(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先端工具保持部材により保持される先端工具を打撃する打撃子と、前記打撃子を動作可能に支持するケースと、前記打撃子の動作によって前記先端工具保持部材に伝達された力を受ける緩衝材と、を備えた打撃作業機であって、
前記ケースに取り付けられる取り付け部材が設けられ、
前記先端工具保持部材は、前記打撃子の動作方向で前記取り付け部材と前記ケースとの間に配置されるフランジを備え、
前記緩衝材は、前記打撃子の動作方向で前記フランジと前記取り付け部材との間に介在され、かつ、前記打撃子が前記先端工具に打撃力を加える方向に動作して前記先端工具保持部材が前記ケースから離れる向きの荷重を受ける際に、前記先端工具保持部材から力を受ける第1緩衝材を含み、
前記第1緩衝材が前記先端工具保持部材から力を受けて前記打撃子の動作方向に変形する量を規制する規制機構が設けられ、
前記規制機構は、前記第1緩衝材に隣接して設けられている、打撃作業機。
前記緩衝材は、前記打撃子の動作方向で前記フランジと前記ケースの間に介在され、かつ、前記先端工具保持部材を前記ケースに近づける向きの力を受ける第2緩衝材を含む、請求項2に記載の打撃作業機。
モータを設けたハウジングと、前記モータの動力により動作するピストンと、前記ピストンの動作により圧力が変化する流体室と、前記流体室の圧力変動によって動作し、かつ、先端工具保持部材により保持される先端工具を打撃する打撃子と、前記打撃子を動作可能に支持するケースと、前記打撃子の動作によって前記ケースに伝達された力を受ける緩衝材と、を備えた打撃作業機であって、
前記ケースに取り付けられる取り付け部材が設けられ、
前記先端工具保持部材は、前記打撃子の動作方向で前記取り付け部材と前記ケースとの間に配置されるフランジを備え、
前記緩衝材は、前記打撃子の動作方向で前記フランジと前記取り付け部材との間に介在され、かつ、前記打撃子が前記先端工具に打撃力を加える方向に動作して前記先端工具保持部材が前記ケースから離れる向きの荷重を受ける際に、前記先端工具保持部材から力を受ける第1緩衝材を含み、
前記第1緩衝材が前記先端工具保持部材から力を受けて前記打撃子の動作方向に変形する量を規制する規制機構が設けられ、
前記規制機構は、前記第1緩衝材に隣接して設けられている、打撃作業機。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が適用された打撃作業機の実施の形態を、
図1〜
図4を参照して詳細に説明する。打撃作業機10は、モータケース11と、モータケース11に固定されたシリンダケース12とを有する。モータケース11内に電動モータ13が設けられている。電動モータ13は、電気エネルギを出力軸14の運動エネルギに変換する動力源である。電動モータ13の出力軸14にピニオンギヤ15が設けられている。
【0013】
また、モータケース11内に中間軸16が設けられており、中間軸16にギヤ17,18が設けられている。ギヤ17の歯数は、ピニオンギヤ15の歯数及びギヤ18の歯数よりも多い。ギヤ17はピニオンギヤ15と噛み合っている。また、モータケース11内にクランクシャフト19が設けられており、クランクシャフト19はギヤ20を有する。ギヤ20の歯数はギヤ18の歯数よりも多く、ギヤ20はギヤ18と噛み合っている。クランクシャフト19は、回転中心線から偏心した位置にピン21を有している。
【0014】
モータケース11の外に2本のハンドル22,23が設けられており、ハンドル22,23は、それぞれハンドルホルダに取り付けられている。ハンドルホルダは、支持軸を中心として所定角度の範囲内で動作可能である。一方のハンドル23にレバー24が設けられている。レバー24は作業者により操作される。ハンドル23には電力ケーブル25が接続されており、電力ケーブル25は商用電源に接続される。レバー24が操作されると、電力ケーブル25を介して電動モータ13に電力が供給され、出力軸14が回転する。出力軸14の回転力は、ギヤ17、ギヤ18を介してギヤ20に伝達され、クランクシャフト19が回転する。
【0015】
ギヤ17、ギヤ18、ギヤ20により減速機26が構成され、出力軸14からクランクシャフト19に回転力を伝達すると、クランクシャフト19の回転速度は、出力軸14の回転速度よりも低速となり、かつ、回転力が増幅される。
【0016】
シリンダケース12は金属材料、例えば、アルミニウムにより一体成形されている。シリンダケース12は、円筒状の胴部12Aと、胴部12Aの両端に設けたボス部12B,12Cとを有する。胴部12Aは、中心線A1を中心として配置されている。中心線A1を中心とする径方向で、ボス部12Bの厚さは胴部12Aの厚さよりも大きく、ボス部12Cの厚さは胴部12Aの厚さよりも大きい。
【0017】
ボス部12Bは、中心線A1を囲む環状に設けられており、ボス部12Bは、中心線A1に対して垂直な平面内における外周形状が略四角形である。
図3のように、ボス部12Bに軸孔12Gが複数設けられている。軸孔12Gは、中心線A1に沿った方向にボス部12Bを貫通しており、複数の軸孔12Gは、中心線A1を中心とする同一円周上に等間隔で配置されている。そして、ボス部12Bの軸孔12Gにそれぞれ挿入されるねじ部材52が設けられており、シリンダケース12は、ねじ部材52によりモータケース11に固定されている。ねじ部材52は、シリンダケース12とモータケース11とを、中心線A1に沿った方向で互いに位置決めし、かつ、互いに固定する。モータケース11には、ねじ部材52がねじ込まれる雌ねじ孔が設けられている。
【0018】
シリンダケース12内に筒状のシリンダ27が設けられている。シリンダ27は金属製であり、シリンダケース12及びシリンダ27は同心状に配置されている。打撃作業機10の側面視で、シリンダケース12及びシリンダ27の中心線A1は、電動モータ13の出力軸14が回転する中心線B1に対して直交している。シリンダ27内にピストン28が収納されており、ピストン28は中心線A1に沿った方向に動作可能である。ピストン28にコンロッド53が連結されており、コンロッド53はピン21に対して回転可能に連結されている。このため、クランクシャフト19が回転すると、ピストン28はシリンダ27内を中心線A1に沿った方向に往復動する。クランクシャフト19及びピン21は、ギヤ20の回転力をピストン28の往復動力に変換する運動変換機構である。
【0019】
また、シリンダ27内に打撃子29が設けられており、打撃子29は中心線A1に沿った方向に移動可能である。シリンダ27内であって、ピストン28と打撃子29との間に空気室C1が形成されている。
【0020】
さらに、シリンダ27を径方向に貫通する呼吸孔45が、複数設けられている。シリンダ27とシリンダケース12との間に空間E1が形成されており、呼吸孔45は空間E1と空気室C1とをつなぐ。呼吸孔45は、流体としての空気を空気室C1に出入りさせる通路である。空間E1は、シリンダケース12の外部に通じている。また、シリンダ27を径方向に貫通する空打ち防止孔46が複数設けられている。空打ち防止孔46は空間E1と空気室C1とをつなぐ。中心線A1に沿った方向で、呼吸孔45は空打ち防止孔46とモータケース11との間に配置されている。
【0021】
さらに、シリンダケース12であって、中心線A1に沿った方向でモータケース11とは反対側の端部にホルダ30が固定されている。ホルダ30は中心線A1を中心とする筒形状であり、ホルダ30は、大径部30A及び中径部30B及び小径部30Cを有する。ホルダ30は、鋼材により一体成形されている。大径部30Aの外径は中径部30Bの外径よりも大きく、中径部30Bの外径は小径部30Cの外径よりも大きい。中心線A1に沿った方向で、大径部30Aと小径部30Cとの間に中径部30Bが配置されている。
【0022】
図4のように、ボス部12Cには環状の凹部64が設けられており、凹部64に大径部30Aが配置されている。凹部64は中心線A1を中心として設けられている。ホルダ30は、大径部30Aが凹部64に配置された状態で、シリンダケース12に対して中心線A1に沿った方向に移動可能である。また、大径部30Aの外周面から突出されたフランジ47が設けられている。フランジ47は、中心線A1を中心とする径方向で外側に向けて突出している。
【0023】
また、大径部30A内に環状のダンパ36が配置されており、ダンパ36はゴム状弾性材により一体成形されている。ホルダ30の大径部30A内から、シリンダケース12内に亘ってスリーブ33が設けられている。スリーブ33は金属製であり、スリーブ33は、筒部34と、筒部34の外周面から、筒部34の半径方向で外側に向けて張り出したフランジ部35と、を有する。フランジ部35が大径部30Aに配置され、筒部34はシリンダケース12内に配置されている。また、ダンパ36は、中心線A1に沿った方向で、フランジ部35と、凹部64の底面64Aとの間に介在されている。底面64Aは中心線A1に対して垂直であり、かつ、環状の平面である。スリーブ33は、中心線A1に沿った方向で、ダンパ36の弾性変形する範囲内において移動可能である。
【0024】
大径部30Aの外側に環状のプレート48が配置されており、フランジ47は、中心線A1に沿った方向でプレート48とボス部12Cとの間に配置されている。プレート48の外径は、フランジ47の外径と同じである。プレート48は、円周方向に沿って配置された複数の軸孔48Aを有する。実施の形態では軸孔48Aは4個設けられている。フランジ47に複数の軸孔47Aが設けられている。複数の軸孔47Aは、フランジ47を中心線A1に沿った方向に貫通しており、複数の軸孔47Aは、中心線A1を中心とする円周上に等間隔で4個配置されている。複数の軸孔47A内にそれぞれカラー60が挿入されている。カラー60は、鋼材を円筒形状に成形したものである。
【0025】
プレート48及びホルダ30は、固定要素であるねじ部材31によりシリンダケース12に固定されている。ねじ部材31は、ホルダ30とシリンダケース12とを、中心線A1に沿った方向で互いに位置し、かつ、互いに固定している。ねじ部材31は複数本設けられており、ねじ部材31は、雄ねじが形成された軸部31Aと、軸部31Aと一体の頭部31Bと、を備え、軸部31Aが雌ねじ孔12Fにそれぞれねじ込まれている。ねじ部材31の数は4本である。ねじ部材31の軸部31Aは、軸孔47A,48A、カラー60内に亘って配置されており、ねじ部材31が締め付けられている。ねじ部材31の中心線D1は、中心線A1と平行である。そして、中心線D1に沿った方向で、カラー60の両端がボス部12Cの端面及びプレート48の端面に押し付けられて、プレート48は、カラー60によりシリンダケース12に対して中心線A1に沿った方向に位置決めされている。
【0026】
さらに、中心線A1に沿った方向で、フランジ47とプレート48との間に第1緩衝材61が介在されている。第1緩衝材61は、ゴム状弾性材を環状に成形したものであり、第1緩衝材61は、中心線D1に沿った方向に貫通する軸孔61Aを有する。軸孔61Aは、第1緩衝材61の円周方向に複数、具体的には4つ設けられている。軸孔61Aの内径は、軸孔47Aの内径よりも大きい。
【0027】
また、カラー60は、大径部60A及び小径部60Bを有し、大径部60Aの外径は、小径部60Bの外径よりも大きい。小径部60Bは、軸孔47A内に配置されており、小径部60Bの中心線D1に沿った方向の長さは、フランジ47の厚さよりも大きい。また、大径部60Aは軸孔47A,48Aの内径よりも大きい。大径部60Aは軸孔47Aに配置されておらず、大径部60Aは軸孔61Aに配置されている。つまり、大径部60Aは中心線D1に沿った方向で、フランジ47とプレート48との間に配置されている。また、カラー60の外周に、大径部60Aと小径部60Bとを接続する段差部60Cが設けられている。段差部60Cは、中心線D1に対して垂直な環状の端面である。さらに、第1緩衝材61の中心線D1に沿った方向の荷重が加わっていない状態で、第1緩衝材61の長さL2は、大径部60Aの長さL1よりも大きい。
【0028】
さらに、中心線A1に沿った方向で、フランジ47とボス部12Cとの間に、環状の第2緩衝材62が設けられている。第2緩衝材62は、中心線D1に沿った方向に貫通する軸孔62Aを有する。軸孔62Aは、円周方向に沿って複数、具体的には4つ設けられている。小径部60Bは軸孔62Aに配置されている。
【0029】
シリンダ27内からホルダ30内に亘り、中間子37が設けられている。中間子37は、金属製であり、中間子37は、円柱状の小径部38と、小径部38に連続された大径部39と、を有する。大径部39外径は、小径部38の外径よりも大きく、小径部38は、筒部34内及びシリンダ27内に配置されている。大径部39は、ホルダ30の支持孔32内に配置されている。支持孔32は中径部30Bに設けられている。大径部39の外径は、筒部34の内径よりも大きい。中間子37は、スリーブ33に対して中心線A1に沿った方向に移動可能であり、中間子37がシリンダケース12内に向けて移動し、大径部39がフランジ部35に接触すると、中間子37が停止する。
【0030】
一方、小径部30Cに保持孔42が設けられており、保持孔42は支持孔32につながっている。保持孔42は支持孔32よりも小径であり、保持孔42と支持孔32との間に段差部49が形成されている。中間子37がピストン28から離れる向きで中心線A1に沿った方向に移動し、大径部39が段差部49に接触すると、中間子37が停止する。つまり、中間子37は、ピストン28から離れる向きで中心線A1に沿った方向に移動することが規制される。小径部30Cに抜け止め50が設けられている。抜け止め50は、U字形状に曲がっており、抜け止め50は、小径部30Cに対して支持軸51を中心として回転可能に取り付けられている。抜け止め50は受け部50Aを有する。受け部50Aは、中心線A1に対して交差する向きで延ばされている。
【0031】
さらに、ホルダ30は先端工具43を保持している。先端工具43は金属材料を棒状に成形したものであり、先端工具43は、支持孔32及び保持孔42に配置されている。先端工具43における長さ方向の中途部位に係止部44が設けられている。先端工具43は、ホルダ30に保持された状態で、中心線A1に沿った方向に移動可能であり、先端工具43であって支持孔32に配置された箇所は、中間子37に接触する。
【0032】
次に、作業者が打撃作業機10を使用する例を説明する。まず、
図1のように、先端工具43の端部を対象物W1に押し付けると、中間子37が先端工具43に押され、大径部39がフランジ部35に接触して中間子37が停止する。そして、作業者がレバー24を操作すると、電動モータ13の出力軸14が回転し、ピストン28がシリンダ27内を中心線A1に沿った方向に往復動作する。つまり、出力軸14の回転力は、ピストン28の往復動力に変換される。
【0033】
ピストン28が上昇すると空気室C1内の圧力が、空間E1の圧力よりも低下し、空間E1の空気は、呼吸孔45を通り空気室C1に空気が吸入されるとともに、打撃子29が上昇する。ピストン28が上昇するとは、中心線A1に沿った方向でクランクシャフト19に近づく向きで移動することである。打撃子29が上昇するとは、中心線A1に沿った方向で中間子37から離れる向きで移動することである。
【0034】
打撃子29が上昇すると、呼吸孔45は打撃子29により閉じられ、空気室C1に空気は吸い込まれなくなる。また、ピストン28が上死点に到達し、かつ、ピストン28が上死点から下降すると、空気室C1内の圧力が上昇し、空気室C1の圧力に応じて打撃子29に打撃力が加わる。このため、打撃子29は中間子37に近づく向きで下降し、打撃子29が中間子37を打撃する。中間子37に加えられた打撃力は、先端工具43を介して対象物W1に伝達され、対象物W1を破砕する作業、斫る作業等を実行できる。中間子37及び先端工具43に加えられる打撃力は、中心線A1に沿った方向である。
【0035】
呼吸孔45は、打撃子29が中間子37を打撃する直前に開かれ、ピストン28が下死点に到達するまでの間、空気室C1の空気は呼吸孔45を通り空間E1へ排出される。中間子37から先端工具43に打撃力が伝達され、かつ、ピストン28が下死点に到達すると、ピストン28は下死点から上死点に向けて移動する。以後、電動モータ13の出力軸14が回転している間、ピストン28の上昇及び下降、打撃子29の上昇及び下降を繰り返して、空気室C1の圧力が変化する。したがって、打撃子29の打撃力は、中間子37を介して間欠的に先端工具43に伝達される。
【0036】
中間子37が先端工具43を打撃した際の反力がダンパ36に加わると、スリーブ33が中心線A1に沿った方向でシリンダケース12に近づく向きで移動する。すると、ダンパ36が圧縮荷重を受けて弾性変形し、打撃時の反力を吸収する。
【0037】
先端工具43の端部が対象物W1に押し付けられていない場合、中間子37が自重で下降し、
図2のように、大径部39が段差部49に接触して中間子37が停止する。また、打撃子29も自重で下降し、打撃子29は中間子37に接触して停止する。つまり、呼吸孔45及び空打ち防止孔46が共に開かれた状態となる。さらに、係止部44が抜け止め50の受け部50Aに掛かり、先端工具43が支持される。このため、先端工具43がホルダ30から抜けることはない。なお、抜け止め50を回転させると、係止部44が抜け止め50に掛からなくなるため、先端工具43をホルダ30から取り外すことができる。
【0038】
次に、先端工具43の端部が対象物W1に押し付けられていない状態で、レバー24が操作された場合の例を説明する。この場合は、
図2のように空打ち防止孔46が開かれているため、ピストン28が中心線A1に沿った方向に往復動作しても、空気室C1の圧力は、空打ち防止孔46が閉じられている場合の圧力よりも低い。したがって、打撃子29に加わる打撃力は、先端工具43が対象物W1に押し付けられている場合に生じる打撃力よりも低い。
【0039】
図2のように、打撃作業機10で空打ちが行われると、中間子37に加えられた打撃力は、段差部49を介してホルダ30に伝達される。このため、ホルダ30は、中心線A1に沿い、かつ、シリンダケース12から離れる向きの荷重を受ける。上記のように、ねじ部材31が締め付けられており、プレート48はカラー60により、中心線A1に沿った方向に位置決め固定されている。このため、ホルダ30が、シリンダケース12から離れる向きの荷重を受けると、ホルダ30はプレート48に近づく。
【0040】
すると、フランジ47とプレート48との間に介在されている第1緩衝材61が圧縮荷重を受けて弾性変形し、空打ちにより生じる衝撃を吸収する。ここで、中心線D1に沿った方向で、フランジ47とプレート48との間隔が長さL1になると、第1緩衝材61はそれ以上圧縮されない。そして、ホルダ30をシリンダケース12から離す向きの荷重が低下すると、第1緩衝材61の弾性復元力で、ホルダ30がシリンダケース12に近づく向きで移動し、かつ、フランジ47が第2緩衝材62に接触してホルダ30が停止する。
【0041】
このように、本実施形態の打撃作業機10は、空打ち状態となり、ホルダ30をシリンダケース12から離す向きの荷重が加わると、その荷重で第1緩衝材61が弾性変形することで、その荷重を吸収し、打撃作業機10の振動を低減できる。また、第1緩衝材61が所定量圧縮されると、フランジ47が段差部60Cに接触して、第1緩衝材61の潰れ量が規制される。したがって、第1緩衝材61が受ける荷重を低減でき、第1緩衝材61が繰り返し疲労で寿命が低下することを抑制できる。なお、第1緩衝材61の長さL2と、大径部60Aの長さL1との差は、第1緩衝材61が圧縮荷重を繰り返し受けても、寿命が低下することのないように、実験、シミュレーション等を行って設定されている。
【0042】
さらに、第1緩衝材61の弾性復元力で、ホルダ30がシリンダケース12に近づく向きで移動し、フランジ47が第2緩衝材62に接触すると、第2緩衝材62が弾性変形することで、空打ち時の反力を吸収することができる。したがって、打撃作業機10の振動を低減できる。
【0043】
このように、本発明の打撃作業機10は、ねじ部材31を締め付けて、プレート48をシリンダケース12に対して中心線A1に沿った方向に位置決め固定した状態で、第1緩衝材61及び第2緩衝材62が荷重を受けて弾性変形することで、ホルダ30がシリンダケース12に対して中心線A1に沿った方向に移動可能である。そして、ホルダ30がシリンダケース12から離れる向きで移動する範囲は、カラー60の段差部60Cにより規制されている。
【0044】
(変更例1)
図4に示すカラー60及び第1緩衝材61の変更例を、
図5を参照して説明する。
図5のカラー60は、大径部60Aと段差部60Cとを連続する箇所に面取り部60Dが形成されている。面取り部60Dは、大径部60Aの全周に亘り環状に形成されている。また、軸孔61Aを形成する内面61Bと、第1緩衝材61の端面61Cとを連続する面取り部61Dが形成されている。端面61Cは、中心線D1に対して垂直な平面であり、端面61Cはフランジ47に接触する。
図5に示すその他の部品の形状、構造、寸法は、
図4に示す部品の形状、構造、寸法と同じである。
【0045】
図5に示すカラー60及び第1緩衝材61を、
図1及び
図2の打撃作業機10に用いると、打撃作業機10で空打ちが行われた場合に、実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、
図5に示すカラー60及び第1緩衝材61を備えた打撃作業機10は、圧縮荷重を受け第1緩衝材61が弾性変形した場合に、軸孔61Aを形成する内面61Bと、端面61Cとを接続する箇所が、段差部60Cとフランジ47との間に挟まれることを防止できる。したがって、第1緩衝材61の寿命が低下することを抑制できる。
【0046】
(変更例2)
図4に示した第2緩衝材62の取り付け構造の他の例を、
図6を参照して説明する。第2緩衝材62の軸孔62Aに、それぞれ円筒形状のリテーナ63が配置されている。リテーナ63は鋼材により一体成形されており、リテーナ63内にカラー60の小径部60Bが配置されている。第2緩衝材62が圧縮荷重を受けていない状態で、中心線D1に沿った方向における第2緩衝材62の長さL3は、中心線D1に沿った方向におけるリテーナ63の長さL4よりも長い。第1緩衝材61及び第2緩衝材62が、中心線D1に沿った方向の荷重を受けていない状態で、底面64Aと、大径部30Aの先端との間の隙間量は、長さL3と長さL4との差よりも大きい。隙間量は、中心線A1に沿った方向の値である。
図6に示すその他の部品の形状、構造、寸法は、
図4に示す部品の形状、構造、寸法と同じである。
【0047】
図6に示すリテーナ63及び第2緩衝材62を、
図1及び
図2の打撃作業機10に用いると、打撃作業機10で空打ちが行われた場合に、実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、
図6に示すリテーナ63及び第2緩衝材62を備えた打撃作業機10は、空打ちの反力でホルダ30が中心線A1に沿った方向でシリンダケース12に近づくように移動して、第2緩衝材62が弾性変形すると、大径部30Aの先端が底面64Aに接触する前に、リテーナ63が、ボス部12Cの端面12Eと、フランジ47とにより挟まれて、ホルダ30が停止する。このため、第2緩衝材62の潰れ量を増加することを抑制でき、第2緩衝材62の寿命が低下することを抑制できる。
【0048】
このように、
図6に示すリテーナ63及び第2緩衝材62を、
図1及び
図2の打撃作業機10に用いると、ねじ部材31を締め付けて、プレート48をシリンダケース12に対して中心線A1に沿った方向に位置決め固定した状態で、第1緩衝材61及び第2緩衝材62が荷重を受けて弾性変形することで、ホルダ30がシリンダケース12に対して中心線A1に沿った方向に移動可能である。そして、ホルダ30がシリンダケース12に近づく向きで移動する範囲は、リテーナ63により規制される。
【0049】
(変更例3)
図4に示した第1緩衝材61の変形量を規制する規制機構の他の例を、
図7を参照して説明する。
図7に示すカラー60の外径は一定であり、
図4の大径部60A及び小径部60Bは設けられていない。カラー60は、軸孔47A,61A,62Aに亘って配置されている。
【0050】
一方、大径部30Aの外周面に段差部65が設けられている。段差部65は、大径部30Aの全周に亘って環状に形成されており、段差部65は中心線A1に対して垂直な平面である。段差部65は、中心線A1に沿った方向で、フランジ47とプレート48との間に配置されている。そして、第1緩衝材61が圧縮荷重を受けていない状態で、中心線D1に沿った方向における第1緩衝材61の長さL2は、中心線D1に沿った方向で、フランジ47の端面から段差部65までの長さL5よりも長い。
図7に示すその他の部品の形状、構造、寸法は、
図4に示す部品の形状、構造、寸法と同じである。
【0051】
図7に示すホルダ30、カラー60、第1緩衝材61を、
図1及び
図2の打撃作業機10に用いると、打撃作業機10で空打ちが行われていない場合、段差部65とプレート48との間に、中心線D1に沿った方向の隙間F1がある。
【0052】
これに対して、
図7に示すホルダ30、カラー60、第1緩衝材61を、
図1及び
図2の打撃作業機10に用い、打撃作業機10で空打ちが行われて、ホルダ30がシリンダケース12から離れる向きに移動すると、前述と同様に第1緩衝材61が弾性変形し、空打ち時の衝撃を吸収する。そして、ホルダ30は、段差部65がプレート48に接触した時点で停止する。このため、第1緩衝材61の潰れ量を増加することを抑制でき、第1緩衝材61の寿命が低下することを抑制できる。
【0053】
このように、
図7に示すホルダ30及びカラー60及び第1緩衝材61を、
図1及び
図2の打撃作業機10に用いると、ねじ部材31を締め付けて、プレート48をシリンダケース12に対して中心線A1に沿った方向に位置決め固定した状態で、第1緩衝材61及び第2緩衝材62が荷重を受けて弾性変形することで、ホルダ30がシリンダケース12に対して中心線A1に沿った方向に移動可能である。そして、ホルダ30がシリンダケース12から離れる向きで移動する範囲は、段差部65及びプレート48により規制される。
【0054】
次に、
図7において、第2緩衝材62の変形量を規制する規制機構を説明する。第2緩衝材62が圧縮荷重を受けていない状態で、シリンダケース12に形成された底面64Aと、ホルダ30の先端66との間に、中心線A1に沿った方向の隙間量G1が設定されている。この隙間量G1は、中心線A1に沿った方向における凹部64の深さを設定して形成されている。
【0055】
そして、
図7に示すホルダ30及びシリンダケース12を、
図1及び
図2の打撃作業機10に用いて打撃作業機10で空打ちが行われ、空打ちの反力でホルダ30が中心線A1に沿った方向でシリンダケース12に近づくように移動して、第2緩衝材62が弾性変形することで、反力による打撃作業機10の振動を抑制できる。また、大径部30Aの先端66が底面64Aに接触すると、ホルダ30が停止する。このため、第2緩衝材62の潰れ量を増加することを抑制でき、第2緩衝材62の寿命が低下することを抑制できる。
【0056】
このように、
図7に示すシリンダケース12及びホルダ30を、
図1及び
図2の打撃作業機10に用いると、ホルダ30がシリンダケース12に近づく向きで移動する範囲は、底面64Aと先端66との間に形成された隙間F1の隙間量G1により定まる。
図7において、第2緩衝材62の変形量を規制する規制機構は、既存の部品であるシリンダケース12に設ける凹部64の深さを調整すれば、隙間量G1を任意に設定できる。したがって、部品点数が増加することを回避できる。
【0057】
(変更例4)
第2緩衝材62が変形する量を規制する規制機構の他の例を、
図8を参照して説明する。
図8に示された部品において、
図7の部品と同じ構成については、
図7と同じ符号を付してある。
図8に示す規制機構は、カラー60に設けられている。カラー60は、大径部60E及び小径部60Fを有し、大径部60Eの外径は小径部60Fの外径よりも大きい。大径部60Eは、中心線D1に沿った方向で、ボス部12Cと小径部60Fとの間に配置されている。
【0058】
また、大径部60Eと小径部60Fとを連続する段差部60Gが設けられている。段差部60Gは、カラー60の外周全域に亘って環状に形成されている。段差部60Gは、中心線D1に対して垂直な平面である。そして、小径部60Fは、軸孔47A,61Aに亘って配置されている。また、大径部60Eは、軸孔62Aに配置されている。第2緩衝材62に、中心線D1に沿った方向の圧縮荷重が加わっていない状態で、第2緩衝材62の中心線D1に沿った方向の長さL6は、大径部60Eの中心線D1に沿った方向の長さL7よりも長い。さらに、第1緩衝材61及び第2緩衝材62が、中心線D1に沿った方向の荷重を受けていない状態で、底面64Aと、大径部30Aの先端との間の隙間量は、長さL6と長さL7との差よりも大きい。隙間量は、中心線A1に沿った方向の値である。
【0059】
図8において、
図7に示す構成と同じ構成部分については、
図7と同様の効果を得られる。次に、
図8に示す規制機構を
図1及び
図2の打撃作業機10に用い、打撃時の反力でホルダ30がシリンダケース12に近づく向きで移動する場合の作用を説明する。ホルダ30がシリンダケース12に近づく向きで移動すると、第2緩衝材62に圧縮荷重が加わり、第2緩衝材62が弾性変形し反力を吸収する。そして、大径部30Aの先端が底面64Aに接触する前にフランジ47が段差部60Gに接触する。つまり、大径部60Eは、シリンダケース12の端面12Eと、フランジ47との間に挟まれ、ホルダ30が停止する。したがって、第2緩衝材62が変形する量の増加が規制され、第2緩衝材62の耐久性が向上する。
【0060】
(その他の変更例)
上記の打撃作業機10において、シリンダケース12をモータケース11に対して中心線A1に沿った方向に取り付け、かつ、シリンダケース12が中心線A1に沿った方向に移動する量を規制する構造を採用することも可能である。この場合、
図4〜
図8に示した規制機構を、シリンダケース12とモータケース11との取り付け箇所に設ければよい。
【0061】
本実施の形態で説明した構成と、本発明の構成との関係を説明すると、シリンダケース12が、本発明のケースに相当し、ホルダ30が、本発明の先端工具保持部材に相当し、第1緩衝材61及び第2緩衝材62が、本発明の緩衝材に相当し、プレート48が、本発明の取り付け部材に相当し、フランジ47が、本発明のフランジに相当し、中心線A1に沿った方向が、本発明における打撃子の動作方向に相当する。さらに、軸孔47Aが、本発明の第1軸孔に相当し、軸孔61Aが、本発明の第2軸孔に相当し、カラー60が、本発明の位置決め部材に相当し、ねじ部材31が、本発明のねじ部材に相当し、中間子37が、本発明の打撃力伝達部材に相当し、段差部49が、本発明のストッパに相当する。
【0062】
また、
図4〜
図6に示したカラー60の段差部60Cが、本発明の規制機構及び第1段差部に相当する。さらに、
図7に示す段差部65及び隙間F1が、本発明の規制機構に相当し、
図8に示す段差部60G,65が、本発明の規制機構に相当し、段差部60Gが、本発明の第2段差部に相当する。また、
図5の面取り部60Dが、本発明の第1面取り部に相当し、面取り部61Dが、本発明の第2面取り部に相当する。さらに、
図6に示すリテーナ63が、本発明のリテーナに相当する。さらに、電動モータ13が、本発明のモータに相当し、モータケース11が、本発明のハウジングに相当し、空気室C1が、本発明の流体室に相当する。
【0063】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、
図6に示すカラー60に、
図5に示す面取り部60Dを設け、かつ、
図6のプレート48に、
図5の面取り部61Dを設けてもよい。また、
図7に示す隙間量G1を、
図4に示す大径部30Aと底面64Aとの間に設定してもよい。また、
図6に示すリテーナ63と、
図7に示す段差部65とを組み合わせてもよい。
【0064】
さらに、打撃力を発生させるための動力源であるモータは、電動モータ、油圧モータ、空気圧モータ、エンジン等を含む。つまり、モータの回転力が、ピストンの往復運動力に変換されて、打撃力が発生する。さらに、固定要素の数は任意に設定可能である。さらに、打撃作業機は、先端工具に中心線に沿った方向に打撃力が加えられる構造の他、先端工具に打撃力及び回転力を加えることの可能な構造を含む。
【0065】
本発明の打撃作業機は、コンクリートまたは石材に、穴あけを行う先端工具に打撃力を加える構造を含む。本発明の打撃作業機は、先端工具に打撃力を加えて地面を突き固める構造を含む。さらに本発明の打撃作業機は、先端工具を打撃して、対象物に穴、溝を形成したり、対象物に角部を形成したりする構造を含む。
【0066】
さらに、本発明における固定要素は、ねじ部材と雌ねじ孔との組み合わせの他、スタッドボルトとナットとの組み合わせを含む。さらに、モータの出力軸の回転力を、ピストンの往復動力に変換する運動変換機構は、クランクシャフトを用いる構造の他、カム機構を用いる構造を含む。さらに、本発明の打撃作業機は、モータの出力軸の中心線と、ピストンの動作方向の中心線とが交差して配置されている構造の他、モータの出力軸の中心線と、ピストンの動作方向の中心線とが、平行に配置されている構造を含む。
【0067】
さらに、本発明における打撃機構は、モータの回転力をピストンの往復動力に変換し、かつ、流体室の圧力変動で打撃子を打撃する第1の手段の他、ばねの弾性力で打撃子を打撃する第2の手段、圧縮空気の圧力変動で打撃子を打撃する第3の手段を含む。第2の手段は、打撃子をモータの動力でばねの弾性力に抗して動作させた後、打撃子に伝達するモータの動力を低下させ、ばねの弾性力で打撃子を打撃する機構である。第3の手段は、打撃子を打撃する圧力を生じる空気室と、空気室につながる圧縮空気の通路と、通路を開閉するバルブと、有し、バルブを開閉することで、打撃子を打撃する機構である。