(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エレベータの運転開始時に、前記出力電流に基づいてその運転中に回生運転が行われる期間を計算し、回生電流が発生すると予測された期間のみコンバータを運転させることを特徴とする請求項1記載のエレベータ用電力変換装置。
エレベータの運転中、常に、インバータの出力電流を検出し、その検出された出力電流が閾値以下になった場合のみコンバータを運転することを特徴とする請求項1または2記載のエレベータ用電力変換装置。
エレベータの運転中、常に、インバータの出力電流を検出し、その検出された出力電流が閾値以下になった場合のみコンバータを運転することを特徴とする請求項4または5記載のエレベータ用電力変換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エレベータの運転は、必ず上昇と下降を繰り返すため、基本的には駆動運転(電力消費)と回生運転(電力回生)を繰り返す。そのため、必ずしもコンバータ2を運転させる必要はない。
【0007】
[ケース1]の場合は、通常、エレベータの運転に伴ってコンバータ2も必ず運転させているため、その分、主回路素子(例えば、IGBT)の駆動やスイッチング損失発生のために電力ロスが発生し、効率が低下する。
【0008】
ここで述べる効率は、1回の昇降における運転効率ではなく、エレベータが何回(例えば、1日あたり)も昇降を繰り返した場合の総合的な効率である。
【0009】
以上示したようなことから、エレベータ用電力変換装置において、効率を向上させることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、モータを運転および制御するモータ駆動用インバータと、電力回生運転時に商用電源へ電力を回生する電力回生用コンバータと、エレベータ内の荷重を検出し、荷重センサ信号を出力する荷重センサと、を備え、その荷重センサ信号に基づいて、荷重分トルク電流を算出するエレベータ用電力変換装置であって、エレベータの運転開始時に荷重分トルク電流と、設定された速度、加速度、加加速度によって算出される加速分トルク電流と、に基づいてインバータの出力電流を演算し、出力電流に基づいてその運転中に回生電流が発生するか否かを判別し、回生電流が発生すると判別した場合のみコンバータを運転させることを特徴とする。
【0011】
また、その一態様として、エレベータの運転開始時に、前記出力電流に基づいてその運転中に回生運転が行われる期間を計算し、回生電流が発生すると予測された期間のみコンバータを運転させることを特徴とする。
【0012】
また、その一態様として、エレベータの運転中、常に、インバータの出力電流を検出し、その検出された出力電流が閾値以下になった場合のみコンバータを運転することを特徴とする。
【0013】
また、その他の態様として、モータを運転および制御するモータ駆動用インバータと、電力回生運転時に商用電源へ電力を回生する電力回生用コンバータと、備えたエレベータ用電力変換装置であって、エレベータの運転開始時にカゴが落下しないように、モータの機械ブレーキ開放時に高速に荷重分トルク電流を出力し、 エレベータの運転開始直後に出力した荷重分トルク電流と、設定された速度、加速度、加加速度によって算出される加速分トルク電流と、に基づいてインバータの出力電流を演算し、出力電流に基づいてその運転中に回生電流が発生するか否かを判別し、回生電流が発生すると判別した場合のみコンバータを運転させることを特徴とする。
【0014】
また、その一態様して、エレベータの運転開始時に前記出力電流に基づいて、その運転中に回生運転が行われる期間を計算し、回生電流が発生すると予測された期間のみコンバータを運転させることを特徴とする。
【0015】
また、その一態様として、エレベータの運転中、常に、インバータの出力電流を検出し、その検出された出力電流が閾値以下になった場合のみコンバータを運転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エレベータ用電力変換装置において、効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るエレベータ用電力変換装置の実施形態1〜5を
図1〜
図10に基づいて詳述する。
【0019】
[実施形態1]
本実施形態1では、例えば、
図11のようなコンバータ2を有するエレベータ用電力変換装置の主回路が適用されるものとする。
【0020】
エレベータ用電力変換装置には一般的に、エレベータ内の荷重を検出する荷重センサが設けられる。この荷重センサの信号よって必要となる荷重分トルク電流Iloadを予測できる。
【0021】
また、エレベータ用インバータでは一般的にモータあるいはカゴの速度、加速度、加加速度を予め設定しておく。それによって必要となる加速分トルク電流Iaccを予測できる。ここで、
図1の丸印は固定値を示している。
【0022】
エレベータの運転時に流れる出力電流I1は、以下の(1)式となる。
【0023】
I1(t)=Iload+Iacc(t)・・・(1)
出力電流I1と加速分トルク電流Iaccは時間の関数である。それに対し、荷重分トルク電流Iloadは運転中に荷重が変化することがないため、基本的に一定である。
【0024】
上記(1)式の情報を用いると、運転開始時に、その運転中に回生電流が発生するか否か予測できる。すなわち、出力電流I1<0となった場合、回生電流が発生するため、この(1)式の情報により回生電流が発生するか否かを判定できる。その結果、回生電流が発生すると予測した場合のみ、コンバータを運転させておく。また、誤差を考慮して予測結果の最小の出力電流I1がほぼゼロの場合もコンバータを運転させてもよい。出力電流I1がほぼゼロの場合コンバータを運転させないと直流過電圧故障で停止してしまうため、コンバータを運転させることにより、万が一の故障発生リスクを低減させる。
【0025】
図1はコンバータを運転する場合の各信号を示すタイムチャート,
図2はコンバータを運転しない場合の各信号を示すタイムチャートである。
図1では、出力電流I1<0となることがあり回生電流が発生するため、コンバータを運転している。
図2では、出力電流I1<0となることがなく、回生電流が発生しないため、コンバータはOFFとしている。
【0026】
なお、モータの加速度は加速分トルク電流Iaccに比例する。加速度波形をわかりやすくするため、参考のために速度波形を載せている。また、
図1および
図2では、エレベータ停止後(速度ゼロ到達後)のタイムチャートは省略している。
【0027】
次に、
図3のフローチャートに基づいて、エレベータ用電力変換装置の動作を説明する。
【0028】
まず、S1において、速度,加速度,加加速度の設定により加速分トルク電流Iaccの波形を計算しておく。これは、インバータ停止中でも同様である。 なお、速度,加速度,加加速度の設定は、通常、1階⇔2階など1階分のみの移動の場合と、そうでない場合の2パターンくらいのみ設定される。
【0029】
次に、S2において、エレベータの運転指令が有りか否か判定する。エレベータの運転指令が無い場合(False)、再びS2の動作を繰り返し、エレベータの運転指令が有り(True)となった場合にS3へ移行する。
【0030】
S3において、エレベータドア閉時(カゴ荷重確定)に、荷重分トルク電流Iloadを推定する。このエレベータドア閉時までは、人の出入等でカゴ荷重が変動し、必要となる荷重分トルク電流Iloadも変動する。エレベータドア閉時に荷重分トルク電流Iloadが確定する。カゴ荷重さえ確定すれば出力電流I1のパターンは一義的に決まる。
【0031】
S4において、次の運転時に回生電流が発生するか否かを判定する。回生電流が発生する場合(I1(t)<0)、S5へ移行し、回生電流が発生しない場合(I1(t)≧0)、S6へ移行する。
【0032】
S4で運転時に回生電流が発生すると判定された場合、S5において、コンバータを運転する。
【0033】
S6において、インバータを運転する。ここで、S4で運転時に回生電流が発生しないと判定された場合コンバータは運転しないこととなる。
【0034】
S7において、モータ軸ブレーキを開にする。
【0035】
S8において、エレベータのカゴが目的位置に到達したか否かを安定する。エレベータのカゴが目的位置に到達していない場合は、S8の処理を繰り返し、目的位置に到達したらS9へ移行する。
【0036】
S9において、モータ軸ブレーキを閉にする。
【0037】
S10において、インバータとコンバータを停止させる。
【0038】
S11において、エレベータのドアを開にする。
【0040】
以上示したように、本実施形態1によれば、回生電流が発生しないときはコンバータを運転させないため、電力の損失を低減し、エレベータの繰り返し運転時における高効率化を図ることが可能となる。
【0041】
[実施形態2]
実施形態1の方法の場合、運転開始時点でコンバータの運転要否を判別しているため、回生電流が発生する時間がわずかであっても(駆動運転中であっても)、コンバータを運転させる。
【0042】
本実施形態2では、実施形態1の方法と同様に、まず荷重センサ信号を用いて運転開始時点で出力電流I1のパターンの演算を行い、その結果によってコンバータを運転させる必要のある期間(例えば、加速開始後の何秒間か)を決定し、その決定に基づいてコンバータを運転させる。
【0043】
すなわち、 I1(t)=Iload+Iacc(t)…(1)のパターンから、I1(t)<0となる時刻が推定できる。このI1(t)<0となる前後のみコンバータを運転させる。
【0044】
その時、回生電流が発生してからコンバータを運転させるのでは遅いため、例えば出力電流I1に閾値を設け、その閾値よりも出力電流I1が低下した時点でコンバータを運転させるといった方法や、回生電流の発生時間よりある時間(この時間は設定可能とする)早くコンバータの運転を開始させる、といった方法をとる。
【0045】
次に、
図4,
図5に基づいて本実施形態2におけるエレベータ用電力変換装置の動作を説明する。
【0046】
S1〜S3までは、実施形態1と同様である。
【0047】
S4において、次の運転時に回生電流が発生するか否かを判定する(すなわち、出力電流I1<0となることがあるか否かを判定する。)回生電流が発生する場合はS12へ移行し、回生電流が発生しない場合はS6へ移行する。
【0048】
S12では、コンバータの運転開始タイミング・運転停止タイミングを決定する。この決定方法は、前述した出力電流I1の閾値などにより決定される。
【0049】
S6,S7は実施形態1と同様である。
【0050】
S13において、コンバータの運転が必要か否か(すなわち、I1<0となることがあるか否か)を判定する。コンバータの運転が必要な場合はS14へ移行し、コンバータの運転が不要な場合はS8へ移行する。
【0051】
S14において、コンバータの運転開始タイミングになったか否かを判定する。コンバータの運転開始タイミングになっていない場合は、S14の処理を繰り返し、コンバータの運転開始タイミングになった場合はS15へ移行する。
【0052】
S15において、コンバータを運転させる。
【0053】
S16において、コンバータ運転期間が経過したか否かを判定する。すなわち、コンバータの運転停止タイミングになったか否かを判定する。コンバータの運転停止のタイミングになっていない場合はS16の処理を繰り返し、コンバータの運転停止のタイミングになった場合はS17へ移行する。
【0054】
S17において、コンバータを停止する。
【0055】
S8〜S11は、実施形態1と同様である。
【0056】
この方法により、実施形態1の場合よりもさらに、不要なコンバータ運転の時間を減らし、さらなる高効率化を達成できる。
【0057】
[実施形態3]
実施形態2の方法の場合、運転開始時点で予測される電流パターンに基づいてコンバータ運転要否および期間を決定し、必要に応じてコンバータを運転させている。
【0058】
本実施形態3では、万が一、運転開始時点の演算と実際の運転が異なって回生電流が発生する場合に備えて、 運転しながら常時インバータの出力電流を検出し、 その検出された出力電流I1が闘値を下回った時点(回生電流が発生することが予測される)でコンバータを運転させることとする。
【0059】
次に、
図6に基づいて本実施形態3におけるエレベータ用電力変換装置の動作を説明する。
【0060】
本実施形態3では、実施形態1,2におけるS1を省略している。
【0061】
S2,S3,S6,S7は、実施形態1,2と同様である。
【0062】
S18において、出力電流I1を検出する。
【0063】
S19において、出力電流I1が閾値を下回ったか否かを判定する。出力電流I1が閾値を下回っていない場合はS19の処理を繰り返し、出力電流I1が閾値を下回ったらS20へ移行する。
【0064】
S20において、コンバータを運転する。
【0065】
S21において、出力電流I1が閾値を上回ったか否かを判定する。出力電流I1が閾値を上回っていない場合はS21の処理を繰り返し、出力電流I1が閾値を上回った場合S17へ移行する。
【0066】
以降のS17,S8,S9,S10,S11の処理は、実施形態2と同様である。
【0067】
これらの方法により、不測の事態によって回生電流が発生した場合でも直流過電圧によるインバータ、コンバータおよびエレベータの停止を抑制することが可能となる。
【0068】
なお、本実施形態3は、実施形態2の方法と組み合わせて使用してもよい。
【0069】
[実施形態4]
実施形態1〜3では、エレベータに荷重センサ信号が入力される前提であったが、荷重センサは必ずしもエレベータに設置されているわけではない。
【0070】
その場合、エレベータ用電力変換装置は、 運転開始後にモータの機械ブレーキが開放された瞬間のモータ位置変動量に応じて 高速に、カゴが落下および振動しないよう(あたかも荷重センサを用いて制御しているかのように)トルクを出力するよう インバータの電流を制御する(例えば、特許文献4)。
【0071】
また、この時の出力電流I1は、荷重センサを用いた場合の荷重分トルク電流Iloadにほぼ等しい。よって、荷重分トルク電流Iloadを推定できる。
【0072】
この場合、運転開始時点でインバータに設定されたカゴの速度、加速度、加加速度より必要となる加速分トルク電流Iaccは予測できるが、回生電流を流す必要があるかどうかはわからないため、
図7に示すように、あらかじめコンバータを運転させておく。
【0073】
そして、運転開始後に荷重分トルク電流Iloadを出力した時点で、出力した荷重分トルク電流Iloadと加速分トルク電流Iaccを用いて実施形態1と同じ方法でその時の運転時に回生電流が発生すると判別した場合のみコンバータの運転を継続させてエレベータを運転する。回生電流が発生しないと判別した場合はその時点ですぐにコンバータを停止させる。
【0074】
次に、
図8に基づいて本実施形態4におけるエレベータ用電力変換装置の動作を説明する。
【0076】
S6において、インバータを運転させる。このときコンバータも運転させる。
【0077】
S7において、モータ軸ブレーキを開にする。同時にインバータはカゴを落下させないように電流を出力する。
【0078】
S22において、運転開始後の荷重トルク分電流Iloadと加速分トルク電流Iaccから次の運転時にI1<0となるか否かを判定する。出力電流I1<0の場合はS23へ移行し、I1≧0の場合はS8へ移行する。
【0079】
S22において出力電流I1<0と判定された場合、S23においてコンバータの運転を継続する。S22において出力電流I1≧0と判定された場合は、コンバータの運転を停止する。
【0080】
S8〜S11は実施形態1と同様である。
【0081】
この方法により、荷重センサを有していないエレベータ用電力変換装置であっても、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0082】
[実施形態5]
図9は、本実施形態5におけるエレベータ電力変換装置の各信号を示すタイムチャートである。
【0083】
本実施形態5は、実施形態4のように荷重センサを設けておらず、運転開始後のモータ軸ブレーキ開放時に、荷重に相当するトルクを高速に出力するように制御するインバータである。
【0084】
本実施形態5は、実施形態1と同じ方法によって運転開始時点で運転パターンの演算を行い、その結果とブレーキ開直後に出力した荷重分トルク電流Iloadに応じてコンバータを運転させる必要のある期間(例えば、加速開始後の何秒間か)を決定し、その決定に基づいてコンバータを運転させる。
【0085】
この場合、回生電流が発生してからコンバータを運転させたのでは遅い。そのため、例えば、出力電流I1に閾値を設けて、出力電流I1がその閾値よりも低下した時点でコンバータを運転させるといった方法が考えられる。また、回生電流の発生時間よりある時間(この時間は設定可能とする)早くコンバータの運転を開始させる、といった方法が考えられる。
【0086】
次に、
図9,
図10に基づいて本実施形態5におけるエレベータ用電力変換装置の動作を説明する。
【0087】
S1,S2は実施形態1と同様である。
【0088】
S3において、エレベータドアを閉める。このとき、カゴ荷重が確定する。本実施形態5は、荷重センサがないため、荷重分トルク電流Iloadを推定できない。
【0089】
S6,S7,S22は実施形態4と同様である。
【0090】
S24において、コンバータの運転開始タイミングを決定する。
【0091】
S13〜S17,S8〜S11については実施形態2と同様である。
【0092】
この方法により、実施形態4の場合よりもさらに、不要なコンバータ運転の時間を減らし、さらなる高効率化を達成し、さらに不測の事態によって回生電流が発生した場合でも直流過電圧によるインバータ・コンバータおよびエレベータの停止を防止することが出来る。
【0093】
さらに、実施形態3と同様に、万が一運転開始時点の演算と実際の運転が異なって回生電流が発生する場合に備えて、運転しながら常時出力電流I1を検出し、出力電流I1が閾値を下回った時点(回生電流が発生することが予測される)でコンバータを運転させてもよい。
【0094】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。