(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記位置情報記憶手段に前記衛星の位置情報が記憶されていない場合、前記受信手段が前記送信信号を受信する期間内における前記衛星の位置情報を受信する期間以外の期間に前記外部装置と無線通信するように、前記無線通信手段を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0011】
本実施形態に係る無線通信装置は、
図1に示すように構成される。無線通信装置1は、例えば電子腕時計等の携帯型装置に搭載されて、GPS衛星からの受信電波に基づいて位置情報、時刻情報を出力する。
【0012】
無線通信装置1は、GPS受信部2と、位置取得部3と、BT(Bluetooth)通信部4と、記憶部5と、RTC(Real Time Clock)6と、入力部7と、表示部8と、制御部10と、GPSアンテナ21と、BTアンテナ22と、を備える。
【0013】
GPS受信部2は、GPSアンテナ21を介して、GPS衛星から送信された、同期信号を含む送信信号(GPS信号)を受信する受信手段として機能する。すなわち、GPS受信部2は、現在位置の取得要求に応じて、上空を周回している複数のGPS衛星から送信されたGPS信号を受信する。GPS受信部2は、受信したGPS信号を位置取得部3に送信する。
【0014】
図2を参照して、GPS信号の構成について説明する。GPS信号が伝達する1個の航法メッセージは、全体で25個のフレーム(メインフレーム)により表現される。
図2(a)に示すように、1個のフレームは5個のサブフレームを含む。各サブフレームは、1ビットのデータ長が20ミリ秒である300ビットのデータを含む。すなわち、1個のサブフレームの時間長(周期)は6秒である。そして、フレーム全体(5個のサブフレーム)は1500ビットのデータを含み、その時間長(周期)は30秒である。
【0015】
各サブフレームは、
図2(b)に示すように、フレームの先頭に、時間長1.2秒のTLM(Telemetry Word:テレメータ語)及びHOW(Hand Over Word:ハンドオーバ語)を含む。TLM及びHOWは、原子時計の時刻情報を含んでおり、時刻同期のための同期信号として機能する。
【0016】
各サブフレームは、TLM及びHOWにおける時刻情報に加えて、
図2(c)に示すような内容のデータを含む。具体的に説明すると、1個のフレームに含まれる5個のサブフレームの中で、時系列順に第1のサブフレーム(#1)は、衛星の健康状態を示すデータ、及びクロック補正係数のデータを含む。第2のサブフレーム(#2)と第3のサブフレーム(#3)とは、エフェメリス、すなわち衛星の精密軌道情報を含む。第4のサブフレーム(#4)は、電離層補正係数、及びアルマナック補助のためのデータを含む。第5のサブフレーム(#5)は、アルマナック、すなわち全衛星の概略軌道情報を含む。
【0017】
第1のサブフレームに含まれる衛星の健康状態等のデータ、及び、第2、第3のサブフレームに含まれるエフェメリス(衛星の精密軌道情報)は、2時間程度で更新される。そのため、各フレームに含まれる第1、第2、及び第3のサブフレームのデータ内容は、2時間程度の間は同じである。
【0018】
第4、第5のサブフレームに含まれるアルマナック(全衛星の概略軌道情報)は、航法メッセージを構成する25個のフレームのそれぞれで異なるデータであり、25個のフレーム全体で1個のデータを表現する。アルマナックは、エフェメリスよりも長い更新間隔である1週間程度で更新される。
【0019】
1個の航法メッセージは時間長30秒のフレームを25個含むため、その時間長(周期)は12.5分(=30秒×25)である。すなわち、GPS受信部2は、電源投入後の初期時等において、エフェメリスやアルマナック等のような必要なデータを全て収集するのに12.5分を要する。そのため、無線通信装置1は、過去にGPS信号から収集したデータを記憶部5に保持しておき、電源起動後にそのデータを読み出すことで、迅速に測位モードに移行する。
【0020】
図1に示す無線通信装置1の構成の説明に戻る。位置取得部3は、GPS受信部2が受信したGPS信号に含まれる同期信号に基づいて、自装置(無線通信装置1)の位置を取得する位置取得手段として機能する。
【0021】
具体的に説明すると、位置取得部3は、GPS信号に含まれるTLM及びHOWの時刻情報に基づいて、GPS衛星の時刻と、RTC6によって得られる無線通信装置1の時刻と、の間で時刻同期を行う。そして、GPS衛星からの信号送信時刻と無線通信装置1における信号受信時刻との差に光速度を乗じることにより、GPS衛星と無線通信装置1との間の距離を算出する。位置取得部3は、上空を周回する複数のGPS衛星(高精度で位置を取得するために例えば4個以上のGPS衛星)に対して、各GPS衛星から受信した同期信号に基づいて、このような距離算出処理を実行する。
【0022】
また、位置取得部3は、エフェメリス及びアルマナックに基づいて、各GPS衛星がGPS信号を送信したときの位置を算出する。このように算出した各GPS衛星までの距離と各GPS衛星の位置とに基づいて、位置取得部3は、無線通信装置1の現在の位置(例えば緯度・経度等)を算出する。
【0023】
BT通信部4は、BTアンテナ22を介したBT(Bluetooth)通信により、外部装置と近距離無線通信する無線通信手段として機能する。具体的に説明すると、BT通信部4は、制御部10から供給された送信データを、シリアル/パラレル変換等の処理をして、BTアンテナ22から通信先の外部装置に送信する。また、BT通信部4は、外部装置から送信されたデータをBTアンテナ22により受信すると、シリアル/パラレル変換等の処理をして、受信データを制御部10に供給する。BT通信部4は、このようなデータの送受信を、通信先の外部装置との間で取り決めた間隔(周期)で間欠的に繰り返して、BT通信する。
【0024】
記憶部5は、例えばROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等のような不揮発性メモリ、又は、バックアップ電池等の機能により無線通信装置1の電源が切断されても記憶データを保持可能なメモリである。記憶部5は、制御部10が各種処理を行うために使用する各種プログラム及びデータ、制御部10が各種処理を行うことにより生成又は取得する各種データを記憶する。
【0025】
例えば、記憶部5は、GPS受信部2が受信したGPS衛星の位置情報であるエフェメリスを記憶する位置情報記憶手段として機能する。制御部10は、GPS受信部2がGPS信号を受信すると、受信したGPS信号の第2及び第3のサブフレームからエフェメリスを取得して、記憶部5に記憶する。エフェメリスの更新間隔は2時間程度であるため、制御部10は、一度記憶部5に記憶したエフェメリスが有効な間はGPS信号から新たにエフェメリスを取得せず、エフェメリスが更新されると、新たに受信したGPS信号の第2及び第3のサブフレームから新たなエフェメリスを取得して、記憶部5を更新する。
【0026】
また、記憶部5は、GPS受信部2がGPS信号を受信するタイミング情報を記憶するタイミング記憶手段として機能する。GPS信号を受信するタイミング情報とは、具体的に説明すると、1個の航法メッセージに含まれる25個のフレームのそれぞれを受信するタイミング、1個のフレームに含まれる5個のサブフレームのそれぞれを受信するタイミング、及び、各サブフレームに含まれる時刻情報であるTLM及びHOWを受信するタイミング等の情報である。
【0027】
タイミング情報も、エフェメリスと同様に、時間の経過に伴って新たなタイミング情報に更新される。そのため、制御部10は、一度記憶部5に記憶したタイミング情報が有効な間はGPS信号から新たにタイミング情報を取得せず、タイミング情報が更新されると、新たに受信したGPS信号に含まれる各情報の受信タイミングに基づいて新たなタイミング情報を取得して、記憶部5を更新する。
【0028】
また、記憶部5は、BT送信間隔等、BT通信部4のBT通信に必要となる各種情報、及び、GPSによる位置取得のために必要となる各種情報を記憶する。
【0029】
RTC6は、無線通信装置1の電源が切断されていても動作し続けるクロックにより、現在時刻及び経過時間を計測する計時手段である。
【0030】
入力部7は、例えば各種のボタンやタッチパネル等のような入力手段である。入力部7は、GPSによる位置取得要求やBT通信の指示等、ユーザから入力された各種の操作指示を制御部10に送信する。
【0031】
表示部8は、例えば液晶ディスプレイ等のような表示手段である。表示部8は、位置取得部3による位置取得の結果等、各種の処理の結果を制御部10から取得して、対応する画像を表示する。
【0032】
制御部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)と、CPUのメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)等と、を備える。制御部10は、命令やデータを転送するための伝送経路であるシステムバスを介して無線通信装置1の各部と接続され、無線通信装置1全体を制御する。
【0033】
例えば、制御部10は、BT通信部4によるBT通信の動作を制御する無線動作制御部11、及び、BT通信の送信間隔を演算する送信間隔演算部12として機能する。以下、このような制御部10の機能も含めて、無線通信装置1が実行する位置取得処理の流れについて、
図3及び
図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0034】
図3に示すフローチャートの位置取得処理は、例えばユーザが入力部7を介して無線通信装置1の現在の位置を取得する旨の指示を入力する等、GPSによる無線通信装置1の位置取得が要求されると、開始する。位置取得要求の結果、GPS受信部2は、GPS信号を受信可能な位置を周回している複数のGPS衛星から送信されたGPS信号の受信を開始する。
【0035】
位置取得処理が開始すると、制御部10は、BT動作中であるか否かを判別する(ステップS1)。すなわち、制御部10は、現在、BT通信部4により外部装置と無線通信の最中であるか否かを判別する。
【0036】
BT動作中でないと判別すると(ステップS1;NO)、位置取得部3は、GPS受信部2が受信したGPS信号に含まれる時刻情報(TLM及びHOW)とGPS衛星の位置情報(エフェメリス及びアルマナック)とに基づいて、自装置の現在の緯度・経度を算出することにより(ステップS2)、自装置の位置を取得する。このとき、位置取得部3は、有効なエフェメリス又はアルマナックが記憶部5に記憶されている場合には、これらの位置情報を記憶部5から取得し、記憶部5に記憶されていない場合には、受信したGPS信号の対応するサブフレームからこれらの位置情報を取得して、緯度・経度を算出する。
【0037】
次に、位置取得部3は、緯度・経度の算出が完了したか否かを判別して(ステップS3)、算出が完了していない場合(ステップS3;NO)、ステップS2において引き続き緯度・経度を算出する。最終的に緯度・経度の算出が完了すると(ステップS3;YES)、緯度・経度の算出結果を表示部8に表示して(ステップS4)、ユーザに提供する。そして、無線通信装置1における位置取得処理は終了する。
【0038】
このように、BT通信部4が外部装置と無線通信している最中でないときにGPS受信部2がGPS信号を受信した場合は、GPS信号とBT通信信号とが混信や干渉する畏れがない。そのため、無線通信装置1は、特にBT通信部4を制御することなく、通常のGPSの機能により自装置の位置を取得する。
【0039】
一方で、BT動作中にGPSによる位置取得が要求された場合には(ステップS1;YES)、制御部10は、GPS信号との間で混信や干渉を起こさないように、動作中のBT通信を制御する処理に移行する。
【0040】
この場合、制御部10は、GPS衛星の位置情報であるエフェメリスを保持しているか否かを判別する(ステップS5)。すなわち、制御部10は、自装置の位置を取得するために必要となる複数(例えば4個以上)のGPS衛星のエフェメリスを、これらのGPS衛星から過去に受信して、記憶部5に保有しているか否かを判別する。なお、以下では、GPS衛星の概略軌道情報であって、エフェメリスよりも有効期間が長いアルマナックについては、記憶部5に保持されていることを前提とする。
【0041】
第1に、記憶部5に有効なエフェメリスを保持している場合は(ステップS5;YES)、GPS位置取得におけるいわゆるホットスタートの場合に相当する。この場合、制御部10は、GPS受信部2が時刻情報(TLM及びHOW)を受信するタイミング情報を保持しているか否かを、さらに判別する(ステップS6)。すなわち、制御部10は、過去にGPS衛星から受信したGPS信号に基づいて取得した、時刻情報を受信する有効なタイミング情報が記憶部5に記憶されているか否かを判別する。
【0042】
記憶部5に有効なタイミング情報を保持している場合(ステップS6;YES)、制御部10は、記憶部5に記憶された時刻情報(TLM及びHOW)のタイミング情報に基づいて、GPS受信部2が時刻情報を受信する期間以外の期間にBT通信するように、BT通信部4のBT送信間隔を調整する(ステップS7)。
【0043】
図5に、時刻情報を受信するタイミング情報が記憶部5に保持されている、すなわち既知である場合におけるBT通信の制御の例を示す。
図5は、GPS受信部2が受信したGPS信号を、第1(#1)から第5(#5)までのサブフレーム単位で時系列順に示しており、またGPS信号の受信と並行して、BT通信部4が通信先の外部装置と2秒間隔で間欠的にBT通信している様子を示している。
【0044】
例えば
図5(a)に示すように、BT通信部4によるBT信号の送信タイミングが、GPS信号の各サブフレーム(6秒の時間長)の先頭1.2秒を占める時刻情報(TLM及びHOW)の受信期間と重なっていると、BT信号からの干渉が発生して、GPS信号から時刻情報を適切に取得できなくなる。
【0045】
このような時刻情報への干渉を避けるために、送信間隔演算部12は、例えば
図5(b)に示すように、GPS受信部2が時刻情報を受信する1.2秒の期間に2秒間隔のBT信号の送信タイミングが重ならないような、BT信号の送信タイミングを演算する。そして、無線動作制御部11は、送信間隔演算部12の演算結果に従って、BT通信部4によるBT信号の送信タイミングをシフトさせる。これにより、制御部10は、BT通信を維持しつつ、GPS信号から適切に時刻情報を取得することができる。
【0046】
なお、GPS受信部2がGPS信号を受信するタイミングは、GPS信号の伝搬遅延の影響により、複数のGPS衛星の位置及び無線通信装置1の位置に応じて変化する。しかし、上空を周回している複数のGPS衛星は、GPS信号に含まれる各情報を送信するタイミングを互いに同期させており、また、GPS衛星又は無線通信装置1の位置のずれによるGPS信号の伝搬時間の差は、例えばサブフレームの時間長である6秒やTLM及びHOWの時間長である1.2秒という時間に比べれば微小である。そのため、タイミング情報に基づいてBT通信部4のBT送信間隔を調整する処理における、このような伝搬遅延に起因するタイミングのずれによる影響はほとんどない。
【0047】
BT通信部4のBT送信間隔を調整して、GPS信号から適切に時刻情報を取得すると、
図3に示すフローチャートの位置取得処理は、上述したステップS2の処理に移行する。すなわち、位置取得部3は、取得した時刻情報と、記憶部5に記憶されたGPS衛星の有効な位置情報(エフェメリス及びアルマナック)と、に基づいて、自装置の現在の緯度・経度を算出することにより(ステップS2)、自装置の位置を取得する。そして、制御部10は、算出が完了するまで緯度・経度の算出処理を実行して(ステップS3)、算出が完了すると、緯度・経度の算出結果を表示部8に表示して(ステップS4)、位置取得処理を終了する。なお、緯度・経度の算出完了後に、制御部10は、必要に応じてBT通信部4のBT送信間隔をデフォルトに戻してもよい。
【0048】
このように、BT通信部4が外部装置と無線通信している最中にGPS受信部2がGPS信号を受信した場合であって、且つ、記憶部5に有効なエフェメリスとタイミング情報とをいずれも保持している場合、制御部10は、記憶部5に記憶された時刻情報のタイミング情報に基づいて、GPS受信部2がGPS信号を受信する期間内における時刻情報を受信する期間以外の期間に外部装置とBT通信するように、BT通信部4を制御する。位置取得に必要な時刻情報へのBT信号からの干渉を避けることができるため、BT通信の通信速度を維持しつつ、GPSによる測位が可能である。すなわち、1個の無線通信装置1上でGPSによる測位とBT通信とを両立することができる。
【0049】
一方で、ステップS6において、記憶部5に有効なタイミング情報を保持していない場合(ステップS6;NO)、制御部10は、干渉を避けるべき時刻情報の受信タイミングが不明なため、上記
図5に示した方法とは異なる方法でBT送信間隔を調整する。具体的に説明すると、制御部10は、時刻情報の受信周期に整数倍が一致しない周期でBT通信するように、BT送信間隔を調整する(ステップS8)。
【0050】
図6に、時刻情報を受信するタイミング情報が記憶部5に保持されていない、すなわち既知でない場合におけるBT通信の制御の例を示す。
図6の見方は上述した
図5と同様である。
【0051】
例えば
図6(a)に示すように、BT通信部4によるBT信号の送信間隔が2秒である場合、この2秒は時刻情報(TLM及びHOW)の受信周期である6秒の約数であるため、各サブフレームにおける時刻情報の受信期間と連続的に重なる。そのため、時刻情報へのBT信号からの干渉が絶えず発生して、GPS信号から時刻情報を適切に取得できなくなる。
【0052】
このような時刻情報への連続的な干渉を避けるために、送信間隔演算部12は、時刻情報の受信期間と連続的に重ならないようなBT信号の送信間隔を演算する。送信間隔演算部12は、例えば
図6(b)に示すように、時刻情報の受信周期である6秒の約数でない周期、すなわちより一般的に言うと6秒に整数倍が一致しない周期である2.3秒を、BT信号の送信周期として算出する。そして、無線動作制御部11は、送信間隔演算部12の演算結果に従って、BT通信部4によるBT信号の送信周期を2秒から2.3秒に変更する。
【0053】
BT信号の送信周期を、整数倍が時刻情報の受信周期に一致しない周期に変更することにより、GPS受信部2が時刻情報を受信する期間の一部において干渉が発生したとしても、干渉が発生しない期間が必ず残る。そのため、制御部10は、BT通信を維持しつつ、GPS信号から適切に時刻情報を取得することができる。
【0054】
BT送信周期を調整する一方で、制御部10は、GPS受信部2が受信したGPS信号から、時刻情報を含む各情報を受信するタイミング情報を取得したか否かを判別する(ステップS9)。タイミング情報を取得できていない間は(ステップS9;NO)、制御部10は、タイミング情報を取得するまで、受信したGPS信号からタイミング情報の取得を試みる。最終的にタイミング情報を取得すると(ステップS9;YES)、制御部10は、取得したタイミング情報を記憶部5に格納する(ステップS10)。
【0055】
タイミング情報を取得すると、
図3に示すフローチャートの位置取得処理は、上述したステップS7に移行する。すなわち、タイミング情報を取得した後は、上述した時刻情報を受信するタイミング情報が既知である場合と同様に、制御部10は、取得した時刻情報のタイミング情報に基づいて、GPS受信部2が時刻情報を受信する期間以外の期間にBT通信するように、BT通信部4のBT送信間隔を調整する(ステップS7)。これにより、BT信号からの時刻情報への干渉を、より高い程度で避けることができる。
【0056】
位置取得部3は、このように異なる方法でBT送信間隔を調整しながらBT信号からの干渉を避けて受信した時刻情報と、記憶部5に記憶されたGPS衛星の有効な位置情報と、に基づいて、自装置の現在の緯度・経度を算出する(ステップS2)。そして、制御部10は、算出が完了するまで緯度・経度の算出処理を実行して(ステップS3)、算出が完了すると、緯度・経度の算出結果を表示部8に表示して(ステップS4)、位置取得処理を終了する。
【0057】
このように、BT通信部4が外部装置とBT通信している最中にGPS受信部2がGPS信号を受信した場合であって、且つ、記憶部5に有効なタイミング情報を保持していない場合、制御部10は、GPS受信部2が時刻情報を受信する周期に整数倍が一致しない周期で、間欠的に外部装置とBT通信するように、BT通信部4を制御する。位置取得に必要な時刻情報を受信するタイミング情報が不明である場合にもBT信号からの連続的な干渉を避けることができるため、BT通信の通信速度の低下とGPS信号に含まれる時刻情報の受信感度の劣化とをいずれも抑制しつつ、GPSによる測位とBT通信とを両立することができる。
【0058】
第2に、ステップS5において、記憶部5に有効なエフェメリスを保持していない場合は(ステップS5;NO)、GPS位置取得におけるいわゆるウォームスタートの場合に相当する。この場合は、例えば、無線通信装置1がGPSにより位置取得したのが、エフェメリスの有効期間である2時間以上前である場合に相当する。この場合の位置取得処理については、
図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0059】
記憶部5に有効なエフェメリスを保持していない場合(ステップS5;NO)、位置取得部3は、無線通信装置1の位置を取得するためには、受信したGPS信号から時刻情報(TLM及びHOW)とエフェメリスとをいずれも取得する必要がある。そのため、制御部10は、GPS受信部2が時刻情報、及び、エフェメリスを含む第2及び第3のサブフレームを受信するタイミング情報を保持しているか否かを、さらに判別する(ステップS11)。すなわち、制御部10は、過去にGPS衛星から受信したGPS信号に基づいて取得した有効なタイミング情報が記憶部5に記憶されているか否かを判別する。
【0060】
記憶部5に有効なタイミング情報を保持していない場合(ステップS11;NO)、制御部10は、タイミング情報の取得と並行して時刻情報を取得するため、上述したステップS8からステップS10までの処理、すなわち時刻情報を受信するタイミング情報が既知でない場合の処理と同様の処理を実行する。
【0061】
すなわち、制御部10は、BT信号から時刻情報への連続的な干渉を避けるために、時刻情報の受信周期に整数倍が一致しない周期でBT通信するように、BT送信間隔を調整する(ステップS12)。そして、制御部10は、GPS受信部2が受信したGPS信号から、GPS信号に含まれる各情報を受信するタイミング情報を取得したか否かを判別する(ステップS13)。タイミング情報を取得しない間は(ステップS13;NO)、制御部10は、タイミング情報を取得するまで受信したGPS信号からタイミング情報の取得を試みる。最終的にタイミング情報を取得すると(ステップS13;YES)、制御部10は、取得したタイミング情報を記憶部5に格納する(ステップS14)。
【0062】
このように、BT通信部4が外部装置とBT通信している最中にGPS受信部2がGPS信号を受信した場合であって、且つ、記憶部5に有効なエフェメリスとタイミング情報とをいずれも保持していない場合には、制御部10は、記憶部5にタイミング情報が記憶されるまでは、GPS受信部2が時刻情報を受信する周期に整数倍が一致しない周期で、間欠的に外部装置とBT通信するように、BT通信部4を制御する。情報タイミングを取得するまでの間に時刻情報を取得することができるため、初期測位時間を短縮でき、測位時間の短縮と消費電力の抑制につながる。記憶部5にタイミング情報が記憶された後は、
図4に示すフローチャートの位置取得処理はステップS15に移行する。
【0063】
一方で、ステップS11において記憶部5に有効なタイミング情報を保持している場合(ステップS11;YES)、ステップS12からステップS14までのタイミング情報の取得に係る処理を省略して、ステップS15に移行する。この場合は、有効なエフェメリスについては記憶部5に保持していないが、例えばエフェメリスの有効期間である2時間以上前にGPS信号を受信した経験があるため、GPS信号に含まれる各情報を受信するタイミング情報を記憶部5に保持している場合に相当する。
【0064】
記憶部5にタイミング情報が記憶された状態においては、制御部10は、記憶されたタイミング情報に基づいて、未受信情報であるエフェメリスの受信期間以外の期間にBT通信するようにBT送信間隔を調整する(ステップS15)。
【0065】
図7に、時刻情報を受信するタイミングが既知であって、エフェメリスが記憶部5に保持されていない、すなわち既知でない場合における、BT通信の制御の例を示す。
図7の見方は上述した
図5及び
図6と同様である。
【0066】
例えば
図7(a)に示すように、BT通信部4によるBT信号の送信間隔が2秒で一定である場合、GPS信号に含まれる全てのサブフレームにおいてBT信号からの干渉が発生して、GPS信号から未受信情報であるエフェメリスを適切に取得できなくなる。
【0067】
このようなエフェメリスへの干渉を避けるために、送信間隔演算部12は、未受信情報の受信期間と重ならないようなBT信号の送信間隔を演算する。送信間隔演算部12は、例えば
図7(b)に示すように、エフェメリスを含む第2(#2)及び第3(#3)のサブフレームを受信する期間以外の期間に外部装置とBT通信するような、BT信号の送信間隔を演算する。そして、無線動作制御部11は、送信間隔演算部12の演算結果に従って、BT通信部4によるBT信号の送信間隔を変更する。
【0068】
具体的に説明すると、送信間隔演算部12は、既に受信した情報を含む第1(#1)、第4(#4)及び第5(#5)のサブフレームを受信する期間を高Dutyに設定し、未受信情報を含む第2(#2)及び第3(#3)のサブフレームを受信する期間を低Dutyに設定して、高Dutyに設定した期間に集中的にBT通信するように、BT信号の送信間隔を調整する。このように、GPS衛星からの各情報を受信するタイミングが既知であれば、既に受信した情報のタイミングにBT通信のタイミングを集中させることで、未受信情報へのBT信号からの干渉を避けることができる。
【0069】
BT送信間隔を調整する一方で、制御部10は、GPS受信部2が受信したGPS信号の第2及び第3のサブフレームから、エフェメリスを取得したか否かを判別する(ステップS16)。エフェメリスを取得できていない間は(ステップS16;NO)、制御部10は、エフェメリスを取得するまで、受信したGPS信号からエフェメリスの取得を試みる。最終的にエフェメリスを取得すると(ステップS16;YES)、制御部10は、取得したエフェメリスを記憶部5に格納する(ステップS17)。
【0070】
エフェメリスを取得すると、
図4に示すフローチャートの位置取得処理は終了して、
図3に示すフローチャートにおける上述したステップS7に移行する。すなわち、エフェメリスを取得した後は、上述したエフェメリス及びタイミング情報が既知である場合と同様に、制御部10は、取得した時刻情報のタイミング情報に基づいて、GPS受信部2が時刻情報を受信する期間以外の期間にBT通信するように、BT通信部4のBT送信間隔を調整する(ステップS7)。これにより、BT信号からの時刻情報への干渉を、より高い程度で避けることができる。
【0071】
位置取得部3は、このようにBT送信間隔を調整しながらBT信号からの干渉を避けて受信した時刻情報とGPS衛星の有効な位置情報とに基づいて、自装置の現在の緯度・経度を算出する(ステップS2)。そして、制御部10は、算出が完了するまで緯度・経度の算出処理を実行して(ステップS3)、算出が完了すると、緯度・経度の算出結果を表示部8に表示して(ステップS4)、位置取得処理を終了する。
【0072】
このように、BT通信部4が外部装置とBT通信している最中にGPS受信部2がGPS信号を受信した場合であって、且つ、記憶部5にGPS衛星の位置情報である有効なエフェメリスを保持していない場合、制御部10は、GPS受信部2がGPS信号を受信する期間内におけるGPS衛星の位置情報を受信する期間以外の期間に外部装置とBT通信するように、BT通信部4を制御する。GPS信号に含まれる未受信情報へのBT信号からの干渉を避けることができるため、エフェメリスを予め保持していない場合であっても、BT通信の通信速度の低下を抑制しつつ、時刻情報とエフェメリスとを迅速に取得して測位することができる。そのため、エフェメリスを予め保持していない場合における初期測位時間を短縮でき、測位時間の短縮と消費電力の抑制につながる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る無線通信装置1は、GPSによる測位機能とBT通信による外部装置との無線通信機能とをいずれも有しており、たとえ有効なエフェメリスと有効なタイミング情報とのいずれかを保持していない場合であっても、状況に応じてGPS衛星から時刻情報等の必要な情報を受信するタイミングを避けてBT通信するように、BT通信部4を制御する。その結果、1個の無線通信装置1上でGPSによる測位とBT通信とを両立することができる。
【0074】
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0075】
例えば、上記実施形態では、無線通信装置1は、電子腕時計に搭載されるとして説明した。しかし、本発明に係る無線通信装置は、携帯電話、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、電子歩数計等のような他の電子機器に搭載されるものであってもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、無線通信装置1は、GPS受信部2によりGPS衛星からの送信信号を受信して、自装置の位置を取得した。しかし、本発明に係る無線通信装置は、GPSに限らず、他のGNSS及び航法衛星システムに係る衛星からの電波を受信して測位するものであってもよい。この場合、受信信号のフォーマットがGPS信号とは異なっていたとしても、上述した手法と同様に、時刻情報等を受信する期間以外の期間に無線通信するように無線通信を制御することで、他の無線通信との混信や干渉を回避しながら測位することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、無線通信装置1は、BT通信部4によりBT(Bluetooth)通信を介して外部装置と無線通信した。しかし、本発明に係る無線通信装置1は、Bluetoothに限らず、無線LAN(Local Area Network)、UWB(Ultra Wide Band)等の他の通信手段を介して無線通信するものであって、これら無線通信から測位のための受信信号への混信や干渉を回避するものであってもよい。
【0078】
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた無線通信装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存のパーソナルコンピュータや情報端末機器等を、本発明に係る無線通信装置として機能させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示した無線通信装置1による各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存のパーソナルコンピュータや情報端末機器等を制御するCPU等が実行できるように適用することで、本発明に係る無線通信装置として機能させることができる。また、本発明に係る無線通信方法は、無線通信装置を用いて実施できる。
【0079】
また、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、コンピュータが読取可能な記録媒体(CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto Optical disc)等)に格納して適用できる他、インターネット等のネットワーク上のストレージにプログラムを格納しておき、これをダウンロードさせることにより適用することもできる。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0081】
(付記1)
衛星から送信された、時刻情報を含む送信信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記時刻情報に基づいて、自装置の位置を取得する位置取得手段と、
外部装置と無線通信する無線通信手段と、
前記無線通信手段が前記外部装置と無線通信している最中に前記受信手段が前記送信信号を受信した場合、前記受信手段が前記送信信号を受信する期間内における前記時刻情報を受信する期間以外の期間に前記外部装置と無線通信するように、前記無線通信手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【0082】
(付記2)
前記送信信号は、前記衛星の位置情報を含み、
前記受信手段が受信した前記衛星の位置情報を記憶する位置情報記憶手段をさらに備え、
前記位置取得手段は、前記受信手段が受信した前記時刻情報と前記位置情報記憶手段に記憶された前記衛星の位置情報とに基づいて、前記自装置の位置を取得する、
ことを特徴とする付記1に記載の無線通信装置。
【0083】
(付記3)
前記制御手段は、前記無線通信手段が前記外部装置と無線通信している最中に前記受信手段が前記送信信号を受信した場合であって、且つ、前記位置情報記憶手段に前記衛星の位置情報が記憶されていない場合、前記受信手段が前記送信信号を受信する期間内における前記衛星の位置情報を受信する期間以外の期間に前記外部装置と無線通信するように、前記無線通信手段を制御する、
ことを特徴とする付記2に記載の無線通信装置。
【0084】
(付記4)
前記受信手段が前記時刻情報を受信するタイミング情報を記憶するタイミング記憶手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記無線通信手段が前記外部装置と無線通信している最中に前記受信手段が前記送信信号を受信した場合、前記タイミング記憶手段に記憶された前記タイミング情報に基づいて、前記受信手段が前記送信信号を受信する期間内における前記時刻情報を受信する期間以外の期間に前記外部装置と無線通信するように、前記無線通信手段を制御する、
ことを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載の無線通信装置。
【0085】
(付記5)
前記制御手段は、前記無線通信手段が前記外部装置と無線通信している最中に前記受信手段が前記送信信号を受信した場合であって、且つ、前記タイミング記憶手段に前記タイミング情報が記憶されていない場合、前記受信手段が前記時刻情報を受信する周期に整数倍が一致しない周期で、間欠的に前記外部装置と無線通信するように、前記無線通信手段を制御する、
ことを特徴とする付記4に記載の無線通信装置。
【0086】
(付記6)
前記受信手段が前記時刻情報及び前記衛星の位置情報を受信するタイミング情報を記憶するタイミング記憶手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記無線通信手段が前記外部装置と無線通信している最中に前記受信手段が前記送信信号を受信した場合であって、前記位置情報記憶手段に前記衛星の位置情報が記憶されていない場合、前記タイミング記憶手段に前記タイミング情報が記憶されるまでは、前記受信手段が前記時刻情報を受信する周期に整数倍が一致しない周期で、間欠的に前記外部装置と無線通信するように、前記無線通信手段を制御し、前記タイミング記憶手段に前記タイミング情報が記憶された後は、記憶された当該タイミング情報に基づいて、前記受信手段が前記送信信号を受信する期間内における前記衛星の位置情報を受信する期間以外の期間に前記外部装置と無線通信するように、前記無線通信手段を制御する、
ことを特徴とする付記2に記載の無線通信装置。
【0087】
(付記7)
衛星から送信された、時刻情報を含む送信信号を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信した前記時刻情報に基づいて、自装置の位置を取得する位置取得ステップと、
外部装置と無線通信する無線通信ステップと、
前記無線通信ステップで前記外部装置と無線通信している最中に前記受信ステップで前記送信信号を受信した場合、前記受信ステップで前記送信信号を受信する期間内における前記時刻情報を受信する期間以外の期間に前記外部装置と無線通信するように、前記無線通信ステップにおける無線通信を制御する制御ステップと、
を含む無線通信方法。
【0088】
(付記8)
コンピュータを、
衛星から送信された、時刻情報を含む送信信号を受信する受信手段、
前記受信手段が受信した前記時刻情報に基づいて、自装置の位置を取得する位置取得手段、
外部装置と無線通信する無線通信手段、
前記無線通信手段が前記外部装置と無線通信している最中に前記受信手段が前記送信信号を受信した場合、前記受信手段が前記送信信号を受信する期間内における前記時刻情報を受信する期間以外の期間に前記外部装置と無線通信するように、前記無線通信手段を制御する制御手段、
として機能させるためのプログラム。