(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6303768
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/02 20140101AFI20180326BHJP
E05B 79/04 20140101ALI20180326BHJP
【FI】
E05B85/02
E05B79/04
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-90608(P2014-90608)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-209662(P2015-209662A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155767
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 憲志
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 英二
(72)【発明者】
【氏名】多田 武史
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 佑介
(72)【発明者】
【氏名】三戸 翔
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 淳
(72)【発明者】
【氏名】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】尾高 善樹
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−251106(JP,A)
【文献】
特開2009−138460(JP,A)
【文献】
特開2006−183704(JP,A)
【文献】
特開2003−314116(JP,A)
【文献】
特開2009−185539(JP,A)
【文献】
米国特許第06109674(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取付けられたストライカとの係合によって車両ドアを閉止状態に保持可能なラッチ機構と、
前記ラッチ機構を前記ストライカとの係合が解除可能なアンロック状態、或いは前記ストライカとの係合が解除不能なロック状態に設定するロック機構と、
少なくとも前記ラッチ機構及び前記ロック機構を収容するハウジングと、
を含む、車両用ドアロック装置であって、
前記ハウジングは、車外側に配置される第1ハウジング構成体と、車内側に配置される第2ハウジング構成体と、前記第1ハウジング構成体と前記第2ハウジング構成体とを連結するための連結機構と、を備え、
前記連結機構は、前記第1ハウジング構成体及び前記第2ハウジング構成体のうちの一方のハウジング構成体に突出状に設けられた係合爪と、前記第1ハウジング構成体及び前記第2ハウジング構成体のうちの他方のハウジング構成体に設けられ前記係合爪に係合可能な開口部を有する係合アームと、前記係合アームの保護のために当該係合アームのアーム外周面を囲むように前記一方のハウジング構成体に設けられた保護部と、を備える、車両用ドアロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアロック装置であって、
前記保護部は、前記一方のハウジング構成体に前記係合爪の突出方向に立設され且つ前記係合アームの前記アーム外周面に沿って対向配置された立設壁として構成されている、車両用ドアロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用ドアロック装置であって、
前記立設壁は、その壁厚方向について前記係合アームの前記アーム外周面から離間するにつれて壁高さが漸減するよう傾斜した傾斜面を備える、車両用ドアロック装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の車両用ドアロック装置であって、
前記係合アームは、前記車両ドアの上下方向及び左右方向の双方によって規定される平面に沿って延在し、
前記立設壁は、前記係合アームの前記アーム外周面のうち最も高所にある部位よりも上方に配置された壁構成部を含む、車両用ドアロック装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用ドアロック装置であって、
前記係合アームは、前記他方のハウジング構成体側の部位を固定端部とし、当該固定端部から延出して前記車両ドアの左右方向に延びる先端部を自由端部とし、前記自由端部が前記固定端部を中心にして回動することによって前記係合爪との係合を解除するように構成されている、車両用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアに取付けられる車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には車両用ドアロック装置の一例が開示されている。この車両用ドアロック装置は、その構成要素であるラッチ機構やロック機構等を収容するハウジングを備えている。このハウジングは、車外側に配置される第1ハウジング構成体と車内側に配置される第2ハウジング構成体とが連結機構によって一体的に連結されるように構成されている。この連結機構は、第1ハウジング構成体に設けられた係合爪と、第2ハウジング構成体に設けられ係合爪に係合可能な開口部を備える係合アームとを備えており、係合爪が係合アームの開口部に嵌め込まれるようにして係合する構造、所謂「スナップフィット係合」を利用した構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−248899号公報
【発明の概要】
【0005】
上記の車両用ドアロック装置では、針金等の盗難用部材が係合アームに引っ掛けられて引っ張られた場合には、係合アームと係合爪とのスナップフィット係合が解除されることが想定される。このような場合には、ハウジングに収容されたロック機構等のドアロック構成要素を保護するのが難しくなり、例えばロック機構が盗難用部材によってアンロック状態に切替えられるという問題が生じ得る。
【0006】
そこで本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、ハウジングの第1ハウジング構成部材と第2ハウジング構成部材とがスナップフィット係合によって連結された車両用ドアロック装置において、スナップフィット係合による連結構造の信頼性向上を図るのに有効な技術を提供することである。
【0007】
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ドアロック装置は、ラッチ機構、ロック機構及びハウジングを含む。ラッチ機構は、車両ドアを車体に対して閉じた状態で保持可能に構成される。ロック機構は、ラッチ機構を車体に設けられたストライカとの係合が解除可能なアンロック状態、或いはストライカとの係合が解除不能なロック状態に設定するように構成される。ハウジングは、少なくともラッチ機構及びロック機構を収容する収容部材として構成される。
【0008】
ハウジングは、更に、車外側に配置される第1ハウジング構成体と、車内側に配置される第2ハウジング構成体と、第1ハウジング構成体と第2ハウジング構成体とを連結するための連結機構と、を備える。連結機構は、係合爪、係合アーム及び保護部を備える。係合爪は、第1ハウジング構成体及び第2ハウジング構成体のうちの一方のハウジング構成体に突出状に設けられる。係合アームは、第1ハウジング構成体及び第2ハウジング構成体のうちの他方のハウジング構成体に設けられ係合爪に係合可能な開口部を有する。保護部は、係合アームの保護のために当該係合アームのアーム外周面を囲むように一方のハウジング構成体に設けられる。これにより、針金等の盗難用部材が係合アームに直接的に作用し難くすることができる。例えば、第1ハウジング構成体の表面と係合アームとの間に形成された隙間に針金等の盗難用部材が侵入するのを阻止できる。この場合、係合爪と係合アームの開口部とのスナップフィット係合が解除されるのを阻止することができ、スナップフィット係合による連結構造の信頼性向上を図ることができる。その結果、ハウジングに収容されたドアロック構成要素の保護強化が可能になる。
【0009】
上記構成の車両用ドアロック装置では、保護部は、一方のハウジング構成体に係合爪の突出方向に立設され且つ係合アームのアーム外周面に沿って対向配置された立設壁として構成されるのが好ましい。この場合、一方のハウジング構成体の一部を利用して保護部を構成することができるため、車両用ドアロック装置の構造を簡素化することができる。
【0010】
上記構成の車両用ドアロック装置では、立設壁は、その壁厚方向について係合アームのアーム外周面から離間するにつれて壁高さが漸減するよう傾斜した傾斜面を備えるのが好ましい。これにより、立設壁の表面に盗難用部材が作用したとき、当該盗難用部材の先端部分を傾斜面に沿って滑らせて逃がすことによって、当該盗難用部材が立設壁の表面の特定の位置に留まり難くすることができる。その結果、盗難用部材から受ける荷重が立設壁の特定の部位に集中し難くなり、立設壁の破損によって防犯性が低下することを阻止できる。
【0011】
上記構成の車両用ドアロック装置では、係合アームは、車両ドアの上下方向及び左右方向の双方によって規定される平面に沿って延在するのが好ましい。この場合、立設壁は、係合アームのアーム外周面のうち最も高所にある部位よりも上方に配置された壁構成部を含むのが好ましい。車両ドアの外部から下方に向けて侵入した針金等の盗難用部材は、係合アームのアーム外周面のうちの最も高所にある部位(上側部位)に最初に作用する可能性が高い。そこで、当該上側部位を立設壁の所定の壁構成部で保護することによって、下向きに作用する盗難用部材が係合アームの上側部位に直接的に作用するのを確実に防止することができる。
【0012】
上記構成の車両用ドアロック装置では、係合アームは、他方のハウジング構成体側の部位を固定端部とし、当該固定端部から延出して車両ドアの左右方向に延びた先端部を自由端部とし、自由端部が固定端部を中心にして回動することによって係合爪との係合を解除するように構成されているのが好ましい。このような構成の係合アームの場合、係合爪との係合解除のために必要な荷重の入力方向は、車両ドアの外部から下方に向けて侵入した盗難用部材による荷重の作用方向とは異なる。従って、仮に立設壁の壁構成部が盗難用部材からの荷重によって係合アームのための保護機能を失っても、係合アームは盗難用部材からの荷重を受けて係合爪との係合を解除する方向に容易に動作することがなく、その結果、係合アームと係合爪との係合解除が起こり難い。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、ハウジングの第1ハウジング構成部材と第2ハウジング構成部材とがスナップフィット係合によって連結された車両用ドアロック装置において、スナップフィット係合による連結構造の信頼性向上を図ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施の形態の車両用ドアロック装置100を車外側から視た図である。
【
図2】
図2は、
図1中の車両用ドアロック装置100を車両前方から視た図である。
【
図3】
図3は、
図1中の車両用ドアロック装置100を右斜め下方から視た図である。
【
図4】
図4は、
図3中のA領域の連結機構130の平面図である。
【
図5】
図5は、
図4中の連結機構130のB−B線についての断面図である。
【
図6】
図6は、
図4中の連結機構130のC−C線についての断面図である。
【
図7】
図7は、
図3中のA領域の連結機構130の部分拡大図であり、この連結機構130の盗難用部材に対する更なる保護機能について説明するための図である。
【
図8】
図8は、連結機構130の変更例に係る連結機構230の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、当該図面では、車両前方及び車両後方をそれぞれ矢印X1及び矢印X2で示し、車両上方及び車両下方をそれぞれ矢印Y1及び矢印Y2で示し、車両右方及び車両左方をそれぞれ矢印Z1及び矢印Z2で示している。車両ドアに取付けられる前の状態の車両用ドアロック装置に対して、また車両ドアに取付けられた後の状態の車両用ドアロック装置に対して、これらの方向を適用することができる。
【0016】
図1に示す本実施の形態の車両用ドアロック装置(以下、単に「ドアロック装置」ともいう)100は、車両ドアDRのドアアウタパネル(車外側パネル)とドアインナパネル(車内側パネル)とによって区画される領域に装着される。
図1にはこの車両ドアDRの典型例として車両右側の車両ドアが記載されている。
【0017】
ドアロック装置100は、当該ドアロック装置のドアロック構成要素110を収容するハウジング101と、このハウジング101のハウジング上面及びハウジング前面にわたって取付けられたカバー部材120を備えている。ハウジング101及びカバー部材120はいずれも樹脂製の部材として構成されている。
【0018】
図2に示されるように、ハウジング101は、車外側に配置される第1ハウジング構成体101aと、車内側に配置される第2ハウジング構成体101bとによって区画される空間部分に主要なドアロック構成要素110が組み付けられている。ここでいうハウジング101、第1ハウジング構成体101a及び第2ハウジング構成体101bがそれぞれ、本発明の「ハウジング」、「第1ハウジング構成体101a」及び「第2ハウジング構成体101b」に相当する。カバー部材120は、車両ドアDRの外部から侵入した水や盗難用部材からハウジング101に収容されたドアロック構成要素110を保護する機能を果たす。
【0019】
尚、ドアロック構成要素110には、周知のラッチ機構111及びロック機構112等が含まれる。ラッチ機構111は、車体BDに取付けられたストライカSTとの係合によって車両ドアDRを閉止状態に保持可能に構成される。ロック機構112は、ラッチ機構111をストライカSTとの係合が解除可能なアンロック状態、或いはストライカSTとの係合が解除不能なロック状態に設定するように構成される。これらのラッチ機構111及びロック機構112がそれぞれ、本発明の「ラッチ機構」及び「ロック機構」に相当する。このドアロック構成要素110の更なる具体的な構成については、例えば特開2010−248899号公報に開示の「被係止機構」及び「第1作動機構」等が参照される。
【0020】
図3に示されるように、ハウジング101の第1ハウジング構成体101aと第2ハウジング構成体101bとは、複数(
図2中では4つ)の連結機構130によって一体状に連結されている。本実施例では、ハウジング101の前面に1つの連結機構130が設けられ、ハウジング101の下面に3つの連結機構130が設けられている。この連結機構130が本発明の「連結機構」に相当する。
【0021】
各連結機構130の詳細な構造については
図4〜
図6が参照される。これらの図面に記載の連結機構130は、係合爪140、係合アーム150及び保護部160を備えている。
【0022】
図4に示すように、係合爪140は、第1ハウジング構成体101aに突出状に設けられており、第1ハウジング構成体101aの表面から所定の突出方向(
図5中の第1方向D1)に延出している。係合アーム150は、第2ハウジング構成体101bに設けられており、係合爪140との係合のための開口部151を備えている。係合アーム150は、係合爪140の突出方向と交差する方向(
図5中の第2方向D2)の平面上において、係合爪140の周りを囲むようにリング状(環状)に延在している。ここでいう係合爪140及び係合アーム150がそれぞれ本発明の「係合爪」及び「係合アーム」に相当する。
【0023】
この場合、各連結機構130において係合爪140が係合アーム150の開口部151に嵌め込まれるようにして係合する構造、所謂「スナップフィット係合」による構造が採用されている。具体的には、係合爪140の爪側面141に係合アーム150のアーム内周面152が引っ掛かることによって係合爪140と係合アーム150との間の係止力が生じる。係合爪140が係合アーム150の開口部151に係合した状態では、係合爪140の周りが係合アーム150によって囲まれる。このスナップフィット係合によれば、第1ハウジング構成体101aと第2ハウジング構成体101bとが一体的に連結され、互いに離間する方向(
図4中の上下方向)についての相対移動が阻止される。
【0024】
図5に示されるように、保護部160は、係合アーム150の保護のために当該係合アーム150のアーム外周面153を囲むように第1ハウジング構成体101aに設けられている。具体的に説明すると、この保護部160は、係合爪140と同様に第1ハウジング構成体101aに第1方向D1に突出状に立設され且つ係合アーム150のアーム外周面153に沿って対向配置された立設壁(「リブ」ともう)として構成されている。即ち、この保護部160は、第2方向D2について係合アーム150のうちアーム内周面152とは反対側のアーム外周面153に対向し、且つ一方の壁側面161がアーム外周面153に倣った形状になっている。この場合、第1ハウジング構成体101aの係合爪140と保護部160とによって区画される空間部142に係合アーム150に介在している。この保護部160は、成型時の型抜きの容易性等を考慮した構造として、型抜き領域である空間部162を隔てて分断された2つの立設壁160,160を有する構造、即ちアーム外周面153に沿って断続的に延在する2つの立設壁160,160を有する構造になっている(
図4参照)。
【0025】
この保護部160によれば、車両ドアDR内に侵入した針金等の盗難用部材が係合アーム150に直接的に作用し難くすることができる。例えば、第1ハウジング構成体101aの表面と係合アーム150との間に形成された隙間(
図4中の空間部142に相当する隙間)に針金等の盗難用部材が侵入するのを阻止できる。この場合、盗難用部材が係合アーム150に引っ掛けられて引っ張られるのを保護部160によって防止することで、係合爪140と係合アーム150の開口部151とのスナップフィット係合が解除されるのを阻止することができる。この保護部160を、盗難用部材が係合アーム150に引っ掛けられるのを防止するための「引っ掛け防止手段」、或いはスナップフィット係合が解除されるのを防止するための「スナップフィット係合解除防止手段」ともいうことができる。
【0026】
その結果、スナップフィット係合による第1ハウジング構成体101aと第2ハウジング構成体101bと連結構造の信頼性向上を図ることができ、ハウジング101に収容されたドアロック構成要素110の保護強化が可能になる。また、保護部160は、第1ハウジング構成体101aの一部を利用して構成された立設壁であり、これによりドアロック装置100の構造を簡素化することができる。
【0027】
上記構成の保護部160は、立設壁の壁厚方向について係合アーム150のアーム外周面153から離間するにつれて壁高さが漸減するよう傾斜した傾斜面163を備えている。この傾斜面163は、傾き度合いが一定の平面であってもよいし、或いは曲面であってもよい。このような構成によれば、保護部160の表面に盗難用部材が作用したとき、当該盗難用部材の先端部分を傾斜面163に沿って滑らせて逃がすことによって、当該盗難用部材が保護部160の表面の特定の位置に留まり難くすることができる。その結果、盗難用部材から受ける荷重が保護部160の特定の部位に集中し難くなり、保護部160の破損によって防犯性が低下することを阻止できる。
【0028】
上記構成のドアロック装置100において、
図3中のA領域の連結機構130は複数(本実施の形態では4つ)の連結機構130のうちの最も高所に位置しており、車両ドアDR内に侵入した針金等の盗難用部材の影響を受け易い。このため、本実施の形態では、最も高所に位置するA領域の連結機構130は、盗難用部材に対する上述の保護機能に加えて更なる機能を有する必要がある。この更なる機能について
図7を参照しつつ説明する。
【0029】
図7に示される連結機構130では、係合アーム150は、車両ドアの上下方向及び左右方向の双方によって規定される平面Eに沿って延在している。また、この連結機構130では、立設壁160は、係合アーム150のアーム外周面153のうち最も高所にある上側部位(
図7中の上部外周面153a)よりも上方に配置された壁構成部160aを含むように構成されている。この壁構成部160aが本発明の「壁構成部」に相当する。従って、壁構成部160aは、車両ドアの外部から下方に向けて侵入した針金等の盗難用部材が最初に作用する可能性が高い上部外周面153aを最優先で保護する機能を果たす。
図7では、盗難用部材の作用方向を矢印Fで示している。これにより、下向きに作用する盗難用部材が係合アーム150の上部外周面153aに直接的に作用するのを確実に防止することができる。
【0030】
また、上記係合アーム150は、第2ハウジング構成体101b側の部位を固定端部150aとし、当該固定端部150aから延出して車両ドアの左右方向に延びた先端部を自由端部150bとし、自由端部150bが固定端部150a(回動軸L)を中心にして矢印G方向に回動することによって係合爪140との係合を解除するように構成されている。この係合アーム150の場合、係合爪140との係合解除のために必要な荷重の入力方向は、車両ドアの外部から下方に向けて侵入した盗難用部材による荷重の作用方向(
図7中の矢印Fの方向)とは異なる。従って、仮に立設壁160の壁構成部160aが盗難用部材からの荷重によって係合アーム150のための保護機能を失っても、係合アーム150は盗難用部材からの荷重を受けて係合爪140との係合を解除する方向に容易に動作することがない。即ち、係合アーム150は、盗難用部材から受ける矢印Fの方向の下向き荷重によって同方向に撓む可能性はあるが矢印G方向に回動する可能性は低い。その結果、係合アーム150と係合爪140との係合解除が起こり難い。
【0031】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0032】
上記実施の形態では、
図4に示される連結機構130では、保護部160が断続的に延在する2つの立設壁からなる場合について記載したが、本発明では連続状に延在する1つの立設壁のみによって保護部を形成することもできる。このような保護部の構成については
図8が参照される。
図8に示される連結機構230は、保護部160に代えて保護部260を用いる点においてのみ、
図4に示される連結機構130の構成と相違しており、その他の構成については同一である。保護部260は、係合アーム150のアーム外周面153の全体を囲むように連続状に延在する1つの立設壁のみによって形成されている。この保護部260によれば、
図4中の空間部162を無くすことによって、針金等の盗難用部材が係合アーム150に直接的に作用するのをより確実に阻止することができる。
【0033】
上記実施の形態では、ハウジング101のうち第1ハウジング構成体101aに係合爪140及び保護部160,260を設け、且つ第2ハウジング構成体101bに係合アーム150を設ける場合について記載したが、本発明では第1ハウジング構成体101aに係合アーム150を設け、且つ第2ハウジング構成体101bに係合爪140及び保護部160,260を設けるようにしてもよい。
【0034】
上記実施の形態では、保護部160,260を立設壁によって構成する場合について記載したが、本発明では立設壁以外の要素、例えば突起等を用いて保護部を構築することもできる。
【0035】
本発明では、上記実施の形態の保護部160,260は、係合アーム150のアーム外周面153を少なくとも囲むように構成されていればよく、アーム外周面153に沿って対向配置された立設壁に、係合アーム150のアーム上面(
図5中の上面)を覆う被覆部を加えた構造を採用することもできる。これにより、係合アーム150のアーム外周面153と保護部160,260との間に形成される隙間に
図5中の上方から盗難用部材が作用した場合に、当該隙間に盗難用部材が侵入するのを阻止することができる。
【0036】
本発明では、上記のドアロック装置100の本質的な構造を車両の各車両ドアに適用することができる。例えば、車両前席用の左右のドアや、車両後席用の左右のドア、更には車両後部のドア(バックドア)等に、本発明のドアロック装置100の本質的な構造を適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
100…(車両用)ドアロック装置、101…ハウジング、101a…第1ハウジング構成体、101b…第2ハウジング構成体、110…ドアロック構成要素、111…ラッチ機構、112…ロック機構、120…カバー部材、130,230…連結機構、140…係合爪、142…空間部、150…係合アーム、150a…固定端部、150b…自由端部、151…開口部、152…アーム内周面、153…アーム外周面、153a…上部外周面、160,260…保護部(立設壁)、160a…壁構成部、161…壁側面、162…空間部、163…傾斜面