば0.1℃であり、第3の所定値d3は、例えば0.1℃である。
【0041】
S22の判定処理は、生理開始日の15日前から12日前までの各日の基礎体温データの全てについて古い日から順番に実行される。最後は、生理開始日よりも12日前(
図2における17日目)の基礎体温データについて、S22の判定が行われる。当該日の基礎体温データが所定の条件を満たすとき(S22:YES)、その日がスキャン開始日とされる(S23)。
【0042】
S22の処理は、生理開始日よりも15日前から12日前までの基礎体温データの全てについて実行される。基礎体温データが所定の条件(S22)を満たすとき、スキャン開始日は更新され(S23)、基礎体温データが所定の条件(S22)を満たさないとき、スキャン開始日は更新されない。スキャン開始日が生理開始日よりも16日前に当初設定され、その後は、所定の条件が満たされる基礎体温データがあると、スキャン開始日は更新される。よって、仮のスキャン範囲内の全ての日についてS22の判定処理の結果がNOの場合は、スキャン開始日は、生理開始日よりも16日前の日(
図2における13日目)となる。
以上のように、S21〜S23の処理が、生理開始日を基準にスキャン範囲として予め設定された連続する複数日内の基礎体温データにおいて、古い日から順に、所定の条件を満たしている基礎体温の日を、スキャン開始日として決定するスキャン開始日決定部を構成する。基礎体温データが所定の条件を満たすか否かの判定は、古い日から順に行われ、所定の条件を満たす基礎体温データが複数ある場合は、スキャン開始日は、更新されて、複数の日の中で最新の日となる。すなわち、スキャン開始日決定部であるS21〜S23の処理は、スキャン範囲において最も古い日から、直前の基礎体温が第2の所定値d2より低下した日の有無をチェックし、基礎体温が第2の所定値d2より低下しかつ低温期平均基礎体温LTAVに第3の所定値d3を加算した値(LTAV+d3)よりも低い日の中で、最も新しい日を、スキャン開始日として決定する。
【0043】
続いて、推定処理部24は、スキャン範囲(スキャン開始日から生理開始日の9日前までの範囲)内の基礎体温データ数が第4の所定数n4以上あるか否かを判定する(S24)。予め決められた第4の所定数n4は、ここでは5個である。スキャン範囲内の基礎体温データ数が第4の所定数n4以上ない場合(S24:NO)、推定処理部24は、排卵日の推定ができないとする(S25)。
【0044】
スキャン範囲内の基礎体温データ数が第4の所定数n4以上ある場合(S24:YES)、推定処理部24は、S24で決定されたスキャン開始日からスキャン終了日までのスキャン範囲内において、最大温度上昇のあった日を検出する(S26)。S24とS26の処理が、スキャン範囲内においてスキャン開始日以降の基礎体温の温度上昇、ここでは最大温度上昇、を検出する温度上昇検出部を構成する。すなわち、S24とS26の処理は、生理開始日から次の生理開始日間の基礎体温データにおいて、時系列的に隣り合う基礎体温データにおける先に測定された直前の基礎体温に対する後に測定された基礎体温の温度上昇を検出する温度上昇検出部を構成する。
【0045】
すなわち、スキャン範囲内において、直前の基礎体温からの温度上昇が最大の最大温度上昇が検出される。具体的には、最初に、スキャン開始日とその次の温度の差(すなわち次の基礎体温からスキャン開始日の基礎体温を引いた値)を求める。以下同様に、スキャン範囲内における隣り合う2つの基礎体温の上昇値、すなわち直前に対する当該日の上昇値、が求められる。その求めた複数の上昇値に基づいて、最大温度上昇が検出される。
【0046】
最大温度上昇が検出された後、推定処理部24は、最大温度上昇が、第4の所定値d4よりも大きいか否かを判定する(S27)。第4の所定値d4は、ここでは0.15℃である。最大温度上昇が第4の所定値d4よりも大きくない場合(S27:NO)、推定処理部24は、排卵日の推定を不可とする(S25)。すなわち、温度上昇が最大の日の温度上昇が直前の基礎体温に比べて第4の所定値d4以下のときは、排卵日の推定ができない推定不能とされる。
【0047】
最大温度上昇が第4の所定値d4よりも大きい場合(S27:YES)、推定処理部24は、最大温度上昇の開始日(すなわち、最大温度上昇のあった日の直前の基礎体温データの日)を、推定排卵日候補とする(S28)。最大温度上昇のあった日とは、時系列的に直前の基礎体温に比べて温度上昇が最大の日である。例えば、生理開始日の14日前(
図2における15日目)から13日前(
図2における16日目)の間に最大温度上昇があった場合、生理開始日の13日前(
図2における16日目)が、温度上昇が最大の日であり、生理開始日の14日前(
図2における15日目)が推定排卵日候補となる。
【0048】
さらに、生理開始日の13日前(
図2における16日目)と15日前(
図2における14日目)の基礎体温データはあるが、生理開始日の14日前(
図2における15日目)の基礎体温データが存在せず、生理開始日の13日前(
図2における16日目)が、温度上昇が最大の日である場合は、生理開始日の15日前(
図2における14日目)が推定排卵日候補となる。
【0049】
推定排卵日候補日を決定した後、推定処理部24は、候補である推定排卵日が、スキャン開始日よりも後であって、かつ推定排卵日の基礎体温データと、推定排卵日の直前の基礎体温データとの差(すなわち推定排卵日の基礎体温から推定排卵日の直前の基礎体温を引いた値)が第5の所定値d5よりも大きいか否かを判定する(S29)。第5の所定値d5は、ここでは0.1℃である。
【0050】
S29は、推定排卵日候補が一旦決定されても、その推定排卵日候補の日の基礎体温と、その推定排卵日候補の直前の日の基礎体温との差が、所定値d5以上あるときは、推定排卵日候補よりも前に排卵日があったとして、推定排卵日を変更するための処理である。
【0051】
推定排卵日が、スキャン開始日よりも後であって、かつ推定排卵日の基礎体温データと、推定排卵日の直前の基礎体温データとの差が第5の所定値d5よりも大きい場合(S29:YES)、推定処理部24は、推定排卵日を、推定排卵日候補日の直前の基礎体温の日付とする(S30)。例えば、一旦、生理開始日の14日前(
図2における15日目)が推定排卵日候補となっても、推定排卵日候補日の直前の日(
図2における14日目)の基礎体温データとの差が第5の所定値d5よりも大きい場合は、生理開始日の15日前(
図2における14日目)が推定排卵日となる。
【0052】
以上のように、S28〜S30の処理が、S26で検出された温度上昇すなわち最大温度上昇に基づいて、排卵日を推定する推定部を構成する。よって、推定部であるS28〜S30の処理では、温度上昇が最大の日を基準に、排卵日が推定され、直前の基礎体温に比べて温度上昇が最大の日の直前の基礎体温データの日を排卵日と推定する。さらに、S29とS30では、推定排卵日である温度上昇が最大の日がスキャン開始日よりも後で、かつ推定排卵日の直前の基礎体温と推定排卵日の基礎体温の差が第5の所定値(d5)よりも大きいとき、推定排卵日(候補日)の直前の基礎体温データの日を排卵日とする。すなわち、S29とS30では、推定排卵日の直前の基礎体温に対する、推定排卵日の基礎体温の温度上昇が第5の所定値d5よりも大きい場合は、推定排卵日直前の基礎体温データの日に、排卵日を変更する。
【0053】
S29でNOの場合は、処理は、終了する。
S12により排卵日が推定されると、その推定排卵日を基準として、低温期の終わりをその排卵日の前日とし、高温期の始まりを、排卵日から3日後の日と決定される。
なお、排卵日が推定できない場合は、生理開始日の16日前を低温期の終わりとする。
【0054】
以上のように、基礎体温データが完全に揃っていなくても、基礎体温データに不足があっても、上述した条件を満たせば、排卵日の推定が可能である。なお、上述した各フローチャートで説明した、各日数、各係数、各所定値、各所定数及び具体的な数及び値の全パラメータは、一例であり、ユーザの基礎体温データや、使用機器により調整され、適当な値に設定される。
図3に戻り、
図5に示す排卵日推定処理(S12)が実行された後、タイプ判定及びスコア算出処理が実行される(S13)。タイプ判定及びスコア算出処理は、基礎体温のタイプを判定し、判定されたタイプに基づいてスコアを算出する処理である。
【0055】
タイプ判定は、低温期と高温期における基礎体温データの変化に基づいて判定される。
図5に示す排卵日推定処理(S12)により排卵日が推定され、その推定排卵日を基準として低温期と高温期を決定することができるので、基礎体温データの変化状態から、ユーザのホルモンバランスの状態も精度よく判定することができる。
【0056】
すなわち、ホルモンバランスの影響は基礎体温に現れるため、基礎体温グラフのタイプ判定を行うことで、判定されたタイプを、現時点におけるホルモンバランスの状態を知るための指標にすることができる。
【0057】
図6は、基礎体温のタイプの例を示す図である。
図6に示すように、基礎体温の変化は、タイプ間で異なっている。基礎体温の変化の状態が、ホルモンバランスの状態を示している。
【0058】
タイプ1は、正常なホルモンバランス状態を示す基礎体温の変化を示す。タイプ2は、低温期から高温期に移行するとき、体温がだらだらと上昇する基礎体温の変化を示す。タイプ3は、高温期の途中に体温の低くなる日がある基礎体温の変化を示す。タイプ4は、低温期が長く、高温期は正常な基礎体温の変化を示す。タイプ5は、高温期が短い基礎体温の変化を示す。タイプ6は、高温期と低温期の2相に分かれていない基礎体温の変化を示す。
なお、このような基礎体温の変化に応じた基礎体温のタイプ分けは、
図6に示すタイプ分け以外の分類方法でもよい。
【0059】
タイプ判定処理(S13)の後、通知処理が実行される(S14)。通知処理では、推定された排卵日情報及びホルモンバランスの状態情報が、ユーザのスマートフォン2へ送信される。ユーザは、サーバ4から送信された推定排卵日情報がスマートフォン2に表示されるので、次の排卵日の予測の参考にすることができる。
【0060】
図7は、サーバ4が生成して、スマートフォン2へ送信するホルモンバランス状態情報の画面例を示す図である。スマートフォン2の表示部14には、
図7に示すような画面が表示される。
【0061】
画面31は、直近の生理周期の基礎体温データのグラフ表示部32と、ホルモンバランス状態についてのコメントを表示するコメント表示部33と、基礎体温のタイプを示すタイプ表示部34を有する。
よって、ユーザは、自己の基礎体温データの変化を知ることができるだけでなく、直近の基礎体温データの変化に基づく、ホルモンバランスの状態情報を知ることができる。
【0062】
さらに、ホルモンバランスの状態を、ユーザに分かり易いように、スコアで示すようにしてもよい。すなわち、定量化したスコアをタイプに基づいて算出して、ユーザに知らせるようにしてもよい。
【0063】
図8は、タイプとスコアの対応が登録されたテーブルデータTBLの例を示す図である。テーブルデータTBLでは、タイプ1,2,3,4,5、6に対して、スコアとして、それぞれ、2,0.5,0.5,1,0,−2が割り当てられている。よって、サーバ4は、生理周期毎に判定されたタイプに応じたスコアをテーブルデータTBLから求めて、スマートフォン2に送信する。
【0064】
なお、スコアは、生理周期毎でなく、直近の数周期、たとえば直近の3つの生理周期の合計スコアを算出して、サーバ4が、スマートフォン2に送信するようにしてもよい。
従って、スコアを算出してユーザに提示することにより、ユーザは、ホルモンバランス状態を定量的にかつ直感的に知ることができる。
【0065】
以上のように、S13の処理が、基礎体温データの低温期と高温期の変化に基づいて判定される基礎体温のタイプを判定するタイプ判定部と、判定されたタイプに基づいて、定量化されたスコアを算出するスコア算出部を構成する。
【0066】
そして、S14の処理が、判定されたタイプの情報を送信するタイプ情報送信部と、算出されたスコアの情報を送信するスコア情報送信部を構成する。
【0067】
さらに、ユーザに、排卵日の推定結果や、基礎体温解析結果を利用者に通知すなわち示す際に、そのユーザと同じ属性情報をもつ、例えば同じグループに属するとされた他の複数のユーザの統計情報結果も、グループ毎に同時に通知するようにしてもよい。例えば、同じ年代の他のユーザの平均値などを表示するようにしてもよい。その結果、ユーザは、他人との比較が可能となる。
【0068】
以上のように、各ユーザは、基礎体温と生理開始日をスマートフォン2に入力して、サーバ4に送信すると、サーバ4は、
図3から
図5の処理を実行して、排卵日を推定する。その推定された排卵日情報は、ネットワーク3を介してサーバ4からユーザのスマートフォン2へ送信される。よって、ユーザは、推定排卵日情報の通知を受けて、次の排卵日の推定の参考にすることができる。
以上のように、上述した実施形態によれば、排卵日を推定することができる排卵日推定装置、排卵日推定方法及び排卵日推定プログラムを実現することができる。
【0069】
なお、以上説明した動作を実行するプログラムは、コンピュータプログラム製品として、フレキシブルディスク、CD−ROM等の可搬媒体や、ハードディスク等の記憶媒体の非一時的なコンピュータ読み出し可能な媒体に、その全体あるいは一部が記録され、あるいは記憶されている。そのプログラムがコンピュータにより読み取られて、動作の全部あるいは一部が実行される。あるいは、そのプログラムの全体あるいは一部を通信ネットワークを介して流通または提供することができる。利用者は、通信ネットワークを介してそのプログラムをダウンロードしてコンピュータにインストールしたり、あるいは記録媒体からコンピュータにインストールすることで、容易に本実施の形態の排卵日推定装置を実現することができる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として例示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。