特許第6303885号(P6303885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6303885-ヒドロキシベンゼン化合物の製造方法 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6303885
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ヒドロキシベンゼン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/50 20060101AFI20180326BHJP
   C07C 39/04 20060101ALI20180326BHJP
   C07C 39/08 20060101ALI20180326BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180326BHJP
【FI】
   C07C37/50
   C07C39/04
   C07C39/08
   !C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-145884(P2014-145884)
(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公開番号】特開2016-23136(P2016-23136A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134566
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 和俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克生
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洋一
【審査官】 天野 斉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−279540(JP,A)
【文献】 Yasuhiro Takemura, Akira Nakamura, and Harehiko Taguchi,CATALYTIC DECARBOXYLATION OF BENZOIC ACID,Ind. Eng. Chem. Prod. Res. Dev.,1985年,24(2),213-215
【文献】 Jessica L Barker, J. W. Frost,MICROBIAL SYNTHESIS OF p-HYDROXYBENZOIC ACID FROM GLUCOSE,BIOTECHNOLOGY AND BIOENGINEERING,2001年,76(4),376-390
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属を含むアルミニウム・ケイ素含有複合酸化物からなり、平均電気陰性度が2.2〜2.9の範囲内にあり、FAU構造を有するゼオライトを触媒として用いて、ヒドロキシ安息香酸化合物からヒドロキシベンゼン化合物を合成する、ヒドロキシベンゼン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記ヒドロキシ安息香酸化合物が、下記の一般式(1)で表される化合物である、請求項1に記載のヒドロキシベンゼン化合物の製造方法。
【化1】

但し、一般式(1)において、nは、1又は2である。
【請求項3】
前記ヒドロキシベンゼン化合物が、下記の一般式(2)で表される化合物である、請求項1又は2に記載のヒドロキシベンゼン化合物の製造方法。
【化2】

但し、一般式(2)において、nは、1又は2である。
【請求項4】
前記アルミニウム・ケイ素含有複合酸化物が、ナトリウムを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒドロキシベンゼン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記アルミニウム・ケイ素含有複合酸化物が、X型又はY型のゼオライトである、請求項1〜のいずれか一項に記載のヒドロキシベンゼン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記ヒドロキシ安息香酸化合物として、バイオマス資源を原料として合成されたヒドロキシ安息香酸化合物を用いる、請求項1〜のいずれか一項に記載のヒドロキシベンゼン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシベンゼン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシベンゼン化合物、とりわけフェノールや二価フェノール(カテコールなどのジヒドロキシベンゼン)は、例えば、合成樹脂や医農薬品の原料などとして、広範な用途を持つ極めて有用な化合物である。
【0003】
例えば、非特許文献1には、安息香酸やヒドロキシ安息香酸を脱炭酸することにより、ベンゼンや、ヒドロキシベンゼンを合成する方法が記載されている。また、脱炭酸反応に使用する触媒としてゼオライトを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Industrial & Engineering Chemistry Product Research and Development 24巻 213項 1985年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒドロキシ安息香酸から高い収率でヒドロキシベンゼン化合物を製造したいという要望がある。
【0006】
本発明の主な目的は、ヒドロキシ安息香酸から高い収率でヒドロキシベンゼン化合物を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1のヒドロキシベンゼン化合物の製造方法では、アルカリ金属、アルカリ土類金属、水素及びセリウムのうちの少なくとも1種を含むアルミニウム・ケイ素含有複合酸化物からなり、平均電気陰性度が2.2〜2.9の範囲内にあり、FAU構造を有するゼオライトを触媒として用いて、ヒドロキシ安息香酸化合物からヒドロキシベンゼン化合物を合成する。
【0008】
本発明に係る第2のヒドロキシベンゼン化合物の製造方法では、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含み、平均電気陰性度が2.5〜2.9の範囲内にあるケイ素酸化物を触媒として用いて、ヒドロキシ安息香酸化合物からヒドロキシベンゼン化合物を合成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒドロキシ安息香酸から高い収率でヒドロキシベンゼン化合物を製造できる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例13において使用した製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ヒドロキシ安息香酸化合物からヒドロキシベンゼン化合物を合成する第1の方法)
本実施形態では、ヒドロキシ安息香酸化合物からヒドロキシベンゼン化合物を合成する方法について説明する。第1の方法では、ゼオライトを触媒として用いる。第1の方法では、例えば、下記の式により、ヒドロキシ安息香酸化合物からヒドロキシベンゼン化合物を合成する。
【0012】
【化1】
【0013】
上記式において、nは、1又は2である。
【0014】
(ヒドロキシ安息香酸)
ヒドロキシベンゼン化合物の合成に用いるヒドロキシ安息香酸としては、例えば、下記の式(1)で示されるヒドロキシ安息香酸を用いることができる。
【0015】
【化2】
【0016】
但し、一般式(1)において、nは、1又は2である。
【0017】
一般式(1)において、ベンゼン環に対する水酸基の結合位置は、特に限定されない。好ましく用いられるヒドロキシ安息香酸の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,6−ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。なかでも、4−ヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸がより好ましく用いられる。これらの安息香酸は、バイオマス資源を原料として合成可能であるためである。
【0018】
例えば、4−ヒドロキシ安息香酸は、例えば、Biotechnology and Bioengineering 76巻,376項、2001年に記載の方法で、バイオマス資源から合成することができる。具体的には、例えば、組換え大腸菌を用いた、グルコースを炭素源とした発酵により4−ヒドロキシ安息香酸を得ることができる。発酵に用いる細菌または組換え細菌は特に限定されない。
【0019】
4−ヒドロキシ安息香酸が不溶性となる酸解離定数(pKa)付近の弱酸性にて生育可能な微生物を用いて晶析発酵を行い、目的物の4−ヒドロキシ安息香酸を固液分離により取得してもよい。
【0020】
発酵により得られたアンモニウム塩型の4−ヒドロキシ安息香酸水溶液に、水に対して不混和性であるアミン溶媒を添加し加熱することにより、アンモニアを除去して4−ヒドロキシ安息香酸のアミン溶液を得てもよい。
【0021】
4−ヒドロキシ安息香酸をアルコールによってエステル化し、得られた4−ヒドロキシ安息香酸エステルを蒸留にて精製した後、4−ヒドロキシ安息香酸エステルを加水分解することにより4−ヒドロキシ安息香酸を生成してもよい。
【0022】
例えば、3,4−ジヒドロキシ安息香酸は、組換え大腸菌を用いた、グルコースを炭素源とした発酵により得ることができる。
【0023】
3,4−ジヒドロキシ安息香酸は、例えば、100ppm以上の窒素を含んでいてもよく、500ppm以上の窒素を含んでいてもよい。3,4−ジヒドロキシ安息香酸は、例えば、100ppm以上の硫黄を含んでいてもよく、5000ppm以上の硫黄を含んでいてもよい。
【0024】
(ヒドロキシベンゼン化合物)
第1の方法により製造されるヒドロキシベンゼン化合物は、例えば、以下の一般式(2)で示されるヒドロキシベンゼン化合物であってもよい。
【0025】
【化3】
【0026】
但し、一般式(2)において、nは、1又は2である。
【0027】
一般式(1)において、ベンゼン環に対する水酸基の結合位置は、特に限定されない。一般式(2)で表されるヒドロキシベンゼン化合物の具体例としては、例えば、ヒドロキシベンゼンベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
【0028】
第1の方法において製造されたヒドロキシベンゼン化合物は、例えば、ナイロン−6、フェノール樹脂、ポリフェノール類、香料、炭酸エステル、香料、医薬品等の原料等として用いることができる。
【0029】
(ゼオライト触媒)
第1の方法において、触媒として用いるゼオライトは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、水素及びセリウムのうちの少なくとも1種を含むアルミニウム・ケイ素含有複合酸化物からなる。アルミニウム・ケイ素含有複合酸化物は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、水素及びセリウムのうちの1種のみを含んでいてもよいし、複数種類を含んでいてもよい。
【0030】
触媒として好ましく用いられるゼオライトとしては、例えば、アルカリ金属を含むアルミニウム・ケイ素含有複合酸化物、アルカリ土類金属を含むアルミニウム・ケイ素含有複合酸化物、水素を含むアルミニウム・ケイ素含有複合酸化物、水素及びセリウムを含むアルミニウム・ケイ素含有複合酸化物等が挙げられる。
【0031】
アルカリ金属を含むアルミニウム・ケイ素含有複合酸化物のなかでもナトリウムを含むアルミニウム・ケイ素含有複合酸化物がより好ましく用いられる。ナトリウムを含むアルミニウム・ケイ素含有複合酸化物の具体例としては、例えば、Na88Al88Si104384で表されるNa−Xゼオライトや、Na59Al59Si134384で表されるNa−Yゼオライト等が挙げられる。
【0032】
例えば、アルカリ土類金属を含むアルミニウム・ケイ素含有複合酸化物の具体例としては、例えば、Ca40NaAl88Si104384で表されるCa−Xゼオライトや、Ba40NaAl88Si104384で表されるBa−Xゼオライト等が挙げられる。
【0033】
例えば、水素とセリウムとを含むアルミニウム・ケイ素含有複合酸化物の具体例としては、例えば、Ce1039Al59Si134384で示される、水素の一部がセリウムで置換されたCe/H−Yゼオライト等が挙げられる。
【0034】
第1の方法において、触媒として用いるゼオライトの平均電気陰性度は、2.2〜2.9である。触媒として用いるゼオライトの平均電気陰性度は、好ましくは、2.3〜2.8であり、さらに好ましくは、2.3〜2.6である。
【0035】
本発明において、化合物Pの平均電気陰性度(Sint)は、以下のサンダーソンの式により定義される。なお、サンダーソンの式を用いて平均電気陰性度を評価する方法は、例えば、Journal of Materials Chemistry、22巻、18705頁、2012年に記載されている。
【0036】
Sint=(S・S・S1/(p+q+r)
但し、上記式において、
Sint:平均電気陰性度
:原子Pのサンダーソンの電気陰性度
:原子Qのサンダーソンの電気陰性度
:原子Rのサンダーソンの電気陰性度
例えば、ゼオライトを構成する代表的な原子の電気陰性度Sは、以下の通りである。
【0037】
原子Oのサンダーソンの電気陰性度:3.654
原子Siのサンダーソンの電気陰性度:2.14
原子Alのサンダーソンの電気陰性度:1.71
原子Hのサンダーソンの電気陰性度:2.592
原子Liのサンダーソンの電気陰性度:0.670
原子Naのサンダーソンの電気陰性度:0.560
原子Kのサンダーソンの電気陰性度:0.445
原子Csのサンダーソンの電気陰性度:0.220
原子Mgのサンダーソンの電気陰性度:1.318
原子Caのサンダーソンの電気陰性度:0.95
第1の方法において触媒として用いるゼオライトは、FAU構造を有する。第1の方法において触媒として用いるゼオライトは、X型のゼオライトであってもよいし、Y型のゼオライトであってもよい。
【0038】
第1の方法において触媒として用いるゼオライトの細孔のサイズは、好ましくは0.5nm〜50nmであり、より好ましくは0.5nm〜20nmであり、さらに好ましくは、0.5nm〜2nmである。
【0039】
第1の方法において、反応方式は、特に限定されない。第1の方法の反応方式は、例えば、バッチ方式、流通連続方式、反応蒸留方式等であってもよい。
【0040】
触媒の使用量は、例えば、ヒドロキシ安息香酸1molに対して、0.02mol〜1molであることが好ましく、0.1mol〜1molであることがより好ましく、0.2mol〜1molであることがさらに好ましい。
【0041】
第1の方法は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。好ましく用いられる溶媒としては、例えば、水、芳香族炭化水素類、エーテル類等が挙げられる。芳香族炭化水素類の具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、メシチレン等が挙げられる。エーテルの具体例としては、例えば、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。これらの溶媒を単独で使用してもよいし、2種以上の溶媒を混合して使用してもよい。
【0042】
第1の方法における反応温度は、好ましくは、100℃〜350℃であり、さらに好ましくは、200℃〜350℃である。
【0043】
第1の方法における反応時間は、好ましくは、0.5時間〜3時間であり、より好ましくは0.5時間〜1時間である。
【0044】
(ヒドロキシ安息香酸化合物からヒドロキシベンゼン化合物を合成する第2の方法)
本実施形態では、ヒドロキシ安息香酸化合物からヒドロキシベンゼン化合物を合成する方法の他の例について説明する。なお、ここでは、第1の方法とは異なる部分についてのみ説明し、他の部分は、第1の方法の記載を援用するものとする。
【0045】
第2の方法では、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含み、平均電気陰性度が2.5〜2.9の範囲内にあるケイ素酸化物を触媒として用いて、ヒドロキシ安息香酸化合物からヒドロキシベンゼン化合物を合成する。ケイ素酸化物は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうちの1種のみを含んでいてもよいし、複数種類を含んでいてもよい。なお、ヒドロキシ安息香酸化合物及びヒドロキシベンゼン化合物に関しては、第1の方法の記載を援用するものとする。
【0046】
第2の方法において、ケイ素酸化物は、アルカリ金属を含むことが好ましい。アルカリ金属を含むケイ素酸化物の具体例としては、例えば、ナトリウム含有ケイ素酸化物、カリウム含有ケイ素酸化物、リチウム含有ケイ素酸化物、セシウム含有ケイ素酸化物等が挙げられる。アルカリ土類金属を含むケイ素酸化物としては、例えば、マグネシウム含有ケイ素酸化物、カルシウム含有ケイ素酸化物、ストロンチウム含有ケイ素酸化物、バリウム含有ケイ素酸化物等が挙げられる。
【0047】
ケイ素酸化物において、ケイ素に対するアルカリ金属及びアルカリ土類金属のモル比((アルカリ金属及びアルカリ土類金属)/(ケイ素))は、0.06〜0.7であることが好ましく、0.15〜0.6であることがより好ましい。
【0048】
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むケイ素酸化物の平均電気陰性度は、2.6〜2.9の範囲内になることがより好ましく、2.7〜2.9の範囲内になることがさらに好ましい。
【0049】
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むケイ素酸化物は、多孔質体であることが好ましい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むケイ素酸化物の細孔のサイズは、好ましくは0.5nm〜50nmであり、より好ましくは0.5nm〜20nmであり、さらに好ましくは、0.5nm〜2nmである。
【0050】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0051】
(実施例1)フェノールの合成
【0052】
【化4】
【0053】
攪拌装置及び温度調節を備えた内容積50mlのステンレス鋼製オートクレーブにガラス製内挿管を入れ、この内挿管に、4−ヒドロキシ安息香酸0.28g(2.0mmol)、下記の表1に示す物性を有するNa−X型ゼオライト(水沢化学工業株式会社製;CPT−30)0.5g及び溶媒としてジフェニルエーテル3gを混合し、撹拌させながら230℃で1時間反応させた。
【0054】
反応終了後、オートクレーブを急冷し、反応液を取り出した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析(内部標準法)した結果、フェノールの収率は80%であった。
【0055】
(実施例2)フェノールの合成
溶媒として蒸留水3.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は92%だった。
【0056】
(実施例3)フェノールの合成
溶媒を加えず、4−ヒドロキシ安息香酸を2.0g(14.5mmol)にしたこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は90%だった。
【0057】
(実施例4)フェノールの合成
反応時間を2時間とし、4−ヒドロキシ安息香酸を5.0g(36.1mmol)、Na−X型ゼオライトを0.20g、及び溶媒として蒸留水5.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は99%だった。
【0058】
(実施例5)フェノールの合成
反応時間を5時間としたこと以外は、実施例4と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は99%だった。
【0059】
(実施例6)フェノールの合成
必須アミノ酸のひとつであるL−メチオニンを、グルコースから4−ヒドロキシ安息香酸の発酵工程の不純物である含窒素化合物、及び含硫黄化合物のモデル化合物とし、窒素含有量が220ppm、硫黄含有量が462ppmである4−ヒドロキシ安息香酸を調製した。この4−ヒドロキシ安息香酸を使用したこと以外は、実施例4と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は93%だった。
【0060】
(実施例7)フェノールの合成
必須アミノ酸のひとつであるL−メチオニンを、グルコースから4−ヒドロキシ安息香酸の発酵工程の不純物である含窒素化合物、及び含硫黄化合物のモデル化合物とし、窒素含有量が338ppm、硫黄含有量が772ppmである4−ヒドロキシ安息香酸を調製した。この4−ヒドロキシ安息香酸を使用したこと以外は、実施例5と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は96%だった。
【0061】
(比較例1)フェノールの合成
触媒としてハイドロタルサイト(和光純薬工業社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は49%だった。
【0062】
(比較例2)フェノールの合成
触媒として活性炭(白鷺KL;日本エンバイロケミカルズ社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は58%だった。
【0063】
(参考例1)フェノールの合成
触媒としてポリアニリン(Sigma−Aldrich社製、重量平均分子量:100,000以下)を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は70%だった。
【0064】
(参考例2)フェノールの合成
Journal of the American Chemical Society 133巻、2362項、2011年に記載されている手法に従い、以下の手順でトリアジン環含有重合体−SiO複合体調製した。
【0065】
シアナミド(和光純薬工業社製)5gに、Ludox−HS40(Sigma−Aldrich社製)を12.5g加え、100℃で加熱撹拌しながら、水分を留去した。得られた白色粉体を窒素中で4時間かけて550℃まで昇温し、そのままの温度で4時間保持し、その後放冷した。その結果、黄土色のトリアジン環含有重合体−SiO複合体粉末を得た。このトリアジン環含有重合体−SiO複合体粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は55%だった。
【0066】
(参考例3)フェノールの合成
レゾルシノール(和光純薬工業社製)6.0gを精製水10.0gに溶解させ、そこに36%ホルムアルデヒド水溶液(和光純薬工業社製)9.3gを加え、均一溶液とした。他方、重合触媒および窒素源となるL−リジン(和光純薬工業社製)10.0gを蒸留水35.9gに溶解させた。前者の溶液を、L−リジン水溶液に加え、しばらく撹拌して重合物を得た。得られた重合物を、60℃で2日間乾燥させ、得られた赤褐色のL−リジンで架橋されたレゾルシノール樹脂固体を得た。このL−リジンで架橋されたレゾルシノール樹脂を触媒として使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は58%だった。
【0067】
(比較例3)フェノールの合成
触媒としてγ−Al(STREM Chemicals社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は14%だった。
【0068】
(比較例4)フェノールの合成
触媒としてCeO(触媒学会が提供する参照触媒「JRC−CEO−1」)を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は6%だった。
【0069】
(比較例5)フェノールの合成
触媒としてMgO(和光純薬工業社製の水酸化マグネシウムを400℃で焼成したもの)を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は7%だった。
【0070】
(比較例6)フェノールの合成
Journal of the American Chemical Society 120巻、6024項、1998年に記載されている手法に従い、以下の手順で多孔質SiO(SBA−15)を調製した。
【0071】
Pluronic P−123(Sigma−Aldrich社製)4.2gに、2mol/L塩酸を80g、精製水を20g加え均一の水溶液にした後、テトラエトキシシランを10g加え、室温で20時間撹拌し、次いで60℃で5日間静置させた。得られた白色スラリーを大量の精製水で洗浄濾過した後、60℃で一晩乾燥させた。その後、大気中で550℃まで6時間かけて昇温し、そのままの温度で4時間保持した。得られた白色の多孔質SiO(SBA−15)粉体を得た。この多孔質SiO(SBA−15)粉体を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は0.4%であった。
【0072】
(実施例8)フェノールの合成
硝酸ナトリウム(和光純薬工業社製)2.6gに、精製水を150g加え均一の水溶液にした後、ヒュームドシリカCAB−O−SILM5(Cabot社製)を10g加え、室温で30分間攪拌し、次いでエバポレーターによって水を留去させた。得られた白色粉末を110℃で一晩乾燥させた後、大気中で650℃まで2時間かけて昇温し、そのままの温度で3時間保持した。その結果、Na/SiOの白色粉体が得られた。このNa/SiOの白色粉体を触媒として使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は72%であった。
【0073】
(実施例9)フェノールの合成
硝酸セシウム(和光純薬工業社製)5.8gに、精製水を150g加え均一の水溶液にした後、ヒュームドシリカCAB−O−SILM5(Cabot社製)を10g加え、室温で30分間攪拌し、次いでエバポレーターによって水を留去させた。得られた白色粉末を110℃で一晩乾燥させた後、大気中で650℃まで2時間かけて昇温し、そのままの温度で3時間保持した。その結果、Cs/SiOの白色粉体が得られた。このCs/SiOの白色粉体を触媒として使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は77%であった。
【0074】
(比較例7)フェノールの合成
触媒として、LTA構造のNa−A型ゼオライト(東ソー株式会社製;ゼオラムA−4)を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は6%だった。
【0075】
(比較例8)フェノールの合成
触媒として、LTL構造のK−L型ゼオライト(東ソー株式会社製;500KOA)を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は31%だった。
【0076】
(実施例10)フェノールの合成
触媒として、Na−Y型ゼオライト(触媒化成株式会社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は91%だった。
【0077】
(比較例9)フェノールの合成
触媒として、平均電気陰性度が2.947であるH−Y型ゼオライト(触媒化成株式会社製;Si/Al=3)を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は31%だった。
【0078】
(実施例11)フェノールの合成
硝酸セリウム・6水和物(和光純薬工業社製)を6.8g溶解させた100mL精製水に、H−Y型ゼオライト(東ソー株式会社製;320HOA)を6.2g加え、4時間還流させた。その後、大量の精製水で洗浄濾過し、110℃で一晩乾燥させた。得られた白色粉体を大気中で540℃まで3時間かけて昇温し、そのままの温度で6時間保持した。その結果、Ce/H−Y型ゼオライトの白色粉体を得た。このCe/H−Y型ゼオライトの白色粉体を触媒として使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は69%であった。
【0079】
(比較例10)フェノールの合成
触媒を加えなかったこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノール収率は0.1%であった。
【0080】
(比較例11)フェノールの合成
触媒として炭酸カリウムを使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、フェノールの収率は3%であった。
【0081】
(実施例12)カテコールの合成
【0082】
【化5】
【0083】
反応温度を200℃とし、3、4−ジヒドロキシ安息香酸を5.0g(32.4mmol)、Na−X型ゼオライトを0.18g、及び溶媒として蒸留水5.0gを使用したこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果、カテコールの収率は91%だった。
【0084】
(実施例13)フェノールの合成
図1に示すように、直径10mm、長さ42cmのパイレックスガラス管6を反応器とした。パイレックスガラス管6のうち、触媒としてモレキュラーシーブ13Xを充填した部分(以下、「触媒層」)が260℃になるように外部から電気炉7を設置した。パイレックスガラス管6の下部に、ヒドロキシベンゼン化合物の取得のための受器(室温)8及び、昇華したヒドロキシベンゼン化合物の取得のための受器(冷水で冷却)9を連結した。パイレックスガラス管6の出口から、複成する二酸化炭素、及びキャリアガスである窒素を排出するように構成した。
【0085】
触媒として、モレキュラーシーブ13X1/8(粒径2.9mm〜3.5mm)3.4gを上記のパイレックスガラス管6に充填し、原料タンク2、及び振動フィーダー3を格納した格納容器5に、ガスボンベ1から窒素を100mL/分で流し、4−ヒドロキシ安息香酸を振動フィーダー3にて3g/hで、また精製水をシリンジポンプ4にて0.8mL/hで供給した。電気炉7で触媒層の温度が260℃になるように加熱した。
【0086】
振動フィーダー3からパイレックスガラス管6に供給された固体の基質が、パイレックスガラス管6の上部で液化し、下部に設けられた触媒層で反応させた。固化したヒドロキシベンゼン化合物を含む生成物を受器8,9で16時間回収した。受器8,9に回収された、ヒドロキシベンゼン化合物の固体を含む生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、転化率は、99%であった。無色透明のフェノールが4−ヒドロキシ安息香酸に対して収率90%で得られたことを確認した。
【0087】
反応開始3時間後の生成物に含まれる、生成フェノール基準のNa、およびAl含有量をICP測定で定量した。その結果、Na及びAlの両方が定量下限である5ppmよりも低かった。
【0088】
(実施例14)フェノールの合成
実施例13で使用した反応後の触媒を、大気中で550℃まで2時間で昇温し、550℃で1時間保持した。その結果、乳白色の固体である再生処理済みモレキュラーシーブが得られた。この再生処理済みモレキュラーシーブを触媒として使用したこと以外は、実施例13と同様に反応を行った。転化率は、99%であった。無色透明のフェノールが4−ヒドロキシ安息香酸に対して収率90%で得られた。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【符号の説明】
【0092】
1 ガスボンベ
2 原料タンク
3 振動フィーダー
4 シリンジポンプ
5 格納容器
6 パイレックスガラス管
7 電気炉
8,9 受器
図1