(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾斜支点形成用部材及びストッパ部材はそれぞれ、前記張出部をその外周側から覆うよう複数のブロックに分割形成され且つ前記第一部材と第二部材に対し締結部材により着脱自在に取り付けられる請求項1又は2記載の免震構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、多数の柱が設けられる立体倉庫の各柱の下端に積層ゴムによる免震構造を備えた場合には、基礎の増設が必要なことや積層ゴムが比較的高価であることから立体倉庫の設備コストが増加する問題がある。又、特許文献2においても、前記第1水平部材と第2水平部材を設け、更に、前記第1水平部材と第2水平部材とを接続する粘弾性体を設ける必要があるために、構造が複雑となって立体倉庫の設備コストが増加する問題がある。更に、特許文献2では、柱を免震する方向が前記第1水平部材と第2水平部材がスライドする方向である長手方向に限定されてしまい、このスライドの方向と直交する方向に対しては免震できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、簡単な構成で構造物に作用する揺れを効果的に免震できる免震構造及び該免震構造を備えた免震装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第一部材と第二部材の間に傾斜自在に配設され且つ両端部に張出部が形成された免震柱と、
該免震柱が傾き始める際の支点を形成する傾斜支点形成用部材と、
前記免震柱が傾斜した際に前記張出部と当接して免震柱の傾斜角度を制限するストッパ部材とを備え、
前記傾斜支点形成用部材及びストッパ部材はそれぞれ、前記張出部をその外周側から覆うよう前記第一部材と第二部材に対し取り付けられることを特徴とする免震構造にかかるものである。
【0008】
前記免震構造において、前記ストッパ部材は、傾斜した前記免震柱が自重で復帰できる傾斜角度に対応する位置で前記張出部と当接することが好ましい。
【0009】
前記傾斜支点形成用部材及びストッパ部材はそれぞれ、前記張出部をその外周側から覆うよう複数のブロックに分割形成され且つ前記第一部材と第二部材に対し締結部材により着脱自在に取り付けられることが好ましい。
【0010】
前記締結部材は、構造物の第一部材と第二部材に取り付けられる既設のボルト及びナットが兼用されることが好ましい。
【0011】
前記免震柱の張出部と前記第一部材、及び前記免震柱の張出部と前記第二部材との間にシート状弾性材を介在させることが好ましい。
【0012】
前記第一部材と第二部材は、免震する構造物の一部とすることができる。
【0013】
又、本発明は、上記の免震構造と、
免震する構造物に対して取り付け部材となる二つの板状部材とを備え、
前記第一部材と第二部材は、前記板状部材であることを特徴とする免震装置にかかるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の免震構造及び該免震構造を備えた免震装置によれば、簡単な構成で構造物に作用する揺れを効果的に免震できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1〜
図4は本発明の免震構造及び該免震構造を備えた免震装置の第一実施例である。
【0018】
図4(a)及び
図4(b)は本発明の免震構造及び該免震構造を備えた免震装置を適用する構造物の一例である立体倉庫を示しており、構造物としての立体倉庫100は、複数の鋼鉄製の柱1と複数段の鋼鉄製の梁2を備えることにより複数のラック3(棚)が立体的に組み立てられた構成を有している。立体倉庫100は、スタッカークレーン4を挟むように立設され、該スタッカークレーン4の走行方向に沿って延びる長さを有しており、スタッカークレーン4の走行方向と直交する方向には格納される荷の大きさに対応した狭い幅を有している。前記立体倉庫100を構成する複数の柱1は、ラック3に格納される荷の重量を支持するために高い強度を有している。
【0019】
そして、
図4の立体倉庫100を構成する複数の柱1に本発明の免震構造5を設ける。該免震構造5は、
図4に示す如く、立体倉庫100に備えられる柱1の同一高さ位置に設けられる。前記免震構造5は、該免震構造5より上部の立体倉庫100全体がロッキングする挙動を発生させないために、上から1/3〜1/2程度の高さ位置に設置することが好ましい。このように、前記免震構造5を立体倉庫100の上部に設置しても、免震の効果により、免震構造5より上側の揺れが小さくなることで、結果的に免震構造5より下側の構造物の揺れも小さくなることが本発明者等の研究により判明している。因みに、
図1〜
図3には、免震する構造物とは独立してユニット化された後述する免震装置5Xを組み込んだ免震構造5を示している。
【0020】
前記柱1は、
図1及び
図2に示す如く、上下の端部に水平フランジ6aと水平フランジ6bを有した複数の柱部材7によって構成されている。上下に配設される二本の前記柱部材7の水平フランジ6a,6bの間には、傾くことで立体倉庫100の柱1を免震する免震柱8が板状部材9a,9bを介して傾斜自在に配設されている。前記免震柱8の上下両端部には張出部としてのフランジ10が形成されている。前記柱部材7及び免震柱8は、水平断面が矩形形状を有する中空の角型鋼材である。尚、柱部材7及び免震柱8は、角型鋼材に限定されるものではなく、H型鋼材、I型鋼材、Z型鋼材、円筒型鋼材であっても良い。
【0021】
前記免震柱8のフランジ10は正方形としているがこれに限定されず、例えば、円形でも良い。又、フランジ10は、長辺と短辺を有する長方形状、長軸と短軸を有する楕円も含み、更に又、一部が切り欠きされたものも含む。
【0022】
前記フランジ10の水平方向の変位は、前記水平フランジ6a,6bに対し板状部材9a,9bを介して取り付けられる傾斜支点形成用部材11によって拘束されると共に、前記免震柱8が傾き始める際の支点Eが前記傾斜支点形成用部材11によって形成されるようにしてある。
【0023】
前記傾斜支点形成用部材11には、免震柱8の傾斜角度を制限するストッパ部材12を取り付けることにより、前記免震柱8が傾斜した際に該免震柱8が倒れずに自重で元の位置に復帰できる限界傾斜角度位置より傾斜角度が小さい位置で前記フランジ10を拘束するようにしてある。
【0024】
前記傾斜支点形成用部材11及びストッパ部材12はそれぞれ、前記フランジ10をその外周側から覆うよう複数のブロック11A,11B及びブロック12A,12Bに分割形成され、前記水平フランジ6a,6bに対し締結部材13(ボルト及びナット)及び補助締結部材14(ボルト)により着脱自在に取り付けられるようにしてある。
【0025】
ここで、前記板状部材9a,9bは、
図3(c)に示す如く、前記水平フランジ6a,6bと合致する四角形状の金属板材で、その四隅部に前記締結部材13の貫通孔9cが穿設され、両幅端部に二個ずつ計四個の前記補助締結部材14の先端部を螺合させるネジ孔9dが刻設されている。
【0026】
前記傾斜支点形成用部材11は、
図3(b)に示す如く、平面形状がコの字状の金属板材を二個一組としてその開放端側を向い合せるよう設置されるもので、その設置時に前記板状部材9a,9bの貫通孔9c及びネジ孔9dと合致する位置に前記締結部材13の貫通孔11a及び前記補助締結部材14の貫通孔11bが穿設されている。又、前記傾斜支点形成用部材11のコの字の内周面側には、前記フランジ10の傾斜を妨げないようにするためのテーパ面11cが形成されている。尚、前記免震柱8を傾斜させるためのテーパ面11cの代わりに、前記フランジ10と傾斜支点形成用部材11の間に微小な隙間を設けても良い。
【0027】
前記ストッパ部材12は、
図3(a)に示す如く、前記傾斜支点形成用部材11と同じく、平面形状がコの字状の金属板材を二個一組としてその開放端側を向い合せるよう設置されるものである。前記傾斜支点形成用部材11と異なる点として、前記ストッパ部材12は、コの字の内周面側が前記傾斜支点形成用部材11より免震柱8の外周に近づく方向へ張り出すことにより、前記免震柱8が傾斜した際にフランジ10を拘束できるようにしてある。又、前記ストッパ部材12は、その設置時に前記板状部材9a,9bの貫通孔9c及びネジ孔9d、並びに前記傾斜支点形成用部材11の貫通孔11a,11bと合致する位置に前記締結部材13の貫通孔12a及び前記補助締結部材14の貫通孔12bが穿設されている。
【0028】
本第一実施例の場合、前記締結部材13は、前記水平フランジ6a,6bに取り付けられる既設のボルト及びナットが兼用されるようにしてある。尚、前記補助締結部材14は、ストッパ部材12の貫通孔12b及び傾斜支点形成用部材11の貫通孔11bを貫通して、前記板状部材9a,9bのネジ孔9dに螺合し、平面形状がコの字状の金属板材で形成されたストッパ部材12の開放端部が、前記免震柱8の傾斜時にフランジ10の接触による荷重を受けた際に傾斜支点形成用部材11から離反する方向へ変形することを防ぐために設けられている。但し、前記ストッパ部材12が充分な剛性を有している場合、前記補助締結部材14は必ずしも設ける必要はない。
【0029】
又、前記水平フランジ6a,6bに取り付けられる板状部材9a,9bとフランジ10との間には、薄いゴム等で形成されるシート状弾性材15が介在されるようにしてある。
【0030】
そして、本第一実施例において、前記板状部材9a,9bは、免震する構造物に対する取り付け部材としての第一部材及び第二部材となるものである。つまり、前記免震柱8と傾斜支点形成用部材11とストッパ部材12とを上下方向から板状部材9a,9bで挟み且つ前記補助締結部材14を締め付けることにより、免震する構造物とは独立してユニット化された免震装置5Xを構成し、該免震装置5Xを前記水平フランジ6a,6bの間に組み込んで免震構造5を構成してある。前記補助締結部材14は、前記ストッパ部材12の変形防止機能と、前記免震装置5Xを一つのユニットとして一体化する機能とを兼ね備えたものとなっている。又、前記免震装置5Xを組み込んだ免震構造5では、免震柱8の平面形状を正方形としたフランジ10を構成する辺を立体倉庫100の幅方向と奥行き方向に沿わせるようにして配置している。
【0031】
次に、上記第一実施例の作用を説明する。
【0032】
地震が発生していない平常時には、
図1(a)及び
図2に示す如く、免震柱8は鉛直に保持され、該免震柱8の上側の柱1を構成する柱部材7に掛かる荷重は、水平フランジ6b及び板状部材9bから上下両端にフランジ10が設けられた免震柱8と板状部材9a及び水平フランジ6aとを介して下側の柱部材7に伝達される。但し、
図1(a)及び
図2において、中小規模の地震の発生により柱1に水平方向の比較的小さい加速度の揺れが発生した場合にも、前記免震柱8は鉛直に保持される。
【0033】
即ち、柱1に掛る荷重によって、前記柱部材7の水平フランジ6a,6bに対し免震柱8のフランジ10は板状部材9a,9b及びシート状弾性材15を介して圧着される。このとき、柱部材7の水平フランジ6a,6bには、免震柱8のフランジ10の外周を取り囲む傾斜支点形成用部材11が板状部材9a,9bを介して設けられているので、免震柱8が水平方向へ移動することは防止される。従って、中小規模の地震によって、水平方向に比較的小さい加速度の揺れが発生しても、免震柱8は鉛直に保持される。これは、水平方向の加速度により免震柱8を傾けようとするモーメントが、免震柱8によって支持されている鉛直方向の荷重により免震柱8を鉛直状態に保持しようとするモーメントを超えない限り、免震柱8は傾くことができないトリガ機能によるものである。
【0034】
ここで、シート状弾性材15にゴム材料を用いることとした場合、該ゴム材料は金属に比べて体積変化が少ない非圧縮材料であり、圧縮荷重を受けると外側に張り出そうとするが、上下面を拘束されているために変形することができず、結果的に静的には高い剛性で圧縮荷重を支持することができる。
【0035】
一方、大規模な地震の発生によって、
図1(b)に示すように、水平左右方向へ大きな加速度の揺れが発生した場合、上側の柱部材7が慣性によりその場にとどまろうとするのに対し、下側の柱部材7は水平方向へ相対移動した状態となる。このとき、免震柱8のフランジ10は、傾斜支点形成用部材11に当接して移動することができないが、前記傾斜支点形成用部材11のコの字の内周面側にはテーパ面11cが形成されているため、前記柱部材7の水平フランジ6a,6bに対し板状部材9a,9bを介して配設される免震柱8のフランジ10にトリガ荷重の範囲を超えた負荷が作用した場合には、
図1(b)に示す如く、免震柱8はフランジ10の左右の辺を支点Eとして傾きを開始する。このように免震柱8が傾く免震の効果により、水平左右方向への大きな地震力の伝達が低減される。
【0036】
ここで、前記傾斜支点形成用部材11には、ストッパ部材12が取り付けられているため、前記免震柱8が過大に傾斜しようとしても、前記ストッパ部材12にフランジ10が接触することにより、免震柱8が限界傾斜角度位置を超えて傾斜することが阻止される。この結果、免震柱8が倒れる心配はなく、元の位置に確実に復帰可能となる。
【0037】
因みに、前記免震柱8が傾斜して揺動する際には、水平フランジ6a,6bに取り付けられた板状部材9a,9bに対しフランジ10が開閉されるような動作が起こり、接触荷重が発生する。前記フランジ10の開閉動作に対しては、前記水平フランジ6a,6bに取り付けられた板状部材9a,9bとフランジ10との間に介在されたシート状弾性材15が緩衝材として作用するため、接触荷重を緩和することができる。尚、前記傾斜支点形成用部材11及びストッパ部材12とフランジ10との間にもゴム等の緩衝材を設置することで、前記傾斜支点形成用部材11及びストッパ部材12に対するフランジ10の接触時の接触荷重を抑制することができる。又、ゴム等のシート状弾性材15のばね剛性を利用すれば、免震柱8の復元力を調整することが可能であり、固有周期を調整することもできる。ゴム材料は安価であるため、低コストで接触荷重を抑制することができる。又、ゴム材料は自由表面が少ないほど劣化も少ないので、水平フランジ6a,6bに取り付けられた板状部材9a,9bとフランジ10との間に介在させて使用すれば長期間交換することなく使用することが可能である。前記シート状弾性材15は、ゴム材料の代わりに発泡材料を利用することもできる。この場合、ゴム材料に比べて復元力は小さくなるが、接触荷重の抑制効果を高めることが期待できる。又、シート状弾性材15は、免震装置5Xを組み込んだ免震構造5の必須の構成ではなく、免震構造5の構成から外しても良い。
【0038】
尚、水平奥行き方向に大きな加速度の揺れが発生した場合にも、同様にして免震柱8が奥行き方向へ傾くことにより、水平奥行き方向の大きな加速度の揺れは免震される。このように、簡単な構成の免震構造5を備えることによって、立体倉庫100の柱1に作用する揺れを、水平二軸方向で効果的に免震することが可能となる。
【0039】
更に、前記締結部材13は、前記水平フランジ6a,6bに取り付けられる既設のボルト及びナットが兼用されるようにしてあるため、免震構造5を取り付けるための部品点数を削減することが可能となるばかりでなく、立体倉庫100側の水平フランジ6a,6bも含めてボルト及びナットの共締めを行うことが可能となる。これにより、ボルト及びナットの材料費だけでなく立体倉庫100の建設費や改造費も含めてコスト的なメリットがきわめて大きくなる。
【0040】
しかも、前記ストッパ部材12及び傾斜支点形成用部材11は、前記フランジ10をその外周側から覆うよう複数のブロック12A,12B及びブロック11A,11Bに分割形成され、
図3(a)及び
図3(b)に示す如く、平面形状がコの字状の金属板材を二個一組としてその開放端側を向い合せるよう設置されるものである。このため、大規模な地震の発生後、前記水平フランジ6a,6bから締結部材13(ボルト及びナット)及び補助締結部材14(ボルト)を取り外せば、前記ストッパ部材12のブロック12A,12B及び傾斜支点形成用部材11のブロック11A,11Bを水平方向へ互いに離反させるようにして取り外すことができる。この結果、免震柱8を水平方向へ引き抜くようにして取り外すことができるため、点検やメンテナンスを容易に実施でき、作業効率も良くなる。尚、前記ストッパ部材12のブロック12A,12Bのいずれか一方、並びに傾斜支点形成用部材11のブロック11A,11Bのいずれか一方だけを取り外すことにより、免震柱8を取り外すことも可能である。
【0041】
又、第一実施例の免震装置5Xは、工場で組み立てられたものを構造物としての立体倉庫100の途中に配置して、前記板状部材9a,9bを構造物の一部である水平フランジ6a,6bに固定するだけで容易に構造物に免震機能を持たせることができる。更に、前記補助締結部材14は、前記ストッパ部材12の変形防止機能と、前記免震装置5Xを一つのユニットとして一体化する機能とを兼ね備えたものとなっているため、部品点数を削減する上で有効となる。
【0042】
尚、前記板状部材9a,9bは必ずしも設ける必要はなく、水平フランジ6a,6bに補助締結部材14のネジ孔9dを穿設して前記傾斜支点形成用部材11及びストッパ部材12を板状部材9a,9bを介さずに直接取り付けるようにしても良い。この場合、前記水平フランジ6aが免震する構造物の一部である第一部材となり、前記水平フランジ6bが免震する構造物の一部である第二部材となり、第一部材としての水平フランジ6aと第二部材としての水平フランジ6bとの間に傾斜自在に配設される免震柱8と、傾斜支点形成用部材11と、ストッパ部材12とから免震構造5が構成される形となる。このようにしても、既存の構造物に免震機能を持たすことができる。
【0043】
又、前記免震構造5や免震装置5Xは、免震する構造物としての立体倉庫100の垂直方向に複数段配置するようにしても良い。このように配置すると、単段で免震する場合よりも、より大きな揺れを吸収できる。
【0044】
こうして、簡単な構成で立体倉庫100に作用する揺れを効果的に免震でき且つ免震柱8の過大な傾斜を確実に防止し得る。
【0045】
図5及び
図6は本発明の免震構造及び該免震構造を備えた免震装置の第二実施例であって、図中、
図1〜
図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は
図1〜
図4に示す第一実施例と同様である。本第二実施例では、
図5及び
図6に示す如く、前記傾斜支点形成用部材11及びストッパ部材12の分割形成されるブロック11A,11B及びブロック12A,12Bの平面形状をL字状としている。
【0046】
前記傾斜支点形成用部材11は、
図6(b)に示す如く、平面形状がL字状の金属板材を二個一組として矩形形状の枠となるよう向い合せて設置されるもので、その設置時にL字の縦辺の中間位置及び横辺の中間位置に前記締結部材13の貫通孔11a及び前記補助締結部材14の貫通孔11bが穿設されている。又、前記傾斜支点形成用部材11のL字の内周面側には、前記フランジ10の傾斜を妨げないようにするためのテーパ面11cが形成されている。尚、前記免震柱8を傾斜させるためのテーパ面11cの代わりに、前記フランジ10と傾斜支点形成用部材11の間に微小な隙間を設けても良い。
【0047】
前記ストッパ部材12は、
図6(a)に示す如く、前記傾斜支点形成用部材11と同じく、平面形状がL字状の金属板材を二個一組として矩形形状の枠となるよう向い合せて設置されるものである。前記傾斜支点形成用部材11と異なる点として、前記ストッパ部材12は、L字の内周面側が前記傾斜支点形成用部材11より免震柱8の外周に近づく方向へ張り出すことにより、前記免震柱8が傾斜した際にフランジ10を拘束できるようにしてある。又、前記ストッパ部材12は、その設置時に前記傾斜支点形成用部材11の貫通孔11a,11bと合致する位置に前記締結部材13の貫通孔12a及び前記補助締結部材14の貫通孔12bが穿設されている。
【0048】
本第二実施例の場合も、第一実施例と同様、前記締結部材13は、前記水平フランジ6a,6bに取り付けられる既設のボルト及びナットが兼用されるようにしてある。
【0049】
又、前記水平フランジ6a,6bとフランジ10との間には、薄いゴム等で形成されるシート状弾性材15が介在されるようにしてある。
【0050】
尚、本第二実施例の場合、第一実施例に示す板状部材9a,9bはなく、第一部材としての水平フランジ6aと第二部材としての水平フランジ6bとの間に免震柱8が傾斜自在に配設され、且つ第一部材としての水平フランジ6aと第二部材としての水平フランジ6bにそれぞれ前記傾斜支点形成用部材11及びストッパ部材12が直接取り付けられ、免震構造5が構築されている。
【0051】
第二実施例においては、大規模な地震の発生によって、
図5に示すように、水平左右方向へ大きな加速度の揺れが発生した場合、上側の柱部材7が慣性によりその場にとどまろうとするのに対し、下側の柱部材7は水平方向へ相対移動した状態となる。このとき、免震柱8のフランジ10は、傾斜支点形成用部材11に当接して移動することができないが、前記傾斜支点形成用部材11のL字の内周面側にはテーパ面11cが形成されているため、トリガ荷重の範囲を超えた負荷が免震柱8に作用した場合には、
図5に示す如く、免震柱8はフランジ10の左右の辺を支点Eとして傾きを開始する。このように免震柱8が傾く免震効果により、水平左右方向への大きな地震力は低減される。
【0052】
ここで、前記傾斜支点形成用部材11には、ストッパ部材12が取り付けられているため、前記免震柱8が過大に傾斜しようとしても、前記ストッパ部材12にフランジ10が接触することにより、免震柱8が限界傾斜角度位置を超えて傾斜することが阻止される。この結果、免震柱8が倒れる心配はなく、元の位置に確実に復帰可能となる。
【0053】
因みに、前記免震柱8が傾斜して揺動する際には、水平フランジ6a,6bに対しフランジ10が開閉されるような動作が起こり、接触荷重が発生する。前記フランジ10の開閉動作に対しては、前記水平フランジ6a,6bとフランジ10との間に介在されたシート状弾性材15が緩衝材として作用するため、接触荷重を緩和することができる。尚、前記傾斜支点形成用部材11及びストッパ部材12とフランジ10との間にもゴム等の緩衝材を設置することで、前記傾斜支点形成用部材11及びストッパ部材12に対するフランジ10の接触時の接触荷重を抑制することができる。又、ゴム等のシート状弾性材15のばね剛性を利用すれば、免震柱8の復元力を調整することが可能であり、固有周期を調整することもできる。ゴム材料は安価であるため、低コストで高周波振動を抑制することができる。又、ゴム材料は自由表面が少ないほど劣化も少ないので、水平フランジ6a,6bとフランジ10との間に介在させて使用すれば長期間交換することなく使用することが可能である。前記シート状弾性材15は、ゴム材料の代わりに発泡材料を利用することもできる。この場合、ゴム材料に比べて復元力は小さくなるが、接触荷重の抑制効果を高めることが期待できる。
【0054】
更に、第二実施例の場合、前記締結部材13は、前記水平フランジ6a,6bに取り付けられる既設のボルト及びナットが兼用されるようにしてあるため、免震構造5を取り付けるための部品点数を削減することが可能になると共に、立体倉庫100側の水平フランジ6a,6bも含めてボルト及びナットの共締めを行うことが可能となる。これにより、ボルト及びナットの材料費だけでなく立体倉庫100の建設費や改造費も含めてコストダウンを図る上で有効となる。
【0055】
しかも、前記ストッパ部材12及び傾斜支点形成用部材11は、前記フランジ10をその外周側から覆うよう複数のブロック12A,12B及びブロック11A,11Bに分割形成され、
図6(a)及び
図6(b)に示す如く、平面形状がL字状の金属板材を二個一組として矩形形状の枠となるよう向い合せて設置されるものである。このため、第一実施例と同様、大規模な地震の発生後、前記水平フランジ6a,6bから締結部材13(ボルト及びナット)及び補助締結部材14(ボルト)を取り外せば、前記ストッパ部材12のブロック12A,12B及び傾斜支点形成用部材11のブロック11A,11Bを水平方向へ互いに離反させるようにして取り外すことができる。この結果、免震柱8を水平方向へ引き抜くようにして取り外すことができるため、点検やメンテナンスを更に容易に実施でき、作業をより効率良く行える。
【0056】
第二実施例の免震構造5において、第一部材としての水平フランジ6aと第二部材としての水平フランジ6bは、免震する構造物の一部となっている。これによって、構造物の一部である第一部材としての水平フランジ6aと第二部材としての水平フランジ6bとの間に、免震柱8を配置しつつ、傾斜支点形成用部材11とストッパ部材12を取り付けるだけで既存の構造物に免震機能を持たすことができる。
【0057】
尚、第二実施例の免震構造5に対して第一実施例と同じように板状部材9a,9bを設けることにより、免震装置5Xを構成し、工場で組み立てられた免震装置5Xを構造物としての立体倉庫100の途中に配置して、前記取り付け部材としての板状部材9a,9bを構造物の一部である水平フランジ6a,6bに固定するだけで容易に構造物に免震機能を持たせられるようにしても良いことは言うまでもない。
【0058】
こうして、第二実施例においても、第一実施例と同様、簡単な構成で立体倉庫100に作用する揺れを効果的に免震でき且つ免震柱8の過大な傾斜を確実に防止し得る。
【0059】
以上に説明した立体倉庫100は、免震柱8のフランジ10の形状を正方形とし、そのフランジ10を構成する辺を立体倉庫100の幅方向と奥行き方向に沿うよう配置する構成で説明したがこれに限定されない。例えば、免震構造5を構成する免震柱8のフランジ10は、長辺と短辺を有する長方形とし、長辺を立体倉庫100の奥行方向に沿わせ、短辺を立体倉庫100の幅方向に沿わせるように配置しても良い。このように配置すると、立体倉庫100の奥行方向よりも幅方向の方が、免震機能が作用し易くなり、幅方向の揺れに伴う荷の落下を効果的に防ぐことができる。又、免震構造5は、免震柱8のフランジ10の長辺を想定される揺れを考慮して充分な長さとして、立体倉庫100の幅方向のみを免震する一軸免震とすることもできる。
【0060】
尚、本発明の免震構造及び該免震構造を備えた免震装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、立体倉庫の柱以外にボイラ鉄骨、立体パーキング、荷役設備等の構造物を構成する柱に適用できること、前記傾斜支点形成用部材及びストッパ部材の分割形成されるブロックの平面形状はコの字状やL字状に限らず種々の形状を選定し得ること等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。