特許第6303722号(P6303722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6303722
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20180326BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08K3/04
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-72345(P2014-72345)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193735(P2015-193735A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 良大
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−147586(JP,A)
【文献】 特開2009−149831(JP,A)
【文献】 特開2012−187076(JP,A)
【文献】 特開2010−254823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00−23/36
C08K 3/00−3/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径50〜150μmの黒鉛(A)、融点100℃以下のポリオレフィン樹脂(B)および融点110℃以上のポリオレフィン樹脂(C)を含み、
前記黒鉛(A)は、膨張化黒鉛、および熱分解黒鉛の少なくともいずれかである樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂組成物全体に対して、前記黒鉛(A)が5〜20重量%、前記ポリオレフィン樹脂(B)が10〜40重量%および前記ポリオレフィン樹脂(C)が40〜85重量%であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記黒鉛(A)のかさ密度が0.1〜0.4g/cmであることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記黒鉛(A)の比表面積が1〜100m/gであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性に優れる成形体を成形できる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脱原子力政策、原油高騰への対応、化石燃料の枯渇や地球環境保全への対応、未利用エネルギーの有効活用等の観点から、季節、昼夜を問わない自然エネルギーである地中熱エネルギー等の未利用エネルギーの利用が進んでいる。例えば、特許文献1では、地中熱を利用するため採熱、放熱パイプにより流路が形成されている地中熱交換器と、当該地中熱交換器に接続されたヒートポンプとからなり、地中熱交換器を地中に埋設して地中で熱交換する地中熱ヒートポンプが開示されている。当該地中熱ヒートポンプでは、熱効率を高めるため配管に断熱材として発泡ポリエチレンや発泡スチロールの多孔質や緩衝材テープを使用して被覆している。しかし、配管(以下、パイプともいう)がポリエチレンやポリブチレンの素材を成形しているため熱伝導率が低く、熱損失が大きいという問題があった。
【0003】
そのため、特許文献2では、樹脂にカーボンファイバーを配合したパイプが開示されている。また、特許文献3では、樹脂にマルチウォールカーボンナノチューブを配合したパイプが開示されている。また、また、特許文献4では、樹脂に熱膨張処理を施した黒鉛を配合した樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−289533号公報
【特許文献2】特開2004−198098号公報
【特許文献3】特開2010−190471号公報
【特許文献4】特開2012−241089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カーボンファーバーを使用したパイプは、熱伝導率が不足する問題があった。また、マルチウォールカーボンナノチューブを使用したパイプは、ある程度の熱伝導性が得られたが、パイプ自体の価格が高くなりすぎ、地中熱ヒートポンプシステムの普及が進まない問題、およびカーボンナノチューブを多量に使用する必要があったため、パイプに成形するための加工性(以下、成形加工性という)が低下する問題があった。また、熱膨張処理を施した黒鉛を使用したパイプは、機械強度および成形加工性が低いという問題があった。
【0006】
本発明は、良好な熱伝導性、および良好な成形加工性を有し、機械強度が良好な成形体を形成できる樹脂組成物および成形体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂組成物は、平均粒子径50〜150μmの黒鉛、融点100℃以下のポリオレフィン樹脂および融点110℃以上のポリオレフィン樹脂を含む。
【発明の効果】
【0008】
上記の発明によれば、平均粒子径50〜150μmの黒鉛を使用したことで良好な熱伝導性を得たことに加え、融点100℃以下のポリオレフィン樹脂および融点110℃以上のポリオレフィン樹脂を併用したことで成形体の機械強度が引張降伏点強度および引張破壊点伸び率の面で大きく向上した。これは融点100℃以下のポリオレフィン樹脂が黒鉛の分散 に寄与したと推測している。このように成形体の引張降伏点強度が高いことは、成形品の使用中に外部から応力が加わった場合、成形品に折り曲がり等変形や亀裂が発生することを抑制できる。また成形体の引張破壊点伸び率が高いことは、樹脂が本来持っている伸張性を維持しつつ、様々な形状に成形することが可能になるため成形加工性の向上に寄与し、外部環境変化による熱膨張または熱収縮に追従できるパイプ等の成形体が得られる。
【0009】
本発明により、良好な熱伝導性、および良好な成形加工性を有し、機械強度が良好な成形体を形成できる樹脂組成物および成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、平均一次粒子径50〜150μm黒鉛(A)(以下、黒鉛(A)ともいう)、融点100℃以下のポリオレフィン樹脂(B)(以下、ポリオレフィン樹脂(B)ともいう)。および融点110℃以上のポリオレフィン樹脂(C)(以下、ポリオレフィン樹脂(C)ともいう)を含む。本発明の樹脂組成物は、例えば溶融、混錬により成形して成形体として使用することが好ましい。前記成形体は、黒鉛(A)を含むため熱伝導性が良好であり、機械強度が優れるためヒートポンプ用配管に代表される良好な熱伝導性が必要な用途に使用することが好ましい。また、太陽光発電の裏面保護シート、リチウムイオン電池、およびLED照明等の発熱が大きく除熱が必要な機器の放熱用部材として使用することも好ましい。
【0011】
黒鉛(A)は、平均粒子径50〜150μmであり、80〜120μmが好ましい。平均粒子径が50μm以上になることで良好な熱伝導性が得られる。また、平均粒子径が150μm以下になることで良好な機械物性が得られる上、成形体の表面を平滑にできる。成形品の表面が平滑になると美観が優れるためパソコン、携帯電話およびエアコン室内機等のように人の目に触れる用途に使用しても不都合がない。なお平均粒子径は、電子顕微鏡の拡大画像(千倍〜1万倍程度)の約10〜20個の粒子を平均して求めた。なお、粒子の長さ方向と幅方向とのアスペクト比が1.5以上有る場合、長さ方向の長さを平均して平均粒子径を求める。
【0012】
黒鉛(A)は、熱膨張処理を施した黒鉛(以下、膨張化黒鉛ともいう)または熱分解黒鉛が好ましい。
膨張化黒鉛とは、鉱物として天然に産出される鱗状黒鉛、土壌黒鉛、および塊状黒鉛等の天然黒鉛、ならびに石油コークス、石油ピッチ、無定形炭素等を2000℃以上で熱処理し、不規則な配列の微小黒鉛結晶の配向を人工的に行った人造黒鉛を、化学薬品浸漬または電気酸化処理を行うことで得た黒鉛である。化学薬品浸漬は黒鉛原料を多量の濃硫酸等に浸漬し、さらに濃硝酸、重クロム酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素等の酸化剤を添加して処理することにより黒鉛層間化合物を生成し、次いで水洗いした後に800〜1000℃で急速過熱し、膨張させる方法である。前記電気酸化処理法は黒鉛原料を硫酸等の電解液中で処理し、次いで水洗いした後に800〜1000℃で急速過熱し、膨張させる方法である。
このように熱膨張処理を施した後、粉砕した黒鉛が、熱膨張処理を施した黒鉛である。なお粉砕は、熱膨張処理を施した黒鉛をロール、プレス等を用いて加圧圧縮しシート状とし、これを粉砕機にて粉砕する。
【0013】
前記熱分解黒鉛は、粉末コークスを3000℃で熱処理し、黒鉛化した後、粉砕して得られる黒鉛である。
【0014】
黒鉛(A)は、かさ密度が0.1〜0.4g/cm3であることが好ましく、0.15〜0.2g/cm3がより好ましい。かさ密度を0.1g/cm3以上にすることで成形加工性がより向上する。また、かさ密度を0.4g/cm3以下にすることで熱伝導性がより向上する。なお、かさ密度とはASTM32990に準拠して測定した数値である。
【0015】
また黒鉛(A)は、比表面積が1〜100m2/gであることが好ましく、80m2/g以下がより好ましく、40m2/g以下がさらに好ましい。比表面積を100m2/g以下にすることで、黒鉛の分散性をより向上することで、成形体の平滑性がより向上する。なお、比表面積とはASTM3037−89に準拠して測定した数値である。
【0016】
黒鉛(A)は、ポリオレフィン樹脂との親和性を向上させるために、表面処理剤(例えばシランカップリング剤、シラン)を使用して表面に被覆層を形成できる。
【0017】
前記被覆層の形成は、直接処理法(例えば乾式法、スラリー法、スプレー法等)、インテグラルブレンド法(例えば直接法、マスターバッチ法等)、ドライコンセントレート法等の公知の方法を使用できる。このうち簡易的に処理ができる方法として、直接処理法が好ましく、乾式法がより好ましい。
【0018】
前記乾式法の1例を説明すると、例えば黒鉛をヘンシェルミキサーで撹拌・混合しながら表面処理剤を滴下あるいは噴霧しながら混合し、必要に応じて加熱処理する方法が挙げられる。被覆層形成後の黒鉛は、凝集する場合があるためボールミル等で粉砕することが好ましい。なお、表面処理剤の滴下や噴霧を行う際にアルコール等の有機溶剤で希釈してから被覆層を形成することも好ましい。
【0019】
前記表面処理剤は、例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシシラン、ヘキシルトリメトキシラン、ヘキシルトリエトキシラン、オクチルトリメトキシラン、オクチルトリエトキシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。表面処理剤は、単独あるいは2種以上を併用できる。
【0020】
本発明においてポリオレフィン樹脂は、融点100℃以下のポリオレフィン樹脂(B)および融点110℃以上のポリオレフィン樹脂(C)を使用する。
ポリオレフィン樹脂(B)は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状超低密度ポリエチレン樹脂等、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、ならびにα−オレフィンとエチレンないしプロピレンとの共重合体等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂(B)を使用することで黒鉛(A)を分散し易くなる。これらの中でも直鎖状低密度ポリエチレンや直鎖状超低密度ポリエチレンが好ましい。なお低密度とは、920g/cm3以下であり、超低密度とは、900g/m3以下である。
【0021】
ポリオレフィン樹脂(C)は、例えば低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、α−オレフィンとエチレンないしプロピレンの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル共重合体等が挙げられる。これらの中でも低密度ポリエチレン樹脂および高密度ポリエチレン樹脂が好ましい。なお高密度とは、940g/m3を超えるものである。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物100重量%中、黒鉛(A)を5〜20重量%、ポリオレフィン樹脂(B)を10〜40重量%およびポリオレフィン樹脂(C)を40〜85重量%含むことが好ましい。なお、黒鉛(A)は10〜15重量%、ポリオレフィン樹脂(B)は20〜30重量%およびポリオレフィン樹脂(C)は55〜70重量%がより好ましい。なお黒鉛を5〜20重量%配合すると成形品の表面固有抵抗値を10の9乗以下に低減できる場合がある。かかる場合成形品に対するほこりの付着を防止できる効果が得られる。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、各種添加剤を配合できる。
【0024】
各種添加剤は、成形品を使用する用途等により適宜選択でき、熱安定剤、可塑剤、分散剤、相溶化剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤、ポリエチレンワックス等の滑剤、顔料、無機充填剤(タルク、マイカ、クレー、ワラストナイト、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、アルミナ、セラミック粒子、セラミック繊維、アラミド粒子、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、グラファイト、カーボンブラックおよび各種ウイスカーなど)、発泡剤( 有機系、無機系、マイクロカプセル系など)、難燃剤(ハロゲン系、リン酸エステル系、金属塩系、赤リン、金属水和物など)難燃助剤、摺動剤(PTFE粒子など)、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、帯電防止剤、流動改質剤、結晶核剤、無機及び有機の抗菌剤、グラフトゴムに代表される衝撃改質剤、赤外線吸収剤およびフォトクロミック剤などを、単独または2種類以上を組み合わせて配合できる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、黒鉛(A)、ポリオレフィン樹脂(B)およびポリオレフィン樹脂(C)を溶融混錬することで製造できる。前記溶融混錬は、バンバリーミキサーのような回分式混練機、ならびに二軸押出機、単軸押出機およびローター型二軸混練機等の公知の混錬装置を使用できる。また、樹脂組成物の形態は、限定されないが、ペレット状、パウダー状およびビーズ状が一般的である。
【0026】
本発明の成形品は、前記樹脂組成物を溶融・混練し、成形機を使用して得ることができる。成形方法は、公知の方法が使用できる。例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ成形、インフレーション成形、圧縮成形、パイプ押出成形、ラミネート成形、および真空成形などが挙げられる。
【0027】
本発明の成形品は、例えば、地中熱交換用熱交換パイプや温泉設備における高温排水熱回収用熱交換パイプ、地熱発電用熱交換パイプ、輻射式冷暖房用熱交換パイプ、容器および包装材[食料品(生鮮食料品、加工食料品、清涼飲料等)用容器および包装材、雑貨(食器、玩具、文房具、電気部品、家電品、家具、嗜好品等)用容器および包装材、繊維製品(衣料品、靴、寝具、カーペット、マット、ちり紙、新聞、ハンカチ、タオル等)用容器および包装材、薬品(工業用薬品、医薬品等)用容器および包装材、各種産業用被覆材(農業用温室ハウス被覆材、自動車用表面保護被覆シート等)、その他用途(レジ袋、買い物袋、ゴミ袋等)用容器および包装材]、自動車用部品[インスツルメントパネル、ドアトリム、ピラー等の内装材、バンパー等の外装材、ガソリンタンク、バルブ等の内部部品等]、家電製品[テレビ、録画再生機(ビデオ、ハードディスク、DVD、BD等)、チューナー、パラボラアンテナ、アイロン、ヘアードライヤー、シェーバー、電動歯ブラシ、ヘアアイロン、フェイスケア機器、ヘルスメーター、布団乾燥機、洗濯機、冷蔵庫、ワインセラー、炊飯器、電子レンジ、電子天秤、食器乾燥機、フードプロセッサー、ホットプレート、電気ポット、コーヒーメーカー、IH調理器、生ゴミ処理機、掃除機、時計、電話機、照明機器、換気扇、エアコン、扇風機、温風器、除湿器、加湿器、空気清浄機、マイナスイオン発生器、マッサージチェア、フットマッサージャー、健康器具、電動工具、家庭用ゲーム機およびゲームソフト、音響部品、ビデオカメラ、オーディオ機器、電子楽器、リモコン、充電器などの]の筐体および内部部品等、パソコン機器[パソコン本体、ディスプレー(CRT、液晶、プラズマ、プロジェクターおよび有機EL等)、ノートパソコン、プリンター、記録媒体ドライブ(ハードディスク、MO、メモリーカード、CD、DVD、BD、フレキシブルディスク等)、記録媒体(USBメモリー、ICカード等)筐体、マウスなどの筐体および内部部品]の筐体および内部部品等、小型携帯機器[無線機、携帯電話、PHS、PDA、スマートフォン、携帯ゲーム機およびゲームソフト、テレビ、ナビゲーション機器、GPS機器、ヘッドホンステレオ、光学カメラ、デジタルカメラ電子辞書および計算機、リチウムイオン充電器などの筐体および内部部品等]の筐体および内部部品等、事務用機器[コピー、ファクシミリ、スキャナおよびそれらの複合機、シュレッダー、紙折機、電子黒板、タイムレコーダー、ネットワークカメラ、喫煙カウンター、ラベルライター、電子レジスタ、電子チェックライター、ラミネーターおよび製本機など]の筐体および内部部品等、遊技機[アーケード型ゲーム機、パチンコ、スロットマシーンなど]の筐体および内部部品等、医療機器[ドライイメージャー、メディカルプリンター、メディカルレコーダー、メディカルカメラ、X線テレビシステム、CTスキャナシステム、マンモグラフシステム、血管撮影システムおよび超音波診断システムなどの筐体および内部部品等]、電子部品[各種ケース、各種ホルダー、カバー、冷却ファン、ギヤー、センサー、バルブ、コネクター、ソケット、トランスボビン、抵抗器、ボタン、スイッチ、ハンドル、分電盤、ブレーカー、コンデンサー、コンセント、モーター、トランス、チューナー、電磁開閉器、光ピックアップ、発振子、端子板、変成器、プラグ、タイマーおよびプリント配線板等]、搬送材[コンテナ、フレキシブルコンテナ、台車、トレー、キャリアテープ、パレット、シートスキッド(自動車シート搬送用)、ストレッチフィルム(荷崩れ防止用)、結束バンド、発泡緩衝材、エアーキャップ(緩衝材)など]、生活資材用成形品[家具(椅子、机、ハンガー等)、住宅等の建材(玄関・室内等の各種ドア、内・外壁材、天井材、屋根材、タイル等)、趣味用品[スポーツ用品(ラケット、スキー板、スノーボード等)、園芸用品(プランター等)、アウトドア用品(釣り竿等)等]などの用途で使用することができる。
【0028】
これらの中でも地中熱交換用熱交換パイプや温泉設備における高温排水熱回収用熱交換パイプ、地熱発電用熱交換パイプ、輻射式冷暖房用熱交換パイプ等のヒートポンプ用パイプ等の成形品が好ましい。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下「重量部」は「部」、「重量%」は「%」と記載する。
【0030】
以下の実施例及び比較例で用いた原料を説明する。
【0031】
黒鉛(A)の性状を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
<ポリオレフィン樹脂(B)>
B1:直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、密度885kg/m3、MFR=5g/10min、融点85℃)
B2:直鎖上低密度ポリエチレン(LLDPE、密度885kg/m3、MFR=10g/10min、融点85℃)
【0034】
<ポリオレフィン樹脂(C)>
C1:高密度ポリエチレン樹脂(HDPE、密度949kg/m3、MFR=0.04g/10min、融点131℃)
C2:高密度ポリエチレン樹脂(HDPE、密度945kg/m3、MFR=1g/10min、融点129℃)
C3:低密度ポリエチレン樹脂(LDPE、密度920kg/m3、MFR=7g/10min、融点120℃)
【0035】
[実施例1]
〔樹脂組成物の製造〕
黒鉛(A−2)10部と、ポリオレフィン樹脂(B−1)20部と、ポリオレフィン樹脂(C−1)70部を、ヘンシェルミキサーに投入し、温度20℃、時間3分の条件でプレミックスした後、スクリュー直径30mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=38〜42の押出機に供給し、回転数200rpm、設定温度200℃の条件で溶融混練し、押し出したものをペレタイザーでカットしてペレット状の樹脂組成物を得た。
【0036】
〔評価方法〕
得られた樹脂組成物を使用して下記の評価項目について試験を行った。その結果を表4に示す。
【0037】
〔熱伝導率〕
樹脂組成物を熱プレスシート成形機に投入し200℃に加熱して、縦40mm・横40mm・厚み1.5mmのシートを8枚作製し、ホットディスク放熱物性測定装置(TPS−500 京都電子工業製)を使用して、直径7mmφのセンサーの上下にシートを4枚ずつ重ね、熱伝導率(単位:W/m・K)を測定した。熱伝導率が高い程、熱交換効率、放熱性が良好である。
【0038】
〔引張降伏点強度〕
樹脂組成物を熱プレスシート成形機に投入し200℃に加熱して、縦200mm・横200mm・厚み1.5mmのプレスシートを作成後、2号ダンベル型に打抜いて試験片とした。引張り速度100mm/分の条件で、JIS K−7127に準じて、引張降伏点強度を測定した。また、前記樹脂組成物から黒鉛を除いて作成した試験片を前記方法により測定した引張破壊点伸び率を100としたときの、樹脂組成物の引張降伏点強度の割合を保持率として求めた。引張降伏点強度の保持率が高い程、成形品を使用・保管の際に折り曲がり変形や亀裂発生を防止することができる。引張降伏点強度保持率は50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましい。
【0039】
〔引張破壊点伸び率〕
樹脂組成物を熱プレスシート成形機に投入し200℃に加熱して、縦200mm・横200mm・厚み1.5mmのプレスシートを作成後、2号ダンベル型に打抜いて試験片とした。引張り速度100mm/分の条件で、JIS K−7127に準じて、引張破壊点伸び率を測定した。また、前記樹脂組成物から黒鉛を除いて作成した試験片を前記方法により測定した引張破壊点伸び率を100としたときの、樹脂組成物の引張破壊点伸び率の割合を保持率として求めた。引張破壊点伸び率の保持率が高い程、伸長性が良好である。引張降伏点強度保持率は30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0040】
〔成形加工性〕
樹脂組成物をスパイラルダイパイプ成形機(東洋精機製)に投入し、成形温度200℃、スクリュー回転数80rpmで溶融し押出成形することで、直径20mm、厚さ1.5mmのパイプ状の成形品を得た。得られたパイプ状の成形品0.5mについて、押出方向(長さ方向)100mm毎に、厚みの変化量を測定し、以下の基準で成形加工性を評価した。なお評価基準AおよびBが実用レベルである。
A:パイプの厚みの最大変化量が、0.2mm未満 良好
B:パイプの厚みの最大変化量が、0.2mm〜0.5mm未満 実用可
C:パイプの厚みの最大変化量が、0.5mm以上 実用不可
【0041】
〔表面平滑性〕
樹脂組成物をスパイラルダイパイプ成形機(東洋精機製)に投入し、成形温度200℃、スクリュー回転数80rpmで溶融し押出成形することで、直径20mm、厚さ1.5mmのパイプ状の成形品を得た。
得られたパイプの表面を観察し、以下の基準で表面平滑性を評価した。なお評価基準AおよびBが実用レベルである。
A:パイプの表面が平滑である 良好
B:パイプの表面に高さ0.2mm以上の凹凸がある 実用可
C:パイプの表面に穴がある 実用不可
【0042】
〔表面固有抵抗値〕
樹脂組成物を熱プレスシート成形機に投入し200℃に加熱して、縦200mm・横200mm・厚み1.5mmのプレスシートを作成後、23℃、50%RHの環境下で24時間静置後、デジタル超高抵抗/微少電流計(アドバンテスト社製)を用いて表面固有抵抗値を測定した。
【0043】
[実施例2〜20、比較例1〜9]
実施例1の原料を表2および表3に記載した組成に変更した以外は、実施例1と同様に行うことでペレット状の樹脂組成物を作成し、実施例1と同様に評価した。結果を表4、表5に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
表4および表5の結果から、実施例1〜20は、黒鉛を含有するにもかかわらず成形加工性が優れ、成形品の平滑性が優れる機械物性の良好な成形体が得られた。さらに表面固有抵抗値が10の9乗以下の成形品は、成形品に対するほこりの付着を防止する効果も得られた。一方、比較例1〜25の樹脂組成物を使用した成形品は、熱伝導性、成形加工性、機械強度を全て満たすものがなかった。