特許第6303817号(P6303817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6303817ノイズ耐性評価装置、ノイズ耐性評価方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6303817
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ノイズ耐性評価装置、ノイズ耐性評価方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/30 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   G01R31/30
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-110682(P2014-110682)
(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公開番号】特開2015-224995(P2015-224995A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】奈良 茂夫
【審査官】 永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0072845(US,A1)
【文献】 特開2009−252919(JP,A)
【文献】 特開2013−242649(JP,A)
【文献】 特開2004−198111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/30
G01R 31/28
G01R 27/00
G01R 15/00
G01R 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の入力信号ポート、一対の出力信号ポート及びノイズ信号を入力できるノイズ信号ポートを少なくとも含む被測定物に対してSパラメータを測定するSパラメータ測定部と、
前記Sパラメータの内、前記ノイズ信号ポートと前記一対の入力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分、又は、当該ノイズ信号ポートと前記一対の出力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分を評価指数として算出する評価指数算出部と、
前記ノイズ信号ポートに入力されたノイズ信号に対して電磁界解析された電圧波形を高速フーリエ変換した第1の周波数スペクトルを取得し、当該第1の周波数スペクトルと前記評価指数との積により第2の周波数スペクトルを算出する第2の周波数スペクトル算出部と、
前記第2の周波数スペクトルにおいて、電圧が極大値を示す周波数を、ノイズ耐性を評価する周波数として抽出する周波数抽出部と
を備えるノイズ耐性評価装置。
【請求項2】
前記評価指数算出部は、前記ノイズ信号ポートと前記一対の入力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分と、当該ノイズ信号ポートと前記一対の出力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分とのうち、大きい方を評価指数とすることを特徴とする請求項1に記載のノイズ耐性評価装置。
【請求項3】
前記周波数抽出部により抽出した周波数において、前記一対の入力信号ポートから前記一対の出力信号ポートへの信号のトランジェント特性を解析するトランジェント解析部をさらに備える請求項1に記載のノイズ耐性評価装置。
【請求項4】
前記被測定物における前記ノイズ信号ポートに入力されたノイズ信号に対して電磁界解析された電圧波形を電磁界解析によって求め、当該電圧波形を高速フーリエ変換して前記第1の周波数スペクトルを算出する電磁界解析部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のノイズ耐性評価装置。
【請求項5】
前記被測定物に対して得られた前記第2の周波数スペクトルと、他の被測定物に対して得られた第2の周波数スペクトルとを比較し、当該被測定物と当該他の被測定物とにおいて、ノイズ耐性の優劣を予測する予測部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のノイズ耐性評価装置。
【請求項6】
一対の入力信号ポート、一対の出力信号ポート及びノイズ信号を入力できるノイズ信号ポートを少なくとも含む被測定物のノイズ耐性を評価するノイズ耐性評価方法であって、
前記被測定物のSパラメータを測定するSパラメータ測定ステップと、
前記Sパラメータの内、前記ノイズ信号ポートと前記一対の入力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分、又は、当該ノイズ信号ポートと前記一対の出力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分を評価指数として算出する評価指数算出ステップと、
前記ノイズ信号ポートに入力されたノイズ信号に対して電磁界解析された電圧波形を高速フーリエ変換した第1の周波数スペクトルを取得し、当該第1の周波数スペクトルと前記評価指数との積により第2の周波数スペクトルを算出する第2の周波数スペクトル算出ステップと、
前記第2の周波数スペクトルにおいて、電圧が極大値を示す周波数を、ノイズ耐性を評価する周波数として抽出する周波数抽出ステップと
を含むノイズ耐性評価方法。
【請求項7】
コンピュータに、
一対の入力信号ポート、一対の出力信号ポート及びノイズ信号が入力できるノイズ信号ポートを少なくとも含む被測定物に対して測定されたSパラメータを取得し、当該Sパラメータの内、当該ノイズ信号ポートと当該一対の入力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分、又は、当該ノイズ信号ポートと当該一対の出力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分を評価指数として算出する機能と、
前記ノイズ信号ポートに入力されたノイズ信号に対して電磁界解析された電圧波形を高速フーリエ変換した第1の周波数スペクトルを取得し、当該第1の周波数スペクトルと前記評価指数との積により第2の周波数スペクトルを算出する機能と、
前記第2の周波数スペクトルにおいて、電圧が極大値を示す周波数を、ノイズ耐性を評価する周波数として抽出する機能と
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ耐性評価装置、ノイズ耐性評価方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平衡ケーブルの両端で平衡ケーブルのシールド導体をシールドケースの筐体に接続するとともに、平衡ケーブルの線路導体をシールドケースの筐体内に配備された不平衡線路の一端に接続し、一方のシールドケースの不平衡線路の他端を出力ポートに接続し、他方のシールドケースの不平衡線路の他端に該シールドケースの筐体に接地された終端抵抗を接続し、平衡ケーブルにノイズを注入するために平衡ケーブルの予め定めた位置の近傍に平衡ケーブルと電磁結合された結合器を配備し、結合器に入力ポートが接続されるので、平衡ケーブル固有の伝送モードである差動モードおよびコモンモードを考慮しており、平衡ケーブルのシールド性能評価を可能としたシールド性能評価回路が記載されている。
【0003】
特許文献2には、被測定機器の一主面に対し予め定めた間隔を保持するよう近接して配置されこの一主面の予め定めた領域に集中して試験用電波を照射する放射プローブを含む電波照射部と、前記電波照射部に前記試験用電波対応の高周波電力を供給する送信装置と、前記被測定機器の出力信号を演算処理して前記試験用電波の照射により前記出力信号が被る影響の度合である電波耐性を算出する判定装置と、算出した前記電波耐性を視覚化し表示する表示装置とを備える電波耐性試験装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−106859号公報
【特許文献2】特開平7−43409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子機器等に対するノイズ耐性の評価には、ESD(静電気放電:ElectroStatic Discharge)ガンの特性を模擬したノイズ信号を用いた電磁界解析によって行う方法がある。この方法では、電磁界解析により電子機器等に誘起された電圧波形を求め、その電圧波形を高速フーリエ解析した周波数スペクトルにおいて、電圧のピーク(極大値)となる周波数が電子機器等に対して影響を与えるノイズ信号の周波数として抽出する。
本発明の目的は、電磁界解析を採用した場合には抽出できない、ノイズ耐性に影響を及ぼす周波数を的確に抽出できるノイズ耐性評価装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、一対の入力信号ポート、一対の出力信号ポート及びノイズ信号を入力できるノイズ信号ポートを少なくとも含む被測定物に対してSパラメータを測定するSパラメータ測定部と、前記Sパラメータの内、前記ノイズ信号ポートと前記一対の入力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分、又は、当該ノイズ信号ポートと前記一対の出力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分を評価指数として算出する評価指数算出部と、前記ノイズ信号ポートに入力されたノイズ信号に対して電磁界解析された電圧波形を高速フーリエ変換した第1の周波数スペクトルを取得し、当該第1の周波数スペクトルと前記評価指数との積により第2の周波数スペクトルを算出する第2の周波数スペクトル算出部と、前記第2の周波数スペクトルにおいて、電圧が極大値を示す周波数を、ノイズ耐性を評価する周波数として抽出する周波数抽出部とを備えるノイズ耐性評価装置である。
請求項2に記載の発明は、前記評価指数算出部は、前記ノイズ信号ポートと前記一対の入力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分と、当該ノイズ信号ポートと前記一対の出力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分とのうち、大きい方を評価指数とすることを特徴とする請求項1に記載のノイズ耐性評価装置である。
請求項3に記載の発明は、前記周波数抽出部により抽出した周波数において、前記一対の入力信号ポートから前記一対の出力信号ポートへの信号のトランジェント特性を解析するトランジェント解析部をさらに備える請求項1に記載のノイズ耐性評価装置である。
請求項4に記載の発明は、前記被測定物における前記ノイズ信号ポートに入力されたノイズ信号に対して電磁界解析された電圧波形を電磁界解析によって求め、当該電圧波形を高速フーリエ変換して前記第1の周波数スペクトルを算出する電磁界解析部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のノイズ耐性評価装置である。
請求項5に記載の発明は、前記被測定物に対して得られた前記第2の周波数スペクトルと、他の被測定物に対して得られた第2の周波数スペクトルとを比較し、当該被測定物と当該他の被測定物とにおいて、ノイズ耐性の優劣を予測する予測部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のノイズ耐性評価装置である。
請求項6に記載の発明は、一対の入力信号ポート、一対の出力信号ポート及びノイズ信号を入力できるノイズ信号ポートを少なくとも含む被測定物のノイズ耐性を評価するノイズ耐性評価方法であって、前記被測定物のSパラメータを測定するSパラメータ測定ステップと、前記Sパラメータの内、前記ノイズ信号ポートと前記一対の入力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分、又は、当該ノイズ信号ポートと前記一対の出力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分を評価指数として算出する評価指数算出ステップと、前記ノイズ信号ポートに入力されたノイズ信号に対して電磁界解析された電圧波形を高速フーリエ変換した第1の周波数スペクトルを取得し、当該第1の周波数スペクトルと前記評価指数との積により第2の周波数スペクトルを算出する第2の周波数スペクトル算出ステップと、前記第2の周波数スペクトルにおいて、電圧が極大値を示す周波数を、ノイズ耐性を評価する周波数として抽出する周波数抽出ステップとを含むノイズ耐性評価方法である。
請求項7に記載の発明は、コンピュータに、一対の入力信号ポート、一対の出力信号ポート及びノイズ信号が入力できるノイズ信号ポートを少なくとも含む被測定物に対して測定されたSパラメータを取得し、当該Sパラメータの内、当該ノイズ信号ポートと当該一対の入力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分、又は、当該ノイズ信号ポートと当該一対の出力信号ポートとの間におけるSパラメータの差分を評価指数として算出する機能と、前記ノイズ信号ポートに入力されたノイズ信号に対して電磁界解析された電圧波形を高速フーリエ変換した第1の周波数スペクトルを取得し、当該第1の周波数スペクトルと前記評価指数との積により第2の周波数スペクトルを算出する機能と、前記第2の周波数スペクトルにおいて、電圧が極大値を示す周波数を、ノイズ耐性を評価する周波数として抽出する機能とを実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、電磁界解析を採用した場合には抽出できない、ノイズ耐性に影響を及ぼす周波数を的確に抽出できる。
請求項2の発明によれば、すべてのポートに対して行う場合に比べ、ノイズ耐性の評価をより効率よく行える。
請求項3の発明によれば、トランジェント解析を行わない場合に比べ、ノイズ耐性に影響を及ぼす周波数の影響がより明瞭に確認できる。
請求項4の発明によれば、電磁界解析部を備えない場合に比べ、ノイズ耐性の評価が一貫して行える。
請求項5の発明によれば、複数の被測定物のノイズ耐性の優劣が周波数に対して予測できる。
請求項6、7の発明によれば、電磁界解析を採用した場合には抽出できない、ノイズ耐性に影響を及ぼす周波数が的確に抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子装置のノイズ耐性をESDガンにより評価する方法の概要を説明する図である。(a)は、ESDガンにより評価する方法を示す図、(b)は、人体からの静電気放電によるノイズを試験するために国際標準規格IEC61000−4−2で規定された電流波形を示す図、(c)は、ノイズ耐性を電磁界解析により求めるために用いる電圧波形である。
図2】第1の実施の形態におけるノイズ耐性評価装置の構成を説明する図である。
図3】ノイズ耐性評価装置の機能ブロック図である。
図4】差動ケーブルを含む被測定物(DUT)を説明する図である。
図5】5ポートの被測定物のSマトリクスを5ポートのネットワークアナライザ(NA)により測定する場合の接続図及びSマトリクスを示す図である。(a)は、差動ケーブル310の送信部に近い位置に電流クランプを設けた場合、(b)は、差動ケーブル310の中央部に電流クランプを設けた場合、(c)は、差動ケーブル310の受信部に近い位置に電流クランプを設けた場合である。
図6】目的Sマトリクス(L)を4ポートのNAで測定する場合の接続図と測定Sマトリクス、目的Sマトリクス(L)を示す図である。(a)が測定1、(b)が測定2、(c)が測定3である。
図7】目的Sマトリクス(C)を4ポートのNAで測定する場合の接続図と測定Sマトリクス、目的Sマトリクス(C)を示す図である。(a)が測定2、(b)が測定3に対応する。
図8】目的Sマトリクス(R)を4ポートのNAで測定する場合の接続図と測定Sマトリクス、目的Sマトリクス(R)を示す図である。(a)が測定2、(b)が測定3に対応する。
図9】ESDガンによる放電によって差動ケーブルの受信部側に誘起された電圧波形と電圧波形を高速フーリエ変換(FFT)したFFT周波数スペクトルである。(a)は電圧波形、(b)はFFT周波数スペクトルである。
図10】第1の実施の形態におけるトランジェント解析を行う周波数の抽出方法をケーブルAに適用して説明する図である。(a)は電磁界解析により求めたFFT周波数スペクトル、(b)は評価指数(|S53−S54|)、(c)は(a)のFFT周波数スペクトルと(b)の評価指数(|S53−S54|)との積である積周波数スペクトルである。
図11】ケーブルAの154MHzにおけるトランジェント解析で得られた信号の受信部でのアイパタンである。(a)はノイズ信号電圧5V、(b)はノイズ信号電圧10V、(c)はノイズ信号電圧20Vである。
図12】ケーブルAの223MHzにおけるトランジェント解析で得られた信号の受信部でのアイパタンである。(a)はノイズ信号電圧5V、(b)はノイズ信号電圧10V、(c)はノイズ信号電圧20Vである。
図13】ケーブルAの633MHzにおけるトランジェント解析で得られた信号の受信部でのアイパタンである。(a)はノイズ信号電圧5V、(b)はノイズ信号電圧10V、(c)はノイズ信号電圧20Vである。
図14】ケーブルAの644MHzにおけるトランジェント解析で得られた信号の受信部でのアイパタンである。(a)はノイズ信号電圧5V、(b)はノイズ信号電圧10V、(c)はノイズ信号電圧20Vである。
図15】第1の実施の形態におけるトランジェント解析を行う周波数の抽出方法をケーブルBに適用して説明する図である。(a)は電磁界解析により求めたFFT周波数スペクトル、(b)は評価指数(|S53−S54|)、(c)は(a)のFFT周波数スペクトルと(b)の評価指数(|S53−S54|)との積である積周波数スペクトルである。
図16】第1の実施の形態におけるノイズ耐性評価方法のフローチャートを示す図である。
図17】ケーブルBの154MHzにおけるトランジェント解析で得られた信号の受信部でのアイパタンである。(a)はノイズ信号電圧5V、(b)はノイズ信号電圧10V、(c)はノイズ信号電圧20Vである。
図18】ケーブルBの644MHzにおけるトランジェント解析で得られた信号の受信部でのアイパタンである。(a)はノイズ信号電圧5V、(b)はノイズ信号電圧10V、(c)はノイズ信号電圧20Vである。
図19】ケーブルA、Bの優劣について、ESD耐性試験による予測、アイパタンによる評価、積周波数スペクトルによる予測、及び予測と評価との一致について示す図である。(a)は、ESD耐性評価による予測、アイパタンによる評価、及び予測と評価との一致を示し、(b)は、積周波数スペクトルによる予測、アイパタンによる評価、及び予測と評価との一致を示す。
図20】第2の実施の形態におけるノイズ耐性評価方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
(ノイズ耐性)
図1は、電子装置1のノイズ耐性をESDガン2により評価する方法の概要を説明する図である。図1(a)は、ESDガン2により評価する方法を示す図、図1(b)は、人体からの静電気放電によるノイズを試験するために国際標準規格IEC61000−4−2で規定された電流波形を示す図、図1(c)は、ノイズ耐性を電磁界解析により求めるために用いる電圧波形である。なお、図1(b)において、縦軸は電流、横軸は時間、図1(c)において、縦軸は電圧、横軸は時間である。
【0010】
ノイズ耐性評価とは、電子装置1において、電子装置1の外側から侵入するノイズに対する強さ(耐性)を評価することをいう。イミュニティ(Immunity)試験とも呼ばれる。
【0011】
ESDガン2によるノイズ耐性を評価する方法について説明する。ここでは、ESDガン2によるノイズ耐性の評価をノイズ耐性試験と呼ぶことがある。
図1(a)に示すように、例えば画像形成装置を電子装置1とした場合、接地線3を共通にして、ESDガン2により、電子装置1(画像形成装置)の筐体に対して放電4を発生させる。そして、放電4によって電子装置1内の電子回路などに誘起されるノイズの影響を評価する。この方法は、一般に完成した電子装置1(実機)に対して行われる。ここでは、電磁界解析を用いてシミュレーションする場合を例に説明する。なお、電子装置1に対して放電を発生させるので、ここではESDの筐体解析と表現する。
ESDガン2が発生する放電4は、図1(b)に示す国際標準規格IEC61000−4−2で規定された電流波形にしたがった波形となっている。すなわち、国際標準規格IEC61000−4−2では、電流Iがピークの10%からピークまで立ち上がる時間が0.7nsec〜1nsecとなっている。短い期間で立ち上がるパルス波形である。
【0012】
ESDガン2によるノイズ耐性を評価する方法は電子装置1(実機)を準備する必要がある。よって、シミュレーションによって、ノイズ耐性を評価することが好ましい。
図1(c)は、電磁界解析においてノイズ耐性を求めるために用いる電圧波形であって、図1(b)の国際標準規格IEC61000−4−2の電流波形に沿って設定されている。この電圧波形により電磁界解析すれば、電子装置1(実機)を完成させる前に、シミュレーションによって、ESD耐性を評価しうる。そして、ESD耐性を評価した結果を、電子装置1の設計にフィードバックすることで、電子装置1のESD耐性が向上する。
【0013】
(ノイズ耐性評価装置100の構成)
図2は、第1の実施の形態におけるノイズ耐性評価装置100の構成を説明する図である。
ノイズ耐性の評価は、ノイズ耐性評価装置100と電磁界解析装置(EMFA:ElectroMagnetic Field Analyzer。以下ではEMFAと表記する。)200とを組み合わせて行われる。
EMFA200は、電子装置1の設計データなどに基づいて、ESDガン2からの放電の影響をシミュレーションする。すなわち、ESDガン2から放電を発生させたと同様の状態において、誘起される電圧波形を算出する。そして、電圧波形を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform。以下ではFFTと表記する。)することにより周波数スペクトル(ここでは、第1の周波数スペクトルの一例としてのFFT周波数スペクトルと表記する。)に変換する。
EMFA200は、電磁界解析部の一例である。
【0014】
ノイズ耐性評価装置100は、図2に破線で囲って示すように、PC(Personal Computer)などである演算装置10、ネットワークアナライザ(NA:Network Analyzer。以下ではNAと表記する。)20、トランジェント解析装置(TA:Transient Analyzer。以下ではTAと表記する。)30を備えている。
NA20は、被測定物(DUT:Device Under Test。以下ではDUTと表記する。)300が接続されて、DUT300のSパラメータを測定する。なお、後述するように、DUT300のポートに対応するSパラメータの行列をSマトリクスと呼ぶ。
TA30は、指定された周波数の信号についてトランジェント解析を行い、DUT300内を伝搬する波形(信号波形であって後述するアイパタン)、すなわち、トランジェント特性をシミュレーションする。
なお、NA20がTA30の機能を有する場合には、TA30を個別に設ける必要はない。また、後述する第2の実施の形態で示すように、トランジェント解析を行なわないで評価する場合には、ノイズ耐性評価装置100は、TA30を備えなくともよい。
【0015】
演算装置10は、中央演算処理装置(以下ではCPUと表記する。)11、メモリ(以下ではMEMと表記する。)12、入出力デバイス(以下ではI/Oと表記する。)13、インターフェイス(以下ではIFと表記する)14〜16を備えている。
そして、CPU11、MEM12、I/O13、IF14〜16は、信号バス17で接続されている。
図2では、IF14にNA20が、IF15にTA30が、IF16にEMFA200が接続されている。
【0016】
CPU11は、論理演算及び算術演算を実行するALU(Arithmetic Logical Unit:論理算術演算ユニット)などを備えている。
MEM12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク(HDD)などから構成され、CPU11が行う論理演算及び算術演算を実行するためのプログラム及びデータを保持している。
I/O13は、ノイズ耐性評価装置100の状態に関する情報を表示するディスプレイなどの出力デバイス及びユーザがノイズ耐性評価装置100に指示を与えるキーボード、タッチパネル又は/及びボタンなどの入力デバイスを備えている。
IF14〜16は、シリアル又はパラレルのインターフェイスであって、それぞれに接続された装置(NA20、TA30、EMFA200)とデータのやり取りを行う。
【0017】
すなわち、演算装置10におけるCPU11は、MEM12に格納されたプログラム、データを読み出し、プログラムを実行する。そして、IF14〜16を介してNA20、TA30又はEMFA200が処理したデータを受信し、予め定められた演算を行い、演算の結果をMEM12に格納したり、I/O13に送信したりする。さらに、CPU11は、演算の結果をIF14〜16を介してNA20、TA30又はEMFA200に送信し、NA20、TA30又はEMFA200に処理の実行を指示する。
【0018】
なお、EMFA200も、演算装置10と同様な構成を備えている。よって、ノイズ耐性評価装置100がEMFA200の機能を含んでいてもよい。
【0019】
(ノイズ耐性評価装置100の機能ブロック)
図3は、ノイズ耐性評価装置100の機能ブロック図である。ここでは、ノイズ耐性評価装置100の他に、EMFA200、DUT300を合わせて示している。
ノイズ耐性評価装置100は、後述する各種のデータを記憶する記憶部110、DUT300のSパラメータ(後述するSマトリックス、SパラメータはSマトリクスの要素)を測定するSパラメータ測定部120、予め定められたSパラメータの差分(評価指数)を算出する評価指数算出部130を備えている。Sパラメータ及び評価指数は、記憶部110に記憶される。
さらに、ノイズ耐性評価装置100は、EMFA200から、電磁界解析により得られたノイズが入力された際の電圧波形(電磁界解析データ)及び電磁界解析データをFFTして得られたFFT周波数スペクトルを取得し、記憶部110に記憶している。
そして、ノイズ耐性評価装置100は、記憶部110から読み出した評価指数と、記憶部110から読み出したFFT周波数スペクトルとの積(第2の周波数スペクトルの一例としての積周波数スペクトルと表記する。)を算出する第2の周波数スペクトル算出部の一例としての積周波数スペクトル算出部140を備えている。積周波数スペクトルは、記憶部110に記憶される。
さらに、ノイズ耐性評価装置100は、積周波数スペクトルからDUT300における信号伝達に影響を与える周波数を抽出する周波数抽出部150を備えている。そして、この抽出された周波数に基づいて、信号の伝達をシミュレーションする(トランジェント解析を行う)トランジェント解析部160を備えている。トランジェント解析部160により得られた信号波形は、記憶部110に記憶される。
また、後述する第2の実施の形態で説明するように、DUT300の積周波数スペクトルと他のDUT300の積周波数スペクトルとを比較して、複数のDUT300に対してノイズ耐性の優劣を予測する予測部170をさらに備えてもよい。
【0020】
図3における記憶部110、Sパラメータ測定部120、トランジェント解析部160は、それぞれ図2の演算装置10のMEM12、NA20、TA30に対応する。
そして、評価指数算出部130、積周波数スペクトル算出部140、周波数抽出部150、予測部170は、図2のCPU11のプログラムによる処理に対応する。
なお、図3では、記憶部110を介して、データのやり取りが行われるとしたが、記憶部110を介さないで、データのやり取りが行われてもよい。
【0021】
(差動ケーブル310)
以下では、電子装置1内に設けられた差動ケーブル310をDUT300の一例として、第1の実施の形態におけるノイズ耐性評価装置100及びノイズ耐性評価方法について説明する。
図4は、差動ケーブル310を含むDUT300を説明する図である。DUT300は、差動ケーブル310と、差動ケーブル310にノイズ信号(ノイズ)等を入力して、ノイズの影響(相互作用)を評価する電流クランプ320L、320C、320Rとを備えている。なお、図4においては、差動ケーブル310に対して送信部400に近い位置(側)に電流クランプ320L、受信部500に近い位置(側)に電流クランプ320R、差動ケーブル310の中央部に電流クランプ320Cを設けているが、1個の電流クランプ320で、それぞれの位置に移動させてもよい。よって、電流クランプ320L、320C、320Rをそれぞれ区別しない場合は電流クランプ320と表記する。
【0022】
そして、差動ケーブル310は、一対の信号線311、312とそれを包む被覆部313とを備えている。なお、被覆部313は、信号線311、312の保護及び絶縁のために設けられたプラスティックで構成されたフィルム層であってもよく、さらに金属の編線で構成された電磁シールド層を含んでもよい。
そして、一対の信号線311、312の一端部側には、フィルタ314が設けられているとする。フィルタ314は、例えば、信号線311、312と電気的に結合し、信号線311、312を伝送する信号の同相成分をキャンセルし、差動成分を透過する。なお、フィルタ314を備えていなくともよい。
このように、差動ケーブル310がフィルタ314を備える場合、差動ケーブル310は送信部400と受信部500との間で対称ではない。よって、差動ケーブル310に対するノイズの影響を評価するためには、少なくとも、差動ケーブル310の送信部400に近い側(送信部側)、中央部及び受信部500に近い側(受信部側)のそれぞれに電流クランプ320L、320C、320Rを設けて、差動ケーブル310に対するノイズの影響を評価することが求められる。
【0023】
差動ケーブル310における一対の信号線311、312の一端部は、それぞれポート(Port)1、ポート2であって、送信部400に接続されている。信号線311、312の他端部は、それぞれポート3、ポート4であって、受信部500に接続されている。すなわち、差動ケーブル310は、送信部400と受信部500との間に設けられている。そして、送信部400から入力信号ポートの一例としてのポート1、ポート2に送信された差動信号は、一対の信号線311、312を伝搬し、出力信号ポートの一例としてのポート3、ポート4から受信部500で受信される。すなわち、ポート1、ポート2から、ポート3、ポート4に信号が伝達(信号伝達)される。
また、電流クランプ320L、320C、320Rは、ポート5、5、5に接続され、ポート5、5、5は、ノイズ発生源(不図示)に接続されている。なお、1個の電流クランプ320を移動して、電流クランプ320L、320C、320Rとする場合は、ポート5、5、5は、1個のポート5となる。よって、ポート5、5、5をそれぞれ区別しない場合はポート5と表記する。ポート5はノイズ信号ポートの一例である。
すなわち、図4に示すDUT300は、電流クランプ320L、320C、320R毎に見ると5ポート回路である。
これらのポート1〜5のそれぞれには、接続を容易にするために、コネクタが設けられている。そして、これらのコネクタにより、機器、接続用のケーブル(接続ケーブル)、計測器などに設けられたコネクタと接続するようになっている。
【0024】
“ポート”という用語は、DUT300において、信号の入出力に使用される端子に対して、広く用いられるとともに、NA20において、信号の入出力に使用される端子にも広く用いられる。
そこで、DUT300のポートとNA20のポートとを区別するため、図4に示すように、DUT300のポート1〜5を、ポートD1〜D5と表記する。NA20については、後述する図5に示すように、5ポート(ポート1〜5)備える場合は、ポートN1〜N5と表記し、後述する図6、7、8に示すように、4ポート(ポート1〜4)備える場合は、ポートN1〜N4と表記する。
【0025】
(Sマトリクスの測定)
図5は、5ポートのDUT300のSマトリクスを5ポートのNA20により測定する場合の接続図及びSマトリクスを示す図である。図5(a)は、差動ケーブル310の送信部400に近い位置に電流クランプ320Lを設けた場合、図5(b)は、差動ケーブル310の中央部に電流クランプ320Cを設けた場合、図5(c)は、差動ケーブル310の受信部500に近い位置に電流クランプ320Rを設けた場合である。
なお、図5において測定されるSマトリクスが求めたい(目的とする)Sマトリクスであるので、目的Sマトリクスと表記し、電流クランプ320の位置毎に、目的Sマトリクス(L)、目的Sマトリクス(C)、目的Sマトリクス(R)と表記する。
【0026】
図5(a)に示す電流クランプ320Lに対する目的Sマトリクス(L)を測定する場合は、DUT300のポートD5に対して、目的Sマトリクス(L)を測定する。なお、ポートに“L”を付記したので、Sパラメータにおける添え字を“5”と表記する。
図5(b)に示す電流クランプ320Cに対する目的Sマトリクス(C)を測定する場合は、DUT300のポートD5に対して、目的Sマトリクス(C)を測定する。なお、ポートに“C”を付記したので、Sパラメータにおける添え字を“5”と表記する。
図5(c)に示す電流クランプ320Rに対する目的Sマトリクス(R)を測定する場合は、DUT300のポートD5に対して、目的Sマトリクス(R)を測定する。なお、ポートに“R”を付記したので、Sパラメータにおける添え字を“5”と表記する。
【0027】
上記のように、5ポートのDUT300を5ポートのNA20で測定する場合、ポート数が互いに一致するので、DUT300のポートD1〜D5は、NA20のポートN1〜N5に接続しうる。よって、目的Sマトリクス(L)、目的Sマトリクス(C)、目的Sマトリクス(R)をそれぞれ1回測定すればよく、測定の回数は3回となる。
【0028】
しかし、図4において、電流クランプ320を備えない場合、差動ケーブル310は4ポートであるので、その評価は、4ポートのネットワークアナライザで足りる。よって、ポート数が4以下のネットワークアナライザが普及している。一方、ポート数が5以上のネットワークアナライザは、高価である。
なお、ネットワークアナライザ、Sマトリクス及びその要素であるSパラメータは、高周波回路の評価に広く使用されているので、詳細な説明を省略する。
【0029】
次に、図4に示した5ポートのDUT300を、4ポートのNA20を用いて測定する方法を説明する。
5ポートのDUT300に対して目的Sマトリクス(L)、目的Sマトリクス(C)、目的Sマトリクス(R)を4ポートのNA20で測定する場合、目的Sマトリクス(L)、目的Sマトリクス(C)、目的Sマトリクス(R)のそれぞれに対して、測定を複数回繰り返すことが必要になる。ここでは、4ポートのNA20で測定されるSマトリクスを測定Sマトリクスと表記する。なお、測定SマトリクスのSパラメータの添え字(S11の1、1など)は、NA20のポートN1〜N4の番号に対応する。
【0030】
図6は、目的Sマトリクス(L)を4ポートのNA20で測定する場合の接続図と測定Sマトリクス、目的Sマトリクス(L)を示す図である。図6(a)が測定1、図6(b)が測定2、図6(c)が測定3である。すなわち、目的Sマトリクス(L)は、測定1〜3の3ステップで測定される。そして、図6(a)、(b)、(c)において、左側に接続図を、右側に対応する測定Sマトリクス及び目的Sマトリクス(L)を示している。
【0031】
図6(a)の接続図に示すように、測定1では、DUT300のポートD1、D2、D3、D4をNA20のポートN1〜N4に接続している。DUT300のポートD5(ポートD5、D5でも同じ)は、NA20のポートN1〜N4のいずれにも接続されていない。
この場合、4×4の測定Sマトリクスが得られる。
測定1では、DUT300のポートD1〜D4の番号1〜4は、NA20のポートN1〜N4の番号1〜4と一致している。よって、破線で囲って示すように、測定1による測定SマトリクスのS11〜S44は、目的Sマトリクスにおける4×4のS11〜S44に対応する。
そして、測定Sマトリクスは、ポート5に関するSパラメータを測定しないので、目的Sマトリクス(L)、目的Sマトリクス(C)、目的Sマトリクス(R)に共通である。よって、目的Sマトリクスにおいて、Sパラメータの添え字を“5”と表記している。
すなわち、測定1により、目的Sマトリクス(L)(目的Sマトリクス(C)、目的Sマトリクス(R)も同じ)における一部のSパラメータが得られる。
【0032】
図6(b)の接続図に示すように、測定2では、DUT300のポートD3、D4に終端素子TR(Terminal Resitor)が取り付けられ、ポートD5がNA20のポートN3に接続されている。なお、DUT300のポートD1、D2は、測定1と同様に、NA20のポートN1、N2に接続されている。
この場合、3×3の測定Sマトリクスが得られる。
測定2では、DUT300のポートD1、D2の番号1、2は、NA20のポートN1、N2の番号1、2と一致している。よって、破線で囲って示すように、測定SマトリクスのS11、S12、S21、S22が、目的SマトリクスのS11、S12、S21、S22に対応する。また、DUT300のポートD5が、NA20のポートN3に接続されているので、測定Sマトリクスにおける番号3が、目的Sマトリクスの番号5に対応する。よって、一点鎖線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS13、S23が、目的SマトリクスのS15、S25にそれぞれ対応し、二点鎖線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS31、S32が、目的SマトリクスのS51、S52にそれぞれ対応する。さらに、点線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS33が、目的SマトリクスのS5に対応する。
このようにして、測定2において、測定1で得られなかった目的Sマトリクス(L)の一部のSパラメータが得られる。
なお、終端素子TRは、終端抵抗とも呼ばれ、一般的なネットワークアナライザでは50Ωである。
【0033】
図6(c)の接続図に示すように、測定3では、DUT300のポートD1、D2に終端素子TRが取り付けられ、ポートD5がNA20のポートN1に接続されている。そして、DUT300のポートD3、D4がNA20のポートN3、N4に接続されている。
この場合、3×3の測定Sマトリクスが得られる。
測定3では、DUT300のポートD3、D4の番号3、4は、NA20のポートN3、N4の番号3、4と一致している。よって、破線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS33、S34、S43、S44が、目的Sマトリクス(L)のS33、S34、S43、S44にそれぞれ対応する。また、DUT300のポートD5が、NA20のポートN1に接続されているので、測定Sマトリクスにおける番号1が、目的Sマトリクスの番号5に対応する。よって、一点鎖線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS31、S41が、目的Sマトリクス(L)のS35、S45にそれぞれ対応し、二点鎖線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS13、S14が、目的Sマトリクス(L)のS53、S54にそれぞれ対応する。さらに、点線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS11が、目的Sマトリクス(L)のS5に対応する。
測定3において、測定1、2で得られなかった目的Sマトリクス(L)の残りのSパラメータが得られる。
【0034】
図7は、目的Sマトリクス(C)を4ポートのNA20で測定する場合の接続図と測定Sマトリクス、目的Sマトリクス(C)を示す図である。図7(a)が測定2、図7(b)が測定3に対応する。すなわち、目的Sマトリクス(C)は、測定2、3の3ステップで測定される。これは、図6(a)で説明したように、目的Sマトリクス(L)における測定1が、目的Sマトリクス(C)に共通だからである。なお、接続図と測定Sマトリクス及び目的Sマトリクス(C)の関係は図6(b)、(c)と同様である。
【0035】
図7(a)に示す測定2は、図6(b)に示した目的Sマトリクス(L)と同様であるので、説明を省略する。
また、図7(b)に示す測定3は、図6(c)に示した目的Sマトリクス(L)と同様であるので、説明を省略する。
なお、図7(a)、(b)では、目的Sマトリクス(C)におけるSパラメータの添え字において、“5”としている。
【0036】
図8は、目的Sマトリクス(R)を4ポートのNA20で測定する場合の接続図と測定Sマトリクス、目的Sマトリクス(R)を示す図である。図8(a)が測定2、図8(b)が測定3に対応する。すなわち、目的Sマトリクス(R)は、測定2、3の3ステップで測定される。これは、図6(a)で説明したように、目的Sマトリクス(L)における測定1が、目的Sマトリクス(R)に共通だからである。なお、接続図と測定Sマトリクス及び目的Sマトリクス(R)の関係は図6(b)、(c)と同様である。
【0037】
図8(a)に示す測定2は、図6(b)に示した目的Sマトリクス(L)と同様であるので、説明を省略する。
また、図8(b)に示す測定3は、図6(c)に示した目的Sマトリクス(L)と同様であるので、説明を省略する。
なお、図8(a)、(b)では、目的Sマトリクス(R)におけるSパラメータの添え字において、“5”としている。
【0038】
以上説明したように、5ポートのDUT300の目的Sマトリクス(L)、目的Sマトリクス(C)、目的Sマトリクス(R)を4ポートのNA20で求める場合、7回の測定を行えばよい。
なお、図6、7、8に示したように、電流クランプ320L、320C、320R毎に測定を行うが、1個の電流クランプ320を、差動ケーブル310に対する位置を移動させて測定を行えばよい。
このようにすることで、送信部400側と受信部500側とで、対称でない差動ケーブル310の送信部400側(#L)、受信部500側(#R)、中央部(#C)に電流クランプ320を配置して、Sマトリクスを測定することで、後述するように、最もノイズの影響を受けやすい位置が特定される。
【0039】
(第1の実施の形態における差動ケーブル310のノイズ耐性評価方法)
次に、第1の実施の形態における差動ケーブル310のノイズ耐性評価方法を説明する。
図9は、ESDガン2による放電によって差動ケーブル310の受信部側に誘起された電圧波形とこの電圧波形をFFTしたFFT周波数スペクトルである。図9(a)は電圧波形、図9(b)はFFT周波数スペクトルである。
【0040】
図9(a)に示すように、図1(b)に示した電流波形の放電がESDガン2により、差動ケーブル310の外側に与えられると、差動ケーブル310の受信部500側において、信号線311、312間で振動する電圧波形が観察される。そして、図9(b)に示すように、この電圧波形をFFTしたFFT周波数スペクトルには、154MHz、644MHzに電圧のピーク(極大値)が表れている。
よって、ESD評価試験では、差動ケーブル310は、154MHz、644MHzがもっとも影響を受けやすい周波数と判断されてしまう。
すなわち、図1(c)に示した電圧波形による電磁界解析によって求められるFFT周波数スペクトルにおいて、電圧のピーク(極大値)に対応する周波数においてトランジェント解析を行えば、差動ケーブル310の評価となると考えられてしまう。
【0041】
しかし、以下に説明するように、差動ケーブル310において、影響を受けやすいノイズ信号の周波数は、電磁界解析から求められるFFT周波数スペクトルの電圧のピーク(極大値)に対応する周波数以外にもある。
以下に、差動ケーブル310が影響を受けやすいノイズの周波数を求める方法を説明する。ここでは、影響を受けやすい周波数を、電磁界解析とSパラメータとから求める。
【0042】
図10は、第1の実施の形態におけるトランジェント解析を行う周波数の抽出方法をケーブルAに適用して説明する図である。図10(a)は電磁界解析により求めたFFT周波数スペクトル、図10(b)は評価指数(|S53−S54|)、図10(c)は図10(a)のFFT周波数スペクトルと図10(b)の評価指数(|S53−S54|)との積である積周波数スペクトルである。
なお、図4から分かるように、SパラメータにおけるS53は、受信部500側のポートD3から電流クランプ320であるポートD5への伝達係数、S54は受信部500側のポートD4から電流クランプ320であるポートD5への伝達係数である。すなわち、S53、S54は、差動ケーブル310から差動ケーブル310の外側(電流クランプ320)への信号の伝達を示すSパラメータである。また、S35、S45は、差動ケーブル310の外側(電流クランプ320)から差動ケーブル310への信号の伝達を示すSパラメータであると言える。一般に、S53はS35と同等のことが多く、S54はS45と同等のことが多いため、説明の便宜上、外側からのノイズの影響の大きさを示すパラメータとして、S53、S54を用いて説明する。
そして、評価指数(|S53−S54|)を求めることにより、一対の信号線311、312間に表れるノイズの影響の大きさが分かる。すなわち、評価指数(|S53−S54|)が大きいほど、受信部500側に表れるノイズの影響が大きいことになる。
一方、送信部400側のポートD1、D2に対する評価指数(|S51−S52|)が、評価指数(|S53−S54|)より大きい場合には、評価指数(|S53−S54|)に代えて、評価指数(|S51−S52|)を用いればよい。
すなわち、送信部400側又は受信部500側のいずれかにおいて、ノイズの影響が表れやすい方について、評価指数を抽出すればよい。
さらに、(|S53−S54|)と(|S35−S45|)との関係のように、添え字の順序を入れ替えたSパラメータが異なる場合には、本来の目的を考慮して(|S35−S45|)を用いればよい。
【0043】
図10(a)に示すFFT周波数スペクトルにおいて、154MHz、644MHzに電圧のピークが見られる。
【0044】
一方、図10(b)に示す評価指数(|S53−S54|)においては、223MHz、680MHz、880MHzにピークが見られる。
【0045】
そして、図10(c)に示すように、図10(a)のFFT周波数スペクトルと図10(b)の評価指数(|S53−S54|)との積である積周波数スペクトルにおいて、154MHz、223MHz、644MHz、880MHzに電圧のピーク(極大値)が見られる。
【0046】
図11は、ケーブルAの154MHzにおけるトランジェント解析で得られた信号の受信部500でのアイパタン(Eye Pattern)である。横軸は時間(nsec)、縦軸は受信部500でのモニタ電圧である。図11(a)はノイズ信号電圧5V、図11(b)はノイズ信号電圧10V、図11(c)はノイズ信号電圧20Vである。ノイズ信号電圧は、電流クランプ320であるポートD5に入力した正弦波のピーク間電圧(ピークツーピーク(p to p)電圧)である。
154MHzは、図10(a)に示した、電磁界解析において電圧のピーク(極大値)が表れた周波数である。
アイ(Eye)の開口は、電圧が大きくなるにしたがって小さくなっていくが、ノイズ信号電圧20Vでも潰れていない。
【0047】
図12は、ケーブルAの223MHzにおけるトランジェント解析で得られた信号の受信部500でのアイパタンである。図12(a)はノイズ信号電圧5V、図12(b)はノイズ信号電圧10V、図12(c)はノイズ信号電圧20Vである。横軸、縦軸、ノイズ信号電圧は図11と同じである。
223MHzは、図10(b)に示した評価指数(|S53−S54|)が大きい周波数である。
アイの開口は、ノイズ信号電圧5Vで小さく、ノイズ信号電圧10V、20Vでは潰れている。
すなわち、233MHzは、図10(a)の電磁界解析によるFFT周波数スペクトルにおいて電圧のピーク(極大値)として表れなかった周波数である。しかし、電磁界解析において電圧のピーク(極大値)として表れた154MHzより、ケーブルAに与える影響が大きいことが分かる。
【0048】
図13は、ケーブルAの633MHzにおけるトランジェント解析で得られた信号の受信部500でのアイパタンである。図13(a)はノイズ信号電圧5V、図13(b)はノイズ信号電圧10V、図13(c)はノイズ信号電圧20Vである。横軸、縦軸、ノイズ信号電圧は図11と同じである。
633MHzは、図10(b)に示したSパラメータの差分が大きく表れた周波数である。
アイの開口は、ノイズ信号電圧5Vですでに小さくなっていて、ノイズ信号電圧10V、20Vでさらに小さくなっている。
すなわち、633MHzも、図10(a)の電磁界解析によるFFT周波数スペクトルにおいて電圧のピーク(極大値)として表れなかった周波数である。しかし、電磁界解析において表れた154MHzより、ケーブルAに与える影響が大きいことが分かる。
【0049】
図14は、ケーブルAの644MHzにおけるトランジェント解析で得られた信号の受信部500でのアイパタンである。図14(a)はノイズ信号電圧5V、図14(b)はノイズ信号電圧10V、図14(c)はノイズ信号電圧20Vである。横軸、縦軸、ノイズ信号電圧は図11と同じである。
644MHzは、図10(a)に示した、電磁界解析において電圧のピークが表れた周波数である。
アイの開口は、ノイズ信号電圧5Vですでに小さく、ノイズ信号電圧10V、20Vでさらに小さくなっている。
すなわち、644MHzは、図10(a)の電磁界解析によるFFT周波数スペクトルにおいて電圧のピークとして表れた周波数である。しかし、図10(b)に示した評価指数(|S53−S54|)において電圧のピーク(極大値)として表れた周波数である223MHzより、ケーブルAに与える影響が小さいことが分かる。
【0050】
以上説明したように、トランジェント解析においてアイが最も潰れた周波数は、図10(b)の評価指数(|S53−S54|)において電圧のピーク(極大値)として表れた223MHzである。
すなわち、電磁界解析のみで周波数を抽出し、その周波数でトランジェント解析を行って差動ケーブル310を評価すると、悪い影響が表れた223MHzが抽出できない。このため、電磁界解析で得られたFFT周波数スペクトルにおける電圧のピーク(極大値)による周波数の抽出する方法は、差動ケーブル310を評価するために、トランジェント解析を行う周波数を抽出する方法として不十分である。
【0051】
よって、第1の実施の形態では、電磁界解析により求められたFFT周波数スペクトルと評価指数(|S53−S54|)との積である積周波数スペクトルにより、差動ケーブル310を評価する周波数を抽出している。
なお、差動ケーブル310を評価する周波数は、例えば、図10(c)に示す積周波数スペクトルにおいて、例えば−40dBを閾値に設定し、それ以上において電圧のピーク(極大値)が表れる周波数としてもよい。このようにすれば、ノイズ耐性評価装置100において、プログラムによって、差動ケーブル310を評価するために、トランジェント解析を行う周波数が抽出される。
【0052】
図15は、第1の実施の形態におけるトランジェント解析を行う周波数の抽出方法をケーブルBに適用して説明する図である。図15(a)は電磁界解析により求めたFFT周波数スペクトル、図15(b)は評価指数(|S53−S54|)、図15(c)は図15(a)のFFT周波数スペクトルと図15(b)の評価指数(|S53−S54|)との積である積周波数スペクトルである。詳細は、図10と同様であるので、説明を省略する。
【0053】
図15(a)に示すように、FFT周波数スペクトルにおいては、154MHz、644MHzに電圧のピークが見られる。
図15(b)に示すように、評価指数(|S53−S54|)においては、234MHz、686MHzにピークが見られる。
図15(c)に示すように、FFT周波数スペクトルと評価指数(|S53−S54|)との積である積周波数スペクトルにおいても、154MHz、644MHzに加え、234MHz、686MHzに電圧ピークがある。
このように、FFT周波数スペクトルに評価指数(|S53−S54|)を掛けることで、得られた積周波数スペクトルにより、差動ケーブル310に影響を与える周波数が抽出される。
【0054】
図16は、第1の実施の形態におけるノイズ耐性評価方法のフローチャートを示す図である。
ここでは、図3に示したノイズ耐性評価装置100の機能ブロックにより説明する。
Sパラメータ測定部120により、DUT300に対してSマトリクスの測定を行う(ステップ1、図16ではS1と表記する。以下同様とする。)(Sパラメータ測定ステップ)。
次に、評価指数算出部130により、Sマトリクスにおいてノイズ信号ポート(例えば、ポート5)と出力信号ポートとの伝達特性を示すSパラメータの差分(評価指数)を算出する(ステップ2)(評価指数算出ステップ)。
そして、EMFA200からFFT周波数スペクトルを取得する(ステップ3)。
引き続き、積周波数スペクトル算出部140により、評価指数とFFT周波数スペクトルとの積周波数スペクトルを算出する(ステップ4)(第2の周波数スペクトル算出ステップの一例としての積周波数スペクトル算出ステップ)。
次いで、周波数抽出部150により、予め定められた閾値より高い電圧のピーク(極大値)を示す周波数を、トランジェント解析を行う周波数として抽出する(ステップ5)(周波数抽出ステップ)。
そして、トランジェント解析部160により、抽出された周波数のノイズ信号を用いてトランジェント解析を行う(ステップ6)。
以上により、差動ケーブル310のノイズ耐性の評価が終了する。
【0055】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、積周波数スペクトルにおいて、予め定められた閾値より大きい電圧のピーク(極大値)を示す周波数を抽出し、その周波数でトランジェント解析を行うことで、ノイズ耐性の評価を行った。
ここでは、積周波数スペクトルで得られる値によって、差動ケーブル310のノイズ耐性を評価する方法を説明する。
ここでも、ケーブルA及びケーブルBにより説明する。
なお、ESDガン2によるESD耐性試験を行った結果、ケーブルAがケーブルBより悪いという結果がでている。すなわち、ESD耐性試験では、ケーブルBの方がケーブルAより良いと判断された。
【0056】
(第2の実施の形態における差動ケーブル310のノイズ耐性評価方法)
まず、ケーブルBの154MHz、644MHzでのトランジェント解析で得られた信号波形を説明する。154MHz、644MHzは、電磁界解析において電圧のピーク(極大値)が表れた周波数である。なお、ケーブルAの154MHz、644MHzでのトランジェント解析で得られた信号波形は、それぞれ図11図14に示している。
【0057】
図17は、ケーブルBの154MHzにおけるトランジェント解析で得られた信号の受信部500でのアイパタンである。図17(a)はノイズ信号電圧5V、図17(b)はノイズ信号電圧10V、図17(c)はノイズ信号電圧20Vである。ノイズ信号電圧などは、図11と同様である。
アイの開口は、ノイズ信号電圧が大きくなるにしたがって小さくなっていくが、ノイズ信号電圧20Vでも潰れていない。
【0058】
図18は、ケーブルBの644MHzにおけるトランジェント解析で得られた信号の受信部500でのアイパタンである。図18(a)はノイズ信号電圧5V、図18(b)はノイズ信号電圧10V、図18(c)はノイズ信号電圧20Vである。ノイズ信号電圧などは、図11と同様である。
アイの開口は、ノイズ信号電圧が大きくなるにしたがって小さくなっていくが、ノイズ信号電圧20Vでも潰れていない。
【0059】
ここで、ケーブルAとケーブルBとでアイパタンを比較する。
154MHzにおけるケーブルAのアイパタン(図11)と、ケーブルBのアイパタン(図17)とを比較すると、ノイズ信号電圧20Vにおけるアイの開口は、ケーブルAの方が大きい。すなわち、154MHzでは、ケーブルAがケーブルBより特性が良いと判断される。
一方、644MHzにおけるケーブルAのアイパタン(図14)と、ケーブルBのアイパタン(図18)とを比較すると、ケーブルBの方が大きい。すなわち、644MHzでは、ケーブルBがケーブルAより特性が良いと判断される。
【0060】
図19は、ケーブルA、Bの優劣について、ESD耐性試験による予測、アイパタンによる評価、積周波数スペクトルによる予測、及び予測と評価との一致について示す図である。図19(a)は、ESD耐性試験による予測、アイパタンによる評価、及び予測と評価との一致を示し、図19(b)は、積周波数スペクトルによる予測、アイパタンによる評価、及び予測と評価との一致を示す。なお、予測と評価との一致については、一致する場合を“○”、一致しない場合を“×”で示している。
【0061】
図19(a)に示すように、ESD耐性評価では、“ケーブルBが良い”と予測されたが、154MHzのアイパタンでは“ケーブルAが良い”と判断され、予測と一致しない。一方、644MHzのアイパタンでは“ケーブルBが良い”と判断され、予測と一致した。つまり、ESD耐性による予測と、アイパタンによる評価とが一致しない。
【0062】
一方、図19(b)では、トランジェント解析を行うことなく、積周波数スペクトルから差動ケーブル310を評価する。
まず、積周波数スペクトルにおいて、154MHzと644MHzとにおける電圧(負のdB値)を求める。そして、ケーブルAからケーブルBを引いた差を求める。差が負の場合、ケーブルAがケーブルBより良いと予測し、差が正の場合、ケーブルBがケーブルAより良いと予測する。これは、電圧値が負のdB値で表されているため、電圧値が小さい(負側に大きい)ほど、差動ケーブル310の外側からの影響、すなわちポート5からの影響を受けにくいことを意味するからである。
【0063】
図19(b)に示すように、154MHzでは、ケーブルAは−55.6dB、ケーブルBは−38.4dBであるので、差は−17.2dBとなる。よって、ケーブルAが良いと予測される。一方、644MHzでは、ケーブルAは−7.1dB、ケーブルBは−31.6dBであるので、差は24.5dBとなる。よって、ケーブルBが良いと予測される。そして、この積周波数スペクトルによる予測は、アイパタンによる評価と一致する。
【0064】
以上説明したように、積周波数スペクトルの電圧(値)により予測すれば、トランジェント解析によるアイパタンを求めることなく、差動ケーブル310の優劣を評価しうる。この方法は、複数の差動ケーブル310を比較する場合にも有効である。
なお、上記では、154MHz、644MHzを例にしたが、図10(c)、図15(c)に示した積周波数スペクトルを比較すれば、他の周波数における評価となる。
【0065】
図20は、第2の実施の形態におけるノイズ耐性評価方法のフローチャートを示す図である。ステップ1〜ステップ4は、図16に示したフローチャートと同じである。よって、同じ符号を付して、説明を省略する。
次いで、他の差動ケーブル310の積周波数スペクトルを取得する(ステップ7)。
そして、図3に示した予測部170により、ステップ4において算出した積周波数スペクトルと、他の差動ケーブル310の積周波数スペクトルとを比較し、積周波数スペクトルが小さい差動ケーブル310が、ノイズ耐性が良いとして、差動ケーブル310の良否を予測する(ステップ8)。
【0066】
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、差動ケーブル310を含むDUT300についてノイズ耐性の評価について説明した。第1の実施の形態及び第2の実施の形態は、差動ケーブル310以外の、基板上に形成された配線などにも適用しうる。
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、DUT300に対して最も影響を与える周波数が抽出されるので、この周波数についてトランジェント解析を行いつつ、ノイズ耐性を改善することにより、信号品質(SI:Signal Integrity)が向上させられる。
【符号の説明】
【0067】
1…電子装置、2…ESDガン、3…接地線、4…放電、10…演算装置、11…中央演算処理装置(CPU)、12…メモリ(MEM)、13…入出力デバイス(I/O)、14〜16…インターフェイス(IF)、17…信号バス、20…(ネットワークアナライザ)NA、30…トランジェント解析装置(TA)、100…ノイズ耐性評価装置、110…記憶部、120…Sパラメータ測定部、130…評価指数算出部、140…積周波数スペクトル算出部、150…周波数抽出部、160…トランジェント解析部、170…予測部、200…電磁界解析装置(EMFA)、300…被測定物(DUT)、310…差動ケーブル、311、312…信号線、313…被覆部、314…フィルタ、320、320L、320C、320R…電流クランプ、400…送信部、500…受信部、D1〜D5、D5、D5、D5、N1〜N5…ポート、TR…終端素子
図1
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